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別紙9
平成29年刑法改正後の規定の施行状況についての調査結果等
第1 平成29年刑法改正後の規定の施行状況についての調査結果
1 調査対象
平成29年刑法改正後の規定を適用した事件の状況等を把握するため,以下の事
件について各地方検察庁に対し報告を求め,そのうち,平成29年7月13日から
令和元年12月31日までに報告があった事件について調査を実施した。
○しろまる 刑法177条(強制性交等罪 ,178条2項(準強制性交等罪)又は181条)( 。) ,2項 強制性交等致死傷罪及び準強制性交等致死傷罪に限る を適用した事件で
公訴事実において,肛門性交のみ,口腔性交のみ,あるいは肛門性交及び口腔性
(注)
交のみを実行行為とする事件
○しろまる 刑法177条(強制性交等罪 ,178条2項(準強制性交等罪)又は181条)( 。) ,2項 強制性交等致死傷罪及び準強制性交等致死傷罪に限る を適用した事件で
被害者が男性である事件
○しろまる 刑法179条(監護者わいせつ罪,監護者性交等罪)又は181条(監護者わ
いせつ致死傷罪及び監護者性交等致死傷罪に限る )を適用した事件。(注)受理時又は処理時のいずれかのみにおいて適用した事件を含み,移送処分又は中止処分
としたものを除く。また,各罪の未遂罪を含む。
2 調査結果
(1) 肛門性交のみ,口腔性交のみ,あるいは肛門性交及び口腔性交を実行行為とする
事件
平成29年改正前の強姦罪の対象となる行為は,女性に対する性交のみとされ
ていたところ,改正により,強制性交等罪及び準強制性交等罪の対象行為として
肛門性交及び口腔性交が加わったことから,これらの行為を対象とする強制性交
( 。
) 。
等罪及び準強制性交等罪 未遂罪及び致死傷罪を含む の適用状況等を調査した
○しろまる 公訴事実において,肛門性交のみ,口腔性交のみ,肛門性交及び口腔性交の
みを実行行為として起訴され,一審判決が言い渡された事件の起訴人員及びそ
の件数は,1-1表のとおりである。
○しろまる これらのうち,実行行為が肛門性交のみ,口腔性交のみ,あるいは肛門性交, ,及び口腔性交のみである事件のそれぞれについて 罪名・態様別の裁判結果は
1-2表のとおりである。
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○しろまる また,これらについて,有罪判決の罪名別量刑分布を示したものが1-3表
である。なお,参考として,最高裁判所から提供を受けた,実行行為が性交で
あるものを含む強制性交等罪及び準強制性交等罪の量刑分布を付記する。
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男性を被害者とする事件(2)強制性交等罪及び準強制性交等罪においては,男性を被害者とする性交,肛門
性交及び口腔性交も対象行為とされたことから,これらの行為を対象とする強制
性交等罪及び準強制性交等罪(未遂罪及び致死傷罪を含む )の適用状況等を調査。した。
○しろまる 公訴事実において,男性を被害者として起訴し,一審判決が言い渡された事
件の起訴人員及びその件数は,2-1表のとおりである。
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○しろまる これらついて,罪名・態様別の裁判結果は,2-2表のとおりである。
(3) 監護者わいせつ罪,監護者性交等罪
平成29年改正により,18歳未満の者に対し,その者を現に監護する者であ
ることによる影響力に乗じてわいせつな行為又は性交等をした者をそれぞれ対象
とする監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪が新設されたことから,これらの罪
(未遂罪及び致死傷罪を含む )の適用状況等を調査した。。○しろまる 起訴人員及びその件数については,3-1表のとおりである。
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○しろまる 罪名別の起訴人員及び不起訴人員等の処理状況については,3-2表のとお
りである。
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○しろまる 罪名・処理区分別の被害者の年齢については,3-3表のとおりである。
, 。
○しろまる 被害者から見た被疑者・被告人の立場については 3-4表のとおりである
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○しろまる 起訴された事案について,有罪判決が確定したものについての量刑分布は,
3-5表のとおりである。
○しろまる 調査過程における各地方検察庁からの報告を通じ,公判で被告人が「現に監
護する者」に当たるか否かを争った事案の判決に接した。
当該判決においては,刑法179条の「現に監護する者」に当たるといえる
ためには 「現にその者の生活全般にわたって,衣食住などの経済的な観点や生,活上の指導・監督などの精神的な観点から,依存・被依存ないし保護・非保護
の関係が認められ,かつ,その関係に継続性が認められることが必要であると
解される」と指摘されていた。
その上で,同判決は 「被告人はAらと同居して生計を共にしており,被告人,方の家計は主として被告人の収入によって賄われていたのであるから,被告人
は,家計のやりくりや家事を主に行っていたAの母とともに,衣食住などの経
済的な観点においてAを保護していたものであり,Aとしても一定のアルバイ
ト収入や貯金があったとはいえ経済的に独立しておらず,このような被告人及
びAの母による経済面での保護に依存しながら生活していたと認められる。ま
た,被告人は,Aと養子縁組をしただけでなく,本件当時までAと2年近くも
一緒に生活し,授業参観や進路相談といったAの学校行事に関与したり,Aに
問題と思われる点があればAに注意を加えたりしていたのであり,その家庭内
での生活ぶりを踏まえると,被告人は,Aとの間で,通常の親子関係と同視し」,
「 ,
得る程度の実質的なかかわりを持っていた こうした被告人とAとの関係は
(中略)本件当時はその後も同様の関係が継続される予定であった」として,
被告人が「現に監護する者」に該当すると判示した。
○しろまる 無罪判決が言い渡されたものは4件(監護者わいせつ罪を含む事実が起訴さ
れているものが2件,監護者性交等罪を含む事実が起訴されているものが3件
)であり,いずれも被害者供述の信用性に疑義があるとして,公訴事実記
(注)
載のわいせつ行為,性交等行為は認められないとされた。
(注)監護者わいせつ罪及び監護者性交等罪双方の事実で起訴されているものが1件ある。
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第2 非親告罪化された罪の不起訴理由に関する統計
平成29年改正により,親告罪から非親告罪に改められた強制わいせつ罪,準強
, ( ) ( ) ,
制わいせつ罪 強姦罪 強制性交等罪 及び準強姦罪 準強制性交等罪 について
平成26年から平成30年までの間に不起訴処分とした事件の不起訴理由別の件数
統計は,4-1表及び4-2表のとおりである。