別添3
令和6年度マンションストック長寿命化等モデル事業(第2回募集)の
評価結果について
1.提案募集の状況及び審査の経緯
(1)令和6年6月 24 日〜6月 28 日の第2回提案受付期間に、10 者 11 件の提案を得
た。内訳は、
「先導的再生モデルタイプ(計画支援)
」が6者6件、
「先導的再生モデ
ルタイプ(改修工事支援)
」が2者2件、
「先導的再生モデルタイプ(建替工事支援)」が2者2件、
「管理適正化モデルタイプ(計画支援)
」が1者1件であった。
事業タイプ 応募件数 提案者種別
先導的再生モデルタイプ
(計画支援)6件マンション再生コンサルタント 2件
設計事務所 3件
その他の団体等 1件
先導的再生モデルタイプ
(改修工事支援)2件設計事務所 1件
施工業者 1件
先導的再生モデルタイプ
(建替工事支援)
2件 事業参画者 2件
管理適正化モデルタイプ
(計画支援)
1件 設計事務所 1件
合計 11 件
(2)国立研究開発法人建築研究所において、評価委員会を設置し、提案事業の評価・審査
を行った。
2.評価の総評
しろまる 今回の募集分では 10 者 11 件の提案があり、
「先導的再生モデルタイプ(計画支援)
」で
3者3件、
「先導的再生モデルタイプ(改修工事支援)
」で2者2件、
「先導的再生モデ
ルタイプ(建替工事支援)
」で1者1件、
「管理適正化モデルタイプ(計画支援)
」で1
者1件をマンションストック長寿命化等モデル事業の採択事業として適切であると評
価した。
しろまる 本事業は、
マンションの再生に向けて、
具体的な課題解決を図るモデル的なプロジェク
トに対して支援を行い、
その成果の全国展開を図る目的であるため、
提案書において、
提案対象のマンションを取り巻く現状及び課題の具体的な説明があり、それに対する
対応策を検討し、
実施に向けて具体的に提案されていることを前提に、
今後普及が期待
される先導性や汎用性等の観点から、採択事業として適切であるものを評価した。
しろまる 今回、適切と評価した先導的再生モデルタイプ(計画支援)の提案(3者3件)につい
て、概要は以下のとおりである。
・賃分併存の大規模団地全体における地域住宅団地再生事業計画素案の作成を踏まえた
建替え検討
・小規模の既存不適格マンションにおける地区計画をふまえた管理組合主体の建替え検討・大規模な2団地の協同による、団地型マンションの長寿命化・魅力向上につなげる再
生検討
しろまる 今回、適切と評価した先導的再生モデルタイプ(改修工事支援)の提案(2者2件)に
ついて、概要は以下のとおりである。
・大規模団地における給排水設備の長寿命化に向けた段階的な取組に基づく改修工事
・異なる給湯方式が混在する小規模マンションにおける給水設備等の改修工事
しろまる 今回、適切と評価した先導的再生モデルタイプ(建替工事支援)の提案(1者1件)に
ついて、概要は以下のとおりである。
・複合用途かつ借地権マンションにおける、隣地を取り込む建替え
しろまる 今回、適切と評価した管理適正化モデルタイプ(計画支援)の提案(1者1件)につい
て、概要は以下のとおりである。
・小規模マンションにおける初の大規模修繕工事の実現に向けた資金計画等及び管理適
正化に向けた検討
3.採択事業として適切であると評価した提案の一覧と概評
【別紙】のとおり。
採択事業として適切であると評価した提案の概要と概評 【別紙】
番号 提案区分
マンション名
提案概要 概評
提案者1先導的再生
モデルタイ
プ(計画支援)枚方中宮第4団
地住宅
【賃分併存の大規模団地全体における地域住宅団地再
生事業計画素案の作成を踏まえた建替え検討】
1969 年築、8棟 240 戸の団地型マンション。賃貸・分譲で一
体開発された大規模団地の一部である。都市計画道路が隣接
し、また、下水設備及び給水設備が隣接する賃貸住宅団地内を
通っている。建物の老朽化、住民の高齢化の他、郊外立地であ
る等の課題がある。
2023 年に建替え推進決議が可決され、
棟別説明会、
アンケー
トや個別面談を繰り返し、
合意形成を進めている。
本事業では、
地域再生法(改正)の適用により、保留敷地へ導入する生活利
便施設に係る用途規制の緩和等を受けるため、
賃貸住宅団地の
管理主体との連携による地域住宅団地再生事業計画の素案の
作成、保留敷地処分による建替えの具体的な検討、地域貢献に
寄与する生活利便施設の誘致の検討を行う。
地域再生法の適用を受けるため、
賃分併存の大規模団地全体
の施行者とも連携し、
当団地型マンションを含む地域住宅団地
再生事業計画の素案を作成する点、都市計画道路の整備、隣接
する賃貸住宅団地と共用する給水設備に係る協議、
一団地認定
の解除等、建替えに係る制約が多い中での検討である点を、独
自性・創意工夫の面で評価した。
また、郊外大規模団地であることから、敷地の一部を保留敷
地として処分し、
地域再生法
(改正)
の適用による緩和を受け、
団地全体の活性化につながる地域貢献施設を誘致する計画で
あり合理的と評価した。
区分所有者の高齢化に対しては、
第3者管理方式の導入検討
の他、
スマートフォンアプリを活用した仮住まい中の高齢者と
のネットワーク構築や、
仮住まい期間中の定期訪問に取り組む
点は、合意形成上の工夫として評価した。
旭化成不動産レ
ジデンス株式会社2
先導的再生
モデルタイ
プ(計画支援)マンション下目
黒苑
【小規模の既存不適格マンションにおける地区計画を
踏まえた管理組合主体の建替え検討】
1973 年築、28 戸のマンション。耐震改修は資金面で実施困
難であった。
竣工後に制定された高度地区および日影規制等に
より既存不適格となっており、
建替えの際には現状より床面積
が減少する見込みであったが、2022 年に用途地域の変更と地
区計画が都市計画決定されたことにより、建替えの検討が進
み、2023 年に建替え推進決議が可決された。
ディベロッパーの事業協力が難しい可能性も考慮し、
現在の
権利者が希望する建替え計画を管理組合主体で作成、
事業方式
を検討する。また、そのために建築設計者、コンサルタント、
施工会社等の専門家・業者の連携・支援体制を構築する。
建替え計画においては、
地域の防災やコミュニティ形成に貢
献する機能の導入も積極的に検討する。
これまでの取組として、
近隣の高経年マンションと協力して
「下目黒街づくりの会」に参加し、地区計画の制定による建替
えが可能な環境を実現したことについて、
日影規制や高度地区
の制約がある環境で建替えを進めていく事例として、独自性・
創意工夫を評価した。
建替えにコーポラティブ方式の思想と手法を応用するとあ
り、その上での事業方式の検討等を行うとしている。これは、
住民のニーズを反映した計画や、建替え後の維持管理・コミュ
ニティへの主体的な関わりに貢献するものであり、
合理性や合
意形成上の工夫、将来の維持管理に向けた工夫として評価し
た。
特定非営利活動
法人 都市住宅と
まちづくり研究会 番号 提案区分
マンション名
提案概要 概評
提案者3先導的再生
モデルタイ
プ(計画支援)洋光台南第一住
宅・洋光台南第二
住宅
(洋光台南団地)【大規模な2団地の協同による、団地型マンションの長
寿命化・魅力向上につなげる再生検討】
1971 年築、39 棟 696 戸の第一住宅と、1970 年築、33 棟 797
戸の第二住宅の、2つの団地型マンションによる協同提案。建
物や設備の老朽化と居住者の高齢化への対策として、
これまで
第一住宅では、全体構想案の作成、新集会所の建設、2023 年度
からは住民有志の専門委員会活動において、
外構照明改良の検
討、空駐車場活用による収益化・利便性向上のためのカーシェ
ア及びシェアサイクル導入の検討を行っている。第二住宅で
は、意見交換会や意識調査を実施してきたが、第一住宅・第二
住宅の取組加速のため、2023 年度から2団地での意見交換を
実施している。
本事業においては、2団地と提案者(設計事務所)に加え、
マンション再生コンサルタント、植栽コンサルタント、電気設
備コンサルタント、
管理会社の協同により、
インスペクション、
全住戸へのアンケート、直近入居者・近隣不動産事業者へのヒ
アリングにより、団地の現状把握と改良要望の整理分析を行
い、団地の長寿命化・美装化へ向けた、外構照明更新・EV 充電
設備整備・屋外排水管更新の検討、植栽管理計画の検討、集会
所の機能強化の検討等を行う。
高経年化している団地型マンションが増加する中で、
複数の
専門家・事業者が協同で大規模団地の再生に取り組む点、2団
地の足並みを揃えるための意見交換を行っている点は独自性・
創意工夫の面で評価できる。
また、住民アンケートや不動産事業者へのヒアリングによ
り、現状把握・課題の洗い出しを行う点、大規模修繕工事計画
を長寿命化・美装化を兼ねた計画へブラッシュアップする点、
外構照明・EV 充電設備・屋外排水管更新の検討、地域内で伐採
した植栽の地域内活用、地域交流拠点・防災拠点の強化を踏ま
えた植栽管理計画等、
複数の手法により団地の魅力向上を検討
している点は、合理性の観点で評価できる。
また、
第一住宅におけるアイデアブックの作成や集会所の新
設、専門委員会活動等、課題に対するこれまでの取組について
も評価した。
株式会社スタジ
オ・クハラ・ヤギ 番号 提案区分
マンション名
提案概要 概評
提案者4先導的再生
モデルタイ
プ(改修工
事支援)
若葉台第一住宅
【大規模団地における給排水設備の長寿命化に向けた
段階的な取組に基づく改修工事】
1979 年築、35 棟 889 戸の団地型マンション。長年にわたる
段階的な設備改修に取り組んできており、
その総仕上げとして
過去やりきれなかった部分の改修工事を行う。
工事内容は、給水設備改修工事(給水方式の変更、RC 製受水
槽の廃止、給水ポンプと受変電設備の省エネ改修、屋外給水管
更新、自家用発電機の更新)、汚水管更新工事(新商品開発を
伴う住戸内汚水立管の更新)の他、オプション工事として、過
去に実施した「排水管の段階的スラブ上化改修手法」のフォロ
ーアップ改修(ユニットバス化工事)、専有給水・給湯管の未
更新住戸に対する更新の促進に取り組む。
((注記)専有部分の工事費は補助対象外)
給水設備改修工事では、
市内で初の大型団地での並列直結増
圧方式への変更により、
RC 製受水槽を廃止し、
敷地内の埋設給
水管を樹脂管に更新する。また、給水ポンプの小型化により、
ポンプ室と電気室の空きスペースを防災備蓄倉庫に転用し、自家用発電機からの非常電源も確保することで、
ライフラインの
長寿命化の他に防災対策の強化につながる点は合理的である。
狭小なトイレ内の鋳鉄製排水立管の更新に際し、
建設時と同
サイズのまま現行で求められる排水性能を実現するべく、
メー
カーに依頼し新製品の開発につなげている点は、独自性・創意
工夫の面で評価した。
全 889 世帯分の専有部分給排水管の改修済み状況を、
管理事
務所にて一元管理しているので、
専有部分リフォーム申請が提
出された際の配管更新に関する戸別指導などが行えるように
なっており、今回の改修工事により、更にアップデートを図る
点は、将来の維持管理に向けた工夫の面で評価した。
宮城設計一級建
築士事務所5先導的再生
モデルタイ
プ(改修工
事支援)
サンコーポ唐湊
【異なる給湯方式が混在する小規模マンションにおけ
る給水設備等の改修工事】
1978 年築、24 戸のマンション。これまで給排水管の更新を
行っておらず、小さな漏水事故が頻発している。また、給水
システム(受水槽+高置水槽方式)も劣化しており、揚水ポ
ンプの異常、断水・漏水が発生している。既存の電気温水器
の使用者が約4割あり、継続使用する場合は温水器の配管も
更新が必要となる等の点で合意形成上の課題があった。令和
4年度に計画支援事業に採択され、床下開口調査を実施。受
水槽・高置水槽方式から直結増圧方式への変更と給水管の更
新の他、耐震改修工事も同時実施する。
専有部分内にはメンテナンスのための点検口・掃除口を設
け、電気温水器は撤廃し、全戸ガス給湯へ切り替える。
なお、排水管・汚水管・通気管は樹脂管であり、調査した
結果、管内洗浄を定期的に行えれば、交換までは不要との見
解が得られたため更新工事は行わず、定期的にメンテナンス
を行うこととしている。((注記)専有部分の工事費は補助対象外)
計画支援事業での検討を経て、
懸案であった電気温水器の撤
廃、給水方式の変更に至っている点、耐震改修を同時に実施す
る点は、当マンション固有の課題に対するこれまでの取組、独
自性、合理性において評価した。
スラブ下配管の解消及び排水管の更新は、
計画支援事業にお
ける調査・検討の結果実施しないこととしている。
合意形成に対する工夫として、
専有部分の水回りリフォーム
を同時に提案している点も評価した。
中央工業株式会社 番号 提案区分
マンション名
提案概要 概評
提案者6先導的再生
モデルタイ
プ(建替工
事支援)
東京自興ビル・国
分マンション
【複合用途かつ借地権マンションにおける、隣地を取り
込む建替え】
1968 年築、事務所2区画と住宅 79 戸から構成される複合用
途マンション。漏水や外壁の剥離などの不具合に加え、耐震診
断の結果から、要除却認定を受けている。
借地権マンションであり、法人が底地、隣接地を所有してお
り、大口区分所有者でもある。
当該法人と概ねの方針について合意済みで、
令和5年度に計
画支援事業に採択された。その後、合意形成活動を進め、2023
年に建替え決議が可決された。
法人及び他の区分所有者との経済条件の調整や合意形成を
行い、
複雑な権利関係の調整が必要な借地権マンションから所
有権マンションへの建替えを行う。
1借地権マンションの所有権化のスキームについて、
認可権
者、底地人、区分所有者と密に協議、理解促進を実施、2隣地
共同化+要除却認定によりマンション建替え法容積率許可要
綱の活用による経済条件改善、
3複合用途及び借地権マンショ
ンにおける複雑な権利関係の調整として、
事務所区画含めた大
口所有者である底地人への理解促進と、権利範囲確定の協議、
区分所有者への説明会及び丁寧な個別面談の実施、
4高齢者へ
の高齢者向け返済特例制度等資金調達の方法や、引越し、仮住
まい先探索についてのサポートを行う等、
計画支援事業での検
討を踏まえた建替えの実現に至っており、独自性・創意工夫、
合理性の点で評価するとともに、
これまで実施してきた合意形
成活動等の取組みも評価した。
日鉄興和不動産
株式会社7管理適正化
モデルタイ
プ(計画
支援)
セレニティ湯島
【小規模マンションにおける初の大規模修繕工事の実
現に向けた資金計画等及び管理適正化に向けた検討】
1983 年築、11 戸のマンション。竣工当初、建築会社関連の
管理会社のもとで総会が開催されたが、
その後建築会社が倒産
し管理組合活動・総会の実績が無かった。大規模修繕の実績も
無く管理規約は建築当初のままである。
建物の老朽化が加速し
ているが、必要な修繕積立金が大幅に不足している。
2016 年に総会を開催。2021 年に現管理会社と全部委託契約
し、組合・理事会活動を立ち上げ、2023 年に文京区の助成も受
け劣化診断を実施し長期修繕計画書を作成。
初の大規模修繕実現に向け、資金計画に関する検討、収益事
業検討(駐車場・駐輪場整備調査)を行う。また、管理計画認
定に向けた管理規約改定、名簿更新制度整備、管理組合の情報
公開・区分所有者居住者 WEB 窓口設置と多国籍化する所有者に
対し将来的な AI による多言語化検討を行う。
過年度に文京区の助成を受け劣化診断調査と長期修繕計画
の作成を行っており、初めての大規模修繕工事の実施に向け、
地方公共団体の支援制度を活用しながら進めてきており、
課題
に対するこれまでの取組において評価した。
財政事情を鑑み、初回の修繕は安全性、耐久性、機能保全、
美観等から必須の工事内容に絞り、
並行して新たな収益事業を
検討し実現可能な資金計画を立てる点、
管理計画認定に向けた
決議を行った上で必要な検討を行い、
認定申請のための事前相
談を行う点は、将来の適正管理に向けた工夫として評価した。
株式会社佐藤マ
ンションサポート

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