2.8.6(太田)
本会議の論点について
1 検察官の倫理
・ 「検察の理念」に加え、職務外の行動の在り方
◯ 検察官の任務に鑑みれば、
私生活上の非違行為であっても、
検察の信用を失墜させ
ることは明らかであるから、
職務倫理の一環として、
当該行為についても相応に厳し
く律する必要性はあるものと考える。
◯ 他方、
検察官は一般職の国家公務員であり、
国家公務員倫理法及び国家公務員倫理
規程の適用を受けている。
国家公務員倫理規程では、
職務上のみならず私生活上の行
為についても幅広く規制しているところであり、特に検察官につき更なる規制が必
要か否かについては、他官庁や民間企業の取扱いも踏まえて慎重に議論すべきであ
ろう。
◯ 検察官の倫理の確立のためには、
教育や研修が重要であり、
その在り方について、
現状の説明を受けた上で、
国民の意識・感覚から乖離することのないようにするため
の取組を議論してはいかがであろうか。
2 法務行政の透明化(未来志向)
1 意思決定プロセスの在り方
◯ 行政機関の意思は、
決裁権者による決裁行為により決定する。
公務員の任命及び懲
戒処分については、
任命権者が決裁権者であり、
それ以外に意思決定の権限を有する
者は存在しない。なお、監督上の措置については、対象となる職員の指揮監督権を有
する者が決裁権者である。
◯ 決裁権者には、恣意的ではなく、案件に応じた適切な判断が求められる。公訴・捜
査権を有する検察官の人事については、これら権限行使に高度の専門性を要するこ
と、
厳正公平・不偏不党の確保が取り分け重要であることから、
任命権者
(決裁権者)
には慎重な考慮が求められるものと考える。
認証官について個々の大臣ではなく
「内
閣」が任命権者とされ、閣議による意思決定を要するのも、その職責の重要性から慎
重な判断が求められていることの証左であろう。
◯ 決裁に至る前の検討過程は案件により千差万別で、
「意思決定プロセスの在り方」
というのは、決裁権者と当該案件を担当する部下職員との間の意思疎通の問題のよ
うにも思われる。特に人事については、第 1 回会議において言及したように、多様な
観点から機微にわたる検討がなされるものであって、部外者による議論には到底な
じまないものと考える。
2 公文書の作成・管理、決裁のルールの在り方
3 対外的な説明の在り方
◯ 公文書の作成・管理は、
公文書等の管理に関する法律及び同法に基づく各行政機関
の行政文書管理規則で定められており、
決裁については、
各行政機関で文書決裁規程
が定められているが、
これらは各行政機関でほぼ共通の内容となっており、
法務省特
有のルールが存在するものではないと考える(なお、訴訟に関する書類は別論であ
る。)。
◯ 一般論として、公文書の作成・管理又は決裁に問題があったとされる場合は、行政
文書管理規則及び文書決裁規程というルールに従った運用がなされなかった場合と
いうことになると思われる。
例えば電子決裁の徹底など、
ルール通りの運用を担保す
るための取組や、運用の在り方の更なる改善について考える必要があるであろうし、
より丁寧な説明の仕方について、未来志向で議論することも有益と思われる。
3 我が国の刑事手続について国際的な理解が得られるようにするための方策
・ 検察の在り方検討会議提言・法制審議会-新時代の刑事司法制度特別部会とその後
の検察改革
◯ 刑事司法制度に関わる事項については専門的な議論が必要であり、刑事司法の関
係機関(裁判所、検察、警察)の現職が参画する法制審議会のような場で議論すべき
であって、
本会議の論点として取り上げることは適当でないと考える。
過去において
も、刑事司法制度について、本会議のように現職公務員不在の「検察の在り方検討会
議」では議論が深まらず、
「法制審議会-新時代の刑事司法制度特別部会」に引き継
ぐ形となったものと承知している。
◯ なお、上記法制審議会の答申に基づき平成 28 年に成立、昨年施行された改正刑訴
法の附則第9条には、
施行から3年後の検討条項が置かれており、
刑事司法制度に係
る更なる見直しについては、
同条の規定に基づく検討の場において、
改正法の施行状
況も踏まえて議論されるものと考える。