公共建築工事の発注者の役割
解説書(第三版)
令和3年7月
国土交通省大臣官房官庁営繕部
(注記) この解説書は「官公庁施設整備における発注者のあり方について」答申(平成 29 年1
月 20 日社会資本整備審議会)において示された「公共建築工事における発注者の役
割」に関する解説について、国土交通省大臣官房官庁営繕部において取りまとめたもの
です。
(注記) 「公共建築工事の発注者の役割」に関して発注者の参考となると考えられる情報を下記
のURL(公共建築工事の発注者の役割ポータルサイト)で公開しています。
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk6_000084.html>
目次
1.解説書について
しろまる 解説書の位置付け
しろまる 解説書の対象範囲
しろまる 公共建築工事の発注者の役割(概要)
しろまる 解説の構成と記載内容2.「公共建築工事の発注者の役割」解説
3.答申本文と審議経緯等
しろまる 答申本文
しろまる 審議経緯等
・社会資本整備審議会建築分科会官公庁施設部会 委員名簿
・官公庁施設部会における審議経緯等
4.関連資料
しろまる 品確法を踏まえた官庁営繕の主な取組
5.お問い合わせ先
しろまる 公共建築相談窓口 11.解説書について 2しろまる解説書の位置付け
この解説書は、
「官公庁施設整備における発注者のあり方について」答申(平成 29
年1月 20 日社会資本整備審議会)において、当面実施すべき施策として「本答申で
示した発注者の役割に関する解説を作成する」とされたことを踏まえ、国土交通省
大臣官房官庁営繕部において取りまとめたものです。
解説書においては、公共建築工事の発注者の役割に関する理解の促進に資するた
め、答申に示された公共建築工事の発注者の役割に関する解説や国土交通省の官庁
営繕事業における運用事例等を示しています。国土交通省の官庁営繕事業における
運用事例等については、それぞれの発注者の状況を踏まえて適宜参考として下さ
い。その際、各運用事例等の趣旨、さらに具体の運用方法等については、最寄りの
公共建築相談窓口(本解説書「5.お問い合わせ先」
)へお問い合わせ下さい。ま
た、答申や解説書を補足するものとして「地方公共団体における建築事業の円滑な
実施に向けた手引き」
(平成 29 年 7 月)がとりまとめられておりますので、そちら
も適宜参考としてください。
なお、答申で示されているように、公共建築工事の発注者が置かれた状況は多様
であることから、解説書については、多様な発注者のニーズを踏まえて、全国営繕
主管課長会議における検討成果や時代に応じた新たな内容を追加するなど、継続的
に見直しを図ることとしています。
(更新履歴)
平成 29 年 6月 第一版
平成 30 年 10 月 第二版
令和 3年 7月 第三版
「官公庁施設整備における発注者のあり方について」答申(抜粋)
IV.当面実施すべき施策
上記III.の考え方を踏まえ、国土交通省は以下の施策を推進し、公共建築工事の発注者
の業務が適切に行われるように努めるべきである。
(1) 発注者の役割の理解の促進
国土交通省は、それぞれの発注者が本答申で示した発注者の役割を自覚するとともに、
それぞれの事業部局においても十分に理解されるように、
その役割について、
発注者に対
して十分な周知を図ること。
そのために、
本答申で示した発注者の役割に関する解説を作成するとともに、
研修等を
通じて、発注者の理解の促進を図ること。 3しろまる解説書の対象範囲
答申は「I.はじめに」から「V.おわりに」までで構成されており、このうち
解説書は「II.公共建築工事における発注者の役割」を対象としています。
解説書の対象範囲
【答申の構成】
I.はじめに
II.公共建築工事における発注者の役割 → 解説書の対象範囲
III.発注者がその役割を適切に果たすための方策
IV.当面実施すべき施策
V.おわりに 4しろまる公共建築工事の発注者の役割(概要)
以下は答申概要のうち「発注者の役割」に関係する部分を抜粋したものです。
答申概要(抜粋)
答申概要 (参考)公共建築工事の発注者の役割 5しろまる解説の構成と記載内容
答申本文
「II.
公共建築工事における発注者の役割」
を NO.1 から NO.19 に区分し、
アンダーラインを付した部分に対する解説を、枠下の「しかく解説」に記載しています。
同様の解説内容となる場合は、代表箇所の区分において解説を記載することとし、代
表箇所以外には破線のアンダーラインと代表箇所の区分番号を付しています。
また、必要に応じて、関連する参考資料等が掲載されている国土交通省ホームペー
ジ等のURLを「しかく参考資料」として記載しています。なお、各参考資料は、今後改
定等が行われる可能性があることから、
「公共建築工事の発注者の役割ポータルサイ
ト」の「解説書参考資料リンク一覧」
(下記URL)に最新のURLを掲載していきま
す。
しろまる公共建築工事の発注者の役割ポータルサイト
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk6_000084.html>
しろまる解説書参考資料リンク一覧
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk2_000039.html>
解説の構成と記載内容のイメージ
NO.くろまる【区分番号】 答申 Pくろまる、Lくろまるくろまる【答申本文該当ページ、行】
【答申本文「II.公共建築工事における発注者の役割」について、NO.1〜NO.19 に区分して
抜粋し、解説する箇所にアンダーラインを付しています。】【同様の解説内容となる場合は、代表箇所の区分において解説を記載し、代表箇所以外の区
分においては破線のアンダーラインと代表箇所の区分番号 NO.くろまるで解説
を付しています。】しかく解説(【見出し】)しろまる 【 解説を記載 】(【見出し】)しろまる 【 〃 】(【見出し】)しろまる 【 〃 】
しかく参考資料【必要に応じ、参考資料・掲載URLを記載】
1 参考資料名
<https://www.mlit.go.jp/・・・・>
2 参考資料名
<https://www.mlit.go.jp/・・・・> 62.
「公共建築工事の発注者の役割」解説 7NO.1 答申 P3、L1〜L4
II.公共建築工事における発注者の役割
公共建築工事の発注者の役割をわかりやすく示すために、
まず、
公共土木工事や民間建
築工事との対比の下に、
公共建築工事の特徴と発注者に求められることを明らかにし、それを踏まえて発注者の役割を整理している。
しかく解説(「公共建築工事」の範囲等)
しろまる 本答申において、公共建築工事とは、国及び地方公共団体(以下「国等」とい
う。
)が実施する建築物の新築、増築、改修工事等をいい、工事に加え、その企
画、調査(敷地測量、地盤調査、既存建築物調査等)
、設計、設計意図伝達、工
事監理を含むものとしている。
なお、
公共建築工事の種別としては、
建築工事、
電気設備工事、暖冷房衛生設備工事、エレベーター設備工事等がある。
(公共建築工事と公共土木工事・民間建築工事との対比)
しろまる 公共工事の品質確保に関する法律(平成 17 年法律第 18 号。以下「品確法」と
いう。)等に示されている発注者の責務は土木・建築共通の内容となっているこ
とや、建築工事は民間が大多数を占めていることから、公共建築工事の発注者
の役割を明確化するに当たって、以下の図のように、公共土木工事・民間建築
工事との対比の下に公共建築工事の特徴と、その特徴を踏まえた発注者に求め
られることが明らかにされたものである。 8(参考)公共建築工事と公共土木工事・民間建築工事との対比(例示)
出典:社会資本整備審議会第 19 回官公庁施設部会資料を答申に合わせて修正 9(
「発注者の役割」という用語)
しろまる 品確法第7条では土木・建築に共通する「発注者の責務」が規定されているの
に対して、本答申では「公共建築工事の発注者の役割」が取りまとめられてい
る。これは、公共建築工事の発注者は、各省各庁、都道府県、市町村の様々な
主体に置かれ、体制、職員の配置状況、業務経験等が多様な状況にあることか
ら、品確法等の規定も含め、これまで十分に整理されていなかった公共建築工
事の発注者が果たすべき役割について、多様な公共建築工事の発注者に広く共
通する内容が過不足なく明らかにされたためである。
(参考)公共建築工事の発注者の現状(市町村(注記))
(注記)アンケート(平成 27 年実施)に回答があった 1,425 市町村の分析結果
出典:社会資本整備審議会第 19 回官公庁施設部会資料 10NO.2 答申 P3、L4〜L21
1. 公共建築工事の特徴と発注者に求められること
公共建築工事の特徴と、その特徴を踏まえた発注者に求められることを、以下の五点に
整理した。
(1)は民間建築工事、
(2)〜(5)は公共土木工事との対比により示される
特徴と発注者に求められることである。
(1) 国等が主体的に行う事業であること
・ 公共建築工事は、主に税金を使って行われる事業(注記)1
であり、それぞれの事業は国民
生活に寄与するものである。そのため、発注者には、1国民(注記)2
からの求めに応じた
過不足のない公共建築としての適切な品質を確保すること、2国等の政策を公共建
築工事に反映すること、3国民に対する説明責任を果たす NO.19 で解説
こと(法令等に
基づき透明性・公平性のある発注を行う NO.7 で解説
ことを含む。)、が求められる。
・ 公共建築工事に関しては、予算措置の際に、その大枠の条件(建築物の機能、規模、
敷地、設計・工事の工程、設計費・工事費等)が決められる場合が多い。そのため、
発注者には、大枠の条件が適切なものとなるように努める NO.3 で解説
ことが求められ
る。
(注記)1 ここでいう事業は、設計、工事、維持管理、改修及び解体の全てにわたる。
(注記)2 地方公共団体においては、その住民である。なお、納税者としての立場と施設利用者として
の立場がある。
しかく解説
(国民からの求めに応じた過不足のない適切な品質の確保)
しろまる 公共建築は、国等によって行政サービスの提供や防災拠点機能等の場として整
備されるものであり、公共建築に対して国民から求められる品質は時代ととも
に変化するものと考えられる。このことから、公共建築工事の発注者には、地
域のニーズも踏まえた必要な機能を確保すること(まちづくりへの寄与や災害
時における一時避難場所の確保等)や時代とともに変化する整備水準(耐震基
準、バリアフリー対応、環境負荷低減等)を確保すること、合理的な理由なく
整備水準に大きなばらつきがないようにすることなどが求められる。
(国等の政策)
しろまる 公共建築工事の発注者には、働き方改革・生産性向上(注記)
、バリアフリー化、環境
負荷低減、防災・減災(地震・津波・風水害等の対策)
、社会資本の老朽化対策
(インフラ長寿命化)、木材利用などの国等の政策について、
それぞれの公共建
築工事に的確に反映することが求められる。
(注記) 働き方改革に向けて、平成 31 年4月から施行された改正労働基準法において、建設
業は施行後5年間の猶予期間を置いたうえで、
時間外労働の罰則付き上限規制の一般
則を適用することとされたところである。
営繕工事における働き方改革の推進にあた
っては、
官庁営繕部にて各種取組をパッケージ化(参考資料1)
してとりまとめて公表して
いる。 11(注記) 設計に関しては、
建築設計業務受注者の働き方改革に配慮した業務委託を実施するた
めに、全国営繕主管課長会議(注)
において、発注者の留意事項をとりまとめたガイド
ライン(参考資料2)
が作成されている。
(注)全国の都道府県、政令市、国土交通省で構成。建築技術等の共通する重要な諸
問題について協議等を実施
(注記) また、生産性向上については、未来投資戦略 2018(参考資料3)
において建設プロセスに
ICT の全面的な活用等を推進する i-Construction の対象を建築分野にも拡大する方
針が位置づけられたことを踏まえ、
更なる施工合理化技術の積極的な活用を図るため、
「官庁営繕事業における生産性向上技術の活用方針」
(参考資料4)、「官庁営繕事業におけ
る生産性向上技術の導入の手引き」
(参考資料5)
を策定している。
しろまる なお、これまでの国土交通省の官庁営繕事業における政策への対応経緯につい
ては、政策レビュー(注記)
評価書(参考資料6)
にとりまとめられている。
(注記) 「行政機関が行う政策の評価に関する法律」に基づく政策評価方法の一つ
(地方公共団体における公共建築工事の発注者にも向けられた答申)
しろまる 公共建築工事の発注者は、1国民からの求めに応じた過不足のない適切な品質
を確保すること、2国等の政策を公共建築工事に反映すること、3国民に対す
る説明責任を果たすこと、が求められている。ここで、
「国民」は「地方公共団
体においては、その住民である。
」とされているように、地方公共団体における
公共建築工事の発注者にも向けられた答申であることが明示されている。
しかく参考資料
1 営繕工事における働き方改革の取組について
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk2_000040.html>
2 働き方改革に配慮した公共建築設計業務委託のためのガイドライン
<https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001369311.pdf>
3 未来投資戦略 2018 -「Society 5.0」
「データ駆動型社会」への変革-
<https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/miraitousi2018_zentai.pdf>
4 官庁営繕事業における生産性向上の取組
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/seisanseikojo01.html>
5 官庁営繕事業における生産性向上技術の導入の手引き
<https://www.mlit.go.jp/report/press/eizen06_hh_000038.html>
6 政策レビュー評価書
・概要 <https://www.mlit.go.jp/common/001087638.pdf>
・評価書 <https://www.mlit.go.jp/common/001087636.pdf> 12NO.3 答申 P3、L22〜P4、L10
(2)発注部局と事業部局とが異なる場合が多いこと
・ 国等においては、建築物を所管する事業部局と発注者の発注業務を担当する発注部
局とが異なる場合が多い(注記)。事業部局は、
公共建築工事の企画立案と予算措置を行い、
発注部局は、
事業部局からの委任に基づき当該公共建築工事の発注等を行い、
それぞ
れが自ら行うことに対する責任を負う。
そのため、
発注者
(公共建築工事の発注の部
局と責任者をいう。以下同じ。
)には、1公共建築工事の企画立案の段階から事業部
局との連携を密にすること、2事業部局から建築物に求められる諸条件を把握の上、
品質、工期、コスト(ライフサイクルコストの観点によるものを含む。以下同じ。)が適切なものとなるように調整し、公共建築工事に反映すること、が求められる。
(注記) 同一の部局が発注部局と事業部局とを兼ねる場合もあるが、本答申においては、その場合でも
発注部局と事業部局とを別部局として整理する。また、事業部局と施設管理者とが異なる場合
もあるが、本答申においては、事業部局に施設管理者が含まれるものとして整理する。
(3)事業部局以外にも多様な関係者が存在し、個別性が強いこと
・ 公共建築工事には、
事業部局以外にも施設利用者、
近隣住民等の多様な関係者が存在
し、
建築物に求められるものは個別性が強い。
そのため、
発注者には、
建築物の機能、
規模、敷地、設計・工事の工程、設計費・工事費等の諸条件に加えて、多様な関係者
から建築物に求められる諸条件を把握し、必要な調整 NO.12 で解説
を行った上で、公共
建築工事に反映することが求められる。
しかく解説
(事業部局と発注部局それぞれの責任)
しろまる 事業部局は公共建築工事の企画立案と予算措置に関する説明責任を果たす必要
があるのに対し、発注部局(発注者)は公共建築工事の発注と実施に関する説
明責任を果たす必要がある。さらに発注者は、公共建築工事の企画立案や予算
措置に関して事業部局が国民に対する説明責任を果たすに当たって、技術的な
助言を必要に応じて行うなど事業部局と十分に連携する必要がある
(解説 NO.8
の答申本文を参照)。(発注の部局の責任者)
しろまる 発注の部局の責任者とは、国においては、機関の長または支出負担行為担当官
等、地方公共団体においては、その長またはその長の委任を受けた者等が該当
するものと考えられる。
(品質、工期、コストが適切なものとなるよう調整)
しろまる 事業部局が行う企画立案と予算措置の大枠の条件が適切なものとなるように、
発注者は、事業部局からの諸条件に照らして支障のない建築物の機能、規模、
敷地が確保されるよう、また、それらを踏まえて必要となる事前調査・設計・ 13工事等の工程(発注手続も含む)
、事前調査費・設計費・工事費等が確保される
よう、事業部局と調整する必要がある。
(注記) 働き方改革に向けて、建設業や建築設計等に携わる企業・団体が週休2日を確
保していくためには、生産性向上を図る受注者の取組と併せて、週休2日の確
保に向けた発注者による環境整備が必要である。
しろまる 事前調査や設計業務の履行期間については、事前調査の内容や業務内容に応じ
て適正な期間を確保する必要がある。発注手続の期間については、事前調査、
設計業務、工事それぞれの入札契約方式に応じて必要となる期間を見込む必要
があり、例えば、設計業務においては、設計者を選定するためのプロポーザル
方式に係る手続期間、工事においては、工事施工者を選定するための総合評価
落札方式に係る手続期間を見込む必要がある。なお、設計、工事の発注に係る
標準的な手続期間や入札契約方式については、各種ガイドライン(参考資料1)
にと
りまとめている。
しろまる 設計費や工事段階で必要となる設計意図伝達業務、工事監理業務に係る費用に
ついては、建築士法に基づく業務報酬基準(参考資料2)
に基づいて算定した費用を
確保する必要がある。また、事前調査に係る費用、業務委託により基本計画を
作成する場合はそのための費用、その他の発注者支援を活用する場合において
はそのための費用についても確保する必要がある。
(発注者支援については解説
NO.6 で解説)
しろまる 品質、工期、コストを適切なものとするための観点をそれぞれ以下に示す。な
お、品質、工期、コストの調整例について、解説 NO.12 において具体的に解説
している。
【品質】
しろまる 品質に関しては、国家機関の建築物及びその附帯施設の位置、規模及び構
造に関する基準(参考資料3)
が告示されており、同基準に則したものとなるよ
うにする必要がある。地方公共団体においても、必要に応じて同基準を参
考とすることが考えられる。さらに、時代とともに変化する整備水準を確
保するため、品質に関連する官庁営繕に関する技術基準類(特に、計画、
性能、
設計、
施工関係の技術基準)
を参考にすることが考えられる(参考資料4)。【工期】
しろまる 工事の工期については、令和元年の建設業法の改正により、著しく短い工
期による請負契約の締結が禁止されるとともに、中央建設業審議会が「工
期に関する基準」
(参考資料5)
を作成・勧告しており、同基準に則したものとな
るようにする必要がある。また、その適正な設定にあたっては、工事量の
安定による人材・資機材の効率的活用の促進や担い手の処遇改善に資する、
施工時期の平準化を図る必要がある。
しろまる 営繕工事の工期については、
「工期に関する基準」のほか、
「公共建築工事
の工期設定の基本的考え方」
(中央官庁営繕担当課長連絡調整会議及び全国 14営繕主管課長会議とりまとめ)
(参考資料6)
、同事例解説(参考資料7)
、及び「建築
工事適正工期算定プログラム」((一社)日本建設業連合会)
(参考資料8)
等を参
照し、当該時点で想定される条件に応じて週休2日の確保(参考資料9)
や施工
時期の平準化等を含めた適正な工期設定に取り組む必要がある。
しろまる また、適正な工期設定にあたっては、分離発注される工事や後工程の内装
工事、設備工事、舗装工事等の適正な施工期間を考慮して、全体の工期の
しわ寄せがないよう配慮すること(参考資料10)
が必要である。
しろまる なお、これらの考え方は「建設工事における適正な工期設定等のためのガ
イドライン」
(建設業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議申合せ)
(参考資
料11)
にも示されている。
しろまる 設計業務の履行期間についても、
「働き方改革に配慮した公共建築設計業務
委託のためのガイドライン」等を参考に、適正に設定する必要がある。
【コスト】
しろまる 企画立案段階における工事費については、
一般的な公共建築工事の場合は、
新営予算単価(注記)
(参考資料12)
や各所修繕費要求単価(参考資料13)
等を活用して算定す
ることが考えられる。なお、業務委託により基本計画を作成しそれに基づ
く概算工事費を算出することや、特殊な建築物の場合は設計内容を踏まえ
た積算数量を用いるなどによって算出した精度の高い概算や積算の結果を
活用することも考えられるが、基本計画の作成に係る費用は設計費とは別
に必要となることや、業務報酬基準において「設計に係る成果図書に基づ
く詳細工事費の算定に係る業務」は「設計に関する標準業務に附随する標
準外の業務」であることに留意する必要があり、官庁施設の設計業務等積
算基準及び同要領(参考資料14)
において成果図書に基づく積算業務を委託する
場合の直接人件費に係る業務人・時間数(業務量)の算定方法を示してい
る。
(注記) 国の建築物の新営に当たって質的水準を確保するために必要と考えられる工事
の概算要求額の算出に用いる工事費単価
しろまる なお、公共建築の発注者である地方公共団体を対象として作成された「地
方公共団体における建築事業の円滑な実施に向けた手引き」
(参考資料15)
におい
て、地方公共団体が建築事業を円滑に実施する上での課題や求められる対
応、特に企画立案段階及び設計段階における「コスト管理」や工事の「適
正な予定価格の設定」に係る留意点等が整理されている。 15しかく参考資料
1 ガイドライン(設計、工事)・(設計)建設コンサルタント業務等におけるプロポーザル方式及び総合評価
落札方式の運用ガイドライン
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001401150.pdf>・(工事)公共建築工事総合評価落札方式適用マニュアル・事例集
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/hinkaku_sougou.html>・(工事)国土交通省直轄工事における総合評価落札方式の運用ガイドライン
<https://www.mlit.go.jp/common/001068241.pdf>・(工事)公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン
<https://www.mlit.go.jp/tec/nyuusatsukeiyakugaido.html>・(工事)災害復旧における適切な入札契約方式の適用ガイドライン
<https://www.mlit.go.jp/report/press/kanbo08_hh_000805.html>
2 業務報酬基準(平成 31 年国土交通省告示第 98 号及び平成 27 年国土交通省告
示第 670 号)
<https://www.mlit.go.jp/common/001269165.pdf>
<https://www.mlit.go.jp/common/001184374.pdf>
3 国家機関の建築物及びその附帯施設の位置、規模及び構造に関する基準(平成
6 年国土交通省告示第 2379 号)
(最終改正 平成 25 年国土交通省告示第 309 号)
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/kijun_070619_itiki.htm>
4 官庁営繕の技術基準
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk2_000017.html>
5 工期に関する基準
<https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo13_hh_000711.html>
6 公共建築工事における工期設定の基本的考え方
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk4_000033.html>
7 公共建築工事における工期設定の基本的考え方(事例解説)
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk4_000026.html>
(注記)適切な工期を設定するためのチェックリスト及び事前調査票も掲載している。
8 建築工事適正工期算定プログラム
<https://www.nikkenren.com/kenchiku/proper.html>
9 営繕工事における週休2日促進工事の実施について
<https://www.mlit.go.jp/common/001341309.pdf> 1610 営繕工事における各工程の適正な施工期間の確保
<https://www.mlit.go.jp/common/001226991.pdf>
11 建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン
<https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk1_000156.html>
12 働き方改革に配慮した公共建築設計業務委託のためのガイドライン
<https://www.mlit.go.jp/report/press/eizen04_hh_000024.html>
13 新営予算単価
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/kijun_touitukijyun_shineiyosantanka.htm >
14 各所修繕費要求単価(令和3年度)
<https://www.mlit.go.jp/common/001361960.pdf >
15 官庁施設の設計業務等積算基準及び同要領
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/kijun_gyoumusekisankijun.htm>
16 地方公共団体における建築事業の円滑な実施に向けた手引き
<https://www.mlit.go.jp/common/001195737.pdf> 17NO.4 答申 P4、L11〜18
(4)設計業務、工事監理業務に、建築基準法、建築士法が適用されること
・ 建築工事における設計業務や工事監理業務は、
建築基準法
(昭和 25 年法律第 201 号)
及び建築士法(昭和 25 年法律第 202 号)に基づいて建築士が行う業務である。その
ため、
発注者には、
建築士が関係法令に基づいて適切に業務が実施できるように配慮
することが求められる。
また、
公共建築工事に求められる品質を確保する上で必要と
なる業務が適切に実施されるように、発注条件における業務内容を適切に設定する
とともに、それぞれの公共建築工事に最も適した設計者や工事監理者を選定 NO.13、
NO.14 で解説
することが求められる。
しかく解説
(建築士が適切に業務を実施できるための配慮)
しろまる 建築士への配慮については、設計業務等の業務内容に応じて、建築士法に基づ
く業務報酬基準等(参考資料1、2)
により予定価格を設定することや必要な履行期間
を確保すること、工事の段階において設計意図伝達業務や工事監理業務を発注
することなどが考えられる。
(品質を確保する上で必要となる業務内容の適切な設定)
しろまる 品質を確保する上で必要となる業務とは、建築士が行う設計業務、設計意図伝
達業務、工事監理業務であり、それらについて、発注しようとする公共建築工
事の内容に照らして必要となる業務内容を特記仕様書等において明示する必要
がある。この際、建築士法に基づく業務報酬基準における標準外業務に該当す
るものについては、受注者が業務量を想定できるように業務内容を具体的に明
示することが望ましい。なお、設計意図伝達業務及び工事監理業務の業務内容
の設定に当たっては、公共建築の工事監理等業務委託マニュアル(参考資料3)
を参
考にすることが考えられる。
しかく参考資料
1 業務報酬基準(平成 31 年国土交通省告示第 98 号及び平成 27 年国土交通省告
示第 670 号)
<https://www.mlit.go.jp/common/001269165.pdf>
<https://www.mlit.go.jp/common/001184374.pdf>
2 官庁施設の設計業務等積算基準及び同要領
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/kijun_gyoumusekisankijun.htm>
3 建築工事監理等業務委託の進め方-公共建築の工事監理等業務委託マニュアル-
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk6_000067.html> 18NO.5 答申 P4、L19〜23
1 建築市場全体の中で、公共の占める割合が極めて小さいこと
・ 建築市場は民間建築工事が大多数であり、
公共建築工事の材料、
機器等の仕様や価格
は、民間市場に大きな影響を受ける。そのため、発注者には、民間市場の動向を的確
に把握し、公共建築工事の発注条件や予定価格に適切に反映することが求められる。
しかく解説
(建築市場は民間建築工事が大多数)
しろまる 令和2年度建設投資見通し(令和2年 10 月)によると、建築投資 381,500 億円
のうち民間投資は 318,700 億円(約 83.5%)となっている。
(一方、土木投資
250,100 億円のうち民間投資は 56,700 億円(約 22.7%)となっている。)しろまる また、令和元年度建築着工統計調査報告(令和2年4月)によると、建築物計
床面積 124,938 千m2のうち民間は 119,094 千m2(約 95.3%)となっている。
(民間市場の動向の発注条件への適切な反映)
しろまる 材料や機器等については、特別な事情がある場合を除き、民間市場の動向を的
確に把握し、
広く普及しているものを選定することが望ましい。
このためには、
一般的に使われている仕様や工法等で構成される公共建築工事標準仕様書(参考
資料1)
の適用を工事の発注条件として指定したうえで、同仕様書に規定された材
料、機器等を使用すること等が考えられる。
(民間市場の動向の予定価格への適切な反映)
しろまる 民間市場の動向により材料、機器等の価格が短期間に変動する場合もあること
から、適正な予定価格を設定するためには、できる限り最新の単価を使用する
ことが重要である。また、公共建築工事標準単価積算基準(参考資料2)
等において
は、製造業者や専門工事業者の見積価格をもとに算定する単価については、必
要に応じてヒアリングを行うなどにより取引状況を把握し、実勢価格となるよ
う見積価格を補正して定めることとされている。
しかく参考資料
1 公共建築工事標準仕様書
・建築工事編
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/kenchiku_hyoushi.html>
・電気設備編
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk4_000017.html>
・機械設備編
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk6_000058.html>
2 公共建築工事標準単価積算基準
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/kijun_touitukijyun_s_hyoujyun_bugakari.htm> 19NO.6 答申 P4、L24〜P5、L7
2.公共建築工事における発注者の役割
上記1.を踏まえ、公共建築工事における発注者の役割について、その基本となる事項
を以下の二点に再整理して示す。なお、発注者は、その役割を果たすために、必要に応じ
て、発注者支援を受けることが求められる。
1) 企画立案等に関する事業部局との連携
発注者は、事業部局が行う公共建築工事の企画立案と予算措置において、それら
の内容が適切なものとなるよう NO.3 で解説
に、技術的な助言 NO.8 で解説
を行うなど事業
部局と十分に連携する必要がある。
2) 公共建築工事の発注と実施
発注者は、事業部局から公共建築工事の委任を受けた後は、建築物や公共建築工
事に求められる諸条件を把握・整理し、設計者、
施工者等に示す発注条件として、適切に取りまとめる NO.12 で解説
必要がある。そして、発注条件に基づき設計業務、工事
等を発注し、適切に実施する NO.15 で解説
必要がある。
また、発注者は、公共建築工事の発注と実施に関する国民に対する説明責任を果
たす NO.19 で解説
必要がある。
しかく解説
(発注者支援)
しろまる 発注者支援に関しては、
全国営繕主管課長会議において、
「発注者支援業務事例
集」
(参考資料1)
が取りまとめられている。同事例集には、公共建築工事の発注者支
援に対応する法人名、
各法人の支援メニュー、
発注者支援業務の活用事例等が、
発注者支援に関する業務内容や発注条件等の検討に当たっての参考情報として
掲載されている。 20(参考)発注者支援の業務内容と受注者の例
出典:「発注者支援業務事例集平成 28 年 6 月全国営繕主管課長会議)を基に官庁営繕部作成 21しろまる 発注者支援業務や事前調査を発注する際の参考となるよう、全国営繕主管課長
会議において、発注者支援業務等の業務委託仕様書の事例集(参考資料2)
が取りま
とめられている。
しろまる また、令和2年9月には、設計や工事に係る発注者のマネジメントや発注事務
を支援するCM方式のうち、発注者が、コンストラクションマネージャー(C
MR)の支援・助言・提案等を踏まえて、設計等業務受託者、工事受注者と各
種発注方式にて契約し、
事業の各段階における重要な判断や決定を行う方式(ピュア型CM方式)に関し、地方公共団体で活用する際の参考となるよう整理し
たガイドライン(参考資料3)
が作成されている。同ガイドラインでは、土木と建築
の事業の違いを明確にしたうえで、ピュア型CM方式の基本的な枠組みやCM
Rの業務報酬の積算の考え方などを掲載している。
しろまる 発注者支援として外部機関を活用した場合においても、発注者は、公共建築工
事の発注と実施に関する最終的な責任を負う必要がある。答申において、外部
機関を活用する場合の責任については、以下が示されている。
(参考)答申:抜粋
III.発注者がその役割を適切に果たすための方策
2. 発注者がその役割を適切に果たすための方策
(3)個別の公共建築工事の適切な発注と実施等のための外部機関の活用等の推進
発注者は、必要に応じて、事業部局との連携、公共建築工事の発注と実施(発注条
件の取りまとめ、設計者、施工者等との技術的な事項に関する対話も含む。
)に関す
る発注者支援を受けるため、外部機関(民間を含む。以下同じ。
)や広域的な連携の
仕組みを活用すること。
なお、
外部機関を活用する場合においても、
その責任は発注
者が負うことに留意すること。
しかく参考資料
1 発注者支援業務事例集
<https://www.mlit.go.jp/common/001283771.pdf>
2 発注者支援業務等業務委託様式事例集
<https://www.mlit.go.jp/common/001292369.pdf>
3 地方公共団体におけるピュア型CM方式活用ガイドライン
<https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001362388.pdf> 22NO.7 答申 P5、L8〜11
以下に、それぞれの基本となる事項について、発注者の役割を示す(上記1及び2と、
下記(1)及び(2)は、それぞれ対応する。)。
なお、以下に述べるもののほか、発注者は、品確法等の関係法令等や設計業務、工事等
の契約書に規定された発注者の責務等を適切に果たす必要がある。
しかく解説
(関係法令等に規定された発注者の責務等)
しろまる 品確法、
公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律
(以下、
「入契法」
という。)、契約書(参考資料1、2)
において、発注者の責務等に関して様々な規定が
置かれており、法律に基づく指針等(参考資料3、4、5)
も作成されている。品確法、
入契法、いずれも地方公共団体も対象となっている。それらに規定されている
発注者の役割の主な内容を以下の表に示す。
(参考)関係法令等における発注者の主な役割(品確法関係)
出典:社会資本整備審議会第 21 回官公庁施設部会資料を一部修正 23(参考)関係法令等における発注者の主な役割(入契法関係)
出典:社会資本整備審議会第 21 回官公庁施設部会資料を一部修正 24(参考)関係法令等における発注者の主な役割(契約書関係)
出典:社会資本整備審議会第 21 回官公庁施設部会資料を一部修正
しかく参考資料
1 公共建築設計業務標準委託契約約款
<https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001337820.pdf>
2 公共工事標準請負契約約款
<https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001331100.pdf>
3 発注関係事務の運用に関する指針
<https://www.mlit.go.jp/tec/content/200130reiwaunyousshishin.pdf>
4 公共工事の品質確保の促進に関する施策を総合的に推進するための基本的な
方針(平成 17 年8月 26 日閣議決定、令和元年 10 月 18 日最終変更)
<https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001312867.pdf >
5 公共工事の入札及び契約の適正化を図るための措置に関する指針(平成 13 年
3月9日閣議決定、令和元年 10 月 18 日最終変更)
<https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001312871.pdf> 25NO.8 答申 P5、L12〜25
1. 企画立案等に関する事業部局との連携
事業部局において公共建築工事の企画立案や予算措置が行なわれる。当該企画等に
は、建築物の機能、規模、敷地、設計・工事の工程、設計費・工事費、事業手法等が
含まれる。当該企画や予算措置の内容は、発注者が取りまとめる公共建築工事に関す
る発注条件の基礎となるものである。そのため、発注者は、企画立案や予算措置に関
して技術的な助言(注記)
を必要に応じて行うなど事業部局と十分に連携する必要がある。
また、公共建築工事の企画や予算措置に関して、事業部局が国民に対する説明責任
を果たすに当たって、技術的な助言を必要に応じて行うなど、事業部局と十分に連携
する必要がある。
(注記) 具体的には、上位計画(インフラ長寿命化計画、公共施設等総合管理計画等)との整合性を図るこ
と、事業の合理性や経済性を確保すること、事業の実施の優先順位や緊急性を評価すること、メン
テナンス性(維持管理コストを含む。
)を考慮すること、品質、工期、コストが適切なものとなる
ように調整 NO.3 で解説
すること等が考えられる。
しかく解説
(事業部局に対する技術的な助言)
しろまる 技術的な助言には、答申(上記(注記))に記載されているもののほか、公共建築工
事の企画立案の内容が、都市計画法令や建築基準法令へ適合したものとなるよ
うにすることや、担い手の確保や建設現場の生産性向上に向けて発注・施工時
期の平準化を図るために債務負担行為の積極的な活用等について調整すること
も含まれる。なお、発注・施工時期の平準化にあたっては財務部局のほか、各
事業・発注部局が緊密に連携して取り組みを進めることが必要である。
(参考)発注関係事務の運用に関する指針(令和2年1月 30 日)
(公共工事
の品質確保の促進に関する関係省庁連絡会議)
(参考資料1)
:抜粋
(計画的な発注や施工時期等の平準化)
<繰越明許費・債務負担行為の活用や入札公告の前倒し>
年度当初からの予算執行の徹底、工期が1年に満たない工事についても繰越明許
費の適切な活用や債務負担行為の積極的な活用による年度末の工事の集中を回避す
るといった予算執行上の工夫等により、適正な工期の確保と工事の施工時期の平準
化に取り組む。
また、
発注者としての国及び特殊法人等は、
年度当初から履行されなければ事業を
執行する上で支障をきたす、
又は適切な工期の確保が困難となる工事については、条件を明示した上で予算成立を前提とした入札公告の前倒しを行い、計画的な発注に
努める。
しろまる 地方公共団体が補助金や交付金等を使用する公共建築工事においても、その企
画立案や予算措置が適切なものとなるよう、事業部局が補助金等の適用を受け 26るに当たって、発注者は、その準備段階から事業部局と十分に連携することが
望ましい。
(事業の合理性や経済性の確保)
しろまる 「事業の合理性や経済性の確保」について、国土交通省の所管予算に係る施設
の集約・更新等の官庁営繕事業を対象に、原則として新規事業採択時評価等を
実施(参考資料2)
しており、事業の必要性、合理性、効果の評価を行っている。こ
のうち、合理性の評価が事業案と代替案との経済比較を行うものである。
(事業の実施の優先順位や緊急性の評価)
しろまる 国家機関の建築物においては、
官公庁施設の建設等に関する法律
(昭和 26 年法
律第 181 号。以下「官公法」という。
)第9条に基づき、毎年度概算要求に先立
ち、国土交通大臣が、各省各庁の長より送付された営繕計画書に関して技術的
な見地から緊急度等に関して意見を述べ、各省各庁の長及び財務大臣へ送付し
ている(参考資料3)
。これは、国家機関の建築物として各省各庁間の整備水準等の
均衡を図り、良質な官庁施設の整備を促進することを目的としたものである。
官公法第9条第2項において「営繕計画書には、当該建築物及びその附帯施設
の位置、規模、構造、工期及び工事費を記載するものとする。
」とされている。
また、緊急度については、各省各庁の長から送付された営繕計画書に関して個
別の意見を述べるための緊急度判定に係る技術的事項を定め、その客観性を確
保するため、官庁営繕部では「緊急度判定基準」
(参考資料4)
を制定している。
しろまる 地方公共団体においては、必ずしも上記のような制度は導入されていないもの
の、事業部局が行う公共建築工事の企画立案等について発注部局に事前相談を
行う仕組を構築するなど、それぞれの地方公共団体の実情に応じた制度を導入
することなどが考えられる。 27(参考)国土交通省官庁営繕事業における事業評価概要(評価方法)
出典:社会資本整備審議会第 27 回官公庁施設部会資料を一部修正
しかく参考資料
1 発注関係事務の運用に関する指針
<https://www.mlit.go.jp/tec/content/200130reiwaunyousshishin.pdf>
2 国土交通省の事業評価について(官庁営繕部)
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/sesaku_valuation_valuation.htm >
3 営繕計画書に関する意見書について
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_fr2_000002.html >
4 緊急度判定基準
<https://www.mlit.go.jp/common/001179038.pdf> 28NO.9 答申 P5、L26〜P6、L4
2. 公共建築工事の発注と実施
(1) 諸条件の把握と発注条件の取りまとめ
諸条件の把握・整理、発注条件の調整と取りまとめに関しては、以下に留意した上で
適切に行う必要がある。
<諸条件の把握>
発注者は、建築物や公共建築工事に求められる諸条件に関して、1事業部局からの諸
条件、2多様な関係者(事業部局以外の施設利用者、近隣住民等)からの諸条件、3国
等の政策、4公共建築工事に影響する現場の状況(敷地の地盤条件、都市計画、周辺環
境、既存建築物の状況等)
、を把握・整理する必要がある。なお、事業部局や多様な関係
者からの諸条件に関しては、潜在的なものについても把握するように努める必要があ
る。
しかく解説
(潜在的な諸条件の把握)
しろまる 諸条件の把握に当たって、発注者は、事業部局や多様な関係者から具体的に示
されない場合においても、過去の整備実績を踏まえて想定される諸条件につい
て、それらの工事へ反映するか否かについて事業部局等に確認することなどが
考えられる。例として、業務を効率的に行うための事務室と関係諸室の配置の
考え方や、災害時における使われ方(近隣住民も含む)を想定したものとする
ことなどが考えられる。
しろまる なお、事業部局から、2多様な関係者からの諸条件、3国等の政策、4公共建
築工事に影響する現場の状況、
に関する内容についても伝達されることがある。
その場合、発注者は、それらの諸条件を十分に確認し、発注者があらためて把
握することや、
さらに掘り下げて把握することの必要性を判断する必要がある。
しろまる 諸条件の把握方法としては、事業部局等の関係者に対してヒアリングを行うこ
とや、建築物の特性によっては、ワークショップの実施等により、近隣住民を
含めた施設利用者、専門家、地方公共団体、周辺事業者等から意見聴取を行う
ことも考えられる。さらに、立地する地域や用途・規模などの建築物の特性に
応じ、適切な段階でユニバーサルデザインレビュー(注記)
を実施することが考えら
れる。ユニバーサルデザインレビューの具体的な方法については、全国営繕主
管課長会議が取りまとめた「ユニバーサルデザインの考え方を導入した公共建
築整備のガイドライン」に示されている。
(注記) ユニバーサルデザインの視点に立ったニーズの把握、解決策の検討、評価、フィード
バック(以降の施設整備への評価結果の反映)といった一連の作業を施設整備の各段
階(企画・設計・施工・フォローアップ段階等)において繰り返し行うことで、常に
前の段階よりも高い水準を達成しようとするスパイラルアップの取組をいう。 29NO.10 答申 P6、L5〜8
【敷地に係る事前調査の実施】
発注者は、敷地の地盤条件等の現場の状況把握のために、必要な事前調査(地盤調査
等)を行う必要がある。事前調査に当たっては、
従前の土地利用や地歴情報、土壌汚染、
地下埋設物等の把握にも努める必要がある。
しかく解説
(必要な事前調査)
しろまる 国土交通省の官庁営繕事業において適用している敷地調査共通仕様書(参考資料1)
において、
「敷地測量」、「建築物その他調査」、「地盤調査」の種別等が示されて
いる。敷地測量については、敷地周辺の道路等についても行う必要がある。ま
た、民間工事指針(参考資料2)
に示されている通り、地盤調査に当たっては、近隣
の地盤データについても、
必要に応じて、
国土地盤情報検索サイト
(KuniJiban)
(参考資料3)
を活用して入手可能な地盤データを参照することなどが考えられる。
また、都市計画や周辺環境に関する諸条件についても把握する必要がある。こ
れらについては、地方公共団体が公表している資料や現地確認によって把握す
ることが考えられる。
なお、
事前調査に当たっては、
地中障害物、
埋蔵文化財、
土壌汚染等の有無に留意する必要がある。
しろまる 発注者は、以上のような項目等から、当該事業に応じた事前調査の内容を設定
し、事前調査業務等を発注する必要がある。
(参考)敷地調査共通仕様書:抜粋
2章 敷地測量
1節 一般事項
2.1.1 適用範囲及び種別
(a) この章は、建築物等の敷地並びに敷地周囲の道路等の測量(測量法第4条、第
5条及び第6条に該当しない測量)に適用する。
(b) 測量の種別は次により、適用及び範囲は特記による。
(1) 平面測量
(2) 水準測量
3章 建築物その他調査
1節 一般事項
3.1.1 適用範囲及び種別
(b) 調査の種別は次により、適用及び範囲は特記による。
(1) 建築物調査
(2) 排水調査
(3) 工作物及び立木調査
(4) 電気設備調査 30(5) 機械設備調査
(6) 敷地の履歴調査
4章 地盤調査
1節 一般事項
4.1.1 適用範囲及び種別
(b) 地盤調査、土質試験及びその他試験の種別は次により、適用は特記による。
(1) 地盤調査
(i) ボーリング
(ii) サンプリング
(iii) サウンディング
(iv) 地下水調査
(v) 物理探査・検層
(vi) 載荷試験
(2) 土質試験
(i) 物理試験
(ii) 変形・強度試験
(iii) 圧密試験
(iv) 安定化試験
(3) その他試験
(i) 地盤改良関連の試験
(ii) 建設発生土関連の試験
(参考)民間工事指針:抜粋
発注者は、地盤情報について調査会社からの報告のほか、国や都道府県等の公的機関
が保有、公開している地盤データベースや施工者の過去の施工実績に基づく情報等を活
用して適切に調査を行わせ、特に急傾斜の地層や支持層の不陸が著しい状況が明らかと
なった場合、関係者間で情報共有し、追加調査の必要性や施工時の注意事項について、
専門的な知見も活用して適切に判断することが必要である。
しかく参考資料
1 敷地調査共通仕様書
<https://www.mlit.go.jp/common/001313619.pdf >
2 民間建設工事の適正な品質を確保するための指針(民間工事指針)
<https://www.mlit.go.jp/common/001138786.pdf>
3 国土地盤情報検索サイト(KuniJiban)
<http://www.kunijiban.pwri.go.jp/jp/index.html> 31NO.11 答申 P6、L9〜16
【改修工事における事前調査の実施等】
発注者は、改修工事の対象となる既存建築物の状況把握のために、必要な事前調査
(コンクリートの強度や中性化深さの調査、アスベストの有無の調査等)を行う必要
がある。
工事の段階において行うことが合理的な調査(仮設足場が必要なもの(外壁のひび
割れ等の施工数量の調査等)
、隠蔽部分の調査等)に関しては、発注者は、その調査内
容を設計図書に明記するとともに、
調査費用を工事の予定価格に反映する必要がある。
しかく解説
(改修工事において必要な事前調査)
しろまる 改修工事において必要な事前調査については、答申に例示されているもの(コ
ンクリートの強度や中性化深さの調査、アスベストの有無の調査)のほか、既
存建築物の鉄筋・配管・配線の状況等の調査を必要に応じて行うことが考えら
れる。なお、改修工事における事前調査や設計業務の発注に当たっては、建築
物の現状が既存図面と異なっている場合が多いことから、受注者において現地
確認を行うことを発注条件とすることも考えられる。
(アスベストの有無の調査)
しろまる 改修工事において、改修対象部材にアスベストが含まれていることが工事中に
判明した場合、大幅な工事費用の増加、工期の延長のリスクとなることから、
既存部材のアスベスト含有量調査については、設計段階までに実施し、工事の
発注条件に反映することが望ましい。なお、これは解体工事の場合も同様であ
ると考えられる。
しろまる 令和2年に改正された大気汚染防止法及び石綿障害予防規則に基づき、解体工
事等の発注者は、当該工事の受注者によるアスベスト等の使用の有無に係る事
前調査等や、調査結果の記録の作成が適切に行われるよう配慮しなければなら
ないことに留意する必要がある。
(改修工事の場合において、工事の段階で行うことが合理的な調査)
しろまる 事前調査については、本来、設計段階までに実施し、その結果を工事の発注条
件に反映する必要があるが、答申に例示されているもの(仮設足場が必要なも
の(外壁のひび割れ等の施工数量の調査等)
、隠蔽部分の調査等)のように、既
存建築物における様々な制約等により工事の段階において行うことが合理的な
場合もある。この場合において、発注者は、工事の段階で行った調査を踏まえ
て実施した工事内容(施工数量等)により、契約変更を行う必要がある。 32NO.12 答申 P6、L17〜P7、L19
<発注条件の取りまとめ>
発注者は、把握・整理した諸条件について、以下に留意しつつ発注条件として取りま
とめる必要がある。
【発注条件の重要性】
発注者は、設計者、施工者等との契約において、発注条件を決定する権限を有してお
り、同時に決定に係る責任を負う。一方で、設計者、施工者等は、発注条件(設計者は
設計業務の発注条件、
施工者は工事の設計図書、
工事監理者は工事監理業務の発注条件)
に示された範囲に関して、契約書に基づき、発注者に対する責任を負う。
設計図書は、設計者としての善良な管理者の注意義務により作成されるが、その前提
となるものは、設計業務の発注条件として発注者から示された事項(発注条件の内容に
ついて発注者から設計者に具体的に伝えられたものを含む。
)である。つまり、設計業務
の発注条件に示されていない事項は、基本的に設計図書に反映されない。一方で、工事
は設計図書のとおりに行うことが義務付けられているため、設計図書に反映されていな
い事項は工事にも反映されない。
発注者は、以上のことを認識した上で、必要な事項を過不足なく記載した適切な発注
条件を取りまとめる必要がある。
【諸条件の調整と発注条件への反映】
発注者は、発注条件について、事業部局が作成した公共建築工事の企画及び予算措置
の内容に整合したものとする必要がある。
発注者は、把握した諸条件の内容が、企画及び予算措置の内容を上回る場合や、諸条
件に相反や矛盾が見られる場合には、事業部局と協議を行い、諸条件を取捨選択したり
優先順位をつけたりするなど調整を行った上で、公共建築工事の品質、工期、コストが
適切なものとなるように発注条件として取りまとめる必要がある。発注条件は、相互矛
盾が無く、可能な限り客観的で明確なもの(可能なものは数値化する。
)とする必要があ
る。
なお、発注条件のうち品質に関するものについては、国民からの求めに応じた過不足
のない公共建築としての適切な品質が確保されるとともに、その品質が将来にわたって
維持されるよう、メンテナンス性(維持管理コストを含む。
)にも配慮したものとする必
要がある。
【発注条件の変更による悪影響への留意】
設計の段階以降、特に工事の段階における発注条件の変更は、公共建築工事の品質、
工期、コストに悪影響を及ぼす可能性が高くなる NO.15 で解説
ため、発注者は、可能な限り
そのような事態が生じないように、事業部局等との調整や事前調査を十分に行い、自ら
の経験も踏まえた改善を図りながら、発注条件を適切なものとしておく必要がある。 33しかく解説
(設計者としての善良な管理者としての注意義務)
しろまる 設計者は、発注者から示された設計業務の発注条件を前提として、設計者とし
て専門家(建築士)の能力から考えて通常期待される注意義務を果たして設計
図書を作成するということであり、設計業務に関する法令及び実務に精通し、
関係法令、技術基準に適合した設計を行うことや、建築物の質の向上に寄与す
るように業務を行うことなどが求められる。
(必要な事項を過不足なく記載した適切な発注条件)
しろまる 発注条件は、設計業務においては、面積等の施設要件、工事費、工事の工期、
敷地・地盤条件、
事業目標、
整備水準等で構成されており、
それらについては、
主に業務の仕様書において示されている。
工事においては、
工事目的物の形状・
寸法・仕様、機器の形状・仕様・性能・規格等、施工条件等で構成されており、
それらについては、工事の図面、仕様書、現場説明書に示されている。
しろまる なお、国土交通省の官庁営繕事業においては、設計業務の発注条件として、公
共建築設計業務委託共通仕様書(参考資料1)
を適用し、特記仕様書に「企画書」
(参考
資料2)
を添付している。
「企画書」とは、把握した諸条件を取りまとめる書式で
あり、主に新築の事業の場合に作成することを原則としている。また、工事の
場合は、当該工事に公共建築工事標準仕様書(参考資料3)
を適用する旨を、個別工
事の図面(特記仕様書)に記載している。
(把握した諸条件の調整と発注条件の取りまとめ)
しろまる 公共建築工事が予算措置された以降は、
トレードオフの関係にある品質、
工期、
コストを予算の範囲内で調整することが原則となる。このことを踏まえ、発注
者は、把握した諸条件の調整、事業部局との協議、発注条件の取りまとめに当
たって、品質、工期、コストのそれぞれが適切なものとなるよう留意する必要
がある。また、余裕期間制度(参考資料4)
や債務負担行為の活用等により、発注・
施工時期の平準化に努める必要がある。
【品質、工期、コストの調整例】
・ 現場での施工上の制約(注記)
に応じた工期の延長
(注記)現場に進入可能な工事車両や重機の大きさの制約、隣接する施設の特性に応じた騒音・振動が発生
する作業時間の制約等
・ 予算措置の内容を上回る諸条件を反映させる場合、事業部局による追加の予算措置
【事業部局からの諸条件と、それ以外の諸条件の調整例】
・ (特に事業部局が異なる)複数機関が入居する場合の調整(入居階・位置、面積割、共
用部分の設置位置、専用部分のセキュリティ、エレベーターの計画等)
・ バリアフリー
(必要な設備、
施設管理者による対応方法等)、環境負荷低減技術の採用、
木材利用(対象範囲等)等の国等の政策の反映に関する調整
・ 地域のまちづくりへの寄与に関する調整(オープンスペースの確保、壁面線の後退、閉 34庁日の駐車場利用等)
・ 災害時における近隣住民の使用に関する調整(使用範囲、必要な設備等)
・ 当該敷地におけるインフラ関係の条件との調整(電気、ガス、水道、下水道、通信等)
・ 建替や改修工事における行政サービスの継続に関する調整(仮庁舎、施工手順、安全確
保等)
・ 別途発注される関連工事との工事間調整(工期、施工手順、安全確保等)
しろまる 設計段階においても、発注条件の中で相互に関連する事項については、対応の
方法によっては相反する場合がある。相反する例について、「(参考)発注条件
の一事例」の図中、
「例1」から「例3」に示す。各例の概要については以下の
通りである。
【諸条件の調整例(設計段階)】・ 例1:
「工事費」と「整備水準」、「技術提案」
設計内容によっては工事費が増大する場合があることに留意する必要がある。
・ 例2:
「工事工期」と「工事施工等の条件明示」
居ながらの改修工事において、執務エリアと作業エリアを分割して入れ替えな
がら段階的に工事を行う場合は、
その入れ替え回数が多くなればなるほど工期が
長くなることに留意する必要がある。なお、このような、居ながらの改修工事に
おける作業エリアの設定や執務エリアとの入れ替え回数等の施工手順について、
発注者は、工事の施工条件として設計図書に明示する必要がある。
また、
休日や夜間のみしか作業ができないなどの制約がある場合は、
発注者は、
工事の発注条件として設計図書に明示するとともに、
それらの制約も考慮して工
期を設定する必要がある。
・ 例3:
「施設が保有すべき耐震安全性の確保」と「組織改変に柔軟に対応できる平面、
執務環境、動線等の機能が低下しない計画、フレキシビリティ」
前者の条件(耐震安全性の確保)を満足させながら、後者の条件(組織改編に
柔軟に対応できる平面等)をどの程度満足させるかについて、発注者が判断する
必要がある。 35(参考)官庁営繕事業における発注条件の一事例
出典:社会資本整備審議会第 21 回官公庁施設部会資料(一部を抜粋) 36しかく参考資料
1 公共建築設計業務委託共通仕様書
<https://www.mlit.go.jp/common/001280205.pdf>
2 企画書
・官庁施設の企画書及び企画書対応確認書の標準的書式(PDF)
<https://www.mlit.go.jp/common/001395695.pdf>
・企画書の標準的書式(エクセル)
<https://www.mlit.go.jp/common/001126511.xls>
・企画書対応確認書の標準的書式(エクセル)
<https://www.mlit.go.jp/common/001126512.xls>
3 公共建築工事標準仕様書
・建築工事編
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/kenchiku_hyoushi.html>
・電気設備編
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk4_000017.html>
・機械設備編
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk6_000058.html>
4 余裕期間制度の活用について
<https://www.mlit.go.jp/common/001135341.pdf> 37NO.13 答申 P7、L20〜30
(2) 設計業務、工事等の発注と実施
発注条件に基づく設計業務、工事等の発注と実施に関しては、以下に留意した上で
適切に行う必要がある。
<設計業務、工事等の発注>
発注者は、透明性・公平性を確保した上で、それぞれの公共建築工事に最も適した
設計者、施工者等を選定する必要がある。
発注者は、設計業務、工事監理業務の発注に当たっては、それぞれの業務内容に応
じた予定価格を適正に設定する必要がある。
発注者は、工事の発注に当たっては、設計図書に基づき適切に積算数量を算出し、
建築市場の動向を考慮して、それぞれの工事内容に応じた予定価格を適正に設定する
必要がある。
しかく解説
(最も適した設計者の選定)
しろまる 国民からの求めに応じた過不足のない適切な品質を確保することが求められる
公共建築の設計業務を委託しようとする場合は、設計料の多寡による選定方法
によってのみ設計者を選定するのではなく、設計者の創造性、技術力、経験等
を適正に審査の上、設計業務の内容に最も適した設計者を選定することが極め
て重要であることから、国土交通省の官庁営繕事業では、建築士が行うことが
義務付けられている設計業務等の設計者について、原則として、プロポーザル
方式(注記)
により選定している。
国土交通省では、
このような公共建築工事における
設計者の選定の重要性やプロポーザル方式の概要等についてわかりやすく紹介
したパンフレット(参考資料1)
を作成している。
(注記) 評価テーマに関する技術提案と当該業務の実施方針の提出を求め、技術的に最適な者を
契約の相手方とする方式である。国土交通省の官庁営繕事業では、原則として、建築士
法第3条又は同3条の2に規定する設計業務等に適用している。
(参考)官公庁施設の設計業務委託方式の在り方について(平成3年3月建築審
議会答申)
:抜粋
官公庁施設は国民共有の資産として質の高さが求められることから、その設計業務
を委託しようとする場合には、設計料の多寡による選定方法によってのみ設計者を選
定するのではなく、設計者の創造性、技術力、経験等を適正に審査の上、その設計業務
の内容に最も適した設計者を選定することが極めて重要である。 38(参考)公共工事の品質確保の促進に関する法律(平成 17 年法律第 18 号):抜粋
(定義)
第2条(略)
2 この法律において「公共工事に関する調査等」とは、公共工事に関し、国、特殊法
人等(公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第二条第一項に規定する
特殊法人等をいう。以下同じ。
)又は地方公共団体が発注する測量、地質調査その他の
調査(点検及び診断を含む。
)及び設計(以下「調査等」という。
)をいう。
(競争参加者等の技術提案を求める方式)
第15条(略)
2〜5(略)
6 発注者は、その発注に係る公共工事に関する調査等の契約につき競争に付さない
ときは、受注者となろうとする者に対し、技術提案を求めるよう努めなければなら
ない。ただし、発注者が、当該公共工事に関する調査等の内容に照らし、その必要が
ないと認めるときは、この限りでない。
7(略)
しろまる また、一般的な耐震診断や積算業務など、技術的に定型な業務については、原
則として、総合評価落札方式(注記)
や価格競争方式により選定している。
(注記) 技術的に定型な業務について総合評価落札方式を採用する場合は、原則として、評価
テーマに関する技術提案を求めず、
当該業務の実施方針の提出を求めて価格と総合評
価を行う簡易型としている。
しろまる 国土交通省では「建設コンサルタント業務等におけるプロポーザル方式及び総
合評価落札方式の運用ガイドライン」
(参考資料2)
において、
設計業務や工事監理業
務等の入札・契約についての具体的な運用を取りまとめている。 39(参考)設計業務等の発注方式の選定の考え方(国土交通省の官庁営繕事業の例)
出典:社会資本整備審議会第 19 回官公庁施設部会資料(一部修正)
しろまる 全国営繕主管課長会議では、全国の公共建築工事の発注者が適切な設計者選定
を行うためのマニュアルとして
「建築設計業務委託の進め方」
(参考資料3)
を作成し、
公表している。
(最も適した施工者の選定)
しろまる 品確法において、工事の品質は、経済性に配慮しつつ価格以外の多様な要素を
も考慮し、価格及び品質が総合的に優れた内容の契約がなされることにより工
事の品質が確保されなければならないとされていることから、国土交通省の官
庁営繕事業では、工事の性格、地域の実情等を踏まえ、競争性の確保に留意し
つつ、工事の経験及び工事成績や地域要件など、適切に競争参加資格を設定す
るとともに、工事の施工者について、予定価格が一定の価格以上の工事を対象
として、原則、総合評価落札方式(注記)
により選定している。
(注記) 評価テーマに関する技術提案(標準型の場合)と当該業務の実施方針の提出を求めて価
格と総合評価を行う方式である。
しろまる 同じく品確法において、発注者の責務として、公共工事等の適正な実施が通常
見込まれない契約の締結を防止するため、低入札価格調査基準又は最低制限価
格の設定その他必要な措置を講ずることが挙げられていることから、国土交通
省の官庁営繕事業では、予定価格が一定の価格以上の工事等を対象として、調
査基準価格を設定し、また品質を確保するための体制の確保状況を確認し、入
札説明書等に記載された要求要件を確実に実現できるかどうかを審査・評価す
る施工体制確認型総合評価落札方式を試行している。 40しろまる 国土交通省では「公共建築工事総合評価落札方式適用マニュアル・事例集」
(参考
資料4)
や「国土交通省直轄工事における総合評価落札方式の運用ガイドライン」
(参考資料5)
において、総合評価落札方式の具体的な運用を取りまとめている。
(参考)公共工事の品質確保の促進に関する法律(平成 17 年法律第 18 号)
:抜粋
(基本理念)
第3条(略)
2 公共工事の品質は、建設工事が、目的物が使用されて初めてその品質を確認でき
ること、その品質が工事等(工事及び調査等をいう。以下同じ。
)の受注者の技術的
能力に負うところが大きいこと、個別の工事により条件が異なること等の特性を有
することに鑑み、
経済性に配慮しつつ価格以外の多様な要素をも考慮し、
価格及び品
質が総合的に優れた内容の契約がなされることにより、確保されなければならない。
3〜12(略)
(発注者等の責務)
第7条(略)
一〜三(略)
四 その請負代金の額によっては公共工事等の適正な実施が通常見込まれない契約
の締結を防止するため、その入札金額によっては当該公共工事等の適正な実施が
通常見込まれない契約となるおそれがあると認められる場合の基準又は最低制限
価格の設定その他の必要な措置を講ずること。
(成績評定の発注者間での相互利用)
しろまる 国土交通省の官庁営繕事業の設計業務のプロポーザル方式等に当たっては、設
計者の技術力を適切に評価する観点から、配置予定技術者が過去に実施した設
計業務等の成績(業務成績)を評価項目の一つとしている。また、工事の総合
評価落札方式に当たっては、企業の技術力を適切に評価する観点から、企業及
び技術者が過去に実施した工事の成績(工事成績)を評価項目の一つとしてい
る。
しろまる さらに、公共建築工事の発注者間で連携して、全体として、より一層の品質確
保を図る観点から、業務成績、工事成績いずれについても、中央官庁営繕担当
課長連絡調整会議幹事会及び全国営繕主管課長会議において申し合わせを行い、
公共建築工事の発注者間での相互利用を進めている(参考資料6、7、8、9)
。相互利用
に参加するためには、中央官庁営繕担当課長連絡調整会議幹事会及び全国営繕
主管課長会議で取りまとめた標準採点表によって成績評定を行う必要がある。
しろまる なお、
業務成績の相互利用に当たっては公共建築設計者情報システム
(PUBDIS) 41(参考資料10)
に蓄積された成績データが活用されており、工事成績の相互利用に当
たっては参加機関から登録された成績データを国土交通省でとりまとめたデー
タベースが各機関で活用されている。いずれにおいても発注機関や地域等の各
種条件により効率的に成績を検索することができるようになっている。
しろまる 地方公共団体が相互利用に参加し、国の機関の成績を評価対象とする場合、必
ずしも全ての成績を評価対象とする必要はなく、評価対象範囲を当該地方公共
団体に立地する公共建築の設計業務や工事に限定するなど、発注者の判断で柔
軟な運用が可能である。ただし、その場合、競争参加者に対して、評価対象と
する成績の範囲を事前に明示する必要がある。
(参考)公共工事の品質確保の促進に関する施策を総合的に推進するための基
本的な方針(平成 17 年8月 26 日閣議決定、令和元年 10 月 18 日最終
変更)
:抜粋(「7 発注関係事務の環境整備に関する事項」より抜粋)
新規参入者を含めた建設業者の技術的能力の審査を公正かつ効率的に行うため
には、各発注者が発注した工事の施工内容や工事成績評定、当該工事を担当した技
術者に関するデータを活用することが必要である。このため、各発注者が発注した
工事について、
工事の施工内容や工事成績評定等に関する資料をデータベースとし
て相互利用し、技術的能力の審査において活用できるよう、データベースの整備、
データの登録及び更新並びに発注者間でのデータの共有化を進めるものとする。(「8 調査等の品質確保に関する事項 (3)調査等における技術的な能力の審査の
実施、調査等の性格等に応じた入札及び契約の方法等」より抜粋)
成績評定の結果は、
業務を遂行するのにふさわしい者を選定するに当たって重要
な役割を果たすことから、国と地方公共団体との連携により、調査等の特性を考慮
した評定項目及び評価方法の標準化を進めるとともに、発注者は、業務内容や成績
評定の結果等のデータベース化を進め、相互に活用するよう努めるものとする。
(業務内容に応じた適正な予定価格の設定)
しろまる 発注者は、公共建築工事の個別性に留意しつつ、設計業務、工事監理業務の業
務内容を設定し、その業務内容に応じて、建築士法に基づく業務報酬基準(参考資
料11)
に基づき予定価格を適正に設定する必要がある。例えば、
「特殊な敷地上の
建築物」、「木造の建築物(小規模なものを除く)」、
「特殊な形状の建築物」、「特
殊な解析、性能検証等を要する建築物」、「特殊な構造の建築物(国土交通大臣
の認定を要するものを除く。)」、「免震建築物(国土交通大臣の認定を要するも
のを除く。)」
「特別な性能を有する設備が設けられる建築物」の場合は、それぞ
れ総合、
構造または設備の直接人件費を割り増しする必要がある。
また、
「設計、
工事監理に関する標準業務に付随する追加的な業務」などの標準業務に含まれ
ない業務内容を追加する場合は、該当する業務費用を付加する必要がある。 42しろまる 国土交通省の官庁営繕事業においては、官庁施設の設計業務等積算基準及び同
要領(参考資料12)
に基づき設計業務、工事監理業務の予定価格を設定している。な
お、官庁施設の設計業務等積算基準及び同要領は、業務報酬基準に準拠した内
容となっている。
(適切な積算数量の算出)
しろまる 国土交通省においては、公共建築工事の適正な予定価格の作成に資するため、
「営繕工事積算チェックマニュアル」
(参考資料13)
等を作成している。これは、積算
数量の拾い忘れや違算を防止し、精度向上を図るとともに単価等の設定を適切
に行えるよう積算業務の各過程において、チェックすべき項目や数量確認のた
めの数値指標を取りまとめ、定めたものである。
しろまる また、発注者は、工事の契約に当たって、積算数量の位置付けを明確にする必
要がある。国土交通省の官庁営繕事業においては、全ての競争入札工事を対象
として、入札時積算数量書活用方式(参考資料14)
を平成 28 年度から試行し平成 29
年度から本格導入している。この方式は、入札参加者に発注者が示す「入札時
積算数量書」の活用を促し、契約後にその積算数量に疑義が生じた場合に受発
注者間で協議し必要に応じて数量を訂正し請負代金額を変更することを契約事
項とするものである。これまで建築工事においては積算数量を参考扱いとして
いたため、積算数量の取扱いについて公共建築工事の発注者によって対応にば
らつきがあったが、この方式を導入することにより、その取扱いが明確化され
るものである。また、発注者と受注者間における積算数量の確認方法、協議等
について円滑な運用がなされるよう入札時積算数量書活用方式運用マニュアル
(参考資料14)
を作成している。
(工事内容に応じた適正な予定価格の設定)
しろまる 国土交通省では、公共建築工事の適正な予定価格の作成に資するため、「『営繕
積算方式』活用マニュアル」
(参考資料15)
等を作成している。これは、公共建築工事
積算基準とその運用に係る各種取組をパッケージ化した積算手法である「営繕
積算方式」をわかりやすく解説したものとなっている。
しろまる 積算数量の算出や製造業者・専門工事業者の見積収集などの適正な予定価格を
設定するために必要となる業務を設計者等に委託する場合は、建築士法に基づ
く業務報酬基準において「設計に係る成果図書に基づく詳細工事費の算定に係
る業務」は「設計に関する標準業務に付随する追加的な業務」であることに留
意する必要があり、官庁施設の設計業務等積算要領において成果図書に基づく
積算業務を委託する場合の直接人件費に係る業務人・時間数(業務量)の算定
方法を示している。
しろまる 適正な工期設定に伴うコスト増加のしわ寄せが必要経費の削減につながらない
よう、工事費の積算においては、法定福利費(参考資料16)
や安全衛生経費を適切に
計上する必要がある。営繕工事では、これらの経費は直接工事費や共通費の一
部として計上している。 43しろまる 品確法第7条第1項第1号により、適正な積算に基づく設計書金額の一部を控
除する行為(通称、
「歩切り」という。
)による予定価格の切り下げは法律違反
であること等を踏まえ、発注者は市場の実勢等を的確に反映した積算による予
定価格の適正な設定(参考資料17)
に取り組む必要がある。
しろまる また、見積価格等を参考に価格を設定する場合においても、妥当性の確認を行
うことなく見積価格等の一部を控除する行為は、公平性・透明性を損ない、実
質的に歩切りと類似する結果を招くおそれがあるため、厳に慎む必要がある。
(参考)発注関係事務の運用に関する指針(令和2年1月 30 日)
(公共工事の品質
確保の促進に関する関係省庁連絡会議)
:抜粋
(適正利潤の確保を可能とするための予定価格の設定)
予定価格の設定に当たっては、
工事の品質確保の担い手が中長期的に育成及び確保さ
れるために、
工事を施工する者が適正な利潤を確保することができるよう、
適切に作成
した設計図書に基づき、
経済社会情勢の変化を勘案し、
市場における労務単価及び資材・機材等の取引価格、健康保険法(大正11年法律第70号)等の定めるところにより事
業主が納付義務を負う保険料、
工事に従事する者の業務上の負傷等に対する補償に必要
な金額を担保するための保険契約の保険料、
工期、
施工の実態等を的確に反映した積算
を行う。
積算に当たっては、建設業法(昭和24年法律第100号)第18条に定める建設工
事の請負契約の原則を踏まえた適正な工期を前提として、
労働環境の改善状況、
ICT の
活用状況を含めた現場の実態把握に努めるとともに、
これに即した施工条件を踏まえた
上で最新の積算基準等を適用する。また、週休2日を確保すること等が重要であり、実
態を踏まえて、労務費、機械経費、間接経費を補正するなどにより、週休2日等に取り
組む際に必要となる経費を適正に計上する。
(後略)
しかく参考資料
1 パンフレット「プロポーザルを始めよう-質の高い建築設計を目指して-」
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/sesaku/proposal/2008-8.pdf>
2 建設コンサルタント業務等におけるプロポーザル方式及び総合評価落札方式
の運用ガイドライン
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001401150.pdf>
3 建築設計業務委託の進め方
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/susumekata.html>
4 公共建築工事総合評価落札方式適用マニュアル・事例集
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/hinkaku_sougou.html> 445 国土交通省直轄工事における総合評価落札方式の運用ガイドライン
(注記) 施工確認型総合評価落札方式の試行について掲載
<https://www.mlit.go.jp/common/001068241.pdf>
6 建築設計に関する成績評定の相互利用
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_sougoriyou_000012.html>
7 建築設計等委託業務成績評定要領作成指針等
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/hinkaku_seiseki_hyoutei_cons.html>
8 公共建築工事に関する工事成績の相互利用について
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk2_000001_1.html>
9 公共建築工事成績評定要領作成指針
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/hinkaku_seiseki_hyoutei.html>
10(参考)公共建築設計者情報システム(PUBDIS)(注記)(一社)公共建築協会
<https://www.pbaweb.jp/pubdis2>
11 業務報酬基準(平成 31 年国土交通省告示第 98 号及び平成 27 年国土交通省告
示第 670 号)
<https://www.mlit.go.jp/common/001269165.pdf >
<https://www.mlit.go.jp/common/001184374.pdf >
12 官庁施設の設計業務等積算基準及び同要領
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/kijun_gyoumusekisankijun.htm>
13 営繕工事積算チェックマニュアル
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/shiryou_sekisan_unnyou.htm#s6>
14 入札時積算数量書活用方式・入札時積算数量活用方式運用マニュアル
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk2_000035.html>
15 「営繕積算方式活用」マニュアル
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk2_000009.html>
16 建設業における社会保険加入対策について
<https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk2_000080.html>
17 「歩切り」の廃止による予定価格の適正な設定について
<https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk1_000100.html> 45NO.14 答申 P7、L31〜35
<設計意図伝達業務、工事監理業務の発注>
発注者は、工事の段階において行う設計意図伝達業務や工事監理業務を、適切に発
注する必要がある。なお、設計意図伝達業務は、設計意図を正確に伝えるために工事
の段階において行われる実施設計に関する業務であることから、設計図書を作成した
設計者に発注する必要がある。
しかく解説
(設計意図伝達業務の適切な発注)
しろまる 設計意図伝達業務については、設計業務が終了しないと委託すべき業務内容や
業務量が決まらないため、
国土交通省の官庁営繕事業においては、
原則として、
設計業務と別契約としている。なお、設計業務については、その適切な履行期
間を確保する観点等から、工事発注の前年度までに完了する場合も多くなって
いる。
しろまる 設計意図伝達業務、工事監理業務、いずれにおいても、建築士法に基づく業務
報酬基準等に基づき予定価格を設定する必要がある。
(設計意図伝達業務の設計図書を作成した設計者への発注)
しろまる 設計意図伝達業務は、工事施工段階において、設計者が、設計意図を正確に伝
えるための質疑応答、説明等や、工事材料、機器等の選定に関する設計意図の
観点からの検討、助言等を行うもので、設計意図を正確に把握している当該設
計図書を作成した設計者が行う必要があるものと考えられる。
しろまる 国土交通省の官庁営繕事業の設計業務において設計意図伝達業務を発注する場
合(主に新築、増築等に係る設計業務)は、原則として、設計意図伝達業務を
随意契約する予定がある旨を明示して手続開始の公示を行っている。
しろまる また、
工事の工程に連動した
「遅滞ない設計意図伝達」
を確実に実施するため、
設計意図伝達業務委託契約の仕様書において、常に工事の工程を確認して業務
を実施することや、工事の工程に合わせて検討、報告等の期限が設定された場
合は、これを遵守すること等を契約事項として規定することとしている(参考資料1)。
(工事監理業務の適切な発注)
しろまる 全国営繕主管課長会議では、工事監理業務の委託の基本的な考え方や、発注者
と工事監理業務受注者との役割分担等を整理した公共建築の工事監理等業務委
託マニュアル(参考資料2)
を作成している。同マニュアルでは、公共建築の工事監
理方式として、1一括委託方式(設計業務の受注者が設計意図伝達と工事監理
の両方を一括して行う方式)、2第三者監理方式
(設計業務の受注者以外の第三
者が工事監理を行う方式)
3自主監理方式
(発注者自らが工事監理を行う方式)
の 3 つの方式とそれぞれの特徴が示されており、発注者は、各方式の特徴を十 46分把握した上で、発注しようとする工事の特性等に応じてふさわしい工事監理
方式を選択する必要があるとし、2の第三者監理方式に焦点を当てて解説して
いる。
しろまる なお、工事監理業務の委託を行わずに発注者が建築基準法上の工事監理を行う
場合(上記マニュアルの3自主監理方式に該当)は、工事監理者は一級建築士
等の必要な資格を有する者でなければならないことに留意する必要がある。
しろまる 国土交通省の官庁営繕事業においては、工事監理業務について、設計内容に客
観的な技術的検討を加え、適正な品質確保をより一層推進するため、第三者性
を確保する必要があることから、当該工事の設計者とは異なる者と契約するこ
とを原則とし、さらに、価格競争方式または総合評価落札方式により受注者を
選定することを原則としている。なお、工事監理業務を設計者と同一の者と契
約する場合においても、建築工事監理業務委託契約書第9条第2項に規定する
通り、工事監理業務の管理技術者は当該工事の設計業務の管理技術者と同一の
者としないこととしている。
しかく参考資料
1 遅滞ない設計意図伝達(施工段階の設計)
<https://www.mlit.go.jp/common/001207355.pdf>
2 建築工事監理等業務委託の進め方-公共建築の工事監理等業務委託マニュアル-
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk6_000067.html> 47NO.15 答申 P8、L1〜7
<設計業務、工事等の実施>
公共建築工事の品質確保のため、発注者は、設計者、施工者等との技術的な事項に
関する対話を十分に行う必要がある。
また、発注者は、設計、工事の段階において発注条件の変更の必要が生じた場合に
は、事業部局と必要な協議をし、公共建築工事の品質、工期、コストの整合がとれた
ものとなるように変更内容を調整し、契約変更を適切に行う必要がある。
しかく解説
(設計者、施工者等との技術的な事項に関する対話)
しろまる 良質な公共建築を残すためには、発注者と受注者がその認識を共有し技術的に
対等な関係で「技術的な事項に関する対話」を十分に行うことが重要である。
このためには発注者にも一定の技術力が必要である。
しろまる 「技術的な事項に関する対話」については、建築に関する専門知識を有する設
計者や施工者等にその能力を最大限に発揮してもらうために、発注者は、発注
条件を実現するための具体的な対応方法やその妥当性を設計者や施工者等に対
して確認すること、
必要に応じてより良い提案を求めることなどが考えられる。
しろまる このような「技術的な事項に関する対話」を適切に行うためには、発注者は、
発注条件について、必要な事項を過不足無く記載するとともに、相互矛盾が無
く、可能な限り客観的で明確なもの(可能なものは数値化する。
)とする(解説
NO.12 の答申本文<発注条件の取りまとめ>を参照)とともに、技術的な事項
に関する確認等に当たっては、可能な限り客観的、定量的な観点から行うこと
が望ましい。
しろまる なお、答申において、発注者の体制、職員の配置状況等により、
「技術的な事項
に関する対話」を行うことが困難な発注者は、発注者支援を受けるため外部機
関を活用することの必要性が示されていることに留意する必要がある。
(参考)答申:抜粋
III.発注者がその役割を適切に果たすための方策
1.多様な発注者の状況
(前略)
一方で、
一部の発注者においては、
発注者の役割を適切に果たすことが困難となっ
ている状況も見受けられる。
その要因としては、
これまで、
公共建築工事の発注者が
果たすべき役割について十分に整理されておらず、発注者が自らの役割について適
切に理解することが困難であること、
発注者支援を受けないことで設計者、
施工者等
との技術的な事項に関する対話が十分に行われていないことなどが考えられる。
3.発注者がその役割を適切に果たすための方策 48(3)個別の公共建築工事の適切な発注と実施等のための外部機関の活用等の推進
発注者は、必要に応じて、事業部局との連携、公共建築工事の発注と実施(発注条
件の取りまとめ、設計者、施工者等との技術的な事項に関する対話も含む。
)に関す
る発注者支援を受けるため、外部機関(民間を含む。以下同じ。
)や広域的な連携の
仕組みを活用すること。
なお、
外部機関を活用する場合においても、
その責任は発注
者が負うことに留意すること。
しろまる また、国土交通省の官庁営繕事業では、生産性向上を推進するべく、工事の各
工程において、発注者、設計者、工事監理者、工事受注者、施設管理者等の関
係者間調整を円滑化し、現場への指示等を適時に行えるよう、発注者として実
施する事項として以下の3点を整理している(参考資料1)。・設計意図を遅滞なく設計者から工事受注者等に伝達するため、設計意図伝達
業務において、検討期限を遵守することなどを契約事項とする。
・納まり等の調整を効率化するため、
各種ツール(BIM(注記)
等)を活用した取組を
促進する。
・関係者間での情報共有や検討等を迅速化するため、関係者が一堂に会する会
議の早期開催に努めるほか、情報共有システムの活用を促進する。
(注記) Building Information Modeling の略
しろまる さらに、工事受注者へ提出を求める工事関係図書等のさらなる削減ができるよ
う、省略・集約が可能な工事関係図書等を明示している。
(参考資料2)
(発注条件の変更に当たっての事業部局との協議)
しろまる 本来、設計や工事の手戻りが生じるような発注条件の変更は、追加の検討や修
正作業のための負担に加え、履行期間や工期の延長が必要となる場合があるた
め、事業部局等との調整や事前調査を十分に行うことによって可能な限り避け
る必要がある。しかしながら、やむを得ず、設計、工事の段階で発注条件を変
更する必要が生じた場合は、品質、工期、コストはトレードオフの関係にある
ことから、発注条件の変更が、品質、工期、コストそれぞれに与える影響や、
対応の可否について、事業部局と協議を行う必要がある。
(契約変更の適切な実施)
しろまる 発注者は、
発注条件を変更する必要が生じた場合等、
必要な場合には、
工期(業務においては履行期間)や契約金額について契約書の規定に基づき契約変更を
行う必要がある(参考資料3、4、5)。しろまる また、
発注者は、
受注者から積算数量に関する協議を求められた場合において、
契約書等の規定に基づき、必要があると認められるときは契約変更を行う必要
がある。
しろまる 国土交通省の官庁営繕事業においては、入札時積算数量書活用方式により、入 49札時に発注者が示した「入札時積算数量書」の数量について契約後に疑義が生
じた場合に受発注者間で協議し、必要に応じて数量を訂正し請負代金額を変更
している。
しかく参考資料
1 営繕工事の生産性向上に向けた施工段階における関係者間調整の円滑化
<https://www.mlit.go.jp/common/001226933.pdf>
2 営繕工事における工事関係図書等に関する効率化の徹底
<https://www.mlit.go.jp/common/001232423.pdf>
3 設計変更ガイドライン(案)
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk4_000041.html>
4 設計変更ガイドライン(案)Q&A
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk4_000041.html>
5 建築設計業務等変更ガイドライン(案)
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_fr4_000017.html> 50NO.16 答申 P8、L8〜11
【追加調査等の実施】
事前調査に関して、設計者や施工者から、設計、工事の段階において追加の調査や
試験等を提案された場合には、発注者は、必要と認めるときは、追加の調査や試験等
の実施を指示するとともに、それに伴う契約変更を適切に行う NO.15 で解説
必要がある。
しかく解説
(追加の調査・試験等)
しろまる 追加の調査や試験等には、追加のボーリング調査、既存建築物の配筋・配管・
配線等の状況等の調査、既存建築物のコンクリ-トのコア抜き、既存材料等に
関する各種試験、試験施工、モックアップ作成とそれを用いた各種試験等が考
えられる。 51NO.17 答申 P8、L12〜18
【改修工事等の実施】
撤去作業が発生する改修工事や解体工事において、発注者は、工事が関係法令等に
基づき適切に行われるように、必要となる処分費等を工事の予定価格に反映する必要
がある。既存建築物の状況が設計の段階までに把握しきれなかった場合には、発注者
は、工事の段階において既存建築物の状況を確認し、その結果を踏まえて、契約変更
を適切に行う NO.15 で解説
必要がある。
しかく解説
(改修工事等の関係法令等に基づく適切な実施)
しろまる 関係法令等については、公共建築改修工事標準仕様書(参考資料1)
に示されてい
る。また、同仕様書(建築工事編)
「1.3.12 発生材の処理等」に、発生材の処
理、建設廃棄物の取扱い等が規定されていることから、工事が適切に行われる
ようにするため、同仕様書を適用する旨を工事の発注条件とすることが考えら
れる。なお、これらの関係法令等については建築物解体工事共通仕様書(参考資料2)についても同様の規定となっている。
(参考)公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)平成 31 年版:抜粋
1.3.11 施工中の環境保全等
(1) 建築基準法、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律 (平成 12 年法律第 104
号。以下「建設リサイクル法」という。)、環境基本法 (平成 5 年法律第 91 号)、騒
音規制法 (昭和 43 年法律第 98 号)、振動規制法 (昭和 51 年法律第 64 号)、大気汚
染防止法 (昭和 43 年法律第 97 号)、水質汚濁防止法 (昭和 45 年法律第 138 号)、廃
棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和 45 年法律第 137 号。以下「廃棄物処理法」と
いう。)、土壌汚染対策法 (平成 14 年法律第 53 号)、資源の有効な利用の促進に関す
る法律 (平成 3 年法律第 48 号。以下「資源有効利用促進法」という。) その他関係
法令等に基づくほか、
「建設副産物適正処理推進要綱」(平成 5 年 1 月 12 日付け 建
設省経建発第 3 号) を踏まえ、工事の施工の各段階において、騒音、振動、粉じん、
臭気、大気汚染、水質汚濁等の影響が生じないよう、周辺の環境保全に努める。
(注記)建築物解体工事共通仕様書においても同様の規定がある。
しろまる 「建設副産物適正処理推進要綱」
(参考資料3)
においては、
「関係者の責務と役割」
として、発注者、元請業者、下請負人等の責務と役割が示されている。
(参考)建設副産物適正処理推進要綱:抜粋
第2章 関係者の責務と役割
第 5 発注者の責務と役割 52(1) 発注者は、建設副産物の発生の抑制並びに分別解体等、建設廃棄物の再資源化等及び
適正な処理の促進が図られるような建設工事の計画及び設計に努めなければならな
い。
発注者は、発注に当たっては、元請業者に対して、適切な費用を負担するととも
に、実施に関しての明確な指示を行うこと等を通じて、建設副産物の発生の抑制並び
に分別解体等、建設廃棄物の再資源化等及び適正な処理の促進に努めなければならな
い。
(2) また、公共工事の発注者にあっては、リサイクル原則化ルールや建設リサイクルガイ
ドラインの適用に努めなければならない。
(工事の段階における既存建築物の状況確認)
しろまる 設計の段階までに把握しきれない既存建築物の状況の例として、外壁改修工事
における施工数量(外壁のひび割れの幅と長さ、仕上げ材の浮きの箇所や数量等)、鉄筋・配管・配線の状況等が考えられ、これらについて必要に応じて工事
の段階で施工に先立ち、または施工を進めながら状況確認を行うことが考えら
れる。
しかく参考資料
1 公共建築改修工事標準仕様書
・建築工事編
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/kenchiku_hyoushi.html>
・電気設備工事編
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk4_000019.html>
・機械設備工事編
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk4_000018.html>
2 建築物解体工事共通仕様書
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_kaitai.html>
3 建設副産物適正処理推進要綱
<https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/region/recycle/pdf/recyclehou/
recycle_rule/youkou.pdf> 53NO.18 答申 P8、L19〜23
<事業部局への引き渡し>
発注者は、
建築物を事業部局に引き渡す際には、
平常時はもとより災害時も含めて、
建築物の使い方や維持管理・運営に必要な情報等について、適切に伝達する必要があ
る。また、建築物とともに引き渡す完成図等の保管についても、併せて伝達する必要
がある。
しかく解説
(建築物の使い方等の適切な伝達)
しろまる 建築物等の適正な使用及び保全に資するため、
「公共建築工事標準仕様書」
では、
建築物等を利用する際の基本的な使用方法、注意点など必要な事項を示す「建
築物等の利用に関する説明書」について、工事の受注者がこれらの情報を取り
まとめて作成し、発注者に提出することが規定されている。発注者は、事業部
局には建築に関する専門知識を有する者がいない場合が多いことに十分に留意
し、この「建築物等の利用に関する説明書」を用いるなどにより、建築物の使
い方等について事業部局にわかりやすく伝達する必要がある。
しろまる 国土交通省の官庁営繕事業においては、
「建築物等の利用に関する説明書」
を作
成するための参考資料として「建築物等の利用に関する説明書作成の手引き」
(参考資料1)
を作成している。本手引きは、本編と防災編とで構成されており、そ
れぞれ平常時と非常時における建築物の使用方法等の説明書を作成するための
ものとなっている。
(参考)公共建築工事標準仕様書(建築工事編)平成 31 年版:抜粋
1.7.3 保全に関する資料
(1) 保全に関する資料は次により、提出部数は特記による。特記がなければ、2部とする。
(ア) 建築物等の利用に関する説明書
(イ) 機器取扱い説明書
(ウ) 機器性能試験成績書
(エ) 官公署届出書類
(オ) 主要な材料・機器一覧表等
(2) (1)の資料の作成に当たり、監督職員と記載事項に関する協議を行う。
しかく参考資料
1 建築物等の利用に関する説明書作成の手引き
・本編
<https://www.mlit.go.jp/common/001261070.pdf>
・防災編
<https://www.mlit.go.jp/common/001261071.pdf > 54NO.19 答申 P8、L24〜26
なお、発注者は、公共建築工事の発注と実施に関して、国民に対する説明責任を果たす必要
がある。その際、専門性の高い事項についても十分に理解されるように努める必要がある。
しかく解説
(発注と実施に関する説明責任)
しろまる この答申は、発注者が国民への説明責任を果たすための新たな制度や仕組の構
築について求めているものではないが、例えば、それぞれの発注者において取
決めているコンプライアンスに関する方針(参考資料1)
等を組織内で十分に共有す
ることや、他の公共建築工事の発注者によって実施されている説明責任を果た
すための取組(入札及び契約の過程等に係る情報の公表(参考資料2)
、プロポーザ
ルの評価結果等の公表(参考資料3)
等)を参考にすることなどが考えられる。
しかく参考資料
1 国土交通省大臣官房官庁営繕部におけるコンプライアンスの取組
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_fr1_000004.html>
(注記)各年度のコンプライアンス推進計画等を掲載
2 国土交通省における入札及び契約の過程等に係る情報の公表
・ 建設コンサルタント業務等における入札及び契約の過程並びに契約の内容
等に係る情報の公表について
<https://www.mlit.go.jp/chotatsu/tutatsu/05/071005_2.pdf>
・ 工事における入札及び契約の過程並びに契約の内容等に係る情報の公表に
ついて
<https://www.mlit.go.jp/common/001067880.pdf>
3 業務・工事の評価結果等の公表
・ 建設コンサルタント業務等におけるプロポーザル方式及び総合評価落札方
式の運用ガイドライン
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001401150.pdf>
(注記)「5-3情報公開 様式1(プロポーザル方式の例)、様式2(総合評価落札方式の例)」を参照
・ 公共建築工事総合評価落札方式適用マニュアル・事例集
<https://www.mlit.go.jp/gobuild/hinkaku_sougou.html>
(注記)「IV様式例 1.施工能力評価型の例 様式例6:入札者の順位の決定根拠を示す
公表用資料の例、2.技術提案評価型の例 様式例6:入札者の順位の決定根拠を
示す公表用資料の例」を参照 553.答申本文と審議経緯等 56しろまる答申本文
次の 57 ページから 69 ページまで「官公庁施設整備における発注者のあり方に
ついて」
(平成 29 年1月 20 日社会資本整備審議会)答申本文を掲載します。
表紙と目次については省略していますので、必要な場合は、以下のURLをご
参照下さい。
しろまる公共建築工事の発注者の役割ポータルサイト・「官公庁施設整備における発注者のあり方について」(答申)
(2017 年 1 月 20 日)
<https://www.mlit.go.jp/common/001175127.pdf> 57I.はじめに
公共建築は、国や地方公共団体(以下「国等」という。
)によって、行政サービ
スの提供や防災拠点機能等の場として整備される。一つ一つの公共建築には、その
ような場として国民からの求めに応じた過不足のない適切な品質が確保されると
ともに、良好なストックとして機能し続けるよう適切に品質の維持・向上等が図ら
れることが期待されている。
また、バリアフリー化や環境負荷低減等の様々な国等の政策を反映すること、ス
トックの有効活用のための長寿命化や用途変更、
他の発注者との合築整備や複合化
等の新たな社会的要請に応えること、さらに、民間建築にも参照されることなどか
ら先導的な役割を果たすことが期待されている。
<品確法等の改正への対応経緯>
現在及び将来の公共工事の品質確保等を目的として、
公共工事の品質確保の促進
に関する法律(平成 17 年法律第 18 号。以下「品確法」という。
)等が改正され(平
成 26 年6月)、発注者の責務について「適正な予定価格の設定」、「適切な工期の設
定」、「適切な設計変更」等に係る規定が置かれた。それを受けて、公共工事を対象
として「発注関係事務の運用に関する指針」が策定された(平成 27 年 1 月)。公共
建築工事に関しては、
「営繕積算方式活用マニュアル」、「工期設定の基本的考え方」、「設計変更ガイドライン」
等のマニュアル類が国土交通省において策定されている。
<基礎ぐい工事問題への対応経緯>
いわゆる基礎ぐい工事問題の対応のために
「基礎ぐい工事問題に関する対策委員
会」が国土交通省に設置され (平成 27 年 11 月)、同委員会の「中間とりまとめ報
告書」において、建設工事の発注者を含めた「関係者一人一人が役割と責任を果た
すことを希望する」という問題意識が示された(同年 12 月)。それを受けて、中央
建設業審議会・社会資本整備審議会産業分科会建設部会基本問題小委員会の「中間
とりまとめ」(平成 28 年6月)において、民間工事の工事請負契約の締結に先立っ
て、
予め受発注者間で協議しておくことが必要と考えられる施工上のリスクに関す
る基本的考え方等の取りまとめの必要性が示された。それを受けて、
「民間工事指
針」が国土交通省において策定された(同年7月)。同指針では、発注者と受注者間
でのリスク負担に関する考え方や協議項目等に関する枠組みが示されている。
<公共建築工事の現状と課題>
建築物は、関係者から求められるもの、機能、規模、敷地、設計・工事の工程、
工事費等の諸条件に個別性が強い。
公共建築については、従来から、公共建築工事の発注者が、施設管理者、施設利
用者、近隣住民等の多様な関係者から求められるものを把握し、様々な国等の政策
答申 -1- 58と併せて反映して整備を行ってきた。
公共建築の適切な品質確保のためには、それぞれの発注者において、公共建築工
事の実施に関して様々な工夫や努力が払われてきた。また、発注者間で技術基準等
の共有化や情報交換が行われてきた。
しかしながら、一部の発注者においては、品確法等の運用が適切に行われないな
ど、発注者の役割を適切に果たすことが困難となっている状況も見受けられる。
その要因としては、公共建築工事の発注者の置かれた状況が、体制、職員の配置
状況や業務経験等を含めて多様であるとともに、新たな政策の反映、ストックの有
効活用のための改修や用途変更工事の増加、他の発注者との合築整備、複合化や多
様な事業手法の検討の要請等、
公共建築工事に関する発注者の業務内容が変化する
一方で、これまで、公共建築工事の発注者が果たすべき役割について十分に整理さ
れておらず、
発注者が自らの役割について適切に理解することが困難であることが
考えられる。
<本答申の考え方>
本答申は、国土交通大臣より諮問(平成 28 年6月)のあった「官公庁施設整備
における発注者のあり方について」
(以下「本諮問」という。
)を受けて取りまとめ
たものである。
本答申においては、以上に述べた、品確法等の改正や基礎ぐい工事問題への対応
経緯、公共建築工事の現状と課題を踏まえ、公共建築工事について、調査・企画か
ら設計、工事に至る過程における発注者の役割を整理するとともに、その役割を適
切に果たしていくための方策を提言している。
発注者が、
適切にその役割を果たし、
それにより適切に公共建築工事を実施するための一助となることを期待する。
なお、本答申においては、公共土木工事や民間建築工事と対比した上で公共建築
工事に固有の特徴を示した。そのため、本諮問で用いられた「官公庁施設整備」を
「公共建築工事」という用語に置き換えて記述している。
本答申の「公共建築」が指している建築物の範囲は、本諮問の「官公庁施設」と
同じ範囲(国等の建築物)であり、本答申の「建築工事」の過程の範囲は調査・企
画、設計、工事としており、
「施設整備」の過程と同じ範囲となる。その結果とし
て本答申の「公共建築工事」は「官公庁施設整備」と同義となる。
答申 -2- 59II.公共建築工事における発注者の役割
公共建築工事の発注者の役割をわかりやすく示すために、まず、公共土木工事や
民間建築工事との対比の下に、
公共建築工事の特徴と発注者に求められることを明
らかにし、それを踏まえて発注者の役割を整理している。
1.公共建築工事の特徴と発注者に求められること
公共建築工事の特徴と、その特徴を踏まえた発注者に求められることを、以下の
五点に整理した。
(1)は民間建築工事、
(2)〜(5)は公共土木工事との対比に
より示される特徴と発注者に求められることである。
(1)国等が主体的に行う事業であること
・ 公共建築工事は、主に税金を使って行われる事業(注記)1
であり、それぞれの事業
は国民生活に寄与するものである。そのため、発注者には、1国民(注記)2
からの
求めに応じた過不足のない公共建築としての適切な品質を確保すること、2
国等の政策を公共建築工事に反映すること、3国民に対する説明責任を果た
すこと(法令等に基づき透明性・公平性のある発注を行うことを含む。)、が
求められる。
・ 公共建築工事に関しては、
予算措置の際に、
その大枠の条件
(建築物の機能、
規模、
敷地、
設計・工事の工程、
設計費・工事費等)
が決められる場合が多い。
そのため、発注者には、大枠の条件が適切なものとなるように努めることが
求められる。
(注記)1 ここでいう事業は、設計、工事、維持管理、改修及び解体の全てにわたる。
(注記)2 地方公共団体においては、その住民である。なお、納税者としての立場と施設利
用者としての立場がある。
(2)発注部局と事業部局とが異なる場合が多いこと
・ 国等においては、建築物を所管する事業部局と発注者の発注業務を担当する
発注部局とが異なる場合が多い(注記)
。事業部局は、公共建築工事の企画立案と予
算措置を行い、発注部局は、事業部局からの委任に基づき当該公共建築工事
の発注等を行い、それぞれが自ら行うことに対する責任を負う。そのため、
発注者(公共建築工事の発注の部局と責任者をいう。以下同じ。
)には、1公
共建築工事の企画立案の段階から事業部局との連携を密にすること、2事業
部局から建築物に求められる諸条件を把握の上、品質、工期、コスト(ライフ
サイクルコストの観点によるものを含む。以下同じ。
)が適切なものとなるよ
うに調整し、公共建築工事に反映すること、が求められる。
答申 -3- 60(注記) 同一の部局が発注部局と事業部局とを兼ねる場合もあるが、本答申においては、その
場合でも発注部局と事業部局とを別部局として整理する。また、事業部局と施設管理
者とが異なる場合もあるが、本答申においては、事業部局に施設管理者が含まれるも
のとして整理する。
(3)事業部局以外にも多様な関係者が存在し、個別性が強いこと
・ 公共建築工事には、事業部局以外にも施設利用者、近隣住民等の多様な関係
者が存在し、建築物に求められるものは個別性が強い。そのため、発注者に
は、建築物の機能、規模、敷地、設計・工事の工程、設計費・工事費等の諸条
件に加えて、多様な関係者から建築物に求められる諸条件を把握し、必要な
調整を行った上で、公共建築工事に反映することが求められる。
(4)設計業務、工事監理業務に、建築基準法、建築士法が適用されること
・ 建築工事における設計業務や工事監理業務は、建築基準法(昭和 25 年法律第
201 号)及び建築士法(昭和 25 年法律第 202 号)に基づいて建築士が行う業
務である。そのため、発注者には、建築士が関係法令に基づいて適切に業務
が実施できるように配慮することが求められる。また、公共建築工事に求め
られる品質を確保する上で必要となる業務が適切に実施されるように、発注
条件における業務内容を適切に設定するとともに、それぞれの公共建築工事
に最も適した設計者や工事監理者を選定することが求められる。
(5)建築市場全体の中で、公共の占める割合が極めて小さいこと
・ 建築市場は民間建築工事が大多数であり、公共建築工事の材料、機器等の仕
様や価格は、民間市場に大きな影響を受ける。そのため、発注者には、民間市
場の動向を的確に把握し、公共建築工事の発注条件や予定価格に適切に反映
することが求められる。
2.公共建築工事における発注者の役割
上記1.を踏まえ、公共建築工事における発注者の役割について、その基本とな
る事項を以下の二点に再整理して示す。
なお、
発注者は、
その役割を果たすために、
必要に応じて、発注者支援を受けることが求められる。
1 企画立案等に関する事業部局との連携
発注者は、事業部局が行う公共建築工事の企画立案と予算措置において、
それらの内容が適切なものとなるように、技術的な助言を行うなど事業部局
と十分に連携する必要がある。
答申 -4- 612 公共建築工事の発注と実施
発注者は、事業部局から公共建築工事の委任を受けた後は、建築物や公共
建築工事に求められる諸条件を把握・整理し、設計者、施工者等に示す発注
条件として、適切に取りまとめる必要がある。そして、発注条件に基づき設
計業務、工事等を発注し、適切に実施する必要がある。
また、発注者は、公共建築工事の発注と実施に関する国民に対する説明責
任を果たす必要がある。
以下に、それぞれの基本となる事項について、発注者の役割を示す(上記1及び
2と、下記(1)及び(2)は、それぞれ対応する。)。
なお、以下に述べるもののほか、発注者は、品確法等の関係法令等や設計業務、
工事等の契約書に規定された発注者の責務等を適切に果たす必要がある。
(1)企画立案等に関する事業部局との連携
事業部局において公共建築工事の企画立案や予算措置が行われる。当該企画
等には、建築物の機能、規模、敷地、設計・工事の工程、設計費・工事費、事
業手法等が含まれる。当該企画や予算措置の内容は、発注者が取りまとめる公
共建築工事に関する発注条件の基礎となるものである。そのため、発注者は、
企画立案や予算措置に関して技術的な助言(注記)
を必要に応じて行うなど事業部局
と十分に連携する必要がある。
また、公共建築工事の企画や予算措置に関して、事業部局が国民に対する説
明責任を果たすに当たって、技術的な助言を必要に応じて行うなど、事業部局
と十分に連携する必要がある。
(注記) 具体的には、上位計画(インフラ長寿命化計画、公共施設等総合管理計画等)との整合
性を図ること、事業の合理性や経済性を確保すること、事業の実施の優先順位や緊急性
を評価すること、メンテナンス性(維持管理コストを含む。
)を考慮すること、品質、工
期、コストが適切なものとなるように調整すること等が考えられる。
(2)公共建築工事の発注と実施
1)諸条件の把握と発注条件の取りまとめ
諸条件の把握・整理、発注条件の調整と取りまとめに関しては、以下に留意
した上で適切に行う必要がある。
<諸条件の把握>
発注者は、建築物や公共建築工事に求められる諸条件に関して、1事業部局
からの諸条件、2多様な関係者(事業部局以外の施設利用者、近隣住民等)か
答申 -5- 62らの諸条件、3国等の政策、4公共建築工事に影響する現場の状況(敷地の地
盤条件、都市計画、周辺環境、既存建築物の状況等)
、を把握・整理する必要が
ある。なお、事業部局や多様な関係者からの諸条件に関しては、潜在的なもの
についても把握するように努める必要がある。
【敷地に係る事前調査の実施】
発注者は、
敷地の地盤条件等の現場の状況把握のために、
必要な事前調査(地盤調査等)を行う必要がある。事前調査に当たっては、従前の土地利用や地歴
情報、土壌汚染、地下埋設物等の把握にも努める必要がある。
【改修工事における事前調査の実施等】
発注者は、改修工事の対象となる既存建築物の状況把握のために、必要な事
前調査
(コンクリートの強度や中性化深さの調査、
アスベストの有無の調査等)
を行う必要がある。
工事の段階において行うことが合理的な調査(仮設足場が必要なもの(外壁
のひび割れ等の施工数量の調査等)
、隠蔽部分の調査等)に関しては、発注者
は、その調査内容を設計図書に明記するとともに、調査費用を工事の予定価格
に反映する必要がある。
<発注条件の取りまとめ>
発注者は、把握・整理した諸条件について、以下に留意しつつ発注条件とし
て取りまとめる必要がある。
【発注条件の重要性】
発注者は、設計者、施工者等との契約において、発注条件を決定する権限を
有しており、同時に決定に係る責任を負う。一方で、設計者、施工者等は、発
注条件(設計者は設計業務の発注条件、施工者は工事の設計図書、工事監理者
は工事監理業務の発注条件)に示された範囲に関して、契約書に基づき、発注
者に対する責任を負う。
設計図書は、設計者としての善良な管理者の注意義務により作成されるが、
その前提となるものは、設計業務の発注条件として発注者から示された事項
(発注条件の内容について発注者から設計者に具体的に伝えられたものを含
む。
)である。つまり、設計業務の発注条件に示されていない事項は、基本的に
設計図書に反映されない。一方で、工事は設計図書のとおりに行うことが義務
付けられているため、設計図書に反映されていない事項は工事にも反映されな
い。
発注者は、以上のことを認識した上で、必要な事項を過不足なく記載した適
切な発注条件を取りまとめる必要がある。
答申 -6- 63【諸条件の調整と発注条件への反映】
発注者は、発注条件について、事業部局が作成した公共建築工事の企画及び
予算措置の内容に整合したものとする必要がある。
発注者は、把握した諸条件の内容が、企画及び予算措置の内容を上回る場合
や、諸条件に相反や矛盾が見られる場合には、事業部局と協議を行い、諸条件
を取捨選択したり優先順位をつけたりするなど調整を行った上で、公共建築工
事の品質、工期、コストが適切なものとなるように発注条件として取りまとめ
る必要がある。発注条件は、相互矛盾が無く、可能な限り客観的で明確なもの
(可能なものは数値化する。
)とする必要がある。
なお、発注条件のうち品質に関するものについては、国民からの求めに応じ
た過不足のない公共建築としての適切な品質が確保されるとともに、その品質
が将来にわたって維持されるよう、
メンテナンス性
(維持管理コストを含む。)にも配慮したものとする必要がある。
【発注条件の変更による悪影響への留意】
設計の段階以降、特に工事の段階における発注条件の変更は、公共建築工事
の品質、工期、コストに悪影響を及ぼす可能性が高くなるため、発注者は、可
能な限りそのような事態が生じないように、事業部局等との調整や事前調査を
十分に行い、自らの経験も踏まえた改善を図りながら、発注条件を適切なもの
としておく必要がある。
2)設計業務、工事等の発注と実施
発注条件に基づく設計業務、工事等の発注と実施に関しては、以下に留意し
た上で適切に行う必要がある。
<設計業務、工事等の発注>
発注者は、透明性・公平性を確保した上で、それぞれの公共建築工事に最も
適した設計者、施工者等を選定する必要がある。
発注者は、設計業務、工事監理業務の発注に当たっては、それぞれの業務内
容に応じた予定価格を適正に設定する必要がある。
発注者は、工事の発注に当たっては、設計図書に基づき適切に積算数量を算
出し、建築市場の動向を考慮して、それぞれの工事内容に応じた予定価格を適
正に設定する必要がある。
<設計意図伝達業務、工事監理業務の発注>
発注者は、工事の段階において行う設計意図伝達業務や工事監理業務を、適
切に発注する必要がある。なお、設計意図伝達業務は、設計意図を正確に伝え
るために工事の段階において行われる実施設計に関する業務であることから、
設計図書を作成した設計者に発注する必要がある。
答申 -7- 64<設計業務、工事等の実施>
公共建築工事の品質確保のため、発注者は、設計者、施工者等との技術的な
事項に関する対話を十分に行う必要がある。
また、発注者は、設計、工事の段階において発注条件の変更の必要が生じた
場合には、事業部局と必要な協議をし、公共建築工事の品質、工期、コストの
整合がとれたものとなるように変更内容を調整し、契約変更を適切に行う必要
がある。
【追加調査等の実施】
事前調査に関して、設計者や施工者から、設計、工事の段階において追加の
調査や試験等を提案された場合には、発注者は、必要と認めるときは、追加の
調査や試験等の実施を指示するとともに、それに伴う契約変更を適切に行う必
要がある。
【改修工事等の実施】
撤去作業が発生する改修工事や解体工事において、発注者は、工事が関係法
令等に基づき適切に行われるように、必要となる処分費等を工事の予定価格に
反映する必要がある。既存建築物の状況が設計の段階までに把握しきれなかっ
た場合には、発注者は、工事の段階において既存建築物の状況を確認し、その
結果を踏まえて、契約変更を適切に行う必要がある。
<事業部局への引き渡し>
発注者は、建築物を事業部局に引き渡す際には、平常時はもとより災害時も
含めて、建築物の使い方や維持管理・運営に必要な情報等について、適切に伝
達する必要がある。
また、
建築物とともに引き渡す完成図等の保管についても、
併せて伝達する必要がある。
なお、発注者は、公共建築工事の発注と実施に関して、国民に対する説明責任を
果たす必要がある。その際、専門性の高い事項についても十分に理解されるように
努める必要がある。
答申 -8- 65III.発注者がその役割を適切に果たすための方策
公共建築工事の発注者は、それぞれの置かれた状況が多様であり、業務内容も変
化している。発注者は、その役割を適切に果たすために、それらに応じた適切な方
策を講ずることが求められる。
1.多様な発注者の状況
公共建築工事は、国の各省各庁、都道府県、市町村の様々な主体によって実施さ
れている。それぞれの主体における公共建築工事の発注者の体制、職員の配置状況
や業務経験等は、多様な状況にある。
また、発注者の業務内容については、新たな政策の反映、ストックの有効活用の
ための改修や用途変更工事の増加、他の発注者との合築整備、複合化や多様な事業
手法の検討の要請等、社会情勢の変化に応じて様々に変化している。さらに、先導
的な役割を果たすことが期待されていることにも配慮する必要がある。
そのため、それぞれの発注者は、公共建築工事の発注と実施に当たって、また、
技術基準等の整備・活用、職員の育成等に当たって、様々な工夫や努力を払ってき
た。発注者の体制等や業務内容は、今後とも、社会情勢に応じて変化していくもの
と考えられ、発注者は、その変化に対応することが必要となる。
一方で、一部の発注者においては、発注者の役割を適切に果たすことが困難とな
っている状況も見受けられる。その要因としては、これまで、公共建築工事の発注
者が果たすべき役割について十分に整理されておらず、
発注者が自らの役割につい
て適切に理解することが困難であること、発注者支援を受けないことで設計者、施
工者等との技術的な事項に関する対話が十分に行われていないことなどが考えら
れる。
2.発注者がその役割を適切に果たすための方策
上記1.の状況を踏まえ、公共建築工事の発注者は、その役割を適切に果たすた
めに、以下の方策を講ずることが望ましい。国土交通省においては、自ら発注者と
してこれらの方策を講ずるとともに、他の発注者等と協力・連携し、これらの環境
の整備にも努める必要がある。
(1)発注者の役割の理解の推進
発注者は、本答申で示した発注者の役割について自覚するとともに、その役割に
ついて、それぞれの事業部局においても十分に理解されるようにすること。
答申 -9- 66(2)技術基準等の整備・活用と人材育成の推進
発注者は、
公共建築工事に関する発注者の業務内容の変化への対応等を考慮した
適切な業務遂行が効率的になされるように、技術基準等の整備・活用を推進するこ
と。また、業務遂行能力を高めるために、研修等による人材育成を推進すること。
(3)個別の公共建築工事の適切な発注と実施等のための外部機関の活用等の推進
発注者は、必要に応じて、事業部局との連携、公共建築工事の発注と実施(発注
条件の取りまとめ、設計者、施工者等との技術的な事項に関する対話も含む。)に関する発注者支援を受けるため、外部機関(民間を含む。以下同じ。
)や広域的な
連携の仕組みを活用すること。なお、外部機関を活用する場合においても、その責
任は発注者が負うことに留意すること。
(4)発注者間の協力や連携の推進等
上記を効果的・効率的に進めるために、発注者は相互に協力や連携を推進するこ
と。また、発注者は、公共建築工事の発注と実施に関する実態や課題を共有化する
ために、透明性・公平性の確保に留意しつつ、設計者、施工者等の団体等との意見
交換を継続的に行うこと。
答申 -10- 67IV.当面実施すべき施策
上記III.の考え方を踏まえ、国土交通省は以下の施策を推進し、公共建築工事の
発注者の業務が適切に行われるように努めるべきである。
(1)発注者の役割の理解の促進
国土交通省は、
それぞれの発注者が本答申で示した発注者の役割を自覚するとと
もに、
それぞれの事業部局においても十分に理解されるように、
その役割について、
発注者に対して十分な周知を図ること。
そのために、本答申で示した発注者の役割に関する解説を作成するとともに、研
修等を通じて、発注者の理解の促進を図ること。
(2)技術基準等の整備・活用と人材育成の促進等
国土交通省は、
公共建築工事に関する発注者の業務内容の変化への対応等を考慮
した適切な業務遂行が効率的になされるように、以下の取組を行うこと。
1)技術基準等の整備・活用の促進
国土交通省は、本答申で示した発注者の役割を踏まえ、技術基準等について
総点検を行い、必要に応じて改定を行うこと。また、発注者が置かれた状況が
多様であることを踏まえ、
技術基準等に関する概要や、
よくある質問
(FAQ)
等を作成し、発注者に対して情報提供を行うこと。
2)人材育成の促進
国土交通省は、公共建築工事に関する研修等の情報について、市町村の職員
も参加可能なものも含めて取りまとめ、発注者に対して情報提供を行うこと。
3)発注者の業務内容に関する情報提供の推進
国土交通省は、以下の事項を取りまとめ、発注者に対して情報提供を行うこ
と。
1 公共建築工事の過程における留意事項や発注条件として示すべき項目、
それ
らに関する不適切と考えられる運用。先進的取組等の優良事例
2 公共建築工事に関する新たな業務の内容やその具体事例
答申 -11- 68(3)個別の公共建築工事の適切な発注と実施に資するための環境の整備
1)相談窓口の活用の促進と適切な対応
国土交通省は、個別の公共建築工事の発注と実施、技術基準等の整備・活用
等に当たって発注者が相談窓口を活用できるよう、相談窓口について、発注者
に対して十分な周知を図ること。
また、発注者から寄せられる相談に対して、本答申で示した発注者の役割を
踏まえた適切な助言等の対応を行うこと。
2)外部機関の活用に関する環境の整備
国土交通省は、本答申で示した発注者の役割について、発注者への支援を行
うと考えられる外部機関に対して情報提供を行うこと。また、それらの外部機
関の発注者支援に関する情報を収集し、発注者に対して情報提供を行うこと。
(4)発注者間の協力や連携の促進等
国土交通省は、発注者間の協力や連携の促進のために、また、公共建築工事の発
注と実施に関する実態や課題の共有化を図るために、
各省各庁や都道府県等の発注
者との間、
設計者や施工者等の団体等の受注者との間の意見交換を継続的に行うこ
と。
答申 -12- 69V.おわりに
公共建築工事は今後も行われ続けるものであり、
整備された公共建築の品質は将
来にわたって維持されなければならない。そのため、公共建築工事の発注者の役割
については、それぞれの発注者において、継承されていく必要がある。
一方で、
発注者の体制、
職員の配置状況や業務経験、
公共建築に求められるもの、
公共建築工事に関する発注者の業務内容は、
時代とともに変化していく。
そのため、
発注者がその役割を適切に果たすための方策については、
状況に応じて見直しを図
っていく必要がある。
それぞれの発注者には、
その役割を適切に果たすための方策として示した取組と
それらの取組の状況に応じた見直しを継続的に行うことが求められる。
国土交通省には、
公共建築工事の発注者としての先導的役割が期待されているこ
とを認識し、
自らが適切に発注者の役割を果たしていくとともに必要な取組を率先
的に実施していくこと、また、公共建築工事を適切に発注、実施していくために設
計者、施工者等との技術的な事項に関する対話を適切に進めることが求められる。
本答申で示した公共建築工事の発注者の役割は、
民間建築工事にも参考となるも
のと考えられる。
答申 -13- 70しろまる審議経緯等
・社会資本整備審議会建築分科会官公庁施設部会 委員名簿
(平成 28 年 12 月 16 日時点)
委 員 浅見 泰司 東京大学大学院工学系研究科教授(部会長代理)
委 員 飯島 淳子 東北大学大学院法学研究科教授
委 員 大森 文彦 東洋大学法学部教授、弁護士(部会長)
委 員 藤田 香織 東京大学大学院工学系研究科准教授
臨時委員 坂本 雄三 国立研究開発法人 建築研究所 理事長
臨時委員 清家 剛 東京大学大学院准教授
専門委員 斎尾 直子 東京工業大学環境・社会理工学院建築学系准教授
専門委員 佐藤 主光 一橋大学大学院教授
専門委員 前 真之 東京大学大学院准教授
専門委員 松本 由香 横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院准教授
(五十音順、敬称略)
・官公庁施設部会における審議経緯等
(平成 28 年)
6 月 20 日 諮問
8 月 4 日 第19回部会〈第1回審議〉
・公共建築工事の特徴を踏まえた発注者の役割
10 月 14 日 第21回部会〈第2回審議〉
・発注者が役割を適切に果たすための方策
・答申骨子(素案)
11 月 25 日 第22回部会〈第3回審議〉
・答申素案
12 月 16 日 第23回部会〈第4回審議〉
・答申案
(平成 29 年)
1 月 20 日 答申 714.関連資料 72しろまる品確法を踏まえた官庁営繕の主な取組
品確法を踏まえた国土交通省大臣官房官庁営繕部の主な取組について概要版を以
下に掲載します。それぞれの内容について詳しく知りたい場合は、国土交通省ホーム
ページで各資料の全体版をご参照下さい
(下記URL)。また、
ご不明な点等がありま
したら必要に応じて最寄りの公共建築相談窓口へご相談下さい。
【品確法関連の参考情報の掲載ページ】
国土交通省の HP には、公共工事の品質確保のための各種の情報を掲載しています。
・改正品確法についての掲載ページ
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/totikensangyo_const_tk1_000175.html
・改正品確法に基づく基本方針についての掲載ページ
https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo13_hh_000650.html
・改正品確法に基づく運用指針、ガイドラインについての掲載ページ
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_reiwaunyoshsishin.html
・官庁営繕のページでは建築事業に関する参考情報を掲載
https://www.mlit.go.jp/gobuild/index.html
-公共建築の品質確保
https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk2_000029.html
-入札・契約手法
https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk6_000085.html
-円滑な施工確保対策
https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk2_000006.html
-関係法令及び技術基準
https://www.mlit.go.jp/gobuild/kijun_index.htm 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82
【適切な工期設定に役立つ参考資料】
公共建築工事における適切な工期の設定にあたり、参考となる資料の例として次
のものがある。
しろまる工期設定のイメージ図
調査及び設計段階等における具体的な工期設定の事例
(注記)本事例はあくまで一例であり、さまざまなケースが考えられる。
https://www.mlit.go.jp/common/001133185.pdf
しろまる適切な工期を設定するためのチェックシート
調査及び設計段階における事前調査で確認すべき事項のチェックシート
(注記)本事例はあくまで一例であり、さまざまなケースが考えられる。
https://www.mlit.go.jp/common/001133186.xlsx
しろまる適切な工期を設定するための事前調査票
調査及び設計段階において敷地、使用者の要望等、当該工事の工期を適切に設定するための
前提条件とすべき事項の調査票
(注記)本調査票は、各発注者の実情を踏まえ、カスタマイズして使用するものである。
https://www.mlit.go.jp/common/001133187.doc
しろまる木造事務庁舎の合理的な設計における留意事項
木造庁舎の整備にあたり、工期やコストに影響を及ぼす留意事項をまとめたもの。
https://www.mlit.go.jp/gobuild/gutai_torikumi.html#moku_ryuuijikou
また、関連団体においても参考となる資料が作成されている。
しろまる建築工事適正工期算定プログラム(
(一社)日本建設業連合会=日建連)
新築工事における用途・構造・規模等の建物データを入力することにより、完全週休2日、
8時間労働、長期休暇の取得を考慮した適正工期をネットワーク工程表として簡便に作成する
ことができるツール
(注記)本プログラムの適正工期は、主に都市部における標準的な工期を示しており。設備工事の工
程が全体工期に影響する場合、労務調達等が円滑でない地域の場合等では別途考慮が必要であ
る。また、地中障害物、埋蔵文化財の有無や官公庁手続、周辺住民との調整等諸々の事案によ
って別途考慮すべき要素が異なるので、各発注者において十分な事前調査が必要である。
https://www.nikkenren.com/kenchiku/proper.html(日建連ホームページへ)
しろまる自家用電気工作物の設置及び受電時期設定の手引き((一社)日本電設工業協会=電設協)
電気設備工事について、契約時から竣工までの業務に従事する際の確認事項や、施設利用者
等の関係者へ説明するための知識等を整理した手引き。
https://www.jeca.or.jp/files/libs/1174/201801261608503414.pdf(電設協ホームページへ) 83 84 85 86 87 88 89 90
5.お問い合わせ先 91しろまる公共建築相談窓口
この解説書の記載内容や、
解説書に記載されていない国土交通省の官庁営繕事業に
おける具体の運用等について詳しく知りたい場合は、
最寄りの公共建築相談窓口へご
相談下さい。
メールでのお問合せは hqt-eizensoudan@gxb.mlit.go.jp までお願いいたします。
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官庁施設管理官 5114
計画課課長補佐 5153
保全指導・監督室室長補佐 5513
宇都宮営繕事務所 技術課長 028-634-4271 - 栃木県、茨城県
横浜営繕事務所 技術課長 045-681-8104 - 神奈川県
長野営繕事務所 技術課長 026-235-3481 - 長野県、群馬県
営繕部 計画課 025-280-8880 - 新潟県、富山県、石川県
金沢営繕事務所 技術課 076-263-4585 - 石川県、富山県
営繕部 計画課 052-953-8197 - 岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
静岡営繕事務所 技術課 054-255-1421 - 静岡県
計画課長 5151
計画課課長補佐 5153
営繕部 計画課課長補佐 082-221-9231 -
鳥取県、島根県、岡山県、広島
県、山口県
岡山営繕事務所 技術課長 086-223-2271 - 岡山県、鳥取県
四国地方整備局 営繕部 計画課課長補佐 087-851-8061 5153 徳島県、香川県、愛媛県、高知県
計画課課長補佐 5153
保全指導・監督室室長補佐 5513
熊本営繕事務所 技術課長 096-355-6122 - 熊本県、大分県
鹿児島営繕事務所 技術課長 099-222-5188 - 鹿児島県、宮崎県
沖縄総合事務局 開発建設部 営繕課 098-866-0031 5152 沖縄県
技術課長 03-3363-2694 -
埼玉県、東京都(練馬区、新宿
区、渋谷区、 板橋区、北区、豊島
区、文京区、千代田区、港区)
技術課長 042-529-0011 -
山梨県、東京都(中野区、杉並
区、世田谷区、品川区、大田区、目
黒区、特別区以外)
技術課長 03-3531-6550 -
千葉県、東京都(荒川区、台東
区、足立区、 葛飾区、墨田区、江
東区、江戸川区、中央区) - 大阪府(高槻市、枚方市、茨木
市、交野市、三島郡を除く)、 兵庫
県、和歌山県
06-6443-1791
06-6942-1141
福井県、滋賀県、京都府、大阪
府、兵庫県、奈良県、和歌山県
075-752-0505 -
京都府、福井県、滋賀県、奈良
県、大阪府(高槻市、枚方市、茨木
市、交野市、三島郡)
営繕部 092-471-6331
福岡県、佐賀県、長崎県、熊本
県、大分県、宮崎県、鹿児島県
九州地方整備局
営繕部
京都営繕事務所 保全指導・品質確保課
保全指導・監督室
中国地方整備局
甲武営繕事務所
関東地方整備局
北陸地方整備局
中部地方整備局
近畿地方整備局
東京第一営繕事務所
東京第二営繕事務所
組織
東北地方整備局
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営繕部
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