法制審議会 戸籍法部会 第1回会議 議事録 第1 日 時 令和3年11月25日(木) 自 午後1時30分 至 午後5時06分 第2 場 所 法務省7階・共用会議室6・7 第3 議 題 第4 議 事 (次のとおり) 議 事 しろまる土手幹事 予定した時刻になりましたので,法制審議会戸籍法部会の第1回会議を開会いたします。 本日は御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。 私は法務省民事局の土手と申します。本日はこの部会の第1回会議ですので,後ほど部会長の選出をしていただきますが,それまでの間,私が議事の進行役を務めさせていただきます。 御案内のとおり,新型コロナウイルスの感染拡大防止のため,法制審議会においては十分な感染症対策を施した上で部会を開催し,希望される方につきましてはウェブ会議の方法による出席を認めることとされております。ウェブ会議の方法によることで様々な御不便をお掛けすることになるかもしれませんが,可能な限り円滑な進行に努めたいと考えておりますので,御協力のほどよろしくお願いいたします。 ウェブ会議を通じて参加されている皆様につきましては,御発言される際を除きマイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願い申し上げます。御質問がある場合や,審議において御発言される場合は,画面に表示されている手を挙げる機能をお使いください。また,御発言の際は必ずお名前をおっしゃってから発言されるようお願いいたします。ウェブ会議の方法で出席されている方にはこちらの会議室の様子が伝わりにくいため,会議室にお集まりの方々には特に御留意いただきたく思います。なお,御発言中に音声に大きな乱れが生じたような場合につきましては,こちらの方で指摘させていただきますので,適宜それに対応していただければと存じます。 休憩につきましては,1時間半程度を目途に20分程度入れさせていただきたいと思います。 最初に,資料について御確認いただきたく思います。まず,部会資料1「戸籍法制の見直しにおける検討事項の例」がございます。こちらについては,後ほど審議の中で事務当局から説明させていただく予定です。次に,参考資料がございます。参考資料1は,氏名の読み仮名の法制化に関する研究会の報告書です。参考資料2は種類別の届出事件表です。また,本日は今後の日程も配布しております。具体的な進行については,御議論の状況を踏まえつつ随時お諮りしたいと考えております。 それでは,まず,この部会で審議される諮問事項と部会の設置決定につきまして簡単に御報告いたします。 本年9月16日に開催されました法制審議会第191回会議におきまして,法務大臣から,戸籍法制の見直しに関する諮問がされました。お手元の資料のうち右肩に「諮問第百十六号」と記載されたものを御覧ください。諮問事項は,ここに記載されておりますように,個人の氏名を平仮名又は片仮名で表記したものを戸籍の記載事項とする規定を整備するなど,戸籍法制の見直しを行う必要があると考えられるので,その要綱を示されたいというものであります。この諮問を受けまして,法制審議会総会ではその日の会議において,専門の部会を設置して調査審議を行うのが適当であるとして,この戸籍法部会を設置することを決定したものであります。 なお,総会において質問及び意見が3点ございましたので,御紹介させていただきます。1点目が,現在,戸籍の届書に「よみかた」として記載された情報を読み仮名として使えないか。2点目が,デジタル化,グローバル化に際して氏名の読み仮名は必要であり,一日も早くしてほしい。3点目が,マイナポータルで届出ができるようにするなど,紙で出さなければならないということがないようにしてほしいというものです。 まず,以上のことを御報告いたします。 続きまして,審議に先立ちまして,民事局長である金子委員より挨拶があります。 しろまる金子委員 民事局長の金子でございます。よろしくお願いします。マイクの都合で着座させていただきます。 皆様には御多忙の中,法制審議会戸籍法部会の委員及び幹事に御就任いただきまして,誠にありがとうございます。 現在,戸籍法において氏名を戸籍の記載事項とする規定はございますが,氏名の読み仮名についての規定はございません。氏名の読み仮名の法制化につきましては,昭和50年及び昭和56年の民事行政審議会,平成29年に法務省内に設置された戸籍制度に関する研究会においても検討されましたが,様々な問題や課題があるとして見送られた経緯がございます。しかし,本年5月に成立したデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律の附則第73条では,行政手続において氏名を平仮名又は片仮名で表記したものを利用して個人を識別できるようにするため,これを戸籍の記載事項とすることを含め,この法律の公布後1年以内を目途として,具体的な方策について検討を加え,必要な措置を講ずることとされました。また,昨年12月25日に閣議決定されたデジタル・ガバメント実行計画においては,2024年からのマイナンバーカードの海外利用開始に合わせ,戸籍における氏名の読み仮名の法制化を図ることとされています。 戸籍に記載された氏名に読み仮名を付することについて法制化するに当たっては,読み仮名を氏名の一部として位置付けるかどうか,氏名の音訓や字義との関連性をどこまで要求するのか,あるいは,どのような手続に基づいて読み仮名を戸籍に反映させるのか,戸籍に記載された読み仮名の変更をどのような要件,手続で行うのかといった課題がございます。そこで,これらを踏まえ戸籍法制の見直しを行う必要があると考えられることから,法制審議会において検討いただきたく,今回の諮問がされたものでございます。 私ども事務当局といたしましては,本部会における調査審議が充実したものになるよう努めてまいりますので,委員,幹事の皆様には御協力を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます。 しろまる土手幹事 続きまして,委員,幹事,関係官の方々に自己紹介をお願いいたします。お名前と御所属などを御紹介ください。委員の方々,幹事の方々,関係官の方々の順番で,それぞれ五十音順でお名前をお呼びいたします。お名前を呼ばれましたら,着席のままで結構ですので,一言御挨拶をお願いします。ウェブで御出席の皆様は,マイク機能をオンにして御発言ください。 なお,今回の諮問事項についての御意見などは後ほどの意見交換でお願いすることにしておりますので,まずは簡単な御挨拶のみでお願いいたします。 それでは,委員の大谷様,お願いいたします。 しろまる大谷委員 大谷和子と申します。日本総合研究所に勤務しております。どうぞよろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 次に,小幡様,お願いします。 しろまる小幡委員 私,上智大学の小幡と申します。行政法を専門にしております。どうかよろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 金子様,お願いいたします。 しろまる金子委員 民事局長の金子です。よろしくお願いします。 しろまる土手幹事 窪田様,お願いします。 しろまる窪田委員 神戸大学の窪田でございます。専門は不法行為法,家族法について研究しております。どうぞよろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 古瀬様,お願いいたします。 しろまる古瀬委員 全国連合戸籍住民基本台帳事務協議会の幹事で,京都市の左京区長をしております,古瀬と申します。よろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 笹原様,お願いします。 しろまる笹原委員 早稲田大学の笹原宏之と申します。専門は日本語学と漢字学です。どうぞよろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 常岡様,お願いします。 しろまる常岡委員 横浜国立大学の常岡と申します。専門は家族法です。よろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 手嶋様,お願いします。 しろまる手嶋委員 最高裁事務総局で家庭局長をしております手嶋と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 堂薗様,お願いします。 しろまる堂薗委員 法務省で民事局担当の審議官をしております堂薗でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 冨田様,お願いいたします。 しろまる冨田委員 連合で総合政策推進局長を拝命しております冨田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 畑様,お願いいたします。 しろまる畑委員 東京大学の畑と申します。民事訴訟法,民事手続法を専門にしております。よろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 藤原様,お願いいたします。 しろまる藤原委員 弁護士の藤原道子と申します。第二東京弁護士会に所属しております。よろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 舩木様,お願いします。 それでは,すみません,新谷様,お願いいたします。 しろまる新谷委員 新谷と申します。新しい谷と書いて新谷です。私は戸籍大好き人間ということで,今でもずっと戸籍のものを書いたりしています。間もなく戸籍の見方という,いわゆる旧法戸籍からコンピューター戸籍までをたどるという本を出したいということで,昨日も少し出版社と打ち合わせてきたところです。是非刊行されたら皆さん,一読ください。お願いいたします。 しろまる土手幹事 村林様,お願いいたします。 しろまる村林委員 インターネットイニシアティブで副社長をしております村林でございます。どうぞよろしくお願いします。 しろまる土手幹事 若月様,お願いいたします。 しろまる若月委員 主婦連合会の若月と申します。よろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 続きまして,幹事の上仮屋様,お願いいたします。 しろまる上仮屋幹事 デジタル庁参事官の戦略企画を担当しております上仮屋と申します。何とぞよろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 木村様,お願いいたします。 しろまる木村幹事 最高裁事務総局家庭局第二課長をしております木村と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 国分様,お願いいたします。 しろまる国分幹事 法務省民事局で戸籍国籍の担当をしている参事官の国分と申します。よろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 小林様,お願いいたします。 しろまる小林幹事 三菱UFJ銀行の小林と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 私,民事第一課長の土手でございます。 西様,お願いいたします。 しろまる西幹事 慶應義塾大学法科大学院の西希代子と申します。民法を専攻しております。どうぞよろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 長谷川様,お願いいたします。 しろまる長谷川幹事 総務省自治行政局住民制度課長の長谷川でございます。本日はウェブ参加で失礼いたします。よろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 星名様,お願いいたします。 しろまる星名幹事 全国連合戸籍住民基本台帳事務協議会の事務局をやっております,江東区の区民課長,星名でございます。よろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 山口様,お願いいたします。 しろまる山口幹事 外務省で領事局旅券課長をやっております山口と申します。よろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 鷲崎様,お願いいたします。 しろまる鷲崎幹事 鷲崎弘宜と申します。早稲田大学に勤めておりまして,専門は情報システムやソフトウエアを扱っております。よろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 続きまして,関係官として髙橋様,お願いいたします。 しろまる髙橋関係官 最高裁事務総局家庭局の局付をさせていただいております髙橋と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 寺田様,お願いいたします。 しろまる寺田関係官 法務省の特別顧問の寺田でございます。よろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 長橋様,お願いいたします。 しろまる長橋関係官 法務省民事局で戸籍企画官をしております長橋と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 なお,本日は武藤委員と衣斐幹事が御欠席と聞いております。 この機会に,関係官につきまして補足して説明いたします。法制審議会議事規則によりますと,審議会がその調査審議に関係があると認めた者は会議に出席し,意見等を述べることができるとされております。この部会でも従前どおり関係省庁に対して審議への参加を求めていこうと思っております。そのため,当省のほか最高裁判所事務総局家庭局の髙橋局付に関係官として御参加いただいております。 続きまして,部会長の選任を行っていただきます。 法制審議会令によりますと,部会長は当該部会に属する委員及び臨時委員の互選に基づき会長が指名することとされております。この部会は本日が第1回会議ですので,まず初めの手続として,部会長を互選していただく必要がございます。それでは,ただいまから部会長の互選をしていただきますが,自薦又は他薦の御意見などはございますか。 しろまる常岡委員 それでは,僭越ながら私から,本部会の部会長として窪田充見委員を推薦させていただきたいと思います。窪田先生はこれまでの法制審議会において,民法相続関係部会,特別養子制度部会等の委員を務められ,また,令和元年度の戸籍法改正においては戸籍法部会で部会長を務められました。現在も民法親子法制部会,家族法制部会の委員をなさっておられます。そして,本日頂きました参考資料1の氏名の読み仮名の法制化に関する研究会取りまとめでは,研究会の座長として議論を進められ,この取りまとめを公表されました。このように,窪田先生は家族法はもちろん民法,そして戸籍法等に関する法制度全般について深い見識をお持ちです。その豊かな知識と御経験に基づいて,部会長として本部会の議論を進めていく役目を担っていただくのにふさわしい方だと考えております。そのような次第で,窪田先生を御推薦したいと存じます。 しろまる土手幹事 常岡委員,ありがとうございました。 そのほかに。 しろまる笹原委員 笹原です。ありがとうございます。ただいま常岡委員がおっしゃいましたとおりで,私も是非,窪田委員にお願いできればと考えております。今回の諮問事項は戸籍法制に関してかなり新規な面を持つ課題であり,理論的にも実務的にも難しい問題を多々含むものだと考えております。窪田委員は戸籍法自体に対する学識はもちろんのこと,参考資料として配られております氏名の読み仮名の法制化に関する研究会において座長として議論を深められ,またスムーズに進行なさり,そして報告書を取りまとめてくださいました。広い視野からの周到な目配りが必要なこの困難な課題について議論を取りまとめていただけるということから,やはり私も窪田委員にお願いするのが妥当であると考える次第でございます。よろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 笹原委員,ありがとうございました。 ほかに御発言はありますでしょうか。 ただいま常岡委員,笹原委員から,部会長として窪田充見委員を推薦するとの御発言がありました。ほかに御意見がないようでしたら,部会長には窪田委員が互選されたということになろうかと思いますが,いかがでしょうか。 ありがとうございます。ほかに御意見がないようでございますので,部会長には窪田充見委員が互選されたものと認めます。その上で,本日は法制審議会の井田良会長に御出席いただいておりますが,井田会長におかれては,いかがでございますでしょうか。 しろまる井田会長 こんにちは。井田でございます。戸籍法分野での御業績等に照らし,私も窪田充見委員が適任であると思います。互選の結果に基づき,窪田委員を部会長として指名させていただきます。 先生,よろしくお願いいたします。 しろまる土手幹事 ありがとうございました。 ただいま井田会長から窪田充見委員を部会長に指名していただき,これをもちまして窪田委員が部会長に選任されました。 窪田委員におかれては,部会長席への移動をお願いいたします。 窪田委員には以降の進行役をお願いしたいと思います。 しろまる窪田部会長 部会長に選出していただきました窪田でございます。過分なお言葉も頂戴して,ありがとうございます。 笹原先生からもお話がありましたが,戸籍をめぐる問題というのはいろいろな意味でデリケートな部分も含む問題であります。また,ここは法制審議会ということで,法律の改正に向けた作業ということになるのですが,恐らく戸籍法というのは法律の世界でも取り分け技術的な側面も大変に強く,実は民法を専門にしていても戸籍法はよく分からない,あるいは,実務家の方に聞いても,少し戸籍法は苦手だという方が少なくないだろうと思います。そうした一方で,こうした戸籍法の見直し,対象となっている問題は氏名の読み仮名ということですから,非常にシンプルな問題だとも同時にいえるのだろうと思います。そうした問題を御一緒に考えていくことができればと思っております。取り分けこうした問題においては,先ほど法律の改正と申し上げましたが,基本的な事柄として,日本語のそうしたものをどうやって受け止めるのかといったようなこと,あるいは法律以前の社会常識の問題として考えたらこうではないかといったことを自由に議論していただいて,方向性を出していくということが大変に大事なのではないかと思っております。そういった観点で私も進めていけたらと思いますし,皆さんと一緒に作業していくことができればと思っております。 それでは,そうした形で,どうぞよろしくお願いしたいと思います。 なお,関連する事項として,法制審議会,特に今回,コロナに関する状況については,現在は落ち着いているのですが,先が見えないという部分もあります。部会長である私が会議に出席することがかなわないという場合に備えて,部会長代理をあらかじめ指名させていただきたいと考えております。 この部会長代理については常岡委員にお願いしたいと思っておりますが,常岡委員,お引き受けいただけますでしょうか。 しろまる常岡委員 私でお役に立つことでしたら,微力ですけれども,お引受けしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 しろまる窪田部会長 では,どうぞよろしくお願いいたします。 それでは,議題の6になりますが,議事録の発言者名の記載について,審議に入ります前に,当部会における議事録の作成方法のうち,発言者名の取扱いについてお諮りをしたいと思います。 まず,現在の法制審議会での議事録の作成方法について,事務当局から御説明をしていただけますでしょうか。 しろまる土手幹事 幹事,土手でございます。法制審議会の部会の議事録における発言者名の取扱いにつきましては,かつては発言者名を明らかにしない形で逐語的な議事録を作成していた時期もありましたが,平成20年3月に開催された法制審議会の総会におきまして,それぞれの諮問に係る審議事項ごとに部会長において部会委員の意見を聴いた上で,発言者名を明らかにした議事録を作成することができるという取扱いに改められております。御参考までに申し上げますと,この総会の決定後に設置された民事法関係の部会では,いずれも発言者名を明らかにする議事録を作成するものとされております。したがいまして,この部会の議事録につきましても,発言者名を明らかにしたものとするかどうかを御検討いただく必要があるのではないかと思います。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。 加えて,今回の審議におきましては,氏名の読み仮名について具体的な例を挙げて御発言を頂く場面も大変に多いのではないかと予想されます。その中には,実際に使用されている方というのもおられ,議事録にそのまま公表することが適当でないという場合もあり得るだろうと考えております。そうした議事録の表記については,記号に置き換えるなど,私の方に一任していただければと考えております。 土手幹事からの御説明及び私からお話ししたことにつきまして,何か御質問,御意見等はございますでしょうか。 特によろしいでしょうか。それでは,部会長の私といたしましても,当部会では審議事項の内容等に鑑みて,発言者名を明らかにした議事録を作成し,また,発言に個人名が含まれる場合については,その取扱いについては私の方に御一任いただくという御提案をさせていただきたいと思います。それでよろしいでしょうか。 それでは,当部会につきましては,発言者名を明らかにした議事録を作成するということといたしたいと思います。 それでは,議題の7,本日の審議ということになりますが,これが本日の法制審議会の中心の部分ということになります。まず,皆様に今回の戸籍法制の見直しについて,大変に幅広いテーマでもありますから,それぞれの問題意識やこの部会の進め方について自由に御発言を頂くフリーディスカッションの時間というのを設けたいと考えております。そのフリーディスカッションの前提として,まず事務当局から部会資料1に基づいて御説明を頂きたいと思います。 それでは,お願いいたします。 しろまる土手幹事 幹事の土手でございます。それでは,戸籍法部会の資料1を御覧ください。 まず,1ページの第1を御覧ください。基本的な視点といたしまして,これまでの経緯等について御説明を申し上げます。我が国に全国統一の近代的身分登録制度が設けられたのは,明治4年太政官布告第170号の戸籍法によってでありまして,以後,戸籍の様式が大きく変わった制度改正だけでも明治に2回,大正に1回,昭和以降に2回ありましたが,これまで氏名に読み仮名を付けることに関して戸籍法令に規定されたことはございません。また,昭和50年,昭和56年の民事行政審議会,これは現在,法制審議会に統合されております,及び平成29年の研究会において,それぞれ氏名の読み仮名を戸籍の記載事項とすることが検討されたものの,いずれもその制度化は見送られてきたという経緯がございます。 そのような中,令和2年12月25日に閣議決定されたデジタル・ガバメント実行計画において,マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ報告のとおり,迅速に戸籍における読み仮名(カナ氏名)の法制化を図ることとされました。さらに,令和3年5月12日に成立し,同月19日に交付されたデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律の附則第73条においても,個人の氏名を平仮名又は片仮名で表記したものを戸籍の記載事項とすることを含め,この法律の公布後1年以内を目途として,その具体的な方策について検討を加え,その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするとの検討条項が設けられました。 こうした経緯を踏まえますと,氏名の読み仮名を戸籍の記載事項とするとともに,これを収集するための制度を整備するなど,戸籍法制の見直しが必要であるというものです。 (注1)でございますけれども,氏名に関しては「読み仮名」や「よみかた」,あるいは「ふりがな」など,様々な名称が付けられておりますけれども,今回の資料では「氏名の読み仮名」と表記しております。 続いて,2ページの(注4)を御覧ください。氏名の読み仮名の登録・公証が必要な理由として,情報システムにおける検索及び管理の能率を向上させることのほか,氏名の読み仮名を本人確認事項の一つとすることが可能となることにより,他の手続における不正防止を補完することが可能となることが考えられます。また,社会生活において,あえて平仮名で「なまえ」と書いておりますけれども,「なまえ」として認識するものの中には氏名の読み仮名も含まれていると考えられ,これを登録・公証することは,正しく「なまえ」の登録・公証という点からも意義があるものと考えられます。 第2を御覧ください。現時点で想定している検討事項としましては,大きく分けると二つございます。その一つが第2の部分,氏名の読み仮名の戸籍の記載事項化でございます。これには1から6までの六つの論点を挙げています。 一つ目の論点は,氏名の読み仮名の名称でございます。氏名の読み仮名につきましては,後ほど御説明申し上げますとおり,戸籍法13条を改正し戸籍の記載事項として定めることが想定されますが,その場合の名称については,先ほど御紹介したデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律附則73条において,個人の氏名を平仮名又は片仮名で表記したものと規定されていることから,これに従うと,氏名を平仮名で表記したもの又は氏名を片仮名で表記したものとすることが考えられます。 二つ目の論点は,氏名の読み仮名の位置付けでございます。委員,幹事の皆様には事前に戸籍六法を送付させていただいており,会場に御出席の皆様にはお手元に戸籍六法を御用意しておりますので,恐縮ですけれども,戸籍六法の212ページ,戸籍法13条を御覧ください。戸籍法13条には第1号から第8号まで規定されており,戸籍の記載事項が定められています。第1号に氏名が定められております。そこで,氏名の読み仮名については,例えば「氏名(氏名を平仮名で表記したものを含む。)」などと,第13条1号に規定する氏名の一部として規定する方法が考えられます。他方で,例えば新たに第1号の2というのを設けて「氏名を平仮名で表記したもの」などと規定するというような形で,13条1号に規定する氏名とは別個のものとして規定する方法も考えられます。 ここで氏名の読み仮名を戸籍法13条1号に規定する氏名の一部と位置付けると,その規定ぶりにもよりますけれども,例えば「氏名(氏名を平仮名で表記したものを含む。以下同じ。)」というような形で規定するのが通例だと思いますけれども,そのような形で規定しますと,戸籍法における13条以降の氏名に関する他の規定におきましても,原則としてその規定の氏名には氏名の読み仮名が含まれるということになります。もっとも戸籍法には氏名というのが多く規定されておりますけれども,戸籍法の氏名と規定されているものに全て読み仮名を含むとする必要があるかは個別に検討が必要となります。例えば,同じ戸籍六法の212ページの13条4号を御覧いただきますと,実父母の氏名というのがありますけれども,この氏名に読み仮名が含まれるとする必要があるのかどうかというところでございます。実父母の氏名が各者の戸籍には記載されておりますけれども,そのときに,今は漢字等の氏名だけが記載されていますけれども,実父母の方にも読み仮名を設ける必要があるのかといった点でございます。また,これは戸籍法の問題ですけれども,戸籍法以外の各種法令の規定,あるいは民間の慣行等も含むと思いますけれども,こういったものについて氏名に氏名の読み仮名が含まれるのか疑義が生じることのないように,今回戸籍法に規定するときに手当てというか考慮をする必要があるのではないかと考えられます。 次に,三つ目の論点,氏名の読み仮名の許容性でございます。戸籍六法の今度は1545ページを御覧ください,随分飛びますけれども,これは法務省の民事局長通達に定めております出生届の標準様式というものでございます。この氏名の一番上の左側に(1)と書いてありますけれども,その上のところに,生まれた子についての子の氏名の上に「よみかた」欄というものがございます。これは住民基本台帳の事務処理上の利便のために設けられたものでございまして,氏名の「よみかた」については,戸籍事務では使用しておらず,市区町村において氏名の音訓や字義との関連性は現在審査されておりません。戸籍に記載されないことは,1544ページ,右側の中ほどに記入の注意というところがありますけれども,ここに,「よみかた」は戸籍には記載されません,住民票の処理上,必要ですから書いてくださいと注記が設けられております。 他方で,旅券法施行規則5条2項においては,旅券に記載されるローマ字表記の氏名について,旅券法6条第1項第2号の氏名は,戸籍に記載されている氏名(戸籍に記載される前の者にあっては法律上の氏及び親権者が命名した名)となっています,について,国字の音訓及び慣用により表音されるところによる,ただし,申請者がその氏名について国字の音訓又は慣用によらない表音を申し出た場合にあっては,公の機関が発行した書類により当該表音が当該申請者により通常使用されているものであることが確認され,かつ,外務大臣又は領事官が特に必要であると認めるときはこの限りではないと規定されております。 そこで,これらを踏まえ,氏名の読み仮名を戸籍に記載するに当たって,市区町村長は権利濫用の法理,公序良俗の法理などの一般法理の観点から審査するとするのか,これらの一般法理に加えて氏名の音訓及び慣用により表音されるもののほか,字義との関連性が認められるものに限り許容することとするのかが問題となります。 なお,5ページの第3の2に,既に戸籍に記載されている者についての読み仮名というのがありますけれども,これらの読み仮名につきましては,旅券などの他の公簿に氏名の読み仮名やそのローマ字表記が登録・公証されている場合には,そうした公簿との整合性についても問題となります。 また,この論点に関しまして,次のような三つの指摘がございます。一つ目に,慣用については,その範囲や判断基準を明確に定めることは困難である。二つ目に,氏にあっては慣用にない読み仮名も存在する。三つ目に,名にあっては命名文化として,最初に誰かが名の読み仮名として考えた漢字の読みが広まって,一般的な名のり訓,すなわち名前特有の訓読みとなるところ,仮に新たな名のり訓となり得るものが読み仮名として認められないことになると,これまでの命名文化,習慣が継承されないこととなるというものです。そこで,これらを踏まえて氏名の読み仮名を許容する審査基準について検討する必要があります。 次に,四つ目の論点は,読み仮名として用いる平仮名又は片仮名の範囲でございます。お手元の戸籍六法の,また戻っていただきまして,227ページの戸籍法50条を御覧ください。子の名に用いる文字につきましては,戸籍法第50条1項によって,子の名には常用平易な文字を用いなければならないとされております。そして,同条2項において,常用平易な文字の範囲は法務省令で定めるとされております。 二つ目,戸籍六法の303ページの戸籍法施行規則60条を御覧いただけますでしょうか。先ほどの戸籍法50条の規定を受けまして,戸籍法施行規則第60条において,常用平易な文字は,1号が常用漢字表に掲げる漢字,それから,2号として別表第2に掲げる漢字,3号として平仮名又は片仮名とされております。ちなみに,この1号の常用漢字表の括弧外のものに限るということは,少し分かりにくいのですけれども,括弧書きは除きますよという意味でございます。さらに,平仮名の表記につきましては,現代の国語を書き表すための仮名遣いのよりどころとして,現代仮名遣い,昭和61年の内閣告示1号でございますけれども,及び,現代仮名遣いの実施についてという,同じく61年の内閣訓令第1号でございますけれども,これが定められております。また,戸籍の先例上,小書き,小さい文字でございますけれども,や,片仮名についての長音も戸籍に記載することができるとされております。このような子の名に用いることができる文字の範囲を前提として,氏名の読み仮名として戸籍に記載する平仮名又は片仮名の範囲を定める必要があるものと考えられます。 次に,五つ目の論点は,氏名の読み仮名のみの変更でございます。戸籍六法の249ページを御覧いただけますでしょうか。249ページの戸籍法107条を御覧ください。氏につきましては,婚姻など様々な事由によって変動しますけれども,氏の変更については戸籍法107条第1項において,やむを得ない事由によって氏を変更しようとするときは,戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は,家庭裁判所の許可を得て,その旨を届け出なければならないと規定されております。また,名については,その次の行の戸籍法107条2におきまして,正当な事由によって名を変更しようとする者は,家庭裁判所の許可を得て,その旨を届け出なければならないと規定されております。ここで,氏や名が変動すると必然的に氏名の読み仮名もまた変動することになりますが,氏や名が変動しない場合にも読み仮名のみの変更を認めるかどうかが問題となります。また,氏名の読み仮名のみの変更を認めることとした場合には,その要件及び手続を定める必要がございます。 次に,六つ目の論点は,同一戸籍内の氏の読み仮名の規律でございます。戸籍六法の206ページの戸籍法6条を御覧いただけますでしょうか。戸籍法6条におきまして,戸籍は市町村の区域内に本籍を定める一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとにこれを編製する。ただし日本人でない者と婚姻をした者,又は配偶者がない者について新たに戸籍を編製するときは,その者及びこれと氏を同じくする子ごとにこれを編製するとされております。同一戸籍内の同籍者の氏は異ならないということになっております。したがいまして,これと同様に同一戸籍内の同籍者の氏の読み仮名も,また異ならないものとすることが考えられます。 具体的な検討事項の一つ目,氏名の読み仮名の戸籍の記載事項化については,以上でございます。 次に,部会資料の4ページの第3を御覧ください。具体的な検討事項の大きな二つ目は,氏名の読み仮名の収集方法でございます。まず,1はこれから出生する者や帰化した者など,氏又は名を初めて戸籍に記載される者に係る読み仮名の収集方法についてでございます。再び戸籍六法の213ページを御覧いただけますでしょうか。戸籍法15条でございます。戸籍の記載は,届出,報告,申請,請求若しくは嘱託,証書若しくは航海日誌の謄本又は裁判によってこれをするとされております。実際には,戸籍六法の200ページに目次が掲載されておるのですけれども,こちらの方を見ていただくと分かりやすいと思うのですけれども,中段に第4章,届出とあります。これがずっと続いて202ページの上段のところまで,戸籍訂正の一つ前のところまでですけれども,ここまでが届出ということで記載されております。この中には届出以外のものも記載されておりますけれども,いずれにしても,そのほとんどが届出によって戸籍に記載するという規定になってございます。また飛んで恐縮ですが,戸籍六法の1545ページを御覧いただけますでしょうか。先ほどの出生届の様式のところでございます。出生届の先ほどの左側の(1)番の生まれた子の欄に子の氏名という欄がございます。出生した者の氏名でございますけれども,戸籍法の13条1号に氏名というのが書いてありますけれども,これらについてはいろいろな形で,必ず届書の記載事項になっているというものでございます。そこで,氏又は名の読み仮名については,氏又は名が初めて戸籍に記載されることとなる戸籍の届書,すなわち出生の届書等の記載事項として戸籍に記載することとするということが考えられます。 次に,戸籍に記載されている者に係る氏名の読み仮名の収集方法でございます。既に戸籍法13条1号に定める氏又は名が戸籍に記載されている者につきましては,先ほどの1の場面とは異なり,氏又は名の読み仮名のみを別途収集しなければ,氏名の読み仮名を戸籍に記載することができません。具体的な収集方法としましては,本人の直接の関与なく氏名の読み仮名を適宜の方法により収集して戸籍に記載する方法も考えられますが,そのような方法を採用することについて国民の理解を得ることが困難であるという見方もございます。そこで,新たな届,例えば,氏名の読み仮名の届を設けることとし,これに加えて必要に応じて一定期間内の届出義務を課すという方法,具体的なイメージを申し上げますと,婚姻の届出などほかの戸籍の届出をするときには,そのときに併せて,そうでない場合には,例えば5年以内にというような期間を定めて,読み仮名の届出の義務を課すというものでございます。また,一定期間内に届出がない場合には過料の制裁を課すという方法なども考えられます。そして,これらの場合にはマイナポータルを利用するなどして届出をしやすくしたり,届出人,届出人になる方というのが正確ですが,この方に対し,個別に届出を促すということも考えられます。他方で,法定の届出という方式によるのではなく,多様な方法による本人の申出等に基づいて,市区町村長の職権によって氏名の読み仮名を戸籍に記載する方法も考えられるところでございます。 部会資料1の説明は以上でございます。 しろまる窪田部会長 どうもありがとうございました。 それでは,今御説明いただいた部会資料1に基づいて,これからディスカッションを進めていきたいと思います。冒頭で申し上げたように,今日は自由に御議論いただくということを考えておりますが,一方で,今御説明いただいた全部について全く順番関係なしにということだと,行ったり来たりということになりそうかと思います。基本的には第1の部分と第2の部分について,取りあえず自由に御発言を頂き,それから,一旦恐らく休憩を挟んでから,第3の氏名の読み仮名の収集方法,それから,第4のその他ということで議論していったらどうかと思います。ただ,余り厳密に議論を進めていくというつもりはありませんので,第4の方に行った上で,さらにやはり先ほど落としていたものがあったということで御発言いただくことも,もう自由と考えております。そうした形で,余り固く縛りを自分で掛ける必要はないと思いますので,自由に御発言いただき,意見あるいは前提となることについての御質問でも結構なので,発言していただければと思います。いかがでしょうか。先ほどありましたように,ウェブ参加の方は手を挙げるという機能を使っていただければ,こちらで対応することができると思います。 すみません,ディスカッションと申し上げましたが,少し遅れて参加してくださった舩木先生,一言御挨拶を頂けますでしょうか。 しろまる舩木委員 ありがとうございます。先ほどは失礼しました。広島で弁護士をやっております舩木です。昨年度,日弁連の家事法制の担当の副会長というのをしていた関係で,前回のこの前身である研究会の委員に選任していただきました。その関係で今回も委員に選任していただきました。どうぞよろしくお願いします。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。 それでは,ディスカッションに入りたいと思いますが,いかがでしょうか。 しろまる舩木委員 第1のところでは,先ほど土手さんからも説明がありましたように,必要な理由というところが,(注4)の点についての説明がございました。今回の氏名の読み仮名化を行う,その必要性あるいは理由の点については,前回の研究会においてもかなり議論をしたところであったと思っています。そこで議論されて取りまとめている内容は,今回参考資料として出していただいた,氏名の読み仮名の法制化に関する研究会の取りまとめの方の資料ですけれども,その2ページの3,氏名の読み仮名の法制化が必要な理由として,1と2という形で取りまとめています。さらに,4ページの4のところ,氏名の読み仮名が登録・公証される意義という形で更に付加されています。今回の(注4)のところで書いている内容であるとか本文のところで書いてある内容というのは,今の国会による決議であるとか,閣議決定とか,タイミング,時機の問題であったり,あるいは検索とか管理という観点で必要だという形で取りまとめているわけですけれども,元々この研究会の方で議論していた内容は,そういう点もあるわけですけれども,それだけにとどまらないと。要するに,氏名の読み仮名を一意のものとして,それを整理すること自体が国民の利便性を向上させるとか,特に,先ほどの補足資料の4ページの氏名の読み仮名が登録・公証される意義というところでいいますと,氏名の読み仮名が一意的に決まり,それを登録・公証すること自体に意義があると考えられる以上,多くの日本人にとっては氏名と同様の読み方にも強い愛着があるため,これが戸籍などの公簿に登録・公証されることにも意義があると考えられる,そういう具合に取りまとめてあります。その観点も,やはりこの必要性のところでは,非常に重要なことではないかという点が,思っております。これからの第2のところの論点を考える上においても,この必要性とか理由というのは影響すると思いますので,その点もやはり,研究会の取りまとめと同じような認識でいいのかどうか,その点について,私はそれで,そこは重要ではないかと思っておりますので,意見として述べさせていただきました。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。もちろん研究会の報告書にこの法制審議会が縛られる必要は全くないですが,一方でその前提となる研究会においてどんな議論があったのかということを知っておいてもらうというのは,多分無駄ではないのだろうと考えております。今,舩木委員からお話があったことなのですが,私の方からも若干補足させていただいて,議論状況について説明させていただければと思います。 元々この研究会の方も,出発点としては利便性というところに多分ウエイトがあったのだろうと思います。私の名前,窪田充見という,充見の方は特に難読の読み方なのではないかと思うのですが,漢字だけではソートしても漢字のコードによって順番が決まってしまう,それに対して,カナのクボタアツミというのを使ってソートすれば,簡単に正しい五十音順でソートできるといったようなものが多分,利便性の側面としては典型的に挙げられるのだろうと思います。ただ,前回の研究会で,中間ぐらいからだと思いますし,笹原委員からの日本語文化についての御説明というのが多分,みんなに影響を与えたのだろうと思いますが,例えば私の名前,先ほども申し上げたように,平仮名で「くぼたあつみ」と書くわけですが,私が多分4歳,5歳の頃に一番最初に自分の名前として意識するのは,平仮名というか,音としてのクボタアツミという音であって,それがどういう漢字で補われるのかというのは,実はもっと後になってからということなのではないかと思います。その意味では,単に読み仮名,ふりがなということではなくて,平仮名の名前そのものも一定の意味を持っているのではないかということが,これも研究会の中で完全に同じように共有されていたのかはよく分かりませんが,でも,そういう側面があるのだなということは途中から強く意識されるようになったのではないかと思います。今,舩木委員から御指摘があったのは,そうした点も踏まえた上で今回の名前の問題,読み仮名の問題を扱っていきましょうという基本的な方向ということだったと理解しております。舩木先生,それでよろしいでしょうか。 しろまる舩木委員 はい,そのとおりで,ありがとうございました。 しろまる窪田部会長 この方向で,では皆さんそうしてくださいという趣旨ではなくて,そういうふうな考え方がありましたよということですので,それを前提に自由に議論していただければと思います。 しろまる小幡委員 ありがとうございます。小幡でございます。今,必要性という話がありましたが,私もそれはとても大事なことだと思っています。今回,戸籍に平仮名とか読みを法律で記載事項に入れることを考えた場合の,そのための研究会だと思いますが,おそらくいろいろな国民の考え方があって,今までは入っていなかったのかと思う方も多くいらっしゃると思います。特に今,出生のときの届出に一応,住民基本台帳の便宜のためと,注意書があっても余り読まないですから,当然書くものだと思っている。ただ,確かに住基もそうですけれども,戸籍の方も証明事項にはならない,なり得ないですね,法律に書いていないので。ただ,皆さん,部会長もおっしゃいましたように,小学校の頃から自分は何と呼ばれるかということは自分で,小さいときは親ですけれども,届けているのだという感覚があるのだと思うのです。それはある意味,自分でコントロールして,自分の希望に基づいてそう呼ばれているという状態だと思います。 今回,それをもっときちんとした形で戸籍に法律で位置付けようということになります。戸籍というのは本当にとても奥が深いものと思っておりまして,私は2017年頃に住民基本台帳制度の方の研究会の座長をやったことがありまして,そのときにも住基と戸籍の関係とか,戸籍の附票の話とか混み入っていましたので,戸籍というのはかなり技術的に奥の深いものなのですね。そういう中でそれをどう仕組んでいくのかという技術的な問題もさることながら,やはり国民に今度法律事項になぜする必要があるのかということを分かりやすく説明していく必要があると思います。今でも結局,住基の便宜といって,自治体は住基のデータ化のためにふりがなを使って,読みでデータ化しているようです。例えば大阪市の住基のホームページを見ると,氏名に読みを振っていますが,これは便宜ですと,読みがか違うということがあれば申し出てください,そういう書きぶりがホームページにあるのですが,今でも何かの形で使われているのものなので,今回,それを法律で一元化するのであれば,その必要性を十分説明する必要があると思います。 いろいろな方がいまして,最近は,多様性が強く意識され,画一性を嫌うところがありますので,自分でこれがよいとただ自然に決めさせてくれればよいではないか,例えば,確かに,自分は小学校の頃はこう名のっていたけれども,大人になったらこういう呼ばれ方にしたい,という漢字の読み方について,自由に変えていた方もいたような気もしますし,法律で決める必要もないのではないかという議論や,法律で決める場合にも,これからの議論で,変更を自由に認めるか,どういうふうに認めるかとかいうところに関わってくると思いますが,要するに,既に今,読みはあるわけで,皆それぞれ呼ばれているものはあって,自分が納得しているものがあるので,それを自分で自由に変えられないものとして,なぜ一元的なものにしなければいけないのかということが議論になりえます。私はやはり,国際化も含めまして,デジタルの検索とか,そういう必要性が大きいと思いますが,やはり分かりやすく丁寧に説明していく必要があるのではないかということを感じております。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。今,小幡委員からありましたのは,読み仮名を戸籍の記載事項とするということの説明というより,それを法律によって一元的に扱うということを十分に納得できるような形で説明していく必要があるということであったかと思います。その点は御指摘のとおりなのだろうと思います。多分いろいろな説明の仕方があるし,それほど単純ではないのだろうと思いますが,もっと自由でいいのではないかというのに対して,少なくとも戸籍の記載事項としたら,そう簡単には変えられないようになりますので,その点について十分な説明をしていく必要があるということで,これはずっとこの法制審を通じて議論していく中で何度もフィードバックしながら出てくる課題なのかなと思います。 しろまる鷲崎幹事 鷲崎です。今の御指摘に関連しまして,やはり基本的な視点の中で,国民に対して丁寧な,きちんと納得のできる理由の説明というのがまず第一に求められると思います。その観点から今日,冒頭の御指摘,御質問などに関連して,今の(注4)ですと,管理の能率を向上させるということが第一に掲げられているのですけれども,それよりまずは,やはり国民の目線で,国民や社会においてデジタルサービスの向上,加速ということが社会的な喫緊の課題であるということ,そのために速やかな個人の特定を通じてシステムやサービスの連携ということが不可欠であると,そういった国民目線で不可欠な喫緊の課題であるということの理由説明が第一にあった方がよいのだろうと思いました。 しろまる窪田部会長 ありがとうございます。 いかがでしょうか。 しろまる藤原委員 藤原です。何か利便性というか,検索とか管理の能率とか,そういうものではなくて,やはり個人として正しくその一個人が名前として読まれる,認識される,やはりそこを,個人が大切だということを前提に置いた方が,皆さんに理解されやすいのではないかとは思っております。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。恐らく鷲崎幹事,藤原委員の御発言というのも,二つの選択肢のうちどちらという話ではなくて,それぞれ多分,重要なものとして挙げることができるのだろうと思います。 しろまる常岡委員 常岡です。今の2点,利便性の向上と,それから,氏名をどのように読んでほしいかという話ですけれども,今,藤原委員が言われたこととも関連しますが,他人から自分の氏名を正確に呼称される利益というものが憲法上の人格権という形で確立してきていると思います。そして,自分がどういうように読んでほしいかということと,それから,他人から正確に自分の氏名を呼称されるということとは,これは少し切り口が違っています。他人から誤った読み方をされないことが,部会長もおっしゃいましたように,読み方も含めてその人の氏名であって,その人の人格であるとすれば,今この段階で戸籍において氏名の読み仮名を明記するということが,憲法上といったら大きな話になるかもしれませんけれども,一つの人格権を保障する機会になるのだという,そのような位置付けかなと考えましたので,この点が一つの理由になるかなと思います。 しろまる窪田部会長 ありがとうございます。 ものすごく面白いですね,いろいろ出てきて。ほかに御発言ございますでしょうか。本当に自由に。 しろまる冨田委員 ありがとうございます。冨田です。今,先生方がおっしゃっておられた点は,非常に重要だと思っております。特に今回関わらなければ,戸籍に読み仮名が付いていなかったことすら認識していなかったというか,あって当然だろうと思っておりました。その観点からすると,やはり,なぜ今改めて読み仮名を登録しなければいけないのかということに対する,多くの方々の納得のいく説明が必要なのではないかと思います。今日御説明を頂いている論点のこれまでの経過のところには,繰り返し読み方を付すべきだという議論があったという事実の記載はあるのですが,なぜそのときに,法制化に至らなかったのかという理由がここには記されておりません。その辺の変化がきちんと感じられるようになれば,なぜ今なのか,それがデジタル化などによって我々の日常の生活の利便性が向上するという時宜を得た,理解につながるのではないかと思いますので,意見させていただきます。 しろまる窪田部会長 ありがとうございます。その点は今,少し御説明をさせていただいた方がよろしいのかなと思います。研究会取りまとめの中にありますが,過去,一つは民事行政審議会における検討がなされています。また,報告書の2ページ,戸籍制度に関する研究会における検討ということで,法務省の研究会としての一つ前の戸籍法部会があるのですが,その戸籍法部会に先立って開催された研究会の中でもこの問題が検討されております。ただし,いずれも見送られています。後で,土手さんからもう少し丁寧に説明していただけると思いますが,ごくかいつまんで言うと,確かに読み仮名を戸籍の記載事項とすることには意味がありそうだという点ではほぼ一致はしていたのですが,しかし,そうした場合に,特に,実は2番目の方の研究会は私も参加していた研究会であったのですけれども,その中で出ていたのは,やはり漢字と読み仮名の関連付け,これが全く関係ないものでもいいのかどうなのか等々,また,正しく今回の審議会の課題になっていることなのですが,どうやって集めるのだということ等が問題として考えられていました。結局,実はそれぞれの研究会,審議会においては別のより中心的な課題があった中で,読み仮名の問題は十分に対応する時間がないということで先送りをするということだったのではないかと記憶しております。土手さん,補足していただけますでしょうか。 しろまる土手幹事 幹事の土手でございます。今,窪田部会長が御説明したところなのですけれども,若干,補足というか細かいところを申し上げますと,これまでの検討,特に民事行政審議会のときには,おっしゃるとおり別な検討,それから戸籍制度に関する研究会においても別な課題が主テーマの中で,その中に関連して,この読み仮名というものについても必要性があるのではないかという点があった,まだそこまでのニーズがなかったということかなと,今から振り返ると思っております。そういった中で,研究会報告の7ページの(2)で,国会答弁の当時のデジタル担当の平井大臣が答えられておりますけれども,デジタル化というのがここ数年,急速に進展されておりまして,正にベースレジストリという言葉も最近になって使われている言葉だと,私どもが考えておるのですけれども,その中で,やはり戸籍というのが非常に情報の国家の基盤になるものであるというところで,やはりその中では漢字ではなくて読み方だというところが急速に高まってきた,それがデジタル庁の設置等にもなって,デジタル化の推進を国だけではなくて官民挙げてやっているという中で,ニーズが高まってきたということだと思っております。課題は別に解決されたわけでもなんでもなくて,難しい課題はそのまま残って,この法制審議会の委員の皆様に検討していただかないといけないというところで,課題が消えたわけでは全くなくて,ニーズが高まったと認識しております。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。 それでは,ほかにいかがでしょうか。今,第1の部分を中心に議論していただいていますが,第1の部分でも結構ですし,第2の部分の,これも1から順番にやっていく必要はないので,気が付いた点について,何かあれば自由に御発言を頂ければと思います。 しろまる大谷委員 発言機会を頂きましてありがとうございます。今まで各委員の方がお話しになったことについては,全て共感させていただいております。検討の目的であるとか,国民にどのように説明していくかという確認をこの機会にさせていただいて,非常によかったと思います。私自身,視覚障害のある友人,知人が多いのですけれども,そういった方々にとっては名前というのは本当に耳から入ってくる読み仮名そのものでありますので,それを正確に記録するということですね,とても意義のあることだと思っております。そして,また併せて検討の意義として強調していただいていることですけれども,やはり本人確認について,国の持っているインフラのDXを進めることというのは非常に意義があることだと思っておりまして,この機会に,様々な検討の選択肢がありますけれども,検索の便宜,あるいは連携するシステムでどのようにそのデータが取り扱われていくか,その整合性を確保して,国民,国民に限らずですけれども,正確に検索される利益といったものを実現できるような選択肢を選んでいかなければいけないと思っております。様々な選択肢から自由に決めていくことはできると思いますけれども,これから本人確認の基盤として使われていく情報になるということを踏まえますと,正確に検索されないがために行政サービスの享受から漏れていくという不利益を与えかねなかったりするわけですので,その点に注意してこれからの検討を進めていく必要があるのではないかと思っております。 マイナンバーとの関係で言いますと,確か令和5年から戸籍法の改正によって戸籍情報の連携がなされるということで,様々なシステムでこの戸籍の情報が用いられていくことになりますので,その基盤としてふさわしいお手伝いが皆様と御一緒にできればと思っております。個別のテーマについては,特に私が関心があるのは,どちらかというと収集方法の部分ですので,それ以外の事項については皆様の御意見を聞きながら発言させていこうと思っております。ひとまず以上でございます。ありがとうございます。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。特に,正確に検索される利益というのが名前の役割としてすごく大事なのだろうと思います。収集方法のところについてはまた御発言を頂きたいと思いますが,第2までのところで,ほかにいかがでしょうか。 しろまる若月委員 主婦連合会の若月です。もう既に御発言がありましたが,私も,えっ,読み仮名って付いていなかったのだと驚いたというのが最初の正直な感想でした。その後たまたま戸籍謄本を取る機会があったので,確かに付いていないなと,もちろん付けてほしいと私は思いました。単純に記載事項とすれば良いではないかと思ったのですけれども,そうするにもきちんと法的なバックグラウンドをまず整えなければいけないというのを知って,本当に素人はびっくりしています。読み仮名を付けること自体は,これからのことを考えると,いろいろなデータを関連付けていくのに必要なことだと思います。特に若い方とかはきらきらネームとかいろいろあって,普通の漢字の組合せなのに読めないよねというのも多いので,読み仮名は必要だと思います。しかし,読み仮名を記載事項とするのに少なからぬ課題があるということも知って,驚きつつ,自分でも一生懸命考えていきたいと思っています。読み仮名は是非記載事項にしてほしいし,それを定めるには検討し解決しなければならない課題について,一般の人々にも分かるように説明していただきたいと思います。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。恐らく,今日の部会資料1の2ページの第2に挙がっている1から6辺りのことが,具体的にはやはり読み仮名を記載事項にしようと思うと,難しいよねということの障害になってきたということだろうと思います。その辺りも含めて議論していただければと思いますし,例えば,比較的分かりやすい例としては,3番の氏名の読み仮名の許容性というふうなのは,一体どこら辺まで許容されるのだろうかと,自分自身の馬鹿々々しい例を挙げるのは恥ずかしいのですが,窪田充見のアツミというところまでは許容できるかもしれないけれども,あの充見という漢字の横にルートヴィッヒというふりがなを付けたら,それは許容されるだろうかというような例も研究会でも出ていたかと思います。いろいろなパターンもありますが,どうなのだろうかということも含めて,これまでの研究会ではうまく結論が出なかったということです。 しろまる鷲崎幹事 では,続いて第2のところにつきまして申し上げさせていただこうかと思いますけれども,読み仮名の,特に平仮名か片仮名かということも論点ということだと思いまして,そこも申し上げてよろしいでしょうか。 しろまる窪田部会長 お願いします。 しろまる鷲崎幹事 様々な考え方があると思うのですけれども,例えば平仮名とする場合においては次の点が特徴としてあるものと思います。むろんこれらに固執するものではありません。 一つは,先ほどの研究会の取りまとめの資料にもありましたように,元々住民基本台帳に向けた出生届の方の「よみかた」,これは平仮名が採用されていますので,それに合わせないといけないという強い理由ではないと思いますが,そこでの整合という意味では割と自然な流れということが一つあるのだろうと思います。なお,銀行の方では基本,半角片仮名が用いられていますけれども,これは全銀のシステムが通信量,データ量を抑えるために半角仮名を当初用いてきたという,割と技術上の制約の話が多分に大きかったと私は捉えていまして,そこに必ずしも今の時点では引きずられる必要はないのではないかと思います。 もう一つは,私自身の研究成果ではないのですけれども,平仮名と片仮名を比較すると,複合語ですとか,例えば四字熟語ですとか,ああいったものの意味理解においては平仮名の方がどちらかというと片仮名よりは優れるという研究成果もあるようです。平仮名の場合片仮名と違って,全てを音声符号化するのではなくて,割と前後から少し類推して意味を読み解いていくということが恐らくできるのではないかという仮説があるようですけれども,漢字の氏名におきましても氏,また名前において意味を持たされている形がしばしばあることを考えますと,平仮名が意味理解に優れる可能性があるという点は考慮の余地はあるのではないかと思いました。 しろまる窪田部会長 ありがとうございます。すみません,1点だけ,平仮名の方が四字熟語とかで理解に優れるというのはどういう意味でしょうか。少し教えていただければ助かりますが。 しろまる鷲崎幹事 これは私自身ではなくて,成城大学の篠塚先生の研究成果("日本語文字形態(漢字,ひらがな,カタカナ)による認知言語処理の差異",成城文芸,2012)を拝見しているのですけれども,片仮名の場合は頭の中で全て一字一字音声として解釈しまして,そして意味を理解していくと。例えば,「男女同権」について片仮名ですと,「ダンジョドウケン」という具合に全ての文字を記号としてきちんと解釈して,自分の頭で音声として組み立てて,最終的に,それは男女同権ということをいっているというふうに解釈できると。片仮名がどちらかというと,やはり外来語の表現に用いられてきて,必ずまずは音声符号化するという癖ですとか,そういうことが多分にあるのだと思うのですけれども,平仮名の場合にはしばしば,一字一字,音声として頭の中で組み立てなくても,割と前後でそれとなくどうも補っていって意味を理解できる場合があるという捉え方です。「だんじょどうけん」ですと,いちいち文字を全部「ダンジョ・・・」というふうに頭の中で読まずとも,前半において「男女」という意味を捉えている可能性があると,そういう仮説であります。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。 しろまる小幡委員 小幡でございます。読み仮名を法律事項にするというときに,やはり一番悩ましいのが,どこまで許容するかという問題が,初めて出てくると思います。今までは審査も何もなくて,自由に適当に任意に選んで呼ばせていたという実態があるのですが,やはり法律事項になると,その辺りをどこまで許容するかという問題が初めて出てきます。ただ,先ほどから委員の先生方からもありましたように,きちんと法律事項として決まれば,どういう読み方であっても,間違って呼ばれないという利益は得られるわけです。ここは,もう研究会の取りまとめのところで,かなりいろいろ議論なさって苦心されていることはよく分かるりますしが,公序良俗に反するなどのところや,権利濫用とかもあると思うのですが,例えば,普通の人では全く思い浮かばないような読み仮名を振るということでも,それは戸籍上でしっかり法律事項になれば,みんなにこれで読めということにはなるかと思うのです。自分で決めたことなので,それでよいではないかということかとは思うのですが,他方でお子さんに最初に出生届のところでそういうふうに親が読みを振ることによるお子さんの方の不利益というのが将来出てくるのかという問題は出てきます。この辺り,やはりどこまで許容するかというところが難しいところで,どのように読んでも,自分の決めた読みでよいではないか,それでもう法律で決めれば,皆さんにもこう読むようにと要求していけばよいわけですから,それでよいと割り切るか。そのような考え方でよいのかというところが一番難しいところかなと思っています。 取りあえず,私は前の研究会には出ていないので,感想です。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。恐らくその点が一つ,非常にやっかいな問題として,これまでの研究会等でも十分にすぐには対応できないということだったのだろうと思います。ただ,今までの研究会では,それは主たる事項ではないので先送りにしましょうということだったのですが,今回はもうこれに正面から取り組んでということになりますので,多分,いろいろな考え方の違いというのも出てくると思うのですが,正しくそれをお互いにぶつけ合う中で,どこかに一定の方向性を出していけたらいいなと思っております。ありがとうございました。 しろまる笹原委員 ありがとうございます。今,鷲崎幹事の方から出していただいた仮名について,私の気になっていることを申し上げます。 平仮名か片仮名かというのは,おっしゃるとおり一長一短あるように思われます。片仮名の方が逆に言うと,表音性が高くて,音だけに特化して読み取りやすいなんていう可能性もある一方で,おっしゃるように平仮名の方が塊として表意性を帯びていることが多くて,読み取りがしやすいという面もあると思われます。また,それぞれの機能とは別の字の数ですね,字種というレベルなのですが,例えばヴは,Vの音に日本人が好んでよく使うわけですけれども,ヴは片仮名には非常によく使われる一方,平仮名に置き換えると大変違和感があるなんていうこともよく言われるところです。また,JIS漢字という経済産業省がまとめた漢字セットというものがあって,第3,第4水準なんていう規格などの制定に私も関わったのですけれども,そのなかには鼻濁音専用の片仮名,例えば「カ」を書いて「 ゚」を付ける,そうすると,ガではなくて「ンガ」みたいな音を表記できる,あるいはアイヌ語用のプを小さく書いた片仮名といったものも採用されています。これは平仮名に簡単には置き換えることができないというようなこともあって,これらを今回認めるかどうかということ自体もこの先,議論をしていかなければならないことだと思うのですが,そういう体系,セットとしての大きさに違いがあるということも気になっているところでございます。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。前提となる片仮名,平仮名に関する状況を御説明いただきました。ありがとうございます。 しろまる村林委員 村林でございます。この法制度の戸籍で読み仮名を公証するということについては,デジタル社会の国民サービスのためにやるということだと理解しております。そのときに,デジタル・ガバメントの実行計画にも書いてあるように,ワンスオンリー,それからコネクテッドワンストップ,これをきちんとやるためにも必要なのですよと,やることがこれの意義を高めることになると思いますので,いわゆる役所に行くと毎回,氏名とかを全部書いて何か申請をするわけですけれども,それに読み仮名までまた追加になってしまうと,かえって利便性が落ちるということになるので,きちんと一回届けたらワンスオンリーで,例えばマイナンバーカードを提示すれば自動的に氏名も読み仮名も違う届出に反映されるというようなことも含めて,利便性が上がるのですよというようなことを,この先,これはデジタル庁にお願いになるのだと思いますけれども,せっかくこれを公証するという大作業をやるので,それを是非お願いしたいということが1点です。 それから,そういう観点から行くと,氏名の読み仮名の位置付けですけれども,やはりデジタル社会にふさわしいという意味では,データ項目も考えると,やはり一部と位置付けるというのはデジタル社会というイメージから少し遠いので,やはりきちんと氏名あるいは読み仮名というデータ項目として保有をして,それをデータ間連携でコネクテッドワンストップにつなげられるとか,そういうふうにされるのが私としてはいいのではないかと思います。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。1点目は,デジタル時代の国民サービスのためにやるという以上,それを実効的に,かえって不便なことにならないようにということで,恐らくこれは法務省だけで何とか対応できることではないと思いますが,それを前提に考えていくということであったかと思います。また,第2の視点というのは,デジタル時代の役割というのを考えると,名の一部というのではなくて,もう独立のデータ項目として位置付ける方が自然ではないかということで,これはここでも扱う問題に直結するお話だったかと思います。ありがとうございます。 ほかにいかがでしょうか。 しろまる冨田委員 ありがとうございます。論点の最初に,氏名の読み仮名を平仮名にするのか,片仮名にするのかという論点がありますが,二つの方向から検討する必要があるのではないかと思っております。一つは,検索の利便性を上げるということになると,検索のシステム側でどういうような仕様にするのかも課題になると思います。キーボードは,ひらがな打ちとローマ字打ちができますので,そうしたことも検討の一つになるのではないかと思います。もう一つは,どちらかに絞る時の懸念点です。実は私の祖母の名は漢字ではなくて片仮名です。平仮名の名前の友人もいます。そうした方々のことを考えたときに,自分の名前の読み方を,片仮名で書いてあるにもかかわらず平仮名を登録する,逆もしかりですが,読み方と名前が,若しくは表音の愛着だとかの一致をするとしながらも,結果として不一致になるということもありえます。したがって,どちらかということではなくて,両方あり得るということもあるのではないかと思います。ただ,冒頭申し上げたとおり,これをシステム化したときに整合させるとなると,別の問題点もあろうかと思いますので,この辺りは議論していただけると有り難いと思います。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。今,全体としては平仮名と片仮名いずれかということもあるけれども,いずれかに決める必要もないという選択肢もあり得るのではないかという御発言だったと思います。この点もこれから検討していけたらと思います。 ほかはいかがでしょうか。 しろまる西幹事 西でございます。ありがとうございます。第1のところで申し上げるのを忘れてしまったこと1点と,第2に関する質問を3点,申し上げます。 第1につきましては,先ほどからいろいろな形で戸籍の記載事項化することの意義があるというお話が出ていますけれども,例えば,正確に呼称される利益とかいうのは今に始まったわけではなく,昔からあることが今なぜあえて,ということが問われると思います。今それらが非常に重要だということが認識されるようになってきたというのはもちろんありますけれども,時代の変化というのもやはり説明するときには便利なのかなという気がしております。その観点からは,先ほど出てきたデジタル化の進展ということもありますし,きらきらネームなどが増えてきて読めない名前が増えてきたということもありますが,さらにもう1点,研究会のときにも申し上げたことなのですけれども,国際化という視点もありうるかと思います。外国人のお子さんが日本で生まれて名前を付けるというときには,漢字よりもむしろ音から入るということがあると思いますので,音の方により愛着を感じる,文字よりも音に愛着を感じるということもありますし,そういう観点からも意義を説明できるのではないかと考えております。 第2に関する質問は,今お答えいただきたいというわけではなくて,これから具体的に検討していく際に教えていただければということです。第2の1のところの氏名の読み仮名の名称に関しては,先ほど来,平仮名か片仮名かということが問題になっていますけれども,そもそもこの名称をどうするのかということについて,「よみがな」,「ふりがな」とするのか「よみかた」とするのか,いろいろあり得ると思うのですが,今既に使われている言葉をそのまま使った方が問題が生じにくいようにも思います。後で出てくる収集方法とも関係あると思いますが,例えば出生届に書いてある「よみかた」を収集するというようなことになった場合に,その言葉と違うことで疑義が生じないように,今現在,出生届とか婚姻届とか,先ほど見た書式の中では大体「よみかた」という平仮名になっていましたが,ほかの書類とか,場合によっては法令などにもあるかもしれませんので,そういうところでどういう言葉が使われているのかというのを教えていただければと思います。 二つ目は,第2の5のところ,4ページで,氏名の読み仮名のみの変更という論点が挙げられていまして,これが出てくると,逆に漢字だけを変えたいという人も当然いると思います。読み方は変えないけれども漢字を変えたいと。その場合は従来の107条とか107条の2で対応するということで,特に論点として挙げる必要はないのかということを御検討いただければと思います。 最後,6のところで,同一戸籍内の氏の読み方の規律は,自然に考えると統一した方がいいとは思うのですけれども,今現在,例えばパスポートの場合にはどうなっているのかというのを教えていただけると,検討する際に手掛かりになるのかなと思います。同時に申請される場合には当然,同じローマ字を振るのだと思いますけれども,別のときに申請された場合,前に申請した同一戸籍内の人とローマ字が違うと駄目だということで訂正を求めているのか,その辺りがもし分かれば。もちろん今でなくても結構ですけれども,具体的な検討のときに教えていただければと思います。 以上です。ありがとうございました。 しろまる窪田部会長 どうもありがとうございました。第1点は,正確に呼称される権利,利益といったものはもちろん重要だとしても,従来からあったものが,それを今なぜ扱うのかということについての理由が必要だろうということで,具体的に,例えばデジタル化,デジタル社会,あるいはきらきらネーム,それから国際化ということも挙げていただきましたでしょうか,そうしたことがあるのではないかという御指摘,御意見だったと思います。 それから,2番目の御質問,3点ありますが,一つは読み仮名という名称にするか,「よみかた」という名称にするのか,いろいろなものがあるのではないかと思いますが,どれにするかということについて,西幹事からは,現に使われているものをできるだけ使っていく方がそごは生じにくいのではないかということで,これについて,出生届のところは資料としても先ほども御説明があったのですが,ほかにどんな言葉が使われているかということについて教えてほしいということで,これは直ちにというのは難しいと思いますが。 しろまる土手幹事 1点だけ,幹事の土手でございますけれども,戸籍六法の1334ページにたまたまほかの届出があって,国籍離脱届という日本国籍を離脱するときの届出なので,そもそも日本国籍をなくすパターンなので,少し遠いのですけれども,この場合はなぜか「ふりがな」となっております。一方,国籍を取得する方のものは,その後に1343ページにあって,これは戸籍にいずれ載るものなのですけれども,こちらは「よみかた」と書いてあるので,恐らく戸籍の世界とか,そういうところでは統一されているのでしょうけれども,様々な読み方がされているのではないかと,法務省の同じ読み仮名を使うものについても,いろいろずれていると。よく見てみたら,国籍を失う方なので,もう違うというのはありますけれども,ただ,今までそういうことは意識していなかったはずなので,そういう意味では両方あり得たのかなということで,多分,法務省のほかの,例えば登記とかいろいろなものの請求書の様式とか,そういったものにも様々な名称が付けられているのではないかということが想定されます。 しろまる窪田部会長 追加でまた調べることができたら,また情報提供していただければと思います。 2点目の御質問は,読み仮名のみの変更ということについての記載があるけれども,逆に,読み仮名の方は変更せずに漢字の氏名だけを変えるということもあり得るのではないかと。実際,江戸時代とか戦国時代とかだったら,音だけを残して名前を変えるというようなことがよくあったように記憶しておりますが,笹原先生がきっと後で正しく御説明してくれると思います。そうしたものについても考える必要があるだろうということで,これは今どうかというよりは,読み仮名だけの変更と同じように,むしろ読み仮名を変えない氏名の変更について手続をどうするかということも併せて考えていきましょうということだったと思います。 それから,3番目として,現在のパスポートの扱いということで,特に,一遍パスポートの申請をして,その後,一遍パスポートが切れた上で再度申請するというときに,違う振り仮名で申請するといったような場合にどうなるのだろうかということであったかと思いますが,これについては外務省の方でお答えいただけますか。 しろまる山口幹事 ありがとうございます。西先生の今の質問に行く前に,我々も省令でパスポートの申請書を定めておりまして,「ヨミカタ」という言い方をしております。これで統一しております。 今,部会長から御指摘があった西先生の御質問の点につきましては,基本的には戸籍に準じて,一旦氏名を決めたら,それについては戸籍が変わって記載事項が変更しない限りは,それは変更できないということを省令で定めております。また,氏の扱いにつきましては,パスポートの発給自身は都道府県知事への法定受託事務でございまして,処理基準を定めてそれぞれのパスポートセンターに事務を委託しているわけでございますけれども,その処理基準の中では,氏が公的制度であることに鑑みて,表記の統一を図ることとするということにしております。 しろまる西幹事 ありがとうございました。 しろまる笹原委員 今,西幹事,部会長から関連するお話があり,また部会長から御指名がありましたので,簡潔に申しますと,漢字のみよい意味のものに替えて,発音はそのまま維持するということは,部会長のおっしゃるとおり,かつてはよくあったことでした。漢字をよりよくして,発音はそのまま据え置くというパターンですね。また,逆に君主の名前に関して,君主が代替わりをしたために,その名前と同じ漢字を使っていたなんていう場合に,それを避けて,諱(いみな)を避けるというものですが,ほかの漢字に変えて,読み方はそのままなんていうケースもありました。過去のことではありますが,そのようになっております。 もう1点,先ほど小幡委員がおっしゃってくださったことに関連して,発言よろしいでしょうか。資料の第2の3の辺りのことかと思いまして,私も先般の研究会で一番考えさせられ,まだ結論が自分の中でもできていないことなのですが,会の中でも議論して,いろいろ教えていただいたので,大分整理が付いてまいりました。漢字と日本語の交錯する複雑な運用というのが日本の氏,名前に集約されているわけで,さらに氏においても複雑な経緯というものがあって,字義と読みが不一致のもの,習慣によってのみ支えられているもの,あとは新規の,いわゆる帰化によって新しく作られる氏で読み方が独特なものなどがあるかと思っております。名前については1億2,000万人にプラスして,毎年80万人ぐらい新生児が生まれているということは,命名もそれだけなされているということかと思います。統計がいろいろあると私も客観的に語りやすいのですけれども,知るところで例を少し申し上げたく思います。 行政においては,よく字義,漢字の意味という意味ですね,字義と読みとの関連性ということを問題にされてきたので,手っ取り早く大まかなことを言うと,例えば,ノリと読む漢字がたくさんあります。法律に関する審議会なのでそれを挙げるわけですが,法子でノリコさん,律子でもノリコさんという方がいらっしゃる。規則の規,則も実はノリ,ノリと読める,典範の典,範もノリ,ノリと読めてしまうわけですが,そのように,恐らく奈良時代,平安時代の人たちが,のる,上から何かを告げるという意味で,それらの字に次々とノリという広い意味を持つ読みを与えていった。それが訓読みという形で昔はあったのですが,やがて名乗り訓というものに変わっていって習慣化していったわけですね。 字訓はたいてい字義に沿った読み方なのですが,大漢和辞典という5万文字を載せている漢和辞典でざっと見ますと,違う意味のノリも少し含んでいるのですが,80文字ぐらいノリと読む漢字がございました。幕末に名乗り字を集めた辞書を見ると,200文字ぐらいに増えております。そして,最近の例というのが今一つよいデータがないのですが,二十何年か前に「JIS漢字」を作るときにNTTの電話帳の4,000万人分調べたデータがあって,それによると,ノリと読む字が300字ぐらいまで増えています。80,200,300と増えている。そして,その後また20年の間に,西幹事がおっしゃったように,新規の読み方の字が大分使われているのではないかという印象もございます。 こういう歴史を一個一個積み重ねていくと,新規の読み方というものをどう見るかが問題となります。私などにはとても読めない学生の名前はたくさんあるわけですが,恐らくそれは,50年前,100年前,300年前にも読めなかった名前にそういう感想を持った人がたくさんいただろうと思われます。ただ,それも現代の我々からすると,普通に見慣れている読み方だ,名前にはよくあるな,名乗り訓なのかなと理解するようになっている。そういうことを考えると,昨日今日現れた読み方であっても,それをすぐに排除できるものかどうか。未来に向けて拡張していく,多くの日本人の心を捉える読み方が含まれているのではないかという可能性を考えております。取りあえず今考えていることを申し上げました。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。新しい読み方に対する時代的な流れの中での許容性,あるいは未来に対する可能性ということについて御指摘いただいたものと思います。 ほか,いかがでしょうか。 しろまる舩木委員 ありがとうございます。まず,第2の1の平仮名か片仮名かという点ですけれども,どちらの方が親が付けた名前,あるいは本人の名前について正確に表現されやすいのかというところが一番大事ではないのかという気はしています。今までの日本の漢字,日本人の漢字の名前というのは,確かに出生届出で「よみかた」という形で付していれば,それは平仮名が一番しっくり来るというのも,そのとおりだと思うのです。ただ,一方で外国人というか,片仮名読みのグリーンとか,そういう読み仮名というのもだんだん増えてくるのではないかという気がしていて,特に伸ばす長音とかそういうものを,平仮名ではなかなか,現代仮名遣いではそれができないとなっている。ただ,それは現代仮名遣いでも,それを修正して長音でも平仮名で使えるようにすればいいといえば,それはそれでいいのかも分かりません。そうかも分かりませんが,どちらが一番しっくり来るかということがやはり一番大事なのではないかという気がしております。 次の3番の読み仮名の許容性とかいう点は,やはり受付のところの事務の問題が一番大きな問題なのだろうと思います。今は名前の読み方のことについては,戸籍に名前の読み方あるいは読み仮名が記載事項ではないからという理由で,どのような読み方であっても,基本的には全部受け付けています。出生届出で名前の読み方が,これがおかしいから受け付けませんということはあり得ないし,その後も名前の読み方を変えたいと言えば,それは一応,資料を記録に残して受け付けておるというのが実情だと思います。 問題は,今までそうしてきていたから,もうそれでいいではないかといっても,今回は戸籍に名前の読み方とか読み仮名というのを法制化しようとしているわけですから,これを機会に何らかの理由で審査がしやすくなるのであれば,それはそれで一つの基準になるのだろうと思っています。ただ,それが審査しやすくなる基準が本当にうまく表現できるのかというのが一番大きな問題なのだろうと思います。なかなか,慣用による表音であったり,字義による関連性とかいう言葉であったとしても,本当に今の読み仮名とか読み方というのがきちんとそれで賄い切れますかというと,非常に難しいし,実際の受付の現場というのは,勘弁してよというような声が多分出てくるのだろうと思っています。旅券法の規定とか,それはあるわけですけれども,旅券法の問題であっても,うまくこれで対処できるのかといったら,現実的にはそれで運用はできないと思います。むしろ旅券法の問題というよりも,まず戸籍の受付のところでどういうルールにするのかということが一番大事であって,それに基づいて今度はローマ字表記をどうするか,片仮名であっても平仮名であっても,ローマ字表記もまた結構,この際どういう具合にルールをするというのをはっきりしないと,なかなか難しい問題が出てくるのではないかと思っております。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。大きく2点,平仮名か片仮名かという点に関しては,どちらの方がより正確に表現できるのかという観点が重要だろうという御指摘が1点目,それから,第2点目としては,読み仮名の許容性ということに関しては,実際には一番重要なのは戸籍事務での取扱い,受付窓口での取扱いということになるのではないか,審査の基準というのが明確に表現できるのかという点を御指摘いただいたと思います。2点目に関連して,この問題を踏まえた上でパスポート等におけるローマ字表記の問題も出てくるのだろうということであったかと思います。今回は直接はローマ字表記の問題については扱わないということでよろしいのですか。その点,確認をしていただけますか。 しろまる土手幹事 幹事の土手でございます。今回,戸籍への記載ということで,戸籍には平仮名,片仮名,漢字は記載しておりますけれども,アルファベットは記載しないという取扱いになっておりますので,今回も読み仮名についてはローマ字表記は検討しないということと考えております。ただ,ほかへの,例えば旅券とのつなぎの関係で,それを考慮してというのは,舩木委員も言われているとおり,全く関係なく無限定にというわけではなく,あるいはマイナンバーカードへの将来的な表記というところを踏まえて,その場合にどちらの方がよりやりやすいのかということは別途考えないといけないと思いますけれども,戸籍自体にローマ字を表記するということは考えておりません。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。 しろまる藤原委員 藤原です。今の点で少し気になったのが,もうパスポートを持っていらっしゃる方はローマ字で,例えば私はフジワラとか書いているのですけれども,やはりその読み方が,仮名とか片仮名,読み方として,やはり戸籍にそのまま届け出るべきという規律になるのか,あるいはフジハラと届けてもいいのかどうかとか,少しその辺,気になったのが1点と,もう1点,4ページの6の同一戸籍内の氏の読み仮名の規律ということで,多分,同一戸籍内はそうだろうと思うのですね。逆に個人に特化すれば,個人の氏も含めた読み方という考えもあるかと思うのですけれども,今の戸籍自体が,筆頭者だけには氏が付いているのですけれども,その中に入っている同一戸籍の人は名前しかないので,これを個々人にしようとすれば,全部の人に氏を付けた形に戸籍を変えて,氏を個々付けるという形になるので,やはり事務手続というか,その面でもなかなか6番というのは個々人単位では難しいかなと思っております。 しろまる窪田部会長 どうもありがとうございました。1点目は,パスポートのアルファベットというような形で,すでにローマ字表記のものが現在ある場合に,それがそのまま戸籍の記載事項になるのか,それとも,パスポートの方ではフジワラという形で記載されているけれども,それとは異なるフジハラとか,そういったことを戸籍の記載事項として届けることができるのかという,これは御質問ということになるのかもしれませんが,基本的にはそれを正しくここで扱うということになるのではないかと思います。一つは,読み仮名の収集方法として既にあるパスポート等のものを使うのかどうかということと関係しますし,相互に矛盾するようなものをどうやって扱うのか,既にパスポートの方で決まっていたら,それとは抵触するようなことはできないとするのか,場合によっては,そうではなくて戸籍の方を優先させた上でパスポートの修正をするというのもあり得ると思うのですが,それをここで検討していくということになるのではないかと思います。パスポートの扱い自体は外務省の所管ですので,ここで決めることはできないのですが,それを踏まえた上で検討するということになるのだろうと思います。2点目の同一戸籍内の氏の読み仮名に関しては,それをやはり個人単位でやるということは難しいのではないかという御指摘を頂いたかと思います。 前半,大変活発に御議論いただいてありがとうございます。そろそろ2時間ということになりますので,ここで一旦,45分まで休憩を頂きたいと思います。その後,まだ第2の部分,発言していただいてももちろん結構ですし,今,既に第3の話にも少し関連することになっておりましたので,第3,第4についても御意見を伺えればと思います。 それでは一旦,休憩とさせていただきます。 (休 憩) しろまる窪田部会長 それでは,時間になりましたので,後半を再開したいと思います。 先ほど申し上げたように,第2の部分についてまだ御発言いただいても結構ですが,ここから後,第3,第4についても自由に御発言を頂けたらと思います。先ほど申し上げたように,今この場で討議をして決めるというよりは,今日は,自由に御意見を伺えることがこれからの審議の進め方にとってもすごく有用だと思いますので,そういう意味で自由に発言をしていただければと思います。 それでは,いかがでしょうか。 しろまる古瀬委員 ありがとうございます。今までの各委員のお話をお伺いしていまして,非常に深くて,これまでなかなか難しくて法制化されていないという理由もよく分かったなというところがあるのですが,私どもは基礎自治体としては,やはり実務的に窓口での申請でありますとか,その処理が非常に気になっているところでございます。それで,例えば収集の方法などでも今後議論になってまいりますけれども,どの程度の時期までに収集をしていくのかとか,マイナンバーカード等の普及のスピードなどもあるのでしょうけれども,その辺りの目安というのは,今もし何かあるのであればお聞きしたいなということ,それから,どの辺りの細かい実務的なところまでをここの場で議論をしていくのかというようなところ,その辺りが何らかあれば,お聞かせいただきたいと思っております。 しろまる窪田部会長 ありがとうございます。窓口の対応の扱いが気になるということで二つ,一つはどの程度の時期までに収集するということを考えているのかという点,それから2番目として,どの程度の実務的なことまでをここで扱うのかという御質問,2点あったかと思いますが,これについては事務局の方でお答えを頂ければと思います。 しろまる土手幹事 幹事の土手でございます。時期については,研究会取りまとめ,参考資料1の5ページにデジタル・ガバメント実行計画の全文が書いてありますけれども,2024年,令和6年からのマイナンバーカードの海外利用に合わせて法制化を図るとなっていまして,ここについては研究会でも説明といいますか,中身について確認したのですけれども,一つの目安としてこのタイミングを目指すというようなことが決まっておりますので,法制化自体はこれに間に合うようにということでございます。 一方,古瀬委員からお話のありました,収集をいつまでにとかというところは,これとは多分,別な形で,後ほど出てきますけれども,期間を設けて,なので,出生届などの際に読み仮名を届けますということ多分,法施行と同時といいますか,施行日に行うということになると思うのですけれども,既存の1億2,000万人の方々の収集についてはそれとは別に,先ほど申しましたけれども,例えば5年以内で,ただ,婚姻届とか戸籍の届出を出すときにはそのときに出してくださいというような規律というのが一つ考えられて,ただ,その5年が長すぎるのではないか,逆に,5年と定めるのではなくて,特に期間を定めなくてもいいのではないかというところはあると思いますけれども,そういったところを現在では想定しております。 それから,実務的にこの法制審で検討するのかというところについては,法制審議会でございますので,基本的には法律事項になりますけれども,ただ戸籍の場合は,戸籍法施行規則がありますけれども,規則事項についても国民生活に影響があるということで,審議したことがありますので,いずれにしても法令事項について,基本は法律事項,規則事項についても関係ある部分については場合によっては検討するということになります。ただ,そもそも法令事項になるかどうか,先ほどの権利の濫用とか許容性の形で,これが法律事項になるのだったら法律事項になりますし,法律事項にならないのだったら,そもそもこの検討外になるというようなことになりますけれども,ただ,それも含めて検討ということになりますので,結果的に法律事項になる,ならないは別として,法律事項になる可能性のあるものについては検討するというようなことになります。 しろまる古瀬委員 ありがとうございました。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。古瀬委員からありました2点のうちの特に第1点,どの程度の時期までに収集するのかというのは,正しく収集方法で,一体どういう収集をするのかという点の中で,恐らく議論していかざるを得ない点になるのだろうと思っております。 しろまる大谷委員 日本総研の大谷でございます。ありがとうございます。既に第3のところに入っていますけれども,少し第2のところで申し忘れたことがございましたので,その点についても触れさせていただきたいと思います。 第2の5の読み仮名のみの変更についてですけれども,この変更を余りにも安易に認めることになりますと,冒頭でもあったベースレジストリとしての安定性を欠くことになりますので,やはり頻繁に変更されるということを防止するための一定の厳格な要件を求めることが必要ではないかと思っております。この冒頭で皆様が議論されていたように,読み仮名が個人の例えばアイデンティティと大きく関わっているということで真剣に読み仮名を振る方ばかりではなく,遊び半分で余り真剣ではなく,後で後悔するような読み仮名を届け出るということも恐らくは起こり得るのではないかと思っております。そういったものでも,受付事務における判断が難しくならないようにし,それから,その時点での御本人の選択ですので,許容性の要件というのは幅広く認めざるを得ないと思いますけれども,御本人自身が真剣に届け出て,後悔しても簡単に変更できないのだという読み仮名を振るための自制効果というか,抑止効果というのをもたらすためにも,この変更の要件というのについては十分に周知した上で,厳格なものにすべきではないかと考えておりますので,その旨,申し上げさせていただきました。 その点と,収集方法とは少し関係ありますので,このまま話させていただいてもよろしゅうございますか。既に戸籍に記載されている者について,一定の期間を定めて届出をしていただくということで,届出を促す方法や,より簡便な方法というのは幾つかあると思いますので,それらを駆使してやることになると思いますけれども,一定の期間を定めて,その期間に届出がない場合には,職権で,これは市町村長の職権で,音読み,訓読みなどから推測される読み仮名を振るということで,それらについては期間経過後の届出があったときに,これは107条の例外措置で届出により変更可能なような仕組みにし,読み仮名を持たない国民がいないような仕組みに整えていく必要があるのではないかと思っております。そういったことで,変更は許容するやり方ではありますし,いずれも読み仮名を持たない人をなくすということがまず基本だと思っておりますので,そういった例外的な場合には変更の要件を緩和するということが仕組みとしても適切なのではないかと思いました。まだ十分に皆様の議論を聞かない段階での発言ですので,いろいろ御指摘を頂きながら,また考えていきたいと思います。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。2点御指摘を頂いて,1点目は,読み仮名に関しては,一番最初の段階ではできるだけ幅広く許容するということを維持しつつ,読み仮名のみの変更に関しては,簡単にできるというのではなくて,やはり一定の制約の下で安易に変更されないような仕組みが必要なのではないかという御指摘であったと思います。また,収集方法との関係では,一定の期間経過後は職権で収集するといったようなことを前提としつつ,今度は届出による変更といいますか,そうした仕組みを使いつつ,全体として読み仮名を持たない人がいないようにするという方向を示していただいたのかと思います。大谷委員,理解としては,それでよろしいですか。 しろまる大谷委員 はい,基本的にはそのとおりだと思います。あと,付け加えるならば,その職権で定めた読み仮名というのは暫定的なものですので,一応その正式なデータ項目というのとは区別して戸籍システムの中に記録されるべきだと思いますし,連携しているその他のシステムでもそれを前提とした仕組みを整えておくことが必要かと思います。 しろまる窪田部会長 ありがとうございます。 しろまる小幡委員 どうもありがとうございます。小幡でございます。第3のところ,収集方法というのが,技術的な問題でもありますし,行政法の立場からは一番ここをしっかり考えなければいけないのだろうと思うので,これから検討させていただきますが,今日は初回ですので,感想のようなものになりますが,まず,初めて戸籍に記載される出生届については,ここは出生届のところで書いていただくと,今までも書いているわけなのですが,これからは位置付けが違うということを明確に広報した上で,しっかりそういうつもりで,皆さん今でもそういうつもりで書いているとは思うのですが,法律的な位置付けが違うということはきちんと広報する必要があると思います。ただ,1点思うのは,ここは家族法の民法の先生方がどう考えられるか,ですが,読み仮名の変更を子どもの立場から考えてどのように認めるか。お子さんが出生時に与えられた,それは漢字の名前もそうなのですが,その変更の認め方というのが,親が決めた読み仮名を将来的にお子さんが成人ぐらい,あるいは少し前ぐらいに変えたいというときの認め方が,これまでの名前の場合と全く同じなのか,今回新たに法律事項になるので,そこら辺の変更のところだけ少し考える余地もあるかというところかと思います。 問題は2のところで,大変ボリュームのあるほとんどの国民の場合なので,これが大変なのですが,当然こういう新しいことをやる場合に,コストというか,金銭的なコストとともに国民の皆さんの負担という意味でのコストを考えなければいけないし,できるだけ効率的にコストを掛けないようにする方がやはりよいだろうと思います。煩わしいとか,今までももう自分は取りあえずは,何らかで呼ばれている名前なので,全員そうですから,それが法律で戸籍法が変わったことによって面倒な負担が発生するということに対する反発というのが当然あります。ですから,いついつまでに届け出ろと言って,届け出なかったら過料というのはかなり難しいのではないかと,現状では,そんな印象を持っています。 それよりは,既にいろいろなところ,自治体がどういうふうにやっているかは,様々だと思うのですが,住基について,音で多分,名前を並べていると思うので,先ほどの自治体の例のように,適当に振っていますので,問題があれば申し出てくださいと言う形で,既にやっているところもあるわけですから,要するに,実際上は振られているものを元に取りあえずは載せて,それに対して,いや違うと言ってきてもらう,そういう方が効率性は増すのではないかと思います。マイナンバーカードでさえ,なかなか普及に本当に苦労しているので,速やかに届出をしてくださいといっても実際上は難しいところが多いのではないかという感じがしております。 ただ,できればせっかくですので,皆さんに自ら届け出てほしいという,そこはできるだけ建前として維持したいとも思いますので,まずは届け出ていただくことにして,いついつまでに届出が来なかったら取りあえずそうします,職権といいますか,今までのもので読みを振ります,その場合には,それが分かるように,まだこれは本人の届出などの,関与がないものですと分かるようにして,表示を別にするとか,いろいろな考え方があると思います。ここは本当に技術的ですけれども,間違うと,やはり国民の反発とか,そういうことが生じ得るので,慎重に考える必要があると思っています。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。3点ほど頂きましたが,取り分け最後の点,収集に伴うコスト,金銭的なものだけではなくて,特に国民にとっての負担感,これに対してうまく対応する必要があるということで,届け出なかったら過料だよといって済むわけではないでしょうと,一定期間までに提示する,登録する,届け出るということをお願いしつつも,その一定期間が経過した後は,既に何らかの形で持っている情報を,暫定的な情報だということを示しつつ利用するといったような方法も負担感の少ないものとして考えられるというような御提案だったと思います。 基本的には小幡先生に御指摘いただいた点を再確認したということだけです。できるだけ国民にとって負担感の少ないものを選んでいくということが重要だろうということで,単純なプロセスではなくて,複合的な。 こちら側で一部のPCの方がつながらなくなっているんですが,私の声は聞こえていますか。 すみません,小幡先生,何か発言していただけますでしょうか。 しろまる小幡委員 おそらく,私の発言までは聞こえていて,部会長の発言も,最初の方は聞こえていたのですが,どこからだったか,途切れました。 しろまる窪田部会長 いずれにしても現在,双方につながっているということで,安心しました。 先ほど小幡先生からは,国民の負担にならないということで,多分,何段階か組み合わせるという方向も考えられるのではないかという御提案を頂いたかと思います。この部分に関してもいろいろな御意見があると思います。是非とも自由に御発言をしていただければと思いますが,いかがでしょうか。 しろまる常岡委員 今の収集方法のところに少し関係するのですけれども,確認をさせていただきたいのですが,出生届が基本的に収集の機会になって,その後,婚姻届のようなケースもということですが,飽くまでここでは戸籍法の改正を審議していて,民法の氏については触れないということが大前提だと思うのですね。そこで,法的な視点からいうと,出生届とか婚姻の場合の夫婦の氏の届出はいわゆる講学上民法上の氏と言われているものです。それに対して,呼称上の氏という概念があって,これは戸籍上の呼称についてのみどのようにするかという話です。一般にはこのような切り分けは認識されていないと思うのですけれども,技術的にはそこは厳然と区別されている状態にあります。ですから,例えば婚姻届出の際に届け出るものは,飽くまで,民法を変えないのであれば,民法上今ある氏だけであって,読み仮名はそこには含まれないというのが恐らく基本的なラインになると思うのです。そのような呼称上の氏と民法上の氏という概念の区別を前提とすれば,これは部会資料第2の2の話になりますけれども,最初の出生届のときの戸籍法13条の1号の記載について,1号の中に読み仮名を氏名の一部として戸籍の記載事項として入れてしまうと,民法上の氏として読み方まで含んでしまうのかという問題が生じるという点が気になっていました。そうであれば,いわゆる乙案と参考資料1の「取りまとめ」の9ページで書かれている案のように,戸籍法13条1号に定める氏名とは別個のものと読み仮名を位置付けるとせざるを得ない,その方が,立法的には整合性があるように思っています。 そこで,先ほど小幡委員から御発言がありましたように,子供がおかしな名前を付けられてしまって,それを変更したいということについてですけれども,その場合の変更というのは,今の戸籍法ですと107条の2の名前の変更ということになります。戸籍法107条が氏で107条の2が名前ですけれども,それらは飽くまで戸籍上の呼称の変更だけで,読み仮名についても戸籍の読み方の変更だけなのだから,戸籍法で独立に対応していくということは可能だと考えています。 ちょうどお配りいただいた参考資料2を見ていたのですが,名の変更の届出が年間4,000件,多いときで5,000件ぐらい,これが呼称上の名前を変更する場合です。一方,氏の変更は,令和2年度だと1万3,906件で,平成31年度は1万5,689件とありますけれども,氏の変更は,氏の呼称が嫌だからというより,離婚後に婚氏続称の手続をとらなかったが,後でやはり婚氏続称したいとか,婚氏続称してしまったけれども結婚前の氏に戻りたいとか,そのようなケースもあるので,純粋に呼称に違和感があるとか,受け入れられないのでどうしても変えたいというケースは,恐らく名前と同じぐらいの件数なのではないかと思います。このような現行の戸籍法の107条,107条107条の2の規定のあり方を活用すれば,先ほど問題となっていました,子供にとってふさわしくない読み仮名を付けてしまったときの変更をどうするかということも,原則としてやはり家裁のフィルターを通した方がいいのではないかと私自身は思っています。仮にフィルターを通した場合でも,これまでの推移を見てくると,それほど爆発的にそれだけが増えるということは,恐らく余り予想しなくてもよいのではないかという気はいたします。なので,それ以外の新しく収集するところでどうかということですけれども,それ以外で考えられるとしたら,国籍の取得とか就籍とか,そういう場面なのかなという気がしているのですね。だから,実際にほかにももっと考慮しなくてはいけない要素がいろいろと出てくるのかもしれませんけれども,現状を見る限り,それほどパンクするような,そんな扱いに,たとえ家裁が関与しても,なるわけではないのかなという気が少ししています。 それ以外の,新しく初めて収集したところでの変更はどうかということについては,考えられるとしたら,国籍の取得とか就籍といった場面かと思いますが,実際にはほかにも考慮しなくてはいけない要素がいろいろと出てくるのかもしれませんけれども,現状を見る限り,この場合も,たとえ家裁が関与しても,それほどパンクするような扱いになるわけではないのかなという気がしています。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。基本的には今のは名の変更についてのお話ということでよろしいですよね。 しろまる常岡委員 はい。 しろまる窪田部会長 民法上の氏と呼称上の氏という概念を分けた上で,その区別等の関係でこの問題を考え,また,出されている資料にも含めても,そうした名前の変更,読み仮名の変更に関して,家裁のフィルターを通すとしても,従来の件数から見ると,家裁実務がパンクすることはないのではないか,裁判所の方は別の見方があるのかもしれませんけれども,一応そういうふうに考えられるのではないかという御指摘を頂いたものと思います。ありがとうございました。 ほか,いかがでしょうか。 しろまる新谷委員 前へ戻るというわけではないですけれども,先ほど舩木委員の方からお話がありました読み仮名の許容性の問題ですね,これがやはり,恐らく私の経験からしても,戸籍の窓口で一番大変ではないかと思うのです。過去のいろいろ,戸籍先例も,読み仮名を,これはいいか悪いかとか,字義のとおりでなければ駄目か,音訓表にないものは駄目だとか,いろいろありますし,参考資料1の15ページの8の傍訓の例のところにも触れられていますけれども,先ほどからきらきらネームの話とかありますが,このところよく見掛ける,子供たちの名前なんかは,私はほとんど読めません。実を言うと,それが具体的に何を言おうとすると,この許容範囲の中に,もちろん常用漢字表,人名用漢字表の文字を使ってくる名前の問題について,それが本当にそういうふうに読むのか,読めないのかというところで,これは駄目だとかとなると,恐らく最初に問題になるのは,名を未定で届出をするのかどうかという問題が一つあります。それから,もう一つは,不受理とした場合に不受理処分の数が結構多くなるのではないかと,そうすると,戸籍法122条の市町村長の処分に対する不服申立て,これが家裁の実務にどの程度影響するのかという心配もありますし,それから,将来,名の変更のところでも,今の107条の2のところの変更のところでどの程度認めるのかどうかという,やはり家裁の実務的な問題だとかということと,それから,先ほど法律事項にするのか規則事項にするのかと,法律事項に書いたとしても,規則で具体的に書いてあげないと自治体の窓口での混乱が生じるのではないかと,その辺もよく討議をしてやっていきたいなというふうに,今いろいろ御意見を。あと,収集の問題等については,また後で発言する機会があったら,したいと思います。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。 しろまる手嶋委員 先ほど来,家裁のフィルターという御指摘も頂きましたし,今の正に窓口での審査基準のお話とも密接に関わるところと思っておりまして,件数のボリュームがどれぐらいになるのかという辺りについては,制度が全体としてどういうものになるのか。特に大事なのは,例えば,自治体窓口で審査をされる際,それから裁判所で審査をする際にも,要件の立て付けとして何を,一体どういう点を,どのようなスタンスで審理,判断するのかということとの関連が重要と思っております。研究会の取りまとめの中でも案として挙がっているように,権利濫用とか公序良俗とかいった辺りは一つ出てくるところなのだろうと思うものの,命名権の濫用という場合には,名自体がどうかという辺りが中心的なところになるかと思うのですけれども,ここでは,今正に御指摘があったように,読み仮名と名ないし氏の漢字との関係でどうかという辺りがかなり大きな問題になってくると思いますので,それを考える際に,例えば権利濫用というのはどういうように働くのかとか,公序良俗の問題になるのかとか,その辺りをかなり具体的に御議論いただけると,その審理,判断のポイントが何かというのも明確になるのではないかということですので,できる限り具体的に皆様の御意見を伺えると有り難いと思っているところです。 しろまる窪田部会長 ありがとうございます。仮に,戸籍窓口に届けるときには原則としてフリーパスだとしても,一遍,一定の読み方が登録されているときに,読み仮名の変更で家庭裁判所に持って行くと,いや,それでは駄目だよと言われるのだとすると,受理の基準と変更の基準が違ってくる,そういう点も含めて,手嶋委員からは,家庭裁判所のフィルターを通すといったって,私たちは何をやったらいいのかということの御指摘があったのだろうと思います。多分まだ結論が出ていない問題ですので,正しくその点を検討していく必要があるのかなと思いました。 ほか,いかがでしょうか。 しろまる冨田委員 ありがとうございます。収集の関係で,先ほども出ていましたけれども,やはり国民の負担感というか,全体の負担感を考えていかなければならないと思っています。届け出る人の負担感と,それを受け付ける側の負担感と,両面あるかと思います。できるだけコストを掛けずに,そして負担感を減らしていくのかというのが非常に大事かなと思っています。 その観点で,質問と意見で2点,お伺いしたいと思います。既に戸籍に記載されている者について,要は新たな届出みたいな形を考えるときに,先ほど,戸籍は戸籍なので氏の下にある,それぞれ名前で入っている人たちも含めて,新しい届出をすることになると思うのですが,その届出の一人一人の確認というのはどのようにされるのかということです。例えば,成人した子供が一緒の戸籍にいる場合,届出の届出通知は戸籍の筆頭者だけに届くのか,それとも,一人一人のその下に付いている名前の人にも確認の通知が来るのか質問です。それから意見ですが,戸籍に名前の読み方が付いたものが収集されデジタル化のベースレジストリにした場合,具体的にそれがどのように使われていくのかということが示されないと,読み方をつける利便性を感じることが難しいと思います。 その観点で行くと,届出る場合は,実際に自分が届出書を書いて窓口に持って行って届け出るのですけれども,デジタル社会のインフラだということであれば,届出る時から,デジタル化を意識した方法も模索していく必要があるのではないかと思います。スマホを使って様々な申請ができている中,戸籍だけは,デジタルインフラが目的なのに,入口の届出はデジタルではないということは,国民の理解とのセットで考えるとなかなか難しい所があると思います。ただ,実際の自治体で使われているような様々なシステムや現行の届出の在り方みたいなところまでが,果たしてそこまでが諮問事項の範囲に入っているかというのは,私も全然思いが及ばないものですから,その辺りも含めて,教えていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。 しろまる窪田部会長 ありがとうございます。多分まだ決まっていない部分も多いのかなと思いますが,一つの戸籍に記載された複数の夫婦と,同氏の親子ということになりますが,その人たちがどのように届け出るのかということで,筆頭者によるのか,それともそれぞれの個人でということになるのか,具体的な届出のイメージということだったと思います。それから,2点目としては,そういうふうに届け出たものがデジタル化社会において利用されるといっても,具体的にどんなふうに使われるのかという点。それから,3番目として,届出の仕方について現状のままでいいのか,デジタル化ということを強調するのであれば,戸籍の届出自体をもう少し工夫するという可能性はないのかという御質問だったかと思います。恐らく2点目に関しては,直接,法務省の方では答えにくいのだろうと思いますが,1点目と3点目に関しては,まだ決まっていないという点も含めてでも結構ですので,お答えいただけますでしょうか。 しろまる土手幹事 幹事の土手でございます。特に研究会の中で検討したところが一つの到達点だと思いますので,そこについて紹介させていただきます。届出については,今回の読み仮名の届出というのが,既成の事実を届け出るというのが,戸籍の届出,例えば死亡とか出生とかというのがございまして,これに当たるのだろうと,婚姻とかは創設的な届出ということで,新しくするものなのですけれども,既成の事実をやるということになると,届出義務が基本的には発生するものと,性格的にはそれに近しいのではないかと考えておりまして,そうであるとすると,要は真実は一つということなので,戸籍単位で届け出てもらうことになるのですけれども,戸籍の筆頭者又は配偶者,あるいは成人のお子さんということになると思いますが,そのいずれが届け出てもいいと,連名で出してもらってもいいですし,いずれが出しても構わないというのがオーソドックスかなと思っています。その上で,全員が届け出なければならないという規律を作ることも全く法規範として反するものではないと思いますけれども,なかなか全員が合わせて届出というよりも,どなたか1人が届け出るという方が,これまでの戸籍実務からすると,親和性が高いのではないかと現在は考えております。 それから,3点目の届出については,現状の紙で窓口でということになりますけれども,今でも郵送はできるのですけれども,さらに,オンラインによってというのが法令上は可能なのですけれども,ただ,なかなか届出については受付側の方にメリットがないのと,あと,申し出る方も,一生に1回しか出さないものについてオンライン手続をというのがなかなか難しいので,通常の届出というところについては,これは自治体が判断する事項なのですけれども,一つもされていないと。ただ,一方で今,マイナポータルというのができて,いろいろな利便性ができて,今,戸籍謄抄本の請求なんかも独自にオンラインシステムを開発しているところもありますけれども,マイナポータルを使ってというところも検討している市区町村も出てきておりますので,そのマイナポータルの仕組みを使って届け出るということになると,これはスマホで簡単に,なおかつ本人の認証が確実にできますので,間違いなく本人が出しているということになりますので,マイナポータルというのを使って簡単にできるというのが最低ラインとして考えられるのではないかと,これも当然,関係省庁さんといろいろ協議等が必要になるかもしれませんけれども,と思っております。それ以外のところについてはどんな方法があるのか,多様な方法で,あるいは,届出にするとどうしても固いので,今回の資料にも付いていましたけれども,申出みたいな形で1ランク落としたような形にするともう少し集まりやすいのではないかということも考えられるということでございます。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。 しろまる笹原委員 ありがとうございます。先ほどお話に出た参考資料の多分15ページのところですね,読み仮名の許容性に関連して,先例として届出が認められなかったケースというものを引用してくださっていて,とても参考になると思います。実際,漢字研究や言語研究の立場から,ここからどういう基準が作れるかなというのを考えてみたのですが,例えば,修と書いてナカと読むものですね,右下が斜め線3本の彡という修は脩と元々通用していまして,ともにオサムさんなんていうふうによく読みます。これが伝統的な1,000年ぐらい前からある名乗り訓と呼ばれるものをずっと見ていくと,右下が月の形になっているものであれば,ナカと読むものがあるため,この修と脩の間で通用関係もあることから,修をナカと読むことも自然ではないかとまずは考えられます。 また,高と書いてヒクシというのは,おかしいと感じるのですが,ただ,その一方で漢文の世界では反訓と呼ばれる,例えば乱と書いてオサマル,オサムなんて読む,そういうものまで幾つかあることが知られていて,そういう反訓と呼ばれた解釈や方法を使ったのだなんていうふうにもし主張されたならば,これも伝統的な一つの読ませ方の一種として認めざるをえないかもしれない,と少し悩ましく感じられそうです。 もう一例だけ申し上げますと,十八公と書いてマツマ,恐らくこれは現物ではマツオだったかと思うのですが,以前,研究会の段階で確認していただいたかと思います。十八公というのは縦書きにして組み合わせると木を書いて公になりますね,枩という形もあるのですが,木を偏に移動すると木偏に公となって正に松という字になります。そこで十八公で松というものを表す隠語のようなものが中国古典に出てきます。それを踏まえた典拠のある読み方なのだ,その場合,最後のオが気になるところではあるのですが,そういうふうに典拠まで挙げられた場合には,少なくともマツは認めざるを得ないのかなというようなことも考えさせられます。 これらは難しい例ばかりなのですが,こういう点から見ても,基準を作るのは,言語や漢字という,それだけの立場からは非常に難しいということを申し添えたく思います。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。今の御説明は多分,少し意外に思われるものにも理屈は付く場合もあるのだということですし,でも,実際にその理屈が付くかどうか,笹原先生であればその判断はできるとしても,これを戸籍窓口でやれと言われたら,多分大変なことになるのだろうと思います。そうした点も含めての御指摘だったかと思います。 しろまる舩木委員 ありがとうございます。今の笹原委員の話の点ですけれども,私もこれ,傍訓のところでは認められなかったという具合に書いてある例も,現在の運用ではかなり認めているのではないかと思っています。今は審査が実際できないということを理由に,基本的にはフリーパスの形になっていると思います。ただ,余りにもおよそ混乱を生じさせるようなもの,例えば太郎と書いてハナコと読むとか,およそ混乱を生じさせるというような形になると,それは権利濫用とかそういう形で問題があるという形になるのではないかと思います。反対読みの,高をヒクシというのも歴史的にあると,そういうことのようです。例えば,大阪の吹田市というのが吹く田と書いてスイタと読むというのは,正にその反対の読み方だといわれているようですけれども,そういうのがあるとしても,それを認めるかどうかというのは,やはり少し抵抗が個人的にはあります,そこは。そういうような問題で,なかなか窓口では非常に難しいだろうと思います。要するに,かなり混乱を生じさせるようなものというような抽象的な基準とかいうような形でないと,なかなか基準になり得ないのではないかというのが個人的な感想です。 次に,5番の氏名の読み仮名のみの変更という項目ですけれども,これは漢字とか文字の変更というのは今回の戸籍法の107条1項とか107条の2のところで,やむを得ない事由というのと正当な事由という基準があるわけです。そうしたら,読み仮名の変更というのも同じようにパラレルに考えるべきなのか,要するに,氏の方の読み仮名の変更はやむを得ないというのが必要,名前の方は正当な事由というのが必要,全く同じように考えるべきなのか,それとも,文字が一緒であれば,読み仮名だけであれば,もう少し緩和してもいいのではないか,合理的な理由があれば読み仮名だけは変えられますよとか,そこはどちらがいいのかなというのは,もう少しここは検討しないといけないところではないかと思っています。 6番の同一戸籍内の氏の読み仮名の規律の点ですけれども,氏についての変更というのは107条1項に書いてあるわけですが,誰が変更できるかというと,今の戸籍法では筆頭者又は配偶者が変更を申請できるという規定になっているのですね,107条1項は。だから,子供とかそれらが全部変更申請できるかというと,そういう規定には今の制度はなっていないわけです。同一戸籍内の読み仮名の規律というのは,基本的に住民基本台帳と戸籍は必ずしも連動していない,要するに,子供さんが大学に行ったときに住所を変えたとか,一人が単身赴任に行ったら住所を変えた,そのときに住民票を住民基本台帳という形で転出,転入届で出すときに,氏の読み仮名が以前の読み仮名と同じかどうかをチェックしているかというと,チェックしている自治体もあるかも分からないけれども,ノーチェックの自治体も実はかなりあると思っています。私の広島でいえば,広島の場合にはそこはノーチェックです。そういう点でいうと,住民基本台帳の氏の読み方で書いたものと,同じ戸籍内でも複数の読み方があるということはあり得るわけなのです。あり得るのだけれども,そうしたら,それを,例えばどちらを採用すべきなのかという形になると,やはり戸籍法107条1項の変更のところの手続を経ていないということで,元の読み方という方が優先するべきではないのかとか,そういうルールというものをどう考えるかというところが検討しないといけないことになるのだろうと思っています。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。何点かおっしゃっていただきましたけれども,第1点目の点では,基本的には戸籍窓口における受理の段階で実質的な審査をやることは難しいのではないかということを御指摘になりつつ,舩木先生の個人的な感触としては,高と書いてヒクシと読ませるのは違和感があるというような感想も頂きました。多分その種のことについてうまく,やはりお互いの感覚を擦り合わせていく必要があるのかなと思いました。2点目,3点目は,問題点としてこういうのを検討すべきだということで,読み仮名のみの変更についても氏名の変更と同じような基準で考えるのか,もう少し緩やかな基準で考えるのかという論点,それから,同一戸籍内の読み仮名の変更に関しては,具体的にどういう手続でやって,誰が申し出たときにどういうふうになるのかということについて明確にルールを定めていく必要があるのだという御指摘だったかと思います。ありがとうございました。 しろまる村林委員 村林でございます。先ほどの収集の方法の中のマイナポータルですけれども,やはり併用になるのだと思うのですけれども,収集するときに,単に届出をみんな一から全部やるというよりも,既にある仮に登録されている名前などを表示をして,これでいい場合はそのままオーケーで,これは間違えていますという場合はきちんと直していただくとか,少し細かいですけれども,何かやはり操作性をよくしないと,面倒くさい登録をするのはかなり負担感が出ると思いますので,そこは少しきめ細かく考える必要があるのではないかと思ったのが1点。 それから,元々の始まりの一つのマイナンバーカードのローマ字記入でしたっけ,海外利用におけるローマ字,それについて,研究会でも多分そうだったと思うのですけれども,仮名を決めればローマ字が決まるというふうになるのかどうかというのは検討しないといけないということがあったと思うのです。パスポートとかは確か,読み仮名も書くし,ローマ字もヘボン式で自分で書くようなことだったと思いますので,今回の場合も,例えば,せっかく読み仮名を登録したのに,マイナンバーカードに表記するときはローマ字申請しなさいなんていうことになると,何のためにこれをやっているのかということになるので,そこは検討をきっちりしておかないといけないのではないかと思いました。 しろまる窪田部会長 ありがとうございます。いずれも大事な御指摘なのだろうと思います。恐らく,マイナポータルにおいて既存のデータがある場合には一旦表示して,それを修正という方向がいいだろうというのは,私もそうではないかと思うのですが,恐らく法務省の管轄ではない問題ということになるのかと思います。それから,仮名を決めればローマ字が決まるのかということに関して,パスポートの例もありましたが,マイナンバーカードの海外利用ということになると,マイナンバーカードの所管というのは総務省ということになるのでしょうか。 しろまる土手幹事 カードは総務省とデジタル庁の少し微妙な,内容によって異なると思います。 しろまる窪田部会長 いずれにしても法務省ではないということなので,ここでもちろんこの方向でこういうことを検討してほしいということを言うことはできると思いますが,直接最後の答申の中でそれを具体的に書き込むことは少し難しいのかなと思います。ただ,その点も含めてできるだけいい制度にしていくということで,多分,今のような形で直接答申には書けないような内容も,補足説明といった説明文書の中で,こういうふうにしていくことが考えられる等の説明はできるだろうと思います。 しろまる村林委員 例えば,そんなことはないのでしょうけれども,ローマ字を表記したいという目的があるのであれば,ローマ字まで戸籍に申請すれば解決するではないかとか,そういう意見もあるかもしれないので,念のため。 しろまる窪田部会長 ありがとうございます。 ほか,いかがでしょうか。 しろまる西幹事 ありがとうございます。西でございます。意見と申しますか,気になっている点1点と,単純な質問を1点,述べさせていただきます。 まず,意見と申しますか,気になっている点なのですけれども,4ページの第2の5で,氏名の読み仮名のみの変更のところ,先ほど小幡先生がおっしゃったこととか窪田先生がおっしゃったことと多少関係あるのですけれども,今ある107条や107条の2とパラレルに考えられるのかという疑問です。現在107条や107条の2で行われているのは,命名された名前を変えるということで,自分の意思ではなかったものを変えたいという場合が多いと思います。もちろん再変更というのはあり得ると思いますけれども。それに対して今回,読み仮名の変更ということになりますと,親から命名の際に付けられた読み仮名を変更するという今までと同じような話もあると思いますけれども,そうではなくて,自分で届け出た読み仮名,あるいは自分でそれまで使ってきた読み仮名を変えるという場合もでてきます。件数的にはそちらの方が多くなると思いますが,両者を同じように考えてよいのかという問題はあると思います。つまり,与えられたものを変えるのと,自分で元々使っているもの,申請したものを変えるのかというので,同じように必ずしも考えられないようにも思いますので,要件とか手続を変えるという可能性もあると思いますし,論の立て方として,107条とか107条の2とパラレルに考えていかないという方法もあるように思いました。 質問の方は,非常に単純な読み方の問題なのですけれども,5ページの第3の2で,幾つか収集の方法の可能性が書いてありまして,第2段落のところで,本人の直接の関与なく氏名の読み仮名を適宜の方法により収集するということで,適宜の方法という意味にも関係あるとは思いますが,これと第4段落の,多様な方法による本人の申出等に基づいて市区町村長の職権等によって戸籍に記載するということ,この二つが具体的にどう違うのかが少し私,イメージが湧きませんでしたので,御説明いただければ有り難いです。 しろまる窪田部会長 第1点目は,読み仮名の変更が氏名の変更とパラレルに位置付けられるのかという問題について,もちろんそういうふうに形式的に見ればパラレルな可能性もあるのだけれども,従来の氏名の変更といったときに,元々付いていた名前,最初からあった親に付けられた名前の変更だという性格であるのに,それに対して読み仮名,これは多分,時間の経過によって変わっていくとは思うのですが,取りあえずは圧倒的な多数というのは,自分自身が関与する形で読み仮名を決めた,それを簡単に変えることができるのかという意味で,同じでいいのかという,その点を検討すべきではないかということと,その衡量要素として,多分今まで出ていたお話というのは,氏名の変更よりはもう少し簡単にできても,読み仮名だったらいいのではないかというニュアンスもあったと思うのですけれども,逆に,自分で決めたのであれば,それほど簡単に認める必要はないのではないかという,少し違う方向からの御指摘を頂いたのだと思います。 それから,2番目の御質問,これは本人の関与なしの収集ということで,5ページの2,2段落目の,具体的な収集方法として書かれているもの,本人の直接の関与なく適宜の方法によって収集するというのと,第4段落の,法定の届出という方式によるのではなくて,多様な方法による本人の申出等に基づいて記載するという,この違いが何なのですかという御質問だったと思います。これは土手さんの方からお答えいただけますか。 しろまる土手幹事 幹事の土手でございます。今回の資料はなるべく客観的に書こうとしたのですけれども,若干思いが入っていて,2パラのところは,直接の関与なく適宜にやってもいいのかというような気持ちが入ってしまっている感じが,今から思い出すと,しております。一方,多様な方はプラスのイメージで,元々研究会でもそのような御指摘がありましたので,いろいろな方法で幅広く,プラスのイメージでやるということで,多様なということでございます。だから,文章的なニュアンスは同じかもしれませんけれども,気持ちの入れ方が若干違うところが表れてしまったのかもしれません。 しろまる西幹事 ありがとうございました。 しろまる窪田部会長 恐らくそれほど明確には区別できないでしょうね。本人の関与なくといっても,本人が全く関わらない,本人も親も関わらない形で決まるということは普通はないのだろうと思いますので,やはりどこかでは関わっているのだろうと思います。いずれにしても,2の既に戸籍に記載されている者について,こうした既存のデータを使うというときは,具体的にどんなデータをどういうふうに使うことができるのかということをもう少し具体的な形で論じていく必要があるのかと思います。 ほかに,いかがでしょうか。 しろまる藤原委員 藤原です。ありがとうございます。少しその辺,西幹事の御指摘があった部分はあるのですけれども,結局,届出義務を課するとなると,届出義務者が誰になるのか,先ほども少し御質問があったように,個々の人の確認を得るのかどうなのか。例えば,未成年の子の場合,親が届け出る,その場合に,この子はこういう呼び方だったけれども,少し明るくしたいのでこちらの呼び方にしようとかという形で,幼児の場合には本人に相談とかしないままに読み方を変えてする場合もあるし,その辺が個々の人の確認をどの程度すべきか,筆頭者の責任になるのかとか,そういうことを御議論していただきたいのが1点と,戸籍法上,届出義務を課すると過料の制裁というか,過料の規定がありますけれども,今回の5ページでは,義務を課するということと過料の制裁をというのが二つに分かれているので,そういう考え方が可能なのかということが少し気になりましたので,指摘させていただきます。 しろまる窪田部会長 ありがとうございます。届出義務という場合,実際誰が届出義務を負担するのかということ,そして,未成年の子の場合,親ということになるのかもしれないけれども,具体的な届出を誰がどういうふうにするのかというのは,今までも御指摘があった点かと思いますが,この法制審議会の中で扱っていかなければいけない論点の一つだと思っております。その上で,義務と過料との関係について,義務があるかないかというのと過料をするかどうかというのを切り離すことはできるのかということの御質問だったと思います。この点については,いかがでしょうか。 しろまる土手幹事 幹事の土手でございます。戸籍六法の過料の規定を少し御覧いただけたらと思うのですけれども,戸籍六法の260ページの137条ですけれども,これに書いてありますように,正当な理由がなくて期間内にすべき届出又は申請をしない者は5万円以下の過料に処するという規定があって,これはすべからく掛かる規定になっておりますので,まず,期間が定まっているものですね,期間を定めなければ当然,過料に掛かってこないと。それから,あとは届出と申請というものに限られていますので,仮に職権記載の申出とかというやつだと,当然ながらこれに掛からないというものでございます。実際にはこの正当な理由がなくて,というものがありますので,市区町村の方からはすべからく,この場合には簡易裁判所が所管になりますので,簡易裁判所の方に通知するのですけれども,簡易裁判所の方で,この正当な理由があるかどうかですね,その辺について判断するということに実際はなります。ですので,資料の方には過料を科すという方法も考えられると書いていますけれども,どちらかというと,届出期間に届出がない場合,もうこれは全部セットになりますので,その場合にはこの規律だけ外すというのは通常考えられないものになりますので,届出義務,期間を定めたものについてはすべからく掛けると,例外を定めるというのはなかなか難しい問題だと考えております。 しろまる窪田部会長 ありがとうございます。先ほど小幡委員からあった御指摘は,そうは言いつつも過料でがんがんやるというのではない形の選択肢の方が望ましいのではないかという御指摘も含んでいたのだろうと思います。この一般的に掛かる規定がある以上は,例外というのは難しいのかもしれませんが,ただ,それでもなお過料と絶対セットにならなければいけないのかという点は,多分ここで議論する可能性は残されているのだろうと認識しております。 しろまる小幡委員 例えば,届出としてしまうと過料が掛かるということですが,やはりこういう新たに入れる特別のものなので,届出義務という形でない用語を使う,いろいろなツールを組み合わせたりとか,ほかのやり方もあると思いますが,単に「届出」という言葉を使わないことで何とかできないかという感じもしますが,ここは技術的には様々な検討の余地のあるところであろうと思います。 しろまる窪田部会長 ありがとうございます。私の方でまだ検討の可能性が残っているというのも,正しく小幡先生に御指摘いただいたような形で,正面からこの規定の例外だというのもあれば,届出,申出という言葉を使わない形で何か組み立てるとか,いろいろな方法も検討する必要があるのかなと思っているということです。 いかがでしょうか。 本日は,基本的にもう自由に感想等を述べていただいて議論していただくというのが最大の目的でございました。正直申し上げると,実は第1回目のディスカッションというのはほとんど意見が出ないかもしれない,ひょっとしたら3時ぐらいに終わってしまって,どうしようというような心配もしていたのですが,そんなことは全くなく,非常に活発に御意見を伺うことができました。また,今日伺った御意見で,資料1の中に書かれているだけではなくて,部会資料の中で書かれていることにもう少し膨らませて検討していく必要があるのかなという御指摘もたくさん頂いたかと思います。そういう意味で,大変いい審議をしていただいたものと思います。 申し訳ありません。お二人から手が挙がっておりました。舩木委員,それから笹原委員の順番でお願いいたします。 しろまる舩木委員 すみません。終わってもよかったのですけれども,今の戸籍の読み仮名の収集の点について,一言だけ言わせていただきたいと思います。 今までの議論の中で,とにかく漏れがないように収集するということが一番大事だという具合に思っています。そして,今の過料とかうんぬんとかいうのは一つの手段ではあるわけだけれども,本当にそれで漏れがなく収集できるのかという点で考えてみると心もとないものであり,必ずしもそれでうまく行くだろうかというと,そうはならないのではないかと思います。今,読み仮名について公的な部分,これは先ほどの出生届出のところの記載にもあるように,単に戸籍事務のために読み仮名を収集していますよと,これは戸籍に記載するものではありませんという具合に注意書きしてはあるわけですけれども,親としてはその名前というものを,この子の名前という形で非常に考えて付けているのが圧倒的に多いわけです。そこの届出の資料の収集というのは,結局は住民基本台帳のところで集めている,これは昭和40年代からずっと今日に至るまで集めているというのが実情で,住民基本台帳に出生届出や婚姻届出,あるいは転出・転入届出の氏名の読み仮名という部分を集めているわけです。ただ,転入のところでは,急に氏名の読み仮名が変わったりもすることはあり得るという不安定な要素はあるけれども,一応最新の今使っている氏名の読み仮名を集めているのが住民基本台帳で,それを健康保険証であったり,選挙管理人名簿の読み仮名に使われているというのが現状なわけです。 そうして見ると,住民基本台帳の氏名の読み仮名の部分は,法律の根拠がないものであったからそのまま使うことはできないのだけれども,きちんと届出がない場合にはそれを活用するということも考えていいのではないか,要するに,あなたの読み仮名は住民基本台帳ではこうなっていますよと,その部分が違うとのであれば正しい読み仮名の届出を返信で書いてください,それで間違いなければ,それで間違いないということを書いてくださいとか,そういう一手間というものをやって,それで届出がないまま期間が経過すれば,これはその読み仮名で職権で記載させてもらいますとか,そういうこともやはり考えていいのではないかと思っております。今日皆さんの意見の部分も大体趣旨としては同じようなことだろうと思うし,郵便とかなんとかではなくて,マイナポータルとかいろいろなことを使うというのは,それは賛成なのですけれども,基本的にはどうやって全部集めるかという最後の工夫のところが一番大事ではないかと思っています。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。漏れのないように収集することが第一だということで,住民基本台帳のデータ等を使った収集,あるいはその後,一定の期間が経過したら職権で記載するとか,様々な方法が考えられるのではないかという御指摘だったかと思います。 しろまる笹原委員 すみません,余り細かいことは,とは思っていたのですが,先ほど発言したことの補足と修正ということで,1点だけお話しいたします。 先ほど修という字のナカという読み方に関して,その届出が認められなかった前例として引用してくださったものについて見直してみたところ,中世の拾芥抄という名乗り字を集めた本に出ておりました。伝統的な名乗り訓として辞書のようなものに載っていたもので,実際には長いという意味のナガで,濁点が付されていない,それだけのもののようなのですが,ナカという前例はきちんとあった。しかし先例としてはそれを認めなかったというケースになるということが判明いたしました。そうすると,こうしたものに基準を作るとすると,裁判まで行ったのかどうかはともかく,先例に縛られるものなのか,それとも先例を修正しながら新しい基準を作るということになるのか,またそれは本当にしていけるのかなどということも,少し問題提起として最後にさせていただきます。ありがとうございました。 しろまる窪田部会長 ありがとうございました。具体的な例を挙げて問題提起をしていただきました。恐らく受け止め方はいろいろで,裁判所は一体,そんな問題を持ってこられたらどうするのだろうとかと思いながら伺っていたのではないかと思います。 ほかにも何かございますでしょうか。 しろまる藤原委員 先ほど常岡委員から,戸籍法上の氏,読み方ですね,それが民法上とは違うということで,少し気になったので教えていただきたいのですけれども,仮にここで戸籍法の部会なので,読み方を考えて,民法の契約で,例えば氏名でふりがなを戸籍上のふりがなとは違うことを書いた場合には,それは民法上の契約書でも特に有効,無効とは関連しないという理解でよろしいのでしょうか。そこがよく分からなくて。 しろまる窪田部会長 誰がどう答えるべきなのか,よく分からないのですが,多分,基本的に契約書が有効になるかどうかという点については戸籍上の氏名であるかどうかではなくて,本人が正しく特定できるかどうかだけだろうと思います。だから,その意味では,ふりがなが戸籍の記載事項になったとしても,そのふりがなと違うことを契約書の中で書いたとしても,そうではあっても,この人であるよねということが特定できるのであれば,契約が無効になるということはないと認識していますが,私の説明でよろしいでしょうか。 しろまる藤原委員 ありがとうございます。 しろまる常岡委員 民法上の氏というお話をしましたが,名前はまた別で,氏だけですけれども,氏を取得する方法というのは,出生か,あるいは国籍取得等になると思います。基本的に出生によって親の氏を受け継ぐというのが民法の氏の取得のルールになっています。明治民法では氏が家の名称でしたので,家に入った者がその氏を取得するということだったのですが,今は,戦後の1947年の民法改正で,子は親の氏を取得する,そして,親から受け継いだ氏を変更する機会というのは,現行法であれば,原則として婚姻の場合と養子縁組の場合とに限られているのですね。そのように氏が承継される一方で,その氏には,従来から読み仮名や振り仮名は付いていないのです。今回,振り仮名とか読み仮名を付けるというのは,飽くまで戸籍法上の,特に,最初に出ましたけれども,デジタル社会で利便性を高めて,検索される利益を全ての人に確保するという目的の下で付されるものなので,それはまた民法とは違うルール,違う発想で付されるものということになると思います。そう考えたときに,民法上の氏に振り仮名とか読み仮名という概念を付けてしまうと,それこそ今言われたような疑問が出てくる,非常に混乱が生じてしまうのではないかと考えています。例えば,離婚した後の婚氏続称や離縁の場合の縁氏続称の氏は戸籍上の呼称上の氏であるという,戸籍の先例でそのような仕組みがすでに作られているので,氏に振り仮名や読み仮名を入れると,収拾が付かなくなって,氏というものが分離してしまう可能性が非常に高い。ですので,民法の氏と戸籍法上の読み仮名というのは別の体系として独立に考えるべきだというのが私の今の考えです。 そして,契約については,窪田部会長がおっしゃったように,必ず戸籍上の氏で契約をしなければならないとか,もちろん実印を用いることもあるでしょうけれども,例えば実印が戸籍上の氏名と一致しているということは必ずしも要求されていないと思います。実印自体は氏名である必要がないですよね,名字だけの実印もあれば名前だけの実印もあるので,そこは必ずしも実社会の運用において戸籍と一致していない。とすれば,実印は氏や振り仮名の話とは別ですけれども,そのようなところで必ずしも契約と戸籍がリンクしていない状況が現在あって,それで運用されているので,このことを考えれば,実質的には戸籍の氏名や振り仮名が契約の場面において一つのルールになるといったリンク付けは必ずしもなされないのではないかと思います。 しろまる藤原委員 ありがとうございました。よく分かりました。 しろまる窪田部会長 もう今御指摘いただいたとおりなのですが,部会資料1の最初の方に出てきましたけれども,読み仮名をどう位置付けるのかということで,氏名の一部として位置付けるのか,氏名とは別の項目として位置付けるのかという話がありましたが,多分,今の問題に関連していて,氏名の一部という形にして,言わば氏名という概念を再定義することになりますと,民法に氏名と書かれている部分も否応なしに波及していく可能性があると。他方で氏名とは別項目として規定しておけば,民法の中では氏名と規定されているときに読み仮名の問題は出てこないということで整理できるのではないかと。常岡委員の方からは,むしろやはり後者のような形でやっていく方が混乱が少ないのではないかという御意見を含むものであったと思います。契約というとものすごくきっちりやらなければいけないような,きっちりやらなければいけないのだろうなと思いますが,そもそも実際の氏名である必要すらなくて,通称だろうが何でもよくて,印鑑というふうなのも,先ほど,名前である必要もないということがありましたが,私が学生時代に教わったのは,山紫水明という判子を押したって別に構わないのだと,印鑑はあるのだから,という話でしたので,だから契約が無効になるとか,そういう話にはならないと思います。ただ,本人が特定できないと困ったことになるだろうというだけなのだろうと思います。 ほか,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。 それでは,本当に大変活発な御意見,御感想を聞かせていただきまして,どうもありがとうございました。 本日の法制審議会は以上とさせていただきたいと思います。 次回以降の予定などについて,事務当局の方から御説明をお願いいたします。 しろまる土手幹事 幹事の土手でございます。次回の日程は,令和4年1月13日木曜日,午後1時半から午後5時半まで,場所は今回と違いまして,法務省地下1階の大会議室でございます。 しろまる窪田部会長 法務省地下1階の大会議室,ここよりはかなり広い部屋になりますので,余裕があるかと思います。私は今朝,そちらの方に行って,危うくたどり着けないところでしたが。 では,次回もどうぞよろしくお願いいたします。本日はお疲れさまでした。 -了-

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