7懲戒処分の指針について(人事院事務総長通知)


令和2年4月1日一部改正後
職 職 ― 6 8
平成12年3月31日
各 省 各 庁 事 務 次 官殿各 外 局 の 長
人 事 院 事 務 総 長
懲戒処分の指針について(通知)
人事院では、この度、懲戒処分がより一層厳正に行われるよう、任命権者が懲
戒処分に付すべきと判断した事案について、処分量定を決定するに当たっての参
考に供することを目的として、別紙のとおり懲戒処分の指針を作成しました。
職員の不祥事に対しては、かねて厳正な対応を求めてきたところですが、各省
庁におかれては、本指針を踏まえて、更に服務義務違反に対する厳正な対処をお
願いいたします。
特に、組織的に行われていると見られる不祥事に対しては、管理監督者の責任
を厳正に問う必要があること、また、職務を怠った場合(国家公務員法第82条
第1項第2号)も懲戒処分の対象となることについて、留意されるようお願いし
ます。
以 上
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別 紙
懲戒処分の指針
第1 基本事項
本指針は、代表的な事例を選び、それぞれにおける標準的な懲戒処分の種類
を掲げたものである。
具体的な処分量定の決定に当たっては、
1 非違行為の動機、態様及び結果はどのようなものであったか
2 故意又は過失の度合いはどの程度であったか
3 非違行為を行った職員の職責はどのようなものであったか、その職責は非
違行為との関係でどのように評価すべきか
4 他の職員及び社会に与える影響はどのようなものであるか
5 過去に非違行為を行っているか
等のほか、適宜、日頃の勤務態度や非違行為後の対応等も含め総合的に考慮の
上判断するものとする。
個別の事案の内容によっては、標準例に掲げる処分の種類以外とすることも
あり得るところである。例えば、標準例に掲げる処分の種類より重いものとす
ることが考えられる場合として、
1 非違行為の動機若しくは態様が極めて悪質であるとき又は非違行為の結果
が極めて重大であるとき
2 非違行為を行った職員が管理又は監督の地位にあるなどその職責が特に高
いとき
3 非違行為の公務内外に及ぼす影響が特に大きいとき
4 過去に類似の非違行為を行ったことを理由として懲戒処分を受けたことが
あるとき
5 処分の対象となり得る複数の異なる非違行為を行っていたとき
がある。また、例えば、標準例に掲げる処分の種類より軽いものとすることが
考えられる場合として、
1 職員が自らの非違行為が発覚する前に自主的に申し出たとき
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2 非違行為を行うに至った経緯その他の情状に特に酌量すべきものがあると
認められるとき
がある。
なお、標準例に掲げられていない非違行為についても、懲戒処分の対象とな
り得るものであり、これらについては標準例に掲げる取扱いを参考としつつ判
断する。
第2 標準例
1 一般服務関係
(1) 欠勤
ア 正当な理由なく10日以内の間勤務を欠いた職員は、減給又は戒告と
する。
イ 正当な理由なく11日以上20日以内の間勤務を欠いた職員は、停職
又は減給とする。
ウ 正当な理由なく21日以上の間勤務を欠いた職員は、免職又は停職と
する。
(2) 遅刻・早退
勤務時間の始め又は終わりに繰り返し勤務を欠いた職員は、戒告とする。
(3) 休暇の虚偽申請
病気休暇又は特別休暇について虚偽の申請をした職員は、減給又は戒告
とする。
(4) 勤務態度不良
勤務時間中に職場を離脱して職務を怠り、公務の運営に支障を生じさせ
た職員は、減給又は戒告とする。
(5) 職場内秩序を乱す行為
ア 他の職員に対する暴行により職場の秩序を乱した職員は、停職又は減
給とする。
イ 他の職員に対する暴言により職場の秩序を乱した職員は、減給又は戒
告とする。
(6) 虚偽報告
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事実をねつ造して虚偽の報告を行った職員は、減給又は戒告とする。
(7) 違法な職員団体活動
ア 国家公務員法第98条第2項前段の規定に違反して同盟罷業、怠業そ
の他の争議行為をなし、又は政府の活動能率を低下させる怠業的行為を
した職員は、減給又は戒告とする。
国家公務員法第98条第2項後段の規定に違反して同項前段に規定すイる違法な行為を企て、又はその遂行を共謀し、そそのかし、若しくはあ
おった職員は、免職又は停職とする。
(8) 秘密漏えい
ア 職務上知ることのできた秘密を故意に漏らし、公務の運営に重大な支
障を生じさせた職員は、免職又は停職とする。この場合において、自己
の不正な利益を図る目的で秘密を漏らした職員は、免職とする。
イ 具体的に命令され、又は注意喚起された情報セキュリティ対策を怠っ
たことにより、職務上の秘密が漏えいし、公務の運営に重大な支障を生
じさせた職員は、停職、減給又は戒告とする。
(9) 政治的目的を有する文書の配布
政治的目的を有する文書を配布した職員は、戒告とする。
(10) 兼業の承認等を得る手続のけ怠
営利企業の役員等の職を兼ね、若しくは自ら営利企業を営むことの承認
を得る手続又は報酬を得て、営利企業以外の事業の団体の役員等を兼ね、
その他事業若しくは事務に従事することの許可を得る手続を怠り、これら
の兼業を行った職員は、減給又は戒告とする。
(11) 入札談合等に関与する行為
国が入札等により行う契約の締結に関し、その職務に反し、事業者その
他の者に談合を唆すこと、事業者その他の者に予定価格等の入札等に関す
る秘密を教示すること又はその他の方法により、当該入札等の公正を害す
べき行為を行った職員は、免職又は停職とする。
(12) 個人の秘密情報の目的外収集
その職権を濫用して、専らその職務の用以外の用に供する目的で個人の
秘密に属する事項が記録された文書等を収集した職員は、減給又は戒告と
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する。
(13) 公文書の不適正な取扱い
ア 公文書を偽造し、若しくは変造し、若しくは虚偽の公文書を作成し、
又は公文書を毀棄した職員は、免職又は停職とする。
イ 決裁文書を改ざんした職員は、免職又は停職とする。
ウ 公文書を改ざんし、紛失し、又は誤って廃棄し、その他不適正に取り
扱ったことにより、公務の運営に重大な支障を生じさせた職員は、停職、
減給又は戒告とする。
(14) セクシュアル・ハラスメント(他の者を不快にさせる職場における性
的な言動及び他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動)
ア 暴行若しくは脅迫を用いてわいせつな行為をし、又は職場における上
司・部下等の関係に基づく影響力を用いることにより強いて性的関係を
結び若しくはわいせつな行為をした職員は、免職又は停職とする。
イ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞、性的な内容の
電話、性的な内容の手紙・電子メールの送付、身体的接触、つきまとい
等の性的な言動(以下「わいせつな言辞等の性的な言動」という。)を
繰り返した職員は、停職又は減給とする。この場合においてわいせつな
言辞等の性的な言動を執拗に繰り返したことにより相手が強度の心的ス
トレスの重積による精神疾患に罹患したときは、当該職員は免職又は停
職とする。
ウ 相手の意に反することを認識の上で、わいせつな言辞等の性的な言動
を行った職員は、減給又は戒告とする。
(15) パワー・ハラスメント
ア パワー・ハラスメント(人事院規則10―16(パワー・ハラスメン
トの防止等)第2条に規定するパワー・ハラスメントをいう。以下同
じ。)を行ったことにより、相手に著しい精神的又は身体的な苦痛を与
えた職員は、停職、減給又は戒告とする。
イ パワー・ハラスメントを行ったことについて指導、注意等を受けたに
もかかわらず、パワー・ハラスメントを繰り返した職員は、停職又は減
給とする。
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ウ パワー・ハラスメントを行ったことにより、相手を強度の心的ストレ
スの重積による精神疾患に罹患させた職員は、免職、停職又は減給とすりる。
(注)(14)及び(15)に関する事案について処分を行うに際しては、具体的な行為
の態様、悪質性等も情状として考慮の上判断するものとする。
2 公金官物取扱い関係
(1) 横領
公金又は官物を横領した職員は、免職とする。
(2) 窃取
公金又は官物を窃取した職員は、免職とする。
(3) 詐取
人を欺いて公金又は官物を交付させた職員は、免職とする。
(4) 紛失
公金又は官物を紛失した職員は、戒告とする。
(5) 盗難
重大な過失により公金又は官物の盗難に遭った職員は、戒告とする。
(6) 官物損壊
故意に職場において官物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。
(7) 失火
過失により職場において官物の出火を引き起こした職員は、戒告とする。
(8) 諸給与の違法支払・不適正受給
故意に法令に違反して諸給与を不正に支給した職員及び故意に届出を怠
り、又は虚偽の届出をするなどして諸給与を不正に受給した職員は、減給
又は戒告とする。
(9) 公金官物処理不適正
自己保管中の公金の流用等公金又は官物の不適正な処理をした職員は、
減給又は戒告とする。
(10) コンピュータの不適正使用
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職場のコンピュータをその職務に関連しない不適正な目的で使用し、公
務の運営に支障を生じさせた職員は、減給又は戒告とする。
3 公務外非行関係
(1) 放火
放火をした職員は、免職とする。
(2) 殺人
人を殺した職員は、免職とする。
(3) 傷害
人の身体を傷害した職員は、停職又は減給とする。
(4) 暴行・けんか
暴行を加え、又はけんかをした職員が人を傷害するに至らなかったとき
は、減給又は戒告とする。
(5) 器物損壊
故意に他人の物を損壊した職員は、減給又は戒告とする。
(6) 横領
ア 自己の占有する他人の物を横領した職員は、免職又は停職とする。
イ 遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した職員は、減給
又は戒告とする。
(7) 窃盗・強盗
ア 他人の財物を窃取した職員は、免職又は停職とする。
イ 暴行又は脅迫を用いて他人の財物を強取した職員は、免職とする。
(8) 詐欺・恐喝
人を欺いて財物を交付させ、又は人を恐喝して財物を交付させた職員は、
免職又は停職とする。
(9) 賭博
ア 賭博をした職員は、減給又は戒告とする。
イ 常習として賭博をした職員は、停職とする。
(10) 麻薬等の所持等
麻薬、大麻、あへん、覚醒剤、危険ドラッグ等の所持、使用、譲渡等を
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した職員は、免職とする。
(11) 酩酊による粗野な言動等
酩酊して、公共の場所や乗物において、公衆に迷惑をかけるような著し
く粗野又は乱暴な言動をした職員は、減給又は戒告とする。
(12) 淫行
18歳未満の者に対して、金品その他財産上の利益を対償として供与し、
又は供与することを約束して淫行をした職員は、免職又は停職とする。
(13) 痴漢行為
公共の場所又は乗物において痴漢行為をした職員は、停職又は減給とす
る。
(14) 盗撮行為
公共の場所若しくは乗物において他人の通常衣服で隠されている下着若
しくは身体の盗撮行為をし、又は通常衣服の全部若しくは一部を着けない
状態となる場所における他人の姿態の盗撮行為をした職員は、停職又は減
給とする。
4 飲酒運転・交通事故・交通法規違反関係
(1) 飲酒運転
ア 酒酔い運転をした職員は、免職又は停職とする。この場合において人
を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職とする。
イ 酒気帯び運転をした職員は、免職、停職又は減給とする。この場合に
おいて人を死亡させ、又は人に傷害を負わせた職員は、免職又は停職
(事故後の救護を怠る等の措置義務違反をした職員は、免職)とする。
ウ 飲酒運転をした職員に対し、車両若しくは酒類を提供し、若しくは飲
酒をすすめた職員又は職員の飲酒を知りながら当該職員が運転する車両
に同乗した職員は、飲酒運転をした職員に対する処分量定、当該飲酒運
転への関与の程度等を考慮して、免職、停職、減給又は戒告とする。
(2) 飲酒運転以外での交通事故(人身事故を伴うもの)
ア 人を死亡させ、又は重篤な傷害を負わせた職員は、免職、停職又は減
給とする。この場合において措置義務違反をした職員は、免職又は停職
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とする。
イ 人に傷害を負わせた職員は、減給又は戒告とする。この場合において
措置義務違反をした職員は、停職又は減給とする。
(3) 飲酒運転以外の交通法規違反
著しい速度超過等の悪質な交通法規違反をした職員は、停職、減給又は
戒告とする。この場合において物の損壊に係る交通事故を起こして措置義
務違反をした職員は、停職又は減給とする。
(注) 処分を行うに際しては、過失の程度や事故後の対応等も情状として考
慮の上判断するものとする。
5 監督責任関係
(1) 指導監督不適正
部下職員が懲戒処分を受ける等した場合で、管理監督者としての指導監
督に適正を欠いていた職員は、減給又は戒告とする。
(2) 非行の隠ぺい、黙認
部下職員の非違行為を知得したにもかかわらず、その事実を隠ぺいし、
又は黙認した職員は、停職又は減給とする。

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