法制審議会
第188回会議 議事録
第1 日 時 令和2年10月29日(木) 自 午後2時00分
至 午後2時50分
第2 場 所 法務省大会議室
第3 議 題
法制審議会における情報通信機器を利用した会議への出席について
少年法における少年の年齢及び犯罪者処遇を充実させるための刑事法の整備に関する諮
問第103号について
第4 議 事 (次のとおり)
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議 事
○しろまる丸山司法法制課長 ただいまから法制審議会第188回会議を開催いたします。
本日は,委員20名のうち17名に御出席いただいておりますので,法制審議会令第7
条に定められた定足数を満たしていることを御報告申し上げます。
本日は上川法務大臣が国会本会議出席のため本審議会に出席できませんので, 法務事
務次官が法務大臣挨拶を代読いたします。
○しろまる 法務事務次官 法務事務次官の でございます。大臣の挨拶を代読させていただきます。
法制審議会第188回会議の開催に当たり,一言御挨拶を申し上げます。
委員及び幹事の皆様方におかれましては,御多用中のところ,本会議に御出席いただき,
誠にありがとうございます。また,法制審議会の運営に関する皆様方の日頃の御協力に対
し,厚く御礼申し上げます。
さて,本日は御審議をお願いする事項が二つございます。
まず,議題の第1は,「法制審議会における情報通信機器を利用した会議への出席」に
ついてでございます。前回の会議において,情報通信機器を利用した法制審議会への出席
の在り方について,御審議をいただきました。本日は,その結果を踏まえ,更に御審議を
重ねていただき,具体的な規律について御決定いただくことを期待しております。
議題の第2は,「少年法における『少年』の年齢及び犯罪者処遇を充実させるための刑
事法の整備に関する諮問第103号」についてでございます。この諮問事項については,
平成29年2月の諮問以降,同年3月から,少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関
係)部会において調査審議が重ねられ,その結果が本日報告されるものと承知しておりま
す。少年法及び犯罪者処遇の在り方については,選挙権年齢や民法の成年年齢を18歳以
上とする立法措置,再犯防止の重要性等を踏まえ,所要の措置を講ずる必要がございます
ことから,同部会においては,長期間にわたり,精力的に調査審議を行っていただいたと
承知しております。委員の皆様方には,御審議の上,できる限り速やかに御答申をいただ
けますようお願い申し上げます。
それでは,これらの議題についての御審議,御議論をよろしくお願い申し上げます。
代読でした。
○しろまる丸山司法法制課長 法務事務次官は公務のため,ここで退席いたします。
(法務事務次官退室)
○しろまる丸山司法法制課長 ここで報道関係者が退室しますので,しばらくお待ちください。
(報道関係者退室)
○しろまる丸山司法法制課長 それでは,内田会長,お願いいたします。
○しろまる内田会長 内田でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
早速,本日の審議に入りたいと思います。
先ほどの 法務事務次官が代読された法務大臣の御挨拶にもございましたように,本日
は議題が二つございます。
まず最初に,「法制審議会における情報通信機器を利用した会議への出席」について御
審議をお願いしたいと存じます。
審議事項につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。
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○しろまる金子関係官 関係官の金子でございます。審議事項について御説明いたします。
前回の法制審議会において御説明いたしましたとおり,現在の法制審議会令等には,情
報通信機器を利用した法制審議会への出席につきまして,特段の規定がございません。そ
こで,本日は,当該方法による出席の取扱いにつきまして,法制審議会令第9条の規定に
基づく審議会の決定をお願いしたく存じます。
前回の審議会において,委員の皆様に御協議いただきました結果を踏まえまして,事務
当局において決定案を作成いたしました。お手元にお配りしております「情報通信機器を
利用した法制審議会への出席について」と題する資料に沿いまして,その要点を御説明い
たします。
決定案第1の1は,議長を除く委員及び臨時委員について,情報通信機器を利用した出
席を認める要件に関する規定でございます。交通,健康,業務上の事情により会場に参集
することが困難であるなどの正当な事由があり,議長が相当であると認めるときは,情報
通信機器を利用した出席を認めることとしてはどうか,と提案させていただくものでござ
います。
参集困難な事情があると認められるか否かの認定につきましては,緊急事態宣言,委員
等の御年齢,委員等の居住地,委員等の業務地,交通についての報道,台風などの気象情
報等,客観的に把握できる事情と,御本人の申述を踏まえて行うことを想定しております。
また,「その他の正当な事由」としましては,会場参集が困難とはいえないものの,例え
ば,会議後に他の用務があり,情報通信機器を利用すれば全ての議事に関与できるが,会
場参集の場合には次の用務のために会議を中座しなければならないといった場合,それか
ら,委員自身には参集することのできない事情はないものの,近親者の介護のため在宅が
必要である場合などを念頭に置いております。こうした委員側の事情を踏まえた上で,最
終的には当日予定されている議事の内容等も考慮し,当該方法により出席を認めることが
相当か否かという議長の判断に委ねることとするものでございます。
決定案第1の2は,情報通信機器を利用した出席において,映像又は音声が途切れた場
合の取扱いに関する規定です。前回の審議会におきましては,映像又は音声が途切れた場
合でも,適宜の方法により会議の状況を聞き,意見表明ができる場合があり,実質的には
会議に出席しているのと変わらない状態にあると認められるにもかかわらず,これを退席
扱いとするのは相当でないという御意見がございました。そこで,この点につきましては,
「会議の開始後に映像又は音声の送受信が途切れた場合であっても,適時意見表明が相互
に可能な状態にあると議長が認めるときは,当該委員につき出席しているものとみな
す。」としまして,当該委員の具体的な状況を踏まえ,議長において判断することとする
ものでございます。
決定案第1の3は,委員及び臨時委員以外の方々の出席につきましては,定足数に影響
しないため,情報通信機器を利用した出席を柔軟に認めても大きな問題は生じないと思わ
れますことから,当該方法による出席が相当かどうかを議長の判断に委ねることとするも
のでございます。
決定案第2は,情報通信機器を利用した出席に関する留意事項に関する規定です。前回
の審議会におきまして,法制審議会が非公開の会議であることを踏まえた規律が必要では
ないかとの御指摘を頂きました。そこで,留意事項としても,出席者以外の者に会議を視
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聴させることを禁ずる旨の規定を置くこととするものでございます。
決定案第3は,部会への準用の規定です。情報通信機器を利用した出席につきましては,
部会においても総会に準ずることとするものでございます。
事務局からの説明は以上でございます。
○しろまる内田会長 ありがとうございます。
ただいま事務当局から前回の議論を踏まえて整理をいたしました「情報通信機器を利用
した法制審議会への出席について」に関する決定案の御提案がございました。事務当局が
作成した決定案につきまして,御意見,御質問を承りたいと思います。
いつものように分けまして,まず,御質問がある方はいらっしゃいますでしょうか。ど
うぞ,御自由にお願いします。
○しろまる白田委員 前回の議論を通して,第1の2のところで,「映像又は音声」と改定していた
だいたところ,感謝を申し上げます。そこで,質問をさせていただきます。この第1の2
のところは,会議の途中で映像又は音声が途切れた場合であっても,議長が認めれば出席
しているとみなすと。一方で,第1の1の方でございますが,議長が認めるのはあくまで,
会場に参集することが困難であるかどうか,会場に参集することが困難だけれども,その
理由が正当であると議長が認めたときには情報通信機器を利用して出席と認める。一方で,
その後のくだりです。「情報通信機器を利用する方法によって」のところの括弧書きに,
「映像及び音声」となっておりますので,ここではあくまで,「及び」ですから,and
ということで,参加の段階では映像と音声の両方が接続されていない限りは出席として認
めないという解釈でよろしいのでしょうか。そこだけ御確認ください。
○しろまる内田会長 ただいまの質問について,事務当局からお願いします。
○しろまる金子関係官 今の御指摘のとおりで,例外的に情報通信機器を利用して出席するという場
合の要件ですが,これは映像と音声,両方とも送受信できるということを前提にしており
ます。ですから,会話がお互いにできるということと,映像がつながっているということ
を前提にした規定でございます。最初からどちらかということは想定していないというこ
とです。
○しろまる白田委員 補足なのですが,昔からこういう情報通信機器を使った会議というのは海外の
大学との連携授業や各国のJICA事務所との接続会議等にも利用されており,当時から
提供されていたWebexやPolycomでは,テレカンと呼び,音声だけで会議に参
加することもありました。一方,最近では,画像が伴うような,システム提供企業のサー
バーを利用したオンライン会議システムというのが一般化し始めてきております。ですの
で,テレカンと呼んでいるように,基本的に電話回線やIP接続によるネットワークを利
用した遠隔会議が一般的だったものですから,確認をさせていただいたということです。
ですから,法制審議会としては,当初接続の段階で音声が確実につながっていたとしても,
そこに画像を表示できる機器やツールがない限りは出席は認めないということが今回の御
提案ということでよろしいですね。
○しろまる内田会長 提案はそのような内容だと思います。
ほかに御質問はありますでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは,御意見を承りたいと思います。御意見のある方はどうぞ御自由にお願いいた
します。
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特にございませんでしょうか。
それでは,特に御意見もないようですので,事務当局から提案がありました決定案につ
きまして採決に移りたいと思いますが,御異議ございませんでしょうか。
ありがとうございます。それでは,採決に移ります。
「情報通信機器を利用した法制審議会への出席」につきまして,事務当局から提案され
ました決定案のとおり決定することに賛成の方は挙手をお願いいたします。
(賛成者挙手)
○しろまる内田会長 事務当局において票読みをお願いいたします。
では,手を下ろしていただいて結構です。
それでは,結果をお願いいたします。
○しろまる丸山司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。
議長を除くただいまの出席委員数は16名でございますところ,全ての委員が御賛成と
いうことでございました。
○しろまる内田会長 ありがとうございます。
それでは,採決の結果,全員賛成でございましたので,事務当局から提案されました決
定案は原案のとおり議決されたものと認めます。
今後の情報通信機器を利用した法制審議会への出席につきましては,ただいま御決定い
ただきました内容に基づいて対応していくということにしたいと思います。どうもありが
とうございます。
続きまして,2番目の議題ですが,「少年法における少年の年齢及び犯罪者処遇を充実
させるための刑事法の整備に関する諮問第103号」について,御審議をお願いしたいと
存じます。
初めに,少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会における審議の経過及び結
果につきまして,同部会の部会長を務められました佐伯仁志委員から御報告をいただきた
いと存じます。
それでは,佐伯部会長,報告者席までお願いいたします。
では,よろしくお願いします。
○しろまる佐伯部会長 少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会の部会長の佐伯でござい
ます。当部会における審議の経過及び結果を御報告します。
諮問第103号は,憲法改正の投票権及び選挙権を有する者の年齢を18歳以上とする
立法措置や,民法上の成年年齢に関する検討状況等を踏まえ,少年法の規定について検討
が求められていることのほか,近時の犯罪情勢,再犯防止の重要性等に鑑み,少年法にお
ける「少年」の年齢を18歳未満とすること及び非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一
層充実させるための法整備の在り方等について,意見を求めるというものでした。
平成29年2月9日に開催された法制審議会第178回会議において,この諮問につい
ては,まず部会において検討させる旨の決定がなされ,これを受けて当部会が設置されま
した。そして,当部会では三つの分科会での計29回の会議,部会での計29回の会議を
開催して調査審議を重ねた結果,本年9月9日,賛成多数により,配布資料「諮問第10
3号に対する答申案」を取りまとめるに至りました。
それでは,答申案の内容について御説明いたします。答申案は1ページから2ページま
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での本文と,3ページ以下の別添1から別添3までの要綱(骨子)から構成されておりま
す。
まず,1ページの本文,「第2 結論」から御説明いたします。「第2 結論」には,
当部会の結論を諮問の内容に対応して二つに分けて記載しています。「1」では,「少年
法における「少年」の年齢を18歳未満とすること」に関して,18歳及び19歳の者は,
選挙権等を付与され,民法上も成年として位置付けられるに至った一方,いまだ成長発達
途上にあって可塑性を有することから,刑事司法制度上,18歳未満の者とも20歳以上
の者とも異なる取扱いをすべきである,そこで,罪を犯した18歳及び19歳の者につい
て,別添1の要綱(骨子)に従って法整備を行うべきであるとしています。
その上で,18歳及び19歳の者の位置付けについては,「少年」のままとすべきとす
る意見と,「成人」とすべきとする意見に大きく分かれた一方,18歳及び19歳の者に
対する刑事司法制度の在り方を考える上で最も重要なのは,いかなる制度を設け,具体的
にどのような取扱いをするかを決めることであり,これらの者の位置付けや呼称について
は,国民意識や社会通念等を考慮して,広く受け入れられるものを選択すべきことにも鑑
みると,立法プロセスにおける検討に委ねるのが相当であるとの意見があり,結論におい
ては,18歳及び19歳の者の位置付けやその呼称については,今後の立法プロセスにお
ける検討に委ねるのが相当であるとしています。
次に,「2」では,「犯罪者に対する処遇を一層充実させるための法整備の在り方等」
に関する結論として,別添2の要綱(骨子)に従って法整備等の措置を講ずるべきであり,
また,別添3の要綱(骨子)の施策が講じられることを期待するとしています。
続いて,要綱(骨子)について御説明いたします。まず,答申案3ページを御覧くださ
い。別添1としている要綱(骨子)では,罪を犯した18歳及び19歳の者に対する処分
及び刑事事件の特例等の在り方を示しています。
「一 家庭裁判所への送致」では,検察官は,18歳又は19歳の者の被疑事件につい
て捜査を遂げた結果,犯罪の嫌疑があるものと思料する場合には,事件を家庭裁判所に送
致しなければならないとして,いわゆる全件送致の仕組みを採用することとしています。
この点に関し,当部会では,検察官が起訴猶予とした事件のみを家庭裁判所に送致する案
や,家庭裁判所に送致することを原則としつつ一定の重大事件は例外とする案も検討いた
しましたが,全件送致の仕組みは現行制度において少年の再犯防止や改善更生に有効に機
能しており,引き続きこの仕組みを採用して,家庭裁判所の機能を最大限活用することに
は合理性があると考えられたものです。
「二 手続・処分」では,家庭裁判所における手続・処分の具体的な内容を示していま
す。「1 対象者」では,「罪を犯した18歳及び19歳の者」としており,罪を犯すお
それのある者,いわゆるぐ犯は対象としないこととしています。これは,民法上の成年と
して監護権の対象から外れる18歳及び19歳の者に対し,罪を犯すおそれがあるという
だけで処分を行うことは,民法改正との整合性に疑問があるとともに,国家による過度の
介入となると考えられたことによるものです。
次に,「2 検察官送致決定」では,「(二)」において,いわゆる原則逆送の仕組み
について,「故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であって,その罪を犯す
とき16歳以上の者に係るもの」に加え,「死刑又は無期若しくは短期1年以上の刑に当
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たる罪の事件であって,その罪を犯すとき18歳又は19歳の者に係るもの」を対象とす
ることとしています。これは,18歳及び19歳の者の社会的な位置付けに鑑みると,全
件送致の仕組みを採用する以上は,18歳未満の者よりも広い範囲で一定の重大事件につ
いて刑事処分が適切になされることを制度として担保しなければ,被害者を含む国民の理
解・納得を得難いと考えられたことによるものです。
次に,「4 処分の決定」の「(一)」では,家庭裁判所による処分は,犯罪の軽重を
考慮して相当な限度を超えない範囲において行わなければならないものとする,としてい
ます。これは,先ほどぐ犯を対象者としない理由として申し上げたのと同様の理由による
ものです。
その上で,「4 処分の決定」の「(二)」において,家庭裁判所による処分として
「イ」から「ハ」までの順に,施設収容の可能性のない保護観察(仮称),遵守事項違反
があった場合に施設収容の可能性がある保護観察(仮称),処遇施設送致,すなわち施設
収容処分を設けることとしています。
そして,「(三)」では,家庭裁判所はこれらの処分の決定と同時に,施設収容の可能
性のある保護観察については収容期間として1年以下の期間,施設収容処分については処
分の期間として3年以下の期間を定めることとしています。
次に,「5 保護観察」では,施設収容の可能性のない保護観察の期間は6月,施設収
容の可能性のある保護観察の期間は2年とする,保護観察所の長は,保護観察を継続する
必要がなくなったと認めるときは,保護観察を解除するなどとしています。
また,「6 遵守事項違反があった場合の処遇施設収容」では,施設収容の可能性のあ
る保護観察に関し,遵守事項違反があった場合に,対象者を施設に収容する手続や,施設
に収容された場合の取扱いの在り方等を示しています。
「7 処遇施設送致」では,施設収容処分について,家庭裁判所が定めた期間が満了し
たときのほか,処遇施設において処分継続の必要性がなくなったと認める場合にも退所を
認める仕組みとすることとしています。
次に,「三 刑事手続の特例等」について御説明いたします。ここでは,18歳及び1
9歳の者の刑事事件等について設ける特別の措置の在り方を示しており,「1 検察官送
致決定後の事件の取扱い」では,逆送決定後のいわゆる起訴強制の仕組みを設けること,
「2 勾留」では,勾留に代わる観護措置と勾留の要件を加重する特則については,逆送
決定前の段階に限り設け,鑑別施設での拘禁を可能とする特則は,逆送決定の前後を通じ
て設けること,「3 取扱いの分離」では,18歳又は19歳の被疑者と他の被疑者・被
告人との分離等に関する特則は,逆送決定前の段階に限り設けること,「4 家庭裁判所
への移送」では,刑事裁判所による家庭裁判所への移送の仕組みを設けることとしていま
す。
そして,「5 推知報道の制限」では,18歳又は19歳のときに罪を犯した者につい
て,推知報道を禁止するが,逆送され公判請求された後は禁止を解除することとしていま
す。これは,推知報道の禁止は報道の自由や国民の知る権利を制約するものであり,18
歳及び19歳の者の社会的位置付けに照らすと,これらの者が逆送されて公判請求される
に至った場合にまで推知報道を一律に制限するのは相当ではないと考えられたことによる
ものです。
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次に,答申案6ページを御覧ください。別添2としている要綱(骨子)では,犯罪者に
対する処遇を一層充実させるために講ずるべき法整備等の措置を掲げています。
「1 自由刑の単一化」では,懲役及び禁錮を単一化して「新たな自由刑」を創設し,
この自由刑について,刑事施設に拘置し,改善更生を図るため,必要な作業を行わせ,又
は必要な指導を行うものとするなどとしています。これは,受刑者の改善更生や再犯防止
の重要性についての認識の高まり等を踏まえ,刑事施設内での処遇の充実を図るためには,
例えば,学力の不足により社会生活に支障がある者など,教育等を十全に行うべき若年者
に対しては,必ずしも一律に作業を行わせるのではなく,作業を大幅に減らし,又は作業
をさせずに改善指導や教科指導を行うなど,個々の受刑者の特性に応じた柔軟かつ適切な
処遇を可能とすべきと考えられたことによるものです。
「2 若年受刑者に対する処遇調査の充実」では,若年受刑者に充実した処遇を行う前
提として,個々の受刑者の問題性を的確に把握できるよう,鑑別の対象となる受刑者の年
齢の上限を「20歳未満」から「おおむね26歳未満」に引き上げることとしています。
「3 若年受刑者に対する処遇原則の明確化等」では,若年受刑者の処遇の充実を推進
するため,若年受刑者に対する処遇原則を明確化するなどとしています。
「4 刑の執行段階等における被害者等の心情等の聴取・伝達制度」では,被害者等の
心情等を適切に矯正処遇・矯正教育にいかすため,刑事施設又は少年院の長が,被害者等
の心情等を聴取するとともに,それを一定の範囲で受刑者等に伝達する仕組みを設けるな
どとしています。
「5 刑の全部の執行猶予制度の拡充」では,保護観察付執行猶予の活用を図るととも
に,執行猶予制度の再犯防止機能を十全なものとする観点から,次の3点,すなわち,保
護観察付執行猶予中の再犯であっても,情状に特に酌量すべきものがあるときは,再度の
刑の全部の執行猶予を言い渡すことができるようにすること,執行猶予中の再犯について,
再度の刑の全部の執行猶予を言い渡すことができる刑期の上限を1年から2年に引き上げ
ること,猶予期間中に再犯に及んだ場合に,その有罪判決の確定が猶予期間の経過後とな
った場合でも,猶予期間が経過した当初の刑を執行できるようにする仕組みを設けること
としています。
「6 刑の執行猶予中の保護観察の仮解除の活用促進」では,適時の仮解除を可能とす
ることにより,対象者の改善更生の意欲を高める観点から,仮解除に関する判断・決定の
主体を地方更生保護委員会から保護観察所の長に変更するなどとしています。
「7 新たなアセスメントツールを活用した保護観察処遇の充実,特別遵守事項の類型
の追加」では,保護観察対象者が抱える様々な問題性の改善を図る観点から,更生保護事
業者等が実施する処遇プログラムの受講等を保護観察の特別遵守事項として設定できるよ
うにするなどとしています。
「8 犯罪被害者等の視点に立った保護観察処遇の充実」では,保護観察対象者に被害
者等の心情・状況等を理解させ,被害を回復すべき責任を自覚させるための指導を充実さ
せる観点から,保護観察官等の指導に応じてとった行動の申告や関係資料の提示を保護観
察の遵守事項の類型に加えるなどとしています。
「9 保護観察における少年鑑別所の調査機能の活用」では,若年の仮釈放者及び執行
猶予者に対する保護観察において,より適切な処遇を行うため,保護観察所の長が鑑別を
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求めることができることとしています。
「10 更生保護事業の体系の見直し等」は,更生保護事業の名称を各事業内容に即し
たものに変更するほか,特定の犯罪的傾向の改善のための援助の活用や関係機関との連携
推進等のため,所要の措置を講ずることとしています。
「11 更生緊急保護の対象の拡大等」は,罪を犯した者の改善更生・再犯防止のため,
早期に安定した生活環境を確保できるようにするため,次の3点,すなわち,いずれも保
護観察所の長が,検察官において直ちに訴追を必要としないと認める被疑者に対する更生
緊急保護,勾留中の被疑者についての生活環境の調整,満期釈放者に対する援助や関係機
関への助言等を行うことができることとしています。
続いて,答申案12ページを御覧ください。別添3としている要綱(骨子)では,犯罪
者に対する処遇を一層充実させるための運用上の措置として,「1 若年受刑者を対象と
する処遇内容の充実」,「2 若年受刑者に対する処遇調査の充実」,「3 外部通勤作
業及び外出・外泊の活用等」,「4 保護観察における新たなアセスメントツールを活用
した処遇手法の推進」,「5 犯罪被害者等の視点に立った保護観察処遇の充実」に関し,
それぞれ実施が望まれる施策を示しています。
要綱(骨子)の御説明は以上です。
次に,答申案1ページの本文に戻っていただき,2ページにかけての「第3 附帯事
項」には,先ほどから御説明している別添1から3までの刑事に関する制度及び施策のほ
かに,再犯を含む犯罪防止の観点から実施が望まれる事項を掲げています。
さらに,答申案2ページの「第4 今後の課題」では,「1」として,別添1の制度に
ついては,施行後一定期間が経過した段階で,よりよい制度とするための検討を行うのが
相当であり,その場合には,成年年齢引下げに係る改正民法の施行後における社会情勢や
国民意識の変化等も踏まえつつ,多角的な検討がなされることが望ましいとしています。
また,「2」として,今後必要に応じて更に検討を行うことが考えられる事項を掲げてい
ます。
長くなりましたが,答申案の御説明は以上です。
○しろまる内田会長 御報告ありがとうございました。
それでは,ただいまの御報告及び答申案の全般的な点につきまして,御質問及び御意見
を承りたいと思います。
御質問と御意見を分けまして,まず御質問がございましたら承りたいと思います。御自
由にどうぞ。
○しろまる橋本委員 ありがとうございます。今,推知報道の制限のところで,一律に禁止するのは
適当でないという表現があったように思いますが,その場合の一律にというのは,どうい
う含意のものなのでしょうか。そこだけお答えいただければと思います。
○しろまる内田会長 今の御質問に対して,お答えを頂けますか。お願いします。
○しろまる保坂関係官 先ほど部会長から御説明があった,一律にという趣旨ですけれども,どうい
う手続段階であるか,あるいはどういう事件なのかを問わず,推知報道が禁止され続ける
ということは,まず適当でなかろうと。その上で,一律ではないとすると,どの範囲でと
いうことで申し上げますと,この要綱(骨子)にありますように,公判請求された手続段
階以降は推知報道の禁止を解くと,こういうことで答申案ができ上がっているということ
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でございます。
○しろまる内田会長 ただいまの回答でよろしいでしょうか。ありがとうございます。
ほかに御質問ありますでしょうか。特にございませんでしょうか。
それでは,御意見を承りたいと思います。御意見があります方はどうぞ御自由にお願い
いたします。
○しろまる山根委員 山根です。ありがとうございます。今回,この少年の年齢を18歳未満に引き
下げないこととしたこの案を大きく評価いたします。私どもの会からも数度,意見書を出
していますが,少年法は有効に機能してきた制度であって,引下げはかえって再犯につな
がる懸念があるということで反対を表明してきました。今回,18歳,19歳について,
全ての事件を家裁に送致し,背景の調査等をした上で処分を決めるとしたこと,家裁が刑
事処分が必要としたときのみ検察に送致するとしたことに賛成です。
そして,18歳,19歳の位置付けや呼び方については今後のプロセスでとありますが,
18歳,19歳は少年法の理念が及ぶところということを明確に位置付けるべきと考えて
おります。
そして,気になるところはありまして,幾つか述べたいと思いますが,原則逆送対象事
件の拡大についてですが,これまで故意の殺人だけだったところから,強盗,強制性交,
放火といった事件にまで広げるとなっておりますが,これはかなりの拡大であって,例え
ば強盗と一言で言っても,計画的で重大,凶悪なものから,突発的で軽微なものまである
と考えられることから,具体的な基準作りや運用には慎重さが必要と思います。
逆送を拡大することは一見,厳しい処置を促すもののように見えますが,実際はこうし
た事件は執行猶予となる場合がほとんどのようですので,家裁できちんと調査をして保護
観察処分とするなどの処置の方が結局,厳しい環境において更生を後押しするということ
になるのではないかと考えております。
また,ぐ犯が保護処分の対象外となることは,家庭環境等に問題があって行き場のない
少年少女を救うという役割や機能があったところから後退しないかという不安を持ってお
ります。
それと,もう1点,推知報道の禁止の解除ですけれども,ネット社会の今は一般の人の
投稿で拡散されてということがあると思いますが,それでも禁止されているということが
一定の歯止めにはなっているのではないかと思われます。今の情報の拡散には懲らしめの
ような空気も感じているのですが,この推知報道禁止の解除ということが今の社会に及ぼ
す影響については気になるところでありまして,有罪判決が出たときに報道禁止解除とい
うのでは駄目なのかと感じるところもありますし,また,公判請求された場合に報道でき
るものとするという案ですが,公判請求後に家裁への移送が望ましいとなったときに,家
裁では匿名非公開で進められるということですので,ここの矛盾も課題といえるのではな
いかと思いました。
以上ですけれども,今後の法整備における丁寧な検討を希望いたします。答申案に賛成
ながらも,課題もあると思っております。
○しろまる内田会長 ありがとうございます。
ほかに御意見ありますでしょうか。
○しろまる橋本委員 ありがとうございます。今の山根委員の御意見と同様の面がございますが,答
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申案,要綱(骨子)の別添1について意見を申し上げます。
御説明のとおり,様々な意見のある中で,ある種のバランスをとろうとした案であると
考えております。ただ,18歳及び19歳の者が類型的に未成熟で成長発達途上にあると
いう観点からいたしますと,幾つかの点で不十分であり,また,更に検討を要するような
問題があるのではないかと思いました。この場は詳細な議論を立てる場でもないと思いま
すので,ここではその中でも特に指摘しておきたい3点についてだけ,議論が重複するか
もしれませんが,要望を含めて,申し上げさせていただきたいと思います。
第1は,年齢区分の在り方,呼称についてでございます。現行少年法は,非行を犯した
少年の事件につきましては,まず全件を家庭裁判所に送致し,家裁の調査官や少年鑑別所
が科学的な調査鑑別を実施して,その結果を踏まえて適切な処遇選択を行うこととしてい
ます。そして,そのことが少年の立ち直りのための支援や再犯防止につながっているとい
う実態がございますので,先ほども山根委員から同様の意見がございましたが,大変有効
に機能している制度だと認識しております。この点で,今回の答申案が18歳及び19歳
の者についても現行法の枠組みと同様に全件家裁送致を採用した点は高く評価できると思
います。
ただ,これらの者の年齢区分の在り方や呼称を今後の立法プロセスにおける検討に委ね
るとしている点につきましては,不十分ではないかと考えます。と申しますのは,答申案
は,これらの者が類型的に未だ十分に成熟しておらず,成長発達途上にあって可塑性を有
する存在であるということを認めて,その上で現行少年法に近い枠組みを採用しているの
ですから,その健全育成のために国家が後見的に介入するということを想定しているもの
と考えます。そうであるとすれば,端的に,18歳及び19歳の者につきましても,少年
法の対象である少年と位置付け,少年法第1条に定める少年法の目的である健全育成とい
う理念が及ぶことを明確にすべきだと考えます。この点につきましては,与党のPT合意
が18,19歳の者は少年法の適用対象と明示しているところでもありますので,今後の
立法プロセスにおきましては是非,少年法の適用対象として位置付けられることを期待し
たいと思います。
第2は,いわゆる原則逆送対象事件の拡大でございまして,対象事件を短期1年以上の
刑の事件にまで拡大することには問題があるのではないかと考えています。短期1年以上
といいますと,先ほども指摘がありましたとおり,例えば強盗罪などが含まれるわけです
けれども,御承知のとおり,これは実は極めて犯情の幅の広い犯罪でございます。確かに
凶悪なものもございますが,万引きが見付かってしまい制止を振り切ろうとして軽微な暴
行に及んだというような事案も含まれてきます。そのため,20歳,21歳の強盗罪の事
案では起訴された事件の半分以上が執行猶予になっているという実態が見られます。これ
は,この種の犯罪が一定の軽微と思われる事案を相当に含んでいるということの反映と思
います。この種の事案については,家庭裁判所であれば施設収容処分や保護観察により適
切な処遇ができるわけですが,原則として逆送ということにされるということになります
と,そのような機会が与えられないということになりますので,立ち直りや再犯防止の観
点からはやはり不十分であり,また,結果的に逆効果になりかねないことを危惧いたしま
す。その意味で,短期1年以上の刑の事件まで原則逆送の対象として位置付けることは,
家庭裁判所の柔軟な裁量処分の機会を奪うものでございまして,問題があるように思いま
- 11 -
す。
第3は,推知報道の制限の一部解除,すなわち,公判請求された場合にはこれが解除さ
れるという点でございまして,これも問題があるように思います。推知報道の禁止は少年
の立ち直りや社会復帰にとって極めて重要な役割を果たしておりまして,特に現今のイン
ターネット社会におきましては,一旦実名が報道されますと容易に拡散し,不特定多数の
者が半永久的に検索することが可能になりますので,就職や住居の賃借などにも大きな支
障になります。
そして,先ほど質問したことに関連するのですが,逆送された後に刑事裁判所が保護処
分を相当と認めるときは,事件を家庭裁判所に移送する旨の決定をすることとされていま
すので,その場合には再度,推知報道の禁止の対象となります。しかし,一旦報道がなさ
れてしまっていますと,もはや取り返しが付かないように思います。したがって,公判請
求された段階での推知報道の制限解除は適切ではないと考えております。
○しろまる内田会長 どうもありがとうございます。
ほかに御意見ありますでしょうか。
特にございませんでしょうか。
それでは,御意見が尽きたものとして,採決に移りたいと存じますが,よろしいでしょ
うか。
ありがとうございます。
それでは,特に御異議もないようですので,採決に移らせていただきます。諮問第10
3号につきまして,「少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会」から御報告さ
れました答申案のとおり答申することに賛成の方は挙手をお願いいたします。
(賛成者挙手)
○しろまる内田会長 事務当局において票読みをお願いいたします。
よろしいでしょうか。では,手を下ろしていただいて結構です。
○しろまる丸山司法法制課長 それでは,採決の結果を御報告申し上げます。
議長及び部会長を除くただいまの出席委員数は15名でございますところ,全ての委員
が御賛成ということでございました。
○しろまる内田会長 ありがとうございます。
採決の結果,全員賛成でございましたので,「少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇
関係)部会」から報告されました答申案は,原案のとおり議決されたものと認めます。
議決されました答申案につきましては,会議終了後,法務大臣に対して答申することと
いたします。
佐伯部会長,及び昨年1月まで部会長を務められました井上関係官におかれましては,
大変多岐にわたる論点につきまして精力的に調査審議をしていただきました。誠にありが
とうございました。
これで本日の予定は終了となりますが,ほかにこの機会に御発言いただけることがござ
いましたらお伺いしたいと存じます。何かございますでしょうか。
特にありませんでしょうか。
それでは,ほかに特に御発言もないようですので,本日はこれで終了とさせていただき
ます。
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本日の会議における議事録の公開方法につきましては,審議の内容等に鑑みまして,会
長の私といたしましては,議事録の発言者名を全て明らかにして公開することにしたいと
思いますが,いかがでしょうか。御異論ありませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
それでは,本日の会議につきましては,議事録の発言者名を全て明らかにして公開する
ことといたします。
本日の会議の内容につきまして,後日,御発言をいただいた委員等の皆様には議事録案
をメール等で送付させていただき,御発言の内容を確認していただいた上で法務省のウェ
ブサイトで公開をしたいと思います。
最後に,事務当局から何か事務連絡がございましたら,お願いいたします。
○しろまる金子関係官 次回の会議の開催予定について御案内申し上げます。
法制審議会は2月及び9月に開催するのが通例となっております。次回の開催につきま
しても,現在のところは来年2月に御審議をお願いする予定でございますが,具体的な日
程につきましては後日改めて御相談させていただきたいと存じます。委員,幹事の皆様方
におかれましては御多忙とは存じますが,今後の御予定につき御配意いただきますようよ
ろしくお願い申し上げます。
○しろまる内田会長 ありがとうございます。
それでは,本日の会議を終了いたします。
本日はお忙しいところをお集まりいただき,御熱心な議論をいただきまして,誠にあり
がとうございました。
-了-