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国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約
の実施に関する法律の実施状況について
法 務 省
外 務 省
平成27年4月1日から平成28年3月31日までの1年間における国際的
な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(平成25年法律
第48号。以下「実施法」という。
)の実施状況は,以下のとおりである。
1 外務大臣に対する援助申請
実施法に基づき,外務大臣に対し,子の返還又は子との面会その他の交流
(以下「面会交流」という。
)を実現するための援助の申請がされた数は69
事案であり,申請に係る子の数は95名である。
申請ごとの内訳は以下のとおり。
(1)外国返還援助(日本国からの子の返還を実現するための援助)の申請数
は19事案,申請に係る子は27名である。
ア このうち,申請書において子の常居所地国として記載された国ごとの事
案数は以下のとおり。
米国8,オーストラリア2,フランス2,イタリア1,英国1,韓国1,
コロンビア1,ドイツ1,フィジー1,フィリピン1
イ このうち,申請に係る子の父から申請が行われたものが18事案,母か
ら申請が行われたものが1事案である。
ウ 19事案(注1)について援助決定を行い,4事案(注2)について却
下した。
(注1) このうち3事案については,平成27年3月31日までに申請書を受け付け
たもの。
(注2) このうち1事案については,平成27年3月31日までに申請書を受け付け
たもの。
(2)日本国返還援助(日本国への子の返還を実現するための援助)の申請数
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は21事案,申請に係る子は28名である。
ア このうち,申請書において子の所在地として記載された国ごとの事案数
は以下のとおり。
タイ5,米国3,韓国2,ブラジル2,ウクライナ1,英国1,カナダ
1,スウェーデン1,スリランカ1,ドイツ1,ベラルーシ1,ルーマニ
ア1,ロシア1
イ このうち,申請に係る子の父から申請が行われたものが14事案,母か
ら申請が行われたものが7事案である。
ウ 20事案
(注)
について援助決定を行い,
2事案について却下している。
(注) このうち,1事案については,平成27年3月31日までに申請書を受け付け
たもの。
(3)日本国面会交流(日本国内に所在する子との面会交流)援助の申請数は
20事案,申請に係る子は28名である。
ア このうち,申請書において申請者の住所又は居所として記載された国ご
との事案数は以下のとおり。
米国8,カナダ2,シンガポール2,ニュージーランド2,フランス2,
メキシコ2,英国1,オーストラリア1
イ このうち,申請に係る子の父方から申請が行われたものが19事案,母
方から申請が行われたものが1事案である。
ウ 18事案
(注)
について援助決定を行い,
3事案について却下している。
(注) このうち2事案については,平成27年3月31日までに申請書を受け付けた
もの。
(4)外国面会交流(日本国以外の条約締約国に所在する子との面会交流)援
助の申請数は9事案,申請に係る子は12名である。
ア このうち,申請書において子の所在している国・地域として記載された
国・地域ごとの事案数は以下のとおり。
カナダ2,ドイツ2,ウクライナ1,ウルグアイ1,オーストラリア1,
タイ1,香港1
イ このうち,申請に係る子の父から申請が行われたものが7事案,母から
申請が行われた者が2事案である。
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ウ 9事案について援助決定を行った。
上記の援助決定を行った事案については,
関係国の中央当局とも協力しつつ,
協議のあっせんその他の支援を行った。
2 裁判所に対する申立て
※(注記) 数値は,最高裁判所の実情調査に基づく。
(1)子の返還申立事件
※(注記) 子の返還申立事件の件数は,子の数を基準にしている。
ア 申立件数
子の返還申立事件の申立件数は21件である。
(参考)
○しろまる 申し立てられた裁判所
東京家裁 16件
大阪家裁 5件
○しろまる 子の常居所地国として主張された国の内訳
米国11件,
オーストラリア3件,
スイス2件,
フィジー2件,
イタリア1件,シンガポール1件,ドイツ1件
○しろまる 申立人と子との関係
申立人が子の父 20件
申立人が子の母 1件
イ 審理が終了した件数
子の返還申立事件の審理が終了した件数は21件である。
結果の内訳は,認容が8件,却下が3件,調停成立が10件である。
却下となった3件のうち,返還事由のいずれかがあると認められなか
ったものが1件,実施法28条1項5号に規定する返還拒否事由(注)
があると認められたものが2件である。
※(注記) 前年度の未済事件が今年度に終了したものも含まれている。
(注) 子の年齢及び発達の程度に照らして子の意見を考慮することが適当である
場合において,子が常居所地国に返還されることを拒んでいること。
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(参考)
○しろまる 家庭裁判所における平均審理期間
約76.5日
※(注記) 終局決定が出されたもの 約65.8日
(上記日数は調停に付されていた期間も含む)
※(注記) 調停が成立したもの 約88.3日
○しろまる 出国禁止命令が発令されていた件数
12件
○しろまる 家庭裁判所の終局決定に対して,平成28年3月31日までに
高等裁判所に抗告がされた件数6件※(注記) 抗告事件の件数は,原決定書の数を基準としている。
※(注記) 抗告事件は全て既済となっている。
結果の内訳は,
抗告を棄却したもの
が4件,原決定を取り消したものが1件,原決定の一部を取り消し,その
余の抗告を棄却したものが1件である。
※(注記) 抗告審において子の返還の申立てを却下する決定が確定した件数は1
件であり,
同決定では実施法28条1項4号に規定する返還拒否事由
(注)
があると認められている。
(注) 常居所地国に子を返還することによって,子の心身に害悪を及ぼすこ
とその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること
(2)子の返還の強制執行申立事件
※(注記) 子の返還の強制執行申立事件の件数は,申立書の数を基準としている。
ア 申立件数
間接強制の申立ては5件,代替執行の申立ては2件である。
イ 既済件数
間接強制申立事件の既済件数は5件であり,全て認容されている。
代替執行申立事件の既済件数は2件であり,全て認容されている。
(3)実施法が適用される面会交流事件
※(注記) 実施法が適用される面会交流事件の件数は,子の数を基準にしている。
ア 申立件数
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実施法が適用される面会交流事件の申立件数は5件である。
イ 審理・調停が終了した件数
実施法が適用される面会交流事件の審理・調停が終了した件数は6件
である。
結果の内訳は,調停成立が1件,調停に代わる審判が1件,取下げが
4件である。
※(注記) 前年度の未済事件が今年度に終了したものが含まれている。
3 返還援助の結果
外務大臣が援助決定を行った事案のうち,本報告書の対象期間内に,子の
返還が実現した事案及び子を返還しないこととなった事案は以下のとおり
である。
(1)外国返還援助決定を行った事案のうち,子の返還が実現したものは7事
案である。
ア 返還先の国ごとの事案数は以下のとおり。
カナダ1,スペイン1,スリランカ1,ドイツ1,フィジー1,フラン
ス1,米国1
イ このうち,
裁判所における調停により子の返還が実現したものは5事案,
子の返還を命ずる終局決定後に子の返還が実現したものは2事案(注)で
ある。
(注)いずれも,間接強制決定後に子の返還が実現した。
(2)外国返還援助決定を行った事案のうち,子を返還しないこととなったも
のは6事案である。
ア 申請書において子の常居所地国として記載された国ごとの事案数は以下
のとおり。
オーストラリア2,スイス1,トルコ1,ロシア1,米国1
イ このうち,裁判所における調停により子を返還しないとの結論に至った
ものは3事案,子の返還申立てが裁判所で却下されたものは1事案,その
ほかに当事者が子の返還を求めないとの意思を表明したものは2事案であ
る。
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(3)日本国返還援助決定を行った事案のうち,子の返還が実現したものは5
事案である。
ア 子の連れ去り又は留置が行われていた国ごとの事案数は以下のとおり。
タイ2,カナダ1,フランス1,ロシア1
イ このうち,外国の裁判所における返還命令又は類似の命令等が出された
後に返還が実現したものは1事案,そのほかに当事者間の合意の結果によ
り子の返還が実現したものは4事案である。
(4)日本国返還援助決定を行った事案のうち,子を返還しないこととなった
ものは5事案である。
ア 子の連れ去り又は留置が行われていた国ごとの事案数は以下のとおり
英国1,ドイツ1,米国1,南アフリカ共和国1,ロシア1
イ このうち,外国の裁判所における返還申立の却下又は類似の命令等が出
された後に子を返還しないことが確定したものは4事案,そのほかに当事
者が子の返還を求めないとの意思を表明したものは1事案である。
4 面会交流援助の結果
外務大臣が面会交流援助決定を行った事案については,外務省又は外国条
約締約国の中央当局からの連絡に対し,子の同居者から一切の応答がない一
部の事案を除き,
多くの事案について両当事者の連絡の仲介が実現している。
これらの事案の中には,子や親が国境を越えて渡航する形で面会が実現し
た事案や,ビデオ通話による面会が実現した事案などがある。また,そのよ
うな面会の実現を促進するとの観点から,平成27年9月からは「ウェブ見
まもり面会交流」の運用を開始した。
なお,条約発効前に日本に連れ去り等がなされた子の外国への帰国が3事
案(カナダ,シンガポール,米国)
,面会交流援助の過程で実現している。