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短答式試験問題集
[刑法・刑事訴訟法]
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[刑法]
〔第1問〕
(配点:2)
次の1から5までの各事例における甲の罪責について判例の立場に従って検討した場合,甲に凶
器準備集合罪が成立しないものはどれか。
(解答欄は,
[No1])1.甲は,乙,丙及び丁が,対立するグループの者らによる襲撃に備えて同人らの身体に対し共
同して害を加える目的で凶器を準備して公園に集合していることを知った。その上で,甲は,
自らも乙らと共同して害を加える目的で凶器を所持して同公園に赴き,乙,丙及び丁に合流し
たが,客観的には同グループの者らによる襲撃が切迫しているという状況はなかった。
2.甲は,乙,丙及び丁と共に,Vの身体に対し共同して害を加える目的でそれぞれ凶器を準備
し公園に集合することとしたが,乙,丙及び丁が凶器を準備して先に同公園に到着しVを待ち
伏せていたところ,同公園にVが現れたことから,乙らにおいてVの身体に対する加害行為を
開始した。その後間もなく,甲は,凶器を所持して同公園に到着し,乙らがVに対する加害行
為に及んでいる間も,自らも乙らと共にVの身体に対し共同して害を加える目的で凶器を所持
してその場に居続けた。
3.甲は,乙,丙及び丁と共に,Vが居住する家屋を共同して損壊する目的でそれぞれハンマー
や斧を準備し,同家屋近くの公園に集合した。
4.甲は,乙,丙及び丁と共に公園で雑談をしていたところ,同公園の隅に長さ約1メートルの
棒状の角材が多数保管されているのを発見した。甲ら4名は,その角材を手に取った後,これ
を凶器としてVの身体に対し共同して害を加える目的を有するに至った。
5.甲は,乙,丙及び丁が,対立するグループの者らによる車両での襲撃を察知して,相手車両
に衝突させるという意図の下に,エンジンを切った状態で無人のダンプカー1台を乙方付近の
路上に駐車させていることを知った。その上で,甲は,自らも乙らと共に同グループの者らの
身体に対し共同して害を加える目的で乙方に赴き,乙,丙及び丁に合流した。
〔第2問〕
(配点:2)
次の【事例】における甲の罪責について,判例の立場に従って検討した場合,正しいものは,後
記1から5までのうちどれか。
(解答欄は,
[No2])【事 例】
甲は,バーの経営者Aから現金を強取しようと考え,12歳の長男乙に,
「Aのバーに行って
お金をとってきて。覆面を付けて,
『金だ。
』とか言ってモデルガンを見せなさい。
」と言い聞か
せた。乙は,当初警察に捕まることを恐れて嫌がっていたが,結局小遣い欲しさから承諾し,甲
から覆面とモデルガンを受け取った。
乙は,Aのバーまで行き,甲から指示された方法に従って,覆面を付けモデルガンを拳銃のよ
うに見せ掛け,Aを脅迫してその反抗を抑圧した。さらに,乙は,自己の判断により,外から人
が来ないようにするためバーの出入口ドアの鍵を掛け,Aをバーのトイレに閉じ込めた。その後,
乙は,レジ内の現金を強取し,外に出ようとしたところ,トイレから脱出して乙に向かってきた
Aから腕をつかまれたため,これを激しく振り払った。その結果,Aは転倒して負傷した。
乙は,逃走して自宅に戻り,強取した現金を全て甲に渡した。甲はその現金の中から乙に小遣
いを与え,その余を生活費等に費消した。
1.強盗致傷罪の教唆犯が成立する。
2.強盗罪の間接正犯が成立する。
3.強盗致傷罪の間接正犯が成立する。
4.強盗罪の共同正犯が成立する。
5.強盗致傷罪の共同正犯が成立する。
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〔第3問〕
(配点:2)
信用及び業務に対する罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,
正しいものはどれか。
(解答欄は,
[No3])1.信用毀損罪における「流布」とは,虚偽の風説を不特定又は多数の人が認識可能な状態に置
くことをいい,行為者自らが直接に不特定又は多数の人に告知する場合のみならず,特定かつ
少数の者を通じて順次不特定又は多数の人に伝播させる場合も含まれる。
2.電子計算機損壊等業務妨害罪は,電子計算機に向けられた加害行為を手段とする業務妨害行
為を処罰対象とするものであるところ,同罪の加害行為は,
「人の業務に使用する電子計算機
若しくはその用に供する電磁的記録を損壊」することと「人の業務に使用する電子計算機に虚
偽の情報若しくは不正な指令を与え」ることに限られる。
3.威力業務妨害罪における「威力を用いて」とは,人の意思を制圧するような勢力を行使する
ことをいい,このような勢力が業務に従事している人に対して直接行使されることを要する。
4.信用毀損罪は,公訴が提起されることにより公判において事件の内容が明らかになり,かえ
って被害者の信用が損なわれる事態を招くおそれがあるため,被害者による告訴がなければ公
訴を提起することができない。
5.強制力を行使しない公務は,業務妨害罪における「業務」には該当するが,公務執行妨害罪
における「職務」には該当しない。
〔第4問〕
(配点:2)
故意に関する次の各【見解】に従って後記1から5までの各【事例】における甲の罪責を検討し
た場合,いずれの【見解】に従うかによって,結論が異なるものはどれか。
(解答欄は,
[No4])【見 解】
A説:行為者が認識していた事実と発生した事実とが,構成要件的評価として一致する限り,発
生した事実についての故意が認められ,殺人罪においては,客体が「およそ人」という点で
一致していれば故意が認められる。
B説:行為者が認識していた事実と発生した事実とが,具体的に一致しない限り,発生した事実
についての故意は否定され,殺人罪においては,客体が「その人」という点で一致していな
ければ故意は認められない。
【事 例】
1.甲は,Vを殺そうと考えてVの首を絞め,Vが動かなくなったので死亡したものと思い,V
を海岸の砂上まで運び放置したところ,Vが砂を吸引したことにより死亡した。
2.甲は,Vが連れている犬を殺そうと考え,その犬を狙って猟銃を発射したが,犬をかばおう
としたVに弾丸が当たり,Vを死亡させた。
3.甲は,前方を歩いていた人をV1と思い,V1を殺そうと考え,その人を狙って拳銃を発射
し弾丸を命中させて死亡させたが,その人はV1ではなく,V2であった。
4.甲は,Vから殺してほしいと頼まれたので,Vを殺そうと考え,Vの首を絞めてVを死亡さ
せたが,嘱託殺人が犯罪にならないと考えていた。
5.甲は,V1を殺そうと考え,V1を狙って拳銃を発射したが,弾丸がそれて,V1ではなく,
そのそばにいたV2に当たり,V2を死亡させた。
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〔第5問〕
(配点:2)
次のアからオまでの各記述における甲の罪責について判例の立場に従って検討した場合,正しい
ものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
(解答欄は,
[No5])ア.甲が,自然湖の一部に設けられた乙のいけすから逃げ出した乙所有の錦鯉30匹を,同湖内
の同いけすから離れた場所で発見し,乙が所有する錦鯉であると認識しながら,これらを自己
のものにしようと考えて捕獲した場合,窃盗罪が成立する。
イ.甲は,パチスロ機に針金を差し込んで誤作動させてメダルを窃取することを乙と共謀し,乙
による窃盗の犯行を周囲から見えにくくするため,乙の隣のパチスロ機で通常の遊戯を行い,
それによりメダルを取得した。この場合,甲自身が遊戯したパチスロ機で取得したメダルにつ
いても窃盗罪が成立する。
ウ.甲が,乙から封かんされた現金20万円入りの封筒を渡されてそれを丙に届けるように依頼
されたが,丙方に向かう途中で封筒内の現金が欲しくなり,封を開いて封筒に入っていた現金
のうち5万円を取り出してこれを自己のものとし,残りの現金が入った封筒を丙に交付した場
合,取り出した5万円について窃盗罪が成立する。
エ.甲は,乙から,乙が海中に落とした腕時計の引き揚げを依頼され,その腕時計が落ちた場所
の大体の位置を指示された。甲が,乙から指示された海中付近を探索した結果,同腕時計を発
見したが,それを乙に知らせることなく,同腕時計を引き揚げて自己のものとした場合,窃盗
罪が成立する。
オ.甲が,満員電車に乗っていた際,隣の席に座っていた見ず知らずの乙が財布を座席に置き忘
れたままX駅で下車したのを目撃し,乙の財布とその中身を自己のものにしようと考え,次の
Y駅に到着した時点で乙の財布を取得した上,同駅で下車し自宅に持ち帰った場合,窃盗罪が
成立する。
1.ア イ 2.ア オ 3.イ エ 4.ウ エ 5.ウ オ
〔第6問〕
(配点:3)
共犯の従属性に関する次の【見解】に従って後記1から5までの各【記述】を検討した場合,正
しいものを2個選びなさい。
(解答欄は,
[No6],[No7]順不同)
【見 解】
共犯が成立するためには,正犯の行為が構成要件に該当し,違法性を具備することを要する。
【記 述】
1.甲が強盗犯人Aの妻乙を唆してAを蔵匿させた場合,甲には犯人蔵匿罪の教唆犯は成立し得
ない。
2.甲が刑法第41条の刑事未成年者に当たる乙を唆して窃盗を行わせた場合,甲には窃盗罪の
教唆犯は成立し得ない。
3.甲が乙にAが一人で居住する家屋に侵入するよう唆したところ,乙がAの承諾を得て平穏に
その家屋に立ち入った場合,甲には住居侵入罪の教唆犯は成立し得ない。
4.甲が乙を唆して私文書を偽造させたが,乙に行使の目的がなかった場合,甲には私文書偽造
罪の教唆犯は成立し得ない。
5.甲が乙に偽証するよう唆したところ,乙が証人として法律により宣誓した上,虚偽の陳述を
したが,証人尋問手続が終了した後,判決言渡し前に自白した場合,甲には偽証罪の教唆犯は
成立し得ない。
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〔第7問〕
(配点:2)
次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものの組合せは,後記1
から5までのうちどれか。
(解答欄は,
[No8])ア.甲は,同僚Aを会社の備品倉庫内に閉じ込めて困らせようと考え,午後7時頃,Aが一人で
作業をしていた同倉庫の全ての出入口扉に外側から鍵を掛けた。Aはそのことに気付かず,も
ともと同倉庫で深夜遅くまで仕事をするつもりであったので,そのまま作業を続けていたとこ
ろ,午後10時頃,たまたま同倉庫にやって来た他の従業員が出入口扉の鍵を開けた。この場
合,甲には監禁罪は成立し得ない。
イ.甲は,別居中の元妻Aが単独で親権を有する生後数日のBを連れ去ろうと考え,A方を訪問
した上,Aがトイレに行っている隙に,ベビーベッドで寝ていたBを連れ去った。この場合,
Bには移動の自由が全くないから,甲には未成年者略取罪は成立し得ない。
ウ.甲は,捜査車両をのぞき見て同車両のナンバーを把握するため,警察署の建物及び敷地への
外部からの立入りを制限するとともに内部をのぞき見ることができない構造として作用し,建
物の利用のために供されている高さ約2.5メートルのコンクリート塀を正当な理由なくよじ
登り,その上部に立って同警察署の敷地内の捜査車両を見て立ち去った。この場合,甲には建
造物侵入罪は成立し得ない。
エ.甲は,Aに恨みを抱き,
「ふざけるな。おまえの妻Bを酷い目に遭わせてやる。
」という電子
メールをA宛てに送り付けた。BがAの内縁の妻であった場合,甲には脅迫罪は成立し得ない。
オ.甲は,深夜,A方に侵入し,泥酔して熟睡中のAにわいせつ行為をして,Aに全く気付かれ
ないままA方を出た後,A方から約100メートル離れた路上で,警ら中の警察官Bから職務
質問を受けたため,逮捕を免れる目的で,Bを拳骨で殴打してBに傷害を負わせた。この場合,
甲には準強制わいせつ致傷罪は成立し得ない。
1.ア イ 2.ア オ 3.イ ウ 4.ウ エ 5.エ オ
〔第8問〕
(配点:3)
不能犯と未遂犯を区別する基準についての次の【見解】に関する後記1から5までの各【記述】
を検討し,正しいものを2個選びなさい。
(解答欄は,
[No9],[No10]順不同)
【見 解】
行為当時に一般人が認識し得た事情及び行為者が特に認識した事情を基礎とし,一般人を基準
に結果発生の危険性があるか否かの判断による。
【記 述】
1.この【見解】によれば,人を殺そうとして,客観的には死の結果を引き起こさない量の空気
を人の血管内に注射した場合,殺人未遂罪の成立が認められる余地がある。
2.この【見解】によれば,結果発生の危険性の有無は,実際に存在した事実のほかにどのよう
な事実が存在すれば結果が発生し得たかを事後的見地から検討し,そのような事実が行為時に
存在し得る可能性の程度を考慮して判断することになる。
3.この【見解】によれば,人を殺そうとして,一般人ならば明らかに砂糖と分かる黒糖を毒薬
と思い込んで紅茶に入れて飲ませた場合,この行為者の認識した事情を基礎として,一般人を
基準に,この行為による死の結果発生の危険性の有無を判断することになる。
4.この【見解】によれば,行為者が特に認識した事情も基礎とされるので,結果を引き起こす
特別な事情を認識している行為者による行為には結果発生の危険性が認められ,その事情を認
識していない行為者による行為には結果発生の危険性が認められない場合がある。
5.この【見解】によれば,結果が発生しなかった原因が科学的に説明できる場合には,常に結
果発生の危険性は否定されることになる。
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〔第9問〕
(配点:2)
学生A,B及びCは,次の【事例】における甲の罪責について,後記【会話】のとおり議論して
いる。
【会話】中の1から4までの( )内から適切なものを選んだ場合,正しいものの組合せは,
後記1から5までのうちどれか。
(解答欄は,
[No11])【事 例】
甲は,過失による自動車追突事故を偽装して保険会社から保険金を詐取することを計画し,乙
に同計画を打ち明け,乙の真意に基づく同意を得た上で,自己の運転する自動車を乙が運転する
自動車に追突させた。その結果,乙は軽微な傷害を負った。
【会 話】
学生A.被害者が自己の身体に対する傷害を同意した場合に傷害罪が成立するか否かにつき,私
は,判例と1(a.同様の・b.異なる)立場に立っており,単に同意が存在するという
事実だけではなく,その同意を得た動機,目的,身体傷害の手段,方法,損傷の部位,程
度など諸般の事情を照らし合わせて,傷害罪の成否を決すべきであると考えます。乙の同
意は,保険金詐取という違法な目的に利用するために得られた違法なものであり,これに
より,乙に対する傷害行為の違法性が阻却されることはないので,甲には傷害罪が成立す
ると考えます。
学生B.A君の見解に対しては,2(c.個人の自己決定権を重視し過ぎている・d.不可罰で
ある詐欺の予備行為を傷害罪で処罰することになる)という批判があります。
学生C.私は,乙の有効な同意がある限り,刑法によって保護すべき法益の侵害がないので,乙
に対する傷害行為については,傷害罪の構成要件該当性を欠き,甲には傷害罪が成立しな
いと考えます。
学生A.C君の見解に対しては,3(e.傷害罪の処罰根拠と合理的な関連性のない事情を考慮
し過ぎている・f.死亡の結果が発生した場合に傷害致死罪が不成立となるのは不当であ
る)と批判することが可能です。
学生C.同意殺人罪に対応する同意傷害罪の規定がない以上,私の見解のように,同意傷害は不
可罰であると解すべきです。
学生B.しかし,4(g.同意殺人罪の法定刑に比して傷害罪の法定刑は重い・h.同意殺人罪
は,殺人罪の法定刑の下限の重さが考慮されて,その減軽類型として特に設けられたもの
である)ので,同意傷害罪の規定がないことは理由にならないと思います。
1.1a 2c 3e 4h
2.1a 2d 3f 4g
3.1a 2d 3f 4h
4.1b 2c 3e 4g
5.1b 2d 3f 4g
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〔第10問〕
(配点:2)
賄賂罪(あっせん収賄罪を除く。
)に関する次のアからオまでの各記述を判例の立場に従って検
討した場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
(解答欄は,
[No12])ア.賄賂罪の「賄賂」は,公務員の職務に関する不正な利益であれば足り,個別の職務行為との
間に具体的な対価関係があることを要しない。
イ.賄賂罪は,賄賂を収受し,又はその要求若しくは約束をした時点でそれらの行為をした者が
公務員でなければ,いかなる場合でも成立しない。
ウ.賄賂罪の「職務」とは,公務員がその地位に伴い公務として取り扱うべき執務をいうが,独
立の決裁権限がなく,単に上司の補助をする立場の公務員が取り扱う事務はこれに該当しない。
エ.賄賂罪の「職務」は,公務員の一般的職務権限に属するものであれば足り,公務員が現に具
体的に担当している事務であることを要しない。
オ.賄賂罪の「職務」は,賄賂を収受し,又はその要求若しくは約束をした時点で公務員の一般
的職務権限に属している必要があり,公務員が一般的職務権限を異にする他の職務に転じた後
に前の職務に関して賄賂を収受した場合には,賄賂罪は成立しない。
1.ア ウ 2.ア エ 3.イ エ 4.イ オ 5.ウ オ
〔第11問〕
(配点:2)
責任能力に関する次の1から5までの各記述のうち,判例の立場に従って検討した場合,正しい
ものはどれか。
(解答欄は,
[No13])1.裁判所は,責任能力の有無・程度について,専門家たる精神医学者の意見を十分に尊重して
判定すべきであるから,精神鑑定の意見の一部だけを採用することは許されない。
2.行為者が犯行時に心神耗弱状態にあった場合でも,その刑を減軽しないことができる。
3.犯行時に事物の是非善悪を弁識する能力が著しく減退していても,行動を制御する能力が十
分に保たれていれば,完全責任能力が認められることがある。
4.精神の障害がなければ,心神喪失又は心神耗弱と認められる余地はない。
5.14歳の者は,事物の是非善悪を弁識し,その弁識に従って行動する能力が十分に認められ
る場合であっても,処罰されない。
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〔第12問〕
(配点:2)
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
(解答欄は,[No14])1.甲は,Aから現金を借り入れるに当たり,借入金をAに自ら返済する意思も能力もないのに,
乙に対し,
「自分がAに返済するので,保証人として名前を貸してほしい。
」とうそを言い,そ
の旨乙を誤信させ,乙に,Aを貸主,甲を借主とする消費貸借契約書の保証人欄に署名押印さ
せた。乙は錯誤に基づいて署名押印しているから,甲には有印私文書偽造罪の間接正犯が成立
する。
2.甲は,取引先乙に見せて自己に信用があることを誇示するだけの目的で,偽造された約束手
形を真正なものとして乙に提示した。偽造有価証券行使罪の「行使」といえるためには,偽造
有価証券を真正なものとして流通に置く必要があるから,甲には同罪は成立しない。
3.甲は,偽名を用いて会社に就職しようと考え,同会社に提出する目的で,履歴書用紙に,架
空人Aの氏名を記載し,その氏名の横にAと刻した印鑑を押印するとともに,自己の顔写真を
貼り付けて履歴書を作成した。同履歴書の作成名義人と作成者との人格の同一性にそごを生じ
させるものとは認められないから,甲には有印私文書偽造罪は成立しない。
4.甲は,信販会社の財産上の事務処理を誤らせる目的で,権限がないのに,同会社の会員名義
のクレジットカードの電磁的記録を白地のカード板の磁気部分に印磁して,クレジットカード
を構成する電磁的記録を作成したが,その外観は一般人が真正な支払用カードと誤認する程度
のものではなかった。支払用カード電磁的記録不正作出罪が成立するためには,一般人が真正
な支払用カードと誤認する程度の外観を備える必要はないから,甲には同罪が成立する。
5.県立高校を中途退学した甲は,父親乙に見せて安心させるだけの目的で,偽造された同高校
校長A名義の甲の卒業証書を真正なものとして乙に提示した。甲は,同卒業証書を乙に見せた
だけであり,公文書に対する公共の信用を害するおそれがないから,甲には偽造有印公文書行
使罪は成立しない。
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〔第13問〕
(配点:4)
次の【事例】に関する後記アからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討し,正しい場合
には1を,誤っている場合には2を選びなさい。 (解答欄は,アからオの順に[No15]から[No19])【事 例】
甲は,別居している実弟Aとの間で,自己が所有するX市内の土地(以下「本件土地」とい
う。
)を代金3000万円で売却する売買契約を締結し,Aから代金全額の支払を受けたものの,
本件土地の所有権移転登記は未了のままであった。
そこで,甲は,自己が経営する会社の資金繰りのため,自らが保管していた本件土地の登記済
証を利用し,事情を知らないBに対して,本件土地に抵当権を設定するので,それを担保に10
00万円を融資してほしい旨申し入れたところ,Bは,これを了承した。数日後,甲は,Bから
1000万円の融資を受けた上,Aに無断で本件土地の抵当権設定登記を完了した。
X市の土木部長である乙は,本件土地を乙個人として購入したいと考え,甲に対して,その旨
を申し入れた。甲は,乙に対して,本件土地は既にAに売却済みであるが,登記名義は自分に残
っているので,代金2000万円で売却してもよい旨を伝えたところ,乙は,これを了承した。
そして,乙は,Y市内に時価700万円の農地(以下「本件農地」という。
)を所有していたこ
とから,本件土地の購入資金を調達するため,それまでにX市発注の公共工事の受注に際して,
土木部長として便宜を図ってきた建築業を営むCに対して,本件農地を時価で買い取ってほしい
旨を依頼した。Cは,本件農地にはそれまで買手が全く見付からず,乙が苦労していることを知
りながら,かねてX市発注の公共工事の受注に際して乙が有利な取り計らいをしてくれたことに
対する謝礼の趣旨に加え,時価であれば損をすることもないと考えて,乙の依頼を了承した。そ
して,Cは,乙と本件農地の売買契約を締結した上で,乙に現金700万円を手渡した。
その後,甲は,Aに無断で乙と本件土地の売買契約を締結し,乙から代金全額の支払を受けた
上,本件土地の所有権が売買により乙に移転した旨の登記を完了した。
【記 述】
ア.甲がAに無断で本件土地に抵当権を設定し,その旨の登記を完了したことについては,甲に
横領罪が成立するが,Aは甲の実弟であるので,告訴がなければ公訴を提起することができな
い。
[No15]
イ.甲が本件土地をAに無断で乙に売却し,所有権移転登記を完了したことについては,それ以
前に甲がAに無断で本件土地に抵当権を設定し,その旨の登記を完了したことによって,犯罪
の成立は妨げられないので,甲に横領罪が成立する。
[No16]
ウ.乙は,本件農地を時価でCに売却したのであるから,乙がCから交付を受けた現金700万
円は通常の経済取引に基づく不動産の購入代金であり,不正な利益としての賄賂には当たらな
いので,乙に収賄罪(収受)は成立しない。
[No17]
エ.仮に,乙が,Cに対して,時価を超える1000万円で本件農地を購入するよう依頼したが,
Cはこの依頼を拒否した場合,収賄罪と贈賄罪は対向犯として必要的共犯の関係にあるので,
乙に収賄罪(要求)は成立しない。
[No18]
オ.乙は,甲から本件土地が既にAに売却済みであることを知らされながら,Aに無断で本件土
地を購入し,所有権移転登記を完了したのであるから,乙に横領罪の共同正犯が成立する。
[No19]
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[刑事訴訟法]
〔第14問〕
(配点:2)
捜査の端緒に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものは幾つあるか。後記1から6
までのうちから選びなさい。ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
(解答欄は,
[No20])ア.検視を行うに当たっては,死因の確認のために,令状なくして,対象となる死体から注射器
を用いて血液を採取したり,腹部を切開したりすることができる。
イ.被害者の法定代理人たる親権者が2人いるときは,その各自が被害者の法定代理人として,
告訴をすることができる。
ウ.司法警察員は,告発を受けたときは,速やかにこれに関する書類及び証拠物を検察官に送付
しなければならない。
エ.検察官又は司法警察員は,口頭による自首を受けたときは調書を作らなければならない。
オ.警察官は,異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯したと疑う
に足りる相当な理由のある者を停止させて質問することはできるが,質問するため,付近の警
察署に同行することを求めることはできない。
1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 5.4個 6.5個
〔第15問〕
(配点:2)
緊急逮捕に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものは幾つあるか。後記1から6ま
でのうちから選びなさい。
(解答欄は,
[No21])ア.司法巡査が緊急逮捕することは許されない。
イ.司法警察員は,留置の必要がないと思料するときでも,緊急逮捕した被疑者を釈放すること
は許されず,検察官に送致する手続をしなければならない。
ウ.緊急逮捕における逮捕の理由の告知は,被疑者に逮捕状を示す際にすれば足りる。
エ.緊急逮捕状の請求は,警察官たる司法警察員については,国家公安委員会又は都道府県公安
委員会が指定する警部以上の者に限り,これを行うことができる。
オ.緊急逮捕した被疑者を検察官に送致する手続は,逮捕状の発付を受けた時から48時間以内
にしなければならない。
1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 5.4個 6.5個
〔第16問〕
(配点:2)
被疑者の勾留理由開示に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記
1から5までのうちどれか。
(解答欄は,
[No22])ア.勾留の理由の開示は,被疑者及びその弁護人に限り請求することができる。
イ.勾留の理由の開示は,公開の法廷でしなければならない。
ウ.検察官が出頭しないときは,勾留理由開示の法廷を開くことはできない。
エ.勾留の理由を開示するには,勾留の基礎となっている犯罪事実と,勾留されている者が罪を
犯したことを疑うに足りる相当な理由を告げれば足りる。
オ.勾留理由開示の法廷に出頭した被疑者及び弁護人は,意見を述べることができる。
1.ア イ 2.ア エ 3.イ オ 4.ウ エ 5.ウ オ
- 11 -
〔第17問〕
(配点:2)
逮捕に伴う令状によらない捜索差押えに関する次のアからオまでの各記述のうち,誤っているも
のの組合せは,後記1から5までのうちどれか。ただし,判例がある場合には,それに照らして考
えるものとする。
(解答欄は,
[No23])ア.被疑者を逮捕状により逮捕する場合には,逮捕に伴う令状によらない捜索差押えをすること
はできない。
イ.証拠物について,逮捕に伴う令状によらない捜索差押えを行い得るのは,逮捕の着手後に限
られる。
ウ.警察官は,現行犯人を逮捕する場合において必要があるときは,人の住居に入り被疑者の捜
索をすることができる。
エ.逮捕現場付近で逮捕に伴う令状によらない捜索差押えをすると被疑者の抵抗による混乱等が
生じるとの事情があるときは,被疑者を捜索の実施に適する最寄りの場所に連行した上,逮捕
に伴う令状によらない捜索差押えをすることができる。
オ.被疑者を緊急逮捕し,逮捕に伴う令状によらない捜索差押えをしたが,逮捕状が発付されな
かった場合には,差押物は直ちにこれを還付しなければならない。
1.ア イ 2.ア エ 3.イ オ 4.ウ オ 5.ウ エ
〔第18問〕
(配点:2)
次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
(解答欄は,
[No24])ア.被疑者については,保釈の請求をすることはできない。
イ.弁護人は,起訴後,裁判所が行う捜索差押えに立ち会うことができる。
ウ.弁護人は,被告人の明示の同意がなければ,証拠調べを請求することができない。
エ.弁護人は,あらかじめ証拠を保全しておかなければその証拠を使用することが困難な事情が
あるときは,第1回の公判期日前に限り,裁判官に証人の尋問を請求することができる。
オ.第一審で有罪判決を受けた被告人の弁護人は,改めて弁護人に選任されなければ控訴をする
ことができない。
1.ア イ 2.ア ウ 3.イ エ 4.ウ オ 5.エ オ
- 12 -
〔第19問〕
(配点:3)
次のアからオまでの各記述のうち,正しいものには1を,誤っているものには2を選びなさい。
ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
(解答欄は,アからオの順に
[No25]から[No29])ア.刑事訴訟法上,捜査機関による取調べにおいて,被疑者が供述を拒むことができる事項に限
定はない。
[No25]
イ.刑事訴訟法上,捜査機関は,被害者,目撃者など被疑者以外の者に対して取調べを行うに際
しても,自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。
[No26]
ウ.呼気検査は,酒気を帯びて車両等を運転することの防止を目的として運転者らから呼気を採
取してアルコール保有の程度を調査するものであり,その供述を得ようとするものではないか
ら,検査を拒んだ者を処罰する道路交通法の規定は,憲法第38条第1項に違反しない。[No27]
エ.身体の拘束を受けている被疑者に取調べのために出頭し,滞留する義務があると解すること
は,直ちに被疑者からその意思に反して供述することを拒否する自由を奪うことを意味するも
のではないから,憲法第38条第1項に違反しない。
[No28]
オ.公判前整理手続において被告人又は弁護人に主張明示義務を課す刑事訴訟法第316条の1
7の規定は,被告人に対し,自己が刑事責任を問われるおそれのある事項について認めるよう
に義務付けるものではなく,また,主張すること自体を強要するものでもないから,憲法第3
8条第1項に違反しない。
[No29]
〔第20問〕
(配点:3)
次のアからオまでの各記述のうち,正しいものには1を,誤っているものには2を選びなさい。
ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
(解答欄は,アからオの順に
[No30]から[No34])ア.恐喝の手段として被害者に郵送された脅迫文書の趣旨が,その内容を相当詳細に摘示しなけ
れば判明し難いような場合には,公訴事実に脅迫文書の全文とほとんど同様の記載をしたとし
ても,刑事訴訟法第256条第6項に違反しない。
[No30]
イ.詐欺罪の公訴事実中に被告人の詐欺の前科を記載することは原則として刑事訴訟法第256
条第6項に違反して許されないが,被告人が同前科による刑の執行猶予中である場合には,そ
の前科を公訴事実中に記載する必要がある。
[No31]
ウ.起訴状には,裁判官に事件につき予断を生じさせるおそれのある書類その他の物を添付する
ことが禁止されているので,検察官が勾留されている被疑者について公訴を提起する際に,起
訴状の提出と同時に,被告人の逮捕状や勾留状をその裁判所の裁判官に差し出すことは許され
ない。
[No32]
エ.公訴事実中に裁判官に予断を生じさせるおそれのある事項を記載したときは,これによって
既に生じた違法性は,その性質上もはや治癒することができず,裁判所は,判決で公訴を棄却
しなければならない。
[No33]
オ.即決裁判手続においては,刑事訴訟法第256条第6項の適用はない。
[No34]
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〔第21問〕
(配点:3)
次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。た
だし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
(解答欄は,
[No35])ア.共謀共同正犯において,
「共謀」は,罪となるべき事実にほかならないから,訴因において
その存在を明示することを要し,これを認定するためには厳格な証明によらなければならない。
イ.殺人罪の共同正犯において,実行行為者が誰であるかは,罪となるべき事実の特定に不可欠
とはいえないものの,一般的に,被告人の防御にとって重要な事項であるから,検察官は,
訴因に実行行為者を明示しなければならない。
ウ.検察官において,共謀共同正犯の存在に言及することなく,被告人が1人で原動機付自転車
を窃取したという窃盗の訴因で公訴を提起した場合に,裁判所が,証拠上,他に実行行為を行
っていない共謀共同正犯者が存在するとの心証を得たときは,被告人1人の行為により犯罪構
成要件の全てが満たされたと認めるときであっても,検察官に対し,訴因の変更を積極的に促
し,又はこれを命じなければならない。
エ.被告人が共謀共同正犯として起訴された事件において,検察官が主張せず,被告人側も防御
活動を行っていない日時における謀議について,裁判所が,争点としてこれを顕在化させる措
置を採ることなく,その日時における謀議への被告人の関与を認定したとしても,取り調べた
証拠から認定したものである限り,被告人に不意打ちを与え,その防御権を不当に侵害するも
のとして違法となることはない。
オ.被告人及びAを共同正犯とする殺人被告事件において,実行行為者が誰であるかが争点とな
り,審理を尽くしても実行行為者を特定するに至らなかった場合には,裁判所は,実行行為者
につき,
「被告人若しくはA又はその両名」と認定し,その旨を罪となるべき事実として判示
することが,許されることがある。
1.ア イ 2.イ ウ 3.ウ エ 4.エ オ 5.ア オ
〔第22問〕
(配点:2)
被告人の勾留に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものは幾つあるか。後記1から
6までのうちから選びなさい。
(解答欄は,
[No36])ア.裁判所は,検察官の請求がなければ,被告人を勾留することができない。
イ.勾留されている被疑者につき公訴の提起があった場合,その被告人の勾留の期間は,公訴の
提起があった日から1か月である。
ウ.裁判所は,逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは,検察官の請
求により又は職権で,勾留されている被告人と弁護人との接見を禁じることができる。
エ.勾留されている被告人につき,罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは,保
釈は一切許されない。
オ.刑の全部の執行猶予の裁判の告知があったときは,勾留状はその効力を失う。
1.0個 2.1個 3.2個 4.3個 5.4個 6.5個
- 14 -
〔第23問〕
(配点:2)
裁判員裁判に関する次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5ま
でのうちどれか。
(解答欄は,
[No37])ア.裁判員の参加する合議体の構成は,原則として,裁判官3人,裁判員6人である。
イ.裁判員の選任手続は,公開の法廷で行われる。
ウ.検察官が,裁判員候補者につき不選任の請求をする場合,必ず理由を示さなければならない。
エ.補充裁判員は,裁判員の員数が不足した場合に,不足した裁判員に代わって裁判員に選任さ
れるが,選任されるまでは,訴訟に関する書類及び証拠物を閲覧することはできない。
オ.法令の解釈に係る判断については,裁判官のみの合議によってなされる。
1.ア ウ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.エ オ
〔第24問〕
(配点:2)
次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
(解答欄は,
[No38])ア.主尋問において,誘導尋問をすることができる場合がある。
イ.証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるときは,裁判長
の許可を受けずに,書面を証人に示して尋問することができる。
ウ.証人は,自己の祖父が刑事訴追を受け,又は有罪判決を受けるおそれのある証言を拒むこと
ができる。
エ.裁判官は,検察官の請求により第1回公判期日前に証人尋問を実施する場合は,被告人,被
疑者又は弁護人をその尋問に立ち会わせなければならない。
オ.裁判所は,証人が被告人の面前においては圧迫を受け充分な供述をすることができないと認
めるときは,弁護人が出頭している場合に限り,検察官及び弁護人の意見を聴き,その証人の
供述中被告人を退廷させることができる。
1.ア エ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.ウ オ
- 15 -
〔第25問〕
(配点:3)
次のアからオまでの各記述のうち,誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ただし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
(解答欄は,
[No39])ア.刑事訴訟法第321条第3項所定の書面の作成主体は「検察官,検察事務官又は司法警察職
員」とされているところ,火災原因の調査,判定に関して特別の学識経験を有する者は,私人
であっても同項の作成主体に準ずるものと解されるから,同人の作成した燃焼実験報告書につ
いても,同項の書面に準ずるものとして,同項により証拠能力を認めることができる。
イ.捜査官が,被疑者の供述内容を明確にすることを主たる目的にして,被疑者に犯行状況につ
いて再現させた結果を記録した実況見分調書の要証事実が,再現されたとおりの犯罪事実の存
在と解されるときは,このような内容の実況見分調書の証拠能力については,刑事訴訟法第3
26条の同意が得られない場合には,同法第321条第3項所定の要件を満たす必要があるこ
とはもとより,被告人である再現者の供述の録取部分については同法第322条第1項所定の
要件を,写真部分については署名押印を除く同項所定の要件を,それぞれ満たす必要がある。
ウ.刑事訴訟法第323条第2号の「業務の通常の過程において作成された書面」に該当するか
否かは,その書面自体だけから判断されなければならず,その作成者の証言等関係証拠を考慮
に入れて判断することは許されない。
エ.犯行の状況を撮影したいわゆる現場写真は,非供述証拠に属し,当該写真自体又はその他の
証拠により事件との関連性を認め得る限り証拠能力を具備するものであって,これを証拠とし
て採用するためには,必ずしも撮影者らに現場写真の作成過程ないし事件との関連性を証言さ
せることを要しない。
オ.刑事訴訟法第328条により許容される証拠は,信用性を争う供述をした者のそれと矛盾す
る内容の供述が,同人の供述書,供述を録取した書面(同法が定める要件を満たすものに限
る。),同人の供述を聞いたとする者の公判期日の供述又はこれらと同視し得る証拠の中に現れ
ている部分に限られる。
1.ア ウ 2.ア オ 3.イ ウ 4.イ エ 5.エ オ
〔第26問〕
(配点:2)
次のアからオまでの各記述のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。た
だし,判例がある場合には,それに照らして考えるものとする。
(解答欄は,
[No40])ア.控訴の提起期間は,刑事訴訟法上,10日と定められている。
イ.判決の主文と理由に食い違いがある場合,それが判決に影響を及ぼすことが明らかであると
きに限り,控訴を申し立てることができる。
ウ.控訴審において,裁判所は,公判期日に被告人が出頭しなければ開廷することができない。
エ.控訴裁判所は,必要と認めるときは,原判決の言渡し後に生じた刑の量定に影響を及ぼすべ
き情状について取り調べることができる。
オ.控訴裁判所は,被告人のみが控訴をした事件について,原判決の刑より重い刑を言い渡すこ
とはできない。
1.ア ウ 2.ア エ 3.イ ウ 4.イ オ 5.エ オ