1様式 2
「行政手続コスト」削減のための基本計画
省庁名 法務省
重点分野名 商業登記等
1 手続の概要及び電子化の状況
1 手続の概要
商業・法人登記制度は,商号,会社等に係る信用の維持を図り,かつ,取引の安全と円滑に資する
ことを目的として,商法(明治32年法律第48号)
,会社法(平成17年法律第86号)その他の法
律の規定により,会社・法人等について登記すべき事項を公示する制度である。
商業・法人登記を行う登記所(商業登記所)の登記官は,商業登記法(昭和38年法律第125号)
等の規定に基づき,申請された登記について,会社法等の定める手続を適法に履践したかどうかを添
付書面によって審査した上,登記簿に記録し,又は登記申請を却下する等の処分を行う。
登記簿に記録されている事項については,何人も,手数料を納付して,これを証明した登記事項証
明書の交付を請求することができる(商業登記法第10条,第11条)
。また,登記申請書に押印すべ
き会社代表者は,その印鑑を登記所に提出しているところ,手数料を納付して,その印鑑の証明書の
交付を請求することができる(同法第20条,第12条)。会社はその本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する(会社法第49条等)こ
とから,設立の登記は,法人格の取得という重大な法的効果を伴うものである。また,会社は,登記
した事項に変更が生じたときは,2週間以内に,その本店の所在地において,変更の登記をしなけれ
ばならない(同法第915条)
。変更の登記のうち代表的なものは,株式会社の役員の退任・就任に伴
う役員変更の登記である。
2 電子化の状況
商業登記のオンライン申請は平成16年6月から,その登記事項証明書及び印鑑証明書のオンライ
ンによる交付請求は平成17年3月から,それぞれ運用が開始されている。
【記載要領】
○しろまる 「1 手続の概要及び電子化の状況」については、
「基本計画の対象手続一覧表」に基づき、基本計画
の作成対象となる事項について、手続の概要及びその電子化の状況を記載する。
○しろまる 「2 削減方策(コスト削減の取組内容及びスケジュール)
」については、
「基本計画の対象手続一覧
表」のうち、基本計画の作成対象となる各事項について、コスト削減の取組内容及びスケジュールを記
載する。その際、1規制そのものの見直し、行政手続の簡素化、IT化についての検討、2行政手続簡
素化 3 原則に沿った対応の検討、3行政手続コスト削減に際し取り組むべき事項、について検討した結
果、盛り込める内容を記載する。
また、
「省庁間の連携が必要な取組」、「地方公共団体の理解・協力が必要な取組」については、その旨
を記載し、取組の内容を説明する。
取組期間が 3 年を超える場合には、その必要性について十分な説明を記載する。
○しろまる 「3 コスト計測」の「1.選定理由」については、基本計画の作成対象となる事項のうち、コスト
計測の対象とする各事項について、その選定理由を記載する。
「2.コスト計測の方法及び時期」については、選定した各事項について、作業時間の計算方法及び
計測時期を記載する。なお、計測時期については、その判断の根拠を明確に記載する。2国・地方公共団体に対する申請・届出等手続におけるオンライン利用促進については,平成18年
に決定された「IT新改革戦略」において,平成22年度までに利用率を50%以上とすることが目
標とされたが,さらに,平成20年に,IT戦略本部において「オンライン利用拡大行動計画」が決
定され,
「不動産登記の申請」,「不動産登記に係る登記事項証明書等の交付請求等」,「商業登記(株式
会社)の申請」,「商業・法人登記に係る登記事項証明書等の交付請求等」及び「成年後見登記に係る
登記事項証明書の交付請求」
の5手続を重点手続として,
平成25年度末までに利用率を全体で71%
以上とすることが目標とされた。この計画は,平成23年8月に高度情報通信ネットワーク社会推進
戦略本部において「新たなオンライン利用に関する計画」が決定されたことに伴い廃止されたが,オ
ンライン利用率については引き続き成果目標の1つとされ,また,利用率の向上のみならず,オンラ
イン利用に関するサービスの品質の向上に重点を置いた業務・システムの改善及び行政運営の効率化
を進めるため,法務省においては,平成24年5月,上記重点手続について「業務プロセス改革計画」
を策定した。同計画では,オンライン利用率の平成25年度末までの目標が上記重点手続の全体で7
1%以上とされているところ,平成24年度までにその目標を達成している。
平成26年度以降の新たな政府の計画として,平成26年4月,各府省情報化統括責任者(CIO)
連絡会議において,
「オンライン手続の利便性向上に向けた改善方針」が決定された。この改善方針に
おいては,これまで重点手続として指定されていた登記関係の上記5手続が改善促進手続とされ,引
き続き,利便性の向上とオンライン利用の拡充・定着に重点的に取り組むものとされた。これを受け
て,登記関係の上記5手続のオンライン利用率等に関する「法務省改善取組計画」が平成26年度以
降策定・改定されており,オンライン利用率の計測方法を一部修正して,平成28年度末までの目標
が69%とされた。
登記関係の上記5手続のうち,
「商業登記(株式会社)の申請」単独でのオンライン利用率は,平成
26年度が45.7%,平成27年度が49.2%,平成28年度が52.1%である。
2 削減方策(コスト削減の取組内容及びスケジュール)
1 手続のオンライン化の徹底
「新しい経済政策パッケージ」
(平成29年12月8日閣議決定)において,世界最高水準の起業環
境を目指して,利用者が全手続きをオンライン・ワンストップで処理できるようにするため,i)オ
ンラインによる法人設立登記の24時間以内の処理の実現及び世界最高水準の適正迅速処理を目指し
た業務の徹底した電子化,ii)法人設立における印鑑届出の義務の廃止について,具体策と実現に向
けた工程について,平成29年度末までに成案を得ることとされた。
これを受け,平成30年5月に法人設立手続オンライン・ワンストップ化検討会の「法人設立手続
のオンライン・ワンストップ化に向けて」が取りまとめられた。そこで,その「III.法人設立におけ
る印鑑届出を任意とする制度の実現」及び「IV.オンラインによる法人設立登記の24時間以内の処
理の実現及び世界最高水準の適正迅速処理を目指した業務の徹底的な電子化」に基づき,印鑑届出を
任意とする制度の実現,商業登記電子証明書の使い勝手の改善,補正事件の未然防止(後記4参照),デジタル前提の業務の抜本的な見直しに取り組む。
上記の取組や後記2の行政機関間の情報連携等により手続のオンライン化を大きく進展させる。な
お,オンライン申請率の目標値を以下の表に記載したとおりとする。3【代理人申請】
2017 年 10 月 2020 年3月 将来的な目標
(2022 年3月)
法人設立登記 92.2% 94.0% 96.0%
役員変更登記 81.9% 90.0% 95.0%
【本人申請】
2017 年 10 月 2020 年3月 将来的な目標
(2022 年3月)
法人設立登記 0.0% 3.0% 25.0%
役員変更登記 1.1% 3.0% 20.0%
2 同じ情報は一度だけの原則
平成30年度から予定されている登記情報システムの更改において,行政機関等に対してオンライ
ンにより新たに設立された法人の登記情報を提供可能とするなどの行政機関間の情報連携のため,柔
軟に対応する仕組みを構築する(平成32年度中の運用開始)
。この取組により,事業者が登記事項証
明書を取得し,関係官署に提出する時間の短縮を図る。
3 書式・様式の統一
法務局ホームページに掲載している登記の申請書及び添付書面の記載例を充実させる。また,補正
の多い事例について,これらに注記するなどして注意喚起を行う。
法務局ホームページの改善については,検討を行い,要望の多いものから随時実施する。
4 補正の割合の低減方策
補正が必要となった事件は,当該事件の処理日数が長期化するだけではなく,補正の連絡や対応に
時間を要し,登記申請事件全体の処理が長期化する要因の一つとなっている。そこで,補正を減少さ
せるため,例えば設立登記について「登記すべき事項」の作成支援機能,添付書面情報の事前確認機
能を開発することを予定している。
上記の機能のほか,法務局ホームページの記載例の充実等により,補正率については,2020年
3月までの2年間で20%削減,また,2022年3月までの2年間で更に20%の削減を目指す(具
体的な補正率の目標値については,以下の表に記載したとおりとする。)。
【代理人申請】
2017 年 10 月 2020 年3月 将来的な目標
(2022 年3月)
法人設立登記 14.1% 11.3% 9.0%
役員変更登記 13.2% 10.6% 8.5%
【本人申請】
2017 年 10 月 2020 年3月 将来的な目標
(2022 年3月)
法人設立登記 23.5% 18.8% 15.0%
役員変更登記 31.9% 25.5% 20.4%45 登記の処理期間の短縮
上記2の登記情報システムの更改において,二次元バーコードの活用による受付情報及び記入情報
の入力の自動化や処理状況の可視化を行う等の取組を行う
(平成32年度中の運用開始)。これにより,
全般的に処理期間の短縮を図る。
6 取組期間
取組期間は,5年とする(平成33年度まで)。※(注記) 登記情報システムの更改に伴う行政機関間の情報連携については,登記情報システムにおける情報
提供の仕組みの検討,システムの設計・開発テスト,データ移行作業等が必要であり,また,情報提
供を受ける関係省庁においても,制度改正等の検討が必要となることから,平成32年度中の運用開
始を予定しており(
「登記・法人設立等関係手続の簡素化・迅速化に向けたアクションプラン」
(平成
28年10月31日付け各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定)参照)
,翌平成33年度ま
でコスト計測を行うことが不可欠である。
3 コスト計測
1.選定理由
(1) コスト計測の対象となる主要手続は,
「株式会社の設立の登記」及び「株式会社の役員変更の登
記」とする。
なお,株式会社以外の会社・法人については,オンライン利用率の計測をしておらず,また,株
式会社ほどの登記件数はないので,対象とはしていない。
(2) 株式会社の設立の登記
株式会社はその本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する(会社法第49
条)ことから,
「株式会社の設立の登記」は,法人格の取得という重大な法的効果を伴うものであ
り,事業を開始するに当たって最初に必要となる手続である。投資の促進という面からも特に手
続の迅速化の要請が強いことから,コスト計測の対象とする。
(3) 株式会社の役員変更の登記
株式会社の取締役の任期は,原則2年である(会社法第332条第1項)ことから,役員変更
の登記については,全ての株式会社が,取締役の任期ごとに,必ず行わなければならない。その
ため,役員変更の登記は,株式会社の登記の中でも代表的な主要手続であるといえ,年間の申請
総件数に占める割合も大きい(平成28年度で約50%)ことから,コスト計測の対象とする。
2.コスト計測の方法及び時期
(1) コスト計測の方法
【登記に要する日数】
ア 株式会社の設立の登記
定款を作成した日から起算し,必要な書類を収集・作成し,登記申請を行い,登記の完了後,
登記事項証明書の取得(関係官署への提出)までに要する日数とする。
イ 株式会社の役員変更の登記
役員の任期が満了する定時株主総会及び取締役会の終了日から起算し,必要な書類を収集・
作成し,登記申請を行い,登記の完了後,登記事項証明書の取得までに要する日数とする。
ウ 作業時間の把握方法
複数の登記所における登記申請書のサンプル調査等により,登記に要する日数を推計する。5【事業者の作業時間】
株式会社の設立の登記及び株式会社の役員変更登記について,事業者の作業時間のアンケー
ト調査を実施した。
(2) コスト計測の時期
【登記に要する日数】
平成29年10月に第1回を実施した。計測結果は別添1及び2のとおりである。
今後,オンライン申請率及び補正率の達成状況確認の関係から,以下のとおり,各年度1回
計測を行う。
2018年10月
2020年 3月
2020年10月
2022年 3月
【事業者の作業時間】
平成30年4月に第1回を実施した。計測結果は別添3のとおりである。
今後,この実施結果を踏まえ,各年度の適切な時期に調査を実施することとする。
〔参考資料〕手続の根拠条文
会社法第49条,第911条,第915条
商業登記法第46条,第47条,第54条,第55条
商業登記規則第61条
株式会社の設立の登記 基準日
うち うち うち
補正件数 補正率 オンライン件数 率 補正率 書面申請件数 率 補正率
(件) (件) (%) (件) (%) (%) (件) (%) (%) (日) (日)
全体件数 260 43 16.5% 177 68.1% 13.6% 83 31.9% 22.9% 15.8 4.7
補正無し 217 153 70.5% 64 29.5% 15.7 4.4
補正有り 43 24 55.8% 19 44.2% 16.0 5.7
【内訳】
資格者代理人 192 27 14.1% 177 92.2% 13.6% 15 7.8% 20.0% 15.7 4.7
補正無し 165 153 92.7% 12 7.3% 15.8 4.4
補正有り 27 24 88.9% 3 11.1% 14.6 6.0
本人申請等 68 16 23.5% 0 0.0% 0.0% 68 100.0% 23.5% 16.1 4.6
補正無し 52 0 0.0% 52 100.0% 15.4 4.4
補正有り 16 0 0.0% 16 100.0% 18.4 5.3
【調査対象】
平成29年10月2日(月),東京法務局,大阪法務局,名古屋法務局,広島法務局,横浜地方法務局及び京都地方法務局(いずれも本局)に申請され
た株式会社の設立の登記
○しろまる平均作業時間
定款認証日から登記が完了するまでの日数に,登記事項証明書の取得に要する日(1日)と関係機関へ提出する日(1日)を加えたもの(土日祝日を
含む。)
○しろまるうち登記所の作業期間
平均作業時間のうち,登記所に申請してから登記が完了するまでの期間(土日祝日を除く。)
平成29年10月2日
申請件数
うち
登記所の作業時間平均作業
時間
株式会社の役員変更の登記 基準日
うち うち うち
補正件数 補正率 オンライン件数 率 補正率 書面申請件数 率 補正率
(件) (件) (%) (件) (%) (%) (件) (%) (%) (日) (日)
全体件数 896 153 17.1% 584 65.2% 12.5% 312 34.8% 25.6% 14.8 4.9
補正無し 743 511 68.8% 232 31.2% 14.1 4.5
補正有り 153 73 47.7% 80 52.3% 18.1 6.7
【内訳】
資格者代理人 711 94 13.2% 582 81.9% 12.2% 129 18.1% 17.8% 14.6 4.8
補正無し 617 511 82.8% 106 17.2% 14.1 4.5
補正有り 94 71 75.5% 23 24.5% 18.2 6.6
本人申請等 185 59 31.9% 2 1.1% 100.0% 183 98.9% 31.1% 15.2 5.2
補正無し 126 0 0.0% 126 100.0% 14.0 4.4
補正有り 59 2 3.4% 57 96.6% 17.9 6.8
【調査対象】
○しろまるうち登記所の作業期間
平均作業時間のうち,登記所に申請してから登記が完了するまでの期間(土日祝日を除く。)
○しろまる平均作業時間
登記義務発生日から登記が完了するまでの日数に,登記事項証明書の取得に要する日(1日)と関係機関へ提出する日(1日)を加えたもの(土日祝日
を含む。)
ただし,登記義務発生日から2週間以上経過し,登記懈怠となっている申請(平成29年9月15日以前の登記義務発生)については,一律,平成29年9月16
日を登記義務発生日として計上した。
申請件数
平成29年10月2日 うち
登記所の作業時間平均作業
時間
平成29年10月2日(月),東京法務局,大阪法務局,名古屋法務局,広島法務局,横浜地方法務局及び京都地方法務局(いずれも本局)に申請された株
式会社の役員変更の登記
作業内容
添付書面の作成・取得 585分 421分
【添付書面ごとの内訳】 【添付書面ごとの内訳】
定款
(手続に必要な移動時間等を含む。以下同じ。) 211分 株主総会議事録 49分
発起人の同意書 29分 株主リスト 31分
設立代表取締役を選定したことを証する書面 18分 取締役会議事録 50分
就任承諾書 21分 就任承諾書 85分
印鑑証明書 67分 印鑑証明書 84分
本人確認証明書 59分 本人確認証明書 87分
払込みを証する書面 81分 印鑑届書 18分
印鑑届書 21分 委任状 16分
委任状 16分 その他 1分
調査報告書及びその附属書類 20分
資本金の額の計上に関する調査報告書及び
その附属書類 15分
その他 27分
原本還付用の謄本作成
登記申請書の作成
相談・補正
関係官署等への
登記事項証明書の提出
合計
252分 194分
事業者の作業時間
株式会社の設立の登記 株式会社の役員変更の登記
136分 150分
※(注記)平成30年4月16日から23日までの間,約60名の登記申請人に対して実施したアンケート調査の結果(平均値)によるものである。
41分 36分
26分 26分
1,040分 827分