15第2章
人権課題に対する取組 1616
第2章 人権課題に対する取組
1 女性
男女平等の理念は、憲法に明記されており、法制上も「雇用の分野における男女の均等
な機会及び待遇の確保等に関する法律」
(昭和47年法律第113号。以下「男女雇用機会均等
法」という。
)等において、男女平等の原則が確立されている。しかし、現実には今なお、
男女の役割を固定的に捉える意識が社会に根強く残っており、家庭や職場において様々な
男女差別が生じている。
また、性犯罪・性暴力、配偶者等からの暴力、職場等におけるセクシュアルハラスメン
トや妊娠・出産等を理由とする不利益取扱い等の問題も近年多く発生している。
我が国が締約国となっている「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」
(昭和60年条約第7号。以下「女子差別撤廃条約」という。
)は、男女の完全な平等の達成
に貢献することを目的として、
女子に対するあらゆる差別を撤廃することを基本理念とし、
締約国に対し、政治的及び公的活動並びに経済的及び社会的活動における差別の撤廃のた
めに適切な措置をとることを求めている。
国内においては、
「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」
(平成27年法律第
64号。以下「女性活躍推進法」という。
)に基づき、国、地方公共団体、常時雇用する労
働者の数が101人以上の民間企業等の事業主は、女性の活躍状況の把握・課題分析、数値
目標を掲げた行動計画の策定、策定した行動計画及び女性の活躍状況に関する情報の公表
等を行うこととされている。令和4年には、
「女性の職業生活における活躍の推進に関す
る法律に基づく特定事業主行動計画の策定等に係る内閣府令」
(平成27年内閣府令第61号)、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画等に関す
る省令」
(平成27年厚生労働省令第162号)等を一部改正し、男女の賃金の差異を新たに情
報公表項目として位置づけ、国、地方公共団体、常時雇用する労働者の数が301人以上の
民間企業等の事業主は、当該項目を必須で公表することとされた。
また、
「男女共同参画社会基本法」
(平成11年法律第78号)に基づき、
令和2年12月に「第
5次男女共同参画基本計画」を閣議決定し、同計画に基づき、あらゆる分野における女性
の参画拡大、安全・安心な暮らしの実現、男女共同参画社会の実現に向けた基盤の整備等
に取り組んでいる。
女性に対する暴力等への取組については、平成13年に「配偶者からの暴力の防止及び被
害者の保護等に関する法律」
(平成13年法律第31号)が施行されて以降、同法に基づき、
配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等のための施策を推進している。また、
「第5
次男女共同参画基本計画」等に基づき、性犯罪・性暴力への対策を推進している。
法務省の人権擁護機関では、法務局・地方法務局や特設の人権相談所において人権相談
に応じている。配偶者やパートナーからの暴力や職場等におけるセクシュアルハラスメン
ト等の女性に対する人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事件としての
調査を行い、事案に応じた適切な措置を講じている。法務省の人権擁護機関が女性に対す 1717第2章人権課題に対する取組る暴行・虐待事案に関して、新規に救済手続を開始した人権侵犯事件の数は、次のとおり
である。
人権侵犯事件数(開始件数) 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
女性に対する暴行・虐待 1,182 947 629 435 430
(法務省人権擁護局の資料による)
(1) 男女共同参画の視点に立った様々な社会制度の見直し、広報・啓発活動の推進
ア 内閣府では、行政相談委員及び人権擁護委員並びに都道府県及び政令指定都市担当
者を対象に、男女共同参画に関する諸課題について理解を深め、苦情の処理に係る知
識・技能の向上を図ることを目的とする苦情処理研修を実施している。
また、我が国の男女共同参画に関する取組を広く知らせるため、男女共同参画の総
合情報誌「共同参画」を発行しているほか、ホームページ、メールマガジン、SNS
(Facebook、Twitter、YouTube)を活用して、充実した情報を迅速に提供する体制
の整備を図るなど、多様な媒体を通じた広報・啓発活動を推進している。さらに、配
偶者からの暴力の被害者支援に役立つ法令、制度及び関係機関についての情報等を収
集し、内閣府のホームページを通じ、外国語版も含め提供している。
加えて、女性活躍推進法に基づき、国・都道府県・市区町村においては、より実効
性の高い行動計画の策定や女性活躍情報の公表等の取組を進めている。内閣府では、
策定された行動計画や女性活躍情報を一覧化して掲載した「女性活躍推進法『見える
化』サイト」の活用の促進を図っている。また、女性デジタル人材や管理職・役員の
育成など女性の参画拡大の推進、様々な課題・困難を抱える女性に寄り添い、意欲と
希望に応じて就労までつなげていく支援や相談支援、孤独・孤立で困難や不安を抱え
る女性が社会との絆・つながりを回復することができるよう、NPO等の知見を活用し
た相談支援やその一環として行う生理用品の提供等のきめ細かい支援等、地方公共団
体が多様な主体による連携体制の構築の下で地域の実情に応じて行う取組を、地域女
性活躍推進交付金により支援を行った。
イ 男女共同参画推進本部決定により、毎年6月23日から29日までの1週間を「男女共
同参画週間」としている。令和4年度も例年と同じく、
「男女共同参画社会づくりに
向けての全国会議」を開催するとともに、
「男女共同参画社会づくり功労者内閣総理
大臣表彰」及び「女性のチャレンジ賞」等の表彰を実施した。
ウ 厚生労働省では、女性活躍推進法の実効性確保のため、企業等が女性活躍に向けた
取組を積極的に実施するよう支援している。また、女性活躍推進法に基づく行動計画
及び女性の活躍状況に関する情報の公表先として
「女性の活躍推進企業データベース」
を運用するとともに、
企業や求職者を始めとした利用者の活用を促進するため、
本デー
タベースについて利便性の向上を図った。
エ 経済産業省では、
「なでしこ銘柄」を通じて女性活躍推進企業の先進事例を発信す 1818
第2章 人権課題に対する取組
るとともに、
「ダイバーシティ経営診断シート」及び同手引の周知のためのセミナー
等を実施することにより、多様な人材の能力を生かした企業の取組を後押ししている
(詳細は、
「男女共同参画白書」に記載。)。
(2) 法令・条約等の周知
ア 内閣府では、
国内における男女共同参画社会の実現に向けた取組を行うに当たって、
報告会、刊行物や内閣府ホームページ(https://www.gender.go.jp/)を通じ、男女
共同参画に関連の深い各種の条約や、国際会議における議論等、男女共同参画・女性
活躍のための国際的規範や、基準、取組の指針等の広報に努めている。
令和4年度は、G20女性活躍担当大臣会合、APEC女性と経済フォーラム、G 7 男
女共同参画担当大臣会合等の国際会議の概要について、内閣府ホームページへの掲載
を行った。
イ 外務省では、女子差別撤廃条約関連文書や女性の地位向上に関する会議等の関連文
書を、外務省ホームページ(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/women/index.
html)に掲載し、広くその内容の周知に努めている。
(3) 女性に対する偏見・差別意識解消を目指した啓発活動
法務省の人権擁護機関では、
「女性の人権を守ろう」を強調事項の一つとして掲げ、
講演会等の開催、啓発冊子の配布等、各種人権啓発活動を実施している。
また、ドメスティックバイオレンス防止をテーマとした啓発動画「虐待防止シリーズ
ドメスティックバイオレンス(DV)
」や「デートDV って何?〜対等な関係を築くため
に〜」
、各種ハラスメントなどの職場における各種人権問題について解説した啓発冊子
及び啓発動画「企業と人権〜職場からつくる人権尊重社会〜」のそれぞれについて、法
務局・地方法務局での配布や貸出し、YouTube法務省チャンネルでの配信等を行って
いる。
さらに、
様々な人権問題を自分の問題として考えることを呼び掛ける啓発動画「『誰か』
のこと じゃない。
(ドメスティックバイオレンス編・セクシュアルハラスメント編)」、
腹話術師のいっこく堂氏によるセクシュアルハラスメントを題材としたスポット映像
「みこさんの本音」
、タレントの麻尋えりか氏によるスポット映像「セクハラ・パワハラ」
篇及び「ハラスメント・DV」篇をYouTube法務省チャンネルで配信している。
啓発動画「
『誰か』のこと じゃない。」 1919第2章人権課題に対する取組
(4) 男女共同参画を推進する教育・学習、女性の生涯学習機会の充実
文部科学省では、男女共同参画社会の形成のため、学校教育において、男女共同参画
の重要性についての指導が充実するよう、学習指導要領の周知を行った。また、令和3
年度から実施している「学校と地域で育む男女共同参画促進事業」において、小・中学
生を対象に、男女の尊重や自分を大事にすることの理解、固定的な性別役割分担意識解
消の理解を深める教育プログラムを活用して、性差に関する偏見や固定的な性別役割分
担意識の解消を図るプログラムの実証を行った。
さらに、学びを通じた女性の社会参画を促進するため、令和2年度から実施している
「女性の多様なチャレンジに寄り添う学びと社会参画支援事業」において、多様な年代
の女性の社会参画を支援するため、関係機関との連携の下、キャリアアップやキャリア
チェンジ等に向けた意識の醸成や相談体制の充実を含め、学習プログラムの開発等、女
性のチャレンジを総合的に支援するモデルの開発を行った。
独立行政法人国立女性教育会館は、女性教育の振興を図り、もって男女共同参画社会
の形成を目指し、地方公共団体、男女共同参画センター、女性団体等における男女共同
参画を推進する研修や専門的な調査研究、情報の収集・提供を行っている。
(5) 職場におけるハラスメント防止対策の推進
厚生労働省では、女性を含め多様な労働者が活躍できる就業環境を整備するため、職
場におけるハラスメント防止対策に取り組んでいる(詳細は99頁参照)。(6) 農山漁村の女性の地位向上のための啓発等
女性は、農業就業人口の約4割を占め、農山漁村・農林水産業の担い手として重要な
役割を果たしているが、経営への参画や地域の方針決定の場における参画は十分進んで
いない状況にある。このため、地域をリードできる女性農林水産業者の育成を支援する
とともに、女性の役割を適正に評価し、その能力が発揮されるよう、農山漁村において
女性活躍推進のために優れた活動を行っている個人や団体の表彰への支援、
「農山漁村
女性の日」
(毎年3月10日)を中心とした男女共同参画社会の形成に向けた意識啓発を
行った。
また、第5次男女共同参画基本計画に基づき、農業委員や農協役員及び土地改良区の
理事への女性参画を推進し、農業委員会において、女性農業委員の割合が令和3年度に
12.4%(前年度12.3%)
(農林水産省調べ)
、農業協同組合において、女性役員の割合が
令和4年度に9.7%
(前年度9.3%)
(一般社団法人全国農業協同組合中央会調べ)
に上昇し、
土地改良区の理事に占める女性の割合は、令和3年度に0.6%(前年度0.6%)
(農林水産
省調べ)となった。さらに、
「水産業協同組合法」
(昭和23年法律第242号)及び「森林
組合法」
(昭和53年法律第36号)において、漁業協同組合及び森林組合の理事について
年齢や性別に著しい偏りが生じないよう配慮しなければならない旨が規定されたことを 2020
第2章 人権課題に対する取組
踏まえ、関係者に改正の趣旨を説明・周知するなどして女性の参画を促進した。
(7) 女性の人権問題に関する適切な対応及び啓発の推進
ア 男女共同参画推進本部決定により、毎年11月12日から25日(女性に対する暴力撤廃
国際日)までの2週間を「女性に対する暴力をなくす運動」期間とし、同期間中、地
方公共団体、女性団体その他の関係団体との連携・協力の下、社会の意識啓発等、女
性に対する暴力に関する取組を一層強化している。
内閣府では、令和4年度の運動においては、
「性暴力を、なくそう」をテーマとし、
内閣府特命担当大臣(男女共同参画)によるメッセージ動画を公表し、全国の各層に
協力を呼び掛けるとともに、ポスターやリーフレットの作成・配布、インターネット
等を活用したキャンペーン、
全国各地のランドマーク等におけるパープル・ライトアッ
プの実施、シンボルマークであるパープルリボンの着用の推進等により、広報活動を
実施し、広く暴力根絶を呼び掛けた。
また、配偶者等からの暴力の被害者を支援するため、最寄りの配偶者暴力相談支援
センター等につながるDV相談ナビに全国共通番号「#8008(はれれば)
」を導入して、
相談窓口の更なる周知を図っている。令和2年4月には、
「DV相談プラス」を開設し
て、配偶者等からの暴力の被害者の多様なニーズに対応できるよう、毎日24時間の電
話相談、SNS・メール相談、10の外国語での相談の対応を行うとともに、各地域の民
間支援団体とも連携し、相談員が必要と判断した場合には、関係機関等への同行支援
等も行っている。さらに、相談支援業務に携わる官民の相談員等の関係者を対象とし
てオンライン研修教材の提供等を実施している。
性犯罪・性暴力の被害者支援としては、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストッ
プ支援センター(以下「ワンストップ支援センター」という。
)について、性犯罪・
性暴力被害者支援のための交付金により、24時間365日対応化や拠点となる病院にお
ける環境整備等の促進、コーディネーターの配置・常勤化などの地域連携体制の確立、
専門性を高めるなどの人材の育成や運営体制の確保、支援員の適切な処遇などの運営
の安定化及び質の向上を図っている。また、性犯罪・性暴力被害者が相談しやすい環
境を整備するため、ワンストップ支援センターの全国共通番号「#8891(はやくワン
ストップ)
」を周知するとともに、夜間休日には対応していないワンストップ支援セ
ンターの運営時間外に、被害者からの相談を受け付け、ワンストップ支援センターと
連携して支援する「性暴力被害者のための夜間休日コールセンター」の運営や、若年
層等の性暴力被害者が相談しやすいよう、SNS相談「Cure time(キュアタイム)
」を
実施している。さらに、性犯罪・性暴力被害者等が、安心して必要な相談・支援を受
けられる環境を整備するために、ワンストップ支援センターの相談員等を対象とした
オンライン研修教材を作成し、提供するとともに、研修を実施した。
このほか、毎年4月を「若年層の性暴力被害予防月間」と定め、SNS等の若年層に 2121第2章人権課題に対する取組届きやすい広報媒体を活用した啓発活動を実施している。
また、AV出演被害について、令和4年6月、
「性をめぐる個人の尊厳が重んぜられ
る社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び
出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律」
(令和4年法
律第78号。以下「AV出演被害防止・救済法」という。
)が制定され、同法の趣旨や出
演契約に係る特則等の周知、相談支援の充実、広報啓発の実施、厳正な取締り等が推
進されている。
平成29年度 平成30年度 令和元年度 令和2年度 令和3年度
配偶者暴力相談支援センター
における相談件数
106,110 114,481 119,276 129,491 122,478
(内閣府の資料による)
令和2年度 令和3年度
DV相談プラスにおける相談件数 52,697 54,489
ポスター
「女性に対する暴力をなくす運動」
ポスター
「若年層の性暴力被害予防月間」
DV相談ナビカード
(裏面)
DV相談ナビカード
(表面)
イ 法務省の人権擁護機関では、専用相談電話「女性の人権ホットライン」
(ナビダイ
ヤル0570-070-810(全国共通)
)を全国の法務局・地方法務局に設置して相談体制の一
層の強化を図っている。
(注記)法務局の職員又は人権擁護委員が相談に対応します。
法務局が相談に応じます。
法務局が相談に応じます。
ハラスメント
ハラスメント
人権イメージキャラクター
人KENあゆみちゃん
人KENまもる君
このポスターは両面ポスターです。
裏面を掲示することもできます。
ゼロ ナナ ゼロ の ハートライン
(注記)一部のIP電話からはご利用できないことがあります
(注記)強化週間期間外は平日、
8:30〜17:15https://www.jinken.go.jp/(パソコン
・携帯電話・
スマート
フォ
ン共通)
インターネットでも人権相談を受け付けています。 インターネッ
ト人権相談
平日 8:30〜19:00 土日祝 10:00〜17:00
受付時間
0570-070-81011月18日金〜24日木
令和4年1
1月18日金〜24日木
令和4年学校や
職場での
いじめひとりで悩まず 電話してください。ひとりで悩まず 電話してください。
インターネット
による
誹謗中傷
相談は無料。
秘密は守ります。
「女性の人権ホットライン」
強化週間
「女性の人権ホットライン」
強化週間
全 国 一 斉
夫・パートナー
からの
暴力
ポスター
「女性の人権ホットライン」
令和4年度は、女性に対する暴力をなくす運動期間中の令和4年11月18日から24日
までの1週間を、
「全国一斉
『女性の人権ホットライン』
強化週間」
とし、平日の相談受付時間を延長するとともに、土曜日・日曜日・祝日も開設し、様々な人権問題に悩む女性からの電話相談に応
じた。
また、配偶者暴力相談支援センター等関係機関との連携を一
層強化し、被害の救済及び予防に努めている。
このほか、令和4年4月の成年年齢引下げに伴い、未成年者
取消権の対象ではなくなった者から、AV出演被害を始めとする 2222
第2章 人権課題に対する取組
各種消費者トラブルに巻き込まれたなどの人権相談を受けた場合には、被害者保護に
係る各種法制度を踏まえた助言を行うなど、適切に対応している。
平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
女性の人権ホットライン相談件数 19,151 17,328 14,324 13,847 12,720
(法務省人権擁護局の資料による)ウ 「令和4年におけるストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等への対応状況につ
いて」
(警察庁)によれば、令和4年中のストーカー事案の被害者は女性が約9割を
占めている。
警察では、若年層のストーカー被害を防止するため、高校生、大学生等を対象に、
イラスト等を用いてストーカー被害の態様を説明した教材(パンフレット・DVD等)
を活用した防犯教室等を開催しているほか、警察庁においてポータルサイトにより、
ストーカー事案に関する情報を発信している。
また、危険性・切迫性が高い事案の被害者等の安全を確保するため、緊急・一時的
に被害者等を避難させる必要がある場合に、ホテル等の宿泊施設を利用するための費
用について、公費で負担することとしている。 2323第2章人権課題に対する取組男女平等の
2 こども
我が国が締約国となっている児童の権利条約は、締約国が、適当かつ積極的な方法で同
条約の原則及び規定を成人及び児童のいずれにも広く知らせることを約束する旨を規定し
ている(第42条)。文部科学省が各都道府県教育委員会等を通じて行った令和3年度
「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果では、暴力行為の発生件数は7万6,441
件(対前年度比15.5%増)と依然として憂慮すべき状況が見られ、また、いじめの認知件
数は61万5,351件(同19.0%増)となっている。
「いじめを初期段階のものを含めて積極的
に認知し、その解消に向けた取組のスタートラインに立っている」と肯定的に評価できる
が、その一方で、いじめの重大事態の件数は705件(同37.2%増)となっており、教育上
の大きな課題となっている。
また、令和4年に警察がいじめに起因する事件で検挙・補導した人員は、223人(対前
年比12.6%増)であった。内訳としては、
小学生77人(同20.3%増)、中学生86人(同5.5%減)、高校生60人(同39.5%増)となっている。
さらに、法務省の人権擁護機関が調査・処理を行う人権侵犯事件においても、令和4年
には、学校におけるいじめ事案が1,047件、教育職員による体罰に関する事案が75件、児
童に対する暴行・虐待事案が216件と高水準で推移しており、こうした人権侵害による被
害の予防・救済のための取組等が課題となっている。
人権侵犯事件数(開始件数) 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
学校におけるいじめ 2,955 2,944 1,126 1,169 1,047
教育職員による体罰 201 141 83 51 75
児童に対する暴行・虐待 453 413 341 253 216
(法務省人権擁護局の資料による)
(1) こどもが人権享有主体として最大限尊重されるような社会の実現を目指した啓発活動
法務省の人権擁護機関では、
「子どもの人権を守ろう」を強調事項の一つとして掲げ、
講演会等の開催、啓発冊子の配布等に加え、全国中学生人権作文コンテスト(10頁参照)
を実施している。また、人権擁護委員が中心となって、人権教室(11頁参照)
、人権の
花運動(13頁参照)
、スポーツ組織と連携・協力した啓発活動(109頁参照)等、各種人
権啓発活動を実施している。
さらに、文部科学省との連携により、人権教室の活用を始めとして、学校等と法務省
の人権擁護機関の更なる連携強化を図り、いじめ等のこどもの人権問題の防止に取り組
んでいる。
令和4年度においては、こどもの人権問題に関する意識を啓発するインターネット広
告を実施したほか、日常生活における人権問題や人権尊重の重要性について解説した啓 2424
第2章 人権課題に対する取組
発冊子「みんなともだち マンガで考える『人権』
」や「
『いじめ』
させない 見逃さ
ない」
、低年齢層向けに出版社のキャラクターとコラボした人権ドリルを全国の法務局・
地方法務局に配布の上、各種人権啓発活動で活用した。
また、児童の権利条約の内容を平易に解説した小学生向けの啓発冊子「よくわかる!
こどもの権利条約」を作成し、法務省ホームページに掲載するとともに、人権教室等で
活用できるよう、法務局・地方法務局に配布した。
このほか、
様々な人権問題を自分の問題として考えることを呼び掛ける啓発動画「
『誰
か』のこと じゃない。
(いじめ編・児童虐待編)
」や、啓発動画「虐待防止シリーズ
児童虐待」、「全国中学生人権作文コンテスト」の入賞作品等を題材にした啓発動画等を
YouTube法務省チャンネルで配信するなど、人権啓発活動の充実に努めている。
加えて、内閣府(令和5年4月1日からこども家庭庁に移管)を始め関係省庁では、
多くの青少年が初めてスマートフォン等を手にする春の卒業・進学・新入学の時期に特
に重点を置き、地方公共団体、関係団体、関係事業者等と連携し、毎年、2月から5月
にかけて、スマートフォンやSNS等の安全・安心な利用のための啓発活動を集中的に実
施する、
「春のあんしんネット・新学期一斉行動」を展開しており、期間中、ラジオ・
インターネット等の様々な広報媒体を通じた啓発活動等の取組を集中的に展開した。
啓発冊子
「みんなともだち
マンガで考える
『人権』」法務省人権擁護局・全国人権擁護委員連合会
させない
見逃さない「いじめ」@MOJ_JINKEN
@JINKEN01 HumanRightsBureau.MOJ
法務省人権擁護局・全国人権擁護委員連合会
人KENあゆみちゃん
人権イメージキャラクター
人KENまもる君
この冊子には,
音声コード
(Uni-Voice)
が各ページ(奇数ページ 右下,偶数ページ
左下)
に印刷されています。Uni-Voiceアプリを使用して
読み取ると,
記録されている
情報を音声で聞くことがで
きます。
啓発冊子「『いじめ』
させない
見逃さない」
青少年の保護者向け
普及啓発リーフレット
「ネット・スマホのある
時代の子育て
(乳幼児編)」啓発動画「
『誰か』のこと じゃない。」(2) 学校教育及び社会教育における人権教育の推進
ア 文部科学省では、
学習指導要領において、
「確かな学力」、「豊かな心」、「健やかな体」
(知・徳・体)のバランスのとれた「生きる力」を育むことを目指している。
「豊かな心」の育成に関しては、
道徳において、
善悪の判断等の内容を扱うとともに、
体験活動等を生かすなどの充実を図っている。 2525第2章人権課題に対する取組また、豊かな人間性や社会性を育む観点から、健全育成のための体験活動推進事業
や、
学校教育における人権教育を推進するための人権教育研究推進事業を実施した(2〜3頁参照)。 しかく児童福祉週間 = 子どもや家庭、子どもの健やかな成長について国民全体で考えることを目的に、児童福祉の普及・啓発のための各種事業及び行事を全国的に展開しています。
しかく今年の標語 =4,299 の応募作品の中から最優秀作として選ばれた 田中豪さん(愛知県)の作品です。
しかくポスターデザイン =このポスターは、イラストレーター・アニメーション作家・絵本作家の城井文さんの作品です。
令和4年5月5日〜5月11日
児童福祉週間
見つけたよ 広がる未来とつかむ夢
見つけたよ 広がる未来とつかむ夢
ポスター
「児童福祉週間」
社会教育においては、専門的職員である社会教
育主事の養成講習等において、人権問題等の現代
的課題を取り上げ、指導者の育成及び資質の向上
を図っている。
イ 厚生労働省では、
毎年5月5日の「こどもの日」
から11日までの1週間を「児童福祉週間」と定め、
こどもの健やかな成長、こどもや家庭を取り巻く
環境について国民全体で考えることを目的に、
国、
地方公共団体、関係団体、企業、地域社会等が連
携して、全国で様々な行事、取組を行っている。
令和4年度は、児童福祉週間の標語を全国公募
し、最優秀作品として選定された「見つけたよ
広がる未来とつかむ夢」を児童福祉週間の象徴と
して、児童福祉の理念の普及・啓発を図った。
(3) 家庭教育に対する支援の充実
文部科学省では、保護者が安心して家庭教育を行うことができるよう、家庭教育に関
する支援が届きにくい家庭に配慮しつつ、地域の多様な人材を活用した家庭教育支援
チーム等が地域の実情に応じて行う家庭教育支援に関する取組(保護者に対する学習機
会や情報の提供、相談対応等)を推進するため、補助事業(地域における家庭教育支援
基盤構築事業)等を実施している。(4) 「人権を大切にする心を育てる」保育の推進
厚生労働省では、保育所等において、保育所保育指針に基づき、児童の最善の利益を
考慮するよう啓発を行うとともに、
「人権を大切にする心を育てる」保育の推進を図り、
児童の心身の発達、家庭や地域の実情等に応じた適切な保育の実施を推進している。
(5) いじめ・暴力行為等に対する取組の推進
ア いじめの問題は依然として大きな社会問題となっている。こうした状況の中、平成
25年6月のいじめ防止対策推進法の成立を受け、文部科学省では、同年10月11日、
「い
じめの防止等のための基本的な方針」
(以下「国のいじめ防止基本方針」という。)を策定した。また、国のいじめ防止基本方針に基づき、文部科学省の「いじめ防止対策
協議会」において法の施行状況の検証を行い、平成28年11月に示された「いじめ防止 2626
第2章 人権課題に対する取組
対策推進法の施行状況に関する議論のとりまとめ」の提言を踏まえ、平成29年3月に
国のいじめ防止基本方針を改定した。当該基本方針においては、学校や学校の設置者
が法務省の人権擁護機関との連携を図ることや、平素から、関係機関の担当者の窓口
交換や連絡会議の開催等の体制整備を図るなどの情報共有体制を構築していくことを
記載している。また、障害のある児童生徒や外国人の児童生徒、性的マイノリティに
係る配慮が必要な児童生徒など、学校として特に配慮を要する児童生徒に関わるいじ
めについて、
教職員がそれぞれの児童生徒の特性への理解を深め、
当該児童生徒のニー
ズや特性等を踏まえた適切な指導を行うことが必要であることも当該基本方針の中で
示している。さらに、
「いじめの防止等に関する普及啓発協議会」を開催するなど、
いじめ防止対策推進法及び国のいじめ防止基本方針の周知徹底を図ることに取り組ん
でいる。あわせて、いじめ対応に当たっては、学校だけでは対応しきれない場合も多
いことから、犯罪に相当するいじめ事案については直ちに警察に相談・通報を行い、
適切な援助を求めなければならないことや、児童生徒への指導支援の充実等、取組の
徹底を求める事項について、令和5年2月7日に通知を発出し、周知した。
このほか、教育再生実行会議の第一次提言及びいじめ防止対策推進法を踏まえ、い
じめの未然防止、早期発見・早期対応や教育相談体制の整備及びインターネットを通
じて行われるいじめへの対応を充実するため、平成25年度から「いじめ対策等総合推
進事業」
(平成29年度から「いじめ対策・不登校支援等総合推進事業」と名称変更)
を実施している。
さらに、令和5年1月、こども自身の主体的な活動の中核となるリーダーを育成す
るとともに、全国各地での多様な取組の実施を一層推進するため、
「全国いじめ問題
子供サミット」を開催した。
加えて、いじめを政府全体の問題として捉え直し、関係府省の知見を結集し、対応
すべき検討課題を整理し、結論を得たものから随時速やかに対応していく政府の体制
を構築するため、新たに、内閣官房(令和5年4月1日からこども家庭庁に移管)と
共同で「いじめ防止対策に関する関係府省連絡会議」を令和4年11月及び令和5年2
月に開催した。
暴力行為については、未然防止と早期発見・早期対応に教職員が一体となって取り
組むことや家庭・地域社会等の理解を得て地域ぐるみでの取組を推進すること、暴力
行為等の問題行動を繰り返す児童生徒に対して、警察等の関係機関と連携した取組を
推進し、き然とした指導を粘り強く行うなどの的確な対応をとることを学校、教育委
員会等に要請した。
また、いじめ、暴力行為等、問題を抱える児童生徒が適切な相談等を受けることが
できるよう、児童生徒の心理に関して専門的な知識及び経験を有するスクールカウン
セラーを配置するとともに、福祉の専門的な知識や技術を有するスクールソーシャル
ワーカーを配置するなど、学校内の教育相談体制の整備を支援している。さらに、
「い 2727第2章人権課題に対する取組じめ対策・不登校支援等総合推進事業」において、児童生徒の問題行動等の未然防止
や早期発見・早期対応につながる効果的な取組の実践等について調査研究を行ってい
る。
加えて、夜間・休日を含め24時間いつでもこどものSOSを受け止めることができる
よう、通話料無料の「24時間子供SOSダイヤル(0120-0-78310)
」を整備している。
また、近年、若年層の多くが、SNSを主なコミュニケーション手段として用いてい
るとともに、SNS上のいじめへの対応も大きな課題となっている状況を受け、いじめ
を含む様々な悩みに関する児童生徒の相談に関して、SNS等を活用する利点・課題等
について検討を行うため、平成29年7月に有識者会議を開催し、平成30年3月、
「SNS
等を活用した相談体制の構築に関する当面の考え方(最終報告)
」を取りまとめた。
さらに、平成30年から地方公共団体に対し、SNS等を活用した児童生徒向けの相談体
制の整備に向けた支援を行っており、令和3年度から支援対象とする地方公共団体の
全国展開を図った。
イ 警察では、少年相談活動やスクールサポーターの学校への訪問活動、学校警察連絡
協議会の開催等を通じて、いじめ事案の早期把握に努めるとともに、いじめ事案を把
握した場合には、事案の悪質性、重大性及び緊急性、被害児童生徒及びその保護者の
意向、学校等の対応状況等を踏まえ、いじめ防止対策推進法の趣旨等を認識しつつ、
学校等との緊密な関係を構築するなどして、的確な対応を推進している。
また、校内暴力についても、学校等との情報交換により早期把握に努め、悪質な事
案に対し厳正に対処するなど、内容に応じた適切な措置と再発の防止に努めている。
ウ 厚生労働省では、ひきこもり等の児童について、ひきこもり地域支援センターや自
立相談支援機関を相談窓口として、教育分野との連携を図りつつ、児童相談所や児童
養護施設等の機能を十分活用するとともに、家庭環境・養護問題の調整、解決に取り
組んでいる。
(6) 体罰の問題に対する取組の推進
体罰は、
「学校教育法」
(昭和22年法律第26号)第11条で禁止されており、児童生徒の
心身に深刻な悪影響を与え、力による解決の志向を助長し、いじめや暴力行為等の土壌
を生むおそれがあり、いかなる場合でも決して許されない。文部科学省では、平成25年
3月に、懲戒と体罰の区別について現場の教員が理解しやすい丁寧な説明を行うことを
目的として、
体罰と判断される行為や認められる懲戒等の具体例や、
部活動指導に当たっ
ての留意事項を示した通知を発出したり、同年5月に運動部活動での体罰等の根絶及び
効果的な指導に向けた「運動部活動での指導のガイドライン」を公表したりするなど、
体罰の防止に関する取組を実施してきた。また、令和4年12月に策定・公表した「学校
部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」には、
「体
罰(暴力)やハラスメント(生徒の人格を傷つける言動)は、いかなる場合も許されな 2828
第2章 人権課題に対する取組
い」と示すとともに、校長及び部活動の指導者並びに地域クラブ活動運営主体・実施主
体に対し、生徒の心身の健康管理、事故防止及び体罰・ハラスメントの根絶を徹底する
旨について示した。
さらに、体罰根絶のためには実態把握に努めることが重要と考えており、令和4年12
月には、国公私立学校における体罰の実態についてまとめた調査結果を公表した。この
結果では、体罰により懲戒処分等を受けた者は439人で、前年度の485人から、46人減少
している。
(7) 児童虐待防止のための取組
児童虐待への対応については、これまで「児童虐待の防止等に関する法律」
(平成12
年法律第82号。以下「児童虐待防止法」という。
)及び「児童福祉法」
(昭和22年法律第
164号)の累次の改正や、
「民法」
(明治29年法律第89号)などの改正により、制度的な
充実が図られてきた。一方で、全国の児童相談所における児童虐待の相談対応件数は一
貫して増加し、令和3年度には児童虐待防止法制定直前の約18倍に当たる20万7,660件
となっている。こどもの生命が奪われるなど重大な児童虐待事件も後を絶たず、児童虐
待の防止は社会全体で取り組むべき喫緊の課題である。
児童相談所における児童虐待の相談対応件数が依然として増加し、また、育児に対し
て困難や不安を抱える子育て世帯がこれまで以上に顕在化してきているなど、子育て世
帯への支援の充実やそのための体制強化に取り組む必要があることから、
令和4年6月、
こどもや家庭への包括的な相談支援等を行う「こども家庭センター」の設置や、訪問に
よる家事支援等こどもや家庭を支える事業の創設を行うこと等を内容とする「児童福祉
法等の一部を改正する法律」
(令和4年法律第66号。以下「令和4年改正児童福祉法」
という。
)が成立した。なお、同法律においては、上記のほか、一時保護開始時の司法
審査の導入や、こども家庭福祉の現場において相談援助業務等を担う者の専門性向上の
ための実務経験者向けの認定資格の導入、こどもに対してわいせつ行為を行った保育士
の再登録手続の厳格化等に関する必要な改正も盛り込まれ、令和6年4月1日の施行に
向けた、詳細についての検討が進められている。
また、児童虐待の予防等を目的とした令和4年改正児童福祉法の円滑な施行を行うと
ともに、令和5年4月に創設されるこども家庭庁を司令塔として関係省庁が連携して取
組を強化する必要があることから、
「児童虐待防止対策の更なる推進について」
(令和4
年9月2日児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議決定)において特に重点的に実施す
る取組を決定するとともに、令和4年12月、児童相談所の体制強化について「新たな児
童虐待防止対策体制総合強化プラン」
(令和4年12月15日児童虐待防止対策に関する関
係府省庁連絡会議決定)を策定した。同プランでは、これまで「児童虐待防止対策体制
総合強化プラン」
(平成30年12月18日児童虐待防止対策に関する関係府省庁連絡会議決
定)に沿って行われてきた児童福祉司の増員等による体制強化の取組を更に進め、令和 2929第2章人権課題に対する取組6年度末までに児童福祉司を6,850人体制とする目標を設定し、体制強化に取り組むこ
ととされた。
また、民法における懲戒権に関する規定(民法第822条)が児童虐待を正当化する口
実になっているという指摘がなされてきたことを踏まえ、令和4年12月に「民法等の一
部を改正する法律」
(令和4年法律第102号)が成立し、民法について親権者による懲戒
権の規定を削除するとともに、体罰等のこどもの心身の健全な発達に有害な影響を及ぼ
す言動を禁じる改正がなされた。児童福祉法及び児童虐待防止法についても、民法の新
たな規定ぶりに合わせる改正が行われ、体罰等によらない子育ての一層の推進が図られ
ている。
ア 厚生労働省では、
平成16年から、
毎年11月を「児童虐待防止推進月間」と位置づけ、
月間中、関係府省庁や地方公共団体、関係団体等と連携した集中的な広報啓発活動を
実施し、
児童虐待は社会全体で解決すべき問題であることを周知・啓発している。また、
児童虐待防止の啓発を図ることを目的に民間団体(認定NPO法人児童虐待防止全国
ネットワーク)が中心となって実施している「オレンジリボン運動」を後援している。
令和4年度は、「『もしかして?』
ためらわないで! 189(いちはやく)
」を月間
標語として決定し、各種広報媒体に掲載したほか、
「子どもの虐待防止推進全国フォー
ラムwithかがわ」やポスター・リーフレット・啓発動画等により、児童虐待防止に向
けた広報啓発に取り組んだ。
また、児童虐待を受けたと思われるこどもを見付けたときなどに、ためらわずに児
童相談所に通告・相談ができるよう、
児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」及び「児童相談所相談専用ダイヤル」を運用しており、それぞれ通話料の無料化を行
い、利便性の向上を図っている。また、虐待防止のためのSNSを活用した全国一元的
な相談の受付体制の構築に向け、令和3年度に相談システムの設計・開発を行い、令
和5年2月から本格的な運用を開始した。
ポスター「児童虐待防止推進月間」
このほか、
「社会保障審議会児童部会」の下に設
置されている「児童虐待等要保護事例の検証に関
する専門委員会」においては、児童虐待による死
亡事例等について、分析、検証し、事例から明ら
かになった問題点・課題の具体的な対応策につい
て提言として取りまとめを行っており、令和4年
9月9日には、
「子ども虐待による死亡事例等の検
証結果等について(第18次報告)
」を取りまとめた。
第18次報告においては、
心中以外の虐待死
(47例・49人)では、0歳児死亡が最も多く(65.3%)
、う
ち月齢0か月が50.0%を占めた。妊娠期・周産期に
おける問題として、
「妊婦健康診査未受診」、「予期 3030
第2章 人権課題に対する取組
しない妊娠/計画していない妊娠」が高い割合を占めること等が特徴として挙げられ
た。
イ 文部科学省では、児童虐待防止法の規定による早期発見努力義務及び通告義務等に
ついて機会を捉えて周知徹底を図っているほか、関係機関との連携強化のための情報
共有や児童虐待防止に係る研修の実施等の積極的な対応等についても周知している。
また、平成31年2月の関係閣僚会議決定を受け、令和元年5月に学校・教育委員会
等が児童虐待の対応に留意すべき事項をまとめた「学校・教育委員会等向け虐待対応
の手引き」
(令和2年6月一部改訂)を作成し、公表するとともに、同年8月には、
地域における児童虐待の未然防止・早期発見の取組に資するよう、地域で活動する家
庭教育支援や地域学校協働活動等の関係者に向けて、
「児童虐待への対応のポイント」
(令和3年3月一部改訂)を作成し、児童虐待への対応に関して留意すべき事項等を
周知した。令和2年1月には、児童虐待対応に関する具体的な事例を想定した「学校
現場における虐待防止に関する研修教材」を作成し、
積極的な活用について周知した。
さらに、令和4年11月の「児童虐待防止推進月間」に合わせて、全国の家庭・学校・
地域の関係者に加えて、全国のこどもたちに向けて、文部科学大臣メッセージを発信
するなど、児童虐待の防止に向けた周知・啓発を行った。
このほか、児童生徒が適切な相談を受けることができるよう、スクールソーシャル
ワーカーやスクールカウンセラーの活用等、教育相談体制の整備を支援している。ま
た、児童虐待の未然防止や早期対応のため、家庭教育支援チーム等による保護者への
相談対応や保護者と地域とのつながりづくりの推進にも取り組んでいる。
ウ 警察では、児童虐待が疑われる事案を認知した際には、早期に現場臨場等を行い、
警察職員が児童の安全を直接確認することを徹底するとともに、事件化すべき事案に
ついては厳正な捜査を行っている。また、児童虐待を受けたと思われる児童について
は、児童相談所に対して確実に通告等を実施し、児童相談所等との情報共有を図るな
ど、関係機関と緊密に連携しながら、児童の安全確保を最優先とした対応を徹底して
いる。
エ 法務省では、
「児童虐待とたたかう法務省プロジェクトチーム」を設置して検討を
進め、
令和2年2月に取りまとめた「法務省児童虐待防止対策強化プラン」に基づき、
各地の法務省関係機関が有する資源・ノウハウを児童相談所等の求めに応じて提供す
るなど、関係機関と連携して児童虐待防止対策に取り組んでおり、法務局・地方法務
局においては、
職員や人権擁護委員による人権教室や「こどもの人権SOSミニレター」
等による人権相談を実施している。
(8) こどもの性被害に係る対策
こどもの性被害に係る対策については、令和4年5月に犯罪対策閣僚会議において策
定された「子供の性被害防止プラン(児童の性的搾取等に係る対策の基本計画)2022」 3131第2章人権課題に対する取組に基づき、政府全体で取組を推進している。
いわゆる児童ポルノ等については、平成26年6月、
「児童買春、児童ポルノに係る行
為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」
(平成11年法律第52号)が一部改正され、
法律名が「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関
する法律」に改められ、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノ又はその電磁的記
録を所持、保管する行為や、ひそかに児童の姿態を描写することにより児童ポルノを製
造する行為を処罰する罰則が新設された。同改正法は、平成26年7月に施行され、自己
の性的好奇心を満たす目的での児童ポルノの所持等を処罰する規定については、平成27
年7月から適用されている。
警察では、低年齢児童を狙ったグループ等に対する取締りを強化するとともに、児童
の被害の継続・拡大を防ぐため、流通・閲覧防止対策や被害児童の早期発見及び支援に
向けた取組等を推進している。
また、警察庁ホームページにおいて、
「なくそう、子供の性被害。
」と題して、児童ポ
ルノ事犯の検挙・被害状況、被害防止対策、児童ポルノ被害の深刻さ等について掲載し、
国民意識の向上を図っている。
さらに、文部科学省では、
「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」
(令和2年6月11日性
犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議決定)を踏まえ、生命(いのち)を大切に
し、こどもたちを性暴力の加害者・被害者・傍観者にさせないため、内閣府と共同で「生
命(いのち)の安全教育」の教材・指導の手引等を作成し、令和3年4月に公表した。
令和3年度から「生命(いのち)の安全教育」の教材等を活用したモデル事業を実施し、
指導事例を収集している。令和4年度は教員向け研修動画の公開及び児童生徒向け動画
教材の活用等を周知した。
児童生徒等に対する性暴力等の防止等については、本来こどもを守り育てる立場にあ
る教員がこどもに性暴力等を行うということは断じてあってはならないという基本理念
の下、令和3年5月には、第204回国会において議員立法である「教育職員等による児
童生徒性暴力等の防止等に関する法律」
(令和3年法律第57号)
が衆参全会一致で成立し、
令和4年4月1日から施行された(データベースに関する規定については、令和5年4
月1日から施行)。同法では、教育職員等による児童生徒等への性暴力等(以下「児童生徒性暴力等」と
いう。
)は、児童生徒等の同意や暴行・脅迫等の有無を問わず全て法律違反であること
とされたほか、教育職員・児童生徒等に対する啓発、児童生徒性暴力等の早期発見及び
対処、国による特定免許状失効者等(児童生徒性暴力等を行ったことにより教員免許状
が失効又は取上げとなった者)に関するデータベースの整備などが規定された。また、
特定免許状失効者等に対しては、免許状の失効又は取上げの原因となった児童生徒性暴
力等の内容等を踏まえ、当該特定免許状失効者等の改善更生の状況その他その後の事情
により再び免許状を授与するのが適当であると認められる場合に限り、再び免許状を授 3232
第2章 人権課題に対する取組
与することができることが規定された。特定免許状失効者等に関するデータベースにつ
いては、国において令和4年度に構築、令和5年4月1日から稼動しており、教育職員
等を任命又は雇用するときには、国公私立の別や常勤・非常勤等の採用形態を問わず、
必ずデータベースを活用することが義務付けられている。
同法に基づき、文部科学省においては、本法に定められた施策を総合的かつ効果的に
推進するため、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する基本的な指針を令
和4年3月に策定したほか、令和5年3月には、データベースに関する規定の施行に合
わせて通知を発出し、データベースの運用等に係る注意事項とともに、児童生徒性暴力
等の防止等に関する施策全体について、学校及びその設置者が行うべき主な対応をまと
めたチェックリストを添付し、改めて趣旨や留意事項を周知した。また、教育委員会や
学校における教員に対する研修や意識啓発の取組がより効果的なものとなるよう、令和
4年度には、啓発動画や研修用動画、好事例集等を作成・公表した。
また、AV出演被害については、令和4年6月、AV出演被害の防止及び被害者の救済
を図るため、AV出演被害防止・救済法が制定され、同法の趣旨や出演契約に係る特則
等の周知、相談支援の充実、広報啓発の実施、厳正な取締り等が推進されている。
法務省の人権擁護機関では、令和4年4月の成年年齢引下げに伴い、未成年者取消権
の対象ではなくなった者から、AV出演被害を始めとする各種消費者トラブルに巻き込
まれたなどの人権相談を受けた場合には、被害者保護に係る各種法制度を踏まえた助言
を行うなど、適切に対応している。
また、文部科学省では、卒業直前の高校生等に向けた「生命(いのち)の安全教育」
啓発資料に、AV出演被害等の性産業への望まない従事等は性暴力であること等を記載
するとともに、身近な被害実態、性暴力が起きないようにするためのポイント、性暴力
被害に遭った場合の対策・相談先等を記載している。 3333第2章人権課題に対する取組「生命(いのち)の安全教育」啓発資料
(9) 無戸籍対策
女性が夫との婚姻中や元夫との離婚後300日以内に子を出産した場合、民法の嫡出推
定制度により、夫又は元夫が子の父と推定されることとなるが、他に血縁上の父が存在
すること等を理由として、子を出産した女性が出生の届出をしないため、子が戸籍に記
載されることなく、無戸籍のままとなることがある。このような無戸籍の発生は、国民
としての社会的な基盤が与えられず、社会生活上の不利益を受けるといった人間の尊厳
に関わる重大な社会問題である。
法務省では、無戸籍の解消のため、1市区町村の窓口等から得られた情報により、各
法務局において無戸籍者の情報を把握し、2把握した情報に基づき、法務局や市区町村
の職員が、無戸籍者の母親等に定期的に連絡、個別に訪問するなど、一人一人に寄り添
い、戸籍の記載に必要な届出や裁判上の手続がとられるよう支援し、3裁判費用等の相
談があった場合には、
「日本司法支援センター」
(以下「法テラス」という。
)での民事
法律扶助制度について案内し、4法務省に無戸籍者ゼロタスクフォースを設置するとと
もに、
各法務局において市区町村、
弁護士会等の関係機関と協議会を設置するなどの「寄
り添い型」の取組を進めている。また、無戸籍者やその母親等の関係者に相談を促すた
め、ポスター及びリーフレットの配布や、法務省ホームページ及び無戸籍解消の流れに
関する動画等のウェブコンテンツを充実させるなどして、周知を図るとともに、各法務
局においても相談窓口を設けている。 3434
第2章 人権課題に対する取組
平成26年9月から行っている無戸籍者に関する情報集約により、累計4,437人の無戸
籍者を把握し、そのうち合計3,653人の方が戸籍に記載されたところであり(令和5年
2月10日現在)
、引き続き無戸籍の解消のための取組を進めていくこととしている。
さらに、無戸籍が発生する原因の一つと指摘されてきた嫡出推定制度の見直し等につ
いて、母の婚姻の解消等の日から300日以内に生まれた子であっても、母の再婚後に生
まれた場合には、再婚後の夫の子と推定すること等が盛り込まれた民法等の一部を改正
する法律が、令和4年12月10日、第210回国会(臨時会)において可決成立し、同月16
日に公布された。本改正によって、嫡出否認の訴えを提起することができる者の範囲及
び出訴期間も見直されることから、施行前において、無戸籍と把握している方に対して、
個別に改正法の内容を通知することを含め、嫡出否認の訴えを提起する機会を逃すこと
のないように周知広報を行っていくこととしている。
法務省ホームページ
「無戸籍でお困りの方へ」
リーフレット
「あなたの戸籍をつくるために」
リーフレット
「子どもの戸籍をつくるために」
住民票やパスポートは、
原則つくられません。
(一定の要件を満たしていれば、
つくられる場合があります。)資格を取得するため
に、戸籍の証明を求
められることがあり
ます。
戸籍がないと
どうなり
ますか?
親の遺産を相続する
場合に、親子の証明
ができないことがあ
ります。〜無戸籍の方へ あきらめないで〜あなたの戸籍をつくるために法務省ホームページ「無戸籍でお困りの方へ」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00034.html北海道東 北関東甲信越静中 部近 畿中 国四 国九州・沖縄上記以外にも相談窓口があります。
詳しくは、
上記お近くの無戸籍相談窓口にお問合せください。
受付時間 平日 8:30〜17:15
令和4年11月発行
無戸籍相談窓口一覧
「無戸籍の相談のことで」とお伝えください。
無戸籍 法務省
札幌市北区北8条西2-1-1 札幌第1合同庁舎
函館市新川町25-18 函館地方合同庁舎
旭川市宮前1条3-3-15 旭川合同庁舎
釧路市幸町10-3 釧路合同庁舎
仙台市青葉区春日町7-25 仙台第3法務総合庁舎
福島市霞町1-46 福島合同庁舎
山形市緑町1-5-48 山形地方合同庁舎
盛岡市盛岡駅西通1-9-15 盛岡第2合同庁舎
秋田市山王7-1-3
青森市長島1-3-5 青森第二合同庁舎
東京都千代田区九段南1-1-15 九段第2合同庁舎
横浜市中区北仲通5-57 横浜第2合同庁舎
さいたま市中央区下落合5-12-1 さいたま第2法務総合庁舎
千葉市中央区中央港1-11-3
水戸市北見町1-1 水戸法務総合庁舎
宇都宮市小幡2-1-11
前橋市大手町2-3-1 前橋地方合同庁舎
静岡市葵区追手町9-50 静岡地方合同庁舎
甲府市丸の内1-1-18 甲府合同庁舎
長野市大字長野旭町1108
新潟市中央区西大畑町5191 新潟地方法務総合庁舎
名古屋市中区三の丸2-2-1 名古屋合同庁舎第1号館
津市丸之内26-8 津合同庁舎
岐阜市金竜町5-13 岐阜合同庁舎
福井市春山1-1-54 福井春山合同庁舎
金沢市新神田4-3-10 金沢新神田合同庁舎
富山市牛島新町11-7 富山合同庁舎
大阪市中央区谷町2-1-17 大阪第2法務合同庁舎(注記)
京都市上京区荒神口通河原町東入上生洲町197
神戸市中央区波止場町1-1 神戸第2地方合同庁舎
奈良市高畑町552
大津市京町3-1-1 大津びわ湖合同庁舎
和歌山市2番丁3 和歌山地方合同庁舎
広島市中区上八丁堀6-30
山口市中河原町6-16 山口地方合同庁舎2号館
岡山市北区南方1-3-58
鳥取市東町2-302 鳥取第2地方合同庁舎
松江市東朝日町192-3
高松市丸の内1-1 高松法務合同庁舎
徳島市徳島町城内6-6 徳島地方合同庁舎
高知市栄田町2-2-10 高知よさこい咲都合同庁舎
松山市宮田町188-6 松山地方合同庁舎
福岡市中央区舞鶴3-5-25
佐賀市城内2-10-20 佐賀合同庁舎
長崎市万才町8-16
大分市荷揚町7-5 大分法務総合庁舎
熊本市中央区大江3-1-53 熊本第2合同庁舎
鹿児島市鴨池新町1-2
宮崎市別府町1番1号 宮崎法務総合庁舎
那覇市樋川1-15-15 那覇第1地方合同庁舎
011(709)2311
0138(23)9526
0166(38)1165
0154(31)5015
022(225)5611
024(534)1933
023(625)1617
019(624)1141
018(862)6531
017(776)9021
03(5213)1344
045(641)7461
048(851)1000
043(302)1316
029(227)9911
028(623)0921
027(221)4420
054(254)3555
055(252)7176
026(235)6629
025(222)1565
052(952)8130
059(228)4192
058(245)3181
0776(22)4344
076(292)7829
076(441)0550
06(6942)9459
075(231)0131
078(392)1821
0742(23)5534
077(522)4671
073(422)5131
082(228)5765
083(922)2295
086(224)5659
0857(22)2260
0852(32)4230
087(821)6191
088(622)4824
088(822)3331
089(932)5712
092(721)9334
0952(26)2185
095(820)5953
097(532)3347
096(364)2182
099(259)0668
0985(22)5250
098(854)7953
札幌法務局
函館地方法務局
旭川地方法務局
釧路地方法務局
仙台法務局
福島地方法務局
山形地方法務局
盛岡地方法務局
秋田地方法務局
青森地方法務局
東京法務局
横浜地方法務局
さいたま地方法務局
千葉地方法務局
水戸地方法務局
宇都宮地方法務局
前橋地方法務局
静岡地方法務局
甲府地方法務局
長野地方法務局
新潟地方法務局
名古屋法務局
津地方法務局
岐阜地方法務局
福井地方法務局
金沢地方法務局
富山地方法務局
大阪法務局
京都地方法務局
神戸地方法務局
奈良地方法務局
大津地方法務局
和歌山地方法務局
広島法務局
山口地方法務局
岡山地方法務局
鳥取地方法務局
松江地方法務局
高松法務局
徳島地方法務局
高知地方法務局
松山地方法務局
福岡法務局
佐賀地方法務局
長崎地方法務局
大分地方法務局
熊本地方法務局
鹿児島地方法務局
宮崎地方法務局
那覇地方法務局
(注記)大阪法務局については、令和5年1月に
「大阪市中央区大手町
三丁目 1 番 41 号」
への移転を予定しております。
子どもの戸籍を
つくるために
〜出生届のことで悩んでいませんか 〜
(注記)子どもが生まれた場合、
出生の届出をしなければならず
(戸籍法4
9条1項、52条)、その届出が市区町村長に受理された場合、
その子は戸籍に記載されます。
法務省ホームページ
「無戸籍でお困りの方へ」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji04_00034.html北海道東 北関東甲信越静中 部近 畿中 国四 国九州・沖縄上記以外にも相談窓口があります。
詳しくは、
上記お近くの無戸籍相談窓口にお問合せください。
受付時間 平日 8:30〜17:15
令和4年11月発行
無戸籍相談窓口一覧
「無戸籍の相談のことで」とお伝えください
無戸籍 法務省
札幌市北区北8条西2-1-1 札幌第1合同庁舎
函館市新川町25-18 函館地方合同庁舎
旭川市宮前1条3-3-15 旭川合同庁舎
釧路市幸町10-3 釧路合同庁舎
仙台市青葉区春日町7-25 仙台第3法務総合庁舎
福島市霞町1-46 福島合同庁舎
山形市緑町1-5-48 山形地方合同庁舎
盛岡市盛岡駅西通1-9-15 盛岡第2合同庁舎
秋田市山王7-1-3
青森市長島1-3-5 青森第二合同庁舎
東京都千代田区九段南1-1-15 九段第2合同庁舎
横浜市中区北仲通5-57 横浜第2合同庁舎
さいたま市中央区下落合5-12-1 さいたま第2法務総合庁舎
千葉市中央区中央港1-11-3
水戸市北見町1-1 水戸法務総合庁舎
宇都宮市小幡2-1-11
前橋市大手町2-3-1 前橋地方合同庁舎
静岡市葵区追手町9-50 静岡地方合同庁舎
甲府市丸の内1-1-18 甲府合同庁舎
長野市大字長野旭町1108
新潟市中央区西大畑町5191 新潟地方法務総合庁舎
名古屋市中区三の丸2-2-1 名古屋合同庁舎第1号館
津市丸之内26-8 津合同庁舎
岐阜市金竜町5-13 岐阜合同庁舎
福井市春山1-1-54 福井春山合同庁舎
金沢市新神田4-3-10 金沢新神田合同庁舎
富山市牛島新町11-7 富山合同庁舎
大阪市中央区谷町2-1-17 大阪第2法務合同庁舎(注記)
京都市上京区荒神口通河原町東入上生洲町197
神戸市中央区波止場町1-1 神戸第2地方合同庁舎
奈良市高畑町552
大津市京町3-1-1 大津びわ湖合同庁舎
和歌山市2番丁3 和歌山地方合同庁舎
広島市中区上八丁堀6-30
山口市中河原町6-16 山口地方合同庁舎2号館
岡山市北区南方1-3-58
鳥取市東町2-302 鳥取第2地方合同庁舎
松江市東朝日町192-3
高松市丸の内1-1 高松法務合同庁舎
徳島市徳島町城内6-6 徳島地方合同庁舎
高知市栄田町2-2-10 高知よさこい咲都合同庁舎
松山市宮田町188-6 松山地方合同庁舎
福岡市中央区舞鶴3-5-25
佐賀市城内2-10-20 佐賀合同庁舎
長崎市万才町8-16
大分市荷揚町7-5 大分法務総合庁舎
熊本市中央区大江3-1-53 熊本第2合同庁舎
鹿児島市鴨池新町1-2
宮崎市別府町1番1号 宮崎法務総合庁舎
那覇市樋川1-15-15 那覇第1地方合同庁舎
011(709)2311
0138(23)9526
0166(38)1165
0154(31)5015
022(225)5611
024(534)1933
023(625)1617
019(624)1141
018(862)6531
017(776)9021
03(5213)1344
045(641)7461
048(851)1000
043(302)1316
029(227)9911
028(623)0921
027(221)4420
054(254)3555
055(252)7176
026(235)6629
025(222)1565
052(952)8130
059(228)4192
058(245)3181
0776(22)4344
076(292)7829
076(441)0550
06(6942)9459
075(231)0131
078(392)1821
0742(23)5534
077(522)4671
073(422)5131
082(228)5765
083(922)2295
086(224)5659
0857(22)2260
0852(32)4230
087(821)6191
088(622)4824
088(822)3331
089(932)5712
092(721)9334
0952(26)2185
095(820)5953
097(532)3347
096(364)2182
099(259)0668
0985(22)5250
098(854)7953
札幌法務局
函館地方法務局
旭川地方法務局
釧路地方法務局
仙台法務局
福島地方法務局
山形地方法務局
盛岡地方法務局
秋田地方法務局
青森地方法務局
東京法務局
横浜地方法務局
さいたま地方法務局
千葉地方法務局
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宇都宮地方法務局
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福井地方法務局
金沢地方法務局
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鹿児島地方法務局
宮崎地方法務局
那覇地方法務局
(注記)大阪法務局については、令和5年1月に
「大阪市中央区大手町
三丁目 1 番 41 号」
への移転を予定しております。
出生届が
提出されないと、
その子には戸籍が
つく
られません。
戸籍がないこと(無戸籍)
による
不利益は?
*戸籍とは、
人がいつ誰の子として生まれて、いつ誰と結婚し、
いつ亡くなったかなどの身分関
係を登録し、
その人が日本人であることを証
明する唯一のものです。
くろまる 住民票やパスポートが原則つくられません(一定の要件を満たしていれば、
つくられる場合が
あります。)。
くろまる 資格を取得するために、
戸籍の証明を求められ
ることがあります。
くろまる 親の遺産を相続する場合、
親子の証明ができな
いことがあります。
(10) 条約の周知
外務省では、平成6年に締結した児童の権利条約と併せ、武力紛争における児童の関
与に関する児童の権利条約の選択議定書及び児童の売買、児童買春及び児童ポルノに関
する児童の権利条約の選択議定書の実施に、内閣府を始めとする関係府省庁と協力して
努めており、条文その他の情報を外務省ホームページ(https://www.mofa.go.jp/
mofaj/gaiko/jido/index.html)に掲載し、その内容の周知に努めている。
文部科学省では、平成22年度から毎年開催する人権教育担当指導主事連絡協議会等に
おいて、同条約等の周知を図っている。
(11) こどもの人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
法務省の人権擁護機関では、専用相談電話「こどもの人権110番」
(フリーダイヤル
0120-007-110(全国共通)
)を全国の法務局・地方法務局に設置して、こどもが相談しや 3535第2章人権課題に対する取組すい体制を取っている。取り分け、令和4年8月26日から9月1日までの1週間を「全
国一斉『こどもの人権110番』強化週間」とし、
平日の相談受付時間を延長するとともに、
土曜日・日曜日も開設した。
また、法務省ホームページ上に「インターネット人権相談受付窓口(SOS-eメール)」(https://www.jinken.go.jp/)を開設するとともに、
「こどもの人権SOSミニレター」(料金受取人払の便箋兼封筒)を全国の小・中学校の全児童生徒に配布している。さらに、
令和元年度以降、若年層の利用が多いSNSを活用した人権相談体制の整備を進め、こど
もたちがより相談しやすいよう様々な手段を用意し、こどもの人権侵害事案の早期発見
に努めている。
そして、人権相談等を通じて、いじめや体罰、児童虐待、児童買春、児童ポルノによ
る被害など、人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を
行い、事案に応じた適切な措置を講じている。
特に、児童虐待については、
「こどもの人権SOSミニレター」を始めとする人権相談
等を、対象者本人のみならず、その兄弟姉妹等の近親者に対する児童虐待等を発見する
ための手段として活用し、虐待の疑われる事案を認知した場合は、児童相談所等への情
報提供や被害者との面談を早期に行うことにより、被害者の速やかな保護、被害者の家
庭環境の改善、
見守り体制の構築を図るなどして、
虐待を受けたこどもの人権救済を図っ
ている。
なお、
「こどもの人権SOSミニレター」等を端緒に人権侵犯事件として立件し、救済
措置を講じた具体例については、参考資料3「令和4年における『人権侵犯事件』の状
況について(概要)」(資-26 〜 41頁)のとおりである。
平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
こどもの人権110番相談件数 21,351 21,130 15,603 15,419 16,824
平成30年度 令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度
こどもの人権SOSミニレター
相談件数
14,410 15,594 10,704 11,194 8,710
(法務省人権擁護局の資料による) 3636
第2章 人権課題に対する取組
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8月26日金〜9月1日木
令和4年
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フリーダイヤル ぜろ ぜろ なな ひゃくとおばんの午前8:30〜午後7:00ごへい じつ ど にち
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午前10:00〜午後5:00
平日 土日
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全国一斉
「子どもの人権110番」
強化週間
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0120-007-110 に電話してね!!
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午前8:30〜午後5:15
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0120-007-1100120-007-110困ったことをなんでも相談してください。
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ぜろ なな の ひゃくとおばん
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(注記)携帯電話・スマートフォンからもかけられます。
(注記)土曜日、
日曜日、
祝日、
平日の時間外は留守番電話です。
けい
ど にち
よう び よう しゅくじつ じつ じ かん がい る す ばん でん わ
へいびたい でん わ
(注記)あなたの近くの法務局につながります。
ほう
ちか む きょく
相談時間:月曜日〜金曜日 午前8:30〜午後5:15
そう げつ よう び よう び ご ご ご
ぜん
きん
だん じ かん
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子どもの人権110番
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じん
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通話無料
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電話料金はかからないよ。
携帯電話・スマートフォンからもかけられるよ。
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りょうむ(注記)土曜日、
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祝日、
平日の時間外は留守番電話です。
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相談時間:月曜日〜金曜日 午前 8:30 〜午後 5:15
そう げつ よう び よう び ご ぜん ご ご
きん
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子どもの人権
じん
ばん
けんこ110番
110番
この冊子には、
SOSカー
ドの横に音声コー
ドが印刷されています。
専用の読み上げ装置で読み取ると、
記録されている情報を音声で聞くことができます。
さっ
し おんせい
よこ いんさつよせんよう よ
あ と
そうち じょうほう せい き
ろく おんきじん
けんここ
じん
けん
音声コードを利用される方に配布する際
は、
音声コードの位置がわかるように、
右下の点線部を丸く切り取ってください。
おんせい
みぎした てんせん ぶ まる き と
おんせい
り よう かた
い ち
さい
はい ふきりとりきりとり
ほか そう だん
でん わ
でん わ
SOSミニレターの他に、
「電話」、「メール」、「SNS」
で相談することもできるよ。
小学生用
https://www.jinken.go.jp/kodomo
メールで相談
そう だん
法務省のホームページでも相談を受け付けているよ。
ほう そう だん う つ
む しょう
子どもの人権
じん
こ けん
検 索
クリック!
けん さく
インターネッ
ト人権相談
じん けん そう だん
こちらからでも
アクセスできるよ
SOS -
eメール
SOS -
eメール
24時間受付
じ かん うけ つけ
SOSミニレター
SOSミニレター
子どもの人権
じん
こ けん
って?あなたの悩みを、
あなたの力になってくれる人が読んで必ず返事をくれる手紙だよ。
どんな悩みでもいいから、
この裏面に相談したいことを書いて、
気軽に送ってね。
お友達が困っているときも相談してね。
(切手はいらないよ!)
なや
うら
なや
とも だち こま
めん そう だん
そう だん きっ て
か き がる おく
ちから ひと よ かなら へん て がみじLINEでも相談を受け付けているよ。
そう だん う つ
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こちらから
友だち追加してください
LINEじんけん相談
LINEじんけん相談
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@snsjinkensoudan×ばつLINEじ ん け ん
相談
切り取って、
カードとして使ってね。
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つかってね!う〜ん・・・
1 困っていること、
悩んでいることが
ある人は・・・
こま
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ひと
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いじめられている
とも
暴力を受けて
悩んでいる
ぼう りょく う
なや
学校や家族、
その他のことで
悩みがある
がっこう か ぞく
なや
ほか
SNSや
インターネッ
トで
悪口を書き込まれた
わるくち か こ
2それをSOSミニ
レターに書いて、
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おく
3 手紙か電話で
あなたに返事が
来るよ!てくがみ でん わ
へん じ
例えば
たと
きたっ!みなさんの人権を守る仕事
をしている人権擁護委員や法
務局の職員が返事をするよ。
じん まも し
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じん けん
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よう ご い いんじごと
けん
どんな人が
返事をくれるの?
ひと
へん じ
人権ってなに?
じん けん
人権とは、
人が幸せに生きるための権利で、
みんなが生まれたときから持っている大切なものだよ。みんなが思いやりの心を持てば守られるものだよ。
でも、
言葉や暴力で傷つけられたり、
仲間外れにさ
れたりするのは、
人権が守られていないということ。
そんなときは、
このミニレターを使ってね。
じん けん も たい せつ
こころ も まも
じん けん つか
まも
ぼう りょ
く きず はず
こと ば なか ま
ひ と
おも
しあわ い う
けん り
東京法務局・東京都人権擁護委員連合会
とう きょう とう じん けん よう ご い いん れん ごう かい
きょう と
ほう む きょく
東京
東京法務局・東京都人権擁護委員連合会
とう きょ
う とう じん けん よう ご い いん れん ごう かい
きょ
う と
ほう む きょく2022 子どもの人権SOSミニレター 小学生版 表面
こどもの人権SOSミニレター(小学生向け) 3737第2章人権課題に対する取組トピックス
こども基本法
こどもや若者に関する施策については、従来、
「少子化社会対策基本法」
(平成15年
法律第133号)や「子ども・若者育成支援推進法」
(平成21年法律第71号)等に基づき、
政府を挙げて施策の充実を図ってきました。他方、
児童虐待の相談対応件数や不登校、
小中高生の自殺、ネットいじめの件数が過去最高水準となるなど、新型コロナウイル
スの流行が及ぼす影響ともあいまって、こどもや子育てを取り巻く環境は、厳しいも
のとなっています。
こうしたこどもを取り巻く厳しい環境等を背景に、令和3年12月21日に閣議決定さ
れた「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」において、常にこどもの視点
に立ち、こどもの最善の利益を第一に考え、こどもに関する取組・政策を我が国社会
の真ん中に据える「こどもまんなか社会」を目指すための新たな司令塔として、こど
も家庭庁を創設することが明記されました。これを受け、
「こども家庭庁設置法」(令和4年法律第75号)等が令和4年6月15日に成立し、令和5年4月1日から、こども
の権利利益の擁護等を任務とするこども家庭庁が設置されました。
こども家庭庁設置法等と併せて、こども施策を社会全体で総合的かつ強力に実施し
ていくための包括的な基本法としてこども基本法が成立し、令和5年4月1日に施行
されました。こども基本法は、次代の社会を担う全てのこどもが、生涯にわたる人格
形成の基礎を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成長することができ、こど
もの心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権利の擁護が図られ、将来
にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指し、こども政策を総合的
に推進することを目的としています。そして、
憲法や児童の権利条約の趣旨を踏まえ、
こども施策に通底する基本理念として、以下の六つを定めています。1 全てのこどもについて、個人として尊重されること・基本的人権が保障される
こと・差別的取扱いを受けることがないようにすること2 全てのこどもについて、適切に養育されること・生活を保障されること・愛さ
れ保護されること等の福祉に係る権利が等しく保障されるとともに、
「教育基本
法」
(平成18年法律第120号)の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与え
られること3 全てのこどもについて、年齢及び発達の程度に応じ、自己に直接関係する全て
の事項に関して意見を表明する機会・多様な社会的活動に参画する機会が確保
されること4 全てのこどもについて、年齢及び発達の程度に応じ、意見の尊重、最善の利益
が優先して考慮されること5 こどもの養育は家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的責任 3838
第2章 人権課題に対する取組
を有するとの認識の下、十分な養育の支援・家庭での養育が困難なこどもの養
育環境の確保6 家庭や子育てに夢を持ち、子育てに伴う喜びを実感できる社会環境の整備
こうした基本理念の下、常にこどもの視点に立ち、こどもの最善の利益を図るため
の司令塔であるこども家庭庁において、こども基本法に基づき、政府全体のこども施
策を更に強力に推進し、こどもの権利利益の擁護に取り組んでいきます。
こども家庭庁の概要
こども家庭庁の必要性、目指すもの
u こどもまんなか社会の実現に向けて、常にこどもの視点に立って、こども政策に強力かつ専一に取り組む独立した行政組織として、こどもと
家庭の福祉の増進・保健の向上等の支援、こどもの権利利益の擁護を任務とするこども家庭庁を創設
u 内部組織は、司令塔部門、成育部門、支援部門の3部門体制として、移管する定員を大幅に上回る体制を目指す。
u こどもにとって必要不可欠な教育は文部科学省の下で充実、こども家庭庁と文部科学省が密接に連携
強い司令塔機能
u 総理直属の機関として、内閣府の外局とし、一元的に企画・立案・総合調整(内閣補助事務)
u 各省大臣に対する勧告権等を有する大臣を必置化
u 総理を長とする閣僚会議を一体的に運営、大綱を一体的に作成・推進
法律・事務の移管・共管・関与
u 主としてこどもの福祉・保健等を目的とするものは移管
内閣府の子ども・若者育成支援及び子どもの貧困対策に関する事務や子ども・子育て本部が所掌する事務、
文部科学省の災害共済給付に関する事務、厚生労働省の子ども家庭局が所掌する事務や障害児支援に関する事務などを移管
u こどもの福祉・保健等とそれ以外の政策分野を含んでいるものは共管
u 国民全体の教育の振興等を目的とするものは、関係府省庁の所管としつつ、個別作用法に具体的な関与を規定するほか、総合調整
新規の政策課題や隙間事案への対応
u 各省庁の間で抜け落ちることがないよう必要な取組を行うとともに、新規の政策課題に取り組む
体制と主な事務
成育部門
Ø 妊娠・出産の支援、母子保健、成育医療等
Ø 就学前の全てのこどもの育ちの保障
(幼稚園教育要領、保育所保育指針の双方を文部科学省
とともに策定(共同告示) など)
Ø 相談対応や情報提供の充実、全てのこどもの居場所づくり
Ø こどもの安全
支援部門
Ø 様々な困難を抱えるこどもや家庭に対する年齢や制度の壁を克
服した切れ目ない包括的支援
Ø 児童虐待防止対策の強化、社会的養護の充実及び自立支援
Ø こどもの貧困対策、ひとり親家庭の支援
Ø 障害児支援
Ø いじめ防止を担い文部科学省と連携して施策を推進 など
Ø こどもの視点、子育て当事者の視点に立った政策の企画立案・総合調整
Ø 必要な支援を必要な人に届けるための情報発信や広報等
Ø データ・統計を活用したエビデンスに基づく政策立案と実践、評価、改善
企画立案・総合調整部門
こども家庭庁の概要
施行期日 u 令和5年4月1日 3939第2章人権課題に対する取組こども基本法の概要
こども基本法の概要
日本国憲法及び児童の権利に関する条約の精神にのっとり、次代の社会を担う全てのこどもが、生涯にわたる人格形成の基礎
を築き、自立した個人としてひとしく健やかに成⻑することができ、こどもの心身の状況、置かれている環境等にかかわらず、その権
利の擁護が図られ、将来にわたって幸福な生活を送ることができる社会の実現を目指して、こども施策を総合的に推進する。
目 的
1 全てのこどもについて、個人として尊重されること・基本的人権が保障されること・差別的取扱いを受けることがないようにすること
2 全てのこどもについて、適切に養育されること・生活を保障されること・愛され保護されること等の福祉に係る権利が等しく保障さ
れるとともに、教育基本法の精神にのっとり教育を受ける機会が等しく与えられること
3 全てのこどもについて、年齢及び発達の程度に応じ、自己に直接関係する全ての事項に関して意見を表明する機会・多様な
社会的活動に参画する機会が確保されること
4 全てのこどもについて、年齢及び発達の程度に応じ、意見の尊重、最善の利益が優先して考慮されること
5 こどもの養育は家庭を基本として行われ、父母その他の保護者が第一義的責任を有するとの認識の下、十分な養育の支援・
家庭での養育が困難なこどもの養育環境の確保
6 家庭や子育てに夢を持ち、子育てに伴う喜びを実感できる社会環境の整備
基本理念
白書・大綱
〇 年次報告(法定白書)、こども大綱の策定
((注記)少子化社会対策/子ども・若者育成支援/子どもの貧困対策の既存の
3法律の白書・大綱と一体的に作成)
基本的施策
〇 施策に対するこども・子育て当事者等の意見の反映
〇 支援の総合的・一体的提供の体制整備
〇 関係者相互の有機的な連携の確保
〇 この法律・児童の権利に関する条約の周知
〇 こども大綱による施策の充実及び財政上の措置等
こども政策推進会議
〇 こども家庭庁に、内閣総理大臣を会⻑とする、こども政策
推進会議を設置
1 大綱の案を作成
2 こども施策の重要事項の審議・こども施策の実施を推進
3 関係行政機関相互の調整 等
〇 会議は、大綱の案の作成に当たり、こども・子育て当事者・
⺠間団体等の意見反映のために必要な措置を講ずる
附則
施行期日:令和5年4月1日
検討:国は、施行後5年を目途として、基本理念にのっとった
こども施策の一層の推進のために必要な方策を検討
責務等
〇 国・地方公共団体の責務 〇 事業主・国⺠の努力
トピックス
保護者の信仰に起因したこどもの悩みの解決に向けた取組
「旧統一教会」問題に端を発して、社会的に問題となっている宗教2世・3世と呼
ばれるこどもや若者が抱える様々な悩みについては、
取り分け被害が潜在化しやすく、
法的トラブルに加え、精神的な困難や貧困など複合的であることから、これらの被害
を救済するため、関係各機関が緊密な連携を図りつつ、適切な対策を講じることとし
ています。
こどもは自ら声を上げることが困難であることから、虐待やいじめなどの具体的事
象を早期に発見し、救済につなげることが重要となります。また、潜在的な悩みをす
くい上げて救済につなげていくには、教育の役割も重要です。
厚生労働省では、市町村及び児童相談所の虐待対応の現場において適切に対応でき
るよう、保護者の信仰等を背景とするものであっても、こどもに身体的暴力を加える、
適切な食事を与えない、輸血を含め必要な医療を提供しないなどの行為は児童虐待に
該当することを周知徹底するとともに、具体的な対応の留意点を整理したQ&Aを作 4040
第2章 人権課題に対する取組
成しました。
文部科学省では、各都道府県教育委員会等に対し、学校においては宗教に関係する
ことのみを理由として消極的な対応をすることなく、課題を抱える児童生徒の早期発
見、早期支援・対応等に努めることや、児童生徒の心のケアを図る必要がある事案に
ついては、
学校内の関係者で情報を共有し、
スクールカウンセラーやスクールソーシャ
ルワーカーと共にチーム学校として教育相談に取り組むことを周知するとともに、大
学等も含めた各学校に対し、生徒・学生等から経済的支援に関する相談があった場合
には丁寧に対応するなど、生徒等に寄り添った対応を行うことなどを周知しました。
法務省の人権擁護機関においても、
「こどもの人権110番」、「こどもの人権SOSミニ
レター」及びSNSによる人権相談を端緒に、保護者の信仰に起因してこどもの権利・
利益が脅かされているといった相談があれば、これを的確に把握し、関係機関との連
携を含めて実効的な相談対応等を積極的に実施することとしています。教育の観点で
は、人権教室を始めとするこどもを対象とした啓発活動を推進することとしており、
特に、人権教室では、こどもが様々な権利の享有主体であることの認識を得ることが
できるよう、児童の権利条約に規定されている生命、生存及び発達に対する権利、こ
どもの最善の利益の考慮、こどもの意見の尊重及び差別の禁止等について周知すると
ともに、文部科学省とも連携し、保護者の信仰に起因した潜在的な悩みを相談できる
各種の窓口を案内しています。令和5年3月には、小学校低学年のこどもであっても
児童の権利条約を理解できるよう、同条約の各規定を平易に解説した啓発冊子「よく
わかる!こどもの権利条約」を発行し、法務省ホームページ内のこども向けページで
周知するとともに、法務局・地方法務局に配布し、人権教室等で積極的に活用するこ
ととしました。
法テラスでは、
「旧統一教会」問題やこれと同種の問題に関する相談に対応する「霊
感商法等対応ダイヤル」を設置し、こどもを含む相談者の悩みの内容等に応じて適切
な窓口を案内しています。同ダイヤルでは、心理的なケアを図りつつ悩みごとをこど
も等から丁寧に聴取できるよう、スクールカウンセラー等の経験を有する公認心理師
が、必要に応じ、相談に対応しています。
「旧統一教会」問題関係省庁連絡会議においても、こども・若者の救済に関する施
策として、こどもを守る地域ネットワークとしての要保護児童対策地域協議会を活用
し、個別事案について、重層的な支援を行っていくこととしています。
引き続き、こどもたちの「声なき声」を聞き漏らすことなく救済につなげていくた
めに、教育・啓発や相談体制の充実を図っていきます。 4141第2章人権課題に対する取組3 高齢者
我が国は、平均寿命の大幅な伸びや少子化等を背景として、人口の4人に1人が65歳以
上の者となっている。
このような中、介護者等による身体的・心理的虐待や、高齢者の家族等による本人の財
産の無断処分等の経済的虐待といった高齢者の人権問題が大きな社会問題となっている。
(1) 
高齢者についての理解を深め、高齢者が生き生きと暮らせる社会の実現を目指した啓
発活動
啓発動画「『誰か』のこと じゃない。
−支え合う共生社会の実現に向けて−」
法務省の人権擁護機関では、
「高齢者の人権を守ろう」を強調事項の一つとして掲げ、
講演会等の開催、啓発冊子の配布等、各種人権啓発活動を実施しており、高齢者虐待防
止等をテーマとした啓発動画「虐待防止シ
リーズ 高齢者虐待」を法務局・地方法務局
において貸し出しているほか、YouTube法
務省チャンネルで配信している。また、高齢
者を含む全ての人の人権が尊重される社会の
実現を訴える啓発動画についても、YouTube
法務省チャンネルで配信している。
(2) 高齢者福祉に関する普及・啓発
ポスター
「老人の日・老人週間」
厚生労働省では、令和4年9月15日の「老人の日」から21日までの1週間を「老人週
間」と定め、
「国民の間に広く老人の福祉についての関心と理解を深めるとともに、老
人に対し自らの生活の向上に努める意欲を促す」という趣旨にふさわしい行事が実施さ
れるよう、関係団体等に対する支援、協力、奨励等を都道府県等に依頼した。また、内
閣府、
消防庁、
全国社会福祉協議会等の主唱12団体は、
「みんなで築こう安心と活力ある健康長寿社会」を標
語とする
「令和4年
『老人の日・老人週間』
キャンペー
ン要綱」を定め、その取組を支援した。
また、令和元年6月に認知症施策推進関係閣僚会
議で取りまとめた「認知症施策推進大綱」に基づき、
認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる
社会を目指し、認知症の人や家族の視点を重視しな
がら、
「共生」と「予防」を車の両輪とした施策を推
進している。
令和4年度は、世界アルツハイマー月間(9月)
の機会を捉えた普及啓発の取組を都道府県等に依頼 4242
第2章 人権課題に対する取組
し、
全国で4,100件以上のイベントが開催された。また、
認知症に係る諸問題への対応が、
社会全体で求められているという共通認識の下、行政、経済団体、医療・福祉団体等が
協力して施策を推進していくための組織である「日本認知症官民協議会」において、令
和4年度は、これまで作成した「金融」
「住宅」
「小売」
「レジャー・生活関連」に加え、
認知症の方の生活に密接に関係する「図書館」
「薬局・ドラッグストア」
「運動施設」
「配
食等」の4業種における「認知症バリアフリー社会実現のための手引き」を作成した。
さらに、令和4年3月から、
「認知症バリアフリー宣言制度」を実施し、令和5年3月
現在で27社が宣言している。引き続き、宣言制度の普及に努めることとしている。
(3) 学校教育における高齢者・福祉に関する教育の推進
学校教育においては、学習指導要領に基づき、児童生徒が高齢社会の課題や高齢者に
対する理解を深めるため、ボランティア活動や高齢者との交流等の体験活動の充実が図
られている。
(4) 高齢者の学習機会の充実
平成30年に策定された「高齢社会対策大綱」においては、高齢者を含めた全ての人々
が生涯にわたって学習活動を行うことができるよう、学校や社会における多様な学習機
会の提供を図り、その成果の適切な評価の促進や地域活動の場での活用を図ることとし
ており、社会教育施設等においては、高齢者等を対象とした学習機会の提供が行われて
いる。
また、文部科学省では、高齢者が生涯学習を通じて地域づくりに主体的に参画するこ
とを促進するため、行政や各種団体等で社会教育に携わる者を対象に、学びを通じた社
会参画の実践による社会的孤立の予防・解消を図る方策を共有した。
(5) ボランティア活動等、高齢者の社会参加の促進と世代間交流の機会の充実
内閣府では、高齢者の社会参加や世代間交流を促進するため、令和4年10月に「高齢
社会フォーラム」を愛知県名古屋市で開催した。
また、年齢に捉われず、自らの責任と能力において自由で生き生きとした生活を送る
高齢者(エイジレス・ライフ実践者)や社会参加活動を積極的に行っている高齢者の団
体等を毎年広く紹介しており、
令和4年度は、
個人55人及び40団体を選考し、
内閣府ホー
ムページ等を通じて、社会参加活動等の事例を広く国民に紹介する事業を実施した。
(6) 高齢者の雇用・多様な就業機会確保のための啓発活動
厚生労働省では、求人の募集・採用に当たっては、年齢ではなく求職者一人一人の経
験や適性、能力等を判断するべきであるとの趣旨から、現在、
「労働施策の総合的な推
進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」
(昭和41年法律第132 4343第2章人権課題に対する取組号。以下「労働施策総合推進法」という。
)により、ハローワークを始め、求人広告、
民間の職業紹介会社、インターネット等、全ての求人募集において、厚生労働省令が定
める例外事由に該当する場合を除いては、求人の年齢制限を原則禁止し、年齢に関わり
なく応募の機会が開かれるよう努めている。
また、60歳以上の高齢者に限定して募集採用する場合には、厚生労働省令が定める例
外事由として、年齢制限をすることを許容し、高齢者の雇用を促進することとしている。
(7) 高齢者の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
法務省の人権擁護機関では、法務局・地方法務局又はその支局において人権相談に応
じており、全国共通人権相談ダイヤル「みんなの人権110番」
(ナビダイヤル0570-003-
110(全国共通)
)を設置している。また、高齢者に接する機会が多い社会福祉事業従事
者等に対し、人権相談を広報するためのリーフレットを配布したほか、老人福祉施設等
の社会福祉施設において、入所者及びその家族が気軽に相談することができるよう、特
設の人権相談所を開設するなどして、相談体制の一層の強化を図っている。人権相談等
を通じて、高齢者に対する虐待等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、人権
侵犯事件として調査を行い、事案に応じた適切な措置を講じている。
人権侵犯事件数(開始件数) 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
高齢者に対する暴行・虐待 319 251 185 131 81
高齢者福祉施設における人権侵犯 42 31 23 16 23
(法務省人権擁護局の資料による) 4444
第2章 人権課題に対する取組
4 障害のある人
障害のある人を含む全ての人々にとって住みよい平等な社会づくりを進めていくために
は、国や地方公共団体が障害のある人に対する各種施策を実施していくだけでなく、社会
の全ての人々が障害のある人について十分に理解し、必要な配慮をしていくことが求めら
れている。
我が国では、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく相互に人格と個
性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、平成30年3月に閣議決定した「障害
者基本計画(第4次)
」に基づき、障害のある人の自立及び社会参加の支援等のための施
策の総合的かつ計画的な推進を図ってきた。令和5年3月14日には、
「障害者基本計画(第
5次)
」を閣議決定し、引き続き関係府省庁が連携し、障害者基本計画に基づく施策を着
実に実施していくこととしている。
平成28年4月には「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」
(平成25年法律
第65号。以下「障害者差別解消法」という。
)が施行され、
各行政機関等や事業者において、
不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供を始めとする障害を理由とする差別の解消
に向けた取組が行われている。また、令和3年6月には、事業者に対し合理的配慮の提供
を義務付けるとともに、行政機関相互間の連携の強化を図るほか、障害を理由とする差別
を解消するための支援措置を強化する措置を講ずることを内容とする同法の改正法が公布
された。その施行期日は令和6年4月1日とされており、改正法の施行に向けて、政府全
体の方針である基本方針を令和5年3月に変更した(
「障害を理由とする差別の解消の推
進に関する基本方針」
(令和5年3月14日閣議決定))。
平成29年2月には、2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会を
契機として全国のユニバーサルデザインの取組を推進していくため、様々な障害者団体等
の参画を得ながら「ユニバーサルデザイン2020行動計画」を決定し、
この行動計画を基に、
関係省庁等が共生社会の実現に向けた諸政策を推進してきた。また、障害のある人の視点
を施策に反映させる枠組みとして、構成員の過半を障害のある人又はその支援団体が占め
る「ユニバーサルデザイン2020評価会議」を設置し、令和3年11月に開催された同会議に
おいては、大会のレガシーとして各主体が連携を図りつつ取組を継続していくことが期待
されるとの総括が行われた。
加えて、平成30年12月には、ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策を総合的かつ一体
的に推進することを目的とした「ユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の総合的かつ一
体的な推進に関する法律」
(平成30年法律第100号)が公布・施行され、同法に基づき、毎
年1回、政府が講じたユニバーサル社会の実現に向けた諸施策の実施状況を取りまとめて
公表している。 4545第2章人権課題に対する取組(1) 共生社会を実現するための啓発・広報等
ポスター「障害者週間」
障害の有無にかかわらず、誰もが相互に人格と個
性を尊重し、支え合う「共生社会」の理念の普及を
図るため、
「障害者基本法」
(昭和45年法律第84号)
では、毎年12月3日から9日までの期間を「障害者
週間」と定めており、この期間を中心に、国、地方
公共団体が民間団体等と連携し、全国各地で様々な
行事や取組を集中的に開催している。
内閣府では、多様な媒体による広報・周知を行っ
たほか、
全国から募集した「心の輪を広げる体験作文」
及び「障害者週間のポスター」の最優秀賞受賞者や
おおむね5年に1度実施している「障害者関係功労
者表彰」受賞者に対する内閣総理大臣表彰のほか、
障害者関係団体等による障害又は障害のある人をテーマとするオンラインセミナーや
ワークショップの開催等、
国民意識の向上に向けた取組を行った(詳細は「障害者白書」
に記載)。(2) 障害を理由とする偏見・差別の解消を目指した啓発活動
ア 法務省の人権擁護機関では、
「障害を理由とする偏見や差別をなくそう」を強調事
項の一つとして掲げ、講演会等の開催、啓発冊子の配布等、各種人権啓発活動を実施
している。
令和4年度には、啓発冊子「障害のある人と人権〜誰もが住みよい社会をつくるた
めに〜」
について、
令和3年6月の障害者差別解消法の改正等を踏まえた改訂を行った。
また、同名の啓発動画、障害のある人の人権問題を含めた職場における各種人権問
題について解説した啓発冊子及び啓発動画「企業と人権〜職場からつくる人権尊重社
会〜」、様々な人権問題を自分の問題として考えることを呼び掛ける啓発動画「
『誰か』
のこと じゃない。
(障害のある人編)」、障害のある人を含む全ての人の人権が尊重
される社会の実現を訴える啓発動画等の様々な啓発資料について、法務局・地方法務
局での配布や貸出し、YouTube法務省チャンネルでの配信等を行っている。
なお、啓発冊子「人権の擁護」を始めとする各種啓発資料には、音声コードを導入
し、視覚障害のある人が利用することができるよう工夫を施している。
令和5年2月9日には、
「共生社会と人権に関するシンポジウム〜今、企業に求め
られること〜」をオンライン開催し、企業等における障害者雇用をテーマの一つとし
て取り上げ、障害者雇用に積極的な企業の取組を紹介するとともに、その内容を広く
周知するため、採録記事を作成して新聞広告を実施した。
さらに、法務局・地方法務局においては、社会福祉協議会などと連携し、車椅子体 4646
第2章 人権課題に対する取組
験、パラリンピアンによる講話、障害者スポーツ体験(ボッチャ、車椅子バスケット
ボール等)等と、障害のある人の人権や「心のバリアフリー」に関する人権擁護委員
による人権教室とを組み合わせた人権啓発活動を全国各地で実施した。
啓発動画「
『誰か』のこと じゃない。」啓発冊子
「障害のある人と人権〜誰もが住み
よい社会をつくるために〜
〈改訂版〉」「共生社会と人権に関する
シンポジウム」
イ 厚生労働省では、
「身体障害者補助犬法」
(平成14年法律第49号)の趣旨及び補助犬
の役割等についての一層の周知を目的として、ポスター、パンフレット、ステッカー
等の作成・配布や、ホームページの開設を行っている(https://www.mhlw.go.jp/
stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/hojoken/index.html)。(3) 精神障害者に対する偏見・差別の是正のための啓発活動
厚生労働省では、
こころの健康に関する総合サイトである「みんなのメンタルヘルス」
や、地域住民等に対して精神保健福祉に関する知識の普及等を行う「精神保健福祉普及
運動」等を活用して、精神疾患についての正しい理解が広まるよう、情報発信を行って
いる。
また、10月10日「世界メンタルヘルスデー(国際記念日)
」に合わせて、厚生労働省
では、精神疾患やメンタルヘルスについて、国民に関心を持ってもらうきっかけとして、
令和元年から精神障害者に対する理解を深めるための啓発イベントなどを開催してお
り、令和4年においては、アスリートやピアサポーターと専門家による対談をオンデマ
ンドで配信するなどのイベントを実施した。 4747第2章人権課題に対する取組世界メンタルヘルスデー 2022
(厚生労働省ホームページ)
世界メンタルヘルスデー 2022
イベントポスター
世界メンタルヘルスデー 2022
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(4) 特別支援教育の充実及び障害のある人に対する理解を深める教育の推進
ア 障害のあるこどもと障害のないこどもが可能な限り共に教育を受けられるように条
件整備を行うとともに、障害のあるこどもの自立と社会参加を見据え、一人一人の教
育的ニーズに最も的確に応える指導を受けることができるよう、多様な学びの場を整
備することが大切である。文部科学省では、
「新しい時代の特別支援教育の在り方に
関する有識者会議報告」
(令和3年1月)などを踏まえ、以下の取組を進めている。
1 障害のあるこどもの就学先決定に関する「障害のある子供の教育支援の手引」の
改訂・周知
2 障害のあるこどもと障害のないこどもとの交流及び共同学習の推進や「心のバリ
アフリーノート」の活用促進
3 特別支援学校の教育環境を改善するための「特別支援学校設置基準」の策定(令
和3年9月24日公布)4 「特別支援教育を担う教師の養成の在り方等に関する検討会議報告」を踏まえた
取組の推進や、独立行政法人国立特別支援教育総合研究所における、教師の専門性
向上のための研修や講義配信の実施等、特別支援教育を担う教師の専門性向上を図
る施策の実施
5 障害のあるこどもの学校における日常生活上・学習活動上のサポートを行う「特
別支援教育支援員」や医療的ケアを行う「医療的ケア看護職員」に関する法令上の
位置づけや財政支援等を通した、特別支援教育における支援スタッフの配置促進
6 小・中学校における障害に応じた特別の指導(通級による指導)を担当する教員
の定数について、平成29年度から基礎定数化し、また、平成30年3月に「公立高等
学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律施行令」
(昭和37年政令第215
号)を改正し、平成30年度から公立高等学校における障害に応じた特別の指導(通
級による指導)のための加配定数措置を可能とするなど、特別支援教育への対応の 4848
第2章 人権課題に対する取組
ための教職員定数の改善イ 「障害者の権利に関する条約」
(平成26年条約第1号。以下「障害者権利条約」とい
う。
)の批准や障害者差別解消法の施行等を踏まえ、誰もが、障害の有無にかかわら
ず共に学び、生きる共生社会を実現することが重要である。文部科学省では、障害の
ある人が、一生涯を通じ、本人の希望する学習を主体的・継続的に行うことができる
ようにするための環境整備と、障害の有無にかかわらず、共に学ぶ場づくり、障害に
関する理解促進に取り組んでいる。
平成30年度から「学校卒業後における障害者の学びの支援に関する実践研究事業」
として、学校から社会への移行期や人生の各ステージにおける効果的な生涯学習プロ
グラムや実施体制等に関する実践研究、生涯を通じた共生社会の実現に関する調査研
究を行っており、研究成果を順次普及することとしている。令和4年度は、都道府県
が中心となり市区町村や特別支援学校、社会福祉法人等が参画する「地域コンソーシ
アムによる障害者の生涯学習支援体制の構築」
、市区町村と民間団体が連携して障害
者を包摂する生涯学習プログラムを開発する「地域連携による障害者の生涯学習機会
の拡大促進」に加えて、社会への移行期における知的障害者等を対象とした学びのモ
デル構築に取り組む「大学・専門学校等における生涯学習機会創出・運営体制のモデ
ル構築」を新たなメニューとして追加し、実践研究を行っている。令和元年度から、
実践研究事業の成果の普及や、障害に関する理解の促進、支援者同士の学び合いによ
る学びの場の担い手の育成、障害のある人の学びの場の拡大を目指し、
「共に学び、
生きる共生社会コンファレンス」を主催し、令和4年度は全国7ブロック12か所で開
催した。
また、障害のある人の生涯を通じた多様な学習を支える活動を行う個人又は団体に
対し、その功績をたたえる文部科学大臣表彰として、令和4年度は56件の対象者を決
定し、令和4年12月にオンラインを併用した表彰式を開催した。例年実施している事
例発表会については、四つの事例について動画を収録し、後日ウェブ配信した。さら
に、同年11月には、障害の有無にかかわらず共に学び、生きる共生社会の実現に向け
た啓発として、
「超福祉の学校@SHIBUYA 〜障害の有無を飛び超えて、つながる学
び舎〜」を、特定非営利活動法人ピープルデザイン研究所との共催で東京都渋谷区に
て開催した。
(5) 発達障害者への支援
ア 厚生労働省では、平成19年12月に、毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」とする
決議が国連で採択されたことを受け、一般社団法人日本自閉症協会との共催でシンポ
ジウムを開催するなど、自閉症を始めとした発達障害に関する正しい知識の浸透を
図っている。全国各地においても、
世界自閉症啓発デーや4月2日から8日までの
「発
達障害啓発週間」において、様々な啓発活動が実施されている。 4949第2章人権課題に対する取組また、
「発達障害情報・支援センター」を設置し、発達障害者支援に関する調査・
研究及び支援手法の普及や国民の理解の促進を図っている。発達障害者の暮らしや支
援に関連する教育や福祉、医療、保健、労働等、様々な分野にまたがる情報を国民へ
提供するため、発達障害ナビポータル(https://hattatsu.go.jp/)を、文部科学省と
厚生労働省の協力の下、発達障害教育推進センター(独立行政法人特別支援教育総合
研究所)と発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)
が共同で構築し、令和3年4月から運用を開始した。
発達障害ナビポータル
ポスター
「世界自閉症啓発デー」
近年の共生社会の実現に向けた新たな取組が進められている状況に鑑み、発達障害
者の支援をより一層充実させるた
めの所要の処置を講じる「発達障
害者支援法の一部を改正する法律」
(平成28年法律第64号)が平成28年
5月25日に成立した。本改正によ
り、国及び地方公共団体がライフ
ステージを通じた切れ目のない支
援を実施することや、家族等も含
めたきめ細やかな支援を推進し、
発達障害者及びその家族が身近な
場所で支援が受けられる体制を構
築することなどが定められた。
イ 発達障害の可能性も含め、特別な教育的支援を必要とする児童生徒が通常の学級に
も一定の割合で在籍していることが令和4年に実施した調査で明らかになった。その
ため、早期に発見し、切れ目ない支援を行うことが大切であるとともに、全ての教師
が発達を含む障害に関する一定の知識・技能を有していることが必要とされている。
文部科学省では、小・中学校、高等学校等における発達障害の可能性のある児童生
徒等に対する支援の充実につなげるため、上記4(4)アの取組に加え、令和2年度から、
発達障害の可能性のある児童生徒等に対する指導経験の浅い教師の専門性向上を図る
ため、研修等の機会の充実や指導・助言等のサポート体制の整備等、関係機関とも連
携した支援体制の構築に取り組む事業を、さらに、令和3年度からは、障害による学
習上又は生活上の困難を改善・克服するための自立活動や通級による指導について、
学びの保障や指導の質の向上等の観点から、ICTを活用した自立活動の効果的な指導
の在り方の調査研究を実施している。本事業を通して得られた成果について、今後取
りまとめ、周知を図る予定である。
(6) 障害のある人の雇用の促進等
ア 障害のある人の雇用については、
「障害者の雇用の促進等に関する法律」
(昭和35年 5050
第2章 人権課題に対する取組
法律第123号。以下「障害者雇用促進法」という。
)等に基づき、職業を通じた社会参
加を進めていくことができるよう、各般の施策を推進してきた。
平成25年の障害者雇用促進法改正では、雇用の分野における障害者に対する差別の
禁止及び障害者が職場で働くに当たっての支障を改善するための措置を規定し、平成
27年3月には「障害者に対する差別の禁止に関する指針」及び「雇用の分野における
障害者と障害者でない者との均等な機会の確保等に関する指針」の策定等を行うこと
で、障害者と障害者でない者との均等な機会及び待遇の確保並びに障害者の有する能
力の有効な発揮を図ってきた。
令和5年の障害者雇用促進法改正では、多様な就労ニーズへの対応や雇用の質の向
上の推進を図る観点から、事業主の責務として、障害者の職業能力の開発及び向上に
関する措置を行うことの明確化、特に短い時間(週所定労働時間10時間以上20時間未
満)で働く重度の障害者及び精神障害者の実雇用率における算定、雇入れや雇用継続
を図るために必要な一連の雇用管理に関する相談援助の支援や加齢に伴い職場への適
応が困難となった障害者への雇用継続の支援に関する助成金の新設等が盛り込まれ、
令和5年4月以降、順次施行される予定である。
これらに加え、厚生労働省では、ハローワークが中心となって、地域の関係機関と
連携し、障害のある人と事業主双方に対して、就職準備段階又は募集の準備段階から
職場定着までの一貫したチーム支援、障害者就業・生活支援センターにおける就業面
と生活面の一体的な支援、精神障害者、発達障害者、難病患者等の多様な障害特性に
対応した就労支援等を実施している。
イ 障害のある人が日頃培った技能を互いに競い合うことにより、その職業能力の向上
を図るとともに、企業や社会一般の人々が障害のある人に対する理解と認識を深め、
その雇用の促進を図ることを目的として、
「全国障害者技能競技大会」
(アビリンピッ
ク)を開催している。
直近では、令和4年11月4日から6日までの間、独立行政法人高齢・障害・求職者
雇用支援機構の主催により、第42回大会が千葉県で開催された。
(7) 障害者虐待防止の取組
障害のある人に対する虐待を防止することは尊厳の保持のために極めて重要であるこ
とに鑑み、
「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」
(平成23
年法律第79号)が平成24年10月に施行された。
この法律においては、何人も障害者を虐待してはならないことや、虐待を受けたと思
われる障害者を発見した場合には速やかに通報すること等が規定されている。地方公共
団体は障害者虐待の対応窓口となる「市町村障害者虐待防止センター」や「都道府県障
害者権利擁護センター」としての機能を果たすこととされており、各センターでは、障
害者虐待の通報・届出の受理に加え、相談や指導・助言を行うほか、国民の理解の促進 5151第2章人権課題に対する取組を図るため、障害者虐待防止の広報・啓発等を行っている。
わかりやすい障害者虐待防止法
パンフレット
厚生労働省では、地方公共団体が関係機関
との連携の下、障害者虐待の未然防止や早期
発見、迅速な対応等を行えるよう、障害者虐
待防止対策支援等の施策を通じて、支援体制
の強化や地域における関係機関等との協力体
制の整備等を図るとともに、障害のある人の
権利擁護等に係る各都道府県における指導的
役割を担う者の養成研修等を実施している。
また、障害者虐待防止法の一層の広報・啓
発を目的としてパンフレットを作成し、ホー
ムページで公開している。
(8) 旧優生保護法に関する取組
昭和23年に制定され、平成8年に廃止された旧優生保護法に基づき、多くの方々が、
特定の疾病や障害を有すること等を理由として、生殖を不能にする手術又は放射線の照
射を強いられ、心身に多大な苦痛を受けてきたことに対し、平成31年4月24日に、議員
立法により「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関
する法律」
(平成31年法律第14号)が成立し、公布・施行された。
また、同日、内閣総理大臣談話及び厚生労働大臣談話において、多くの方々が生殖を
不能にする手術等を受けることを強いられ、
心身に多大な苦痛を受けてきたことに対し、
政府としての深い反省とおわびが示された。
厚生労働省では、同法に基づき、旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた方に対し
て、一時金の支払を行っている。また、一時金の支給対象者が確実に請求を行うことが
できるよう、手話・字幕付きの動画や点字版リーフレットを作成し、特設サイト、新聞
広告、インターネット広告、ラジオ広告等により制度の周知に取り組んでいる。
(9) 障害者権利条約の締結及び周知
我が国は、平成26年1月20日に障害者権利条約を締結した。同条約は、障害のある人
の人権や基本的自由を確保し、障害のある人の固有の尊厳の尊重を促進するため、障害
のある人の権利の実現のための措置等を規定し、市民的・政治的権利、教育・保健・労
働・雇用の権利、社会保障、余暇活動へのアクセスなど、様々な分野における取組を締
約国に対して求めている。同条約では、各締約国が、
「条約に基づく義務を履行するた
めにとった措置及びこれらの措置によりもたらされた進歩に関する包括的な報告」を障
害者権利委員会に提出することを定めており(第35条)
、特に初回の報告については、
条約発効後2年以内の提出が求められている。我が国も、障害者政策委員会における議 5252
第2章 人権課題に対する取組
論やパブリックコメントを踏まえて第1回政府報告を作成し、
平成28年6月に提出した。
令和4年8月22日及び23日、国連欧州本部(スイス(ジュネーブ)
)にて、我が国に対
する同条約の第1回政府報告の対面審査が行われた。これを踏まえた障害者権利委員会
による総括所見については、同年9月9日にアドバンス版が公表され、その後、同年10
月7日に確定版が公表されている(詳細は「障害者白書」に記載)。また、同条約の実施のためには、障害のある人に関する社会全体の意識向上が重要で
あり、外務省では、関係府省庁とも連携し、障害当事者を含む国民全体に対し、条約の
概要や意義等について、分かりやすく、利用しやすいパンフレットやホームページの作
成を通じて広報している。
(10) 障害のある人の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
法務省の人権擁護機関では、法務局・地方法務局又はその支局において、人権相談に
応じており、全国共通人権相談ダイヤル「みんなの人権110番」
(ナビダイヤル0570-003-
110(全国共通)
)を設置している。また、障害のある人に接する機会が多い社会福祉事
業従事者や特別支援学校高等部卒業予定者等に対し、人権相談を広報するためのリーフ
レットを配布したほか、障害者支援施設等の社会福祉施設において、入所者及びその家
族が気軽に相談することができるよう、特設の人権相談所を開設するなどして、相談体
制の一層の強化を図っている。人権相談等を通じて、障害のある人に対する差別、虐待
等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、事
案に応じた適切な措置を講じている。
人権侵犯事件数(開始件数) 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
障害のある人に対する差別待遇 235 163 125 112 107
障害者福祉施設における人権侵犯 40 38 28 22 27
(法務省人権擁護局の資料による) 5353第2章人権課題に対する取組5 部落差別(同和問題)
部落差別(同和問題)は、日本社会の歴史的過程で形作られた身分差別により、日本国
民の一部の人々が、長い間、経済的、社会的、文化的に低い状態に置かれることを強いら
れ、同和地区と呼ばれる地域の出身者であること等を理由に結婚を反対されたり、就職等
の日常生活の上で差別を受けたりするなどしている、我が国固有の人権問題である。
この問題の解決を図るため、国は、地方公共団体と共に、昭和44年から33年間、特別措
置法に基づき、地域改善対策を行ってきた。その結果、同和地区の劣悪な環境に対する物
的な基盤整備は着実に成果を上げ、一般地区との格差は大きく改善された。
しかしながら、インターネット上の差別書き込み等の事案は依然として存在している。
部落差別(同和問題)については、部落差別解消推進法及び附帯決議のほか、
「部落差
別の実態に係る調査結果報告書」の調査結果(令和2年6月)
(https://www.moj.go.jp/
JINKEN/jinken04_00127.html)を踏まえ、的確に対応していく必要がある。
(1) 部落差別(同和問題)の解消に向けた啓発活動
法務省の人権擁護機関では、
「部落差別(同和問題)を解消しよう」を強調事項の一
つとして掲げ、講演会等の開催、啓発冊子の配布等、各種人権啓発活動を実施している。
また、
「部落差別解消推進法リーフレット」の配布や、啓発動画「人権アーカイブ・
シリーズ『同和問題〜過去からの証言、
未来への提言〜』/『同和問題 未来に向けて』」の法務局・地方法務局における貸出し、YouTube法務省チャンネルでの配信を行って
いる。
加えて、
様々な人権問題を自分の問題として考えることを呼び掛ける啓発動画「『誰か』
のこと じゃない。
(部落差別(同和問題)編)
」や、スポット映像「出身地等の差別」
篇をYouTube法務省チャンネルで配信している。
啓発動画「
『誰か』のこと じゃない。」(2) 学校教育・社会教育を通じた部落差別(同和問題)の解消に向けた取組
文部科学省では、各都道府県教育委員会等の人権教育担当者を対象とした会議や独立
行政法人教職員支援機構が実施する人権教育推進研修等において、部落差別解消推進法 5454
第2章 人権課題に対する取組
の趣旨や部落差別(同和問題)を解消するための教育活動等について情報提供するなど、
各種機会を通じて周知を図っている。
また、社会教育では、専門的職員である社会教育主事の資格付与のための講習や社会
教育の専門的職員を対象とした研修において、人権教育に関するプログラムを実施して
おり、人権教育の着実な推進を図っている。
(3) 公正な採用選考システムの確立
厚生労働省では、企業の採用選考に当たって、人権に配慮し、応募者の適性・能力に
基づいた基準により採否を決める公正な採用選考システムの確立が図られるよう、雇用
主に対して、以下の啓発に取り組んだ。
1 事業所における公正な採用選考システムの確立について、
中心的な役割を果たす
「公
正採用選考人権啓発推進員」を、一定規模以上の事業所に配置するとともに、各労働
局及びハローワークが、同推進員に対して研修会を開催((注記))
2 従業員の採用選考に影響力のある企業トップクラスに対する研修会を開催((注記))
3 公正な採用選考についてのパンフレット、リーフレット、ポスター、カレンダー等、
各種啓発資料を作成し、事業所に配布
4 公正採用選考に関する特設ウェブサイトの運用、公正採用選考について解説した啓
発用動画の掲載
5 中学校、高等学校、大学等の卒業予定者に係る採用選考に合わせて、新聞広報等を
通じた啓発活動を実施
(注記) 新型コロナウイルス感染症感染拡大防止のため、集合型の研修を中止した各労働局
及びハローワークにおいては、資料送付や各労働局及びハローワークのホームページ
へ解説動画を掲載するなどの代替措置を実施
パンフレット
「公正な採用選考をめざして」
PS������就��
応募者に広く門戸を開き、本人の適性・能力に基づいた
公正な採用選考を行いましょう!
本人に責任のない事項や本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)を把握すること、身元調査
などを実施することは、就職差別につながるおそれがあります。
「家族構成」 「親の職業」出身はどこ?親の職業は?何人兄弟?・・・その質問・・・「面接」で必要?面接時の会話の中で、
つい や などを聞いてしまいがちですが、
それは不適切です。
ポスター
「その質問 面接で必要?」
(4) 農漁協等関係農林漁業団体職員に対する啓発活動
農林水産省では、農林漁業や農山漁村における部落差別(同和問題)を始めとした広 5555第2章人権課題に対する取組範な人権問題に関する啓発活動を積極的に推進するため、都道府県を通じて農漁協等関
係農林漁業団体の職員に対する研修等を実施するとともに、全国農林漁業団体が当該職
員等を対象に行う同様の研修等に対する支援を実施した。
(5) 隣保館における活動の推進
厚生労働省では、生活上の各種相談事業や人権課題の解決のための各種事業を実施し
ている隣保館の事業に対し支援を行っている。
(6) えせ同和行為の排除に向けた取組
部落差別(同和問題)を口実にして企業や官公署等に不当な利益や義務のないことを
求めるえせ同和行為は、
部落差別(同和問題)の解消を阻む要因となっている。政府は、
えせ同和行為を排除するため、関係府省庁の参加する「えせ同和行為対策中央連絡協議
会」を設置し、政府一体となってえせ同和行為の排除の取組を行っている。
ア 法務省では、えせ同和行為の実態を把握するため、昭和62年以降11回にわたりアン
ケート調査を実施している(直近の平成30年度の調査結果は、https://www.moj.
go.jp/content/001290375.pdf)
。また、えせ同和行為への具体的な対応に関する手引を
作成し、全国の法務局・地方法務局で配布するとともに、法務省ホームページで公表
している(https://www.moj.go.jp/content/001361670.pdf)。さらに、地方においても、全国50の法務局・地方法務局を事務局として組織されて
いる「えせ同和行為対策関係機関連絡会」に、令和5年4月現在で1,098の国の機関、
地方公共団体、弁護士会等が参加し、随時、情報交換のための会議を開くなど、様々
な取組を展開している。
加えて、えせ同和行為を含めた各種人権問題について解説した啓発冊子及び啓発動
画「企業と人権〜職場からつくる人権尊重社会〜」を作成し、法務局・地方法務局で
の配布や貸出し、YouTube法務省チャンネルでの配信等を行っている。
平成30年度 令和元年度 令和2年度 令和3年度 令和4年度
えせ同和行為に関する相談件数 14 5 7 11 8
(法務省人権擁護局の資料による)
要求の内容 物品 示談金 融資 寄付金 賛助金 契約 下請 講演会 その他 合計
令和4年度 2 0 0 2 0 1 0 0 3 8
令和3年度 3 0 1 2 0 2 0 0 3 11
令和2年度 6 0 0 0 0 0 1 0 0 7
令和元年度 2 1 0 0 0 0 0 1 1 5
平成30年度 9 0 0 2 0 0 1 0 2 14
(法務省人権擁護局の資料による)
イ 都道府県警察においても、関係機関と連携して、違法行為の取締り等、えせ同和行 5656
第2章 人権課題に対する取組
為の排除対策を推進している。
ウ 経済産業省では、中小企業・小規模事業者等に対して「えせ同和行為をはじめとす
る不当要求行為対策セミナー」を開催するとともに、えせ同和行為対策に関するリー
フレットを配布した。
(7) 部落差別(同和問題)をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
法務省の人権擁護機関では、部落差別(同和問題)をめぐる人権侵害事案に対し、人
権相談及び人権侵犯事件の調査・処理を通じ、その被害の救済及び予防を図っている。
取り分け、結婚差別、差別発言等を人権擁護上見過ごすことができない事象として捉え、
行為者や関係者に対して人権尊重の意識を啓発することによって、自発的・自主的に人
権侵害の事態を改善、停止、回復させ、あるいは、将来再びそのような事態が発生しな
いよう注意を喚起している。
また、関係行政機関からの通報等により、インターネット上で特定の地域を同和地区
であると指摘するなどの内容の情報を認知した場合は、その情報の削除をプロバイダ等
に要請するなどしている。
人権侵犯事件数(開始件数) 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
部落差別(同和問題)に関する
人権侵犯
92 221 244 308 433
(法務省人権擁護局の資料による) 5757第2章人権課題に対する取組6 アイヌの人々
アイヌの人々は、固有の言語や伝統的な儀式・祭事、
「ユカラ」などの多くの口承文芸等、
独自の豊かな文化を持っているが、近世以降のいわゆる同化政策等により、今日では、そ
の文化の十分な保存・伝承が図られているとは言い難い状況にある。特に、アイヌ語を理
解し、アイヌの伝統等を担う人々の高齢化が進み、これらを次の世代に継承していく上で
の重要な基盤が失われつつある。
アイヌの人々が民族としての誇りを持って生活することができ、その誇りが尊重される
社会の実現に向けて、アイヌ政策を総合的かつ継続的に実施していく必要がある。
(1) アイヌの人々に関する総合的な政策の推進
政府は、国連総会で採択された「先住民族の権利に関する国際連合宣言」
(平成19年
9月)や衆参両院の「アイヌ民族を先住民族とすることを求める決議」
(平成20年6月)
を受けて内閣官房長官が開催した「アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会」による
報告(平成21年7月)を踏まえ、総合的かつ効果的なアイヌ政策を推進している。
平成31年4月には、
「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の
推進に関する法律」
(平成31年法律第16号。以下「アイヌ施策推進法」という。
)が成立
し、令和元年5月に施行された。政府は、同法に基づき、従来の文化振興や福祉政策に
加え、地域振興、産業振興、観光振興等を含めた市町村の取組をアイヌ政策推進交付金
により支援するとともに、内閣官房長官を本部長とするアイヌ政策推進本部会合を開催
するなど、アイヌ政策を総合的かつ効果的に推進している。
令和2年7月には、アイヌ文化の復興・創造等の拠点として、北海道白老郡白老町の
ポロト湖畔に「民族共生象徴空間」
(愛称:ウポポイ)が開業しており、令和4年度は
約37万人が来場した。
(2) アイヌ文化の振興、アイヌの伝統等に関する知識の普及啓発
文化庁や国土交通省等では、アイヌ施策推進法に基づき、公益財団法人アイヌ民族文
化財団が行うアイヌ文化の振興等に係る事業に対して助成等を行った。
また、アイヌ語の保存・継承及び学習に資するアーカイブ作成のために、文化庁では、
平成27年度から「アイヌ語のアーカイブ作成支援事業」及び「アイヌ語アナログ音声資
料のデジタル化事業」を、平成30年度からは「アイヌ語アーカイブ作成推進のための人
材育成事業」を実施している。さらに、アイヌ語を含む我が国の言語・方言の置かれて
いる危機的な状況等を周知して危機的な状況の改善に資するために、
「危機的な状況に
ある言語・方言サミット」を平成27年度から開催している。令和4年度は、鹿児島県大
島郡知名町(沖永良部島)において、対面式とオンライン配信を併用して開催した。 5858
第2章 人権課題に対する取組
(3) アイヌ関係の文化財の保護等に関する取組
文化庁では、
「文化財保護法」
(昭和25年法律第214号)に基づき、アイヌの有形及び
無形の民俗文化財について、北海道教育委員会が行う調査事業、伝承・活用等に係る経
費について補助を行った。
(4) アイヌの人々に対する偏見・差別の解消に向けた取組
アイヌ施策推進法では、アイヌの人々に対する差別の禁止に関する基本理念が定めら
れている。
法務省の人権擁護機関では、
「アイヌの人々に対する偏見や差別をなくそう」を強調
事項の一つとして掲げ、アイヌの人々に対する国民の理解を促すよう、インターネット
広告、SNSにおける情報発信に加え、令和4年度においては、アイヌの人々の人権に関
する啓発動画「アコロ青春 a=kor アコロ〔アイヌ語で「私たちの」〕」を制作し、
YouTube法務省チャンネルで配信するなどの各種人権啓発活動を実施している。
また、アイヌの人々に関する人権相談について、法務局と北海道との連携体制を構築
している。さらに、令和4年5月から人権教育啓発推進センターが実施する「アイヌの
方々のための相談事業」について、法務省の人権擁護機関との連携を開始した。
なお、令和3年3月、テレビ番組においてアイヌの人々を傷つける不適切な内容が放
送された。これを受けて、政府は、内閣官房、総務省、法務省、国土交通省、文化庁等
が密接に連携して、類似事案の再発防止策を検討し、同年6月10日の第12回アイヌ政策
推進会議において、再発防止策を取りまとめた。また、これを踏まえ、関係省庁は、再
発防止策の取組状況について、令和4年7月14日の第13回アイヌ政策推進会議において
その内容を報告した。
啓発動画
「アコロ青春 a=kor アコロ
〔アイヌ語で「私たちの」〕」
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(5) 学校教育におけるアイヌに関する学習の推進
学校教育では、平成29年3月に小・中学校の学習指導要領の改訂を行い、中学校社会
科では、鎖国下の対外関係に関する学習で北方との交易をしていたアイヌについて取り
扱う際に、
「アイヌの文化についても触れる」ことを明記した。また、
小学校社会科では、
歴史学習全体を通して、我が国は長い歴史を持ち伝統や文化を育んできたことを学習す
ることとしており、その際、
「現在の北海道などの地域における先住民族であるアイヌ 5959第2章人権課題に対する取組の人々には独自の伝統や文化があることに触れる」ようにすることを、小学校学習指導
要領解説社会編において明記した。
さらに、平成30年3月に高等学校学習指導要領の改訂を行い、必履修科目として新設
した「歴史総合」において、18世紀のアジアの経済と社会を理解する学習で「北方との
交易をしていたアイヌについて触れること」や、その際、
「アイヌの文化についても触
れること」を明記した。各学校においては、これらの学習指導要領に基づき、アイヌに
関する指導が行われている。
(6) 各高等教育機関等におけるアイヌ語等に関する取組への配慮
北海道の大学を中心に、アイヌ語等に関する授業科目が開設されるなど、アイヌ語等
に関する教育・研究を行っている。
(7) 生活館における活動の推進
厚生労働省では、地域住民に対し、生活上の各種相談を始め、アイヌの人々に対する
理解を深めるための広報・啓発活動等を総合的に実施している生活館の事業に対し支援
を行っている。
(8) 農林漁業経営の近代化を通じた理解の増進
歴史的な特殊事情等により、アイヌ住民居住地区における農林漁業は、他の地区に比
べて経営規模が零細で生産性が低く、所得及び生活水準に格差がみられる。このため、
農林水産省では、アイヌ住民居住地区において、地域住民が一体となって行う農林漁業
経営の近代化を支援しており、このような取組を通じて、アイヌ農林漁家に対する理解
の増進を図っている。
(9) アイヌの人々の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
法務省の人権擁護機関では、法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所に
おいて人権相談に応じている。人権相談等を通じて、アイヌの人々に対する差別等の人
権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、事案に応
じた適切な措置を講じている。
人権侵犯事件数(開始件数) 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
アイヌの人々に対する差別待遇 0 0 0 0 1
(法務省人権擁護局の資料による) 6060
第2章 人権課題に対する取組
7 外国人
我が国が締約国となっている「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(平成7年条約第26号。以下「人種差別撤廃条約」という。
)は、人権及び基本的自由の平等
を確保するため、あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策等を全ての適当な方法により遅
滞なくとること等を主な内容とする。
我が国に入国する外国人は、近年、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により減少し
ていたが、令和4年3月以降、水際対策を段階的に緩和したことにより、令和4年には約
420万人(再入国者を含む。
)と令和元年以来3年ぶりに増加に転じた。また、我が国に在
留する外国人数は約308万人(令和4年末現在)と過去最高となっている。こうした中、
言語、宗教、習慣等の違いから、外国人をめぐって様々な人権問題が発生している。
また、特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言動がいわゆるヘイトスピーチである
として社会的に関心を集めたことから、平成28年6月3日にヘイトスピーチ解消法が施行
されたが、今もなお、個人や企業等により差別的言動がなされる事案が報道されるなどし
ている。
我が国では、外国人がその保護する子を公立の義務教育諸学校に就学させることを希望
する場合には無償で受け入れ、教科書の無償給与や就学援助を含め、日本人と同一の教育
を受ける機会を保障しており、外国人のこどもが公立学校に就学しやすい環境を整備して
いる。
令和4年5月現在、我が国の公立の小・中・高等学校等に在籍する外国人児童生徒の数
は11万8,790人(文部科学省「学校基本統計」
、毎年実施)である。
また、
令和3年5月現在、
日本語指導が必要な外国籍の児童生徒の数は、
4万7,619人(同
「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」
、隔年実施)となっており、平
成30年度調査より6,864人(約16.8%)増加している。
さらに、同年に実施した学齢相当の外国人のこどもの就学状況に関する全国的な調査で
は、約1万人の外国人のこどもたちが就学していない可能性がある、又は就学状況が確認
できていない状況にあるという結果が示されている。
(1) 
外国人に対する偏見・差別を解消し、国際化時代にふさわしい人権意識の育成を目指
した啓発活動
ア 法務省の人権擁護機関では、
「外国人の人権を尊重しよう」を強調事項の一つとし
て掲げ、講演会等の開催、啓発冊子の配布等、各種人権啓発活動を実施している。
また、外国人の人権に関する理解や関心を深めることを目的とする啓発動画「外国
人と人権〜違いを認め、共に生きる〜」及び「企業と人権〜職場からつくる人権尊重
社会〜」
や、
様々な人権問題を自分の問題として考えることを呼び掛ける啓発動画「『誰
か』のこと じゃない。
(外国人編)」、外国人を含む全ての人の人権が尊重される社 6161第2章人権課題に対する取組会の実現を訴える啓発動画をYouTube法務省チャンネルで配信するほか、外国人の
人権問題を含めた職場における各種人権問題について解説した啓発冊子を法務局・地
方法務局で配布している。
令和5年2月9日には、
「共生社会と人権に関するシンポジウム〜今、企業に求め
られること〜」をオンライン開催し、企業等における外国人雇用をテーマの一つとし
て取り上げ、外国人雇用に積極的な企業の取組を紹介するとともに、その内容を広く
周知するため、採録記事を作成して新聞広告を実施した。
啓発動画「
『誰か』のこと じゃない。」「共生社会と人権に関するシンポジウム」
採録記事(毎日新聞)
イ 文部科学省では、平成28年度には、ヘイトスピーチ解消法が施行されたことを踏ま
え、外国人の人権尊重に関する実践事例を収集し、その結果を文部科学省ホームペー
ジに掲載したほか、各都道府県教育委員会等の人権教育担当者を対象とした会議や独
立行政法人教職員支援機構が実施する人権教育推進研修等において、ヘイトスピーチ
解消法の趣旨や不当な差別的言動を解消するための教育活動等について情報提供する
など、各種機会を通じて周知を図っている。
ウ 厚生労働省では、
例年6月を「外国人労働者問題啓発月間」とし、
労働条件等のルー
ルにのっとった外国人雇用等について、事業主等に対し、周知・啓発を行っている。
令和4年においては、
「共生社会は魅力ある職場環境から〜外国人雇用はルールを守っ
て適正に〜」を標語に、集中的に啓発・指導等を行った。
エ 国土交通省では、外国人を含む住宅確保要配慮者の入居を拒まないセーフティネッ
ト登録住宅の推進や入居者負担の軽減等を講ずるとともに、賃貸人や仲介業者向けの
実務対応マニュアルや外国語版の賃貸住宅標準契約書等を内容とする「外国人の民間
賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」等について、不動産関係団体と連携し普及を図っ
ている。
オ 平成30年8月、ジュネーブにおいて、我が国が人種差別撤廃条約に基づき国連に提
出した第10回・第11回政府報告に関し、人種差別撤廃委員会による審査が行われ、同
審査を受けて令和元年9月に採択された総括所見に対し、我が国は採択後1年以内の
フォローアップ情報を回答した。 6262
第2章 人権課題に対する取組
(2) ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動
ア 法務省の人権擁護機関では、ヘイトスピーチに焦点を当てた啓発活動として、これ
までの「外国人の人権」をテーマにした啓発に加え、ヘイトスピーチがあってはなら
ないということの理解を促進するための人権啓発活動や、ヘイトスピーチによる被害
等の人権問題に関する相談窓口の周知広報にも積極的に取り組んでいる。
具体的には、法務省ホームページ(https://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken04_
00108.html)の見直し、
インターネット広告の拡充、
インターネット上のヘイトスピー
チに焦点を当てた新たな啓発動画の制作などに取り組んだ。このほか、ポスターや啓
発冊子「私たちの身近にあるヘイトスピーチ」を活用したり、スポーツイベントと連
携したりするなどした人権啓発活動を実施した。
また、法務省ホームページにおいて、特定の民族や国籍の人々を排斥する差別的言
動の例を挙げつつ、上記取組や、法務局・地方法務局におけるヘイトスピーチに焦点
を当てた人権啓発活動等について紹介するほか、SNSにおいて定期的にコラムを配信
するなどの情報発信等を実施している。
さらに、令和4年12月16日に、関係省庁及び地方公共団体との間で、インターネッ
ト上のヘイトスピーチの解消に向けた取組について情報共有を行った。
イ 警察では、ヘイトスピーチ解消法の施行を踏まえ、警察職員に対する教養を推進す
るとともに、他機関から各種広報啓発活動等への協力依頼があった場合にはこれに積
極的に対応するなどにより、不当な差別的言動の解消に向けた取組に寄与することと
している。
ポスター「ヘイトスピーチ、
許さない。」啓発動画
「ヘイトスピーチ、許さない。
(インターネット編)」法務局におけるヘイトスピーチに
焦点を当てた人権啓発活動 6363第2章人権課題に対する取組(3) 学校等における国際理解教育及び外国人のこどもの教育の推進
国際社会においては、こどもたちが広い視野を持って異文化を理解し、習慣や文化の
異なる人々と共に生きていくための資質・能力を育成することが重要である。こうした
観点から、現在、各学校において、各教科等を通じて国際理解教育が行われている。
文部科学省では、毎年、全国の都道府県・指定都市教育委員会担当者を集めた連絡協
議会を開催しており、教育を取り巻く現状を知るとともに、取組の進んだ学校の実践事
例を共有するなど、国際理解教育及び外国人のこどもの教育の推進に努めている。
また、外国人児童生徒等教育の充実に関しては、平成31年4月に中央教育審議会に対
し、新しい時代の初等中等教育の在り方について諮問が行われ、増加する外国人児童生
徒等への教育の在り方についても検討し、
令和3年1月26日に「『令和の日本型学校教育』
の構築を目指して〜全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な
学びの実現〜」
(答申)が取りまとめられた。また、
「日本語教育の推進に関する施策を
総合的かつ効果的に推進するための基本的な方針」
(令和2年6月23日閣議決定)に基
づき、外国人のこどもの就学促進等について地方公共団体が講ずべき事項を取りまとめ
た「外国人の子供の就学促進及び就学状況の把握等に関する指針」を策定し、同年7月
に地方公共団体に通知した。これらの取組に加え、以下の施策を進めている。
1 日本語指導が必要な児童生徒を対象とした「特別の教育課程」の編成・実施の推進(「学校教育法施行規則」
(昭和22年文部省令第11号)の一部改正(義務教育段階:平
成26年1月14日公布、同年4月1日施行。高等学校段階:令和4年3月31日公布、令
和5年4月1日施行))2 平成29年3月の「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法
律」
(昭和33年法律第116号)の改正により、外国人児童生徒等教育の充実のための教員
定数の基礎定数化が図られ、平成29年度から令和8年度までの10年間で計画的に実施
3 各地方公共団体が行う地域人材との連携による、公立学校への受入促進・日本語指
導の充実・支援体制の整備に係る取組等を支援する事業の実施
4 就学に課題を抱える外国人のこどもを対象とした、公立学校や外国人学校等への就
学に必要な支援を学校外において実施する地方公共団体を補助する事業の実施
5 独立行政法人教職員支援機構において、外国人児童生徒等教育に関する指導者養成
研修を実施
6 学校において児童生徒の日本語能力を把握し、その後の指導方針を検討する際の参
考となる「外国人児童生徒のためのJSL対話型アセスメント〜 DLA 〜」を普及
7 教育委員会等が外国人児童生徒等教育に関する研修会を計画する際の参考となる
「外国人児童生徒教育研修マニュアル」を普及
8 学校や教育委員会等が、外国人児童生徒の受入れ体制の整備を図る際の取組事項を
指針として取りまとめた「外国人児童生徒受入れの手引(改訂版)
」を普及
9 外国人児童生徒等教育を担う教員等の資質能力の向上を図るため、大学・教育委員 6464
第2章 人権課題に対する取組
会等の研修等で活用できる「モデルプログラム」の開発・普及
10 大学・教育委員会が行う外国人児童生徒等教育に関するアドバイスや教員研修の充
実のため「外国人児童生徒等教育アドバイザー」の派遣を実施
11 外国人児童生徒等の指導を担う教師が必要な知識を得られるような研修用動画コン
テンツ及び来日・帰国したばかりの外国人児童生徒等や保護者が日本での学校生活等
について理解を深められるような多言語による動画コンテンツの作成
12 高等学校等における日本語指導が必要な生徒を対象とした「特別の教育課程」の制
度化に伴い、高等学校における指導体制づくり・日本語指導のカリキュラム作成のた
めの指導資料の作成、日本語能力把握方法の検討を実施
(4) 外国人材の受入れと共生のための取組
平成29年11月1日に施行された「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保
護に関する法律」
(平成28年法律第89号。以下「技能実習法」という。
)では、技能実習
計画の認定制、監理団体の許可制を導入し、技能実習生の意思に反して技能実習を強制
するなどの人権侵害行為についての禁止規定や技能実習生による申告に関する規定を設
けた上で、違反に対する所要の罰則も規定している。また、技能実習法に基づき設立し
た外国人技能実習機構では、母国語相談窓口を設け、人権侵害に関する相談を含む技能
実習生からの各種相談に対応するなどして、技能実習生の保護に努めている。
また、平成31年4月1日には、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行っても
なお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、一定の専門性・技
能を有し即戦力となる外国人を受け入れていくため、
在留資格「特定技能1号」及び「特
定技能2号」を創設している。
この新たな外国人材の受入れ制度においても、外国人に対する人権侵害の防止が重視
されており、出入国在留管理庁では、申請及び届出に係る厳格な審査・調査や受入れ機
関及び登録支援機関に対する必要な指導・助言など新たな制度を適切に運用することに
より、日本人と同等額以上の報酬の確保や差別的な待遇の排除に取り組むとともに、特
定技能1号の外国人に対する職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援が着実に実
施されるよう努めている。
なお、技能実習制度及び特定技能制度については、法律の規定による検討の時期に差
し掛かっており、令和4年11月22日、内閣官房長官と法務大臣が共同議長を務める「外
国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」
(以下「関係閣僚会議」という。
)の下に
設置された「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」において、
人権侵害の防止のための方策等を含め、議論がされている。今後は、有識者会議からの
意見等を踏まえ、
政府全体で両制度の在り方について検討を行っていくこととしている。
また、外国人の受入れに当たっては、外国人を社会の一員として受け入れ、その生活
環境を整備していくことが重要であるため、平成30年12月25日に関係閣僚会議において 6565第2章人権課題に対する取組決定された「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」
(以下「総合的対応策」
という。
)に基づき、在留外国人への情報提供・相談対応を多言語で行う一元的相談窓
口を設置・運営する地方公共団体に対して外国人受入環境整備交付金による支援を行っ
ているほか、関連施策を積極的に推進してきた(令和元年以降毎年改訂)。さらに、令和4年6月14日、関係閣僚会議において、目指すべき外国人との共生社会
のビジョン、中長期的に取り組むべき課題としての重点事項及び具体的施策を示す「外
国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」
(以下「ロードマップ」という。
)を決
定するとともに、ロードマップを踏まえ、総合的対応策の改訂を行った。この改訂では、
ロードマップの施策について単年度に実施すべき施策を示すとともに、必ずしも中長期
的に取り組むべき施策でないためにロードマップには記載されていないものの、共生施
策の実現のために政府において取り組むべき施策を示している。
今後は、ロードマップ及び総合的対応策に基づき、政府一丸となって外国人との共生
社会の実現に向けた環境整備を一層推進していくこととしている。
(5) ウクライナ避難民に関する取組
令和4年(2022年)2月24日のロシア軍によるウクライナ侵略を受け、ウクライナか
ら近隣国等へ多数の避難民が発生した。政府では、内閣官房長官を長とする「ウクライ
ナ避難民対策連絡調整会議」を司令塔として、政府一体となってウクライナ避難民の円
滑な受入れと生活支援等を行っている。
出入国在留管理庁では、ウクライナ避難民の方々に対し、
「自力で渡航手段を確保す
ることが困難である方々に対する渡航支援」、「就労可能な特定活動(1年)への変更を
迅速に認める措置」、「ウクライナ語での相談対応を可能としたウクライナ避難民ヘルプ
デスクの開設」等の取組を実施しているほか、ウクライナ避難民で身寄りのない方々に
対しては、一時滞在先の提供、生活費や医療費の支給を行っている。
厚生労働省では、令和4年度から、医療機関が利用できるよう、ウクライナ語無料電
話医療通訳サービス等の支援を開始した。また、令和4年4月に、ウクライナ避難民の
方々に向けて、出入国在留管理庁から子育て支援サービスとして、一時預かり事業、保
育所、地域子育て支援拠点事業、利用者支援事業、幼稚園、児童手当を掲載したチラシ
を送付し案内したことを踏まえ、地方公共団体に対し、ウクライナ避難民の方々から子
育て支援に関する相談を受けた場合の積極的な支援を依頼した。さらに、全国のハロー
ワークにおいて、ウクライナ避難民への就労支援を実施しており、ウクライナ語による
ハローワークの周知や外国人雇用サービスセンター(東京、名古屋、大阪、福岡)への
ウクライナ語通訳の配置のほか、地方公共団体や地方出入国在留管理局等とハローワー
クが連携したウクライナ避難民向け就労支援セミナーの開催等に取り組んでいる。
文部科学省では、ウクライナ避難民のこどもの教育機会の確保や日本語教育の体制の
整備、
ウクライナ避難民への支援に関する一元的な問合せ窓口の設置等に取り組んでいる。 6666
第2章 人権課題に対する取組
(6) 外国人の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
法務省の人権擁護機関では、法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所に
おいて人権相談に応じている。人権相談等を通じて、外国人であることを理由とした差
別等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、
事案に応じた適切な措置を講じている。
日本語を自由に話すことの困難な外国人等からの人権相談については、
全国の法務局・地方法務局において、
「外国人のための人権相談所」を設け、約80の言語による人権相
談に対応している。
また、
「外国語人権相談ダイヤル」
(ナビダイヤル:0570-090911(全国共通)
)を設置し、
英語・中国語・韓国語・フィリピノ語・ポルトガル語・ベトナム語・ネパール語・スペ
イン語・インドネシア語・タイ語の10言語による人権相談に応じている。
さらに、
法務省ホームページ上に
「外国語インターネット人権相談受付窓口」
(https://
www.moj.go.jp/JINKEN/jinken21.html#01)を開設しており、上記と同様の10言語によ
る人権相談を受け付けている。
人権侵犯事件数(開始件数) 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
外国人に対する差別待遇 62 72 60 59 47
(法務省人権擁護局の資料による)
ポスター「外国語人権相談ダイヤル」 6767第2章人権課題に対する取組8 感染症
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)や肝炎ウイルス等の感染症に対する正しい知識と理解は、
いまだ十分とはいえない状況にある。これらの感染症の感染者や患者、その家族等が、周
囲の人々の誤った知識や偏見等により、
日常生活、
職場、
医療現場等で差別やプライバシー
侵害を受ける等の人権問題が発生している。
また、新型コロナウイルス感染症についても、同感染症に起因する差別的な言動や不当
な扱い等の人権問題が発生している。
このような感染症をめぐる偏見や差別の解消のため、取組を推進していく必要がある。
(1) 
エイズ患者及びHIV感染者に対する偏見・差別をなくし、理解を深めるための教育・
啓発活動
ポスター
「令和4年度
『世界エイズデー』」ア 厚生労働省では、エイズ患者及びHIV感染者に対
する偏見・差別の解消及びエイズのまん延防止のた
め、12月1日の「世界エイズデー」に向けてのキャ
ンペーンイベントとして、
令和4年11月28日に、
「RED
RIBBON LIVE 2022」をオンラインで開催し、著名
人等による音楽・トークライブイベントを行った。
また、
エイズに関する電話相談事業を実施するなど、
HIV・エイズに関する正しい知識の普及啓発活動に
努めている。
また、HIV・エイズの正しい知識の普及啓発を目
的として「
『世界エイズデー』ポスターコンクール」
を実施した。小・中学生の部108点、高校生の部184点、一般の部75点の応募があった。
最優秀作品を世界エイズデーキャンペーンポスターのデザインに採用し、全国各地
で掲示することにより、HIV・エイズについて理解を深めてもらう良い機会となって
いる。
イ 文部科学省では、学習指導要領に基づき、学校において、エイズについて正しく理
解するよう指導するとともに、エイズ患者及びHIV感染者に対する偏見・差別をなく
す内容を含む教材の周知等を行った。
ウ 法務省の人権擁護機関では、
「感染症に関連する偏見や差別をなくそう」を強調事
項の一つとして掲げ、啓発冊子の配布等、各種人権啓発活動を実施している。
(2) 肝炎ウイルス感染者への偏見・差別をなくし、理解を深めるための教育・啓発活動
肝炎は、肝臓の細胞が傷つけられ、その働きが損なわれる病気で、患者の多くはB型
肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスに起因するものである。 6868
第2章 人権課題に対する取組
B型、C型肝炎ウイルスは、主に血液や体液を介して感染する。肝炎ウイルスの感染
を予防するためには、血液や体液が付いた器具を共用しないこと、血液や体液が傷・粘
膜に直接触れるのを防ぐことが重要であり、このほか、普段の生活の中では、B型肝炎
やC型肝炎に感染することはない。しかし、このことが十分に理解されていない結果と
して、偏見や差別に苦しんでいる肝炎ウイルスの感染者や患者も少なくない。
感染者や患者に対する偏見や差別を解消するためには、幅広い世代を対象に、肝炎に
ついての正しい知識を普及し、さらに、肝炎患者等の人権を尊重するためにはどのよう
にふるまうべきかを考え、学ぶことが重要である。
ア 厚生労働省では、7月28日を日本肝炎デーと定め、この日を中心に国や地方公共団
体などで様々な普及啓発活動を行っており、国の「知って、肝炎プロジェクト」では、
令和4年7月25日に普及啓発イベント「知って、
肝炎プロジェクト世界・日本肝炎デー
2022」を開催した。同プロジェクトにおいては、著名人による都道府県知事等への訪
問等による普及啓発活動や、患者の経験を踏まえた肝炎への正しい理解を促す広報を
行っている。
このほか、調査研究事業において、肝炎患者等からの相談事例の分析を行うととも
に、肝炎患者等の置かれた状況について考えるシンポジウムの開催や、感染症患者に
対する偏見差別・人権をテーマとした模擬授業を行い、調査研究の成果普及に努めて
いる。
また、青少年が肝炎に関する正しい知識を学ぶことにより、肝炎ウイルスの感染を
予防するとともに、集団予防接種によるB型肝炎ウイルスの感染拡大の経緯・歴史等
を学び、肝炎ウイルス感染者・患者の方々に対する偏見・差別をなくすことを目的と
して、全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団の協力を得て、副読本「B型肝炎 いのちの
教育」を作成し、令和2年度から全国の中学3年生の教員向けに配布を行っている。
あわせて、全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団が本副読本を用いて実施している「患者
講義(集団予防接種によりB型肝炎に感染した患者等を講師として派遣し被害者の声
を伝える活動)
」について、全国の中学校に周知している。
イ 文部科学省では、感染者や患者に対する偏見や差別をなくすこと等を目的として厚
生労働省が作成・配布する副読本「B型肝炎 いのちの教育」の活用について、各都
道府県教育委員会等へ周知等を行った。
ウ 法務省の人権擁護機関では、
「感染症に関連する偏見や差別をなくそう」を強調事
項の一つとして掲げ、啓発冊子の配布等、各種人権啓発活動を実施している。 6969第2章人権課題に対する取組知って、肝炎プロジェクト
世界・日本肝炎デー 2022
副読本「B型肝炎 いのちの教育」
(3) 新型コロナウイルス感染症に関連して発生した人権問題への対応
新型コロナウイルス感染症に関連して、感染者や医療従事者等への偏見・差別を始め
とする、様々な人権問題が発生した。
このような状況を踏まえ、
「新型インフルエンザ等対策特別措置法」
(平成24年法律第
31号。以下「特別措置法」という。
)が令和3年2月に改正され、新型インフルエンザ
等の患者等(
「患者及び医療従事者並びにこれらの者の家族その他のこれらの者と同一
の集団に属する者」
)に対する差別的取扱いの防止に係る、国及び地方公共団体の責務
を定める規定が設けられた。
政府は、
新型コロナウイルス感染症対策を実施するに当たっ
て準拠すべき統一的指針を示す「新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針」(令和3年11月19日新型コロナウイルス感染症対策本部決定。令和5年5月8日廃止)にお
いて、感染者等の人権が尊重され、何人も差別的な取扱い等を受けることのないよう各
種取組を行うべきことを明記した。
ア 内閣官房においては、以下の取組を実施した。
1 特別措置法第13条第2項に規定されている偏見・差別を防止するための規定を周
知するリーフレットを作成し、新型コロナウイルス感染症に関する政府の統一的な
ホームページ(https://corona.go.jp/)において公表するとともに、
関係省庁のホー
ムページにおいても連携して公表
2 新型コロナウイルス感染症に関する正しい知識の普及に加え、政府の統一的な
ホームページ等を活用し、偏見・差別等の防止等に向けた啓発・教育に資する発信
を強化
イ 厚生労働省においては、ホームページ上に、日本赤十字社の差別や偏見防止に関す
る資料、医療従事者への感謝のポスターのほか、一般の方向けの啓発資料を掲載した。
また、医療従事者等のこどもに対する保育所などにおける預かりの拒否等に関して、
医療従事者等は感染防御を十分に行った上で対策や治療に当たっていること、市町村
等においては医療従事者等のこどもに対する偏見・差別が生じないよう十分配慮する 7070
第2章 人権課題に対する取組
ことを周知した。さらに、令和2年2月に取りまとめた新型コロナウイルス感染症を
含む感染症等に関わる情報公表に関しての基本方針について、改めて感染者に対して
不当な差別及び偏見が生じることのないよう、個人情報の保護に留意する必要がある
ことについても周知した。
また、
令和2年12月4日から、「『#(ハッシュタグ)広がれありがとうの輪』プロジェ
クト」を開始し、感染予防の徹底と、医療従事者を始め、感染者やその周囲の方々に
対する偏見・差別の解消を図るため、賛同企業・団体、個人と一丸となって、特設サ
イトやSNS、広報誌等各種媒体での情報発信を行った。
さらに、都道府県労働局等に設置されている総合労働相談コーナーで職場における
いじめ・嫌がらせなどの相談を受け付けた。また、過去に新型コロナウイルスに感染
したことを理由として、人格を否定するような言動を行うこと等は、職場におけるパ
ワーハラスメントに該当する場合がある旨をホームページに掲載し、関係団体に周知
を行った。
ロゴ「#広がれありがとうの輪」
加えて、新型コロナウイルス感染症の影響によりこどもの見守りの機会が減少し、
児童虐待リスクが高まったことから、要保護児童対策地域協議会が中核となり、様々
な地域ネットワークを総動員し、支援ニーズの高いこども等を早期に発見する体制を
強化するとともに、定期的に見守る体制
を確保する必要がある。そのため、子育
て広場やこども食堂(食事の宅配等を含
む。
)を運営する民間団体等にも幅広く
協力を求め、様々な地域ネットワークを
総動員して、地域の見守り体制の強化を
図った。
ウ 法務省の人権擁護機関では、
令和2年2月以降、
ホームページやSNS、
インターネッ
トバナー広告等の様々な媒体を用いて、感染者・濃厚接触者や医療従事者、その家族
等に対する誤解や偏見に基づく差別を行わないよう、繰り返し呼び掛けるとともに、
人権相談窓口の周知等を行った。
また、
令和3年3月からは、
「不安を差別につなげちゃいけない。
」をキャッチフレー
ズとした新型コロナウイルス感染症関連人権啓発キャンペーンとして、尾身茂新型コ
ロナウイルス感染症対策分科会会長によるメッセージ動画を特設サイトで配信したほ
か、新型コロナウイルス感染症を含む感染症をテーマとする啓発動画「
『誰か』のこ
と じゃない。
(感染症編)
」をYouTube法務省チャンネルで配信している。
このほか、全国の法務局・地方法務局においても、新型コロナウイルス感染症に関
する正しい知識の普及、偏見・差別等の防止等に向けた人権啓発活動を行った。 7171第2章人権課題に対する取組啓発動画「
『誰か』のこと じゃない。
」 特設サイト
「不安を差別につなげちゃいけない。」エ 文部科学省においては、新型コロナウイルス感染症に関連した児童生徒等に対する
差別や偏見を防止するため、各都道府県教育委員会等に通知を発出し、適切な知識を
基に発達段階に応じた指導を行うこと等を通じて、生徒指導上の配慮等を十分に行う
こと等を周知するとともに、令和2年8月には新型コロナウイルス感染症は誰もが感
染する可能性があること、感染者に対する偏見・差別は許されないこと等を内容とす
る児童生徒等向け、教職員向け、保護者・地域住民向けの大臣メッセージを発出した。
また、こどもたちが新型コロナウイルス感染症に対する不安から陥りやすい差別や
偏見等について考えるための啓発動画等を作成し、周知した。
(4) 感染症をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
法務省の人権擁護機関では、法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所に
おいて人権相談に応じている。人権相談等を通じて、HIV感染者、肝炎ウイルス感染者
や新型コロナウイルス感染者等に対する差別等の人権侵害の疑いのある事案を認知した
場合は、人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた適切な措置を講じている。
人権侵犯事件数(開始件数) 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
疾病患者(ハンセン病患者等を
除く。
)に対する差別待遇
26 15 44 68 49
(法務省人権擁護局の資料による) 7272
第2章 人権課題に対する取組
9 ハンセン病患者・元患者やその家族
ハンセン病は、
「らい菌」に感染することで起こる感染症であるが、
「らい菌」の感染力
は弱く、非常に伝染しにくい病気である。仮に感染したとしても発病することは極めてま
れであり、現在では治療法も確立しているため、万一発病しても、早期に発見し適切な治
療を行えば、後遺症が残ることもない。しかし、かつて我が国でとられた隔離政策により、
ハンセン病は恐ろしいというイメージが助長され、ハンセン病患者・元患者やその家族は、
社会からのいわれのない偏見や差別の対象となってきた。
平成13年5月の「らい予防法違憲国家賠償請求訴訟」の熊本地方裁判所判決以後、政府
は、ハンセン病問題に対する正しい知識の普及啓発等に取り組んできた。しかし、偏見や
差別の根絶には至らず、令和元年7月、
「ハンセン病家族国家賠償請求訴訟」の熊本地方
裁判所判決を受けて公表した内閣総理大臣談話(以下「令和元年総理談話」という。)においては、我が国でかつてとられた施設入所政策の下で、患者・元患者のみならず、その
家族に対しても、社会において極めて厳しい偏見、差別が存在し、患者・元患者とその家
族が苦痛と苦難を強いられてきたことに対し、政府としての深い反省とおわびが示される
とともに、家族を対象とした新たな補償の措置を講ずること、関係省庁が連携・協力し、
患者・元患者やその家族が置かれていた境遇を踏まえた人権啓発、人権教育などの普及啓
発活動の強化に取り組むことが示された。
これを受けて、政府では、原告団等との「ハンセン病に係る偏見差別の解消に向けた協
議」を開催するなどして、ハンセン病の患者・元患者やその家族が置かれていた境遇を踏
まえた人権啓発、人権教育などの普及啓発活動の強化に取り組んでいる。
(1) 
ハンセン病患者・元患者やその家族に対する偏見・差別をなくし、理解を深めるため
の教育・啓発活動
ア 厚生労働省では、令和2年12月に、ハンセン病の患者・元患者やその家族が置かれ
ていた境遇を踏まえた人権啓発、人権教育などの普及啓発活動の強化等に向けて検討
を進めるため、法務省及び文部科学省と共に、原告団等との「ハンセン病に係る偏見
差別の解消に向けた協議(第3回)
」を開催した。この協議において、ハンセン病に
対する偏見差別の現状とこれをもたらした要因の分析・解明、国のこれまでの啓発活
動の特徴と問題点の分析、偏見差別の解消のために必要な広報活動や人権教育、差別
事案への対処の在り方についての提言等を行うことを目的とした「ハンセン病に係る
偏見差別の解消のための施策検討会」を新たに設置することが決定され、令和3年度
から同検討会において、議論が進められ、令和5年3月に報告書が取りまとめられた。
今後も、元患者やその家族との協議を踏まえ、法務省、文部科学省と連携しながら、
ハンセン病に対する偏見差別の解消に向けて取り組んでいくこととしている。
このほかにも、厚生労働省では、ハンセン病問題に対する正しい知識の普及のため、 7373第2章人権課題に対する取組様々な普及啓発活動を行っている。平成21年度から、
「ハンセン病療養所入所者等に
対する補償金の支給等に関する法律」
(平成13年法律第63号)の施行日である6月22
日を「らい予防法による被害者の名誉回復及び追悼の日」と定め、追悼、慰霊及び名
誉回復の行事を実施している。令和4年度においては、6月22日に開催し、後藤厚生
労働大臣、木原内閣官房副長官、古川法務大臣、鰐淵文部科学大臣政務官等が出席し
実施した。
加えて、令和5年1月15日に、法務省、文部科学省等と連携し、ハンセン病問題に
対する正しい知識の普及啓発を目的とした「第22回ハンセン病問題に関するシンポジ
ウム」をオンラインにて開催し、高校生によるハンセン病回復者及びその家族の聞き
書きや国立ハンセン病療養所からのライブ配信(リニューアルオープンした菊池恵楓
園歴史資料館)等を行った。
さらに、平成14年度から、ハンセン病問題を正しく理解するための中学生向けパン
フレット「ハンセン病の向こう側」及び指導者向け教本を作成し、全国の中学校、教
育委員会等に配布している。
「らい予防法による被害者の
名誉回復及び追悼の日」式典
らい予防法による被害者の名誉回復及び追悼の碑
パンフレット
「ハンセン病の向こう側」
イ 文部科学省では、例年、厚生労働省が作成・配布する中学生向けパンフレット「ハ
ンセン病の向こう側」及び指導者向け教本の活用について、各都道府県教育委員会等
へ周知しているところ、令和3年度に引き続き、令和4年度も、関係省庁間の連携の
下で一体的に施策を進めるため、法務省、文部科学省及び厚生労働省の3省連名で、
ハンセン病問題に関する教育の更なる推進を目的とした通知を令和4年7月22日付け
で発出した。同通知では、厚生労働省作成のパンフレットや法務省作成の人権啓発動
画、冊子等の資料の活用・促進、国立ハンセン病資料館の講師派遣等について周知徹
底を行っている。そのほか、各都道府県教育委員会等の人権教育担当者を対象とした
会議や独立行政法人教職員支援機構が実施する人権教育推進研修等において、人権教
育担当指導主事や教員等に対し、ハンセン病問題に関する教育を推進するための情報
提供を行うとともに、当該地域や学校において専門的知見を活用して組織的な取組等 7474
第2章 人権課題に対する取組
を推進する人材の育成を行っている。加えて、令和3年12月に配信を開始した、独立
行政法人教職員支援機構が提供する校内研修用の動画コンテンツの一環としてのハン
セン病問題に係る講義動画について、引き続き、周知を図った。この動画は、学校で
ハンセン病問題に係る教育に真摯に取り組んでこられた校長先生による講義を収録し
ており、学校等での校内研修等への活用を促進している。
ハンセン病家族
国家賠償請求訴訟を踏まえた
人権教育推進検討チーム
(文部科学省ホームページ)
また、社会教育の指導者として中心的な役割を担う社会教育主事の養成講習等にお
いて人権問題等の現代的課題を取り上げ、
指導者の育成及び資質向上を図るとともに、
国公私立大学の教務担当者等が出席する会議等において、人権教育に関する取組を促
している。さらに、令和元年10月に文部科学省内に設置した「ハンセン病家族国家賠
償請求訴訟を踏まえた人権教育推進検討チーム」
では、
ハンセン病の元患者やその家族が置かれていた境遇を
踏まえた人権教育を推進するため、有識者ヒアリング
を含む会議(9回)と関係施設の視察(6箇所)等を
行い検討を進め、令和3年9月に議論を踏まえた当面
の取組をまとめた。
ウ 法務省の人権擁護機関では、
「ハンセン病患者・元患者やその家族に対する偏見や
差別をなくそう」を強調事項の一つとして掲げ、講演会等の開催、啓発冊子の配布等、
各種人権啓発活動を実施しており、令和元年総理談話を受けて、ハンセン病患者・元
患者やその家族が置かれていた境遇を踏まえた人権啓発活動の強化に取り組んでいる。
令和4年度においては、7月30日に、厚生労働省及び文部科学省と連携し、
「ハン
セン病問題に関する『親と子のシンポジウム』
」をオンライン配信により開催した。
また、シンポジウムの内容については、中高生向けの全国版新聞等に掲載し、ハンセ
ン病元患者やその家族の思いを広く周知した。
さらに、当事者の声をより多くの方々に届けることを目的として、令和2年度に作
成した啓発動画「ハンセン病問題を知る〜元患者と家族の思い〜」を周知するための
インターネットバナー広告及び動画広告を実施した。 7575第2章人権課題に対する取組インターネットバナー広告
ハンセン病問題に関する「親と子の
シンポジウム」
(読売中高生新聞)
啓発動画「ハンセン病問題を
知る〜元患者と家族の思い〜」
(2) 国連における取組
我が国は、ハンセン病患者・元患者とその家族等に対する偏見・差別の解消に向けて、
国際社会において主導的な役割を果たしてきている。具体的には、平成20年、平成21年、
平成22年、平成27年及び平成29年の国連人権理事会において、また、平成22年の国連総
会において、ハンセン病に関する誤った認識や誤解に基づく偏見・差別をなくすための
決議(ハンセン病差別撤廃決議)案を主提案国として提出し、いずれも全会一致で採択
された。これら決議のフォローアップとして、令和2年7月、我が国は主提案国として、
国連人権理事会にブラジル、エクアドル、エチオピア、フィジー、インド、モロッコ及
びポルトガルとハンセン病差別撤廃決議案を共同提出し、全会一致で採択された。同決
議においては、共同提案国は65か国に達した。この決議は、全世界でハンセン病に関連
する差別問題に苦しむ人々の人権を守るため、人権理事会としてハンセン病差別撤廃に
関する特別報告者の任期を3年間延長することを決定し、また、国連人権高等弁務官及
び同特別報告者に対してハンセン病差別に関する様々な関係者との協議の継続を慫
しょう慂ようしている。
(3) ハンセン病患者・元患者やその家族の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
法務省の人権擁護機関では、法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所に
おいて人権相談に応じている。人権相談等を通じて、ハンセン病患者等に対する差別等
の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、事案
に応じた適切な措置を講ずることとしている。
人権侵犯事件数(開始件数) 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
ハンセン病患者等
に対する差別待遇
0 1 0 1 0
(法務省人権擁護局の資料による) 7676
第2章 人権課題に対する取組
10 刑を終えて出所した人やその家族
刑を終えて出所した人等やその家族に対する偏見・差別は根強く、就職に際しての差別
や住居の確保の困難等、社会復帰を目指す人たちにとって、現実は極めて厳しい状況にあ
る。刑を終えて出所した人等が、地域社会に包摂され、その一員として安定した社会生活
を営むためには、本人の強い更生意欲と併せて、家族はもとより、職場、地域社会の理解
と協力が必要である。
政府においては、
「再犯の防止等の推進に関する法律」
(平成28年法律第104号)に基づ
き策定した第二次「再犯防止推進計画」
(令和5年3月17日閣議決定)において、
「就労・
住居の確保等」や「民間協力者の活動の促進等」、「地域による包摂の推進」等を重点課題
として位置づけ、再犯防止のための様々な施策を推進している。
(1) 犯罪をした人や非行のある少年の改善更生への理解・協力を促進するための取組
法務省では、再犯防止啓発月間及び"社会を明るくする運動"強調月間である7月を中
心に、犯罪や非行の防止と犯罪や非行をした人の改善更生、再犯の防止等について、広
く国民の関心と理解を深めるための広報・啓発活動を展開している。
令和4年度は、再犯防止啓発月間において、
「再犯防止4コマ&1ページ漫画大賞」
の受賞作品を基にした再犯防止啓発ポスター及び再犯防止啓発動画を制作し、受賞者を
招いて完成披露会を実施するとともに、同ポスター等を地方公共団体や公共交通機関等
に配布し、掲示等の依頼を行った。また、地方公共団体に協力を依頼し、各地方公共団
体が再犯防止の取組等について、SNSを活用して発信する企画等を協同して実施した。
さらに、令和5年3月25日に、再犯防止シンポジウムを開催し、YouTube法務省チャ
ンネルで配信した。同シンポジウムでは、実際に犯罪や非行から立ち直った当事者や、
その立ち直りを支援した方の声を直接聞き、立ち直りに向けた各段階における支援やそ
の連携等について紹介した。
"社会を明るくする運動"においては、刑を終えて出所した人等に対する偏見・差別を
なくし、全ての国民が安心して暮らせる幸福な社会を実現するために、
「幸福の黄色い
羽根」を運動のシンボルとして掲げ、広報啓発イベント、ミニ集会、住民集会、講演会、
弁論大会、作文コンテスト等の啓発活動を全国各地で行っている。
令和4年度も、コロナ禍に対応して、ツイッターやインスタグラムといったSNSを活
用するとともに、芸能事務所と連携したイベントの開催や各種動画の作成等、幅広い層
に向けた広報活動を積極的に展開した。また、令和4年7月1日には、法務省において、
第72回"社会を明るくする運動"強調月間のキックオフイベントを行うとともに、できる
限り多くの方々にイベントを通じたメッセージを届けることができるよう、イベント全
体の模様を後日、YouTube法務省チャンネルで配信した。
以上のような取組を通じて、
犯罪や非行をした人の立ち直り支援に関する国民の理解・ 7777第2章人権課題に対する取組
協力を促進し、犯罪や非行のない明るい社会を築くため、様々な機関・団体と広く連携
しながら、地域に根ざした国民運動として一層の推進を図っている。
第72回"社会を明るくする運動"
強調月間キックオフイベント
再犯防止シンポジウム
フライヤー
第72回"社会を明るくする運動"ポスター
更生保護ボランティアを紹介するバラエティ動画
(2) 刑を終えて出所した人等に対する偏見・差別の解消を目指した啓発活動等
法務省の人権擁護機関では、
「刑を終えて出所した人やその家族に対する偏見や差別
をなくそう」を強調事項の一つとして掲げ、啓発冊子の配布等、各種人権啓発活動を実
施している。
また、法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において人権相談に応じ
ている。人権相談等を通じて、刑を終えた人に対する差別等の人権侵害の疑いのある事
案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた適切な措置を講じ
ている。
人権侵犯事件数(開始件数) 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
刑を終えた人に対する差別待遇 10 11 5 4 4
(法務省人権擁護局の資料による) 7878
第2章 人権課題に対する取組
11 犯罪被害者やその家族
犯罪被害者やその家族は、犯罪そのものやその後遺症によって精神的、経済的に苦しん
でいるにもかかわらず、追い打ちを掛けるように、興味本位のうわさや心ない中傷等によ
り名誉が傷つけられたり、
私生活の平穏が脅かされたりするなどの問題が指摘されている。
こうした犯罪被害者等の権利利益の保護が図られる社会を実現させるため、平成16年12
月に「犯罪被害者等基本法」
(平成16年法律第161号)が成立した。同法に基づき、令和3
年3月に閣議決定された「第4次犯罪被害者等基本計画」では、
「4つの基本方針」
(注1)
の下、
「5つの重点課題」
(注2)について279の具体的施策が掲げられ、関係府省庁にお
いて同基本計画に基づく施策が進められている。
(注1)
「4つの基本方針」1尊厳にふさわしい処遇を権利として保障すること、2個々の事情に
応じて適切に行われること、3途切れることなく行われること、4国民の総意を形成しな
がら展開されること
(注2)
「5つの重点課題」1損害回復・経済的支援等への取組、2精神的・身体的被害の回復・
防止への取組、3刑事手続への関与拡充への取組、4支援等のための体制整備への取組、
5国民の理解の増進と配慮・協力の確保への取組
(1) 犯罪被害者等の人権に関する啓発・広報
パンフレット
「犯罪被害者の方々へ」
ア 法務省では、犯罪被害者等の保護・支援のための制度を広く国民に紹介し、その周
知を図るために「犯罪被害者の方々へ」と題するパンフレットを作成し、全国の検察
庁等において犯罪被害者等に配布しているほか、同パンフレットを法務省及び検察庁
ホームページに掲載し、情報提供を行っている。
また、刑事裁判・少年審判終了後の更生保護における犯罪被害者等のための制度に
ついて、リーフレットを配布するなどの広報を実施しているほか、同制度を利用した
犯罪被害者等の体験談等を法務省ホームページ(https://
www.moj.go.jp/hogo1/soumu/hogo08_00011.html)に掲
載するなどして、同制度の広報や関係機関・団体等に対
する周知に努めている。
さらに、法務省の人権擁護機関では、
「犯罪被害者やそ
の家族の人権に配慮しよう」を強調事項の一つとして掲
げ、
啓発冊子の配布等、
各種人権啓発活動を実施している。
イ 警察庁では、関係府省庁の協力を得て、毎年11月25日から12月1日までを「犯罪被
害者週間」として設定し、犯罪被害者等に関する国民の理解を深めるための啓発事業
を集中的に実施している。令和4年度は、
「犯罪被害者週間」中央イベントを東京で
開催するとともに、地方公共団体等と共催で、地方大会を川崎市において開催し、犯
罪被害者遺族等による講演やパネルディスカッション等を行った。
また、令和4年度の都道府県、政令指定都市等における犯罪被害者週間関連行事に 7979第2章人権課題に対する取組ついて、全国の開催情報を集約した上で、警察庁ホームページ等を活用し、全国的に
取組がされていることを広報した。
さらに、警察における犯罪被害者等支援の広報・啓発として、パンフレット「警察
による犯罪被害者支援」、「犯罪被害給付制度のご案内」等の作成及び犯罪被害者等支
援広報用ホームぺージ(https://www.npa.go.jp/higaisya/index.html)の運営を行う
とともに、毎年11月の警察庁広報重点として「犯罪被害者等支援活動の周知と参加の
促進及び犯罪被害給付制度の周知徹底」を設定している。都道府県警察では、教育委
員会等の関係機関と連携し、犯罪被害者本人や遺族が直接語り掛ける「命の大切さを
学ぶ教室」を実施するとともに、中学生・高校生の参加による、命の大切さや犯罪被
害者等支援をテーマとする作文コンクールを実施したほか、大学生を対象にした犯罪
被害者等支援に関する講義を行うなど、広報・啓発を実施した。
このほか、犯罪被害者等への支援活動を行う公益社団法人全国被害者支援ネット
ワークに加盟している民間被害者支援団体等の関係機関・団体との連携を図りながら、
犯罪被害者等支援に関する広報・啓発等の活動を行っている。
(2) 犯罪被害者等に対し支援を行う者等に対する教育訓練
ア 検察職員
検察職員に対しては、犯罪被害者等の保護・支援を目的とした諸制度について、各
種研修や日常業務における上司による指導等を通じて周知し、適正に運用するよう努
めている。
イ 警察職員
警察では、犯罪被害者等の立場に立った適切な支援、対応を行うためには、職員に
対する教育が極めて重要との認識の下、犯罪被害者等支援の意義や各種施策の概要、
犯罪被害者等の心情への配慮や具体的な対応の在り方等を理解させるための教育を積
極的に実施している。
ウ 保護観察官
保護観察官を対象にした各種研修において、犯罪被害者等に対して適切な対応を行
うことができるようにする観点から、また、保護観察対象者に対して犯罪被害者等の
状況や心情について十分理解させ、その贖
しょく
罪意識の涵
かん
養を図る観点から、犯罪被害者
等が置かれている状況や刑事政策における被害者支援の必要性等をテーマとして、犯
罪被害当事者や民間の犯罪被害者支援団体の関係者等による講義を実施している。
エ 民間の犯罪被害者支援団体のボランティア等
警察では、民間の犯罪被害者支援団体の一員として犯罪被害者等支援を行うボラン
ティア等に対して、警察職員を講師として派遣するほか、被害者支援教育用DVDの
活用等により、一層効果的な教育訓練を行うよう努めている。 8080
第2章 人権課題に対する取組
(3) 犯罪被害者等の人権をめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
法務省の人権擁護機関では、法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所に
おいて人権相談に応じている。人権相談等を通じて、犯罪被害者等に対する人権侵害の
疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた適切
な措置を講じている。
人権侵犯事件数(開始件数) 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
犯罪被害者等に関する人権侵犯 8 6 4 0 2
(法務省人権擁護局の資料による) 8181第2章人権課題に対する取組12 インターネット上の人権侵害
インターネットの普及に伴い、その匿名性や情報発信の容易さから、個人の名誉やプラ
イバシーを侵害したり、差別を助長する表現を掲載したりするなど、人権に関わる様々な
問題が発生している。近時、インターネット上の誹謗中傷が社会問題化していることを契
機として、誹謗中傷に対する非難が高まるとともに、これを抑止すべきとの国民の意識が
高まっていることに鑑み、侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるとの法的評価を
示し、これを抑止するため、令和4年6月に成立した「刑法等の一部を改正する法律」(令和4年法律第67号)では、侮辱罪の法定刑の引上げが行われた(同年7月7日施行)
。引
き続き、一般のインターネット利用者等に対して、個人の名誉やプライバシーに関する正
しい理解を深めるための啓発活動を推進していくことが必要である。
(1) 個人のプライバシーや名誉に関する正しい知識を深めるための啓発活動
ア 法務省の人権擁護機関では、
「インターネット上の人権侵害をなくそう」を強調事
項の一つとして掲げ、講演会等の開催、啓発冊子の配布等、各種人権啓発活動を実施
している。
特に、青少年を中心に深刻化するインターネットによる人権侵害への取組として、
全国の法務局・地方法務局において、中学生等を対象として、携帯電話会社が実施す
るスマホ・ケータイ安全教室と連携した人権教室を実施している。
令和4年度には、中学生・高校生やその保護者等を対象とした啓発冊子「あなたは、
大丈夫?考えよう!インターネットと人権」について、著名人に対する誹謗中傷の問
題や侮辱罪の法定刑引上げに関する解説を盛り込むなど、インターネットと人権をめ
ぐる近時の状況等を踏まえた大幅な改訂を行った。 2公益財団法人人権教育啓発推進センター
考えよう!
インターネットと
あなたは、
大丈夫
〈 四訂版 〉
啓発冊子
「あなたは、大丈夫?考えよう!
インターネットと人権<四訂版>」
また、第74回人権週間においては、SNS・掲示板等の
インターネット上で発生している誹謗中傷等の問題につ
いて、その根絶を呼び掛ける啓発動画「インターネット
はヒトを傷つけるモノじゃない。」(全4編)を作成し、
YouTube法務省チャンネル等のウェブサイトや街頭ビ
ジョン、テレビCM等の多様なメディアで広く配信した。
さらに、様々な人権問題を自分の問題として考えるこ
とを呼び掛ける啓発動画「
『誰か』のこと じゃない。(インターネット編)
」や、中学生等とその保護者を対象とし
た啓発動画「インターネットと人権〜加害者にも被害者
にもならないために〜」等をYouTube法務省チャンネル
で配信している。 8282
第2章 人権課題に対する取組
啓発動画
「インターネットはヒトを傷つけるモノじゃない。」イ 警察では、
「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」
(平成26年
法律第126号)に基づく取締りを推進した。令和4年中の私事性的画像に関する相談
等の中で、同法違反により61件を検挙し、そのうち56件は、電子メールやSNS等のイ
ンターネットを利用したものであった。
また、私事性的画像記録等に係る事案の現状・対策、早期相談の重要性、削除申出
方法等、被害防止のための広報啓発活動を推進しており、例えば、警察庁では、ホー
ムページ上に「リベンジポルノ等の被害に遭わないために」と題して、具体的な被害
防止対策を掲載している。
ウ 総務省では、こどもたちのインターネットの安全な利用に係る普及啓発を目的に、
児童・生徒、保護者・教職員等に対する学校等の現場での出前講座である「e-ネッ
トキャラバン」の実施、インターネットに係る最新のトラブル事例の予防法等をまと
めた「インターネットトラブル事例集」の作成・公表を行っている。
また、後記「違法・有害情報相談センター」によるセミナーを通じて、安易な個人
情報の投稿等によるプライバシー侵害・名誉毀損等に関する注意喚起を図っている。
エ 内閣府(令和5年4月1日からこども家庭庁移管)を始め関係省庁では、多くの青
少年が初めてスマートフォン等を手にする春の卒業・進学・新入学の時期に特に重点
を置き、地方公共団体、関係団体、関係事業者等と連携し、毎年、2月から5月にか
けて、スマートフォンやSNS等の安全・安心な利用のための啓発活動を集中的に実施
する、
「春のあんしんネット・新学期一斉行動」を展開している。
(2) インターネットをめぐる人権侵害事案に対する適切な対応
ア 総務省では、令和2年9月に、インターネット上の誹謗中傷に対して早急に対応し
ていくべき取組を具体化するため、
「インターネット上の誹謗中傷への対応に関する
政策パッケージ」を公表し、各府省や産学民のステークホルダーと連携して取組を推
進している。
また、総務省では、
「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情 8383第2章人権課題に対する取組報の開示に関する法律」
(平成13年法律第137号。以下「プロバイダ責任制限法」とい
う。
)の適切な運用の支援に努めており、令和3年4月には発信者情報の開示の簡易・
迅速化のため、プロバイダ責任制限法の改正を行い、新たな裁判手続を創設した。同
改正法は令和4年10月に施行された。
さらに、総務省では、通信関連事業者団体等民間での自主的な取組、
「インターネッ
ト上の違法な情報への対応に関するガイドライン」及び「違法・有害情報への対応等
に関する契約約款モデル条項」、「プロバイダ責任制限法関連ガイドライン」等の策定
や改訂を随時支援している。
加えて、平成21年8月から、インターネット上の違法・有害情報に対して適切な対
応を促進するため、
インターネット上の違法・有害情報に関する相談を受け付ける「違
法・有害情報相談センター」を設置している。
このほか、ヘイトスピーチや部落差別情報といったインターネット上の人権侵害情
報に係る書き込みへの円滑な対応を可能とするため、平成30年10月から、法務省とと
もに、通信関連事業者等との意見交換の場(実務者検討会)を開催している。
イ 法務省の人権擁護機関では、インターネット上の人権侵害情報(私事性的画像記録
によるものを含む。
)について相談を受けた場合には、相談者の意向に応じて、相談
者自身が行うプロバイダへの発信者情報開示請求や当該情報の削除依頼の方法を助言
するほか、調査の結果、当該情報が名誉毀損やプライバシー侵害等に該当すると認め
られるときは、
「プロバイダ責任制限法名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン」
における法務省の人権擁護機関による削除要請に関する記述をも踏まえ、当該情報の
削除をプロバイダ等に求めるとともに、特定の地域を同和地区であると指摘するなど
の内容の情報についても削除を求めるなどしている。
また、法務省の人権擁護機関が行う削除要請の実効性を向上させるため、法務省の
人権擁護機関の取組についてプロバイダ等により理解を深めてもらうべく、総務省と
も連携してプロバイダ等及び事業者団体との間で実務者検討会を継続的に開催した
り、プロバイダ等と個別に意見交換を行ったりといった取組を進めている。
さらに、法務省人権擁護局は、削除されるべきものの基準等について法的に整理す
ることを目的として、令和3年4月から商事法務研究会が開催した有識者検討会に、
関係行政機関として積極的に参加し、議論のたたき台となる資料の作成等を行ってき
たところ、令和4年5月、この検討会の議論が取りまとめられ、公表された。この取
りまとめでは、インターネット上の投稿に関する違法性の判断基準等についての考え
方や方向性が示されているところ、法務省の人権擁護機関は、この考え方等を踏まえ
た削除要請に取り組むとともに、関係省庁と連携してプロバイダ等にもその内容等に
ついて理解を求めるなど、削除要請の実効性のより一層の向上に努めている。
こうした法務省の人権擁護機関の取組に加え、地方公共団体等からの働き掛けもあ
り、プロバイダ等の人権問題に対する理解が進み、誹謗中傷等に該当する違法な書き 8484
第2章 人権課題に対する取組
込みや差別を助長するおそれのある動画等が削除された事例も確認されている。
いじめ防止対策推進法では、インターネットを通じていじめが行われた場合におい
ては、児童等やその保護者が情報の削除等について法務局の協力を求めることができ
る旨の規定(第19条第3項)等が設けられていることから、その趣旨を踏まえて適切
に対応している。
このほか、総務省及びSNS事業者団体である一般社団法人ソーシャルメディア利用
環境整備機構と共同して、
「#No Heart No SNS(ハートがなけりゃ SNSじゃない!)」(ノーハートノーエスエヌエス)をスローガンに、SNS利用に関する人権啓発サイト
を開設し、情報モラルの向上を図るとともに、インターネット上の人権侵害に関する
関連省庁等の各種の相談窓口を整理したフローチャートを掲載し、人権相談窓口の周
知・広報を行っている。
人権侵犯事件数(開始件数) 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
インターネットに関する人権侵犯 1,910 1,985 1,693 1,736 1,721
(法務省人権擁護局の資料による)
SNS利用に関する人権啓発サイト
「#No Heart No SNS」
インターネット上の書き込みなどに関する
相談・通報窓口のご案内
(3) インターネット等を介したいじめ等への対応
文部科学省では、
「青少年が安全に安心してインターネットを利用できるようにする
ための施策に関する基本的な計画」等に基づき、フィルタリングやインターネット利用
のルールに関する学習・参加型シンポジウムの開催や普及啓発資料の配布等を通して、
地域・民間団体・関係府省庁等と連携しつつ、保護者及び青少年に対する啓発や教育活
動を推進している。
また、平成26年度から引き続き、都道府県・指定都市において実施されているネット
パトロール監視員や民間の専門機関の活用等による学校ネットパトロールの取組への支
援を行っている。
さらに、学習指導要領に基づき、インターネットの適切な利用を含む情報モラルに関
する教育を推進している。 8585第2章人権課題に対する取組13 北朝鮮当局によって拉致された被害者等
北朝鮮当局による日本人拉致は、我が国に対する主権侵害であるとともに、重大な人権
侵害である。
拉致問題に関する啓発については、
「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題へ
の対処に関する法律」
(平成18年法律第96号。以下「北朝鮮人権法」という。
)において、
政府及び地方公共団体が拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民世論
の啓発を図るよう努めるものと定められている。
また、人権教育・啓発に関する基本計画においては、拉致問題等についての正しい知識
の普及を図り、国民の関心と認識を深めるための取組を積極的に推進するものと定められ
ている。
拉致問題の解決には、国内世論及び国際世論の後押しが重要であるとの観点から、政府
は、拉致問題に関する国内外の理解促進に努めている。
(1) 北朝鮮人権侵害問題啓発週間における取組
北朝鮮人権法は、12月10日から16日までを「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」と定めて
いる。令和4年度は、政府主催イベントとして、令和4年12月10日に、拉致問題対策本
部と法務省の共催、
外務省と文部科学省の後援による政府主催国際シンポジウム
「グロー
バルな課題としての拉致問題の解決に向けた国際連携」を東京都千代田区において開催
した。同シンポジウムでは、北朝鮮による拉致問題の実態と家族の苦悩について、被害
者の家族による「生の声」の訴えが行われたほか、エリサベス・サルモン国連北朝鮮人
権状況特別報告者及び李信和(イ・シンファ)韓国政府北朝鮮人権国際協力大使が登壇
し、拉致問題の解決に向けた国際連携について議論がなされた。また、当該政府主催イ
ベントの中で、中学生及び高校生を対象とする北朝鮮人権侵害問題啓発週間作文コン
クールの表彰式を行い、松野内閣官房長官兼拉致問題担当大臣から受賞者への表彰状の
授与及び最優秀賞受賞者による作文の朗読や拉致現場視察(新潟市)の感想の発表が行
われた。
さらに、同週間の周知を目的として、インターネットバナー広告、インターネットテ
キスト広告及び全国の主要路線における車内広告を実施するとともに、全国の地方新聞
52紙へ広告を掲載したほか、
関係府省庁や地方公共団体と連携して、
全国各地でポスター
を掲出するなど、同週間にふさわしい活動に取り組んだ。 8686
第2章 人権課題に対する取組
国際シンポジウム
「グローバルな課題としての拉致問題の
解決に向けた国際連携」
作文コンクール表彰式
ポスター
「北朝鮮人権侵害問題啓発週間」諦めない諦めない諦めない絶対に絶対に絶対に絶対に
拉致被害者の1日も早い帰国を目指し、
政府は全力で取り組んでまいります。
拉致問題の解決のためには、
私たち一人ひとりの強い想いが必要です。
人権侵害問題
啓発週間
12月10日〜16日
北朝鮮
北朝鮮
拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めよう
https://www.rachi.go.jp/ https://www.moj.go.jp/JINKEN/
法務省ホームページ
拉致問題対策本部ホームページ
(注記)詳細は、追って拉致問題対策本部ホームページに掲載されます。政府拉致問題対策本部公式動画チャンネルで配信予定
拉致問題に関する国際シンポジウム
政府主催
日 時 12月10日
(土)14時〜
主 催 政府 拉致問題対策本部・法務省
場 所 イイノホール
(〒100-0011 東京都千代田区内幸町 2-1-1)
(予定)
お問合せ先 03‐3581‐8898
(2) 広報媒体の活用
拉致問題対策本部は、舞台劇「めぐみへの誓い―奪還―」並びに映画「めぐみ―引き
裂かれた家族の30年」及びアニメ「めぐみ」・「拉致被害者御家族ビデオメッセージ」の
上映会の開催、政府拉致問題対策本部ホームページ、YouTube拉致問題対策本部公式
動画チャンネル、拉致問題対策本部公式Twitterの運営、内閣府庁舎1階の啓発コーナー
「拉致問題を知るひろば」の運営、啓発用のポスターやパンフレットの配布等を行って
いるほか、令和5年1月には、拉致問題に関する海外向け番組(30分)をNHK
WORLDで4回放送した。
(3) 地方公共団体・民間団体との協力
チラシ「拉致問題啓発舞台劇公
演『めぐみへの誓い―奪還―』」拉致問題対策本部は、地方公共団体及び民間団体との共
催による啓発行事として「拉致問題を考える国民の集い」
を開催したほか、地方公共団体等との共催による、映画「め
ぐみ―引き裂かれた家族の30年」及びアニメ「めぐみ」・「拉
致被害者御家族ビデオメッセージ」の上映会を開催した。
また、令和4年度は、地方公共団体との共催、法務省、外
務省及び文部科学省の後援により、拉致問題啓発行事とし
て、舞台劇「めぐみへの誓い―奪還―」を9回上演した。
(4) 学校教育における取組
文部科学省では、各都道府県教育委員会等の人権教育担当者を対象とした会議や独立
行政法人教職員支援機構が実施する人権教育推進研修等において、人権教育・啓発に関
する基本計画に「北朝鮮当局による拉致問題等」が盛り込まれた趣旨を情報提供するな
ど、各種機会を通じて周知を図っている。
拉致問題対策本部は、毎年、全国の教育委員会等に対して、アニメ「めぐみ」の教育 8787第2章人権課題に対する取組現場での活用を依頼するとともに、北朝鮮人権問題啓発週間作文コンクールを実施して
いる。また、SNSを活用した発信の多様化に取り組んでいる。令和4年度においては、
拉致問題対策本部電子図書館を開設し、電子コミック「母が拉致されたとき僕はまだ1
歳だった」を教育現場に無償貸与する取組を開始するとともに、作文コンクールの題材
として、これまでのアニメ「めぐみ」のほか電子コミックを追加し、これについての若
年層向け動画広告を各種SNSに掲載する取組を行った。また、平成30年度から教員等研
修を実施しており、令和4年度は、拉致問題の概要説明、授業実践発表、拉致被害者家
族及び帰国拉致被害者の講演を内容とするオンライン研修並びに拉致現場視察、学習指
導案の作成及び帰国拉致被害者との懇談等を内容とする実地研修を実施した。授業実践
発表のうち反響の多かった授業については授業を収録し、教員の研修用として学校現場
へのDVDの貸出しを行っている。加えて、令和元年度から、初等中等教育に携わる教
員を目指す大学生を対象に、拉致被害者家族及び帰国拉致被害者の講演、学習指導案の
作成、模擬授業の実施等を通じて授業で拉致問題を取り上げるための教授能力を身に付
ける講座を大学と共同で開設しており、令和4年度は香川大学と共同で実施した。
(5) 海外に向けた情報発信
各国首脳・外相との会談、G 7サミット、日米豪印首脳会合・外相会合、日中韓サミッ
ト、日米韓首脳会合・外相会合、ASEAN関連首脳会議、国連関係会合を含む国際会議
等の外交上のあらゆる機会を捉え、拉致問題を提起し、諸外国からの理解と支持を得て
きた。
米国については、トランプ大統領(当時)が、安倍内閣総理大臣(当時)からの要請
を受け、平成30年6月の米朝首脳会談において金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長
に対して拉致問題を取り上げた。平成31年2月の第2回米朝首脳会談では、トランプ大
統領(当時)から金正恩国務委員長に対して初日の最初に行った一対一の会談の場で拉
致問題を提起し、拉致問題についての安倍内閣総理大臣(当時)の考え方を明確に伝え
たほか、その後の少人数夕食会でも、拉致問題を提起し、首脳間での真剣な議論が行わ
れた。また、トランプ大統領(当時)は、平成29年11月の訪日の際に続き、令和元年5
月の訪日の際にも拉致被害者の家族と面会し、家族の方々の思いのこもった訴えに熱心
に耳を傾け、家族の方々を励まし、勇気付けた。バイデン大統領は、令和4年5月の訪
日の際、岸田総理出席の下、家族と面会し、拉致被害者を想う家族としての心情や拉致
問題の一刻も早い解決のための米国の支援を求める発言等に、じっくり、真剣に耳を傾
けた。両首脳からは、拉致問題の解決に向け、日米で緊密に連携して取り組んでいくと
の強い決意が示された。
令和4年6月には、日本、米国、豪州及びEUの共催により、拉致問題に関するオン
ライン国連シンポジウムを開催し、拉致問題の一刻も早い解決に向けて国際社会の理解
と協力を呼び掛けた。さらに、同年9月に尹徳敏(ユン・ドクミン)駐日韓国大使が家 8888
第2章 人権課題に対する取組
族と面会を行った。同年12月には北朝鮮人権侵害問題啓発週間関連行事である政府主催
国際シンポジウムに出席するため訪日したエリサベス・サルモン国連北朝鮮人権状況特
別報告者及び李信和(イ・シンファ)韓国政府北朝鮮人権国際協力大使が、それぞれ拉
致被害者の家族と面会を行った。
そのほかにも、外務省では、在外公館において、各国政府関係者、報道関係者、有識
者等に対し、各種広報媒体を活用し、拉致問題についての説明・啓発を行った。
(6) 北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めるための啓発活動
法務省の人権擁護機関では、
「北朝鮮当局による人権侵害問題に対する認識を深めよ
う」を強調事項の一つとして掲げ、北朝鮮人権侵害問題啓発週間を中心に、講演会等の
開催、啓発冊子の配布等、各種人権啓発活動を実施している。
なお、北朝鮮人権侵害問題啓発週間における取組は、上記(1)のとおり。
(7) 国連における取組
令和4年4月には国連人権理事会、同年12月には国連総会、また、令和5年4月には
国連人権理事会において、欧州連合(EU)が提出し、我が国が共同提案国となった、
北朝鮮人権状況決議案が無投票採択された。特に、令和5年の国連人権理事会で採択さ
れた決議では、北朝鮮に対して、全ての拉致被害者の即時帰国を強く要求する旨を始め、
拉致問題に関してしっかりと記載されており、具体的には「拉致被害者及び家族が高齢
化している中、深刻な人権侵害を伴う国際的な拉致問題及び全ての拉致被害者の即時帰
国の緊急性及び重要性を深刻な懸念をもって改めて強調」、「拉致被害者及び家族が長き
にわたり被り続ける多大な苦しみ、
(中略)並びに、強制的失踪作業部会からの複数回
の情報提供要請に対して同一かつ実質的な内容がない回答をする等北朝鮮が何ら具体的
かつ前向きな行動をとっていないことに対し深刻な懸念を表明」、「北朝鮮に対し、全て
の強制失踪の申立てへの対処に当たり、拉致被害者及びその家族に真摯に耳を傾け、被
害者の家族に対する被害者の安否及び所在に関する正確、詳細かつ完全な情報の誠実な
提供、全ての拉致被害者に関する全ての問題、特に全ての日本人及び韓国人拉致被害者
の即時帰国の実現を改めて強く要求」するなどの文言が含まれた。
また、令和4年12月には、国連安全保障理事会は非公式協議において、北朝鮮の人権
状況についての協議を行い、翌令和5年1月から理事国を務める我が国も協議にオブ
ザーバーとして出席したほか、協議後に発出された有志国による共同ステートメントに
参加した。同ステートメントには、我が国を含む有志国31か国が参加し、拉致問題の解
決及び拉致被害者等の即時帰国を強く要求するとの内容が含まれている。 8989第2章人権課題に対する取組(8) 北朝鮮当局による人権侵害問題に対する適切な対応
法務省の人権擁護機関では、法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所に
おいて人権相談に応じている。人権相談等を通じて、北朝鮮当局によって拉致された被
害者等に関する嫌がらせ等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事
件として調査を行い、事案に応じた適切な措置を講ずることとしている。
人権侵犯事件数(開始件数) 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
北朝鮮当局によって拉致された
被害者等に対する人権侵犯
0 0 0 0 0
(法務省人権擁護局の資料による) 9090
第2章 人権課題に対する取組
14 令和4年度啓発活動強調事項に掲げた人権課題
政府は、人権教育・啓発に関する基本計画の「各人権課題に対する取組」に掲げられて
いない人権課題についても、それぞれの問題状況に応じて、その解決に資する施策を実施
している。
その中には、広島・長崎の原子爆弾被爆者に関する人権問題として、被爆に関するいわ
れなき差別や風評被害等といった、
筆舌に尽くし難い長年にわたり生じている人権問題等、
唯一の戦争被爆国である我が国において、引き続き、施策強化を必要とするものもある。
ここでは、法務省の人権擁護機関が啓発活動の強調事項として掲げている課題を取り上
げ、各府省庁が取り組んだ人権教育・啓発の施策を取りまとめた。
(1) ホームレスの人権及びホームレスの自立の支援等
平成14年に制定された「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法」
(平成14年
法律第105号)では、ホームレスの自立の支援等に関してはホームレスの人権に配慮す
ることが定められている。同法は10年間の限時法として制定されたものであるが、平成
24年6月にその期限が5年間延長され、平成29年6月に更に10年間延長されたところで
ある。
また、同法に基づき、平成30年7月にホームレスの実態に関する全国調査の結果を踏
まえて策定した「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」では、ホームレス及び
近隣住民の双方の人権に配慮しつつ、啓発広報活動、人権相談等の取組により、ホーム
レスの人権の擁護を推進することが必要であること等が盛り込まれている。
これらも踏まえ、法務省の人権擁護機関では、
「ホームレスに対する偏見や差別をな
くそう」を強調事項の一つとして掲げ、啓発冊子の配布等、各種人権啓発活動を実施し
ている。
また、法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において人権相談に応じ
ている。人権相談等を通じて、ホームレスに関する嫌がらせ等の人権侵害の疑いのある
事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた適切な措置を講
ずることとしている。
人権侵犯事件数(開始件数) 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
ホームレスに対する人権侵犯 1 3 1 1 0
(法務省人権擁護局の資料による)
(2) 性的マイノリティに関する人権
令和3年に開催された2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大
会では、開催の基本コンセプトの一つとして「多様性と調和」が掲げられ、性的マイノ
リティの当事者であることを公表した選手が多数登場し、性の多様性が現れた大会で 9191第2章人権課題に対する取組あった。
政府は、性的マイノリティに対する偏見、差別はあってはならないとの認識の下、多
様性が尊重され、全ての人が生き生きとした人生を享受できる共生社会の実現を目指し
ており、公共施設、医療、就業、学校、社会福祉等の様々な場面で生じている性的マイ
ノリティに関する多岐にわたる課題について、関係府省が横断的に連携しながら取組を
進めていくこととしている。
ア 法務省の人権擁護機関では、性的マイノリティに関する偏見や差別の解消を強調事
項として掲げ、講演会等の開催、啓発冊子の配布等、各種人権啓発活動を実施してい
る。
その一環として、性的マイノリティの人権問題を含めた職場における各種人権問題
について解説した啓発冊子及び啓発動画「企業と人権〜職場からつくる人権尊重社会
〜」や、
啓発動画「あなたが あなたらしく生きるために 性的マイノリティと人権」
について、法務局・地方法務局における配布・貸出し、YouTube法務省チャンネル
での配信等を行っている。
また、令和5年3月には、企業・団体における性的マイノリティに関する取組を促
進するとともに、社会全体の性的マイノリティの方々に対する理解の増進に資するよ
う、企業等の取組事例を紹介する特設サイト「Myじんけん宣言・性的マイノリティ
編」を開設した。同サイトについては、今後、更に内容を充実させていくこととして
いる。
さらに、法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において人権相談に
応じている。人権相談等を通じて、性的マイノリティに関する嫌がらせ等の人権侵害
の疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた
適切な措置を講じている。
人権侵犯事件数(開始件数) 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
性的マイノリティに関する人権侵犯 19 17 17 9 9
(法務省人権擁護局の資料による)
イ 文部科学省では、平成27年4月、
「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細か
な対応の実施等について」を通知し、学校における適切な教育相談の実施等を促して
いる。また、平成28年4月、
「性同一性障害や性的指向・性自認に係る、児童生徒に
対するきめ細かな対応等の実施について」
(教職員向けパンフレット)を文部科学省
ホームページ(https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/04/__icsFiles/afieldfile/
2016/04/01/1369211_01.pdf)において公表するとともに、同年7月、全国の小中高等
学校等に配布し、各都道府県教育委員会等の人権教育担当者を対象とした会議や独立
行政法人教職員支援機構が実施する人権教育推進研修等においても、周知徹底を図っ
ている。令和4年12月に公表した改訂版生徒指導提要において、
「性的マイノリティ」
に関する課題と対応について新たに追記し、教職員への適切な理解の促進、教職員の 9292
第2章 人権課題に対する取組
人権感覚の醸成及び相談体制の整備が重要であること、
「性的マイノリティ」とされ
る児童生徒への配慮と他の児童生徒への配慮との均衡を取りながら支援を進めること
等について記載し、適切な対応を求めている。また、日本学生支援機構と文部科学省
の協力の下、平成30年12月に作成した「大学等における性的指向・性自認の多様な在
り方の理解増進に向けて」
(教職員向け啓発資料)を活用し、
令和4年度においても、
大学等の教職員が出席する会議等を通じて、学生の意思等に配慮したきめ細かな対応
を依頼している。
ウ 厚生労働省では、性的マイノリティに関することを理由としたものも含め、社会的
なつながりが希薄な方々の相談先として、24時間365日無料の電話相談窓口を設置す
るとともに、必要に応じて面接相談や同行支援を実施して具体的な解決につなげる寄
り添い支援を行っている。
また、職場における性的マイノリティに関する理解を促進するため、性的マイノリ
ティに関する企業の取組事例等を調査する事業を実施し、調査結果等をまとめた事例
集等を作成し、周知している。
このほか、男女雇用機会均等法に基づく職場におけるセクシュアルハラスメント防
止のための指針において、相手が性的マイノリティであるかどうかにかかわらず、性
的な言動がセクシュアルハラスメントに該当する旨を明記しており、また、労働施策
総合推進法に基づく職場におけるパワーハラスメント防止のための指針において、性
的マイノリティに関する侮辱的な言動を行うこと等をパワーハラスメントに該当する
と考えられる例として明記している。
さらに、公正な採用選考についての事業主向けパンフレット等に「LGBT等の性的
マイノリティの方など特定の人を排除しない」旨記載し、ホームページ上にも公表し
ている。
(3) 人身取引(性的サービスや労働の強要等)事犯への適切な対応
人身取引(性的サービスや労働の強要等)は重大な人権侵害であり、人道的観点から
も迅速・的確な対応が求められている。これは、人身取引が、その被害者に対して深刻
な精神的・肉体的苦痛をもたらし、その被害の回復は非常に困難だからである。
ア 政府は、
「人身取引対策行動計画2014」
(平成26年12月)に基づき、関係閣僚から成
る「人身取引対策推進会議」を随時開催するなどして関係行政機関が緊密な連携を図
りつつ、人身取引の防止・撲滅と被害者の適切な保護を推進してきたところ、人身取
引対策に係る情勢に適切に対処し、政府一体となった総合的かつ包括的な人身取引対
策を更に推進するため、令和4年12月、犯罪対策閣僚会議において、新たに「人身取
引対策行動計画2022」を決定した。
また、令和4年6月、人身取引対策推進会議の第8回会合を開催し、我が国におけ
る人身取引による被害の状況や、関係省庁による人身取引対策の取組状況等をまとめ 9393第2章人権課題に対する取組た年次報告「人身取引(性的サービスや労働の強要等)対策に関する取組について」
を決定・公表し、引き続き、人身取引の根絶を目指し、人身取引対策に係る取組を着
実に進めていくことを確認した。
イ 出入国在留管理庁では、人身取引対策への取組を、
「出入国在留管理」
(出入国在留
管理行政の現状についての報告書)、パンフレット及びホームページに掲載しており、
ホームページにおいては多言語で人身取引被害者の保護に必要な情報を提供している。
また、外国人の雇用を適正化して不法就労を防止するため、毎年6月を「不法就労
外国人対策キャンペーン月間」と定めて広報活動を行ってきたが、
令和4年度からは、
「共生社会の実現に向けた適正な外国人雇用推進月間」として、国民を始め、外国人
を雇用する企業、関係団体等に、外国人の人権に配慮した適正な雇用等に係る啓発活
動を行っている。
法務省の人権擁護機関では、
「人身取引をなくそう」を強調事項の一つとして掲げ、
啓発冊子の配布等、各種人権啓発活動を実施している。
また、法務局・地方法務局又はその支局や特設の人権相談所において人権相談に応
じている。人権相談等を通じて、性的サービスや労働の強要等の人権侵害の疑いのあ
る事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた適切な措置
を講ずることとしている。さらに、平成27年10月から、人権侵犯事件の調査救済手続
において、人身取引被害者に対し、緊急避難措置として宿泊施設を提供する制度を運
用している。
人権侵犯事件数(開始件数) 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
人身取引に関する人権侵犯 0 0 0 0 0
(法務省人権擁護局の資料による)
ウ 外務省では、被害者の我が国への入国を未然に防止する観点から、在外公館等にお
ける査証審査を厳格に行っている。また、外務省ホームページ上で「人身取引対策に
伴う査証審査厳格化措置」についての広報活動を実施している。
さらに、平成16年以降、関係省庁から構成される「人身取引対策に関する政府協議
調査団」を延べ27か国・地域に派遣し、派遣先の政府関係機関、国際機関現地事務所
及び現地NGO等との意見交換を通じて、人身取引の被害実態、訴追・保護への取組、
課題等を双方で把握し、連携を強化している(令和2年度から令和4年度については
コロナ禍のため同調査団の派遣は実施していない。)。
加えて、
我が国で認知された外国人人身取引被害者に対しては、
国際移住機関
(IOM)
への拠出を通じ、人身取引被害者の帰国支援及び帰国後の社会復帰支援事業(就労・
職業支援、医療費の提供等)を行っており、平成17年5月1日以降令和5年3月31日
までに、計355人の被害者が同事業により母国への安全な帰国を果たした。
そのほか、外国人被害者の相談窓口等を記載した警察庁作成の多言語対応リーフ
レットや内閣府作成のポスター及びリーフレットを在外公館等に配布し、人身取引の 9494
第2章 人権課題に対する取組
啓発と被害者の認知促進に努めている。
ポスター
「人身取引対策」
(需要者向け)
ポスター
「人身取引対策」
(被害者向け)
エ 内閣府では、人身取引の被害者向け及び需要者向けの2種類の啓発用ポスター及び
リーフレットを作成し、地方公共団体、空港・港湾、大学・高等専門学校等、日本旅
行業協会、国際移住機関(IOM)
、その他関係機関等に配布するとともに、SNSを活
用し、我が国における人身取引の実態、人身取引の防止・撲滅及び被害者の保護に係
る取組に関する広報を実施し、被害に遭っていると思われる者を把握した際の通報を
呼び掛けた。
リーフレット「人身取引対策」
オ 警察庁では、人身取引被害の警察等への連絡を呼び掛けるリーフレットを多言語で
作成し、人身取引被害者等の目に触れやすい場所への配布や国際空港におけるデジタ
ルサイネージによる広報等を行うとともに、NGOと意見交換しながら人身取引の実
態を示した資料を作成し、
リーフレットとともに警察庁ウェブサイトに掲載している。
また、警察庁の委託を受けた民間団体が市民から
匿名による人身取引事犯等に関する通報を受け付け
る「匿名通報事業」
(https://www.tokumei24.jp/)
を運用している。
カ 厚生労働省では、人身取引対策行動計画2022に基
づき、婦人相談所において、国籍・年齢を問わず、
人身取引被害女性の保護を行い、その宗教的生活や
食生活を尊重した支援を実施している。
(4) 震災等の災害に伴う人権問題
平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、被災地域が東日本全域に及び、死者
1万5,900人、行方不明者2,523人の甚大な人的被害が生じた(警察庁調べ)未曾有の大
災害である。また、地震と津波に伴い発生した東京電力福島第一原子力発電所事故は、
被害をより深刻なものとした。東日本大震災による避難者は、
被害の大きかった岩手県、
宮城県及び福島県を中心に令和5年2月1日時点で約3万884人に及んでいる(復興庁 9595第2章人権課題に対する取組調べ)。このような大きな災害の発生時には、不確かな情報に基づき他人を不当に扱ったり、
被災者等に対する偏見や差別を助長するような情報を発信したりするなどの行動は、人
権侵害に当たり得るのみならず、避難や復興の妨げにもなりかねない。
ア 避難生活における啓発等
ア 法務省の人権擁護機関では、
「震災等の災害に起因する偏見や差別をなくそう」
を強調事項の一つとして掲げ、シンポジウムの開催、啓発冊子の配布等、各種人権
啓発活動を実施している。
令和4年度には、誰もが当事者になり得る避難生活の実情を提示し、それを支援
するために必要となる人権的配慮や、将来を担うこどもたちへの適切な支援・教育
について自発的に考えることを促すための啓発資料として、これまで開催してきた
「災害と人権に関するシンポジウム」のダイジェスト動画を作成し、
配信している。
また、風評に基づく差別的取扱い等、災害に伴って生起する様々な人権問題に対
処するとともに、新たな人権問題の発生を防止するため、被災者の心のケアを含め
た人権相談に応じている。人権相談等を通じて、震災等の災害に起因する偏見や差
別等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行
い、事案に応じた適切な措置を講ずることとしている。
人権侵犯事件数(開始件数) 平成30年 令和元年 令和2年 令和3年 令和4年
災害に起因する人権侵犯 1 0 0 0 0
(法務省人権擁護局の資料による)
イ 文部科学省では、被災したこどもの心のケア等への対応のため、学校等にスクー
ルカウンセラー等を派遣するために必要な経費を支援している。令和4年度予算に
おいても、被災地方公共団体の要望を踏まえ、スクールカウンセラー等を派遣する
ために必要な措置をしている。
イ 原発事故に伴う風評被害等
ア 東日本大震災から12年が経過したが、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う
風評に基づく偏見、差別は今なお懸念されている。
法務省の人権擁護機関では、東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う風評に基
づく差別的取扱い等、東日本大震災に伴って生起する様々な人権問題について対処
するとともに、新たな人権侵害の発生を防止するため、文部科学省が小、中・高等
学校等向けの資料として作成している放射線副読本について、法務省ホームページ
においても周知するほか、各種人権啓発活動を実施している。
イ 文部科学省では、神奈川県横浜市などで原子力発電所事故により避難している児
童生徒がいじめに遭い、学校等が適切な対応を行わなかった事案を受けて、平成28
年12月、被災児童生徒を受け入れる学校に対して、1原発事故の避難者である児童
生徒を含め、被災児童生徒へのいじめの有無等の確認を行うこと、2被災児童生徒 9696
第2章 人権課題に対する取組
に対して、心のケア等、日常的に格別の配慮を行うこと等の対応を求める通知を発
出した。また、平成29年3月、
「国のいじめ防止基本方針」を改定し、被災児童生
徒に対するいじめの未然防止・早期発見に取り組むことを新たに盛り込み、教職員
に対して適切な対応を求めている。さらに、平成29年4月11日、被災児童生徒への
いじめの防止について、全国の児童生徒、保護者、地域住民、教育委員会等の職員、
学校の教職員に向けて、文部科学大臣からメッセージを発表した。令和4年度にお
いては、引き続き、各教育委員会等の生徒指導担当者等を対象としたいじめに関す
る行政説明の開催等を通じて、上記の内容を含め、各教育委員会・学校等に対し、
被災児童生徒へのいじめに対する適切な対応を求めた。
また、児童生徒が放射線に関する科学的な知識を身に付け、理解を深めることが
できるよう、放射線副読本を全国の小・中・高等学校等に配布・周知した。この中
では、避難児童生徒に対する差別やいじめを防止する内容を充実させている。
トピックス
「ビジネスと人権」に関する我が国の取組
企業活動のグローバル化が進む中、投資家、市民社会、消費者等において、企業に
対して人権尊重を求める意識が高まっています。平成23年の第17回国連人権理事会
((注記))においては、人権を保護する国家の義務や人権を尊重する企業の責任、ビジネ
ス関連の人権侵害に関する救済へのアクセスについての原則を示した「ビジネスと人
権に関する指導原則:国連「保護、尊重及び救済」枠組みの実施」
(以下「指導原則」
という。
)が全会一致で支持されました。また、平成27年に、国連において、
「誰一人
取り残さない」世界の実現を目指す「持続可能な開発目標(SDGs(Sustainable
Development Goals))」が定められた際にも、
「指導原則」遵守の重要性が改めて確
認されており、企業がSDGsに取り組む上で、人権を尊重した行動をとることが求め
られています。
このような「ビジネスと人権」に対する国内外の関心の高まりを受けて、
平成28年、
政府は「指導原則」の着実な履行の確保を目指し、また、SDGsの達成に向けた主要
な取組の一つとして、
「ビジネスと人権」に関する行動計画を策定することを決定し
ました。その後、企業活動に関連する我が国の法制度や施策等の現状把握、経済界・
労働界・法曹界・学識経験者・市民社会・消費者団体・海外有識者等との議論、パブ
リックコメント等が行われ、令和2年10月、関係府省庁連絡会議において、「『ビジネ
スと人権』に関する行動計画」
(以下「行動計画」という。
)が策定されました。
行動計画では、企業活動における人権尊重の促進を図るため、今後政府が取り組む
各種施策が記載されているほか、企業に対し、人権デュー・ディリジェンス(企業活 9797第2章人権課題に対する取組動における人権への影響の特定、予防・軽減、対処、情報提供を行うこと)導入への
期待が表明されています。
この行動計画のフォローアップの一環として、令和3年9月から10月にかけて、経
済産業省と外務省が共同し、日本企業のサプライチェーンにおける人権に関する取組
状況のアンケート調査を実施しました。東証一部二部上場企業等2,786社を対象に、
760社から回答を得た調査の結果、人権デュー・ディリジェンスを実施している企業
は回答企業の約5割にとどまるなど、日本企業の取組にはなお改善が必要であること
が明らかになりました。また、同調査では、政府に対する要望として、ガイドライン
整備を期待する声が多く寄せられ、人権尊重への取組が進んでいない企業の半数から
は、具体的な取組方法が分からないとの回答も寄せられました。
政府は、このような状況を踏まえ、国際スタンダードを踏まえた企業による人権尊
重の取組を更に促進すべく、令和4年3月、経済産業省において「サプライチェーン
における人権尊重のためのガイドライン検討会」を設置して検討を重ね、同年9月、
「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」
(以下「ガイ
ドライン」という。
)を策定・公表しました。ガイドラインは、指導原則、
「OECD多
国籍企業行動指針」及び国際労働機関(ILO)の「多国籍企業及び社会政策に関する
原則の三者宣言」を始めとする国際スタンダードを踏まえ、企業に求められる人権尊
重の取組について、日本で事業活動を行う企業の実態に即して、具体的かつ分かりや
すく解説し、企業の理解の深化を助け、その取組を促進することを目的としたもので
す。経済産業省では、ガイドラインの活用を促すため、独立行政法人日本貿易振興機
構(ジェトロ)と共催したグローバル企業向けのセミナー、中小企業庁と連携した中
小企業向けのセミナー、経済産業省主催の地方向けセミナーを開催し、積極的な周知
広報活動を実施しています。
行動計画の周知、人権デュー・ディリジェンスに関する啓発については、行動計画
においても、全府省庁で行うこととされており、各省庁で各種取組が行われています。
外務省では、
「ビジネスと人権」関連情報を紹介するポータルサイトを立ち上げ、
「ビ
ジネスと人権」の周知を目的とした啓発資料「誰一人取り残さない社会に向けて」、「指
導原則」広報動画、行動計画広報動画(日本語・英語)等を配信して、企業活動にお
ける人権尊重の促進を図るとともに、行動計画等を紹介する動画発信や「ビジネスと
人権」に関する企業の取組事例集(和文・英文)の公表等を通じ、企業活動における
人権尊重の考え方の普及や啓発活動を行ってきています。さらに、行動計画の実施状
況の確認に当たって、必要な検討及び決定を関係府省庁が連携して行う場として、中
谷総理大臣補佐官及び内閣官房副長官補の下で、
「ビジネスと人権に関する行動計画
の実施に係る関係府省庁施策推進・連絡会議」を開催しています。加えて、幅広い関
係者との対話の場である円卓会議及び、その下に設けた作業部会の開催を通じ、行動
計画のフォローアップについて、ステークホルダーと議論を進めてきています。 9898
第2章 人権課題に対する取組
国際場裡では、国連主催のフォーラムやセミナー、インドネシア外務省主催地域会
合や二国間会合において、行動計画策定の知見共有、ガイドラインの策定を含む我が
国の取組の紹介、人権デュー・ディリジェンスに関する啓発を行っており、特にアジ
アにおけるピアラーニング(学習者が互いに協力しながら学び合う学習方法)の強化
に力を入れてきています。また、国際機関を通じて、東南アジアを始め各国における
行動計画の策定を支援し、そこで事業活動を行う日本企業及びその取引先(サプライ
ヤー)の人権デュー・ディリジェンス導入支援も実施しています。
法務省の人権擁護機関においても、企業関係者等を対象に、行動計画に基づく企業
行動が国際社会を含む社会全体の人権の保護・促進に貢献し、企業価値の向上に寄与
することへの理解を促進するとともに、人権的視点に立った企業活動を促すため、各
種取組を実施しています。令和4年度には、企業等を対象とした人権研修用の動画と
して「今企業に求められる『ビジネスと人権』への対応」を作成しました。また、令
和3年度に開設した特設サイト「Myじんけん宣言」についても、インターネット動
画広告等による周知を行い、
企業等に参加を呼び掛けています(
「Myじんけん宣言」
とは、企業・団体及び個人が、人権を尊重する行動をとることを宣言する投稿型コン
テンツです。特設サイトでは、300を越える企業等の方々が、自らの人権尊重に対す
る決意等を「Myじんけん宣言」として表明しています。)。さらに、企業等が自ら研
修を実施するための啓発資料「今企業に求められる『ビジネスと人権』への対応」を
公表しているほか、全国の法務局・地方法務局において、企業等からの要望に応じて、
法務局職員や人権擁護委員を派遣して人権研修を実施したり、企業内で問題となるこ
との多い人権課題をテーマとした啓発動画及び啓発冊子「企業と人権〜職場からつく
る人権尊重社会」の配信・配布を行ったりするなど、
「ビジネスと人権」に取り組む
企業等を支援する取組を実施しています。
これらの人権に配慮した企業活動を一層促進するには、消費者の理解を促すことも
重要です。上記の「Myじんけん宣言」特設サイトは、人権尊重のために取り組む企
業等の姿勢を消費者の立場から確認し、理解を深める場にもなっています。加えて、
消費者庁においても、人や社会・環境に配慮した消費行動であるエシカル消費の普及
に取り組んでいます。
国際社会においても、
「ビジネスと人権」がますます注目される中、我が国におい
ては、行動計画の趣旨を踏まえ、
「ビジネスと人権」に関する関係府省庁の政策の一
貫性を確保し、各種取組を通じ、責任ある企業行動と、国際社会を含む社会全体の人
権の保護を促進させ、日本企業の企業価値と国際競争力の向上、そしてSDGs達成へ
の貢献を図っていきます。
(注記)
国連人権理事会は、国連における人権の主流化の流れの中で、人権問題への対処
能力強化のため、国連総会の下部機関として平成18年にスイス・ジュネーブに設
置されました。 9999第2章人権課題に対する取組公益財団法人人権教育啓発推進センター
今企業に求められる
「ビジネスと人権に関する調査研究」
報告書
「ビジネスと人権」
への対応 概要版
法務省人権擁護局
「今企業に求められる『ビジネスと人権』への対応」
(冊子・動画)
「Myじんけん宣言」特設サイト
齋藤法務大臣の「Myじんけん宣言」
トピックス
職場におけるハラスメント防止対策の推進
パワーハラスメントやセクシュアルハラスメント等の職場におけるハラスメント
は、個人の尊厳や人格を不当に傷つけるなど、人権に関わる許されない行為です。特
に、職場におけるパワーハラスメントについては、都道府県労働局や労働基準監督署
等に設けられた総合労働相談コーナーに職場のいじめ・嫌がらせに関する相談が依然
として多く寄せられており、社会問題として顕在化しています。
このような背景を踏まえ、令和2年6月から、職場におけるパワーハラスメントの
防止対策が大企業の事業主に義務付けられました(中小企業の事業主は令和4年4月
から義務化)
。あわせて、労働者が事業主に職場におけるハラスメントに関する相談
をしたこと等を理由とする不利益取扱いの禁止等、職場におけるハラスメント防止対
策が強化されました。
厚生労働省では、職場におけるパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、
妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの防止措置が徹底されるよう、事業主
への周知を行っています。また、
法律に基づく措置を講じていない事業主に対しては、
都道府県労働局において助言・指導等を適切に行っており、事業主と労働者の間に紛
争が生じた場合には、円滑かつ迅速な解決が図られるよう援助を行っています。あわ
せて、職場におけるハラスメントの防止対策を促進するため、ハラスメント総合情報
(参考)
ビジネスと人権ポータルサイト
(外務省ホームページ) 100100
第2章 人権課題に対する取組
ポータルサイトの運営やパンフレット等による周知啓発を実施しています。
さらに、顧客等からの著しい迷惑行為(いわゆるカスタマーハラスメント)につい
ては、労働施策総合推進法に基づくパワーハラスメント防止のための指針において事
業主が雇用管理上の配慮として行うことが望ましい取組を定め、
「カスタマーハラス
メント対策企業マニュアル」やポスター等を活用した周知・啓発を実施しています。
ポスター
「みんなでNoハラスメント」
ポスター
「STOP!カスタマーハラスメン
ト」

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