1本会議において検討すべき具体的事項
2020年8月27日 河 合 健 司
1 検察官の倫理
今回の問題は,検察官倫理に関し,
「検察の理念」の実践をはじめとするこれまで行わ
れてきた取組に抜本的な見直しを迫るものとは思われないが,国民に検察官の倫理意識
について疑念を抱かせたことは否定できない。今回の問題に関連して,次の事項につい
て検討してはどうか。
〇 検察官倫理の更なる定着を図るために採るべき方策
検察官倫理に関し現在行われている教育・研修その他の方策について,問題点を洗
い出し,民間企業や団体等における実践例を参考にしながら,私生活における倫理の
問題を含め,検察官倫理を更に周知,徹底させるための具体的方策を検討する。
(注記) 私生活上の行動に関する規律を設けることについて
我が国の法曹三者は,
法律の専門職として職務外においても品位を保持する義務
があると解されている(検察官について国家公務員法96条,99条,82条1
項3号)が,その実践は,基本的に個々人の自覚と自律に委ねられている。具体
的な規律を設けることは,私生活を必要以上に自制させ,検察官としての健全な
成長を妨げるおそれがあり,その必要性について慎重に検討すべきである。
〇 検察官とマスコミとの関係について
検察官とマスコミとの関係について一定の規範が必要であるなどのご意見があるが,
私が裁判所において司法行政に携わった経験からしても,マスコミと検察との関係は
相当デリケートなものがあるとうかがわれ,議論自体によりマスコミの取材・報道の
自由への介入との批判を招きかねない危険性もあることからすると,検察官とマスコ
ミとの関係について,法務省の内部に設置された本会議の議題とすることは避けるの
が相当と考える。
2 法務行政の透明化
〇 文書の作成・保管
法務行政における文書の作成・保管について,現在の運用を確認するともに,改
善すべき点の指摘,
国民に対する情報提供の在り方について議論するのが有益である。
〇 法務省と検察との人事面での関係の在り方
組織改革を含め法務・検察の人事行政を抜本的に改めるべきであるというご提案が
なされているが,法務・検察組織の根幹に関わる問題であり,全国各地の現場への影 2響も大きいことから,相当に時間をかけて慎重に検討すべき事柄であって,本会議で
議論し提言を出すことは困難であると思われる。
なお,検察官には多くの有為な人材がいると思われる。法務・検察の組織全体の健
全化,活性化のためには,硬直化した人事(いわゆる出世ルート)は決して好ましい
ものではなく,もしそのような慣行が残っているとすれば,可能な範囲で解消に向け
た努力を惜しむべきではない。
3 刑事手続について国際的な理解を得られるようにするための方策
〇 司法制度改革以降我が国の刑事手続が大きく変わりつつあることについて,国際的
な理解がなかなか得られないことは,裁判官として実務に携わった者として残念であ
る。これまで行われてきた理解を得るための取組を検証するとともに,全く新たな発
想から国際広報の在り方などについて是非検討していただきたい。
〇 刑事手続の見直しなど刑事司法制度の内容に関する事柄について,
本会議において,
提言に向けて議論するとなると,法曹三者その他法律専門家の意見を詳細に聴取する
など,相当な時間と労力をかける必要がある。私も現在の刑事手続になお問題がある
と感じているが,やはり,この問題は法制審議会などの場に委ねるのが相当であると
考える。

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /