これからの水害対策に関する提言
水害サミット实行委員会
はじめに
水害サミット实行委員会では、過去に水害によって甚大な被害を受けた全
国の市区町村長が、自らの被災体験を語り合い、より効果的な防災、減災対
策を考えるとともに、それらに関する情報を積極的に発信し、行政関係者や
住民等に防災、減災意識を高めてもらうことを目的として毎年「水害サミッ
ト」を開催している。
一昨年の広島における土砂災害、昨年の関東・東北豪雨災害、本年の熊本
地震と人々の穏やかな日々の暮らしを奪う災害が全国各地で頻発する今日に
おいて、住民に最も身近な存在である我々基礎自治体は、これまでの経験を
教訓とし、それぞれの地域の实情に応じた防災、減災対策を着实に推進して
いかなければならない。
しかし、一方で基礎自治体という枠組みでの対応には自ずと限界が存在す
る。国土の保全を担う国からもその豊富な経験やノウハウ等を生かし、役割
と責任に応じた取組を力強く推進していただくことが欠かせない。
これらのことを踏まえ、我々は、大きな災害に見舞われたからこそ得るこ
とのできた貴重な経験に基づき、これからの水害対策について次のとおり提
言する。
1 住民等の適切かつ主体的な避難行動の促進
災害時には、行政の人的資源等に限界が存在する以上、自らの命は自ら
が守るという「自助」の覚悟を住民に求めることが必要である。
そのため平時から住民等と向かい合う市区町村は、自主防災組織や防災
リーダーの養成、防災訓練や防災教育の实施等を通して繰り返し地道に住
民等の水防災意識の醸成や的確な判断を下すための知識の普及などを図っ
ていかなければならない。
その上でさらに適切かつ主体的な避難行動を促すためには、住民等が自
らの問題としてより切实に事態を捉えられるリスク情報の提示や多様な手
段での精度の高いきめ細かな情報発信などが欠かせないものであり、それ
らの在り方について国と関係機関等で更に検討し、实施していくことが必
要である。
2 流域全体における関係機関等の連携強化
一級河川は、一般的に国が管理する区間と都道府県が管理する区間とに
分かれており、二級河川でも流域内に複数の市区町村が存在している。あ
る地域の降雨や浸水被害の影響が別の地域にも及ぶ可能性があるなど、上
流から下流までの状況が相互に影響し合う河川の性質に鑑みれば、国や都
道府県、市区町村がそれぞれの枠組みの中で個別に対策を講じるのではな
く、流域全体を俯瞰する広域防災の観点から情報共有、連携、協力するこ
とを通してバランスのとれた効果的な防災、減災対策を検討し、实施する
ことが必要である。
そのため、国は「水防災意識社会 再構築ビジョン」に掲げた協議会等に
おける議論を活発で实効性の高い实り多きものとなるよう積極的に主導す
るとともに、国や都道府県、市区町村等の各主体は減災のための目標やそ
れぞれの役割や責任に対する認識を高め、一体的・計画的に対策を推進す
べきである。
3 ソフト対策とハード対策の一体的かつ着实な实施
施設では防ぎ切れない洪水は必ず発生するという認識を全ての関係機関
が共有し、住民の主体的な避難行動をサポートするソフト対策とハード対
策を一体的かつ着实に实施しなければならない。
ソフト対策にあっては、主に市区町村において避難行動に直結するハザ
ードマップの作成やプッシュ型の各種情報の提供、的確な水防活動を行う
ための体制の整備等、円滑で迅速、的確な住民の避難を支援する取組をそ
れぞれの地域の实情に応じて实施することが必要であり、国等においても
そうした取組を後押しする河川の氾濫パターンの想定などきめ細かな情報
提供や水防活動への協力・支援の充实を図るべきである。
また、ハード対策にあっては、国等において、洪水を計画高水位以下で
安全に流下させる治水対策の基本を着实に推進することはもちろんのこと、
堤防天端の舗装や裏法尻の補強などにより決壊までの時間を引き伸ばすこ
とで住民が避難する時間を稼ぐ「危機管理型ハード対策」を速やかに实施
するとともに、その更なる充实と強化を図るべきである。
4 効果的な被災地支援体制の整備
発災直後にあっては災害時相互応援協定等に基づく個別の支援等を迅速
に行い、その後にあっては被災自治体以外の行政機関のコーディネートに
よる支援を長期的、組織的に行うといったように刻々と変化する被災地の
状況に即応できる重層的、総合的な体制を平時から整えておくことが必要
である。
また、災害時の支援には、飲料水や食料、毛布等の提供といった物的な
支援のほかに、避難所運営や災害廃棄物の処理、被害家屋調査といった災
害特有の課題を解決するための支援が存在する。発災時に次々生じるそう
した課題についてのアドバイスやノウハウの提供といったいわば知恵の支
援を充实させることが被災地支援においてはより重要であり、国等におい
ても俯瞰的な立場からそのための体制構築を図るべきである。
5 広域避難計画策定の推進
水害は市区町村の境界を越えて起こるものであり必ずしも単独の自治体
の防災対策で完結するものではない。発災時には「自治体本位」ではなく、
住民等の安全を第一に考える「住民本位」で対応することが求められる。
より安全、確实に住民等を避難させるために、時系列での浸水想定区域
の分布や河川の位置といった地理的な特性を考慮した避難先や避難経路等
を市区町村の枠組みを越えて適宜検討しなければならない。そうした近隣
市区町村への避難を円滑にマネジメントする広域避難の在り方について
「水防災意識社会 再構築ビジョン」に掲げた協議会等の場を通して平時か
ら関係機関等において協議することが必要であるとともに、協議会に参加
していない自治体の協力が不可欠となる場合も考えられることから、国等
においても適宜それらの取組を支援すべきである。
平成 28 年 10 月5日
水害サミット实行委員会
日 高 町 長 三 輪 茂
新 冠 町 長 小 竹 國 昭
南 部 町 長 工 藤 祐 直
一 関 市 長 勝 部 修
栗 原 市 長 佐 藤 勇
大 崎 市 長 伊 藤 康 志
大 和 町 長 浅 野 元
大 衡 村 長 萩 原 達 雄
大 館 市 長 福 原 淳 嗣
北 秋 田 市 長 津 谷 永 光
南 陽 市 長 白 岩 孝 夫
郡 山 市 長 品 川 萬 里
南 会 津 町 長 大 宅 宗 吉
会 津 坂 下 町 長 齋 藤 文 英
結 城 市 長 前 場 文 夫
下 妻 市 長 稲 葉 本 治
常 総 市 長 神 達 岳 志
守 谷 市 長 会 田 真 一
筑 西 市 長 須 藤 茂
つくばみらい市長 片 庭 正 雄
八 千 代 町 長 大 久 保 司
境 町 長 橋 本 正 裕
栃 木 市 長 鈴 木 俊 美
鹿 沼 市 長 佐 藤 信
小 山 市 長 大 久 保 寿 夫
春 日 部 市 長 石 川 良 三
越 谷 市 長 髙 橋 努
八 潮 市 長 大 山 忍
茂 原 市 長 田 中 豊 彦
長岡市長職務代理者
長岡市副市長
髙 見 真 二
三 条 市 長 國 定 勇 人
十 日 町 市 長 関 口 芳 史
見 附 市 長 久 住 時 男
五 泉 市 長 伊 藤 勝 美
魚 沼 市 長 大 平 悦 子
南 魚 沼 市 長 井 口 一 郎
阿 賀 町 長 神 田 敏 郎
高 岡 市 長 髙 橋 正 樹
南 砺 市 長 田 中 幹 夫
金 沢 市 長 山 野 之 義
七 尾 市 長 不 嶋 豊 和
福 井 市 長 東 村 新 一
鯖 江 市 長 牧 野 百 男
越 前 市 長 奈 良 俊 幸
岡 谷 市 長 今 井 竜 五
諏 訪 市 長 金 子 ゆ か り
伊 那 市 長 白 鳥 孝
下 諏 訪 町 長 青 木 悟
辰 野 町 長 加 島 範 久
箕 輪 町 長 白 鳥 政 徳
南 箕 輪 村 長 唐 木 一 直
岐 阜 市 長 細 江 茂 光
大 垣 市 長 小 川 敏
高 山 市 長 國 島 芳 明
多 治 見 市 長 古 川 雅 典
飛 騨 市 長 都 竹 淳 也
伊 豆 の 国 市 長 小 野 登 志 子
牧 之 原 市 長 西 原 茂 樹
函 南 町 長 森 延 彦
岡 崎 市 長 内 田 康 宏
阿 久 比 町 長 竹 内 啓 二
伊 勢 市 長 鈴 木 健 一
熊 野 市 長 河 上 敢 二
紀 北 町 長 尾 上 壽 一
紀 宝 町 長 西 田 健
福 知 山 市 長 大 橋 一 夫
舞 鶴 市 長 多 々 見 良 三
綾 部 市 長 山 崎 善 也
宇 治 市 長 山 本 正
亀 岡 市 長 桂 川 孝 裕
城 陽 市 長 奥 田 敏 晴
与 謝 野 町 長 山 添 藤 真
洲 本 市 長 竹 内 通 弘
豊 岡 市 長 中 貝 宗 治
西 脇 市 長 片 山 象 三
高 砂 市 長 登 幸 人
佐 用 町 長 庵 逧 典 章
十 津 川 村 長 更 谷 慈 禧
和 歌 山 市 長 尾 花 正 啓
田 辺 市 長 真 砂 充 敏
新 宮 市 長 田 岡 实 千 年
日 高 川 町 長 市 木 久 雄
那 智 勝 浦 町 長 寺 本 眞 一
古 座 川 町 長 西 前 啓 市
津 和 野 町 長 下 森 博 之
玉 野 市 長 黒 田 晋
美 作 市 長 萩 原 誠 司
早 島 町 長 中 川 真 寿 男
萩 市 長 野 村 興 兒
徳 島 市 長 遠 藤 彰 良
小 松 島 市 長 濱 田 保 徳
阿 南 市 長 岩 浅 嘉 仁
那 賀 町 長 坂 口 博 文
海 陽 町 長 前 田 惠
高 松 市 長 大 西 秀 人
さ ぬ き 市 長 大 山 茂 樹
新 居 浜 市 長 石 川 勝 行
西 条 市 長 青 野 勝
大 洲 市 長 清 水 裕
土 佐 市 長 板 原 啓 文
い の 町 長 塩 田 始
日 高 村 長 戸 梶 眞 幸
飯 塚 市 長 齊 藤 守 史
柳 川 市 長 金 子 健 次
八 女 市 長 三 田 村 統 之
筑 後 市 長 中 村 征 一
筑 紫 野 市 長 藤 田 陽 三
大 野 城 市 長 井 本 宗 司
太 宰 府 市 長 芦 刈 茂
み や ま 市 長 西 原 親
宇 美 町 長 木 原 忠
志 免 町 長 世 利 良 末
阿 蘇 市 長 佐 藤 義 興
球 磨 村 長 柳 詰 正 治
中 津 市 長 奥 塚 正 典
日 田 市 長 原 田 啓 介
竹 田 市 長 首 藤 勝 次
宮 崎 市 長 戸 敷 正
延 岡 市 長 首 藤 正 治
西 都 市 長 橋 田 和 实
え び の 市 長 村 岡 隆 明
国 富 町 長 河 野 利 美
日 之 影 町 長 佐 藤 貢
出 水 市 長 渋 谷 俊 彦
薩 摩 川 内 市 長 岩 切 秀 雄
奄 美 市 長 朝 山 毅
伊 佐 市 長 隈 元 新
さ つ ま 町 長 日 髙 政 勝
湧 水 町 長 米 満 重 満
宇 検 村 長 元 田 信 有
瀬 戸 内 町 長 鎌 田 愛 人
龍 郷 町 長 徳 田 康 光

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