法制審議会第196回会議配布資料 民1
区分所有法制の見直しについて
諮問第百二十四号老朽化した区分所有建物の増加等の近年の社会情勢に鑑み、区分所有建物の管理の円滑化及び建替えの実施を始めとする区分所有建物の再生の円滑化を図るとともに、今後想定される大規模な災害に備え、大規模な災害により重大な被害を受けた区分所有建物の再生の円滑化を図る等の観点から、区分所有法制の見直しを行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい。区分所有法制の見直し 令和4年9月
法務省民事局
課 題
○しろまる 今後、老朽化したマンション(区分所有建物)が急増していく見込み
○しろまる 高経年区分所有建物の増加と区分所有者の高齢化を背景に、相続等を契機として、
区分所有建物の所有者不明化や区分所有者の非居住化が進行
決議事項 多数決要件(注1)
共用部分(外壁・通路など)の管理 過半数
共用部分や規約の変更 4分の3
建替え 5分の4
区分所有関係の解消(取壊し、
建物と敷地の一括売却など)
全員同意
➢ 不明区分所有者等は決議において反対者と扱われ、決議に必要な賛成を得るのが困難
➢ 特に、建替え等の区分所有建物の再生の意思決定は、要件が厳格で更に困難
○しろまる所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針(R4.5.27関係閣僚会議決定)
今後急増することが見込まれる老朽化マンション等の老朽化区分所有建物対策として、区分所有法制の抜本的な見直しに向けた検討を行う。具体には、所
有者不明マンション等に特化した財産管理制度の創設、出席者のみの多数決による決議を可能とする仕組みの創設等のマンション等の管理の円滑化を図る方
策や、建替え要件の緩和、多数決による売却等の新たな再生手法の創設等の老朽化マンション等の再生の円滑化を図る方策、今後の災害の発生を見越した被
災マンション等の再生の円滑化を図る方策について検討を進め、今年度中できるだけ速やかに論点整理を取りまとめる。
○しろまる規制改革実施計画(R4.6.7閣議決定)
法務省及び国土交通省は、「区分所有法制研究会」...において、引き続き、区分所有法制の見直しに向けた論点整理を進め、令和4年度中できるだけ早期
に取りまとめを行い、速やかに法制審議会への諮問などの具体的措置を講ずる。
政府方針
※(注記)区分所有建物には、マンションのほか、長屋
なども含まれる。
21.1 60.4
115.6
249.194.5109.3
133.5
176.3
133.5
161.9
176.3
163.00.0100.0
200.0
300.0
400.0
500.0
600.0
700.0
現在 5年後 10年後 20年後
築30年〜40年未満
築40年〜50年未満
築50年〜
令和23年末
令和13年末
令和8年末
令和3年末
(万戸)
R4国土交通省調査
決議事項 多数決要件(注1)
団地内の特定建物の建替え
に関する承認
特定建物所有者の5分
の4+団地内建物所有
者の4分の3
団地内建物の一括建替え
団地内建物所有者の5
分の4+各棟所有者の
各3分の2
決議事項 多数決要件(注1)
被災により全部滅失した場合の再建、敷地売却
(政令施行後3年以内にする必要)(注2)
5分の4
被災により大規模一部滅失した場合の建物敷地売却、建物取壊し敷
地売却、取壊し(政令施行後1年以内にする必要)(注2)
5分の4
大規模一部滅失における復旧決議 4分の3
(注1)区分所有者や議決権の総数を分母とする (注2)被災区分所有法に基づく決議1➢ 被災して大きなダメージを受けた区分所有建物についても建替え等の要件が厳しい上に、被災区分所有法に基づく
災害指定政令の施行後1年以内に決議が必要
→ 被災区分所有建物の再生に必要な賛成を得るための時間が足りず、円滑な復興が難しいとの指摘
249万戸
425万戸
170万戸
築40年超
116万戸
→ 区分所有建物の管理不全化を招くとともに、老朽化した区分所有建物の再生が困難になっていくとの指摘
区分所有建物の管理・再生の円滑化、被災建物の再生の円滑化に向けた区分所有法制の見直しは、喫緊の課題
【築後30、40、50年以上の分譲マンション戸数】
▶ 区分所有建物の管理の円滑化を図る方策
○しろまる 所在等不明区分所有者を決議の母数から除外する
仕組み
●くろまる 所在等不明の区分所有者は反対者と同様に扱われるため、
円滑な決議を阻害
公的機関の関与の下で、所在等不明の区分所有者を決議
の母数から除外する仕組みを検討
○しろまる 出席者の多数決による決議を可能とする仕組み
●くろまる 集会に参加せず、賛否も明らかにしない区分所有者は、
反対者と同様に扱われるため、円滑な決議を阻害
出席者の多数決による決議を可能とする仕組みを検討
集会の決議一般を円滑化するための仕組み
○しろまる 所有者不明の専有部分の管理制度
●くろまる 所在等不明区分所有者の専有部分は適切に管理されず、
建物の管理に支障
所在等不明区分所有者の専有部分の管理に特化した新たな
財産管理制度を検討
○しろまる 管理不全の区分所有建物の管理制度
●くろまる 専有部分や共用部分が管理されないことによって危険な
状態になることも
管理不全状態にある専有部分や共用部分の管理に特化した
新たな財産管理制度を検討
区分所有建物の管理に特化した財産管理制度
○しろまる 共用部分の変更決議の要件の緩和
●くろまる 共用部分の変更決議の多数決要件(4分の3)を満たす
ことは容易でなく、必要な工事等が迅速に行えない
多数決割合を単純に引き下げる案のほか、外壁崩落のお
それなど一定の客観的要件を満たした場合には多数決割
合を引き下げる案、多数決割合を規約で緩和することを
認める案等について検討
※(注記)少数反対者の利益保護や客観的要件の在り方などが課題2○しろまる 共用部分に係る損害賠償請求権等の行使の円滑化
●くろまる 共用部分について損害賠償請求権等が発生した後に一部の
区分所有権が転売されると、管理者は、区分所有者の全員に
つき、請求権を代理して行使できなくなるとの指摘
管理者が請求権を代理して行使できる仕組みを検討
○しろまる 区分所有者の責務
●くろまる 集会に参加しない区分所有者が増加する傾向にあり、結果
として区分所有建物の適切な管理を阻害するおそれ
区分所有建物の管理に関して所有者が負うべき責務に
ついて検討
共用部分の変更決議を円滑化するための仕組み その他の管理の円滑化に資する仕組み
▶ 区分所有建物の再生の円滑化を図る方策
○しろまる 建替え決議の多数決要件の緩和
●くろまる 建替え決議の多数決要件(5分の4)を満たすのは容易
でなく、必要な建替えが迅速に行えない
多数決割合を単純に引き下げる案のほか、耐震性不足
など一定の客観的要件を満たした場合には多数決割合を
引き下げる案、多数決割合を全員合意で緩和することを
認める案等について検討
※(注記)少数反対者の利益保護や客観的要件の在り方などが課題
○しろまる 建替え決議がされた場合の賃借権等の消滅
●くろまる 建替え決議がされても専有部分の賃借権等は消滅しない
ため、建替え工事の円滑な実施を阻害
建替え決議がされた場合に、一定の手続を経て賃借権
を消滅させる仕組みを検討
建替えを円滑化するための仕組み
○しろまる 多数決による建物・敷地一括売却や建物の取壊し等
●くろまる 建物・敷地一括売却や建物の取壊し等を行うには、区分
所有者全員の同意が必要であり、事実上困難
多数決による一括売却や取壊し等を可能とする仕組み
を検討
※(注記)多数決要件の在り方については、建替え決議に関する議論
を基礎としつつ、対象行為ごとに検討する必要
○しろまる 多数決による一棟リノベーション工事
●くろまる 既存躯体を維持しながら専有部分を含む建物全体を更新
して、実質的な建替えを実現する「一棟リノベーション工
事」が技術的に可能になっているが、区分所有者全員の同
意が必要で、事実上困難
建替えと同等の多数決による一棟リノベーション工事
を可能とする仕組みを検討
区分所有関係の解消・再生のための新たな仕組み
被災区分所有建物の再生の円滑化を図る方策
○しろまる 建替え・建物敷地売却決議等の多数決要件の緩和
●くろまる 被災した区分所有建物の建替え決議等の多数決要件も一律に
5分の4とされ、迅速な復興を阻害
○しろまる 大規模一部滅失時の決議可能期間の延長
●くろまる 被災した区分所有建物の建物敷地売却決議等の決議可能期間
が1年以内とされているのは短すぎ、準備が困難3※(注記) 上記の他、団地内建物の建替え要件の緩和(例:一括建替え決議の全体要件〔5分の4〕・各棟要件〔3分の2〕の緩和)や団地関係
の解消・再生のための新たな仕組み等についても併せて検討
多数決割合の緩和を検討
※(注記)被災区分所有建物の変更決議や復旧決議の多数決要件(4分
の3)の緩和についても併せて検討
特例措置を受けられる期間を限ることにより被災地の迅
速復興を促進するという趣旨を踏まえつつ、決議可能期
間の延長を検討