BIM/CIM 活用ガイドライン(案)
第 8 編 港湾編
令和3年3月
国土交通省
【改定履歴】
ガイドライン名称 年月 備考
BIM/CIM 活用ガイドライン(案)
第 8 編 港湾編
令和 3 年 3 月
令和3年3月 制定
目 次
第 8 編 港湾編
はじめに ................................................................... 1
1 総則 ..................................................................... 3
1.1 適用範囲 ............................................................. 3
1.2 全体事業における BIM/CIM 活用の流れ ................................... 4
1.3 モデル詳細度 ......................................................... 6
1.4 属性情報 ............................................................. 8
1.4.1 属性情報の付与方法................................................... 8
1.4.2 付与する属性情報..................................................... 8
2 測量及び地質・土質調査 .................................................. 12
2.1 測量成果(3 次元データ)作成指針..................................... 13
2.2 地質・土質モデル作成指針 ............................................ 14
3 設計 .................................................................... 17
3.1 BIM/CIM モデル作成指針............................................... 17
3.1.1 BIM/CIM モデルの基本的な考え方(モデル作成対象) .................... 17
3.1.2 BIM/CIM モデル作成指針(共通編) .................................... 20
3.1.3 BIM/CIM モデル作成指針(係留施設:桟橋) ............................ 25
3.1.4 BIM/CIM モデル作成指針(係留施設:矢板式係船岸) .................... 27
3.1.5 BIM/CIM モデル作成指針(係留施設:重力式係船岸) .................... 30
3.1.6 BIM/CIM モデル作成指針(外郭施設:重力式防波堤) .................... 33
3.2 設計における BIM/CIM モデルの活用例 .................................. 36
3.2.1 図面作成 ........................................................... 39
3.2.2 数量計算 ........................................................... 42
3.2.3 施工計画 ........................................................... 44
3.2.4 協議・報告.......................................................... 47
4 施工 .................................................................... 49
4.1 施工における BIM/CIM モデルの活用例 .................................. 49
4.1.1 設計図書の照査...................................................... 50
4.1.2 事業説明、関係者間協議.............................................. 51
4.1.3 施工方法(仮設備計画、工事用地、計画工程表)........................ 54
4.1.4 施工管理(品質、出来形、安全管理).................................. 56
4.1.5 工事完成図(主要資材情報含む)...................................... 58
5 維持管理 ................................................................ 59
5.1 維持管理における BIM/CIM モデルの活用例 .............................. 59
第 8 編 1
はじめに
「BIM/CIM 活用ガイドライン(案)」(以下、
「本ガイドライン」という。
)は、公共事業に携わる関係
者(発注者、受注者等)が建設生産・管理システムの各段階で BIM/CIM(Building/ Construction
Information Modeling, Management:ビムシム)を円滑に活用できることを目的に、以下の位置づけで
作成したものである。
【本ガイドラインの基本的な位置づけ】
 これまでの BIM/CIM 活用業務及び活用工事で得られた知見やソフトウェアの機能水準等を踏ま
え、BIM/CIM の活用目的、適用範囲、BIM/CIM モデルの考え方、BIM/CIM 活用の流れ、各段階に
おける活用、BIM/CIM の将来像等を参考として記載したものである。
 BIM/CIM モデルの活用方策は、
記載されたもの全てに準拠することを求めるものではない。
本ガ
イドラインを参考に、
適用する事業の特性や状況に応じて発注者・受注者等で判断の上、
BIM/CIM
モデルを活用するものである。
 最終的な設計成果物として納品する BIM/CIM モデルの詳細度及び属性情報等については、
『3 次
元モデル成果物作成要領(案)
』において示すが、ここで示すものは最終的な設計成果物に至る
までの各段階における目安を示したものであることに留意されたい。
 公共事業において BIM/CIM を実践し得られた課題への対応とともに、
ソフトウェアの機能向上、
関連する基準類の整備に応じて、引き続き本ガイドラインを継続的に改善、拡充していく。
第 8 編 2
【本ガイドラインの構成と適用】
表 1 本ガイドラインの構成と適用
構成 適用
第 1 編
共通編
第 1 章 総論 公共事業の各段階(測量・調査、設計、施工、維持管理)で
BIM/CIM を活用する際の共通事項について適用する。
第 2 章 測量
第 3 章 地質・土質モデル
第 2 編 河川編 河川堤防及び構造物(樋門・樋管等)を対象に BIM/CIM を測
量・調査、設計、施工、維持管理の各段階で活用する際に適用
する。
第 3 編 砂防及び地すべり対策編 砂防構造物(砂防堰堤及び床固工、渓流保全工、土石流対策
工及び流木対策工、護岸工、山腹工)、地すべり機構解析や地
すべり防止施設を対象に BIM/CIM を調査・設計、施工、施設の
効果評価、維持管理の各段階で活用する際に適用する。
第 4 編 ダム編 重力式コンクリートダム、ロックフィルダム等を対象に
BIM/CIM を測量・調査、設計、施工、維持管理の各段階で活用
する際に適用する。
第 5 編 道路編 道路土工・舗装工及び山岳トンネル、橋梁(上部工、下部工)
を対象に BIM/CIM を測量・調査、設計、施工、維持管理の各段
階で活用する際に適用する。
第 6 編 機械設備編 機械設備を対象に BIM/CIM を調査・設計、施工、維持管理の
各段階で活用する際に適用する。
第 7 編 下水道編 下水道施設のポンプ場、
終末処理場を対象に BIM/CIM を調査・設計、施工、維持管理、改築計画の各段階で活用する際に適用
する。
第 8 編 港湾編 港湾施設(水域施設(泊地、航路等)、外郭施設(防波堤、
護岸等)、係留施設等)を対象に BIM/CIM を測量・調査、設計、
施工、維持管理の各段階で活用する際に適用する。
第 8 編 3
第 8 編 港湾編
1 総則
1.1 適用範囲
本ガイドラインは、国土交通省直轄事業における港湾施設の BIM/CIM 活用業務および BIM/CIM 活
用工事を対象とする。また、点群データの取得等、3 次元モデルのみを取り扱う場合であっても、
後工程において 3 次元モデルを活用可能であることから、本ガイドラインを準用する。
【解説】
港湾施設(水域施設(泊地、航路等)
、外郭施設(防波堤、護岸等)
、係留施設等)を対象に BIM/CIM
の考え方を用いて測量・調査、設計段階で BIM/CIM モデルを作成すること、作成された BIM/CIM モデ
ルを施工段階に活用すること、更には測量・調査、設計、施工の BIM/CIM モデルを維持管理段階に活
用する際に適用する。
施工段階から BIM/CIM モデルを作成・活用する場合も適用範囲とする。また、上記の工種、工法以
外への参考とすることを妨げるものでない。
第 8 編 4
1.2 全体事業における BIM/CIM 活用の流れ
BIM/CIM 活用業務または BIM/CIM 活用工事の実施に当たっては、前工程で作成された BIM/CIM モ
デルを活用・更新するとともに、新たに作成した BIM/CIM モデルを次工程に引き渡すことで、事業
全体で BIM/CIM モデルを作成・活用・更新できるようにする。
【解説】
港湾施設の設計、施工において、各段階の地形モデル、地質・土質モデル、線形モデル、土工形状
モデル、構造物モデル(基礎工、本体工)等の作成、活用、更新する流れと、設計、施工で作成した
BIM/CIM モデルを維持管理に活用する流れを図 1 に示す。
第 8 編 5
≪BIM/CIM モデル作成・活用・更新の流れ【港湾】≫
図 1 BIM/CIM モデルの作成・活用・更新の流れの例【港湾】
凡例
地形モデル作成 地形モデル活用
地形
地質・
土質
土量計算等
付属工
(注記)基盤地図情報、深浅測量データ
等より作成
地質・土質モデル作成
(注記)ボーリング調査、物理探査等
より作成
地質・土質モデル活用
地形モデル活用
地形モデル
更新・活用
(注記)起工測量結果等を反映
施工計画等
地質・土質モデル活用
(注記)追加ボーリング調査、杭の打設
結果等を反映
地盤構造の確認、共有等
本体工 本体工モデル作成
(注記)本体工(躯体、杭等)の配置、基
本形状、材質確認程度のモデル
本体工モデル
作成・活用
(注記)本体工(躯体、杭等)の細部形
状、配筋等のモデル化、属性
情報の付与
干渉チェック、ミス防止等
本体工モデル
更新・活用
(注記)施工時の修正、属性情報の付与
施工手順の確認、品質管理、
出来形管理等
上部工 上部工モデル作成
(注記)上部工(躯体等)の配置、基本形
状程度のモデル
上部工モデル
作成・活用
(注記)上部工(躯体等)の細部形状、配筋
等のモデル化、属性情報の付与
干渉チェック、ミス防止等
上部工モデル
更新・活用
(注記)施工時の修正、属性情報付与
施工手順の確認、品質管理、
出来形管理等
付属工モデル
作成・活用
細部取り合い確認
(注記)付属工(係船柱、防舷材等)の
配置、細部形状のモデル化、
属性情報の付与
土量計算等
付属工モデル
更新・活用
(注記)施工時の修正、属性情報の付与
施工手順の確認、品質管理、
出来形管理等
測量
地質調査
予備・基本設計 細部・実施設計 施工 維持管理
定期深浅測量等
による更新
維持管理モデルの
構築
維持管理モデルの
活用
(注記)複数工事で活用したモデル
(注記)維持管理段階の属性情報の更新
点検作業の効率化、補修補強
検討の効率化
地質・土質モデル
更新・活用
:モデルの作成
:モデルの一部作成
(注記) :モデル作成・更新の内容
:モデルの更新
:モデルの活用
:モデルの活用例
注) 「モデル作成」(一部作成を含む)・「モデル更新」の
凡例では、モデル活用有無での区別は行わない
第 8 編 6
1.3 モデル詳細度
発注者からの 3 次元モデル作成の指示時、受発注者間での 3 次元モデル作成の協議時には、本ガ
イドラインで定義した BIM/CIM モデル詳細度を用いて協議するものとする。
作成・提出する 3 次元モデルについて、そのモデルの作りこみレベルを示す等の場合には、本ガ
イドラインで定義した BIM/CIM モデル詳細度(および必要に応じて補足説明)を用いて表記するも
のとする。
地質・土質モデルに対しては、BIM/CIM モデル詳細度を適用しない。詳細は本ガイドライン共通
編「第 3 章 地質・土質モデル」の「1 地質・土質モデルの作成・活用に関する基本的な考え方」を
参照する。
【解説】
工種共通のモデル詳細度の定義は、
「BIM/CIM 活用ガイドライン(案)共通編」
「第 1 章 総論」
「2.5
BIM/CIM モデルの詳細度」に示すとおりである。港湾分野の構造物(杭式桟橋)におけるモデル詳細
度の定義を次に示す。なお、その他の構造形式についても同様の考え方とする。
BIM/CIM モデルの作成・活用時の受発注者協議等は、次の定義および本ガイドライン「3 設計」〜
「5 維持管理」を参考に用いるものとする。
第 8 編 7
表 2 BIM/CIM モデルの詳細度(案)
(例:桟橋)
詳細度 共通定義
工種別の定義
構造物(桟橋)のモデル化 サンプル100対象を記号や線、単純
な形状でその位置を示
したモデル。
対象構造物の位置を示すモデル。
桟橋の配置が分かる程度の矩形形状
もしくは線状のモデル。200対象の構造形式が分か
る程度のモデル。
標準横断で切土・盛土
を表現、又は各構造物
一般図に示される標準
横断面を対象範囲でス
イープ(注記)
させて作成す
る程度の表現。
構造形式が確認できる程度の形状を
有したモデル。
桟橋では、桟橋の構造形式が分かる程
度のモデル。モデル化対象は主構造程
度で部材厚の情報は持たない。地形と
の高さ関係から概ねの規模を想定し
てモデル化する。300附帯工等の細部構造、
接続部構造を除き、対
象の外形形状を正確に
表現したモデル。
主構造の形状が正確なモデル(桟橋)
計算結果を基に主構造をモデル化す
る。主構造は本体工(鋼杭)及び上部
工を指す。
外形形状及び配置を正確にモデル化。400詳細度 300 に加えて、
附帯工、接続構造等の
細部構造及び配筋も含
めて、正確に表現した
モデル。
詳細度 300 に加えて接続部構造や配筋
を含めてモデル化(桟橋)する。また、
主な付属工(防舷材、係船柱)の配置
と外形を含めてモデル化する。
500 対象の現実の形状を表
現したモデル- -出典:土木分野におけるモデル詳細度標準(案)【改訂版】 社会基盤情報標準化委員会 特別委員会
(https://www.jacic.or.jp/hyojun/modelsyosaido_kaitei1.pdf)
(注記)スイープ・・・平面に描かれた図形をある基準線に沿って延長させて 3 次元化する技法のこと。
第 8 編 8
1.4 属性情報
各段階における BIM/CIM の活用目的や内容に応じて、必要な属性情報を 3 次元モデルに付与す
る。
【解説】
属性情報とは、3 次元モデルに付与する部材(部品)の情報(部材等の名称、形状、寸法、物性お
よび物性値(強度等)
、数量、そのほか付与が可能な情報)を指す。
なお、数量に関する属性情報は『港湾請負工事積算基準』
、その他の属性情報は、
『3 次元モデル成
果物作成要領(案)
』及び本ガイドラインを参考に付与する。
1.4.1 属性情報の付与方法
BIM/CIM モデルに付与する属性情報や付与方法については次のとおりとし、具体的な付与方法、付
与範囲は、受発注者間協議により決定する。
属性情報の付与方法は、
「3 次元モデルに直接付与する方法」及び「3 次元モデルから外部参照す
る方法」がある。
1.4.2 付与する属性情報
属性情報は、事業の進捗に沿って属性項目を登録する段階(設計、施工、維持管理)が異なること
から、順次、BIM/CIM モデルを引き継いだ段階毎に属性を付与するものとする。
なお、構造物情報として必要とされる属性項目は、
『港湾工事共通仕様書』における「品質管理基
準」、「出来形管理基準」
、等を参考に、必要とされる属性項目を標準とする。
設計
構造物モデルへの属性付与は、設計段階で計画された物性情報、施工段階で管理される材料情報
(ミルシート等、品質管理情報)
、維持管理段階での活用情報とする。
しろまる部材情報(共通)
モデルの部材単位で、その部材を示す名称等を属性として付与する。これは、全ての部材で共通
する属性項目とし、属性管理を行う上での基本項目となる。
しかく属性情報付与段階:設計時
 属性項目:ID、構造物名称、部材名称 1、部材名称 2、部材名称 3、備考欄
(注記) ID は、各部材(作成する 3 次元モデルのオブジェクト)を一意に識別する。
(注記) 部材名称 1〜3 は、必要に応じて部材詳細名称を階層化した名称とする。
(注記) 属性情報の入力時期や情報源などが記載できる備考欄を設ける
しろまるコンクリート属性項目
『港湾工事共通仕様書』における「品質管理基準」を参考に、生コンクリート製造者及び施工者
におけるコンクリートの品質検査項目及び試験成績表記載項目を基本とする。
しろまる鉄筋属性項目
第 8 編 9
現場搬入される鉄筋の鉄筋製造メーカーによる、品質検査項目及びミルシート記載項目を基本と
する。
表 3 属性項目(例:桟橋)
くろまるプロジェクト情報
工程 属性種別 属性名称
設計時、
施工時、
維持管理時
プロジェクト情報 港湾名
構造物名称
構造物形式
設計水深
潮位
天端高
施設延長
上部工下端高
施設番号
ファイルリンク
ファイル添付
(設計計算書等)
くろまる現況地形
工程 属性種別 属性名称
設計時 地形情報出典 測量年度
測量業務名
座標系
ファイル添付
(ボーリングデータ等)ファイルリンク
くろまるコンクリート
工程 属性種別 属性名称
設計時 部材情報 ID
構造物名称
部材名称 1
部材名称 2
部材名称 3
設計、施工時 施工手順 打設ロット
設計時 品質管理基準情報 規格(設計基準強度)コンクリート体積
施工時 圧縮強度(目標)
単位重量
単位水量
コンクリート温度
打設時外気温
スランプ
塩化物含有量
空気量
コンクリート引き渡し時の
品質試験結果
セメント種類
セメント生産者
細骨材種類
細骨材産地
細骨材配合量
粗骨材種類
粗骨材産地
粗骨材配合量
粗骨材最大寸法
混和剤種類
混和剤商品名
混和剤配合量
プラント名
製造業者名
備考
ファイル添付
(試験成績書等)
ファイルリンク
維持管理 桟橋基本情報 桟橋管理番号
点検履歴情報 点検時期
点検業務名
点検業者
点検区分
点検対象部材
損傷種別情報 損傷の種類
損傷程度
対策区分の判定
健全度の診断
損傷状況情報 損傷図
損傷写真
補修・補強履歴情報 補修時期
補修対象部材
補修工法
備考
点検台帳等添付 ファイルリンク
くろまる鉄筋
第 8 編 10
工程 属性種別 属性名称
設計時 部材情報 ID
構造物名称
部材名称 1
部材名称 2
部材名称 3
鉄筋番号
設計時、施工時 施工手順 ロット
設計時 数量情報 規格(材質)
鉄筋径
鉄筋単位重量
鉄筋質量
吊鉄筋・吊バー本数
吊鉄筋質量
吊バー質量
施工時 鉄筋引渡し時の品
質試験結果(ミルシ
ート情報)
降伏点
引張強度
伸び
曲げ性
製鉄業者名
製造日
鉄鋼番号
備考
ファイル添付
(ミルシート等)
ファイルリンク
維持管理時 桟橋基本情報 桟橋管理番号
点検履歴情報 点検時期
点検業務名
点検業者
点検区分
点検対象部材
損傷種別情報 損傷の種類
損傷程度
対策区分の判定
健全度の診断
損傷状況情報 損傷図
損傷写真
補修・補強履歴情報補修時期
補修対象部材
補修工法
備考
点検台帳等添付 ファイルリンク
くろまる鋼杭
工程 属性種別 属性名称
設計、施工時 部材情報 ID(杭番号)
施工時 鋼杭情報 種別
製鉄業者名
製品名
設計、施工時 継手有無・継手位置
杭打設工法
杭先端処理工法
外径
長さ
厚さ
鋼管材質
ファイル添付
(試験成績書等)
ファイルリンク
維持管理時 桟橋基本情報 管理番号
点検履歴情報 点検時期
点検業務名
点検業者
点検区分
点検対象部材
損傷種別情報 損傷の種類
損傷程度
対策区分の判定
健全度の診断
損傷状況情報 損傷図
損傷写真
補修・補強履歴情報 補修時期
補修対象部材
補修工法
備考
点検台帳等添付 ファイルリンク
第 8 編 11
施工
発注者との事前協議結果をふまえ、施工段階で更新した BIM/CIM モデルに各種の施工段階の属性
情報を付与する。
属性情報は、事業の進捗に沿って属性項目を登録する段階(設計、施工、維持管理)が異なること
から、順次、BIM/CIM モデルを引き継いだ段階毎に属性を付与する。
施工段階では、国土交通省港湾局の港湾工事共通仕様書に基づき、表 3 に記載する品質記録等を
図 2 のような流れで登録することを基本とするが、付与属性の詳細や付与方法については、発注者
との事前協議により決定する。
モデルに属性情報を付与する項目によっては、設計段階で作成した 3 次元モデルを更新する必要
があるため、早期の段階で付与する項目や納品形態等を発注者と協議することが望ましい。
図 2 施工中の属性情報付与の流れ(例)
第 8 編 12
2 測量及び地質・土質調査
測量段階では、設計段階で作成する地形モデルの基となる 3 次元データを取得する。また、地質・
土質調査段階では、モデルを作成する時点までに行った成果を基に、地質・土質モデルを作成するこ
とを基本とする。
【解説】
測量段階では、測量精度が必要とされる範囲を対象とし、設計段階で作成する地形モデルの基となる
3 次元データを取得する。
地質・土質調査段階では、モデルを作成する時点までに行った成果を基に、地質・土質モデルを作成
することを基本とする。なお、地質・土質モデルを活用する目的・用途を踏まえ、モデルの精度向上の
ために追加の地質・土質調査について、必要に応じて計画・実施することに留意する。
第 8 編 13
2.1 測量成果(3 次元データ)作成指針
国土交通省が発注する港湾事業の公共測量業務(航空レーザ測量、空中写真測量、路線測量、現
地測量)において、それぞれの測量手法について規定・マニュアルにて定める成果物に加え、3 次
元データを作成する。
【解説】
測量段階で受注者が作成を行う港湾分野における 3 次元データの例を次表に示す。
表 4 測量段階で作成する 3 次元データ【港湾施設】
項目 港湾施設用測量
地形名称 港湾施設周辺細部地形
測量手法
既成成果
TS 測量、UAV 写真測量、地上レーザ測量、車載写真レーザ測量、
UAV レーザ測量、航空レーザ測量 (注記)1
マルチビーム測量 (注記)5
作成範囲 受発注者間協議にて定めた範囲
作成対象 地表面 周辺地物(建物等) 海底地形面
変換後の
幾何モデル
3 次元点群データ オルソ画像
ポイント、ポリゴン、
サーフェス、ソリッド
3 次元点群データ
地図情報レベル
(測量精度)
地図情報レベル 250、500 (注記)2 -
点密度
(分解能)
4 点/m2以上
(高密度範囲
100 点/m2以上)
(注記)4
地上画素寸法
0.1m 以内
(注記)3
(注記)8
1.0m 平面格子に
3 点以上
(注記)5,6
保存形式 CSV TIFF+ワールドファイル (注記)8 CSV (注記)6
保存場所
/SURVEY/CHIKEI
/DATA
(注記)4,7
/SURVEY/CHIKEI
/DATA
(注記)7
(注記)8
/SURVEY/CHIKEI
/DATA
(注記)7
要領基準等
(注記)1 :UAV 等を用いた公共測量実施要領
(注記)2 :設計業務等共通仕様書
(注記)3 :国土交通省公共測量作業規程 第 395 条
(注記)4 :国土交通省公共測量作業規程 第 532 条
(注記)5 :マルチビームを用いた深浅測量マニュアル(浚渫工編)
(注記)6 :3次元データを用いた出来形管理要領(浚渫工編)
(注記)7 :BIM/CIM モデル等電子納品要領(案)及び同解説 港湾編
補足
(注記)1 :「UAV 等を用いた公共測量」が実施となった場合には、詳細は、本ガイドライン第 5 編道路編「2
測量及び地質・土質調査」を参照。
(注記)8 :地物は設計又は施工上のコントロールとして必要な場合には、測量時に取得し、3 次元形式にて保
存する。ただし、その表現方法や保存形式については、今後検証を行いながら定める。
第 8 編 14
2.2 地質・土質モデル作成指針
設計、施工等に必要な地質・土質調査を実施するとともに、受発注者協議において決定した内容
に基づき、地質・土質モデルを作成する。
【解説】
受発注者協議では、モデルを作成する時点までに行った地質・土質調査の成果とともに、以降に示
す地質・土質モデルの活用目的と作成指針を参考に、地質・土質モデルの作成有無・作成範囲、作成
対象のモデル、保存形式を決定するものとし、必要に応じて作成対象とするモデル種別を協議・選定
する。
地質・土質モデルの活用目的
各段階の地質・土質調査の目的・内容と、地質・土質モデルの主な活用目的を表 5 に示す。
各段階で利用可能な BIM/CIM モデル、地質・土質モデルを 3 次元空間に配置することで、相互の
位置関係の把握が容易になり関係者協議の円滑化が期待できるとともに、各段階の地質・土質上の
課題を関係者間で共有する等を講じることで、対策検討に関わる意志決定の迅速化等の効果が期待
できる。
第 8 編 15
表 5 地質・土質モデルの活用目的【港湾施設】
段階
地質・土質調査の目的・内容
地質・土質モデルの作成目的
目的 内容
測量
地質調査
・港湾施設整備区域の
地形特性及び地盤を
構成する地層の性状
等の設計・施工にお
いて必要な情報の取得・資料調査
・現地踏査
・ボーリング調査
・サウンディング試験
・その他の原位置試験
・土質試験 等
・3次元視覚化による地質リスク(注記)の把握
予備・
基本設計
・港湾施設の構造形式
を決定するために必
要な設計条件(地層
構成、地盤係数等)
や施工条件等の明確化・現地の状況等をふまえ、
上記のうち必要な事項に
ついて実施。
・3次元視覚化による設計・施工時に
おける地盤と港湾施設の位置関係
や、基礎構造と支持層との関係の
明確化
・設計計算(解析)用モデルの作成
・関係者間協議用の資料としての活用施工
・設計条件の妥当性の
確認、施工時や完成
後の維持管理等に必
要な地質情報の取得
・必要に応じて、上記の地
質・土質調査や土質試験
(ボーリング調査及び原
位置試験等)の補足、施
工中における掘削面観
察、基礎(杭・矢板)打
設状況の確認等を実施
・地質リスク(注記)
の把握による追加調査
の提案や、施工時の安全確保
・3次元視覚化による設計・施工時に
おける地盤と港湾施設の位置関係
や、基礎構造と支持層との関係の
明確化による施工性の向上
・施工計画立案、施工管理資料とし
ての活用
・関係者間協議用、住民説明の資料
としての活用
維持管理
・港湾施設の安全性の
確認を行う場合や、
維持補修等のための
工事を行う場合に、
必要な地質情報の取得・建設後もしくは供用中で
あることに伴い、調査手
法や調査箇所の制約があ
るため、建設当時の調
査・試験資料を充分に活
用するとともに、これま
での計測データ、建設前
と現在までの変化等もふ
まえて地質・土質状況を
評価した上で、必要に応
じて地質・土質調査を実施・維持管理計画立案、維持管理資料
としての活用
・災害や老朽化等により港湾施設に
変状や劣化が発生した場合の原因
究明や調査・計測計画検討、対策
工検討の基礎資料としての活用
・関係者間協議用の資料の活用
(注記) 地質リスク:局所的な軟弱層の存在、基盤層の複雑な深度変化等の地質的要因に起因する設計・施工上のリスク。
第 8 編 16
地質・土質モデルの作成指針
港湾分野における地質・土質モデルの作成指針を次に示す。
地質・土質モデルは、
モデルを作成する時点までに行った地質・土質調査の成果を基に作成する。
作成した地質・土質モデルには推定を含むことや、設計・施工段階へ引き継ぐべき地質・土質上
の課題について、
「BIM/CIM モデル作成 事前協議・引継書シート」へ必ず記録し、継承するものと
する。
表 6 地質・土質のモデル作成指針【港湾施設】
段階 作成素材 作成モデル 種別 備考
測量
地質調査
及び
予備・
基本設計
・ボーリング柱状図
・ボーリング
モデル
調査結果モデル
掘削位置/方位角/掘削角等、
正しく表示可能なモデルとす
る。
・地質(平面)図
・空中写真判読図
・準3次元地盤
モデル
テクスチャモデル
(準3次元地質平面図)地質平面図モデルには、空中
写真判読結果も表示する
・地質縦断図
・物理探査結果
・地形モデル
・法線
・準3次元地盤
モデル
準3次元地質断面図
モデル
(注記)縦断図
縦断図を貼り付ける断面は、
法線を通る鉛直面とする。各
断面図モデルには、必要に応
じて物理探査結果も併せて表
示する。
・地質横断図
・地形モデル
・法線
・準3次元地盤
モデル
準3次元地質断面図
モデル
(注記)横断図
法線を通る鉛直面に対して、
直交する鉛直面とする。
必要に応じて物理探査結果も
併せて表示する。
施工 追加調査等を実施した場合、必要に応じてモデルを更新する。
維持管理 追加調査等を実施した場合、必要に応じてモデルを更新する。
図 3 地質・土質モデル(海底:地質縦断図モデル)の作成例
第 8 編 17
3 設計
3.1 BIM/CIM モデル作成指針
受注者は、発注者との事前協議結果をふまえ、BIM/CIM モデルを作成する。
BIM/CIM モデル共通の考え方は、
「BIM/CIM 活用ガイドライン(案)共通編」
「第 1 章 総論」
「2 共通事
項」を参照。
3.1.1 BIM/CIM モデルの基本的な考え方(モデル作成対象)
作成する BIM/CIM モデルは、線形(構造物法線等)
、地形、港湾構造物(基礎工、本体工、被覆・
根固工、上部工、付属工、消波工、裏込・裏埋工、土工、舗装工等)
、仮設構造物、地質・土質、及
びそれらを統合したモデルとする。加えて、施設計画高、潮位等、設計に関わる基本的な重要事項は
明記するものとする。
【解説】
港湾施設の BIM/CIM モデルは、図 4 に示すように、大きく「地形(現況)の BIM/CIM モデル」、「港
湾構造物(計画)の BIM/CIM モデル」を基本に構成される。
受注者は、BIM/CIM モデルとして個々のモデルだけではなく、モデル全体を統合する統合モデルを
作成する。
統合モデルは、
関係者協議、
施工計画検討、
景観検討等に活用する。
統合モデルとしては、
従来(2 次元 CAD)の全体一般図等に示される程度を BIM/CIM モデル化する。
また、港湾管理用基準面 C.D.L.と T.P.との関係を明記し、複数の BIM/CIM モデルを統合する場合
に整合性がとれるように作成する。
図 4 港湾施設 CIM モデルの構造例
港湾構造物(計画)の BIM/CIM モデル
3 次元形状データ:港湾施設形状(位置、高さ等)
付与する属性:材料諸元、付属設備の種類・諸元等
計画範囲
地形(現況)の BIM/CIM モデル
3 次元形状データ:地形(海底)形状(位置、標高等)
付与する属性:位置情報
第 8 編 18
統合モデルは、表 7 に示す複数のモデルで構築される。
表 7 港湾施設 CIM モデルの構造
No. 統合モデルの構造 備考
1 A.線形 構造物法線、道路線形
2 B.地形
国土地理院・基盤地図情報(数値標高モデル)5mメッシ
ュ(標高)、10mメッシュ(標高)
3次元点群データ
実測平面図(1/100〜1/2500相当)
深浅測量結果
3 C.地質・土質
ボーリングデータ、地質調査結果(柱状図)
、地質平面
図・縦断図・横断図4D.構造物 設計対象構造物
E.仮設構造物 仮設構造物
「地方整備局
(港湾空港関係)
の事業における電子納品等運用ガイドライン
【資料編】」および
「CAD
製図基準」に示される現行(2 次元)設計成果物と BIM/CIM モデルの関係を表 8 に示す。
表 8 現行(2 次元)設計成果物と BIM/CIM モデルの関係
設計項目 成果物 縮尺 モデル
設計図
位置図 1:2500〜1:50000 A.線形、B.地形
全体平面図 1:500〜1:1000 A.線形
縦断図
V=1:50〜1:100
H=1:200〜1:1000
C.地質・土質、D.構造物
標準断面図 1:50〜1:200
A.線形、B.地形、C.地質・土質、
D.構造物
横断図 1:50〜1:100 D.構造物
本体工一般図 1:100〜1:1000 D.構造物
本体工構造詳細図 1:20〜1:200 D.構造物
基礎工詳細図 1:20〜1:200 D.構造物
付帯工詳細図 1:20〜1:200 D.構造物
配筋図 1:50〜1:200 D.構造物
土工図 1:100〜1:200 D.構造物
仮設構造物詳細図 1:50〜1:500 E.仮設構造物
第 8 編 19
「地方整備局
(港湾空港関係)
の事業における電子納品等運用ガイドライン
【資料編】」および
「CAD
製図基準」に示される現行(2 次元)成果物を BIM/CIM 成果物とする場合の要件を表 9 に示す。な
お、凡例は以下のとおりである。
【凡例】
にじゅうまる:成果物を構成する幾何形状および属性情報のすべてを BIM/CIM モデルとするもの。
しろまる:成果物を構成する幾何形状および属性情報の一部について BIM/CIM モデルとする必要はない
もの。
ただし、
BIM/CIM モデルとしない場合は 2 次元図面等を参照情報として付与すること。
くろまる:各電子納品等要領に基づき納品するもの。
表 9 現行(2 次元)設計成果物を BIM/CIM 成果物とする場合の要件
設計項目 成果物 縮尺 CIM成果物 適要
設計図
位置図 1:2500〜1:50000 くろまる 緯度経度情報
全体平面図 1:500〜1:1000
にじゅうまる
(詳細度100〜300)
縦断図
V=1:50〜1:100
H=1:200〜1:1000
にじゅうまる
(詳細度200〜300)
標準断面図 1:50〜1:200
にじゅうまる
(詳細度200〜300)
横断図 1:50〜1:100
にじゅうまる
(詳細度200〜300)
本体工一般図 1:100〜1:1000
にじゅうまる
(詳細度200〜300)
本体工構造詳細図 1:20〜1:200 しろまる
基礎工詳細図 1:20〜1:200 しろまる
付帯工詳細図 1:20〜1:200 しろまる
配筋図 1:50〜1:200 しろまる
配筋図は、属性情報と
して扱うことも可能
土工図 1:100〜1:200 しろまる
仮設構造物詳細図 1:50〜1:500 しろまる
数量計算 数量計算書 - くろまる
報告書
設計説明書 - くろまる
設計計算書 - くろまる
施工計画書 - くろまる
第 8 編 20
3.1.2 BIM/CIM モデル作成指針(共通編)
BIM/CIM モデル作成にあたり、施工段階で利用することを念頭においた形状とする。また、維持管
理段階で利用することも考慮して設計値等の属性情報を構築する。
表 10 港湾施設の BIM/CIM モデルの作成指針(共通)
モデル 作成指針
地形モデル
(現況地形、設計条件)
現況地形(海底地形を含む)を表現可能な精度、分解能をもつデータ
(航空レーザ測量、地上レーザ測量、UAV写真測量、マルチビーム測量
等)から作成する。作成した3次元モデルには、使用したデータや作成
方法を明記する。
また、地質条件、土地利用種別、現況構造物、近接構造物、用地境界、
地下埋設物等の設計時における設計条件、重要事項や配慮事項に係る情
報を地形モデルに直接付与又は外部参照としての関連付けを行うことが
望ましい。
作成する範囲は、従来(2次元CAD)の全体一般図等に示される程度をモ
デル化する。
【地形形状】
現況地形モデルは、サーフェス(面 - TIN 形式)
【設計条件、重要事項や配慮事項】
・ラスターデータ(例:航空写真、地質断面図、土地利用区分図等)
・ベクターデータ:ポイント(2次元、3次元)
・ポリライン(2次元、3次元)
・ポリゴン(2次元、3次元)
・サーフェスモデル(メッシュ形式、TIN 形式)又はソリッドモデル
【注意事項(モデルの軽量化)】
地形モデルを詳細に作成しすぎると、操作性が悪くなることがあるた
め、モデル化の範囲、作成レベルを十分に検討して作成する。
地質・土質モデル
地質・土質調査成果に基づき、ボーリングモデル、準3次元地盤モデル
を作成又は更新することが望ましい。
(詳細は 2.2 を参照。)なお、詳細な地質・地盤解析を行う場合等において、3次元地盤モデル
(サーフェスモデル・ボクセルモデル)を作成する場合、入力データ
(座標値を持つ)や使用した地層補間アルゴリズム(及びそのパラメー
タ)等も明記した資料・データも添付する。
【注意事項】
地質・土質モデルは推定を含むモデルであり不確実性を含んでおり、地
質・土質や推定に起因する設計・施工上の課題(地質リスク)や留意事
項は、事前協議・引継書シートに記載して引き継ぐこととする。
構造物モデル
構造物モデルは、BIM/CIMツールや3次元CADソフト等を用い、ソリッド
モデル、又はサーフェスモデルにて作成する。構造物モデルの作成で
は、作成する部材種類が多く、作成範囲が多岐に渡るため、BIM/CIMモ
デルの作成前に、その業務やその後の工事施工段階で必要と想定される
作成範囲、作成レベルについて、予め、受発注者間協議により決定す
る。なお、作成した構造物モデルの単位を明示する。
【周辺構造物等】
周辺構造物等のモデル化は設計条件、施工条件となることから、施工に
影響を及ぼす既設構造物等の近接構造物等は、外形形状がわかる範囲で
可能な限りモデル化を行う。また、作成した周辺構造物モデルには、そ
の形状の根拠となる出典や構造物の概要がわかるように必要な属性項目
を付与する。
第 8 編 21
モデル 作成指針
統合モデル
地形モデル、構造物モデル及び地質・土質モデル等のBIM/CIMモデ
ル、3次元モデルやその他の電子情報(イメージデータ、GISデータ等)
を統合して作成する。
測量基準点
設計時に、測量基準点に関するデータが受領できた場合等は、可能な
限りその位置を統合モデル内に反映する。
施工計画モデル
細部・実施設計において計画された施工手順に沿い、施工の流れが把
握できるように、参考モデルとして施工計画モデルを作成する。
必要に応じ、施工ステップ単位での施工計画モデルを作成する。ま
た、可能な範囲で各施工ステップモデルに時間軸を付与し、施工段階で
関係者への施工説明に活用できる施工シミュレーションモデルを作成す
る。
仮設工モデル
仮設工モデルは、設計段階から施工段階へBIM/CIMモデルを用いて設
計意図の伝達を図る必要がある場合に作成する。
(注記)航路・泊地等(浚渫工事)の水域施設の 3 次元設計モデルの作成については「マルチビームを用いた深
浅測量マニュアル(浚渫工編)(令和 3 年 4 月改定版)」および「3 次元データを用いた出来形管理要領(浚
渫工編)(令和 3 年 4 月改定版)」を参照。
【解説】
しろまる地形モデル(現況地形、設計条件)
【現況地形に用いるデータ】
BIM/CIM モデル作成に利用する地形データは、
当該施設周辺における最新の測量地形データを用い
ることを基本とし、現況地形を表示可能な精度、分解能をもつデータ(航空レーザ測量、地上レーザ
測量、UAV 写真測量、マルチビーム測量等)から作成する。作成した 3 次元モデルには、使用したデ
ータや作成方法を明記する。
また、地質条件、土地利用種別、現況構造物、近接構造物、用地境界、地下埋設物等の設計時にお
ける設計条件、重要事項や配慮事項に係る情報を地形モデルに付与又は外部データとしての関連付
けを行うことが望ましい。
なお、利用する地形データについては、後工程において用いた地形情報の種類を確認できるよう
に出典を明記する。
【地形形状】
現況地形モデルは、施設の設計モデルを作成した後に浚渫工等、数量算出を行う必要があること
から、数量算出を行えるようにサーフェスモデル(面 - TIN)として作成することとする。
【設計条件】
BIM/CIM において全体統合モデルは、2 次元 CAD での全体一般図の使用目的と同じように利用され
るため、全体統合モデル内には、適宜、設計条件に該当する計画モデルを 3 次元 CAD 等により作成
するものとする。
<設計条件モデル例>
 岸壁法線、縦断勾配、横断勾配
 その他(設計段階での情報を基にした給水施設等の埋設物等)
第 8 編 22
しろまる地質・土質モデル
地質・土質調査成果に基づき、
ボーリングモデル、
準 3 次元地盤モデルを作成又は更新することが
望ましい。
(詳細は 2.2 を参照。)なお、詳細な地質・地盤解析を行う場合等において、3 次元地盤モデル(サーフェスモデル・ボク
セルモデル)を作成する場合、入力データ(座標値を持つ)や使用した地層補間アルゴリズム(及び
そのパラメータ)等も明記した資料・データも添付する。
地質データについては、業務遂行上必要とされる部分や、施工段階を考慮した構造物モデルを作
成するための作成範囲やレベルをあらかじめ受発注者間協議により決定し、モデル作成を行う。
<留意事項>
 地質・土質モデルは推定を含むモデルであり不確実性を含んでおり、
地質・土質や推定に起因
する設計・施工上の課題(地質リスク)や留意事項は、事前協議・引継書シートに記載して引
き継ぐこととする。
しろまる構造物モデル
構造物モデルの作成においては、作成する部材種類が多く、作成範囲が多岐に渡るため、BIM/CIM
モデルの作成前に、その業務やその後の工事施工段階で必要と想定される作成範囲、作成レベルに
ついて、あらかじめ、受発注者間協議により決定する。
構造物モデルの作成は、
構造物モデルによる数量計算
(体積計算)
が可能となるようにするため、
また、後工程でモデル修正(モデル分割等)を行いやすくするために、ソリッドモデルで作成するこ
とが望ましい。ただし、現時点では CAD で扱いが容易なサーフェスモデルでの作成も可能である。
構造物モデルは、構造物の設計に一般に用いられる mm(ミリメートル)の精度で作成するものと
する。これは構造物モデル作成時の単位を mm(ミリメートル)に限定するものではなく、単位系を「m(メートル)
系」
として、
小数点以下第 3 位の精度でモデルを作成してもよいことを示している。
ただし、世界測地系で使用する単位系は「m(メートル)系」を規定していることから、構造物モデ
ルを地形モデルや地質・土質モデルに重ね合わせる際に「m(メートル)
」系で座標を合わせる必要が
ある。
また、
同上の理由により構造物モデルは小座標系にて作成し、
地形モデルや地質・土質モデルに重
ね合わせる際には、大座標系に変換する。
構造物モデルを作成する単位は、
作成するソフトウェアに依存するため、
使用したソフトウェア、
バージョン、単位を「BIM/CIM モデル作成 事前協議・引継書シート」に明記する。
構造物モデルの作成においては、BIM/CIM モデルを受領した「施工者」が、オブジェクト名称が無
い場合、そのオブジェクト ID を解読し、構造部材が判るように命名していく作業手間が発生するこ
とが想定されるため、各オブジェクト(ソリッドのグループ)には、そのオブジェクトがどの構造部
材を指し、どの位置にあるものであるのかが判別できるように明記する。
第 8 編 23
オブジェクト名称の付与方法については、技術的には次のやり方が考えられる。
 多くの CAD ソフトで機能がある「画層」を使用
 オブジェクトのプロパティで付けられる「ハイパーリンクの文字列」を使用
構造物モデルにマテリアルデータやテクスチャデータを追加した場合は、そのマテリアルファイ
ル、テクスチャファイルの使い方を含め、データを併せて納品する。
図 5 構造物モデルのイメージ
【周辺構造物等】
本体構造物の形状決定の条件となる周辺構造物は、
設計条件、
施工条件となる。
これは施工段階に
おける施工計画においても認識を漏れなくするためにも、位置や形状把握は必要であり、設計段階
で得られた周辺構造物等に関する情報(形状、属性項目、位置)は、できる限りモデル化を行うもの
とする。
施工段階において、試掘等による施工前調査(事前測量等)により確認を行った結果、周辺構造物
等の補正や修正が必要となるときは施工段階においてこれを補正し、維持管理段階へ引き継ぐもの
とする。
<留意事項>
 給水施設等の埋設物、
既設構造物等については、
設計条件として、
設備設計に使用したモデル
を取り込み統合することが望ましい。
 設計段階では、周辺構造物は、1既設構造物の既存図面、2市販されている 3 次元モデル、3
レーザスキャナ等による測量成果、
入手できているデータを用いて 3 次元モデルを作成する。
特に周辺構造物との干渉が考えられる場合は、統合モデルに点群データ等の 3 次元形状モデ
ルを加えると、干渉を確認でき効果的である。
 作成した周辺構造物モデルには、
属性項目として出典情報の登録を行うが、
その項目種別はそ
れぞれ異なることから、必要な属性項目を受発注者協議により設定し、登録を行うものとす
る。
第 8 編 24
しろまる統合モデル
地形モデル、構造物モデル及び地質・土質モデル等の BIM/CIM モデル、3 次元モデルやその他の電
子情報(イメージデータ、GIS データ等)を統合して作成する。
【測量基準点】
測量基準点は、工事施工を実施する際には必須となる情報であり、設計段階で施工段階において
使用する測量基準点がわかる場合は、可能な限り全体モデル内に反映するものとする。
<留意事項>
 測量基準点の位置が、
全体モデル内の地形モデル範囲内にある場合は、
その位置を反映する。
ただし、全体モデル内の地形モデル範囲外となる場合には位置情報を BIM/CIM モデルに取込
み、測量基準点反映のために地形モデル範囲を拡大する等の必要はないものとする。
 作成した測量基準点モデルには、必要な属性情報(基準点名、座標、出典等)を付与するもの
とする。
【施工計画】
施工段階では、
施工着手前に、
関係者をはじめ施工業者内作業員への安全教育の一環として、
工事
の全体把握を目的にした施工計画の概要説明が行われる。
施工着手当初では、設計段階で作成された 3 次元モデルを利用して、施工手順説明を行うための
対応は負担が大きいことから、
予め、
設計段階において施工シミュレーションモデルを用意し、
施工
段階での BIM/CIM の活用を図りやすくする。
<留意事項>
 型枠や足場等は、
細部・実施設計での施工計画において変更があると施工ができなくなる等の
クリティカルな計画がある場合などに必要に応じて作成する。
 分割施工やコンクリート打設ステップ等の設計時に計画した手順については、施工時に補正、
追加等が行われることが多いことから、
設計段階で作成する施工モデルでは、
受発注者協議等
により、必要に応じて参考モデルとして作成する。
図 6 施工シミュレーションモデルのイメージ
第 8 編 25
3.1.3 BIM/CIM モデル作成指針(係留施設:桟橋)
BIM/CIM モデル作成にあたり、施工段階で利用することを念頭に置いた形状とする。また、維持管理
段階で利用することも考慮して設計値等の属性情報を構築する。
表 11 港湾施設の BIM/CIM モデルの作成指針(桟橋)
モデル 作成方針
本体工
本体工は、外形形状のモデルを作成する。構成部材は、細部・実施設計で
計画された数量計算結果と同等の値を得られる精度のモデルとする。
上部工
コンクリート
コンクリート構造物は、外形形状のモデルを作成する。外形形状について
は、細部・実施設計で計画された数量計算結果と同等の値を得られる精度
のモデルとする。
鉄筋
鉄筋モデルは、主に「干渉チェック」を目的として過密配筋部等を中心に
必要に応じて作成する。
付属工
防舷材
防舷材は、鉄筋との干渉チェックを目的として、アンカー部分を含めて外
形形状をモデル化することを基本とする。
係船柱・車止め
係船柱は、鉄筋との干渉チェックを目的として、アンカー部分を含めて外
形形状をモデル化することを基本とする。
電気防食 電気防食は、外形形状のモデルを作成する。
舗装工
舗装工は、外形形状のモデルを作成する。外形形状については、細部・実
施設計で計画された数量計算結果と同等の値を得られる精度のモデルとす
る。
給水管等のその他構造物
給水管等のその他構造物は、コンクリートモデルと同様に外形形状のモデ
ルを作成する。
【解説】
しろまるコンクリート(上部工)
 施工段階において、3 次元データを利用した形状計測、クリアランス計測、コンクリート数量
算出等の参考データとして利用できるように、外形形状を正しくモデル化することに重点を
置く。
 コンクリート部材の分割施工、打設ロット毎のモデル化の分割等、施工を意識したモデル化
は、
施工段階でモデルへの追加対応することを基本として、
設計段階での実施については受発
注者間にて協議することとする。
第 8 編 26
しろまる鉄筋(上部工)
 施工が困難とされる過密配筋部の鉄筋干渉チェック、鉄筋と仮設架台干渉チェックなどを目
的としていることから、
モデル化の範囲は過密部配筋等の範囲に限定した。
ただし、
設計段階
で作成する配筋モデルの作成範囲については受発注者間にて協議することとする。
 現状では、2 次元設計図の内容を BIM/CIM モデルに反映して干渉チェックを行うこと、また施
工段階での継手方法を指定することになるため、鉄筋継手については継手部の位置を簡易な
モデル(マーク表記可)で表現できるものとし、継手の種別(重ね継手、圧接継手、機械式継
手など)を属性情報として付与するものとする。
<留意事項>
 図 7 に示すように、過密配筋部の詳細をわかりやすくするために、主鉄筋・配力筋等、種別
ごとに色分け等を行うとよい。
図 7 モデルのイメージ(鉄筋:上部工)
しろまる付属工、その他構造物
 設計段階では標準的な外形形状のモデル化を行い、施工段階および維持管理段階に必要な仕
様や諸元などを属性情報として付与する。
<留意事項>
 施工段階では、2 次製品についてはメーカーからのデータ提供があればモデルに反映し、形状
精度を高めることが望ましい。
しろまるエプロン(舗装工)
 エプロンは目地位置のわかる外形形状をモデル化することを基本とするが、設計の段階によ
って、作成レベルをあらかじめ受発注者間にて協議することとする。
第 8 編 27
3.1.4 BIM/CIM モデル作成指針(係留施設:矢板式係船岸)
BIM/CIM モデル作成にあたり、
施工段階で利用することを念頭に置いた形状とする。
また、
維持管
理段階で利用することも考慮して設計値等の属性情報を構築する。
表 12 港湾施設の BIM/CIM モデルの作成指針(矢板式係船岸)
モデル 作成方針
基礎工
基礎工は、外形形状のモデルを作成する。外形形状については、天端幅と
勾配のわかる形状とし、細部・実施設計で計画された数量計算結果と同等
の値を得られる精度のモデルとする。
本体工
本体工は、外形形状のモデルを作成する。構成部材は、細部・実施設計で
計画された数量計算結果と同等の値を得られる精度のモデルとする。
上部工
コンクリート
コンクリート構造物は、外形形状のモデルを作成する。外形形状について
は、細部・実施設計で計画された数量計算結果と同等の値を得られる精度
のモデルとする。
鉄筋
鉄筋モデルは、主に「干渉チェック」を目的として過密配筋部等を中心に
必要に応じて作成する。
付属工
防舷材
防舷材は、鉄筋との干渉チェックを目的として、アンカー部分を含めて外
形形状をモデル化することを基本とする。
係船柱・車止め
係船柱は、鉄筋との干渉チェックを目的として、アンカー部分を含めて外
形形状をモデル化することを基本とする。
電気防食 電気防食は、外形形状のモデルを作成する。
裏込工・裏埋工
裏込工・裏埋工は、外形形状のモデルを作成する。外形形状については、
細部・実施設計で計画された数量計算結果と同等の値を得られる精度のモ
デルとする。
舗装工
舗装工は、外形形状のモデルを作成する。外形形状については、細部・実
施設計で計画された数量計算結果と同等の値を得られる精度のモデルとす
る。
給水管等のその他構造物
給水管等のその他構造物は、コンクリートモデルと同様に外形形状のモデ
ルを作成する。
【解説】
しろまる洗掘防止材(基礎工)
 洗掘防止材はモデル化することを基本とするが、
厚みの表現は必須としない。
必要な属性情報
を付与する。
第 8 編 28
しろまるコンクリート(上部工)
 施工段階において、3 次元データを利用した形状計測、クリアランス計測、コンクリート数量
算出等の参考データとして利用できるように、外形形状を正しくモデル化することに重点を
置く。
 コンクリート部材の分割施工、打設ロット毎のモデル化の分割等、施工を意識したモデル化
は、
施工段階でモデルへの追加対応することを基本として、
設計段階での実施については受発
注者間にて協議することとする。
しろまる鉄筋(上部工)
 施工が困難とされる過密配筋部の鉄筋干渉チェック、鉄筋と仮設架台干渉チェックなどを目
的としていることから、
モデル化の範囲は過密部配筋等の範囲に限定した。
ただし、
設計段階
で作成する配筋モデルの作成範囲については受発注者間にて協議することとする。
 現状では、2 次元設計図の内容を BIM/CIM モデルに反映して干渉チェックを行うこと、また施
工段階での継手方法を指定することになるため、鉄筋継手については継手部の位置を簡易な
モデル(マーク表記可)で表現できるものとし、継手の種別(重ね継手、圧接継手、機械式継
手など)を属性情報として付与するものとする。
しろまる鋼管杭・鋼管矢板(本体工)
 鋼管杭・鋼管矢板は、
継手も含めて細部・実施設計で計画された数量計算結果と同等の値を得
られる精度のモデルとし、控工は、腹起とタイ材の位置を正確にモデル化する。
 部材の情報は属性情報として付与する。
<留意事項>
 図 8 に示すように、腹起材取付に使用するボルト・ナット等の部材は標準設計仕様のためモ
デル化しないことを基本とするが、業務遂行上必要と想定される場合は受発注者間にて協議
することとする。
図 8 モデルのイメージ(鋼管杭・腹起材:本体工)
第 8 編 29
しろまる吸出し防止材(裏込工)
 吸出し防止材はモデル化することを基本とするが、
厚みの表現は必須としない。
必要な属性情
報を付与する。
しろまるエプロン(舗装工)
 エプロンは目地位置のわかる外形形状をモデル化することを基本とするが、設計の段階によ
って、作成レベルをあらかじめ受発注者間にて協議することとする。
しろまる付属工、その他構造物
 設計段階では標準的な外形形状のモデル化を行い、施工段階および維持管理段階に必要な仕
様や諸元などを属性情報として付与する。
<留意事項>
 施工段階では、2 次製品についてはメーカーからのデータ提供があればモデルに反映し、形状
精度を高めることが望ましい。
第 8 編 30
3.1.5 BIM/CIM モデル作成指針(係留施設:重力式係船岸)
BIM/CIM モデル作成にあたり、施工段階で利用することを念頭に置いた形状とする。また、維持管
理段階で利用することも考慮して設計値等の属性情報を構築する。
表 13 港湾施設の BIM/CIM モデルの作成指針(重力式係船岸)
モデル 作成方針
基礎工
基礎工は、外形形状のモデルを作成する。外形形状については、天端幅と
勾配のわかる形状とし、細部・実施設計で計画された数量計算結果と同等
の値を得られる精度のモデルとする。
本体工
本体工は、外形形状のモデルを作成する。構成部材は、細部・実施設計で
計画された数量計算結果と同等の値を得られる精度のモデルとする。
被覆・根固工
被覆・根固工は、外形形状のモデルを作成する。外形形状については、天
端幅と勾配のわかる形状とし、細部・実施設計で計画された数量計算結果
と同等の値を得られる精度のモデルとする。
上部工 コンクリート
コンクリート構造物は、外形形状のモデルを作成する。外形形状について
は、細部・実施設計で計画された数量計算結果と同等の値を得られる精度
のモデルとする。
付属工
防舷材
防舷材は、鉄筋との干渉チェックを目的として、アンカー部分を含めて外
形形状をモデル化することを基本とする。
係船柱・車止め
係船柱は、アンカー部分を含めて外形形状をモデル化することを基本とす
る。
裏込工・裏埋工
裏込工・裏埋工は、外形形状のモデルを作成する。外形形状については、
細部・実施設計で計画された数量計算結果と同等の値を得られる精度のモ
デルとする。
舗装工
舗装工は、外形形状のモデルを作成する。外形形状については、細部・実
施設計で計画された数量計算結果と同等の値を得られる精度のモデルとす
る。
給水管等のその他構造物
給水管等のその他構造物は、コンクリートモデルと同様に外形形状のモデ
ルを作成する。
(注記)係留施設(重力式係船岸)の被覆・根固工の 3 次元設計モデルの作成については「ICT 機器を用いた測量
マニュアル(ブロック据付工編)
(令和 2 年 4 月版)
」を参照 。
(注記)係留施設(重力式係船岸)の基礎捨石工(捨石投入)におけるマルチビームを用いた数量算出方法につ
いては「3次元データを用いた港湾工事数量算出要領(基礎工編)
(令和 2 年 4 月版)
」を参照 。
【解説】
しろまる洗掘防止材(基礎工)
しろまる摩擦増大マット(本体工)
 洗掘防止材、摩擦増大マットはモデル化することを基本とするが、厚みの表現は必須としな
い。必要な属性情報を付与する。
第 8 編 31
しろまるコンクリート(本体工・上部工)
 施工段階において、3 次元データを利用した形状計測、クリアランス計測、コンクリート数量
算出等の参考データとして利用できるように、外形形状を正しくモデル化することに重点を
置く。
 コンクリート部材の分割施工、打設ロット毎のモデル化の分割等、施工を意識したモデル化
は、
施工段階でモデルへの追加対応することを基本として、
設計段階での実施については受発
注者間にて協議することとする。
<留意事項>
 ケーソンは、
蓋コンクリートや中詰材もモデル化するが、
配筋については他の構造物との干渉
がなく過密配筋でない場合は、モデル作成は基本的には行わず、従来どおりの 2 次元の配筋
図で適用可能とする。ただし、吊鉄筋や曳航筋設置箇所については必要に応じてモデル化す
る。
しろまるブロック(被覆・根固工)
 ブロックは、天端幅と勾配のわかる全体の外形形状をモデル作成する。
<留意事項>
 個々に作成配置するとデータ容量が過大になるため、
全体形状
(天端幅と勾配)
がわかるモデ
ルを作成する。
ただし、
設計や表現目的に応じて BIM/CIM モデルを作成することに留意する。
しろまる目地板・吸出し防止材(裏込工)
 目地板・吸出し防止材はモデル化することを基本とするが、
厚みの表現は必須としない。
必要
な属性情報を付与する。
図 9 モデルのイメージ(目地材・吸出し防止材:裏込工)
第 8 編 32
しろまるエプロン(舗装工)
 エプロンは目地位置のわかる外形形状をモデル化することを基本とするが、設計の段階によ
って、作成レベルをあらかじめ受発注者間にて協議することとする。
しろまる付属工、その他構造物
 設計段階では標準的な外形形状のモデル化を行い、施工段階および維持管理段階に必要な仕
様や諸元などを属性情報として付与する。
<留意事項>
 施工段階では、2 次製品についてはメーカーからのデータ提供があればモデルに反映し、形状
精度を高めることが望ましい。
図 10 モデルのイメージ(防舷材・係船曲柱・車止め:付属工)
第 8 編 33
3.1.6 BIM/CIM モデル作成指針(外郭施設:重力式防波堤)
BIM/CIM モデル作成にあたり、施工段階で利用することを念頭に置いた形状とするとともに、維持
管理段階で利用することも考慮して設計値等の属性情報を構築する。
表 14 港湾施設の BIM/CIM モデルの作成指針(重力式防波堤)
モデル 作成方針
基礎工
基礎工は、外形形状のモデルを作成する。外形形状については、天端幅と
勾配のわかる形状とし、細部・実施設計で計画された数量計算結果と同等
の値を得られる精度のモデルとする。
本体工
本体工は、外形形状のモデルを作成する。構成部材は、細部・実施設計で
計画された数量計算結果と同等の値を得られる精度のモデルとする。
被覆・根固工
被覆・根固工は、外形形状のモデルを作成する。外形形状については、天
端幅と勾配のわかる形状とし、細部・実施設計で計画された数量計算結果
と同等の値を得られる精度のモデルとする。
上部工 コンクリート
コンクリート構造物は、外形形状のモデルを作成する。外形形状について
は、細部・実施設計で計画された数量計算結果と同等の値を得られる精度
のモデルとする。
消波工
消波工は、外形形状のモデルを作成する。外形形状については、天端幅と
勾配のわかる形状とする。
(洗掘防止材含む)
その他構造物
その他構造物は、コンクリートモデルと同様に外形形状のモデルを作成す
る。
(注記)外郭施設(重力式防波堤)の被覆・根固工、消波工の 3 次元設計モデルの作成については「ICT 機器を用
いた測量マニュアル(ブロック据付工編)
(令和 2 年 4 月版)
」を参照 。
(注記)外郭施設(重力式防波堤)の基礎捨石工(捨石投入)におけるマルチビームを用いた数量算出方法につ
いては「3次元データを用いた港湾工事数量算出要領(基礎工編)
(令和 2 年 4 月版)
」を参照 。
【解説】
しろまる洗掘防止材(基礎工)
しろまる摩擦増大マット(本体工)
 洗掘防止材、摩擦増大マットはモデル化することを基本とするが、厚みの表現は必須としな
い。必要な属性情報を付与する。
しろまるコンクリート(本体工・上部工)
 施工段階において、3 次元データを利用した形状計測、クリアランス計測、コンクリート数量
算出等の参考データとして利用できるように、外形形状を正しくモデル化することに重点を
置く。
 コンクリート部材の分割施工、打設ロット毎のモデル化の分割等、施工を意識したモデル化
は、
施工段階でモデルへの追加対応することを基本として、
設計段階での実施については受発
注者間にて協議することとする。
第 8 編 34
<留意事項>
 ケーソンは、
蓋コンクリートや中詰材もモデル化するが、
配筋については他の構造物との干渉
がなく過密配筋でない場合は、モデル作成は基本的には行わず、従来どおりの 2 次元の配筋
図で適用可能とする。ただし、吊鉄筋や曳航筋設置箇所については必要に応じてモデル化す
る。
しろまるブロック(被覆・根固工)
しろまる消波ブロック(消波工)
 ブロックは、天端幅と勾配のわかる全体の外形形状をモデル作成する。
<留意事項>
 図 11 に示すように、個々に作成配置するとデータ容量が過大になるため、全体形状(天端幅
と勾配)
がわかるモデルを作成する。
ただし、
設計や表現目的に応じて BIM/CIM モデルを作成
することに留意する。
図 11 モデルのイメージ(ブロック:被覆・根固工)
第 8 編 35
しろまる洗掘防止材(消波工)
 洗掘防止材はモデル化することを基本とするが、
厚みの表現は必須としない。
必要な属性情報
を付与する。
しろまるその他構造物
 設計段階では標準的な外形形状のモデル化を行い、施工段階および維持管理段階に必要な仕
様や諸元などを属性情報として付与する。
<留意事項>
 施工段階では、2 次製品についてはメーカーからのデータ提供があればモデルに反映し、形状
精度を高めることが望ましい。
第 8 編 36
3.2 設計における BIM/CIM モデルの活用例
設計段階では、前工程から引き継がれた BIM/CIM モデルを更新または新たに BIM/CIM モデルを作
成し、この BIM/CIM モデルを活用して設計業務の効率化・高度化に取り組むものとする。
【解説】
BIM/CIM モデルを活用して設計業務の効率化・高度化に取り組むことを推奨する「活用項目」につ
いて、港湾施設の設計における一般的な照査フローや『港湾請負工事積算基準(第 2 部 第 1 編 設計
業務等)
』に基づき各設計業務内容から選定し事例として記載した。
この「活用項目」では、従来の 2 次元情報に基づき行っていた設計業務における照査・確認業務の
うち BIM/CIM モデルを活用して形状情報を立体的に把握し、また、関連する情報を属性情報等として
付与することで情報の利活用性を向上させ、高度化、効率化が図られることが期待される項目を港湾
施設の一般的な設計照査内容等を参考に設定し
「確認内容」
として選定し、
その際に活用する BIM/CIM
モデルの要件を目安として整理している。
なお、記載している事例は活用を推奨しているものであること、また、活用する BIM/CIM モデルの
要件については目安であることに留意し、必要に応じて受発注者間で事前協議等を行うものとする。
第 8 編 37
港湾施設の設計段階における BIM/CIM モデルの活用事例を以下に示す。
【解説】
港湾施設の設計における一般的な照査フロー、
「港湾土木請負工事積算基準(第 2 部 第 1 編 設計業
務等)
」の細部設計フロー、
「地方整備局(港湾空港関係)の事業における電子納品等運用ガイドライン
【資料編】」「CAD 製図基準」に示される成果物および、
「BIM/CIM モデルの関係」を次に示す。
(注記)図中の
【港湾施設の細部設計フロー】
の業務内容のうち着色したものについて、
以下に
「活用項目」
として事例を記載している。
設計業務を実施する中で BIM/CIM モデルを作成又は更新するとともに、従来の設計業務における確認
作業を効率化・高度化するために BIM/CIM モデルを活用する。
第 8 編 38
図 12 設計照査フロー、細部設計フロー・成果物および、BIM/CIM モデルの関係
設計計算書,設計図
照 査 3
現 地 踏 査
調 査 員 条件等指示
成果品の照査
条件等打合せ 照査計画の策定
照査項目一覧表
照査状況の把握 報告1(基本条件照査)
照査項目一覧表
一般図作成
照 査 2
発 注 者 受 託 者
契 約
照査技術者
業務計画書(照査計画を含む)
照査計画
照 査 1 基本条件の照査 照査技術者
細部条件、
構造細目の照査
照査技術者
照査項目一覧表、設計調書
調 査 員 照査状況の把握 報告2(細部条件、構造物細目の照査)
照査項目一覧表、設計調書
設計計算書
詳細図作成
数 量 計 算
施 工 計 画
成果品提出・検査
受託者が実施する照査関連事項
主任調査員
総括調査員
主任調査員
調 査 員
主任調査員
主任調査員
(照査1〜3及び設計調書を含む)
調 査 員 照査状況の把握 報告3(成果品の照査及び設計調書)
照査報告書
数量計算書 照査技術者
施工計画書等
照査報告書作成 設計調書の作成 照査技術者
【港湾施設の一般的な設計照査フローチャート】 【港湾施設の細部設計フロー】
港湾土木請負工事積算基準
( 第2部 第1編 設計等業務)
(1)設計計画
(2)現地踏査
(3)設計条件の設定
(4)設計波の算定
(5)照査1
(6)配筋計算
(7)付帯施設
(8)照査2
(9)図面作成
(10)数量計算
(11)施工計画
(12)協議・報告
(13)照査3
(14)報告書作成
位置図
1:2500〜1:50000
全体平面図
1:500〜1:1000
縦断図
V=1:50~1:100
H=1:200〜1:1000
横断図
1:50〜1:100
本体工構造詳細図
1:20〜1:200
基礎工詳細図
1:20〜1:200
付帯工詳細図
1:20〜1:200
配筋図
1:50〜1:200
土工図
1:100〜1:200
仮設構造物詳細図
1:50〜1:500
成果物
港湾施設モデル
線形モデル
基礎工モデル
地形モデル
地質・土質モデル
構造物モデル
(対象設計構造物)
構造物モデル
(仮設構造物)
土工形状モデル
本体工モデル
【BIM/CIMモデル(港湾施設)】
被覆・根固工モデル
上部工モデル
付属工モデル
裏込工・裏埋工モデル
舗装工モデル
消波工モデル
その他構造物モデル
標準断面図
1:50〜1:200
本体工一般図
1:100〜1:1000
第 8 編 39
3.2.1 図面作成
活用内容
BIM/CIM モデルを活用して構造物の位置、断面形状、構造形式や構造詳細が、設計基本条件及び
設計細部条件等と整合が取られているか確認を行う。
また、
隣接構造物や既設構造物との取り合い
の確認を行うものとする。
【活用事例】
・既設構造物や仮設矢板を3次元モデル化し、各部材の取り合い等を確認
・他構造物との取り合いを確認し、各設計図の整合を確認
・使用材料の規格を属性情報として付与
図 13 図面作成において活用する BIM/CIM モデルの例
事業名 伏木富山港(富山地区)岸壁(-10m)
(2 号)
(改良)取付部細部設計
発注者 国土交通省 北陸地方整備局 新潟港湾空港技術調査事務所
受注者 株式会社エコー
各部材の取り合いを確認
各設計図の整合を確認
使用材料の規格を属性情報と
して付与
第 8 編 40
BIM/CIM モデルの活用方法
検討結果に基づき決定した情報を BIM/CIM モデル化し 3 次元的に確認することで、
「図面作成」
段階における設計確認の高度化、効率化を図る。
【解説】
「図面作成」における確認内容と、そのために BIM/CIM モデルを活用する場合の BIM/CIM モデル
の作成のポイント、詳細度や属性情報等の目安について、次表に示す。
次表の「確認内容および BIM/CIM モデルの要件」の定義については以下のとおりである。
確認内容:
港湾施設の一般的な設計照査内容等を参考に、照査内容等のうち BIM/CIM モデルの活用が期待
される内容を設定している(下線部)
。なお、設定した項目以外における BIM/CIM モデルの活用を
妨げるものではない。
BIM/CIM モデル作成のポイント:
作業負担を考慮の上、確認内容で活用する BIM/CIM モデルを効果的に作成するための留意事項
を示したものである。
BIM/CIM モデルの種類:
活用する BIM/CIM モデルを構成する主な BIM/CIM モデルの種類を示したものである。必要に応
じて、ここで示す種類以外の BIM/CIM モデルについても組み合わせることとする。
詳細度((注記)):BIM/CIM モデルを用いて確認内容を把握できるよう、その段階で必要とされる BIM/CIM モデル
の詳細度の目安を示したものである。
属性情報等((注記)):BIM/CIM モデルを用いて確認内容を把握できるよう、その段階で必要とされる BIM/CIM モデル
の属性情報や参照資料の目安を示したものである。各事業の性質や後工程での活用を考慮して、
適宜取捨選択することとする。
((注記))最終的な設計成果物として納品する BIM/CIM モデルの詳細度及び属性情報等については、
『3 次元モデル成果物作成要領(案)
』を参考とし、ここで示すものは最終的な設計成果物に
至るまでの各段階における目安を示したものであることに留意されたい。
第 8 編 41
表 15 「図面作成」における確認項目および BIM/CIM モデルの要件No.確認内容
(注記)下線部は照査内容の
うち、BIM/CIM の活用
が期待される項目
BIM/CIM モデル作成
のポイント
使用する主な
BIM/CIM モデルの
種類
詳細度 属性情報等1打合せ事項は反映され
ているか。
― ― ― ―2構造物の基本寸法、高
さ関係は照合されてい
るか。
構造物モデル 〜400 ・設計計算書等3構造詳細は適用基準及
び打合せ事項と整合し
ているか。
・使用材料情報は属性
情報等として付与する構造物モデル 〜400
・使用材料情報
・設計計算書等4取り合い部の構造寸法
は整合しているか。
地形モデル
構造物モデル
〜400 ・設計計算書等5各設計図が相互に整合
しているか。
地形モデル
土工形状モデル
構造物モデル
〜400 ・設計計算書等6設計計算書の結果が正
しく反映されている
か。
・一般平面図
・縦横断図
・標準断面図
・配筋図
・仮設図
・その他"
・干渉確認部以外で配
筋の BIM/CIM モデル
を省略する場合は 2
次元図面を参照情報
として付与する
構造物モデル 〜400
・設計計算書等
・配筋図7設計条件等の必要項目
が記載されているか。
・設計水深
・潮位
・地質条件
・その他
・サーフェスやソリッ
ドで示す
地形モデル
地質・土質モデル
〜400
・設計基本条件
情報8使用材料の規格を明記
しているか。
・使用材料情報は属性
情報として付与する
土工形状モデル
構造物モデル
〜400
・使用材料情報
・設計計算書等
(注記)確認内容は、港湾施設の設計(細部設計)における一般的な照査内容
第 8 編 42
3.2.2 数量計算
活用内容
『港湾請負工事積算基準』に基づき BIM/CIM モデルを活用して数量の算出を行う。算出した結
果等については BIM/CIM モデルの属性情報等として付与するものとする。
【活用事例】
3 次元モデルによる数量算出と効率的な照査
・3 次元モデルの数量と 2 次元図面から算出した数量を比較
・数量の照査を行うとともに、3 次元モデルの寸法を確認することで効率的な照査につながった。
図 14 数量計算において活用する BIM/CIM モデルの例
事業名 名古屋港飛鳥ふ頭東地区岸壁(-15m)細部設計
発注者 国土交通省 中部地方整備局 名古屋港湾事務所
受注者 株式会社ニュージェック
第 8 編 43
BIM/CIM モデルの活用方法
「数量計算」では BIM/CIM モデルを活用した数量の算出、算出した数量情報等を属性情報等とし
て付与し確認を行うことで、業務の高度化、効率化を図る。
【解説】
「数量計算」における確認内容と、そのために BIM/CIM モデルを活用する場合の BIM/CIM モデル
の作成のポイント、詳細度や属性情報等の目安について、次表に示す。
次表の「確認内容および BIM/CIM モデルの要件」の定義については、
「3.2.1 (2)BIM/CIM モデル
の活用方法」のとおりである。
表 16 「数量計算」における確認内容および BIM/CIM モデルの要件No.確認内容
(注記)下線部は照査内容の
うち、BIM/CIM の活用
が期待される項目
BIM/CIM モデル作成
のポイント
使用する主な
BIM/CIM モデルの
種類
詳細度 属性情報等1数量の単位及び数値の
取り方は、特記仕様書
及び調査職員の指示と
整合しているか。・『港湾土木請負工事積
算基準』を参照する
とともに、必要に応
じモデルを分割し、
必要な属性情報を付
与する
地形モデル
土工形状モデル
構造物モデル
〜400 ・数量総括表等2数 量 計 算 に 用 い た 寸
法・数値は図面と整合
しているか。
― ― ― ―3数量計算の根拠となる
資料
(根拠図等)
は作成
されているか。
地形モデル
土工形状モデル
構造物モデル
〜400
( ・ 算 出 根 拠情報)4
数量の取りまとめは、
工種別、
サイズ別、
材料
別、工区別に整理され
ているか。・『港湾土木請負工事積
算基準』を参照
地形モデル
土工形状モデル
構造物モデル
〜400 ・数量総括表等
(注記)確認内容は、港湾施設の設計(細部設計)における一般的な照査内容
第 8 編 44
3.2.3 施工計画
活用内容
BIM/CIM モデルを活用して適切な施工順序、施工方法等を検討し、施工計画の確認を行う。
【活用事例】
適切な施工計画の検討
・想定される使用機械を配置し施工方法を確認、施工計画の検討を実施
・施工ステップを作成し、受発注者間のイメージの共有を行った。
図 15 施工計画において活用する BIM/CIM モデルの例
事業名 平成 30 年度 横浜港本牧地区岸壁構造検討業務
発注者 国土交通省 関東地方整備局 横浜港湾空港技術調査事務所
受注者 株式会社日本港湾コンサルタント
第 8 編 45
BIM/CIM モデルの活用方法
「施工計画」では計画の検討等に必要な情報を BIM/CIM モデルを活用し 3 次元的に確認すること
で、施工計画検討の高度化、効率化を図る。
【解説】
「施工計画」における確認内容と、そのために BIM/CIM モデルを活用する場合の BIM/CIM モデル
の作成のポイント、詳細度や属性情報等の目安について、次表に示す。
次表の「確認内容および BIM/CIM モデルの要件」の定義については、
「3.2.1 (2)BIM/CIM モデル
の活用方法」のとおりである。
表 17 「施工計画」における確認内容および BIM/CIM モデルの要件No.確認内容
(注記)下線部は照査内容の
うち、BIM/CIM の活用
が期待される項目
BIM/CIM モデル作成の
ポイント
使用する主な
BIM/CIM モデルの
種類
詳細度 属性情報等1施 工 時 の 航 路 切 り 替
え、道路の切り回し計
画は適切か。
― ― ― ―2工事用道路、運搬路計
画は適切か。・簡単な土工形状、
構造
物モデルでよい
地形モデル
土工形状モデル
構造物モデル
〜200
・工事用道路の
使用目的、設
計概要情報3施工ヤード、施工スペ
ースは確保されている
か。・簡単な土工形状、
構造
物モデルでよい
地形モデル
土工形状モデル
構造物モデル
〜200
・施工ヤードの
概要4部材長、
部材寸法、
部材
重量は適切か。
― ― ― ―5施工方法、
施工順序、施工工程は適切か。
・施工方法、施工手順
は、
主たる BIM/CIM モ
デルとは別に作成し
てもよい
・設計-施工間の情報
連携を目的とした4
次元モデル活用の手
引き
(案)
を参考に作
成する
地形モデル
土工形状モデル
構造物モデル
〜400
・施工への申し
送り情報
6 支保工、
仮設は適切か。 構造物モデル ― ・仮設計画情報7安全性、経済性は適切
か。
構造物モデル ― ・施工計画情報
第 8 編 46No.確認内容
(注記)下線部は照査内容の
うち、BIM/CIM の活用
が期待される項目
BIM/CIM モデル作成の
ポイント
使用する主な
BIM/CIM モデルの
種類
詳細度 属性情報等
8 環境対策は適切か。 ― ― ― ―9施工機械の種類、規格
は適切か。
構造物モデル ―
・設計計算書
・施工計画情報10近接施工に対する安全
対策は適切か。・簡単な土工形状、
構造
物モデルでよい
地形モデル
土工形状モデル
構造物モデル
〜200
・施工への申し
送り情報11船舶に対する安全対策
は適切か。・簡単な土工形状、
構造
物モデルでよい
地形モデル
土工形状モデル
構造物モデル
〜200
・施工への申し
送り情報12積み出しに伴う既設構
造物の安定は検討した
か。
― ― ― ―
(注記)確認内容は、港湾施設の設計(細部設計)における一般的な照査内容
第 8 編 47
3.2.4 協議・報告
活用内容
BIM/CIM モデルを活用して関係機関との協議用資料・説明用資料を作成する。
【活用事例】
各種協議における合意形成時間の短縮と判断の迅速化
・施工ステップの各段階における時間軸を付与した 3 次元モデルを作成し、一連のフローを可視
化。対外説明用資料として活用した。
図 16 協議・報告において活用する BIM/CIM モデルの例
事業名 横浜港大黒地区岸壁(-12m)取付部細部設計他業務
発注者 国土交通省 関東地方整備局 京浜港湾事務所
受注者 日本海洋コンサルタント株式会社
第 8 編 48
BIM/CIM モデルの活用方法
「協議・報告」では、BIM/CIM モデルを活用した視覚的な資料により説明を行うとともに、協議
調整事項を属性情報等として付与することで、業務の高度化、効率化を図る。
【解説】
「協議・報告」における確認内容と、そのために BIM/CIM モデルを活用する場合の BIM/CIM モデ
ルの作成のポイント、詳細度や属性情報の目安について、次表に示す。
次表の「確認内容および BIM/CIM モデルの要件」の定義については「3.2.1 (2)BIM/CIM モデル
の活用方法」のとおりである。
表 18 「協議・報告」における確認項目および BIM/CIM モデルの要件No.確認内容
(注記)下線部は照査内容の
うち、BIM/CIM の活用
が期待される項目
BIM/CIM モデル作成の
ポイント
使用する主な
BIM/CIM モデルの
種類
詳細度 属性情報等1関連機関との調整の確認(海事・漁業関係者、海上保安部、
警察、
地下埋
設物管理者、施設管理
部所、共同事業者等)
地形モデル
土工形状モデル
構造物モデル
〜400
・関連機関との
調整内容
(注記)確認内容は、港湾施設の設計(細部設計)における一般的な照査内容
第 8 編 49
4 施工
4.1 施工における BIM/CIM モデルの活用例
施工段階では、前工程から引き継がれた BIM/CIM モデルを更新または新たに BIM/CIM モデルを作成
し、この BIM/CIM モデルを活用して施工事業の効率化・高度化・品質向上に取り組むものとする。
【解説】
施工段階では、前工程から引き継がれた BIM/CIM モデルや施工段階で作成又は更新した BIM/CIM モ
デルを活用して、建設施工の各段階で受発注者および関係者間で立体的な形状情報により情報共有、
合意形成を行うとともに、施工管理などの従来の作業を効率化・高度化・品質向上に取り組むものと
する。
また、施工段階で発生した各種情報を BIM/CIM モデルに付与し維持管理段階に引き継ぎ、活用して
いく必要がある。
ここでは、BIM/CIM モデル等を活用することで建設段階における効率化・高度化が図られている事
例を次に示すので、これらを参考に BIM/CIM モデルの活用に取り組まれたい。
第 8 編 50
4.1.1 設計図書の照査
活用内容
工事受注後の設計図書の照査の段階では、2 次元設計図書ならびに前工程から引き継がれた
BIM/CIM モデルを活用し、設計条件と施工条件とに不整合な点がないか、照査する。なお、必要に
応じて BIM/CIM モデルは更新または新たに作成する。
【活用事例】
・受領した構造物モデルを確認し、施工上不足する車止めや防舷材等の付属工のモデルを追加
・施工検討に必要となる範囲の 3 次元計測を行い取得した点群データと、ドローンにより取得し
た航空写真等から作成した地形モデルと修正した構造物モデルを統合し BIM/CIM モデルの更新
図 17 設計図書の照査において活用する BIM/CIM モデルの例
工事名 舞鶴港第 2 ふ頭地区岸壁(-10m)改良等工事
発注者 国土交通省 近畿地方整備局 舞鶴港湾事務所
受注者 東洋建設株式会社
3 次元計測による点群取得
構造物モデル
の追加
航空写真等から
地形作成
BIM/CIM モデルの更新
第 8 編 51
4.1.2 事業説明、関係者間協議
活用内容
近隣住民説明会や関係自治体、工事区域に関係する機関等への事業内容および工事内容の説明・
協議する際に、BIM/CIM モデルを活用する。
【活用事例】
陸上での交通規制の検討
・点群データに運搬用トラックを配置し積載物と架空線や車両と障害物との離隔を確認
・走行可能と確認がとれたため、現地での試験走行等の確認が不要になった。
図 18 事業説明、関係者間協議において活用する BIM/CIM モデルの例(1)
工事名 舞鶴港第 2 ふ頭地区岸壁(-10m)改良等工事
発注者 国土交通省 近畿地方整備局 舞鶴港湾事務所
受注者 東洋建設株式会社
架空線との離隔確認
障害物との離隔確認
ブ ロ ッ ク を 積 載 し た 状 態 で
6.0m 以上の離隔を確認
石材との走行路 3.0m 以上の確認
第 8 編 52
【活用事例】
海上での作業範囲の検討
・海上作業における岸壁陸上部での占有範囲を確認
・近隣の荷役業者作業員からの見え方や交通規制状況等、関係者間協議での説明に活用した。
・海上作業における海上部での占有範囲を確認
・対岸の海上保安庁の巡視船との距離を確保した施工方法を採用した。
・最適な安全監視船の停泊位置や、作業船の配置や向きの検討を行った。
図 19 事業説明、関係者間協議において活用する BIM/CIM モデルの例(2)
海上作業時の陸上部の占有範囲の検討
海上作業時の陸上からの視点(上:3 次元モデル計画、下:現地稼働状況)
第 8 編 53
図 20 事業説明、関係者間協議において活用する BIM/CIM モデルの例(3)
工事名 舞鶴港第 2 ふ頭地区岸壁(-10m)改良等工事
発注者 国土交通省 近畿地方整備局 舞鶴港湾事務所
受注者 東洋建設株式会社
作業船の配置(上:3 次元モデル計画、下:現地稼働状況)
作業船の配置による離隔確保(上:3 次元モデル計画、下:現地稼働状況)
第 8 編 54
4.1.3 施工方法(仮設備計画、工事用地、計画工程表)
活用内容
仮設備の配置や施工手順、工事の進捗状況等を BIM/CIM モデルを活用し視覚化することで、計
画の策定、関係者間での情報の共有を行い、事業推進の効率化・高度化を図る。
【活用事例】
過密度配筋部の干渉チェック
・係船曲柱アンカーと鉄筋を 3 次元モデル化し、鉄筋干渉照査を実施
・必要な寸法が確保されていない事が確認されたため、対策を検討することで手戻りを防止した。
図 21 施工方法(仮設備計画、工事用地、計画工程表)において活用する BIM/CIM モデルの例(1)
工事名 舞鶴港第 2 ふ頭地区岸壁(-10m)改良等工事
発注者 国土交通省 近畿地方整備局 舞鶴港湾事務所
受注者 東洋建設株式会社
施工状況写真
第 8 編 55
【活用事例】
施工ステップを作成し施工手順の理解度を深める
・施工ステップによる動画を作成し、全体工程を発注者や作業員と共有
・複雑な過密度配筋部の施工ステップを作成し、発注者や作業員への説明に活用
・3 次元モデルをあらゆる角度から見ることで、施工困難箇所等における現場の問題点を発見しや
すく、作業内容の共有をすることで現場での手戻りを防止した。
図 22 施工方法(仮設備計画、工事用地、計画工程表)において活用する BIM/CIM モデルの例(2)
工事名 舞鶴港第 2 ふ頭地区岸壁(-10m)改良等工事
発注者 国土交通省 近畿地方整備局 舞鶴港湾事務所
受注者 東洋建設株式会社
過密度配筋部の施工ステップを可視化
大型モニターで施工ステップを説明
1 2 34 5 第 8 編 56
4.1.4 施工管理(品質、出来形、安全管理)
活用内容
3 次元測量データや BIM/CIM モデル、通信機器などを活用することで、ICT 施工や段階確認、出
来形計測、安全管理の効率化、高度化を図る。
【活用事例】
自動帳票システムを活用した出来形管理表作成
・現場で撮影した出来形写真や入力した電子黒板を活用し、事務所で自動的に帳票等を作成
・事務所での作業が減少し、また遠隔地でも結果の確認が可能なため生産性の向上につながった。
図 23 施工管理(品質、出来形、安全管理)において活用する BIM/CIM モデルの例(1)
工事名 舞鶴港第 2 ふ頭地区岸壁(-10m)改良等工事
発注者 国土交通省 近畿地方整備局 舞鶴港湾事務所
受注者 東洋建設株式会社
データ連携
第 8 編 57
【活用事例】
BIM/CIM モデルを活用した VR による安全管理
・BIM/CIM モデルを VR 化し、遠隔地での作業性検討および作業員による事前確認
・作業員が VR で現地を擬似体験し、経験から危険箇所の発見や作業手順の適正化を行うことで、
安全管理の効率化および高度化を図った。
図 24 施工管理(品質、出来形、安全管理)において活用する BIM/CIM モデルの例(2)
工事名 舞鶴港第 2 ふ頭地区岸壁(-10m)改良等工事
発注者 国土交通省 近畿地方整備局 舞鶴港湾事務所
受注者 東洋建設株式会社
cloud サーバー
検討者がサーバーにアップ
VR ゴーグルのみで動作
遠隔地検討可能
VR による疑似体験状況
第 8 編 58
4.1.5 工事完成図(主要資材情報含む)
活用内容
施工段階で作成又は更新した BIM/CIM モデルを完成形の BIM/CIM モデルとして作成する。この
BIM/CIM モデルに施工段階で使用した主要材料情報や品質管理情報、出来形管理情報を属性情報等
として付与することで、維持管理段階における施工段階の情報確認の効率化、高度化を図る。
付与する属性情報については、受発注者間で事前に協議するものとする。
【活用事例】
属性情報の付与
・出来形管理表やミルシート、施工状況写真等を属性情報として付与
・維持管理段階では、現場で点検中に過去の施工状況の確認や点検結果の入力にも対応できるた
め、情報確認の効率化、高度化が図れると考えられる。
図 25 工事完成図(主要資材情報含む)において活用する BIM/CIM モデルの例
工事名 舞鶴港第 2 ふ頭地区岸壁(-10m)改良等工事
発注者 国土交通省 近畿地方整備局 舞鶴港湾事務所
受注者 東洋建設株式会社
第 8 編 59
5 維持管理
5.1 維持管理における BIM/CIM モデルの活用例
BIM/CIM モデルには、建設生産・管理の各段階で得られた各種情報を属性情報として付与するこ
とができるため、維持管理の各業務で必要な情報を BIM/CIM モデルから取り出し活用することが
できる。
【解説】
表 19、表 20 に、維持管理段階での日常時・災害時に分けて BIM/CIM モデルの活用例を示す。活用
場面によっては、必要な属性情報を設計ないし施工段階の BIM/CIM モデルで付与しておくか、維持管
理段階移管時に設計、工事の電子成果品等から BIM/CIM モデルに付与する必要がある。なお、発注者
は維持管理段階に必要な属性情報について設計・施工段階であらかじめ協議して整理しておくことが
望ましい。
表 19 維持管理段階での BIM/CIM モデル活用例(日常時)
活用場面
(ユースケース)
概 要
活用する属性情報
( )内は属性を付与する段階
資料検索の効率化
(注記)1
発注者が日常的に維持管理に必要な各種情
報を、3 次元モデルの対象部材をクリックし
て表示される情報リストから選ぶことがで
き、検索性が向上する。
・設計図(設計段階)
・竣工図(施工段階)
・管理台帳(維持管理段階)
・点検記録(維持管理段階)
・補修記録(維持管理段階)
劣化・損傷原因の究
明と対策工の選定
の適切な判断
(注記)2
3 次元モデル上に損傷状況を表現させる事
で、その原因が判断しやすくなる。さらに原
因を的確に把握することで、必要な補修・補
強方法の選定が適切に行うことができる。
・設計図(設計段階)
・竣工図(施工段階)
・点検記録(維持管理段階)
・補修記録(維持管理段階)
施設の更新や拡張
時の各種協議の円
滑化
港湾施設の更新や拡張を行う際の関係者と
の協議に 3 次元モデルを用いることで各種協
議において共通認識が得やすく、意思決定の
迅速化が期待される。
・既存施設の諸元
・更新・拡張施設の諸元
教育や引き継ぎの
円滑化
岸壁等の港湾施設において、若年技術者への
指導や事業引継時の留意点の確認などを行
う際に CIM モデルを用いることで効率化が期
待される。
・点検記録・補修記録(維持管理段階) 第 8 編 60
適切な水深の管理
マルチビームによって得た 3 次元海底地形デ
ータと設計・施工時の 3 次元モデルを重ねる
ことで、課題点の抽出や対応策を講じること
が可能となり、維持管理の高度化に寄与す
る。
・水深(設計段階)
・3 次元測量データ記録(取得日等)
(施工段階、維持管理段階)
・差分図(維持管理段階)
点検診断、
維持管理
計画作成、
更新時の
効率化
設計・施工履歴、変状履歴、調査記録や評価
が確認できるので、作業の効率化が期待され
る。
・設計図(設計段階)
・施工図(施工段階)
・管理台帳(維持管理段階)
・点検記録(維持管理段階)
・補修記録(維持管理段階)
(注記)1 維持管理用にモデル更新作業が必要
(注記)2 対応機能を有するツールが必要
表 20 維持管理段階での CIM モデル活用例(災害時)
活用場面
(ユースケース)
概 要
活用する属性情報
( )内は属性を付与する段階
事故発生時の類似
部材・工種検索の
効率化
発注者は、ほかで発生した事故原因となった同
種の部材や工法等、設計年度などを検索すると
きに、
CIM モデルに関連情報を付与しておけば、
容易に検索することができる。
・適用工法(設計・施工段階)
・適用基準(設計・施工段階)
・使用製品(施工段階)
・設計者(設計段階)
・施工者(施工段階)
被災後調査におけ
る情報確認
発注者が、地震、台風等によって被災した港湾
施設の損傷原因を検証する際には必要となる
構造計算データ、材料データ等が容易に収集で
きる。
・設計計算書(設計段階)
・使用材料(施工段階)
・点検結果(維持管理段階)
・周辺地形データ(施工段階)

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