08/07/18 第19回厚生科学審議会科学技術部会ヒト胚研究に関する専門委員会議事録 第18回 科学技術・学術審議会 生命倫理・安全部会「生殖補助医療研究専門委員会」 第19回 厚生科学審議会科学技術部会「ヒト胚研究に関する専門委員会」 議事録 日時:平成20年7月18日(金) 15:30〜17:30 場所:中央合同庁舎第7号館東館 16階特別会議室 出席者: (委 員)笹月主査、位田委員、石原委員、小澤委員、加藤委員、後藤委員、鈴木委員 高木委員、深見委員、星委員、町野委員、水野委員、吉村委員 (事務局)文部科学省:永井安全対策官、高橋室長補佐 厚生労働省:宮嵜母子保健課長、梅澤母子保健課長補佐、小林母子保健課長補佐 議事: しろまる笹月主査 それでは、時間も過ぎましたので、ただいまより第18回の生殖補助医療研究専門委員会と 第19回のヒト胚研究に関する専門委員会を開催いたします。お忙しいところ、暑いところを お集まりいただきまして、ありがとうございます。 最初に、事務局の人事異動がございましたので、文部科学省、厚生労働省よりそれぞれ、 ご紹介、ごあいさつをお願いいたします。 しろまる永井安全対策官 7月1日より参りました、生命倫理・安全対策室の永井と申します。どうぞよろしくお願い いたします。 しろまる宮嵜母子保健課長 厚生労働省の母子保健課長の宮嵜でございます。先週の金曜日、7月11日付で着任いたし ました。よろしくお願い申し上げます。 しろまる笹月主査 お二人ですね。 しろまる永井安全対策官 そうです。 しろまる笹月主査 じゃあ、どうぞよろしくお願いいたします。 それでは、審議に先立ちまして、資料の確認を事務局からよろしくお願いします。 しろまる高橋室長補佐 それでは、資料の確認をさせていただきます。 その前に、本日の会議の終了時刻に変更がございますので、お知らせ申し上げます。ご案内 の上では、本日、15時半から18時まででございましたけれども、30分間、終了時間を早 めさせていただきまして、17時30分に終了を予定してございますので、ご了承くださいませ。 それでは、お手元にお配りいたしました資料につきまして、確認させていただきます。議事 次第の紙を裏返していただきますと、そこに配付資料の一覧がございます。今回使います資料 は、特に資料3と資料4−1でございますので、もし過不足等ございましたら、事務局までお 知らせください。どうぞよろしくお願いいたします。 しろまる笹月主査 それでは、資料1に前回の委員会の議事録(案)を配付しておりますが、これは既に委員の 方々にお送りしてご意見もいただいておりますので、問題がなければご承認いただきたいと思 いますが、よろしゅうございますでしょうか。 それでは、本日の議題に入りたいと思います。前回の委員会で検討し合意した事項につきま して、まず事務局より説明をお願いいたします。 しろまる小林母子保健課長補佐 それでは、資料2をごらんいただきたいと思います。資料2の5ページをあけていただきま して、前回は配偶子の入手方法について議論いただいたわけでございますけれども、卵子の入 手の方法と精子の入手の方法についてご議論いただいたんですが、精子のところ、5ページの 真ん中やや下を見ていただきますと、「生殖補助医療目的で採取された精子の一部利用につい ては」というところの文章が、ちょっとその文章が不明瞭であったということで、ここを消す というところ。それから、精子については、「無償ボランティアからの精子提供については、 自発的な申し出がある場合は認めることとする」という文章がございます。 一方で、同じ資料2の9ページをごらんいただきまして、卵子につきましては、無償ボラン ティアからの未受精卵の提供については、これを認めないということで前回合意をいただいて おります。 前回の合意事項は、以上でございます。 しろまる笹月主査 どうもありがとうございます。 それでは、今回の議事でありますが、前回の議論を引き継ぐ形で、インフォームド・コンセ ントのあり方についてということで始めたいと思います。 事務局から資料のご説明、よろしくお願いします。 しろまる高橋室長補佐 それでは、本日の資料3をごらんくださいませ。前回の続きでございますけれども、配偶子 の入手方法についての資料でございます。 1枚目につきましては、前回の復習になりますけれども、配偶子の入手のあり方として、卵 子の採取は、精子の採取よりも肉体的・精神的負担が大きく、一度に採取できる数などに違い があるということで、卵子と精子では別々の配慮が必要であると考えられるということで、卵 子と精子、それぞれ別に提供のあり方について考えていくことといたしました。 1枚めくっていただきまして、まず卵子の入手についてでございますけれども、ここも前回 の復習になるんですが、まず(1)未受精卵の提供が認められる要件というのを議論していた だきました。 まず、黒ポチでございますが、総合科学技術会議の意見「ヒト胚の取扱いに関する基本的考 え方」におきましては、未受精卵の入手について以下の4つの場合があり得るとしております。 まず1つ目が生殖補助医療目的で採取された未受精卵の一部利用、2番目といたしまして手術 等により摘出された卵巣や卵巣切片からの採取、(3)媒精したものの受精に至らなかった非受精 卵の利用、(4)卵子保存の目的で作成された凍結未受精卵の不要化に伴う利用等、これらがあり 得るとしております。 これらの背景にある考え方をまとめますと、ヒト受精胚の作成を伴う研究へ提供が認められ る未受精卵といたしましては、原則として、i)以後、生殖補助医療に用いる予定がないもの、 ii)本人の自由意思によるインフォームド・コンセントが適切に得られたものということが考 えられるのではないかということで、前回、しろまるにさせていただいておりました。これにつきま しては、合意いただきまして、くろまるに今回させていただいております。その上のほうで黒ポチと してご紹介した総合科学技術の意見の(2)から(4)につきましては、このような条件を満たすこと ができると考えられます。 下のくろまるでございますけれども、ここも前回の復習になりますが、(1)の生殖補助医療目的で採 取された未受精卵の一部利用については、さらに3パターン考えられるということで、(1)−1 といたしまして、形態学的な異常により生殖補助医療に用いられない未受精卵を研究に利用す る場合、それから(1)−2といたしまして、形態学的な異常はないが、精子等の理由で結果的に 生殖補助医療に用いられない未受精卵を研究に利用する場合、それから、もう1つの場合とい たしまして、(1)−3、生殖補助医療目的で採取する未受精卵の一部を本人の自由意思により生 殖補助医療に用いず研究に利用する場合というのが考えられますけれども、このうちの上の2つ、 (1)−1、(1)−2については、(3)媒精したものの受精に至らなかった非受精卵の利用の考え方に 準ずると考えられますので、これも提供が認められる未受精卵として考えてよろしいのではな いかということで、ここもくろまるにさせていただいております。 次のくろまるでございますけれども、(1)−3の場合についてですが、本人から自発的な申し出があっ て生殖補助医療目的で採取する未受精卵の一部を生殖補助医療に用いず研究に利用する場合、 こういった場合には、自発的な申し出が本人の自由意思を示すものであり、かつ本人の自由意 思によって生殖補助医療目的で採取された未受精卵の一部を生殖補助医療に用いないというこ とが確認できますので、提供を受けることが認められるということで、前回、合意いただいて ございます。 ここまで前回ご議論いただきまして、ただ、問題提起としてここまでの議論でございました のが、こういった方法で未受精卵を入手するということは実際には非常に難しいということが ございましたので、(1)−3のもう1つのパターンといたしまして、さらに一歩踏み込みまして、 主治医等が直接患者に対し、生殖補助医療目的で採取された未受精卵の一部を研究に提供する 機会があることを情報として提供し、同時に研究への提供に同意しなくても何ら不利益をこう むることがない旨を説明した上で、本人が研究への提供に同意する場合も考えられると。こう いった場合につきましては、患者は医療の過程にあり、主治医との関係において心理的圧力が かかりやすい立場に置かれているという、自由意思の確保という観点。それからもう1つ、生 殖補助医療に利用できる未受精卵を研究に用いるということで生殖補助医療の成功率の低下に つながるのではないかというおそれがあること。これは治療への影響という観点。それからも う1つ、排卵誘発剤による過剰排卵の疑惑を持たれるのではないかと。そういった可能性があ るということで、提供者の肉体的リスクという、それぞれの観点で懸念が考えられるというこ と。この場合については、ちょうど昨年の5月、6月ぐらいに同じような議論がございまして、 そのときにもこういった懸念というものは議論されておりました。ただ一方で、こういった方 法の場合には、生殖補助医療目的で採取するために提供者には本来の治療以上の新たな侵襲が 生じない。また、生殖補助医療研究の成果が将来的な生殖補助医療技術の向上に貢献する可能 性があり、患者自身に研究への提供を行うインセンティブがある可能性もあるということが考 えられています。 主治医等が直接患者に対し研究に提供する機会があるということを情報として伝える場合に ついてはこういったことが考えられるのではないかということで、しろまるにさせていただいており ます。ほかに考えられる何かポイントがありましたら、つけ加えていただければというふうに 思っております。 こういった場合が考えられますのは、実際には、提供者の方が何度か既に生殖補助医療を受 けていらっしゃる場合が考えられますし、また、提供者が生殖補助医療に伴う肉体的・精神的 負担について十分に理解していることが必要であるということで、少なくとも過去に1度は体 外受精または顕微授精を受けた経験のある者からの提供に限り認めることとしてはどうでしょ うかということで、しろまるにさせていただいております。 ただ、幾つか懸念される点が指摘されておりますので、認める場合については、このような 方法に伴う懸念を最小限にするための仕組みが必要ではないかということで、以下、それぞれ の観点につきまして、仕組みのご提案をさせていただいております。 1つ目は自由意思の確保ということで、同意における本人の自由意思を確保するために、研 究への提供の機会があることを情報として提供する者として、主治医とは別に、患者の医療に は関与しない第三者、例えば説明者を置くこととしてはいかがでしょうかということで、しろまるに させていただいております。 ちなみに前回までの議論で、医療の過程でインフォームド・コンセントを受ける場合には、 説明者のような、主治医とは別の者を置くということで、以前ご議論をいただいております。 この説明者の具体的な要件につきましては、必要ということになれば、本日の資料4−1にお いて議論をすることとしております。 1枚めくっていただきまして、もう1つ、治療への影響という観点からでございますけれど も、生殖補助医療に利用できる未受精卵を研究に用いるということで生殖補助医療の成功率の 低下につながるおそれがあるなど、結果として治療成績に差が出る場合もあり得ることをイン フォームド・コンセントの際に説明することとするか。 それからもう1つ、主治医が医療に必要な未受精卵まで研究に用いることのないよう、採取 された未受精卵のうち、研究に利用するものの選別については、生殖補助医療に用いる可能性 の低いものから順に研究に利用することなどの配慮をすることが必要であるかどうか。さらに、 その選別のプロセスの透明化を図るために、採取した未受精卵及び研究に用いる未受精卵につ いては、その後、形状をすべて写真なども用いて記録に残すこととするか、という議論をしろまると して挙げさせていただいております。 それから、提供者の肉体的リスクに関する仕組みといたしましては、提供者の同意の有無に よって治療方針に変更のないことを確認するために、排卵誘発剤の使用量など、治療の詳細な 記録を保存することとするか。また、その旨をインフォームド・コンセントの際に説明するこ ととするか、というような論点を挙げさせていただいております。 最後に、倫理審査委員会により以上のような手続を確認する必要があるかどうかということ で、しろまるをつけさせていただいております。 資料3につきましては、それ以外のことについては、前回合意をいただきまして、すべてくろまるに なってございますので、とりあえずここで説明は一たん切らさせていただきたいと思います。 しろまる笹月主査 どうもありがとうございました。 いわゆるほんとうの意味のボランティアは、前回、これは認めないと。ただ、生殖補助医療 を受けている過程で自発的な申し出があった場合、あるいは、さらに一歩踏み込んで、主治医、 あるいは第三者も交えた、それは後で議論するとしても、医療側から働きかけることによって 自由意思で提供を求めることはどうかということで、それに伴ういろんな配慮ということをこ こに列挙していただいておりますが、ここを中心にきょうは議論を進めたいと思っております。 あと幾つかありますけれども、それはまた説明を伺った後でということで、卵子の入手につい てという2ページのしろまるのところ、これを委員の方々のご意見を伺いたいので、それぞれ、どう ぞご自由にご発言ください。 しろまる水野委員 前回、骨折して欠席したものですから、議論の過程を承知せずに発言して申しわけありませ んが、医師の忠実義務、つまり主治医は不妊治療を受けている患者にとって最善のことだけを しなくちゃいけない、余計なことを考えてはいけないという、医療契約上の医師の忠実義務と の関係で、卵子をもらうということをどのように正当化するかというのは、かなり難しい仕組 みが要るだろうと思います。つまり、不妊治療を受けている患者としては、当然、排卵誘発剤 の副作用がありますから、できるだけ必要最小限の卵をとってもらって、そして、その必要最 小限の卵で不妊治療を施してもらいたいと考えるはずです。そして、不妊治療を受けている患 者に対する主治医としては、それをかなえることが義務になるはずです。ここでは余分に出て きたというのをくださいとお願いすることになるわけですが、それで、1回目はだめだという ことなのですが......。 しろまる笹月主査 1回目云々というのは次の議論にして、最初の......。 しろまる水野委員 最初のしろまるのところですね。忠実義務と、余分に出てきたからくださいねということとは、矛 盾しませんか。つまり......。 しろまる笹月主査 どれとどれが? しろまる水野委員 1回目云々はあとにしますが、ともかく医者の忠実義務として考えられるのは、最小限の卵 をとる、それから本人の体に対する負担が最小限になるようにすることだと考えると、余分な 卵は出ないはずではないでしょうか。 しろまる笹月主査 これのプリンシプルとして、後で出てくると思いますけれども、これを認めた場合にでも、 そのために必要以上の排卵誘発剤を使うとか、そういうことは厳に慎むべしであるというのは 当然出てきますので、普通の正常な生殖補助医療の過程でたまたま過剰に出てきたものがあれ ば、それを使わせてくださいということになりますので、新たな、あるいは付加的な侵襲を加 えることは厳に慎むということです。 それから、総論として、医者は治療以外の余計なことを考えちゃいけないとおっしゃったけ れども、もしほんとうにそのセンスでいくと、臨床研究なんてあり得ないわけですね。患者さ んがある病気であって、治療のために、あるいは検査のために採血をする。それは何ccあれば 十分だから、それだけとります。だけども、この病気の原因を追求するために、タンパクを解 析したり、あるいはゲノムを解析する。その場合には、新たにまた20cc、場合によっては 50ccぐらい、採血を依頼するわけですね。そのことによって病気の原因がわかり、予防法、 治療法が改善される。開発される。だから、今の先生のようなセンスでほんとうに厳密にいく とすると、そういう臨床研究は全く認めないということになるので、私は、それはあり得ない と思います。 しろまる水野委員 ともかくこういうぎりぎりのところを議論しているときに、強い原則論でこれを極論すると こうなるという議論をすると、何も話は進まないと思うのです。ですから、私も医師の忠実義 務から考えてこれは絶対だめだと申し上げるつもりはないのですが、だけどやっぱり、常識的 に考えて、血液の採取、その他の生体試料の採取と、卵の採取というのは、そこに大きな格差 が現実問題としてあるだろうと思います。それは、不妊治療を受ける患者の側からしますと、 卵の採取は血液の採取とは質的に違うからです。例えばかなり高齢になって不妊治療を受け始 めたという患者が、卵ができて、初期には、たくさんとれたからくださいねと先生に頼まれて、 主治医の言われることですし、いいですよと言って、だけど、その残された、夫の精子と媒精 させたものを自分の不妊治療に使っていたのですが、全然うまくいかない。そして、あるとき に健康な卵がとれる年齢を越していて、最初にとれた卵を全部媒精して凍結保存していたら、 いまだに私はそれを使ってまだチャレンジができたのに、と思う事態が来るような気がするの ですね。そのときに、お医者さんの側で忠実義務に違反したわけではないと反論できるでしょ うか。 しろまる笹月主査 私は産科・婦人科の専門ではありませんが、常識的に、ぎりぎりのところで媒精させて、そ してやりますということはあり得ないわけで、十分量、あるいは、十分量と思われる量の2倍 なのか、3倍なのか、それはわかりませんけれども、これまでの実際の専門家の経験に従って、 これだけあれば十分ですと。十分と思わざる得ないですという段階で初めてこういう話が出て くるんだと思うんですね。 しろまる高木委員 2ページ目のところは、この研究の提供に同意しなくても何ら不利益をこうむることがない ことを説明した上でということなんですけれども、4ページの上のところの、治療への影響と いうことで、「未受精卵を研究に用いることで、生殖補助医療の成功率の低下につながるおそ れがあるなど、結果として治療成果に差が出る場合もあり得る」と。これがあったら、これは 明らかに不利益ですよね。だから、これは矛盾すること......。 しろまる笹月主査 いやいや、これは決めたわけじゃなくて、そういうことを項目として挙げられた。 しろまる高木委員 だから、こういうおそれがあるんですかということを逆に先生たちにお伺いしたいというこ とです。 しろまる笹月主査 私は先ほど申しましたように専門でないのであれですが、総論として、こういうことが起こ るような範囲内での話ではないということにしなければいけないと思うんですね。これまでの 経験から見て、これだけのものがとれました。これだけ媒精させればこういうことになるでしょ うという、そういうことでほんとうに安全域を越えたところでの話ということじゃないかと思 います。 どうぞ。 しろまる位田委員 2ページの一番下のしろまる、当面はその問題だと思うんですけど、やはり直接に患者に対して提 供の機会がありますよと言うのは、明らかに医師に対して患者のほうは弱者ですから、一般的 に患者さんはそういう弱い立場にあるので、いかに不利益はありませんよとお医者さんが言っ たとしても、言われるほうの患者としては、ひょっとしたらという不安は当然つきまとうわけ ですから、いかに情報提供だとはいっても、直接に患者に対して、こういうことを言うべきで はないと、私は思います。 ただ、病院に例えばポスターとか、こういう機会がありますよ、こういう研究が今やられよ うとしていますよという、一般的な情報提供は構わないと思います。それを患者さんが読んで、 あそこでポスターを見たので、こういう可能性についてはどうですかと患者さんの側から自発 的に聞くということは構わないと思いますが、医者の側から「直接に」患者に対して提供する 機会がありますよと言うのは、いかにも医師対患者の強者対弱者の関係を利用していると言わ れても仕方がない状況になり得ると思うので、やはり直接という言葉は問題がある。直接に提 供の可能性を説明するということ自体は、やはり避けるべきだと思います。一般的に情報の提 供という点で、直接にではなくて、医院の置かれた状況の中でポスターとかパンフレットが置 いてあるとか、そういうのは認められると思いますけれど。 しろまる笹月主査 ありがとうございました。 ほかの方、どうぞ。 しろまる深見委員 しろまるのところで幾つかの懸念事項ということが考えられておりますけれども、自由意思の確保 と提供者の肉体的リスクということに関しては、次に、第三者を置くとか、それから排卵誘発 剤云々をちゃんと管理するというところでおそらくあまり心配がないんだろうなというふうに 思うんですけれども、やはり治療への影響というところで私は、いつも申し上げるんですが、 マウスの受精をずっとやってきたということでヒトはあまり知らないんですけれども、卵側も いろんな遺伝子操作した卵なんかを使いますと、それが患者さんというのと一致するかどうか というのはちょっと違う問題なんですが、いくら十分量の卵がとれたとしても、そこから媒精 してブラストシストまで持っていってという、そこの効率というのが患者さんごとに多分かな り違ってくるというような可能性というのは、やはりあるんじゃないかなという気がします。 そうしますと、一般的な十分量というのが個々のケースにおいて果たしてほんとうに十分量に なるのか、実際に子宮に戻すときの実際の数というものがそこで確保できるのかというような 心配というものが私の中でも残ってしまうということで、十分量だから少しぐらい治療以外の ほうに持っていってもいいのかというところに対してはやはりひっかかりが残るというのが私 自身の率直な感想で、できれば避けたいというところになるのかなと思います。 そうしますと、卵をどうやって入手するかというところの初めの黒ポチのところに戻るわけ なんですけれども、これはちょっとお伺いということになりますが、(1)のところで確保できる ものと、(2)以下、手術等、卵巣からの採取、こういうもので、実際に(2)(3)(4)で賄えるのかとい う、そこのところの情報というのがちょっと知りたいなあという気はいたします。実際、卵巣 からとった場合の卵というのは、排卵誘発剤でとった卵とちょっと違うと思いますし、そのあ たりの違いというのもあって、実際に(2)以下からとったものというのはどのぐらい使えるのか というか、数としてどうなのか、ちょっとその辺の情報も欲しいのですが。 しろまる星委員 (2)の手術等により摘出された卵巣の卵子は、殆どが成熟していませんからそのまま使うこと はできません。体外での成熟培養が必要になりますのでクオリティーはかなり落ちると思いま す。また、卵がとれるような卵巣摘出手術の症例は限られますから、卵子が得られる確率は少 ないと思います。 (3)の媒精したけれども受精に至らなかった非受精卵というのは、やはり受精しないわけです から、それなりにクオリティーは悪い卵ということになります。 (4)は、今の凍結の技術からいくと、(2)、(3)よりは使える卵子が得られると思います しろまる笹月主査 幾つかのテーマが出てきましたが、1つには、医師の義務ということで水野先生がおっしゃっ たし、それから、いわゆる医師・患者関係ということでは、位田委員がおっしゃったことがあ ります。それから、ほんとうに十分かどうかというのも判断が難しかろうというのは深見委員 がおっしゃったところであります。まず、医師の義務というところは、一般論として、私がさっ き申しましたように、実際に医師から働きかけて、もちろん医師が直接関与しなくても、第三 者、コーディネーターと言われる人でもいいんですが、そういう人たちからの働きかけで、最 終的にはもちろん患者さんの自由意思による協力というものがなければ、臨床研究、医学の進 展を目指す研究はあり得ないわけですから、それはぜひ認めていただかなければいけないんだ ろうと思います。 それから、医師・患者関係のときに、主治医がいいのか、あるいは全くの第三者がいいのか、 あるいは医師とも十分かかわりを持つ第三者がいいのか、いろんなご意見があろうかと思いま すが、それはまたそれとして検討されていくべき問題でしょうと思います。 1つ、一番難しいのは、卵がとれましたと。40個とれました。じゃあ、それを全部媒精し なければいけないのか、あるいは、最近の技術でいけば、数個でいいのか。だから、残りの数 個は使ってよろしいのかと。その辺の判断がどうかというのは、ちょっと私には判断しかねま すので、例えば......。 しろまる星委員 よろしいですか。 しろまる笹月主査 どうぞ。 しろまる星委員 着床率は20%から30%という段階です。そして凍結の技術が確立されている現状では、 厳密に言えば臨床に使えない卵はないと言えるんじゃないかと思います。凍結しておけば三十 何個でも妊娠するまでは保存できますから、さっき水野さんがおっしゃったように、厳密な意 味で不要な卵というのはあり得ません。 しろまる笹月主査 今、未受精卵を凍結しておいて、それを融解してもう一度受精させるということは、もう可 能なわけですか。 しろまる星委員 可能ですけれども、今の技術からいうと、受精させてから凍結させたほうが......。 しろまる笹月主査 したほうがよろしい。 しろまる星委員 はい。 しろまる笹月主査 それでも、実際にここに書いてあるような卵子保存の目的で作成された凍結未受精卵と。 しろまる星委員 患者さんが何回かの凍結未受精卵を使って、あるいは凍結受精卵を使って妊娠した場合には、 子供は1人でいいとなれば、あとは不要になるわけですね。それは使えると思うんですけれど も、ずっと妊娠しない場合だってあり得ますから、最後の1個まで使うということもないわけ ではないので、なかなか、妊娠するまでにこれが不要だと言い切るのは難しいんじゃないかな というふうな気がするんです。 しろまる笹月主査 いかがでしょうか。どうぞ、吉村委員。 しろまる吉村委員 先ほどの(2)(3)(4)はあるのかということですが、(2)(3)(4)を使用するのは、なかなか難しい。数 も少ない。(4)は、どういった例かというと、今、病気であると。卵子をとっておいていただく。 そして、それを10年後、病気が治ったときに戻すとか、そういったことで、今、始められた ところである。これを例えば来年から使用できるとか、まずそういった卵子はない。つまり、 未受精卵というのはなかなか得られないと。 クローン胚の研究においても未受精卵のことを考えたんですけれども、ほとんど研究に使え るような卵子はないだろうと。要するに、理論的には、いろいろ挙がるんですけど、実際に使 えるものは全くないだろうと。クローン胚研究は進まないと心配していましたが、3前核胚が 出てきたから、ようやく可能性が出てきたかなという感じがします。 そうなりますと、きょうご意見をいただいた方々はこの前のご議論に参加されなかった方ば かりであって、この前、(1)−3は認めていこうじゃないかということになったわけです。(1)−3 を認めた場合にどういった問題点があるだろうかということをきょう挙げていただいたという ことですね。となりますと、今の位田先生のご意見も、水野先生のご意見も、(1)−3はいかが なものかというご意見なので、それだったら、もう一回もとに戻らないといけない。 しろまる位田委員 私は、(1)−3は、ほんとうに本人の自由意思があれば研究に利用するということは可能では ないかという立場ですが、しかし、一番下のしろまるの、主治医が直接に患者に提供してはどうかと いうやり方については問題があるだろう。したがって、病院でこういう可能性がありますよと いうことの例えばポスターなんかが張ってあって、それを見て患者さんが私は提供したいんで すという場合には(1)−3に当たると思いますし、かつ自由意思が確保できると思いますので、 それは可能ではないかという立場です。ですから、完全に(1)−3を頭からだめだと申し上げて いるわけではない。やり方は考える必要があるというふうに思います。 しろまる笹月主査 吉村委員が言われたんですが、ここはしろまるになっているけれども、前回、詳細については議論 をしましょうと。全員参加しておられないこともあるし、いろんな意見もあろうから、議論し ましょうと。だけども、(1)−3そのものについては、前回、こういう道をあけるということで は合意なされたわけですね。そのときに、いろんな検討事項としてそれに続くしろまるが出てきてい るという、まずそういうふうにきちんと把握しなければいけないと思います。 しろまる高木委員 (1)−3において、「同意しなくても何ら不利益を被ることがない」という、ここを言えるか どうかということだと思うんですね。今の話を聞いていると、何ら不利益をこうむることがな いとは言い切れないわけですね、妊娠ということにおいては。 しろまる星委員 「提供に同意しなくても何ら不利益を被ることがない」ということは、「提供に同意しなく とも、臨床上すなわち体外受精をする上で不利になることはありません」という意味だけじゃ ないのですか。 しろまる高木委員 そこだけならいいんですけれども、同意しないと不妊治療において主治医がちゃんと見てく れないとか、そういうことに関しての。 しろまる笹月主査 そういうことをここでは言っているわけですね。 しろまる高木委員 そこだけですか。 しろまる笹月主査 それを言っているわけです。だけども、もう一つ踏み込んで、さっきおっしゃったように、 どれぐらいの確率でそんなことがあるのか知りませんけれども、とにかく、20個出ようが、 40個出ようが、それは全部使うべしと。使わなければ、それを一部研究に回せば、将来、ほ んとうは生まれたものが生まれなくなるという、それは可能性としてはあるでしょうけれども、 これまでの生殖補助医療の実績から見て、確率論的にほんとうにプロバブルなことなのかどう かというのは議論の対象になろうかと思いますので、この辺のところはご専門の先生方にご意 見を伺いたいと思います。 しろまる吉村委員 高木委員のおっしゃっていることは大変よくわかります。例えば提供していただいて、全く 不利益がないと言い切ることは難しい。妊娠というゴールに向かって患者さんが治療をされて いる場合に、卵の数が減るわけですから、可能性は減らざるを得ない。今まで未受精卵を研究 に使うということを日本産科・婦人科学会でも認めことはあったんです。なぜ受精が起こらな いのかとか、本人たちに利するといいますか、そういった研究に未受精卵が使われてきたとい う経緯はあるんです。そういったものを凍結しておいて、受精をさせて研究をして、その結果 をフィードバックさせるといったような研究で認めたという経緯はあるんですね。ですから、 全く自分に関係のない研究に未受精卵を提供していただくということは、かなり難しいところ がある。また、第三者が話をするということは、大変いいように聞こえるんですけれども、患 者さんがどう思われるのかなというところもあると思います。やっぱり主治医がしっかり話さ ないと難しいと思います。第三者が話せばいいというふうに今の流れは行っているんですけれ ども、そうじゃなくて、どういった研究に使用するという目的がわかった人がやるということ が、ある意味では必要なときもある。 しろまる笹月主査 ほかの方、いかがでしょうか。 石原委員、いかがでしょうか。 しろまる石原委員 先ほど吉村委員が言われたことに尽きると思いますが、前回の議論の結果、(1)−3を認める という、とりあえずそういう前提で議論を進めるということになりまして、これには私は反対 意見のほうだったわけでありますけれども、そうである以上、これを実現するためにはどうす ることが必要であるか、あるいは、どういうことをすることによって十分条件として満たすこ とができるかというのを考えなければいけないわけですね。この場合、ここに整理していただ きました、自由意思の確保と治療への影響と提供者の肉体的リスクという3つのことを書いて いただいたわけでありますが、治療への影響というのは、今、吉村委員がおっしゃられました ように、少なくともいいことはない。同じか、少し不利益をこうむる可能性があるという、こ れはあまり議論の余地はないので、これについては、それを正確に説明をするということを期 する以外に方法はないので、比較的自明のことであると思います。提供者の肉体的リスクにつ きましては、先日来申し上げておりますように、現在、過排卵処置、あるいは卵巣刺激の方法 というのがかなりエレガントになっておりますので、それほど大きな変更をするはずがありま せんですし、リスクは大きくないと思いますので、問題の焦点はやはり一番上の自由意思の確 保というところだと思います。この自由意思の確保というのが、私は正直申し上げまして、非 常に難しい。我々としてどのように対応すると患者さんの自由意思を確保したことになるのか、 それをはっきりと示せと言われますと、とても難しいのではないかと。これは患者さんの個別 の例によってかなり異なることが考えられますので、一般論として、自由意思を確保している ことを、こうして、ああして、そうすれば、自由意思が確保されているというような手続を決 めるというのは、なかなか難しい。ただ、これについては議論をする必要があるんじゃないか。 それが私の意見です。 しろまる笹月主査 今の自由意思の確保ということは、何もこの生殖補助医療にかかわらず、すべての医療にお ける、いろんな生体試料の提供を依頼することにかかわる問題ですね。今のようなご意見にのっ とっていくと、どれについても、採血一つにしても、あるいは骨髄の提供にせよ、あるいは、 皮膚の提供、肝臓の一部組織の提供、すべて難しいと。ほんとうにそれが自由意思かどうかと 言われれば、常にその疑問は残るわけなので、先ほど来申しますように、そういうところでぎ りぎり押していくと、もはや自由意思ということの断定はできないから、研究のための採血も ままならぬということになるんじゃないかと思いますね。 しろまる石原委員 昔の話で、私はよく知りませんですが、大学などでは学用患者という仕組みがあったそうで すね。それは、医療費をいただかないかわりに、いろいろサンプルをちょうだいしつつ、治療 を行うと。そういう仕組みは非常に問題がある仕組みであることは間違いないと思いますけれ ども、例えば、提供に対して何らかの、例えば体外受精の費用を割り引くとか、そうした、反 対給付と言うとまずいのかもしれませんが、そのような仕組みが入るのであれば、比較的クリ アはしやすいと思うんですね。それに対して契約が発生しますので、自由意思によって契約を したんだと。ただ、もしそういうものが全くなくて、ただ分けてくださいというお話をすると いうのがどのような仕組みとして成り立つのか、僕は水野先生の意見をちょっと伺いたいんで すが。 しろまる水野委員 これはほんとうにぎりぎりのところだと思うのです。私も、だめだと言ってしまえば簡単な 話なのですけれども、何とかだめじゃない仕組みを考えようとさっきからきりきり思っている のですが・・。質問ですけれど、まず、位田先生の言われたようなポスターに応じて自発的に という可能性、そこまで議論ができる可能性があるのかどうかということをお教えいただきた い。前回は、医師が口をきくというところまで決まったのかどうかですね。それについてお教 えいただきたいというのがまず1点と、それからもう1つですが、先ほど2回目以降と言われ ましたが、むしろ1回目は、全然体質というのがわからないですから、普通の人の普通の排卵 の様子で出るはずの排卵誘発剤を処方したところ、思いがけずものすごく効いちゃって山のよ うにとれたという場合はあるだろうと思うのですが、むしろ2回目以降になりますと、できる だけそれを最小限にする義務というのがお医者さんには生じてくるのだろうと思います。 しろまる笹月主査 そういうことを言い出すと、1回目はそうだったけど、2回目は少しにしたために、少しし かとれませんでした。そういう話はだめなんです。皆さん、可能性で議論しているわけだから、 今回も可能性を考えれば、1回目はたまたまたくさんとれたけど、2回目は減らしたから全然 とれなかったというような可能性もあるわけですね。 しろまる水野委員 ですから、医師の忠実義務とどういう形で衝突しないで余分な卵というものが生じるのかな あという場合を一生懸命考えているわけなのですが、そうすると、2回目だと、忠実義務をク リアできるというよりも、むしろその説明が難しくなるような気がして、吉村先生、なぜ2回 目のほうが楽なのかなという。 しろまる笹月主査 ちょっと待って。石原委員が言われた話についてひとつお願いして、2回目のことにまた話 を持っていくと、1回目が解決しませんのでね。 しろまる水野委員 わかりました。まず1回目の件について、お教えいただけますでしょうか。質問でございま す。位田先生の......。 しろまる笹月主査 それもちょっと違うんですけれどね、石原委員が聞かれた質問と。それは2つ目のことなん です。その2つ目にお答えすると、その点についてはさんざん議論して、例えばポスターを張っ ていたとか。そもそも、ポスターなんて張っても、普通は見ませんよね。自分のことで一生懸 命で病院に来た人が周りのポスターを読んで、それを理解しようなんて、ほとんどしない。だ から、そういうことでは自発的な意思によるものは期待できないというのがここでの議論の結 論で、さらに踏み込まなければいけないだろうということなんです。それよりも前の、自発意 思ということをどう担保するかというのが石原先生が先生に振られたことなので、そこだけに していただきたい。 しろまる水野委員 これは非常に難しいと思います。というのは、位田先生がおっしゃいましたように、患者は 主治医に対する関係で、構造的な強制の圧力下にあります。費用の割引があったとしても、同 じことでしょう。そこで完全な自由意思と言えるかという難問があると思うのです。インフォー ムド・コンセントの場合はとかくそういう自由意思で正当化を図るという議論になりますが、 ここでは、この自由意思はどういう形でも正当化には使えないだろうと思います。それは、主 治医に言われたもとでの同意ですから、これは非常に正当化は難しい。 ただ、全体の仕組みを組むということを考えたときに、自由意思による正当化は難しいかも しれないけれども、不妊治療患者たち全員にとっての福音になるというような形で研究を進め るために全体の制度設計をうまく正当化していったら、いわば公益のためにこの点は合理化さ れるのだという形のアプローチというのはあり得るだろうと思うのです。それをどうやって組 むかというのは、しかし簡単ではないだろうと思います。中には、たくさん卵が欲しいからと いうのでじゃんじゃん誘発剤をかけちゃってたくさんもらっちゃうという医者が出るかもしれ ない、それをどうやって客観的に完璧に防ぐかという議論になるでしょう、おそらくは。 しろまる石原委員 そうすると、自由意思の確保という言葉よりも、通常の医療行為におけるインフォームド・ コンセントの場合と同じように、むしろ合意の確保ということがあればいいという話であれば、 可能だと思うんですね。インフォームド・コンセント、あるいはさまざまな手続によって、提 供を求める側と提供する側の合意が確保されたということでは、倫理的には不十分なんでしょ うか。 しろまる水野委員 合意のもとになっているのが意思ですので。 しろまる石原委員 そこに自由がつくと......。 しろまる位田委員 自由意思がないと合意は成り立たないんです。 しろまる水野委員 自由意思が前提になって、合意になるのです。 しろまる笹月主査 ちょっとその件に関して質問ですけど、そうすると、これまでいろんな臨床研究が行われて いますが、それもすべて自由意思とは言えないと。それを証明はできない。だから、先生の立 場に立つと、それは否定的になるわけですか。 しろまる水野委員 ですから、常に申し上げているように、あるものを原則化して、それ全部で正当化するとい うことはできないと思っています。つまり、インフォームド・コンセントというのは、医療研 究の場合には、ヘルシンキ以来、非常に重要なものだというふうにされてきたわけですけれど も、その原点は、医的な侵襲行為に対するインフォームド・コンセントでした。だけど、例え ば研究目的の生体試料の提供というような場合には、それ一つが唯一のいわば尺度で、それさ えとっていればオーケーだという議論の仕方はおかしいと思うのですね。そして、それだけを 尺度にとっていくがために、全然わからない素人に研究の説明をして、合意したからオーケー という正当化ですべてをすませてしまう、これはとてもおかしいと思っていて......。 しろまる笹月主査 そうすると、何が必要なんですか。 しろまる水野委員 それは、その研究が客観的に妥当であるかということを外側の仕組みから見ていくというこ とでしょう。また、この場合だと、お医者さんが卵を不当にとらないという仕組みを外側から かけていくということだと思うのです。 しろまる笹月主査 それは後でも議論として出てきますが、不必要なものはとらない。 しろまる水野委員 そこをがちがちと固めたときには、多少、最初のとり方という場面では、主治医の影響下に あったために、完全な自由意思によるインフォームド・コンセントでとれたということが難し い場合があったとしても、おそらく全体から見たときに、この程度のご協力はしようがなかっ たよねということになる。法律の仕組みは大体、いろんなものを考えて、多面的な仕組みで組 みますので。 しろまる笹月主査 しようがなかったよねというのはちょっとひっかかりますが、要するに、サイエンスをやめ ろというのならそれでいいんですけど、医療の進歩を促すためには、よく患者さんに説明をし て納得してもらって、新たな侵襲は加わらない形で協力をしていただく。これは大前提なんで すよ。だから、その大前提については、もう議論をしても意味がないと思うんですね。それは 大前提で一般論だけれども、各論としてのこの場合に何か特段なことがあれば、それをきちん と議論していくというふうにしないと、大前提のところをやっていたら、これはもうお話にな らないんじゃないんですか。 しろまる水野委員 大前提の議論をしているつもりは全然なくて、生殖補助医療に関して......。 しろまる笹月主査 話の中で、例えば不必要に排卵誘発剤を使うかもしれないとか、そういうことはないように ということはちゃんと後で議論するわけですので、そういうことを今ここで出してもらう必要 はないわけ。 しろまる水野委員 切り離すことはできないと思います。 しろまる笹月主査 別に切り離すことは必要ありません。 しろまる水野委員 外側からお医者さんの行為というのをがちがちに規制しておけば、ここでオーケーが出る可 能性がある。だけど、ここだけで議論をしていくと、位田先生のご議論が筋だと思います。 しろまる笹月主査 ここだけというのは? しろまる水野委員 お医者様の行動を規制するということを全然議論せずに、本人の自由意思の確保ができるか という、その点だけで議論をすれば、位田先生の結論に論理的にはなるだろうと思います。 しろまる笹月主査 どうぞ。 しろまる深見委員 自由意思の確保というところで、臓器移植とか、治験とか、いろんなケースがあるわけです ね。もちろん議論をしていくのでいいと思うんですけれども、そういう一連の流れの中と、こ この場合のケースの違いというのは、多分一番すごく違うのは、時間的な問題なのかなあとい う気がするんですね。例えば治験なんかですと、少なくとも1週間とか10日とか、自分の意 思決定するまでにありますね。それから、臓器移植なんかにしても、その場ですぐにという、 少なくとも時間単位のそういうのはないと思うんですけれども、ここの場合で多分一番違うの かなと思うのは、卵がたくさんとれたときに、ほんとうに時間単位で、精子を媒精するのか、 それとも医療以外のものに使うのかというのを決めなきゃいけないということは、ほかのケー スと随分違うのかなあと思うんですね、そこのところの時間的なファクターというのは。 しろまる笹月主査 話を2つにせずに、1つにしましょう。そこまでに。そのことに関しては、卵子がとれた段 階で判断するんじゃなくて、生殖補助医療をスタートする前にそういう話をして、もし大量と れた場合にはといってお願いするわけですね。だから、時間の単位ということではないと。 しろまる深見委員 そのときではないということですね。ごめんなさい。 それからもう1つ、説明をするというところで、先ほど第三者を入れるかどうか、というか、 第三者にお願いするかということなんですけれども、臓器移植なんかだと必ずコーディネーター さんが入った状態で行うんでしょうかね。ですから、専門家の方に任せるとか、第三者の方に 任せるということではなくて、この両方の方が一緒になって、そういう形で説明して、そして、 キャンセルできると言ったら何なんですけど、考えた後に、お医者さんに言いにくいところは コーディネーターなり第三者の方にそういうふうな意思をということはできるというふうに考 えてよろしいわけですね。 しろまる笹月主査 ええ。 しろまる深見委員 そうすると、先ほどの専門家が説明しないとわからないというところは、専門家が説明して、 そこに第三者が立ち会う。そういうのでよろしいんじゃないかと......。 しろまる笹月主査 だから、そういう技術的なことは、幾らでも可能性があるわけですよ。直接の主治医じゃな いけれども、主治医と同じ立場というか、そういう専門の方もあるでしょうし、それから全く 第三者もあろうし、どれなら認められるのかということは今後議論をすればいいわけで、何も ここでは主治医だと決めたわけではありませんので、皆さんのご意見をいただきたいというこ とです。 しろまる高木委員 石原委員がおっしゃるには、これは成功率はどうしても下がるということなんですが、私が 理解していたのは、生殖補助医療に用いる可能性の低いものだけを研究に使うと、生殖補助医 療の成功率の低下にはそんなに関係ないというふうに思っていたんですけれども......。 しろまる石原委員 それはそうだと思います。悪いものは。 しろまる高木委員 いいものまで使いたいということですか。 しろまる石原委員 いいものを使うというより......。 しろまる笹月主査 ここでは、悪いものだけを使いましょうと......。 しろまる高木委員 だって、いいものはどうしたって自分の妊娠のほうに使いたいわけでしょう。 しろまる笹月主査 ちょっと待ってください。それはそうでしょうけれども、ここで言っているのは、悪いもの だけを使いましょうということは言ってないんです。しかも、媒精する前に、これはいい卵で すとか、これは悪い卵ですとか、もちろん形態学的に変なものであればわかりますけど、その ほかのことはわからないですから......。 しろまる高木委員 いや、今はわかるんですよね、かなりの率でいい卵か、悪い卵かとか、受精しやすいとか。 しろまる石原委員 一番わかりやすいのは、先ほど吉村委員がおっしゃったように、クローン胚がなぜ進まない かということをお考えいただいたら、わかるわけですね。世界中で、例えばヒトの未受精卵子 を提供していただいている場所というのは幾つもあるわけです。それでもなかなかうまくいか ないというのは、結局、いかに提供しやすいような仕組みをつくっても、提供していただける 方が非常に少ない。そういう仕組みでうまくいかないものですから、例えばイギリスなんかは、 動物の、例えば牛の未受精卵を使って、それでハイブリッドをつくるということになったわけ なんですね。つまり、かなり緩くしても、卵子の研究に使えるような、比較的良好でないとや る意味があまりないかと思いますが、提供卵子として出てくる可能性はそれほど大きくないと 考えたほうがよろしいと思うんです。そこがポイントだと思います。 しろまる高木委員 だから、私も、そうすると、石原委員がおっしゃったように治療費の一部とか何かがないと、 これをつくっていても、提供はないんじゃないかなという気はしないでもないわけです。こう いう項目をつくっていても。 しろまる笹月主査 医療費を負担すれば出る、そうじゃなければそういう例は出ませんとは、私は思いませんけ れどもね。もちろんそうしたほうが出やすいということはあろうかと思いますけれども、大量 に出た場合にはどうぞお使いくださいという人はいると思いますよ。だって、ほんとうに自分 の子供を産みたいという一心の人は、医療費を安くするからとか、無料にするから出すとは思 えないじゃないですか。 しろまる高木委員 でも、かなり高いわけですよね。生殖補助医療って、ものすごく高いわけですよね。だから、 私が聞いた話では、ボーナス時期とか、その時期にふえるというのは、やっぱり高いので、あ る程度、生活費じゃないところで入ってくるお金、ボーナスとして入ってくるような時期にふ えるという話も聞いたことがあるんですけれども、どうなんでしょうか。 しろまる吉村委員 それはおっしゃるとおりです。今、フレンドリーが非常に多く行われているんですけど、こ れは、患者さんにとって都合がいいことばかりが言われていますけど、そうではないんですね。 いつでもできる。患者さんは病院に通わなくてもいい。注射をしなくてもいい。だから、フレ ンドリーがいいと言っているけれども、そればかりではないと、私は思うんですね。要するに、 患者さんに対してやさしいからフレンドリーでいいということもありますけれども、何回も何 回もできるわけで、1年に10回する人もいるわけですから、それはある意味で、医療者側の 言いなりになっている、そういったところもあるわけですよ。ですから、水野委員のおっしゃっ たことも一理あるのですけれども、基本は、排卵誘発を使って患者さんに対して負担をかけな いで、体外受精は1年に1回とか2回ぐらいで済ませる。これはある意味でリスクはフレンド リーよりは高いけれども、コスト的にも患者さんに対してやさしいというところもあるわけで すね。 高木委員がおっしゃったことは事実でありまして、必ずお金はかかります。ですから、今、 石原委員がおっしゃったことはどういうことかと申しますと、例えばヨーロッパにおいては、 卵子を提供してあげることによって、エッグシェアリングということが行われていますね。 要するにお金を半分出している。ボランティアも、もとに戻っちゃ申しわけないんですけれど も、ボランティアは無償でやるから問題なんです。有償のボランティアにすれば、これはある 意味ではルールができますから、そういった意味ではいいという。 しろまる笹月主査 私がお金云々と言ったのは、きれいごとという意味で言ったんじゃなくて、ほんとうに自分 の子供を欲しいから出た卵は全部媒精してほしいというセンスから言えば、金が来たってその 気持ちは変わるはずないんじゃないんですか。 しろまる吉村委員 おっしゃるとおりです。 しろまる笹月主査 それを言ったのであって。 しろまる水野委員 先ほど主査は血液の採取と並べておっしゃいましたけれども、臓器移植の場合には、ドナー の主治医はとることに関与できないですね。 しろまる笹月主査 医者の関与の仕方はここではまだ議論していないので、後で議論すればいいことだと、私は 思っています。そもそも......。 しろまる水野委員 ちょうど中間ぐらいのような気がするのです、血液の採取と臓器移植の場合の。血液を研究 用に少々余分に主治医が採ったからと言って、忠実義務違反とは言えないでしょう。でも臓器 移植の場合には、忠実義務に反してはいけないのでドナーの主治医は臓器を与えるということ について関与できません。卵子は、その中間の難しいようなところにあるような気がします。 患者さんのことを思って、患者さんのためにいわば専念して純粋に忠実にやっていくというこ とになると、卵子提供はその患者にはいいことはないというのは明らかなわけですね。それで もいただいて研究に使いたいという。それをどういう枠組みで正当化するかというのは、なか なか難しい。 しろまる鈴木委員 議論を少し整理させていただいていいですか。結論から言うと、私、今回入ってきたしろまる系は、 そう必要のない項目なのではないかという気もしているんですね。焦点は、確認なんですが、 要するに主治医が直接というところが一つポイントなんですね、位田委員がおっしゃったよう に。違うのでしょうか。 しろまる笹月主査 ここは、しろまるということは、こう決めたということじゃないわけで、インフォームド・コンセ ントのとり方は別途議論をするテーマなんです。今、ここでむしろ問題になっているのは、私 のセンスで言えば、出てきたものは全部使っちゃえと。生殖補助医療に使えと。そうじゃない、 余ったものはありませんよと言うから、そこをどうクリアするかというのが1つ。インフォー ムド・コンセントのとり方、患者の自由意思の担保の仕方は、また後で議論をしたいと思いま す。そうしないと、これはだめですということになっちゃえばインフォームド・コンセントも ないので、とにかく出てきた卵は全部生殖補助医療にしか使えませんよと。今までの話を聞い ているとどうもそういうトーンですから、それだったら、とりようがないわけです。インフォー ムド・コンセントもないわけです。 しろまる鈴木委員 前回の議論では一部は使ってよいのではないかという話になったが、きょう、それはいけな いのではないかというご意見がかなり出てきているというお話をなさっているわけですね。 しろまる笹月主査 そうです。 しろまる鈴木委員 そうですか。では、改めて意見表明するとすれば、私はそれでも構いません。どのグレード のを使っていいというのは、もちろん本人が決めることなわけですね。ですので、十分理解し た上でそういうふうに言うのであれば、それは構わないのではないかということと思います。 むしろ私は、それを主治医が直接というのは、一体どういうイメージで主治医が直接というふ うに書いてあるんだろうと。 これで考えていたのは、(1)−1、(1)−2、(1)−3、通常、体外受精の同意書というか、体外 受精の説明をする文書の中にこれらというのはおそらく羅列されていくのではないかというふ うに考えます。例えば、主治医がというよりは、当院では、グレードの低い胚は、幾つ以下の ものは凍結しない方針です。あるいは、受精しなかった卵のこういった部分を分析しますとい うような文書。以前、成育医療センターに見学に行かせていただいたときには、たしかそのよ うな文書が、卵の周りの顆粒細胞とかの分析をすることがありますというような、例えば同意 書の中に一文が入っておりました。そういうことは、今、多くの病院であるのかと思います。 そして、1つの項目として、未受精卵の一部を用いるような研究も当院はしておりますと。例 えば、詳しいことをお知りになりたい方は主治医等に聞いてくださいというような、まず体外 受精の説明書が配付されるのではと思うのですね。 だから、これだけが単体で、主治医が突出して説明するというような話ではおそらくなかろ うと思ったのですけれども、現実問題として。であれば、私は、先ほど言った患者の自由意思 の担保という意味では、この病院では、体外受精における胚や卵子、配偶子の扱いはこのよう になっているんだなという理解からまず始まってから、先生、これはどうなっているんですか というような質問になっていくかと思いますので、ある程度の、法的な自由意思ということは 私にはわかりませんが、通常の医療現場における自由意思という意味では、十分担保なされる のではというふうに考えます。 以上です。 しろまる深見委員 やはり費用の負担を考えることが一番、いろんなことを考えると、要するに一般的な十分量 を患者さんに示して、それを超える分を提供していただけるときには費用の一部を何らかの形 で負担しますという、そういうような形で持っていくことが一番、現実的に進展できることなん じゃないかなあというふうに、私はちょっと思い始めました。というのは、女性の立場から言っ たら、私だったら絶対に全部使ってくださいって必ず言いますね。ただ、いろんなタイプの方 がいらっしゃいますし、子供も欲しいけれども、お金が律速になっている人たちが多くいると いうこともやはり現実問題たくさんありますから、一般的な十分量ということで、それ以上だっ たら提供しますというところを入れることが、全体として多分合意しやすい。そうすれば、患 者さんもある程度は割り切れると言ったら何なんですけれども、というものがあるんじゃない かなというふうに、皆さんのご意見を伺いながら、少し考え始めました。 しろまる笹月主査 そのほか、何かございますか。どうぞ。 しろまる加藤委員 2ページの(1)−1、(1)−2、(1)−3と書いてあるところですが、この文面だけ見ると、3が 患者にとって不利益であるということは、わからないんですね。吉村さんの説明だと、ともか く未受精卵の一部を治療目的に使わないで研究目的に使うというのは、どんな場合でも患者に とって不利益があると。というのであれば、これは除外するべきなんじゃないでしょうかね。 生殖補助医療目的で採取された未受精卵の一部利用というふうには言えないんじゃないかとい うことになると思うんです。 しろまる笹月主査 いわゆるポッシブルか、プロバブルかというところになると思うんですね。連続的な話で、 数がこれぐらいあれば十分ですよと。しかしながら、その2倍とれようが、3倍とれようが、 全部使ってくれという人はそれでしようがないけれども、これまでの生殖補助医療の実績から 見たら、これだけあれば十分ですよと。その2倍......。 しろまる加藤委員 患者にとって不利益にならない場合にはいいかもしれないけど、吉村さんの説明だと、必ず どんな場合でもこの場合は患者にとって不利益であると言うならば、それは......。 しろまる吉村委員 私が言っているのは、不利益じゃないと言い切ることは大変難しいということです。ですか ら、そうなると、不利益はこうむる可能性はありますよということだと思います。 しろまる加藤委員 どう考えてもこれは患者にとって不利益にならないと判断できる場合だったならばいいけれ ども、どう考えても患者にとって不利益だという場合まで認める必要はないんじゃないかと思 うんですね。 しろまる笹月主査 そこを議論したら、線引きは難しいですよね。何個以上なら絶対大丈夫ですよとかね。 しろまる石原委員 例えば、参考になるかわからないですけれども、僕はいろんなクリニックのホームページと かをよく見に行くんですけれども、クリニックによっては、個数によって値段を変えているク リニックが存在するんですよ。例えば、顕微授精というのは1つの卵子に精子を1つ注入する と。ある意味で1個やるのは大変なわけですね、言い方を変えると。5個までだと幾らで、 10個までだと幾らとかっていうふうに表示しているクリニックがあることは事実なんです。 実際にどのように運用されているか私は知りませんが、そういう場合というのは、例えば卵子 が15個とれたと。お金を考えると10個でいいわというカップルが出た場合には5個余り得 るわけですが、それをいただくとかっていう話になると、それは、金銭が払えないから、ある いは余分に払いたくないからという、そういう話になってしまうので、そうなると、またさっ きの議論に戻ってしまうわけですね。 しろまる笹月主査 そうすると、お金を与えますよと言えば、それを使って15個やってくださいって。(笑) しろまる石原委員 現実的にはそういう運用がされているということは、やっぱり述べておくべきかなと思いま したので。 しろまる星委員 個人的には不利益になる可能性はあるとしても、広い意味で生殖補助医療の向上に貢献する のに納得してくれる人の卵を使えばいいということですね。 しろまる笹月主査 全くそのとおりです。 しろまる星委員 そこのところがうまく説明できて了解を得られればいいわけですから、どうしても全部使っ てほしいという人にはどうせできないわけですね。 しろまる笹月主査 もちろんそうです。だから、そういう人にはお金を出したってだめだろうと思う。 しろまる星委員 10個とる予定で治療しますと。それ以上とれた場合の卵に関しては、研究に使わせてくだ さい。これはおそらく不妊の治療に非常に貢献する研究になると思います。それで、納得して くれた人からもらうということですね。 しろまる笹月主査 そうですね。 しろまる星委員 それでいいんじゃないですか。 しろまる笹月主査 私はそれでいいと思っているんですけれども。 しろまる水野委員 ですから、そのときに、お医者さんがたくさん欲しいなと思って余分に排卵誘発剤をかけた のではないということを客観的に立証できるような枠組みが要る。そんなことをするはずがな いというのでは通らないわけです。 しろまる星委員 なるほど。ただ、成熟した卵がたくさん認められた場合、10個必要だから10個とればそ れで良いということにはなりません。成熟した卵子全て採卵して、卵巣に残しておかない方が 患者のためになります。卵巣過剰刺激症候群という疾患発症の予防のためです。そういうこと もあるので研究に回せる卵子が出てくる可能性はあります。しかし、先生おっしゃるとおり、 卵子が欲しいがために余分な排卵誘発剤を使う、というようなことはあり得ないという保証は ありません。医師と患者の信頼関係がきちんとしていればそのようなことはあり得ないと思う のですが・・。 しろまる笹月主査 ガイドラインとしては、そのために不必要な、例えばルーチンの、あるいは生殖補助医療と して最も多用されている標準の投与量よりも上げることは厳に慎むべしという1項目ですね。 それをどうやって担保するか、検証するか、だれがそれをチェックするかということを言い出 すと、これはもう不可能だと思います。何かいい案を提出していただければ。 しろまる水野委員 だから、それを考えているのですが、そこが見つからないと、加藤委員や位田委員が言われ たように、そもそも本人には不利益になるので、本人が全く自発的にお医者様から圧力もかけ られないのにみずから進んでというボランティアを待つしかないということになるのだと思う のです。例えば、後のほうでご提案がありましたけれども、未受精卵は全部記録を残すとか、 どれだけの薬をかけてどれだけとれたということを全部記録に残して、あるいは患者に渡して おいてというような形で、後から、どうもあのお医者さんはやたら未受精卵をたくさんくれる ということになったときは、トレースできるということにする仕組みを整えるとか。そんなこ とは不可能だと言ってしまうと、筋論の位田委員や加藤委員のご発言のところに戻ると思うの ですけれども。 しろまる笹月主査 そんなことするはずないから性善説でいけと言っているんじゃなくて、いろんな工夫をして、 とにかく可能な方法を探っていただきたい、そのためのいいアイデアを出していただきたいと いうことを言っているわけです。 しろまる高木委員 今おっしゃったことに関連するんですけど、例えば、未受精卵がすごくたくさんできるから、 そういう療法を使っている医師はおかしいとかいう、そういうことはあるんですか。例えば、 あるお医者さんは、そういうやり方が妊娠させるのに一番いいとかって、もしかして考えてい るかもしれないわけですね。そのやり方がおかしいとか、そういうことをトレースして、未受 精卵が非常にたくさんできている、あの医者は多いからといって、そのやり方を悪いとか、い いとかって、スタンダードなやり方というのは決まっているわけじゃないんでしょう。どうな んですか。 しろまる星委員 決まってないです。それはいろいろなやり方があって、1個か2個の卵がとれればいいと考 えている人もいるし、確実に卵をとるためには少し排卵誘発剤を使ったほうがいいと考える人 もいるし、ルーチンのものはないと思いますね。 しろまる高木委員 とすると、例えばある医師は非常にたくさん未受精卵ができたからといって、その医師のや り方が悪いとは言えないわけですね。 しろまる星委員 それは一概に言えない。 しろまる高木委員 言えないですね。 しろまる小澤委員 いろんな話を伺うごとに話が難しくなってきて困ってはいますけれども、質問としては、実 際問題として未受精卵はかなり使われずに残っていく形になっているんでしょうか、数として。 しろまる吉村委員 基本的に受精させますから、それはないですね。要するに、基本的に妊娠したいと思って来 られるわけですから、当然のことながら、ほとんどの患者さんはすべて受精させるわけです。 ですから、未受精卵が残るということは、初めから考えないと、ありません。一切ないですね。 しろまる笹月主査 逆に、受精させた胚を凍結するわけですね、次回、次々回のために。しかしながら、患者さ んが満足して、もうこれで結構ですで、破棄されるものもあるわけですか。 しろまる吉村委員 それは、研究に使わせていただいたり、ES細胞もそうやってするわけですけれども、廃棄 する場合もあります。 しろまる笹月主査 そういうことから言うと、それは受精させずに置いておけば、未受精卵として研究に使えた ものということになりますね。 しろまる吉村委員 そういう言い方もできます。ただ、事前には、この人が妊娠するかどうか、わからないわけ ですね。 しろまる笹月主査 だから、これとちょっとずれますけれども、即研究に使わせてくれというのが1つと、もう 1つは、とにかく研究に使うために凍結させてくれと。だけども、患者さんの妊娠が成功しな い場合にはこれを融解して生殖補助医療に使いますよと。いろんなやり方はあるんじゃないで すか。 しろまる吉村委員 未受精卵の凍結がもう少しうまくいくようになれば先生の今のお考え方が通用すると思いま す。現実においては受精した胚にしておいて凍結したほうが圧倒的に成功率はいいですから、 そういったことを考えると、患者さんとしては、すべて受精をさせてくださいとおっしゃるだ ろうと思いますね。そのときに、我々医師としても、初めからこれを研究に使わせてください と言うのは、言いにくいですよね。そうやって言っているところは、ほとんどないと思います。 しろまる笹月主査 もちろんそうでしょうけれどね。だけど、それを可能ならしめないと、要するに生殖補助医 療研究というものはあり得ないわけですね。だから、そこに活路を求めようというのが前回の 最終的な話。ただし、それにはもろもろの問題があるので、その実行に関してはどのようなこ とを配慮し、どう解決し、乗り越えるかということを議論しようということになったわけです。 だから、大前提として、一番最初にこの話を伺ったときに、とにかくヒトの胚を試験管内で 作ってよろしいと。しかもそれは、生殖補助医療に使わずに、研究に使ってよろしい、破棄し てよろしい、すりつぶしてよろしいというのは、びっくりするような踏み込みですね、一方か ら見れば。ということは、それほど生殖補助医療というものの重要性、あるいはそれが未完成 であるという認識。そのためには生殖補助医療に資する研究が必要であるという認識が、大き な認識があると思うんですね。だから、それを可能ならしめるガイドラインづくりをやれとい うことだと思うんです。そうすると、いろいろやっているうちにがんじがらめになって生殖補 助医療に資する未受精卵が手に入らないという状況になるのは本末転倒で、何とかそれを手に できる道を探らなければというのが、逆の言い方をすれば、この委員会のミッションの一つだ と思うんですね。いいかげんなことをやらせてはいけませんといって縛る一方、しかしながら 可能にするということの大事な側面だと思うので、ぜひ知恵を出していただきたい。法律の方 には、私はその辺のところは専門外ですから、きちんとしたアイデア出していただきたいとい うことなんです。 しろまる水野委員 途中から議論に参加しておりますので前提を共有していないのかもしれませんが、今、主査 がおっしゃったような、ヒトのもとであるところの卵とか、あるいは受精卵をすりつぶしたり、 そんなことをするなんてという感覚は、実は私はあまり持っておりません。それは、研究とい うのに資するためには、細胞の段階であまり尊い生命と考える必要はないと思っています。そ こは私はラジカルすぎるかもしれないのですが。一番大切なことは、細胞を生命にしてしまう ことの危険、つまり変なキメラをつくって母体に戻したりしないということと、それから、患 者から卵を採取するときに患者の心と身体に圧力をかけて不要な卵はとらないこと。いわば一 番大事な点はその2つを守れるかという点だと私は思っておりまして、ここは、その場面だと 思うのですね。だから、一番難しいところであろうと思います。 しろまる笹月主査 その認識でみんな議論をしてきたと思いますので、何とかいい知恵を出していただきたいと お願いしているわけであります。 しろまる水野委員 どうですか。お知恵を。 しろまる町野委員 容易にキャッチアップしてまいりましたけれども、一番最初にボタンのかけ違いがあったの がかなり大きいんですが、今ごろそれを言ってもしようがないので、先ほど主査は、受精胚を すりつぶしたり、卵子をどうのこうのとおっしゃいましたけど、この2つには実は画然と差が あるので、受精胚を実験に用いることのほうがむしろタブーなんですね。ところが、卵子その ものは生命ではございませんから、それを獲得することについてのほうがむしろ厳しくなって いるという考え方は、どこかで狂ってきているということが1つあると思います。これは黄教 授のときの受精卵の獲得から始まっている話なんですけれども、それが問題になってから始まっ ているんですが、しかしながら、これをもう一回もとに戻すことはできないということで、ま ず議論をしなきゃいけないだろうと、私は思います。 そこで、知恵がないかという話ですけれども、どうも今のところ知恵はなさそうですね。と いいますのは、なぜかというと、もし仮に生殖補助医療の目的で卵子を提供してもらって、全 部を受精させるんじゃないと。幾つか残って、それが廃棄されるんだという前提であるならば、 私は、この話はあり得ただろうと思うんですね。そうじゃないという今の吉村先生のお話です と、これはないだろうと、私は思います。そして、研究のために必要だからというのは、私は、 理由にはならないだろうと思います。必要だと言われるんだろうけれども、これはやってはい けない話ですよという話になるだろうと思います。ですから、最初の事実認識のところではな いかと思います。もしそうでなければ、もう一回、最初からガラガラポンでやり直すしかない というふうに思います。 しろまる笹月主査 先生は、いかにも私がすりつぶすのよりも卵の入手のところが大事だと思っているような......。 しろまる町野委員 いえ、そうじゃないです。 しろまる笹月主査 そうじゃないですね。私も、すりつぶすのはびっくりだと言っているので、要するに配偶子 の入手というのを、精子のほうから見ると、なぜこんなに大きな差があるのかということにな るわけですよ。だから、配偶子の入手ということに関して何か知恵はないものかということで、 私は、ありませんということではないと思いますね。 一つのやり方は、これまでの実績にかんがみて、これだけの数の卵に媒精して受精胚をつく れば、まず大丈夫ですという。それはもちろん正規分布だとして、それから外れる一群は少し はあるんでしょうけれども、その数を大きく上回った場合には、それを使わせてくださいと。 しかも、本人がそれを納得すればという、そこしかやりようはないんじゃないかと思います。 ただ、そこに医療費の問題云々というのが出てくるのは付加の問題として、まず大前提として どうかという。 しろまる町野委員 幾つかあるんですけれども、ボタンのかけ違いのことは、先生が言われた、卵子と精子でこ んなに違うようになっちゃったという話ですね。それも一つの問題だろうと思いますけれども、 そういうことは置いておきまして、前に吉村先生だとか一緒におられた厚労省の生殖補助医療 の委員会で、そのときは、卵子の提供についてのエッグシェアリング、たしか鈴木委員もおい でになりましたけど、そのことでかなり議論があったわけですよ。そのときも先生に確認した ところ、もし卵子の提供を認めてもらうためにエッグシェアリングをやろうということですと、 それがないときについては全部媒精させていると。そういう話があったときについてだけ、卵 だけを提供してもらう。そういう話になっていますから、こちらもおそらくそのラインで考え なきゃいけないだろうと思います。向こうのほうは、卵子の提供については、不妊治療といい ますか、そのために直接役に立つということであったわけですけど、こちらのほうはそれがな いという話ですね。ただ、それが、今のような研究といいますか、不妊治療の研究だとか、そ ちらのほうに使われるということですから、そのための研究ですから、必ずしも完全に、ご本 人、提供者とか、受益者といいますか、そういう対象者の不利益になる話でもないだろうと。 むしろ長い目で見たらプラスになる話であろうということで、その延長線上で考えられるのか なという感じはいたしました。 しろまる笹月主査 それしかないと思うんです。ただ、そのインセンティブといいますか、ご本人自身が生殖補 助医療を今受けようとしているわけですので、その生殖補助医療が今日のレベルに至ったその 背景には、今対象としている患者さんと同じようにボランティア精神で協力してくれた方があっ たから今日のレベルがあるわけで、ということが1つと、それから、今おっしゃった、回り回っ て本人の利益にもなるかもしれない、あるいは、時間がかかるので本人には無理だけれども、 同じように悩んでいる人の利益になるかもしれないという意味で、私は、きちんと説明すれば、 理解される人たちというのもあるんじゃないかと思います。どうしても嫌だと言われる方を説 得してというようなことはもちろんあり得ないわけで、さらりとサイエンティフィックに説明 して、理解される方にお願いするという、そういうことじゃないかと思います。 しろまる町野委員 先ほど水野委員がおっしゃいましたとおり、結局、問題は、余計に卵子をとらなきゃいけな いという話ですよ。 しろまる笹月主査 いやいや、それをやっちゃいけないというのが大前提。 しろまる町野委員 つまり、卵子が出たときについては、基本的に全部受精させるというのが今のお話ですね。 そうなりますと、受精させないものをとるということになりますから、少し余計にとらざるを 得ないということになると思います。 しろまる笹月主査 いやいや、それはだめなんです。 しろまる町野委員 もしそれがだめなら、できないということですよ。ですから、ある範囲で受精させない卵子 も生じますよという話をして、全部受精させてもらいたいんだけど、何に使いますかという話 で、研究のほうに使わせてもらいますと、そういうインフォームド・コンセントなんですね。 これは、ある範囲で受精させないものをとるというのである限りは、余計なものはとるわけで すよ。ですから、それをまず最初に議論しなきゃいけないと思います。その点がもしタブーで、 絶対だめだったら、これはできないという話です。それができるというのがエッグシェアリン グを認めたときの厚労省の中の委員会の最終的な議論ですから、それは、受精させない目的で、 エッグシェアリングの目的で卵子をとるということを認めたわけですから、その延長線上で考 えてきゃいけない。 しろまる笹月主査 ちょっと待ってください。質問です。今の先生の言い方は、排卵誘発剤を余計使いますよと いうことですか。そうじゃないでしょう。 しろまる町野委員 いいえ。 しろまる笹月主査 そうじゃなくて、結論としてそうなっていますという、回り回った議論でしょう。 しろまる町野委員 ちょっと違いますが......。 しろまる笹月主査 だって、排卵誘発剤の量は同じですと。ところが、多くとれた場合には、スタンダードで、 このレベルであれば妊娠する確率が九十何%以上なので多分大丈夫だろうから、この部分を使 わせてください。その部分を、生殖補助医療に使わない余計な卵をとったというふうな言い方 をされているわけでしょう。それは、私はちょっと納得できないです。 しろまる町野委員 言い方の問題だと思いますけれども......。 しろまる笹月主査 言葉は悪いけど、へ理屈に聞こえます。 しろまる町野委員 いや、それはそうではなくて、むしろそれが大切なところだと、私は思います。つまり、先 ほどから私もちょっと事態を理解できないでいたんですが、吉村委員などのお話ですと、とに かく基本的にとった卵はむだにしない。使える卵は受精させて、そして置いておくものだとい う話ですね。ですから、それが原則なんですから、とったものにむだなものはないはずなんで すよ、もともと生殖補助医療に使うということですと。だから、言い方の問題で......。 しろまる笹月主査 言い方の問題で、むだなものがあるから、最後にそれは破棄すべしということになっている わけでしょう。例えば胚でも、患者が......。 しろまる町野委員 いや、胚と卵子は違います。 しろまる笹月主査 患者がもう要らないと言ったときには、破棄すべしということになっている。ということは、 むだがあるわけですよ。むだが実際に生じているわけで、それを破棄しているわけです。だか ら、そういう現実を踏まえると、やっぱり初めの段階でそういうものを使わせていただきたい ということでいかなきゃだめで......。 しろまる高木委員 先生がおっしゃった、これだけとっておけば90%大丈夫なんて、あり得ないわけですね。 しろまる笹月主査 数字を使うのはまずいんでそれは撤回します。 しろまる高木委員 2、30%ですよね、今、成功率って。 しろまる笹月主査 だから、数字を出したからまずかった。 しろまる深見委員 実際やっていらっしゃる先生方にちょっとお伺いしたいんですけれども、排卵誘発剤をかけ ても、多分、卵のとれ方って患者さんごとに違うと思うんですが、一般的に十分量というのは 設定できるものなのかどうかという、ちょっとそこのところ......。 しろまる笹月主査 それは絶対できませんよ。これだけあれば十分というのは。 しろまる深見委員 一般的に、このぐらいの卵の量を超えたらば使っていただいてもいいという、そういうよう なのっていうのは、大体決められるものなのか。 しろまる石原委員 それはやってみないとわからないわけです、正直な話。幾つあれば十分かという議論は、こ こでやるのも意味がないし、医学的にもあまり意味がない話だと思うんですね。同じ人でも周 期により違う場合すらあるわけですから。 しろまる深見委員 ただ、そこのところで十分量ということをいつも考えるわけですね。だから、その......。 しろまる笹月主査 十分量は言えないんだけれども、これまでの経験から見て、やっぱりあるわけですよ、経験 則が。だからこそ排卵誘発剤の使い方を減らしたわけです。これだけ使えば大丈夫だろうとい う線を決めたわけです。ということは、その線があるということです。それは当然あります。 しろまる石原委員 我々、実際に経験する側としては、いくらやっても卵がとれないという問題のほうがはるか に多いわけですね、事例の数としては。非常にたくさん卵胞が育つ可能性の高いPCOS(多 嚢胞性卵巣症候群)その他の人については、いかにそういうふうにならないかというような対 策を講じますので。そうじゃなくて、とれるだろうと思っているのに育たないというケースで 苦慮する場合のほうがむしろ多いわけですね、実際の事例としては。 したがって、どれだけ予想できるかという話は、先ほど1回でどれだけ妊娠するかという話 がありましたが、1回での妊娠率というのは、今、約2割と言われているわけですね。凍結な どを組み合わせていって、累積の妊娠率がどれくらいになるかと言われますと、6割とか7割 とか言われて、それ以外の人は結局うまくいかないという、そういったことが言われているわ けですので、それに関して数値で、特定のある人についてどれくらいが予想されるかというの は、出ないわけです。それは全体の平均でありまして、平均寿命が幾つかという、そういう話 に近い話ですので、それをこういう話に使うのは、なかなか難しいと思います。 しろまる後藤委員 すみません、質問なんですけど、卵が例えば20個とれたときとか、10個とれたときとあ ると思いますが、今はもっと少ないと思うんですけど、その卵は、どれぐらいまでが一番、将 来、妊娠が成立する可能性があるのか。例えば1から5までなのか、1から2までなのか、1か ら10まで......。 しろまる石原委員 それは場合によりますので。 しろまる後藤委員 場合によっても、全然バラエティーがあるということですか。 しろまる石原委員 1個しかとれなくても妊娠する人もいるわけですから。 しろまる後藤委員 じゃあ、20個とれて、20回、妊娠の可能性がある場合もあるということですね。 しろまる石原委員 可能性はある。 しろまる後藤委員 じゃあ、序列は全然つけれないと。 しろまる石原委員 難しいですよね、それは。何個とれたらどれぐらいという......。 しろまる星委員 むしろ受精してからの形態による。 しろまる後藤委員 じゃあ、卵そのものの分別はできないということですね。 しろまる星委員 受精させる前は難しいです。 しろまる石原委員 受精させる前は不可能です。 しろまる星委員 よっぽど変な卵であれば、もちろん除外しますけれどね。 しろまる後藤委員 それから、採卵の基準というのは、何ミリとか、そういうのである程度決めているわけで すね。 しろまる星委員 そうです。 しろまる後藤委員 5ミリとか、7ミリとか。 しろまる星委員 もうちょっと大きいでしょう、今は。 しろまる石原委員 卵胞ですか。 しろまる後藤委員 卵胞の。 しろまる石原委員 卵胞は大体18から20です。 しろまる後藤委員 18から20でとるんですけれども、たくさんとるときはやっぱり18から20以下のもの はとらない。 しろまる石原委員 いや、OHSSにならないように、むしろできるだけつぶすわけですね。 しろまる星委員 全部とったほうが患者のためにはなるんです。 しろまる後藤委員 そうですか。わかりました。すみません。 しろまる鈴木委員 石原委員、今の18から20というのは、サイズの話ですね。 しろまる石原委員 卵胞径です。 しろまる鈴木委員 多分、後藤委員は数の話......。 しろまる後藤委員 いや、18から20はサイズの話です。 しろまる鈴木委員 サイズでいいんですね。 しろまる後藤委員 はい。 しろまる加藤委員 笹月先生の考えている可能性はないって、皆さんおっしゃっているんじゃないですか。(笑) しろまる笹月主査 そうですかね。僕は依然としてそうは思ってないんだけど。先生ご自身はどう思いますか。 しろまる加藤委員 今の話を聞いていると、ともかく卵子をとって、実際に患者にとって不利益にならないよう な形で受精させないで実験用に利用できるケースがあり得るということですね。しかも、患者 に対して金銭上のインセンティブを使って説得するのではなくて、患者に同意してもらわなきゃ ならないということですね。ところが、実際に患者にとって不利益にならない場合というのを あらかじめ知ることができないんだとすると、今言ったようなケースを認めることはできない ということになるんじゃないかと。あらゆる場合に患者にとって不利益であるとすると、患者 にとって不利益だけれども同意は取りつけたと。その同意は自発的であるということを判定し なきゃならないんですけれども、それはやめたほうがいいと思いますね。 しろまる笹月主査 今のは、量的な、連続的な形質を、あるスレッシュホールドで0―1形質にしちまったら、 そういうことになるわけですね。不利益といっても、可能性、ポッシビリティーとプロバビリ ティーでいくと、著しくその不利益は小さいというところの人にお願いするわけです。プロバ ビリティーとして著しく低いので、こういう協力をお願いできませんかと。次に、お金で解決 できるのなら、お金というか、医療費ということで解決できるのなら、またそれはそれで議論 の余地があると思っています。私は、医療費とかお金を出してはいけないと言っているのでは ないのでありまして。 しろまる町野委員 何が不可能なのか。要するに加藤委員は、使うことは不可能だと、簡単に言うと。そういう 話ですね。 しろまる加藤委員 だから......。 しろまる町野委員 私は、そういうことはないと思います。その点では笹月先生と同じでございます。ただ、不 利益とか利益とかいうのは、そう簡単に決まる問題じゃないという話なんですね。先ほどもご 議論ありましたけど、採取された卵が自分の不妊治療の目的で使われない可能性があるという のは、確かに不利益です。しかし、この卵が、笹月先生の言葉を使えば、回り回って自分を含 めた多くの不妊に悩む人たちのための治療に役に立つことはあり得ると、その研究に使われる ということを考慮して決めるわけですから、利益か不利益かを決定するというのは、まさに自 己決定の問題なんですよ。他人が決定することはできないから、利益か、不利益か、それは本 人が決めるのだというのが自己決定の思想ですから、その限りでは、不利益なことに自己決定 はあり得ないということは、私はむしろないと。話は逆だろうと思います。 しろまる加藤委員 わかります。 しろまる笹月主査 ほかにどなたかありますか。吉村委員、何かございますか。 しろまる吉村委員 いいえ。(笑) しろまる笹月主査 現場の第一線のフロントランナーとして。 しろまる吉村委員 (1)−3をどのような形で認めていただけるかと。自由意思の確保というのは、一番難しいん じゃないかなと思うんですね。ほんとうにそれは自由意思の確保ができていますかと言われた 場合に、位田先生がおっしゃっているようなものだと、なかなか提供してくださる方はおみえ にならない。非常に理想的なんですが、現実的ではないような。位田先生のご意見はいつも理 想的なことをおっしゃっているのですが、なかなか現実としては難しい。しかし、やはり一定 の不利益があるということをちゃんと言わないといけないのではないか。その上で同意をして いただける方に頼んでいくしかないと。ただ、エッグシェアリングのように金銭のことを持ち 出せば、ある程度やっていただける方はおみえになるだろうという感じはいたします。 しろまる笹月主査 ありがとうございます。 金銭のことは結構なんですが、その前に、金銭が出てこなくても、きちんと説明すれば、同 意してくださる方もあるだろうと、私は思うんです。不利益というか、例えば遺伝子治療にせ よ、新しい医療の治療法の場合には必ず、未知の、予測不可能な副作用というものはあるわけ で、実際に白血病で亡くなった方もありますが、こういう不利益もありますよという大前提で 患者の同意を得るということもあるわけですね。だから、不利益ということを述べずにという ことは、やっぱりあり得ないと思いますね。普通は全部媒精して、凍結しておくんですよと。 だけども、これまでの実績から見てこの程度でしょうという、何かそういう、可能性とプロバ ビリティーとをきちんと両方言わないと、可能性だけで言われると、サイエンティフィックで はないと、私は思いますけどね。ポッシビリティーとプロバビリティーをきちんと、両方をわ かるように説明する。 しろまる高木委員 今、ここの段階で、例えば金銭ということ、治療費の一部、エッグシェアリングということ があるかなしかということをちゃんと決めておかないと、ここの書き方というのも全然違って くるものになると思うんですね。ですから、それはあるかもしれないし、ないかもしれないと いうことで次に行くということではなくて......。 しろまる笹月主査 いや、そんなことは言っていません。もし医療費を云々ということを認めるのなら、可能性 が高まるでしょう、そういう人がふえるでしょうと。皆さんがそれでよろしいと言われれば、 ぜひそうしたいと思います。 しろまる高木委員 じゃあ、次の段階でそこを話すということですか。 しろまる笹月主査 はい。 しろまる水野委員 自己決定で不利益なことが正当化できる枠組みだと先ほど町野先生が言われたのはまさにそ うだと思うのですが、主治医から言われるということが自己決定と言えるかという問題なので は・・。 しろまる笹月主査 いや、それはまた話が別。さっきから言うように、主治医とは決して言ってないので、それ もここで決めていただければいい。どういう人がやれば、より自己決定に近くなるのか、より 自己決定と認められるのかということを言っていただければいいので、ここには例示として 「主治医が」じゃなくて「主治医等」と書いてありますが、主治医が寄与してはいけないと言 われるのなら、それで結構ですし、どういう形かでとにかく、ほんとうに自由意思であること を皆さんが納得できるような形でインフォームド・コンセントを得たい。どうすればそうなり ますかというテーマです。主治医が、主治医がと言っていただく必要はないのです。 しろまる水野委員 それは、位田委員が言われたようにポスターということだったらまさに問題ないと思うので すけれども......。 しろまる笹月主査 それは現実的には、例えば私自身が何かの病気で患者で外来に行って、いろんなものが張っ てありますけど、それを一生懸命読んで、よしこれに協力しようなんていうことはあり得ない。 自分の病気のことに一生懸命で。読まないですよ。 しろまる位田委員 私は、自分ではそんなに理想的だと思っているわけではないのですが、仮に理想的であると すると、その理想からどこまで現実に近づけるかなという議論をしないといけないと思ってい るので、そういう意味では、先ほど鈴木委員がおっしゃったように、例えば当院ではこういう 研究への提供もやっておりますという説明のパンフレットを渡す。ポスターはみんなが読まな いからとおっしゃるのであれば、それぐらいは読むでしょうね。そういう一般的なやり方だっ たら構わないけれども、施術の前に主治医、もしくは第三者でも構いませんけれども、そうい うことがありますよということを患者さんに直接申し述べるということは、やはり避けるべき だと思っている。 しろまる笹月主査 いかがでしょうか。 しろまる高木委員 私は、主治医が説明してもいいと思うんですけれども、例えば、もう1人、カウンセラーみ たいな方がいらして、その人にフリーな立場で患者さんに意思確認をしてもらうとか。実は主 治医なのであまり言えなかったとかいうことがないような、もう一段階はあったほうがいいの かなという気はするんですね。 しろまる小澤委員 一応、(1)−3の形があるとして、自由意思の確保といいましょうか、説明の仕方ですけれど も、すべてのケースにこういう話を持っていったら、この病院は研究目的かとか、あらぬ誤解 を受けやすいので、主治医が長いつき合いの中で、この人は協力してくれそうだとか、そうい うことを認識した上で説明をして、それで納得してもらえた場合に初めて第三者の確認を得る という。全員全部、いきなり第三者の説明に行っちゃう必要はないと思うんですね。 しろまる笹月主査 ありがとうございました。 いかがでしょうか。 しろまる小澤委員 もう1つ、ちょっとずれた話でもいいですか。 しろまる笹月主査 今のことでいきましょう。 しろまる水野委員 やっぱり、インフォームド・コンセントの形をいくらとっていっても、後で、妊娠できなかっ たという患者が、あの卵さえあればという場合はあると思うのですね。そうすると、自分の合 意、インフォームド・コンセントというのは強制されたものだったと主張してくる可能性とい うのはある。そのときに、客観的にそうではなくて、あなたのあのときの合意というのは、そ の時点でのあなたにとって別に全然負担ではなかったはずだし、おかしなことではなかった、 排卵誘発剤の使い方も妥当なものだったということを後から立証できるような形でお医者さん を守らなきゃいけないと思うのです。そうすると、記録に残すということぐらいなのかなと思 いますが、記録に残したのをだれが見るのか。倫理委員会はあまり実際的ではないかなと思っ たり、そこはまだ思いつかないのですけれども。ともかく患者と医者の手元には、あなたはこ れだけの卵がとれて、そして、この点についてこれだけ使えば十分だと思われるので、これだ け説明してご協力いただいたということを残しておく。そういう形で何か記録を残して、後で トレースできるような仕組みが少なくとも必要だと思います。第三者を介するとか、ゆっくり 説明させるとか、インフォームド・コンセントをとる段階でいろいろいじくっても、後で患者 が私の卵を全部媒精してもらっていたら今ごろはお母さんになれたと言うのを折伏することは できないだろうという気がするのですが。 しろまる町野委員 今、第2段階に入っていると考えてよろしいんですか。つまり、インフォームド・コンセン トだとか、そちらがきちんと保証されれば、このような方法で卵をもらってもいいと、そうい う話にもう既になっているわけですか。 しろまる笹月主査 というよりも、ここはしろまるがついているというのは、前回、こういう方法でいきましょうと決 めたんです。ただし、もろもろの問題があるので、それをどう解決するか。ですから、まさに インフォームド・コンセントをきっちりするとか、それから、水野委員がしきりに言われる薬 剤の投与が過剰になるんじゃないかという疑いをどう払拭するか......。 しろまる町野委員 簡単に言うと、加藤委員のような意見ではなくて、ということですね。簡単に言うと、そう いうことですね。 しろまる笹月主査 はい。 しろまる町野委員 それで、今は次の段階に。 しろまる笹月主査 そうです。 しろまる町野委員 わかりました。私は、インフォームド・コンセントのことは、かなり重要だろうと思います。 ただ、インフォームド・コンセントというのは時々、これさえあれば問題ないというぐあいに 言われますけれども、それはそういうものではないのであって、一番の問題は、とったときに 当事者が納得してもらえるかどうかです。後からすると、後悔することは、人間ですから必ず あります。ただ、そのときに、あのとき自分は納得づくで任意で承諾したんだから、いい選択 だったと思えるような体制をつくることが、私は大切だろうと思います。 しろまる笹月主査 そうですね。全くそのとおりだと思います。で、具体的にそれをどうするか、皆さんの知恵 を出していただきたいという。 しろまる町野委員 いい知恵かどうかわかりませんけれども、主治医がするというのは、私は適切じゃないだろ うと思います。だからといって、第三者機関をつくって裁判所みたいなところでやるというの は、これははるかに理想とは遠いだろうと思います。やはりアットホームな雰囲気で、何か コンサルタントみたいな、あるいはそういう人がつくことは、私は必要だろうと思います。そ して、そういう体制をつくったところで研究計画全体について倫理委員会が審査して、事前に それを検討するという体制。そして、事後的なフォローアップといいますか、モニタリングも 必要だろうと思います。そういう体制がとられることが必要だろうと思います。 しろまる笹月主査 今、先生がおっしゃったのは、位田先生がおっしゃった話よりもより理想的な姿だと思うん ですが、ただ、その中で非常に難しいのは、アットホームな説明をできる人材ですね。そうい うのが日本には育てられてないんですね、これまで。だから、そういういわゆるコーディネー ターと言われるものをどのように育てていくかということは、現実のこの問題にはあれですけ れども、そういうことを努力していかなければいけないというのは、一つ大きなテーマだと思 います。 それと、小澤委員も、ドクター、臨床家でありますし、それから、そのほかにも臨床の方は おられますが、それらの人々から出てくるように、まず主治医がコンタクトすべしであると。 それが最も無理のない、町野委員の言われるアットホームな姿だというのは、これらの先生が すぐれた人だからであって、臨床家は必ずしもそういう人ばかりではないというのが、実際の 医療の場にない方々からのコメントになるんだろうと思うんですが。 しろまる高木委員 私は、あまりそれはよくないと思うんです。自分の今までの不妊治療にずっと携わってない 先生がいきなり出てきて、しかも研究のために卵を幾つか使わせてくださいなんて言うと、患 者さんはものすごい不信感を持つと思うんですね。あまり関係ない先生がいきなり出てきて、 しかも結構きついことを言うわけですよね、余った卵を研究に使わせてくださいという。それ をやるのはやっぱり主治医がよくて、でも、主治医だけじゃなくて、もう一段階、コーディネー ターみたいな人で、よく考えたけど、やっぱり嫌ですというような立場のだれかをもう1人置 くとかっていうほうが、理想的じゃないかなと思うんです。 しろまる笹月主査 高木委員の、それは先ほど来のご提案でありますが。 しろまる吉村委員 高木先生の方法がいいと思うんですけれども、先ほど水野先生がおっしゃったように、例え ばエッグシェアリングのときにも、2回目、3回目をやる人がいない。エッグをあげた人は妊 娠できなくて、もらった人が妊娠するということが非常に多いわけですね。体外受精していて もなかなか妊娠できないから何回も体外受精をされている人でありますと、エッグをもらう人 は卵がないから妊娠できないわけでして、そうなると、さっきおっしゃったように、もう二度 と提供しないというようなことは出てくるんですね。 しろまる笹月主査 そういう人は、エッグは大丈夫なんだけれども、そのほかの理由で妊娠できない人だったと いうことでしょうね。 しろまる吉村委員 そうですね。 しろまる石原委員 先ほど鈴木委員がおっしゃられましたように、例えばクリニックなり病院なりで配るパンフ レットに卵子提供の可能性について少し触れるというようなことは、非常に効果があるんじゃ ないか、ポスターよりも効果があるんじゃないかというお話でございましたけれども、もしそ れでいくとしますと、やはり最初にその話を説明するのは、そこの受け持ちなり主治医になら ざるを得ないと思うんですね。そのパンフレットをお渡しして、その後に、読んできていただ いた上で、それに基づいて説明するので。そういう前提でいきますと、そういう一段階目の仕 組みを通った後で改めて、例えばより客観的な方がその意思を確認するという作業、先ほど、 高木委員、あるいは水野委員が少しおっしゃられましたが、そういう二段階的な考え方でいか ないとインフォームド・コンセントの確認というのはできないと思いますが、少なくとも第一 段階目においては、この仕組みでは主治医が一定の関与をせざるを得ないというような印象を 受けるんですけれども、いかがでしょうか。 しろまる笹月主査 いかがでしょうか。 もともとの予定の時間より30分短くしていただきましたけれども、その短くしたほうの時 間がまいりました。それから、前回、あるいは前々回お休みの委員もきょうの議論でキャッチ アップしていただいたと思いますので、ぜひお考えいただいて、これ以上続けてもきょうはこ のぐらいしか出てこないだろうと思いますので、ここで終わりにさせていただいて、次回は、 例えば水野先生、町野先生、位田先生なんかが欠席されない日をぜひ選んで、出席可能な日を 選んでいただいてやっていかないと、時々出てきてまた前に戻って議論をしていると大変です ので、なるべく全員参加ということを目標に事務局としても設定していただければというふう に思います。よろしくお願いいたします。 きょうはいろいろ貴重なご意見をいただいて、ありがたく思っております。ただ、ほんとう におっしゃるように工夫が大事だし、それから、水野委員がおっしゃった、最後に開き直った ときに、ほんとうに医者がそれで耐えられるのかと、どう守るのかと、そういう視点も新しい 視点でありまして、ぜひ十分にお考え頂きたい。 説明して患者さんが納得して出してくださるというのは、私はあり得ると思うんです。それ は、いろんな例を見てもびっくりするようなボランティア精神の方がおられますので、おられ ると思うんですが、ただ、そうじゃなくて、理解せずにサインして後でということもまたあり 得ると思いますので、十分知恵を出していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたし ます。 では、きょうはこれにて。どうもありがとうございました。 しろまる高橋室長補佐 すみません、次回の予定でございますけれども、次回は9月1日の16時からを予定してご ざいますので、どうぞよろしくお願いいたします。 本日は、どうもありがとうございました。 ―― 了 ―― 事務局:文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室 電話:03−6734−4113(直通) 厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課 電話:03−5253−1111(内線7938)

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