佐道 私は幹事ということになっております佐道と申します

1第 12 回水害サミットの開催について
The 12th round of Mayor’s summit on the flood disasters
水害サミット実行委員会事務局
The Flood Damage Summit Executive Committee Office
はじめに
水害サミットは、水害被災地の首長が自らの体験を語り合い、より効果的な防災、減災
を考えるとともに、それらに関する積極的な情報発信を通して広範な防災、減災意識を高
めることを目的に平成 17 年から毎年開催している。
関東・東北豪雨のような大きな災害が毎年のように頻発するなど、各地において万全の
備えが求められる中、
去る6月7日に毎日新聞社東京本社において
「第 12 回水害サミット」
が開催された。
当日は、国土交通大臣から御臨席いただくとともに、国土交通省、内閣府、消防庁がオ
ブザーバーとして参加され、
「主体的行動型避難への意識変革を探る」
「効果的な被災地支
援のあり方とは何か」をテーマに全国 19 市町村の首長による活発な意見交換が行われた。
1 日 時 平成 28 年6月7日(火)午後3時〜6時 30 分
2 場 所 毎日新聞社東京本社 9階 マイナビルーム
3 主 催 水害サミット実行委員会、毎日新聞社
4 コーディネーター 松田 喬和(毎日新聞社特別顧問)
5 出席者 三輪 茂(日高町長)
、伊藤 康志(大崎市長)
、白岩 孝夫(南陽市長)
、高杉
徹(常総市長)
、橋本 正裕(境町長)
、鈴木 俊美(栃木市長)
、國定 勇人(三
条市長)
、久住 時男(見附市長)
、大平 悦子(魚沼市長)
、牧野 百男(鯖江市長)、奈良 俊幸(越前市長)
、小野 登志子(伊豆の国市長)
、山本 正(宇治市長)、
中貝 宗治
(豊岡市長)、片山 象三
(西脇市長)、更谷 慈禧
(十津川村長)、田岡 実千年(新宮市長)
、塩田 始(いの町長)
、戸梶 眞幸(日高村長)
6 テーマ
(1) 主体的行動型避難への意識変革を探る
〜逃げない傾向を持つ人を逃げる気にさせる方策について〜
(2) 効果的な被災地支援のあり方とは何か
〜広域災害等における支援ニーズのマッチングについて〜 27 内 容
≪発起人代表挨拶≫
國定三条市長 本日は 19 人の市町村長から御出席いただき感謝申し上げる。また、石井
国土交通大臣からも御臨席を賜った。我々、水害を共に味わった市町村長を代表して国土
交通省からの温かい御理解と御協力に心からの敬意と感謝を申し上げる。石井大臣は水循
環政策担当大臣も兼任され、国民共有の貴重な財産である水の恵みを生かしながら水の禍
から国民の命を守る先頭に立たれている。
このことは我々にとって大変心強くありがたい。
我々の思いとは裏腹に度重なる災害が日本を襲い続けている。直近では熊本の地震があ
り、昨年の水害サミット以降では関東・東北豪雨により広範囲で甚大な被害が発生した。
本日はそうした被災経験も披露いただきながら我々自身の防災、減災に役立つ意義深い会
合にしていきたい。
≪国土交通大臣・水循環政策担当大臣挨拶≫
石井大臣 これまで水害サミットでは、着実に議論を積み重ね、ノウハウ集や提言等を取
りまとめられてきたことに敬意を表する。昨年9月の関東・東北豪雨により鬼怒川が破堤
し、約 8,800 戸の浸水被害が生じ、避難の遅れにより多数の孤立者が発生した。このよう
な状況を受け、国土交通省では、昨年 12 月に「水防災意識社会 再構築ビジョン」を策定
し、
「住民目線のソフト対策」や「危機管理型ハード対策」などのハード・ソフト一体とな
った取組を推進している。同ビジョンは、施設能力を超える洪水が発生するという前提に
立って、住民の皆様に主体的に避難していただくよう意識変革を促すものであり、本日の
一つ目のテーマの「主体的行動型避難への意識変革を探る」について市町村長の皆様が議
論されることは大変意義深いものである。国土交通省においても、想定最大規模の降雨に
よる洪水浸水想定区域を公表する取組を進めており、住民の皆様にリスクを正しく理解し
ていただき、主体的な取組を促す効果を期待している。
また、これまで累次の災害に対し、国土交通省ではリエゾンやTEC-FORCEの派
遣などにより被災地支援に取り組んできたところであるが、本日の二つ目のテーマの「効
果的な被災地支援の在り方」について、住民の皆様に直接対応される市町村長の皆様が議
論されることも大変意義深いものである。
災害に強い社会を築くためには、経験を積み重ね、そこから得られた教訓を広く社会で
共有することを続けていかなければならない。これまで大きな水害を経験され、防災意識 3の高い市町村長の皆様に全国をリードする議論をしていただくとともに、その内容を全国
に発信していただき、全国の防災意識の向上につなげていただきたい。
《コーディネーター挨拶》
松田特別顧問 最近は複合災害が始まっている。地震に水害が伴った熊本の例が典型的で
あるが、これに対応し、防災、減災を進めていくことがこれからの大きな課題である。水
害サミットがその一助となれば良い。
人間は、リアルな現実にならない限り対応策を考えない。早くリアルに考え、行動する
ことが減災につながる。是非ここで学んだこと、感じたこと、議論し合ったことを地域に
還元してほしい。
≪初参加市町村長紹介≫
伊藤大崎市長 昨年の関東・東北豪雨の被災地の一つであり、また、30 年前の鳴瀬川水系
吉田川での大規模洪水で合併前の鹿島台町の半分が水没した経験がある。基礎自治体の仕
事、特に首長の仕事は市民の生命、財産を守ることであり災害時対応が第一義だ。それぞ
れの体験や防災、減災、初動対応を学び合いたい。
高杉常総市長 昨年9月の大水害で人口6万 2,000 人の約半数、そして世帯の半数が被害
にあった。
自治体の半分が被災し、
周辺市町村との広域連携の大切さを痛感するとともに、
避難指示の難しさを実感している。
橋本境町長 初めにこの水害サミットの皆様に御礼を申し上げたい。水害の際に國定市長
から(水害サミットで作成した)首長の心得を送っていただいた。あれを全市町村長が見
ていれば非常に違うのではないか。ノウハウ本も熟読したが、気を付けなければならない
ことが書いてあり良い活動ができた。
鈴木栃木市長 我々のまちでは、これまで市内を流れている巴波川が少し氾濫し、床下浸
水にいかない程度の被害はあったが、今回の水害では、死者が1人、全壊の家屋が3棟、
大規模半壊が8棟、半壊が 75 棟、床上浸水が 635 棟、床下浸水が 1,990 棟であり、農業へ
の被害も甚大であった。こうした中で市内にある渡良瀬遊水地が効果を発揮し、改めてこ
の遊水地とともに水害等に備えたまちづくりをしていかなければならないと感じている。
≪第1部 テーマ:主体的行動型避難への意識変革を探る〜逃げない傾向を持つ人を 4逃げる気にさせる方策について〜≫
松田特別顧問 第1部の意見交換に先立ち「水防災意識社会 再構築ビジョン」について
国土交通省から御説明いただく。
≪国土交通省からの情報提供≫
大西治水課長 昨年の関東・東北豪雨での鬼怒川の堤防決壊による水害を受けて、社会資
本整備審議会から答申をいただき、
「水防災意識社会 再構築ビジョン」を策定した。河川
管理者、都道府県、市町村等からなる協議会等を設置し、ハード・ソフト対策を一体的に
推進していくことが特徴である。
ソフト面では、
「住民目線のソフト対策」として、家屋倒壊等氾濫想定区域等のリスク情
報の周知、リアルタイムでのプッシュ型の情報提供等を行っていく。
また、ハード面では、治水対策の基本となる「洪水を安全に流すためのハード対策」に
加え、
「危機管理型ハード対策」として、堤防天端の保護や裏法尻の補強を行い、堤防決壊
までの時間を少しでも遅らせて円滑な避難を支援することとしている。
≪関東・東北豪雨で活かされた過去の教訓≫
松田特別顧問 続いて、被災地を代表して大崎市長からお願いしたい。
伊藤大崎市長 9月 11 日未明から3時間雨量で約 100 ミリ、
総雨量で約 200 ミリという、
これまで経験したことのない豪雨に見舞われ、国直轄の1級河川である鳴瀬川、江合川、
吉田川が、市内各地域の観測所で史上最高の水位を記録した。幸いこの国直轄河川は辛う
じて守られたが、
監視カメラも水位計も設置されていなかった宮城県管理の渋井川、
渋川、
名蓋川の3河川が9か所で破堤し、約 3,000 ヘクタールの浸水、192 人の市民の孤立、約
700 戸の浸水という被害が生じた。
大崎市では、5年前に東日本大震災、その3年ほど前に岩手・宮城内陸地震、さらにそ
の前には宮城県北部連続地震があり、30 年前には吉田川洪水の経験もあった。それらの教
訓が生きた事例を紹介する。
一つ目は、関係機関との密接な連携だ。これまでの経験で大災害への対応は、一自治体
では限界があると知っていたため、日頃から国、県、自衛隊を始め関係機関と緊密な関係
を築いていた。特に国土交通省とは飲みにケーションも含めて親密な人間関係を構築し、
ホットラインでお互いに情報が取れるようにしていた。
その結果、
自衛隊や国土交通省等々 5からその道のプロ、機材を円滑に派遣していただけた。特に国土交通省からは、TEC-
FORCE、
排水ポンプ 12 台を東日本全体から出動してもらい、
ほぼ1日で排水していた
だいた。二つ目は、民の力を活用するということだ。行政の災害対策、情報発信には限り
がある。そこで東日本大震災を契機に全て行政区、町内会単位に自主防災組織を結成し、
資機材、
一次避難所の集会所の整備、
訓練を徹底してきた。
自主防災組織のリーダーの方々
から避難の呼びかけや安否確認、被害情報の収集を行っていただいた。そのほかにも仮設
住宅は宅建業界、二次避難の避難場所は鳴子温泉組合、災害ゴミ、災害瓦礫処理は環境事
業者や建設業界というように 50 を超える団体と災害協定を結び、
今回の水害でも災害ゴミ
を機動的に処理いただいた。
さらに現在全国 15 の自治体と災害時相互応援協定を締結して
おり人や物資の支援で大変に役立った。三つ目は、訓練や経験の伝承だ。大崎市は消防団
が水防団を兼ねているが、30 年前の吉田川洪水の教訓を大崎市全体の教訓として捉え、水
防訓練を行うとともに、装備を整えて士気を高めてきた。水防訓練を行ってきたことが功
を奏し、今回破堤寸前までいった吉田川を各種水防工法で見事に守っていただいた。4点
目は、国道バイパスと堤防を兼ねた二線堤バイパスの建設だ。地域の安全度が高まりこの
二線堤で守られた地域は世帯数や人口が増加している。先人や国土交通省の英断がこの度
の水害からこの地域を守った。
また、吉田川洪水のときに、防災行政無線戸別受信機を旧鹿島台に設置したが、東日本
大震災を受け、現在はデジタル行政防災無線を市内各地域に整備しているほか、県も水位
周知河川の指定の追加や気象観測の整備などに取り組んでいる。
そうした中で、やはり災害を語り継いでいくことが必要である。渋井川周辺は古くから
住んでいる農家と新興住宅とが混住しているが、昔から住んでいる方々は盛り土をして住
宅を建てたり、車や家畜を高いところに避難させたり、鹿島台の経験から垂直避難を行っ
たりした。新しく来られた方々は歴史的な経緯を十分知らないため、戸惑いや混乱があっ
たようだ。
災害から学んだ教訓を風化させることなく語り継いでいく必要性を再認識した。
防災の基本であるが、自助、共助、公助という基本を着実に確認して、それを実践する
ことが最も大切である。
松田特別顧問 先人から受け継いだ教訓を生かすことがいかに大切かということを御報
告いただいた。続いて、久住見附市長から、社会資本整備審議会小委員会での審議経過を
御説明いただく。 6久住見附市長 去年9月に関東・東北豪雨災害、
その前には広島や御嶽山の災害があった。
災害が従来にはないステージになったとして国が設置した「新たなステージにおける防
災・減災の在り方懇談会」にも委員として参加した。そこで象徴的に議論されたことは、
これまで示してこなかった最大の外力で最悪の時期に災害が発生したら具体的にどのよう
な状態になるのかを明確に地域の人たちに伝えるということである。起きる可能性を想定
し、対策を講ずるところとそうではないところでは大きな差が出る。
防災には、現実的に対策可能な最大の努力をすれば、それを超えるものがあってもやむ
を得ないという考え方があったが、
起こり得るものを最大限に想定すると、
やるべきこと、
やれること、それらが今までとは大きく変わってくる。
こうしたことが、水防災に対する意識を変えなければならないという社会資本整備審議
会小委員会での議論につながったのだろう。その中の主たる議論を紹介する。
一つ目は「トップセミナーの開催と助言者の育成」だ。災害の現場で指揮なり判断をし
なければならない人たちは、それらを学ぶ、また実践する機会がない。首長を 20 年もやる
わけがない。専門家になり得ないとすると首長の周りに知識と知恵と訓練を受けた助言者
が必要である。それによって首長が変わっても連続性が担保される。二つ目は「河川管理
者・都道府県・市町村等からなる広域の協議会等の設置」だ。河川は上流の状況がわから
ないと自分のところにどのような影響があるかわからないし、隣の市の避難所の利用など
単独の自治体だけで解決できないことが多くある。こうしたことは具体的に事前に話し合
うことが必要だ。三つ目は「タイムラインの整備と訓練」だ。水害サミットでも議論にな
ったが、タイムラインを事前に準備し、訓練することで課題を確認することができる有効
な手法である。四つ目は「時系列氾濫シミュレーションの公表」だ。上流がこのような状
態になったときに下流の自分の自治体にはいつどのくらいの水が来るかということを国が
シミュレーションし、公表することで何時間以内の避難が必要なのかを判断できる。五つ
目は「家屋倒壊危険区域の公表」だ。御存じのとおり広島では、不動産等の経済的な事情
から土砂災害区域を指定していなかった。しかし、命を守るためには現実を示すことが必
要である。河川においても、家屋の破壊や流出が懸念される地域には明確にそのことを伝
え、いざというときに対応できるようにしてもらう必要がある。六つ目は、
「水防団と消防
団の役割」
だ。
私どもも水防団を消防団が兼ねている。
消防団として活動していたために、
土嚢をなかなか積めなかったという反省もあった。水防団と消防団の役割を明確にし、ど
の時点で具体的に何をするのかを決めておくことも必要だ。
七つ目は、
「決壊までの時間を 7少しでも引き延ばす堤防構造」だ。天端を舗装することで破堤する時間の余裕を作る。で
きるだけもたせる観点から国や県において技術的な工夫を様々に考えていく必要がある。
八つ目は、災害が起きても早く復旧するための道筋を考えておくということだ。被災して
もどうすれば早く復旧できるのかという思想を持つことが現代には必要である。
「水防災意識社会 再構築ビジョン」は、災害は起き得るのだと感じてもらった方がいざ
というときの被害が少なくなるという考えの下でまとめられたものである。
松田特別顧問 今までの話の中で幾つか重要なキーワードが出てきた。
一つは
「広域連携」
だ。個々の首長、自治体ではなく、広域的にあらゆることを考えていこうというものだ。
それから「避難勧告や避難命令を出す基準をどこにおいたらよいのか」という首長の苦悩
は当初から論じられてきた。自信を持って避難勧告等を出せるよう客観的なデータをどう
整備していくのかを論議すべきだ。また過去の伝承や教訓を後世にいかに伝えていくか。
さらにトップの方々が的確に判断できるようなトレーニングや助言者の育成をどうしてい
くのか。主体的行動型避難に向けた意識変革のヒントが皆さんの話の中に出てきた。それ
らを中心に第1部のテーマを整理していきたい。追加意見や言い足りなかったことがあれ
ば挙手をお願いする。
奈良越前市長 意識変革は永遠の課題である。越前市もこれまでにメール配信、洪水ハザ
ードマップの全世帯配布、
町内ごとの避難マニュアルや防災マップの作成、
防災訓練と様々
に取り組んできたが、行政の取組だけではやはり限界があり、住民による呼びかけ、住民
の参加が問われている。
第2部の被災地支援の課題も住民主体で避難所運営などを行わないと解決できないだろ
う。行政としては色々とやってきたが、今後は住民の主体的な参加に意識を割くべきだ。
我々は、熊本地震を受けて5月 24 日に検証会議を開催し、短期の課題、年度内の課題、2
〜3年かかる課題に分類した。越前市には日系ブラジル人を中心に 3,000 人余りの外国人
が住んでいるため、母国語での情報提供を年度内に整備し、できれば1〜2年の間に、避
難所単位、あるいはもう少し大きい単位で外国人のキーパーソンを見つけ、そこから情報
を発信していくことなどを課題としている。
また、避難所ごとに自主的な運営をしてもらうため、17 の小学校区ごとに自治振興会と
いう組織をつくっている。
納涼祭や文化祭、
敬老会、
介護予防、
子供の登下校時の見守り、
狭隘道路の除雪、防犯灯の管理、地区ごとの防災訓練といったものを全てやっていただい
ている。災害が発生したときには公民館単位で地区拠点基地というものを設け、地区の会 8長を中心に運営していただく仕組みを作っている。ここを年度内に強化し、市からの権限
移譲を含めて熊本で発生したようなミスマッチに対応できる仕組みを確立したい。
私どもの強い要望として吉野瀬川ダムの建設促進を図っていただきたい。また福井県の
中心にある越前市と鯖江市、
隣接する 15 万のエリアには気象観測所がない。
すぐ南には原
子力発電所があり、万が一のときには我々も避難をしなければならないが、風速も風向き
も全くわからない。ぜひ気象観測所を整備し、観測体制を強化していただきたい。
松田特別顧問 外国人に対する情報伝達は以前から問題になっており、いくつかの市町村
からもそういう要望があった。グローバル化が進む中、この問題は国全体で考えていかな
いと解決には至らないのではないか。
塩田いの町長 私の町では、避難された方に対して判断の理由を説明している。そうした
ことで空振りになっても一定の理解を示してくれる。土砂災害については、観測計を付け
れば住民も危機意識を持ってもっと逃げてくれる。
今まで累計でこれだけ降っています。これから、20、30 ミリが続く危険性がある。だか
ら明るいうちに避難勧告しました。そうした説明が必要ではないか。
中貝豊岡市長 以前に比べると情報を、どのタイミングで、どういう内容で、どう伝える
かという技はかなり磨かれてきた。媒体も相当多様になってきた。だが、情報がうまく出
ても最終的には受け止める側がどう理解して、どう行動につなげるかが決定的に重要であ
る。やはり覚悟を求めなければいけない。私たちができるのは避難勧告や避難指示で避難
を促すことだけだ。ある集落単位に避難勧告を出してもある人は全く逃げる必要がない所
に住んでいることもあるし、そうでないこともある。その判断は行政の側にはとてもでき
ないので結局あなたがやるほかはない。そのことを絶えず訴え、覚悟を求めることが必要
である。
その覚悟を求める技がまだまだできていない。
逃がしますと言えれば格好良いが、
できないということを潔く認めて、住民の責任を喚起することがとても大切である。
塩田いの町長 いの町に通っている仁淀川の洪水、氾濫、倒壊、浸水時間が公表された。
このエリアの住民にきちっと説明して、あなたが判断しなさいとを言っていかなければな
らないと考えている。
高杉常総市長 人はなかなか逃げないものだということを強く感じている。
「まさかここ
まで水は来ないだろう」という意識が残念ながらかなり強かった。自らの命は自らが守る
という自助、各町内会単位の共助を市民に任せるのではなく、行政が積極的に支援してい
くとか、自らが自らを守るという意識改革を進めていくとか、そうした関わり方も非常に 9大事だ。
松田特別顧問 現実に水が来れば逃げるが、水が来るといっても逃げない。これをどう克
服するのかはずっと課題になっている。明快な解答はないが、その場その場で、その地域
その地域で考えていかなければならない。それは自助であるとともに共助であり、また公
助にもつながってくる。その役割分担を含めた連携を作り上げることがこれからの課題で
あり大都市部が巨大な災害に襲われたときにどうやっていくかということにもつながる。
山本宇治市長 避難勧告、避難指示のとおりに住民が動かないことは宇治市にとっても課
題であるが、
台風 18 号で宇治川の氾濫が予測されたときに、
昔を経験しているリーダーが
いた旧村地域や自主防災などでしっかりしたリーダーがいたところでは避難が始まった。
責任逃れのために避難勧告を出すのではなく、命を守るためにやるとの認識の下、対話ミ
ーティングで市民の意見を聞いてお互いに苦労しながらやるしかないと考えている。
また、再構築ビジョンで減災のための目標を共有し、タイムラインの策定やハード対策
などに取り組んでいただくことは大いに期待している。市では避難勧告等の発令基準の見
直しと地域防災計画の見直しを行っているが、基準には水位情報も関係するため、今後更
に連携を密にしていきたい。また宇治川では、河川整備計画に位置付けられた堤防工事を
行っていただいているが、危機管理型ハード対策の堤防天端の舗装や裏法面の補強も予定
していると聞いて非常にうれしく感じている。事業の進捗を確認する上でも協議会は有効
だ。
我々の地域は観光地であり観光と治水対策は両輪である。着実に工事を進め、観光都市
宇治の魅力アップ、集客アップを期待している。引き続き減災、防災に向け、国土交通省
の皆様には御尽力いただきたい。
小野伊豆の国市長 58 年前の狩野川台風時に私は中学2年生だった。災害で大切なのは、
正確な情報を伝えるということに尽きるが、
昭和 33 年に正確な情報など望めない。
伊豆半
島に上陸したかも皆目わからないという状況であった。
しかし、大きい台風が来たときには必ずおにぎりをつくり、お風呂を沸かすということ
が体の中で染み込んでいた。狩野川台風では 800 人の方が亡くなったが、私が生き残った
のは、そうした台風に対する備えがあったからだ。備えがいかに大切かを常に親から教え
てもらっていた。これを今度は市民に教えていかなければならない。国土交通省沼津河川
国道事務所と共に狩野川台風の経験者の証言の記録や小学校への教材提供など、狩野川台
風の記録をつなぐ取組を行っている。避難勧告の判断は難しいが、空振りに終わったらあ 10りがたい訓練だったと思うより仕方がない。
田岡新宮市長 紀伊半島は、巨大地震が近い将来必ず発生するといわれており、また津波
の第一波が数分で到達するといわれている。そうした中で逃げることを意識してもらうた
め、高齢者世帯への家具の転倒防止器具の取り付けを無料で行っている。防災対策課の職
員が2人1組で取り付けに伺い、1人が取り付けている間にもう1人がその家に応じた逃
げ方のアドバイスやハザードマップの見方を説明し、意識の啓発を図っている。5年前の
水害では 14 人が亡くなったが、そのほとんどが 65 歳以上の高齢者だった。高齢者の方々
からいかに逃げてもらうのかということを一歩一歩やっていかなければならない。
白岩南陽市長 平成 25 年、26 年と2年連続で水害があったが、市民は既にもうそのこと
を忘れかけている。4年も5年も経ってしまったらもうなかったことになる。そうならな
いように多くの市民が参加する防災訓練を準備している。
また、羽越水害の被害は、2年前の被害のおよそ4倍だったが、経験された方もほとん
ど覚えていない、
語ろうとしない。
来年は羽越水害から 50 年でありもう一度どのような被
害があったのかを確認しようと山形河川国道事務所から提案いただいている。できる限り
の資料でもう一回きちんと確認する。その上で体も動かして訓練することが必要だ。
久住見附市長 いざというときにどれだけ避難するのかは大きな課題であり、平成 16 年
の水害の翌年から市民が参加する防災訓練を出水期の前にしてきた。人口4万 1,500 人の
うち、毎年1万人以上が参加し、去年は1万 5,000 人が参加した。一番ありがたかったの
は、1,216 人の中学生のうち 930 人が参加してくれたことだ。こうした誘導で十何年経っ
ても人口の 30%くらいが参加している。そういう仕掛けが、ソーシャルキャピタルともい
うのだろうが大切だ。
片山西脇市長 西脇市は、ちょうど日本のへそに位置している。これまでには気象大学校
講師による防災講演会、職員防災研修を開催してきた。講師は東北気象台の所長もされた
西脇市出身の方で昨年1年間来ていただき、プロの目から見た気象情報の活用方法を講演
いただいた。700 人弱の方から参加いただき、河川がこういう状態のときに避難勧告を出
すということを学んでいただいた。
私は中座するため第2部のテーマにも言及するが、全国には日本のへそというところが
8か所あり、九州のへそである熊本県の山都町が今回の地震で被害を受けた。被災2日後
に山都町の町長から「水がない」と電話がかかってきた。地震の影響で水が出ない。水が
届かない。マスコミは私たちの町を全く報道しない。連絡を受けて岡山県の吉備中央町と 11連携し、水を搬送した。
戸梶日高村長 昭和 50 年、51 年に全村が水没した2年連続の災害を受けた。50 年の時に
は土砂災害もあり 25 人の方が亡くなった。以来 39 年間は大きな被害はなかったが、一昨
年に2週連続で床上浸水、床下浸水が起こった。日高村は勾配がないため 300 年の内水被
害との闘いの歴史があるが、この 300 年の歴史を村民が忘れていた。痛みから解放される
とどうしてもこの地域がどんな地域なのかを意識しなくなる。雨が降ればこうなる。地震
が来ればこうなる。それを思い出さなければならない。昨年から「水との闘い 300 年を振
り返って」と、先人達が苦労した歴史や対策を 12 回シリーズで広報した。
松田特別顧問 体験の伝承が難しいことは、残念ながら 3.11 で再確認された。災害の歴
史をもう一回掘り起こし、それをいかに普及していくのかは、防災、減災の上で一つのキ
ーワードになる。
大平魚沼市長 自治会長が何回も訪問しても避難しなかった人がいる。避難情報を発信す
るとある程度は避難するが、まだ大丈夫だろうと考える人も少なくない。行政が主体とな
って日々の訓練や市民説明会等で災害を意識した話を続ける地道な活動が必要だ。経験者
が少なくなっていく。それは市職員も同じだ。魚沼市は広大で地域のことを知らないと対
応が難しい。若い職員はあまり地域のコミュニティに参加していないのでこれからは地域
を良く知るための研修がもっと必要だ。
三輪日高町長 逃げない人を逃げさせることは古くからのテーマだ。住民に情報を早く
様々な方法で伝えることに徹している。その上で逃げる道と第一次避難所を整備した。そ
こに車で避難するための駐車場、
自衛隊や警察等の活動スペースやヘリポートも整備した。
併せて防災の備蓄倉庫、格納庫、そして動物の避難所やトイレ、水道も整備してきた。行
政側も住民が逃げる場所を確保しなければならない。
更谷十津川村長 新宮市と同様に被災から5年を迎える。紀伊半島大水害で 120 ヘクター
ルの山が崩壊し、1億立米という土砂が発生した。土砂ダムが何か所もでき、熊野川にも
流れて4〜5メートルも川底が上がった。堆積した土砂を取っても捨てる場所がない。横
にやっているが、大雨が降るとまた流れてしまう。その繰り返しで土砂を捨てる場所を作
らない限りいくらでも流れる。我々には逃げるための道路が1本しかないが、1年間に1
か月間は雨量規制と土砂崩壊で通行止めになる。
奈良、和歌山の河川の管理者、電源開発、関西電力が一緒に堆砂やにごりを管理しない
限り上流では砂利を取れ、下流では濁すなと、どちらも少しずつ譲らない限り解決できな 12い。道路が寸断して孤立し、さらに雨が降ればどこへも逃げる場所がない。とりあえず上
に逃げろというほかない。この場所は絶対に水は来ないという先人たちから受け継いだ安
心な地域があるのでそこへ集落の移転も考えている。
牧野鯖江市長 楽観や他力本願を払拭するため、とにかく地域の人材を育成しようと2年
ほど前から取り組んでいる。鯖江市では町内会の自主防災組織が 98%整備されており、研
修を行って 270 人の防災リーダーを誕生させた。さらに日本防災士機構の防災士養成講座
を開催し、2年間で 211 人の防災士を誕生させた。防災リーダーと防災士から防災ネット
ワークを設立してもらい、
また協定都市との市民交流もやるようになった。
今年は 37 企業
45 人の方から企業防災士に登録いただいた。
また、防育活動というものを学校単位で行っている。学校が避難の拠点にもなるので、
子供が住民を案内するとか、いろいろな面で協力する人材の育成に取り組んでいる。
災害の「見える化」
「伝わる化」のため、防災士と防災リーダーにタブレットを配布し、
常時被害状況等を知らせていただいている。簡易雨量計を配布し、雨量を即時市に伝達し
てもらってもいる。
「さばれぽ」というアプリを開発し、全体的な災害情報の「見える化」
「伝わる化」をこれからも進めていきたい。
広域連携では、田んぼダムにようやく上流の自治体が取り組んでくれるようになり、集
中豪雨でもかなり効果が出てきた。
松田特別顧問 各地域、各首長から、その地域での取組をそれぞれレポートしていただい
た。それぞれの地域に合った工夫が非常に良くわかる取組をされている。それだけリスク
を身近に感じ始めているということだろう。それをいか減災に結び付けていくのかがこれ
からの課題である。
≪第2部 テーマ:効果的な被災地支援の在り方とは何か〜広域災害等における支援
ニーズのマッチングについて〜≫
松田特別顧問 それでは2部のテーマの「広域災害等における支援ニーズのマッチングに
ついて」に移る。
≪内閣府からの情報提供≫
名波内閣府政策統括官(防災担当)付参事官 昨年の水害を受け、中央防災会議の「水害
時の避難・応急対策検討ワーキンググループ」でとりまとめている内容を紹介させていた 13だく。
1番目は「水害に強い地域づくり」で、地域住民の方の自主的な取組が大事であると考
えている。2番目は「実効性のある避難計画の策定」で、市町村と河川管理者からなる協
議会を構築する。3番目は、避難勧告を躊躇なく発令していただき、住民の方に避難して
いただく。4番目は「行政の防災力向上」で、首長も含めて職員の研修や訓練でレベルア
ップを図っていく。
5番目が第2部のテーマと特に関連する
「被災市町村の災害対応支援」
である。受援計画の策定、市町村間の応援協定、都道府県の積極的な調整といったことな
どを議論した。6番目は「被災生活の環境整備」で、大勢の方が避難されると避難所の生
活環境の改善が課題となる。7番目は「ボランティアとの連携・協働」である。
松田特別顧問 続いて、
「水害時の避難・応急対策検討ワーキンググループ」の審議経過
などについて豊岡市長からご説明いただく。蛇足かもしれないが、特に私が強調したいの
は、豊岡市長が、豊岡で絶滅したコウノトリを再生するために努力したら、その結果が経
済的にも良い影響を与えたことを紹介したい。そうした視点も忘れずに取り組んでいただ
きたい。
中貝豊岡市長 先ほど内閣府の名波参事官から検討委員会の紹介があったが、そのメンバ
ーに入っていたので、実は第1部に関係するがそのときの私の発言内容と第2部のテーマ
に関する事柄を続けて報告する。
いかに適切に避難してもらうのかであるが、とにかく毎年私自身が防災行政無線で市民
に語りかける。コミュニティFMを活用するということをやってきた。
90 年前に大震災があった5月 23 日には県の予測では死者が 100 人を超えると放送し危
機感を持っていただくようにしている。6月5日は出水期に入ったと放送する。危険が迫
れば深夜であっても、空振りになる可能性があっても大音量で避難情報を発令すると伝え
ている。堤防決壊を防ぐため、人命を優先するため、排水ポンプを停止することがあると
も伝えている。市民から危機感を持っていただくとともに、迷いがなくなる。事前に伝え
ておけば、いざというときの躊躇が減る。
コミュニティFMでは「防災ワンポイント」というものを 75 回やった。少しやり過ぎ、
頭に残らなかったという反省もあるが、
絶えず訴えかけてきた。
現在は月2回で 25 回を予
定しており 10 分間の防災情報を市の職員が放送し、
それを5分に編集して防災行政無線で
再放送している。
その他、地域に出向いての出前講座を平成 23 年では 54 回、延べ 3,591 人に対して地道 14に続けるとともに、国土交通省や県土木事務所と共同の研修会を実施してきた。
それから、豊岡市は、雨量さえわかれば8割の確率の土砂災害を予測できるシステムを
導入しており、
140 ミリ降ったときに崩れる場所が出てくる 25 地区 142 世帯に簡易雨量計
を配ってこれに近づいたら自ら逃げてくださいと伝えている。また、他の地域でも同様の
判断ができるよう簡易雨量計の作成の仕方や使い方、
予測システムの内容を公開している。
今年度は集落単位に区分した防災マップを配布する。全体をやるとなかなか自分のこと
だと意識しない。家屋ごとの危険度を示し、危機意識を持ってもらうことが狙いである。
また、個々の集落の人口が減少し、高齢化も進み、支え合いや備えの力が弱まってきて
いる。そこで、次に近い交わりである小学校区単位、公民館単位で集落の弱くなった機能
を補完する新たなコミュニティの編成に取り組んでいる。
避難勧告については市町村レベルの失敗が続いている。うまくいかずに大きな被害を出
してしまった。その度に「市町村町はあてにならない。これは国や県がやるべきだ」とい
う意見が上がるが、
私はそうではないと言ってきた。
毎年どこかで大規模災害が発生する。
市町村にとっては多くの場合、初めての経験、久しぶりの経験である。市町村長の任期は
4年でありほとんどが初めての経験となる。しかも市町村のトップは体系立った訓練を受
けていない危機管理の素人だ。小さな自治体では専門の組織の設置は困難であり、職員も
普段は他の仕事をしている。しかも河川や砂防、治山は国や県がやっている。そうした中
で失敗が繰り返される。
では、都道府県や国に任せるべきか。私の考えは「ノー」だ。災害対応は千差万別であ
り意思決定は現場で行うことが鉄則だ。その近くにいる責任ある人間は市町村長だ。住民
への情報伝達手段を持っているのも市町村だけだ。一番重要なのは平時の啓発活動だが、
それができるのも市町村だ。さらに地域への強い愛着を持っている、例えば豊岡が一番好
きなのは、豊岡市の職員だ。ここに期待しなければならない。最後に責任を取るのは政治
家である市町村長だ。避難勧告等の発令は、避難を促すための一要素でしかなくそこだけ
を切り取っても効果は出ない。平時の啓発、避難所の開設や運営、避難勧告等の発令とい
った一連の行為により初めて結果が出る。これをトータルでできるのは市町村しかあり得
ない。とすると私たちは覚悟を決めて自分の腕を磨くほかない。
次に第2部のテーマ「効果的な被災地支援の在り方について」だ。
大きく二つ支援の在り方がある。一つ目は、一般的な物資支援や資機材の提供だ。水が
足りない、食料が足りない、これをどうするのか。二つ目は、災害特有の課題に対する支 15援であり経験に基づく助言や特定の資機材、重機の提供といったものだ。
一般的な物資の支援は、災害時の応援協定があればそこから送る。過去に被災した自治
体が世話になったからと送る。ところが特定の地域に報道が偏ってしまうため、支援が集
中して必要な地域に渡らない。ここには何らかの調整が必要だ。関西では関西広域連合が
割り振りを行うカウンターパート方式で行っているがそうした仕組みが必要だ。
災害特有の課題に対する支援は、ゴミの処理、避難所の運営、家屋被害調査、ボランテ
ィアの対応、災害の事務などだ。ゴミの量がどのくらいかをあらかじめ見積もらないと、
それを基に補助金が決まるため、
実はもっとたくさんあったと後で言っても対象外になる。
見積もり自体にもノウハウがありそれをどう提供するのかが課題である。
一般的な物資については、今回の熊本でも周辺の自治体がのんびりしていて効率が悪い
遠方から盛んに送っている。ここは都道府県に相当強い調整機能を果たしていただく必要
がある。
災害時の特有の課題については、我々こそがそのノウハウを持っているのではないか。
例えば、ブロックごとに支援の仕組みを作れないか。国土交通省ならTEC-FORCE
のように専門家のチームを組織しているが、私たちもチームをあらかじめ組織し、多少の
偏りはあるもののほぼまんべんなく水害サミット参加市町村があるので、災害が起きたブ
ロックの幹事の市長が調整してチームを派遣する。
今の支援は、
「水が足りない」といえば水を送り「避難所を運営する人手が足りない」と
いえば人を送るが、もっと大切なことは被災自治体の災対本部の意思決定を支援する人を
送ることだ。
今回の熊本である町の町長が被災後 10 日後に初めて記者会見したというニュ
ースを見た。だが本当は、直後からトップは姿を見せて我々は頑張っている、みんな頑張
れと市民を励まさなければいけない。マスコミに出ることで日本中から支援を得なければ
ならない。それができていないところがあった。
経験がなければ混乱する。できない人間が悪いということではない。経験を持った人が
そばにいてアドバイスする体制が必要だ。それができるのは水害サミットのメンバーだ。
小野伊豆の国市長 熊本の震災で市民が支援を申し出てくれた。宇城市に連絡したところ
水と少し長く持つ食料が欲しいというので、区長に呼びかけたら喜んで備蓄の品物を持っ
てきてくれた。こうした支援の呼びかけ、働いてくださいというお願いが次のコミュニテ
ィにつながっていく。
また熊本では当初避難所を自主運営にすることができなかったため、
そのボランティアコーディネーターも養成しておくことが大切である。 16豊岡市長の御提案には賛成である。もう少し詳しく伺いたい。
中貝豊岡市長 私のところは平成 16 年に台風 23 号にあったが、そのときに消防大学校の
副校長が派遣されて来た。そんなにたくさんアドバイスをもらったわけではないが精神安
定剤として非常に良かった。
「水害時にトップがなすべきこと 11 か条」を水害サミットで
まとめているが、以前は大水害がある度にそれを送っていた。あるとき災害があってから
送るのはどうなのかと感じ、事前に全ての市区町村に送ったがやはり読まれない。平常時
だとトップまでそれが伝わらない。
わずか 11 か条でも被災直後にあるとトップの心の支え
になる。それを一歩進め、災対本部の中でアドバイスする。私は水害があるとゴミの担当
者を送る。ゴミがとても大変だと経験しているからアドバイスができる。もっとダイレク
トにやることが必要だ。これを豊岡が北海道でも九州でもやるとなると大変だが、九州な
ら九州で既に被災経験があるところがある。あらかじめ連携をとっておき、相手からの要
請がなくても押しかけていくことができないか。
山本宇治市長 基礎自治体が自立し、しっかりやっていくということも良くわかるが、都
道府県の役割を整理する必要があるのではないか。
水害サミットに何年か参加しているが、
ここに足りないものがあるとすれば都道府県だ。気構えとやる気はある。しかし都道府県
の役割はどうかという問いかけが必要だ。
塩田いの町長 高知県も実際に都道府県が災害対策本部に入ってアドバイスをしている。
それをどこの都道府県でもやっていれば良いが、やっていないところやサミットのメンバ
ーに要請があったところには行けば良い。私も今回の被災地には、経験ある職員を送り込
んだ。そうでないと向こうも困る。そういったプロを被災した自治体が育成できているか
も一つのポイントだ。そうした課題を皆が認識し、都道府県とサミットのグループと連携
をとっていくことが重要だ。
≪国土交通省コメント≫
松田特別顧問 国土交通省は、この一連の討議や意見をどのように受け止めたか。今後の
行政の中でどう生かすかまで言及していただければありがたい。
金尾水管理・国土保全局長 一つ目のテーマの「主体的行動型避難への意識改革を探る」
では、防災訓練の実施、自主防災組織の整備、防災リーダーの養成等の様々な取組が挙げ
られており、
これらを地道に一つ一つ実施していくことが大切であると実感した。
「水防災
意識社会 再構築ビジョン」の協議会においても、各市町村と課題を共有し、議論を重ね、 17フォローアップを続けていきたい。
また、二つ目のテーマの「被災地支援の在り方」では、豊岡市長から水害サミット参加
市町村による被災地支援に関する大変有意義な御提案をいただいた。
モノの支援に加えて、
知恵の支援は重要である。国土交通省ではリエゾンやTEC-FORCEの派遣などによ
る被災地支援を行っているが、
水害サミット参加市町村の皆様方の知恵もいただきながら、
被災地支援の充実を図っていきたい。
≪提言骨子の採択≫
松田特別顧問 水害サミットとしても、水害時の対応に関する提言をしていきたいので、
今回の幹事役である三条市長から説明いただく。
國定三条市長 水害サミットで毎回貴重な御意見をいただく中で、ある程度文言にまとめ
てそれを関係機関に要望する、要請する、提言するといったことが必要ではないかと考え
ている。今回のサミットに参加される市町村に事前に照会した提言骨子案をこれから配付
する。項目を読み上げるので御確認いただきたい。
それでは、柱書と項目を読み上げる。
「これからの水害対策に関する提言骨子案
住民の暮らしに最も身近な基礎自治体として、これまでの災害を教訓とした防災、減災
対策を着実に推進するために、また国土の保全を担う国などからもその役割と責任に応じ
た取組を力強く推進いただくために次のとおり提言する。
・住民等の適切かつ主体的な避難行動の促進
・流域全体における関係機関等の連携強化
・ソフト対策とハード対策の一体的かつ着実な実施
・効果的な被災地支援体制の整備
・広域避難計画策定の推進」
提言骨子の採択に御賛同いただける場合は拍手をお願いしたい。
(拍手)
それでは提言骨子を採択した。
この骨子は、
事務局で今後より具体的な形に取りまとめ、
皆様方から御意見を頂戴した上で、最終的には水害サミットとしてしかるべき省庁等に提
言したい。引き続き御協力をお願いする。 18≪水害時の対応に係る市町村向け啓発ビデオ上映≫
松田特別顧問 最後に「水害時の対応に係る市町村向け啓発ビデオ」を御覧いただく。
平井防災課長 これから上映する「水害時の対応に係る市町村向け啓発ビデオ」は、国土
交通省のホームページでも公開しているので御活用いただきたい。
(動画上映)
≪閉会の挨拶≫
松田特別顧問 最後に中貝市長から御挨拶をいただく。
中貝豊岡市長 思わず「なるほど」と思うような話があり、本当に参考になった。お互い
切磋琢磨し、さらにそれぞれの地域の安全度を高めていければと思う。国土交通省から石
井大臣にお越しいただいたが、金尾局長を始め皆様方には本当に熱心にお聞き取りいただ
いた。今度とも対話を続けながら前に進んでいきたい。松田顧問には、溢れる思いの市町
村長をうまく手綱を引いてさばいていただいた。
毎日新聞の皆様方にもこの会場の設営等、
心から感謝申し上げる。またこういったお世話をいただいた三条市の皆さんにも心から感
謝を申し上げる。
いわばこれは出陣式のようなものだ。お互いにしっかりと気持ちを持って出水期を乗り
切っていきたい。市町村長だけがどんなに気負ってもうまくいかない。職員と一緒になっ
てやらなければ成し遂げることができないことはたくさんある。皆さんの日頃の御尽力に
も心からの敬意を表したい。今日はありがとうございました。
おわりに
甚大な被害をもたらす災害が全国各地で頻発しているが、今回のサミットにおける「主
体的行動型避難への意識変革を探る」
「効果的な被災地支援のあり方とは何か」
をテーマと
した参加市町村長の活発な意見交換や提言等が参加市町村、さらには全国の市町村におけ
る今後の防災、減災の一助となることができれば幸いである。
また、石井国土交通大臣・水循環政策担当大臣、金尾水管理・国土保全局長を始めとす
る国土交通省の皆様、内閣府、消防庁の皆様から御出席いただき、近年の国の動向に関す
る御説明やテーマに関する貴重な御意見を通じて非常に意義深い第 12 回水害サミットと
することができた。
開催に当たり様々なお力添えをいただいた多くの関係者の皆様に改めて心から感謝申し 19上げる。

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