罪を犯した18歳及び19歳の者に対する
矯 正 教 育 ( 仮 ) に 係 る 検 討 会 報 告 書
令和3年5月
法務省矯正局少年矯正課
目 次
はじめに 1
1 検討の概要 2
2 罪を犯した18歳及び19歳の者に対する矯正教育(仮)の在り方 4
(1)罪を犯した18歳及び19歳の者に対する生活指導について 4
ア 新たな特定生活指導の設置 4
イ 周辺プログラムとしての「特殊詐欺非行防止プログラム」の開発 5
ウ 社会情勢等を踏まえた既存の特定生活指導の見直し 5
エ 高等学校教育を終えていない者に対する高等学校卒業程度の資格取得又
は教育機会の提供 6
(2)罪を犯した18歳及び19歳の者に対する職業指導について 7
ア 職業生活設計指導科カリキュラムの見直し 8
イ 自立援助的職業指導及び職業能力開発指導の再編 9
ウ 少年院出院後の離転職も想定した就労支援 9
(3)罪を犯した18歳及び19歳の者に対する特別活動指導について 10
ア 特別活動指導の必要性及び意義の整理と対外的説明の工夫 10
イ 地域と連携した社会貢献活動の在り方の検討 11
(4)その他 11
参考
1 検討会開催日 13
2 検討会構成員 14 1はじめに
18歳及び19歳の者は,選挙権及び憲法改正の国民投票権を付与され,令和
4年4月1日をもって民法上の成年として位置付けられるに至った。他方,少年
法における「少年」の年齢については,法務大臣から発せられた諮問第103号
を受けて,平成29年2月の法制審議会第178回会議において設置された少年
法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会で調査審議が重ねられ,令和2年
10月29日第188回総会で,全会一致により,同諮問に対する答申が議決さ
れた。
同答申では,
「18歳及び19歳の者は,
選挙権及び憲法改正の国民投票権を付
与され,民法上も成年として位置付けられるに至った一方で,類型的に未だ十分
に成熟しておらず,成長発達途上にあって可塑性を有する存在であることからす
ると,刑事司法制度において,18歳未満の者とも20歳以上の者とも異なる取
扱いをすべきである」
とされ,
そのための法整備の要綱
(骨子)
が示されており,
令和3年2月19日に少年法等の一部を改正する法律案が閣議決定された。
同法律案においては,罪を犯した18歳及び19歳の者は「特定少年」と位置
付けられ,家庭裁判所が処分決定を行うこと,その処分においては保護処分とし
て少年院送致があることなどが規定されている。
これまでも,少年院では,18歳及び19歳の者はもとより,収容を継続した
上で23歳に至るまでの者に対して矯正教育を行ってきた実績があり,その処遇
効果については,
法制審議会においても認められている。
法律案が成立した場合,
少年院において,罪を犯した18歳及び19歳の者(以下「特定少年」という。)を対象とした矯正教育を行うに当たっては,今般の答申に至る法制審議会部会で
の議論及び現下の社会情勢を踏まえ,これまでの少年院における個々の特性に応
じた矯正教育や社会復帰支援の知見や技術を基本としつつも,未だ成長途上にあ
り,可塑性を有するとともに,民法上の成年となり,権利と責任を有する主体と
して積極的な社会参加が促されることを考慮し,新たに指導の在り方を検討する
必要もあると考えた。
そこで,法務省矯正局少年矯正課においては,外部有識者を交え,
「罪を犯した
18歳及び19歳の者に対する矯正教育(仮)に係る検討会」を立ち上げ,全5
回の検討会を通して,特定少年に対する矯正教育の在り方について議論・検討を
重ねた。
本報告書は,同検討会でなされた議論・検討の方向性について,取りまとめを
行ったものである。 21 検討の概要
検討会においては,まず法務大臣から発せられた諮問第103号に対する答
申及び少年院における現行の矯正教育の実施状況について確認するとともに,
現行法の保護処分としての少年院における処遇が,18歳及び19歳の者,そ
して23歳に至るまでの者に対する改善更生に向けてこれまでも有効に機能
してきたことを確認・共有した上で,特定少年に当たる年長少年に対する矯正
教育の在り方について,検討を行った。
検討に際して外部構成員から示された主な意見等は,以下のとおりである。
(矯正教育の在り方)
しろまる 民法上成年となり,法的・社会的な立場が変わることを踏まえ,罪を犯
したことについて,
その自覚を喚起した上で,
自身の非行について反省し,
改善更生に向けた意欲を持たせる必要がある。
しろまる 非行をしたという事実によって,責任のみに偏らないよう,社会の形成
者として権利と義務の両方をバランス良く教える必要がある。
しろまる 同年代の者と同様に学びの機会を確保し,少年院出院後の長い人生にお
ける可能性を広げる観点から,高等学校教育を終えていない者には,高等
学校卒業程度の資格取得又は教育機会を提供する必要がある。
しろまる 社会において責任ある主体として積極的な役割を果たすことが期待さ
れていることに鑑み,次代を担い,社会の中心で活躍していくことができ
るよう,例えば,ICT のデバイスに触れる機会など,時代のニーズに応じ
た知識,技能を身に付けさせる必要がある。
しろまる 円滑な社会復帰の観点から,少年院在院中から社会との関わりを意識的
に作る必要がある。
(留意点)
しろまる 18歳を境に,次に掲げる点の必要性,問題性が解消されるわけではな
いことに留意し,個々の特性に応じた処遇を行う。
・ 法務教官との密接な関わりを土台とした個別的な関係の構築を,引き
続き行う。
・ 発達上の課題や過去の被虐待経験等,その資質,生育歴や環境を踏ま
える。
・ 少年院は安全な守られた環境であり,そうした環境だからこそ可能と
なる教育,手を掛けた教育を行うことが大切である。
・ 家族から虐待を受けている可能性があることに十分留意し,見極める
必要があるものの,家族は,出院後の最も身近な支えとなり得ることか 3ら,適切な関係性を構築することや家族の支援は重要である。
以上のことを踏まえ,矯正教育の5つの指導領域のうち,特に,生活指導,
職業指導及び特別活動指導の在り方について,社会復帰支援(特に修学支援及
び就労支援)の観点も交えながら,具体的な検討を行った。 42 罪を犯した18歳及び19歳の者に対する矯正教育(仮)の在り方
(1)罪を犯した18歳及び19歳の者に対する生活指導について
ア 新たな特定生活指導の設置
特定少年に当たる年長少年については,少年院入院に至る背景要因の一
つとして,今後は,社会人としての自覚や責任ある態度,知識が十分でな
いこと等が挙げられるようになるものと考えられる。こうした課題に対す
る指導は,現在,一部の少年院では実施されているものの,既存の特定生
活指導の内容として標準的に盛り込まれてはいないことから,特定少年を
対象とする新たな特定生活指導の必要性について,検討を行った。
主な意見は,以下のとおりである。
(内容)
しろまる 社会を形成していく主体的な市民としての必要な法的知識(権利,義
務)等を学ばせる。
しろまる 民法上成年になることで生じる社会生活の課題(契約等の法律行為を
単独ですることができることに伴うトラブルなど)について,具体的な
対処法として,制度,公的支援機関,当事者支援の団体の情報などを学
ばせる。
(方法)
しろまる 自身が行った犯罪や非行に対する反省と,法的・社会的立場を踏まえ
た責任の自覚の喚起を効果的に組み合わせてプログラムを実施する(例
えば,まず自身の犯罪について考え,次に法的・社会的立場等について
学び,改めて自身の犯罪や非行の責任について考える構成とすることなど)。
生活指導領域においては,従来の生活指導の枠組みを維持した上で,特
定少年が民法上成年として位置付けられることから,その法的・社会的立
場を踏まえた対応として,以下の点を検討すべきとされた。
しろまる 新たな特定生活指導の設置
しろまる 周辺プログラムとしての「特殊詐欺非行防止プログラム」の開発
しろまる 社会情勢等を踏まえた既存の特定生活指導の見直し
また,
生活指導のうち,
進路指導については,
社会復帰支援の観点から,
同年代の者と同様に学びの機会を確保し,
少年院出院後の長い人生におけ
る可能性を広げるための対応として,以下の点を検討すべきとされた。
しろまる 高等学校教育を終えていない者に対する高等学校卒業程度の資格取
得又は教育機会の提供 5しろまる 特定の非行に限定せず,特定少年全員を対象として実施する。
しろまる 中学校・高等学校等で用いられている各種の法教育教材を参考に,法
教育の内容を取り入れる。
しろまる 理解を促すため,
視聴覚教材の使用やワークによる実践が必要である。
(その他)
しろまる 指導に当たる法務教官自身が,特定少年の法的・社会的立場について
十分に理解しておく必要がある。
しろまる 自主性・自律性を育てる,あるいは日常生活での気づきにつなげる観
点から,例えば,少年院在院者が主体となり,寮内のルール作りに関与
する機会や,話し合うような取組も有効である。
しろまる 寮生活において,タイミングを逃がさず行っている指導のうち,例えば,「ルールの必要性」などの指導は,体系的なプログラムに組み込むこ
とで,対外的にも,少年院の教育が見えるという意義がある。
イ 周辺プログラムとしての「特殊詐欺非行防止プログラム」の開発
近時,特殊詐欺事犯が少年院在院者の一定数を占めており,特に特定少
年に該当する年長少年が多い。特殊詐欺は,在院者にとって,被害額以外
の被害の実態が見えにくい犯罪であり,被害者がどのような被害を受けた
のかを具体的に認識させる指導が重要であるとの観点から,新たな特定生
活指導と特殊詐欺の問題を有機的に連動させて指導することについて,検
討を行った。
主な意見は,以下のとおりである。
(内容)
しろまる 現行の「被害者の視点を取り入れた教育」とは別に,特殊詐欺という
犯罪に特化した形での指導を行い,被害者がどのような被害を受けたの
かを具体的に認識させる。
しろまる 特殊詐欺に関与したきっかけとして SNS が多いとされており,インタ
ーネット,ソーシャルメディアの使用方法について,重点的に教える。
(方法)
しろまる SNS を通じて受け子等になった者をこの指導の主たる対象に想定して,
具体的な場面を設定し,ロールプレイを用いる等のプログラムが望まし
い。
ウ 社会情勢等を踏まえた既存の特定生活指導の見直し
社会情勢や非行・犯罪動向を見ると,大麻使用歴のある少年院在院者が
増加しており,薬物非行防止指導など,既存の特定生活指導の見直しにつ
いて,検討を行った。 6主な意見は,以下のとおりである。
(内容)
しろまる 大麻使用歴がある者が増加していることを踏まえた薬物非行防止指導
の見直しが必要である。
(方法)
しろまる 現行,特定生活指導の一つである薬物非行防止指導においては,少年
院法(平成26年法律第58号。以下「院法」という。
)第17条第2項
を根拠に保護者に対する措置として,保護者向けプログラムを行ってい
るところ,18歳及び19歳について保護者は民法上の親権者ではなく
なるが,これまでも実態としては,保護者に協力を求め,情報提供しつ
つ,サポートする意味合いが強かったことに鑑み,今後も,院法第17
条第1項を根拠にしながら,
保護者向けプログラムを「(親権者ではない)
保護者」や「引受人となる家族等」に実施することが望ましい。
(その他)
しろまる 暴力防止,
性非行防止など,
他の特定生活指導プログラムについても,
平成27年の策定から相応の年数が経過していることを踏まえ,見直し
が必要である。
しろまる 今後は,18歳以上は父母の同意なく婚姻が可能となることから,男
女交際,
パートナーシップ,
デート DV などを学ぶプログラムがあること
が望ましい。
エ 高等学校教育を終えていない者に対する高等学校卒業程度の資格取得又
は教育機会の提供
現状において,6割強の少年院在院者が中学校卒業又は高等学校中退で
あるところ,現在の社会情勢や同年代の若者のほとんどが高等学校に進学
していること等を踏まえ,修学支援のより積極的な働きかけの必要性につ
いて,検討を行った。
主な意見は,以下のとおりである。
しろまる 高等学校教育を終えていない者に対しては,修学支援ハンドブックを
交付する際に,個々の事情を十分に把握・検討した上で具体的に働きか
けるなどして,
積極的に修学支援対象者として選定することが望ましい。
しろまる 長い人生において,高等学校卒業程度の資格取得がその後の就労等に
与える影響を考えると,就労を希望する少年院在院者にも,修学支援に
ついてしっかりアプローチする必要がある。
しろまる 通信制高校等への編入学について,就学支援金の制度,実際の費用負
担等について,
少年院在院者及び保護者等への丁寧な説明が必要である。 7しろまる 少年院在院中から編入学先でのカウンセリング相談等のサポート体制
についても確認し,少年院出院後の学校生活等の課題に対処するノウハ
ウを身に付けさせることが望ましい。
しろまる 少年院出院後の学習の継続という点で,編入学先の教職員,保護司,
家族,
(退院者等からの相談制度を活用して)少年院職員などが,連携し
たサポート体制を築くことが望ましい。そのためには,少年院出院後の
学習継続をサポートする関係者に,当該少年が高等学校卒業程度の資格
を得ることの意義を理解してもらえるよう,積極的な働き掛けが必要で
ある。
しろまる 就労か進学かの二者択一ではなく,個々の事情によっては,働きなが
ら学ぶことも想定される。就労と進学の両立は,本人の努力・意欲だけ
で実現できることではなく,どうしても生活のために金銭を得ることが
優先されやすい。少年院在院者自身に,あらかじめ具体的かつ現実的な
生活の仕方のイメージを持たせることと,職場で不利益を被ったときの
相談先(総合労働相談コーナーなど)の情報を持たせるなどの指導が必
要である。
しろまる 通信制高校には,複数のコースがあり,自分に合ったコースを選択で
きることや,一度退学しても残りの単位取得のための転入も可能であり,
十分に修学のための情報を得られるようにすることが大切である。
(2)罪を犯した18歳及び19歳の者に対する職業指導について
職業指導領域においては,個々の在院者の特性,必要性等に応じて,よ
り柔軟な運用を可能にすること,
また,
社会情勢や時代のニーズを踏まえ,
将来の就労可能性や職業選択の幅を広く見据えることや,社会との連続性
に配慮する必要性があることから,これらへの対応として,以下の点を検
討すべきとされた。
しろまる 職業生活設計指導科カリキュラムの見直し
しろまる 自立援助的職業指導及び職業能力開発指導の再編
また,就労を見据えた職業指導について議論される中で,修学支援が最
も効果的な就労支援になるとの意見が多く,これへの対応として,以下の
点を検討すべきとされた。
しろまる 高等学校教育を終えていない者に対する高等学校卒業程度の資格取
得又は教育機会の提供(2(1)エの再掲)
しろまる 少年院出院後の離転職も想定した就労支援 8ア 職業生活設計指導科カリキュラムの見直し
職業生活設計指導科は,現在,職業に関する基礎的な知識,態度を習得
させるために,原則として,全ての少年院在院者に対して一律に行ってい
るが,個々の特性等を踏まえると,一律に行う必要があるのかという点,
また,現行カリキュラムの策定から5年以上が経過し,就労をめぐる社会
情勢や,必要とされるスキルが変化している点等を踏まえ,内容のスリム
化や選択制とするなど,見直しの必要性について,検討を行った。
主な意見は,以下のとおりである。
(内容)
しろまる 労働者の権利義務に焦点を当てた指導が必要である。特に,特定少年は,民法上,
成年であることを踏まえると,
雇用上のトラブルに備えて,
労働者に認められている権利,労働基準監督署への相談方法,労働審判
を申し立てて裁判所で解決を図る方法などを,重点的に教えることが望
ましい。
しろまる 就労による収入と生活費等とのバランス等,
ライフサイクルの中で
「お
金」がどういう位置付けにあるのかについての講座等を行うことが望ま
しい。
しろまる 職業生活設計指導科のパソコン操作能力において,MOS(Microsoft
Office Specialist)の修了証の取得など,資格取得まで行えることが望
ましい。
しろまる 社会の職業ニーズは時代と共に変化していることから,職業指導など
で取得した資格が活用できる職種,分野(例えば,電気工事士は LAN 配
線など IT 関連の職種であることなど)
についても,
具体的に伝えること
が,求人情報を得る上で役立つ。
しろまる 発達上の課題を有する等,個々の少年院在院者の特性に応じた指導を
行うことに配慮すべきである(例えば,周囲から理解してもらい,周囲
と折り合いをつけるコミュニケーション・スキルを身に付けるための指
導など)。しろまる 少年院在院期間を,履歴書の作成に当たり,どのように扱うかについ
て,少年院に在院していたことを「書く」・「書かない」のいずれの場合
においても,その期間について質問を受けることになることが想定され,
それにどのように答えるかを準備させることが重要である。
(方法)
しろまる 職業意識の喚起などの抽象的な課題については,事前に職場体験を行
ったり,
ワークショップなども交えたりしながら,
「働くとはどういうこ 9とか」を,実感を持って考えさせるような工夫を凝らすことが望ましい。
イ 自立援助的職業指導及び職業能力開発指導の再編
職業指導の目的は,就労意欲を高め,職業上有用な知識及び技能を習得
させることであるところ,
「職業上有用な知識及び技能」は,社会情勢や時
代のニーズに左右されるため,従来どおりの指導を少年院で継続させるだ
けでなく,その時々のニーズに対応した知識,技能を習得するための自立
援助的職業指導及び職業能力開発指導の再編について,検討を行った。
主な意見は,以下のとおりである。
(内容)
しろまる 職業指導は,将来何らかの職業に就くことが目標であり,資格を取る
こと自体が目標ではない。例えば,就労上有用な複数の資格の組み合わ
せも考慮して,なりたいものが何かを具体的にイメージしつつ,資格を
取得できることが望ましい。
しろまる 陶芸や木工など,もの作りを行っている種目については,制作するこ
とのコンセプトを明確にし,例えば,少年院在院者が企画から販売・展
示までを通して関与できるようにするなど,職業的視点を取り入れるべ
きである。
(方法)
しろまる 工業高校や商業高校など,職業指導が専門の教諭による指導を受ける
ことも検討する。
ウ 少年院出院後の離転職も想定した就労支援
少年院出院後の長い人生における就労として捉えた時,中学校卒業又は
高等学校中退で選択できる職種は少なく,
仮に出院時就職できたとしても,
離職した場合の再就職・転職に困難を来すことが想定される。少年院出院
時の就職決定のみに捉われず,その後の離転職も想定した就労支援の在り
方について,検討を行った。
主な意見は,以下のとおりである。
(内容)
しろまる 採用面接時の具体的な対応方法等,実際の場面を想定した指導を行う
必要がある。
(方法)
しろまる 少年院出院時に就労先が決定していない場合には,少年院出院後に引
き続き職業訓練が受けられる各都道府県の求職者支援制度等へつなぐた
めの仕組みについて,検討する。
しろまる 少年院在院者が希望する職種は,現在,土木や建築などに限定されて 10いるが,将来の選択肢を自ら幅広く考えることができるように,希望職
種以外の職場も含めて幅広い分野で,複数回職場体験を行うことも有効
と考える。
(その他)
しろまる 女性に対する支援活動団体などの社会的資源についての情報も含め,
現在の社会復帰支援ハンドブックの情報を,少年院出院者のニーズに合
うよう,内容を改訂するとともに,インターネットを活用することで,
アクセス,活用しやすくする。
しろまる 少年院出院後に就職した場合に,その就職先での継続期間が把握でき
ると,どのような支援が必要であるかの参考になる。
しろまる 就労継続のためのサポートについて,退院者等からの相談制度の積極
的活用や少年鑑別所の地域援助の活用などを検討する。
(3)罪を犯した18歳及び19歳の者に対する特別活動指導について
ア 特別活動指導の必要性及び意義の整理と対外的説明の工夫
特別活動指導は,情操を豊かにして,協同の精神を養うことを目的とし
ており,就労,修学のための前提となる力を養う指導であることから,重
点的に行う必要がある。他方で,現在,その必要性及び意義を対外的に分
かりやすく発信できておらず,社会的な理解を得られているとは言えない
状況にあるとして,
特別活動指導の在り方,
意義について,
検討を行った。
(内容)
しろまる 特別活動指導の自主的活動における役割活動(洗濯,配膳など)は,
当然身に付けておくべき生活力を養うものであり,民法上成年に位置付
けられる特定少年についても,引き続き行う。
しろまる 特別活動指導として行う行事が慣例的とならないよう,その意義や実
施内容を少年院在院者自身が理解した上で行うことができるように工
夫する。
(方法)
しろまる 行事やクラブ活動等の特別活動指導は,情操のかん養などの意義があ
特別活動指導領域においては,
就労や修学の前提となる力を培うもので
あり,民法上成年に位置付けられる特定少年についても,引き続きなされ
るべき指導であるとして,以下の点を検討すべきとされた。
しろまる 特別活動指導の必要性及び意義の整理と対外的説明の工夫
しろまる 地域と連携した社会貢献活動の在り方の検討 11ることは理解できるが,非行の背景にある問題点の改善という点では,
生活指導など,矯正教育の他の指導分野に比べると,国民や社会の理解
を得難い面がある。施設参観や少年院の教育活動の紹介に当たっては,
単にこうした行事を行っていることだけでなく,その教育的な意義も併
せて説明するなどして,こうした活動についても広く理解を得るための
努力が必要である。具体的には,同年代の若者が経験していることを,
少年院在院者は経験していないことがあり,こうした経験の幅を広げる
こと,あるいは経験の穴を埋めるために行っていると説明することもで
きる。
しろまる 特別活動指導による少年院在院者の変化のエピソードや事例などを蓄
積し,その活動の必要性を説明できることが望ましい。例えば,この活
動をやらなければこういう支障や問題が起きるといった形で説明した
り,発信したりすることで,意義を理解しやすくなる。
イ 地域と連携した社会貢献活動の在り方の検討
特別活動指導として行う社会貢献活動が,例えば,少年院在院者が自分
たちだけで清掃のみを行う形であるなど,現在,一方的に少年院在院者が
社会に貢献して終わる場合があるように見えること等を踏まえ,地域と連
携した社会貢献活動の在り方について,検討を行った。
主な意見は,以下のとおりである。
(内容)
しろまる 社会貢献活動は,社会と少年院との相互理解に繋がる活動として,で
きる限り,地域との関わりや交流を確保する形が望ましい。
しろまる 地域の人たちとのコミュニケーションの機会を設けることは,
例えば,
思いがけない質問を受けて返答に窮することも含め,社会における様々
な場面で対処するスキルを身に付けることに役立つ。
(方法)
しろまる 少年院在院者が主体的に取り組み,地域の人たちとの交流も行うこと
で,その活動の意義や目的をより明確に意識できるよう,社会貢献活動
の在り方について検討する。
(4)その他
しろまる 保護者を含む家族との関わりは,虐待等の課題を有するケースがある
ことを踏まえて対処する。
しろまる 発達上の課題がある少年院在院者について,自身の特性を踏まえ,就
労や修学に継続して取り組み,生活を安定させるためのスキルが必要で 12ある。
しろまる 日本語の使用が難しい者や,聴覚よりは視覚優位の者などについては,
個々の特性を補う ICT ツールを活用することが,指導やプログラムを,
より効果的なものとするために有効である
しろまる 特に女子の少年院在院者の場合,性虐待等によるトラウマの影響につ
いても配慮した処遇を行う必要があり,例えば,フラッシュバックがあ
った際の対処法等について,状況を見極めつつ指導していく必要がある。
しろまる 退院者等からの相談制度について,次の観点から,より相談しやすい
仕組みとする必要がある。
・SNS など電話以外の相談手段の整備等,相談しやすい環境づくりを検
討すること。
・少年院出院者本人以外からの相談も受け付けていることを,関係者に
向けてより積極的に広報すること。
しろまる 少年院における教育活動について,職員や協力者にとって自明である
部分を,
言語化し社会に発信していくことが,
今後より一層求められる。 13参考1
検討会開催日
第1回
日時 令和3年1月26日(火)午後1時30分から同3時30分まで
場所 法務省
議題 1 少年矯正課長挨拶
2 構成員紹介
3 検討会趣旨説明
4 現行の矯正教育について
第2回
日時 令和3年2月15日(月)午後1時30分から同3時30分まで
場所 法務省(一部オンライン参加)
議題 1 第1回検討会議事要旨について
2 今後の検討会議題について
3 罪を犯した18歳及び19歳の者に対する生活指導について
第3回
日時 令和3年2月26日(金)午後1時30分から同3時30分まで
場所 法務省(一部オンライン参加)
議題 1 第2回検討会議事要旨について
2 罪を犯した18歳及び19歳の者に対する生活指導について
第4回
日時 令和3年3月11日(木)午後1時30分から同3時30分まで
場所 法務省(一部オンライン参加)
議題 1 第3回検討会議事要旨について
2 罪を犯した18歳及び19歳の者に対する職業指導について
第5回
日時 令和3年3月23日(火)午前10時から同11時30分まで
場所 法務省(一部オンライン参加)
議題 1 第4回検討会議事要旨について
2 罪を犯した18歳及び19歳の者に対する職業指導について
3 罪を犯した18歳及び19歳の者に対する特別活動指導について4 検討会取りまとめについて
5 少年矯正課長挨拶 14参考2
検討会構成員
外部構成員
伊 藤 茂 樹 駒澤大学総合教育研究部教職課程部門教授
工 藤 啓 認定 NPO 法人育て上げネット代表理事
中 島 幸 子 NPO 法人レジリエンス代表
中 村 すえこ NPO 法人セカンドチャンス!・映画「記憶」監督
成 瀬 剛 東京大学法学政治学研究科准教授
法務省矯正局少年矯正課
西 岡 潔 子 矯正局少年矯正課長
山 本 宏 一 矯正局少年矯正課企画官(少年院係)
小 粥 展 生 矯正局少年矯正課企画官(少年鑑別所係)
谷 村 昌 昭 矯正局少年矯正課補佐官(少年院係)
朝比奈 卓 矯正局少年矯正課補佐官(少年鑑別所係)

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