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宇宙開発利用部会(第88回) 議事録

1.日時

令和6年7月23日(火曜日) 15時00分〜17時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 宇宙基本計画(契約制度の見直し)への対応状況について
  2. H3ロケット3号機によるだいち4号の打上げ結果および運用状況について
  3. 宇宙輸送分野における取組(今後の基幹ロケット開発方策)について
  4. 「月面探査における当面の取組と進め方について」のとりまとめについて

4.出席者

委員

部会長 村山 裕三
部会長代理 田中 明子
臨時委員 秋山 文野
臨時委員 笠原 次郎
臨時委員 金井 宣茂
臨時委員 木村 真一
臨時委員 芝井 広
臨時委員 白井 恭一
臨時委員 松岡 彩子
臨時委員 山崎 直子
臨時委員 山室 真澄
臨時委員 米澤 千夏

文部科学省

大臣官房審議官(研究開発局担当) 橋爪 淳
研究開発局宇宙開発利用課 課長 嶋崎 政一
研究開発局宇宙開発利用課 企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課 課長補佐 上田 尚之
研究開発局宇宙開発利用課 課長補佐 木元 健一
研究開発局宇宙開発利用課 課長補佐 五十嵐 郁貴
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室 課長補佐 橋本 郁也

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
理事 岡田 匡史
理事 瀧口 太
理事 稲葉 典康
経営企画部長 三保 和之
チーフエンジニア室長 辻本 健士
調達部長 辻 宏司
宇宙輸送技術部門/第一宇宙技術部門 事業推進部長 森 有司
宇宙輸送技術部門H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 有田 誠
第一宇宙技術部門先進レーダ衛星プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 有川 善久
研究開発部門事業推進部長 二俣 亮介
研究開発部門第四研究ユニット長 南里 秀明

東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授/国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会主査 中須賀 真一

5.議事録

【村山部会長】 それでは、第88回宇宙開発利用部会を開催いたします。今回も前回同様オンラインでの開催となっております。委員の皆さまにはご多忙のところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。まず事務局に人事異動があったということですので、そのご紹介をお願いいたします。

【竹上企画官(事務局)】 事務局の竹上です。本日はよろしくお願いいたします。冒頭の機材トラブルで開始が大きく遅れてしまい申し訳ございません。本日の内容はリアルタイム公開できていないのですが、できるだけ早く、外部に動画で公開できるように、今後手続きを取らせていただきたいと考えております。7月11日付けで、研究開発局長として堀内が、また研究開発局担当の審議官として橋爪が着任しております。堀内局長は本日所用で出席できませんが、橋爪審議官から一言ご挨拶を申し上げます。

【橋爪審議官(事務局)】 担当審議官に着任いたしました橋爪でございます。どうぞよろしくお願いします。本日は冒頭に手間取りまして申し訳ございませんでした。今、この宇宙分野は非常に勢いのある分野だと感じております。課題も多々ございますけれども、先生方と共に前に少しでも進めていければと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。本日はお忙しいところありがとうございます。

【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは橋爪審議官、これからどうぞよろしくお願いいたします。それでは事務局より、本日の会議についての事務連絡をお願いいたします。

【竹上企画官(事務局)】 本日は、部会16名の委員のうち、12名にご出席いただいています。また、国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会の中須賀主査にも、ご出席いただいています。本日の資料は議事次第に記載のとおりです。オンラインが繋がらない等の問題がございましたら、メール・電話等で事務局へご連絡ください。以上でございます。

【村山部会長】 それでは、早速議題の方に移りたいと思います。本日は、冒頭3つの議題が報告案件です。最後の月面探査に関わる議題のみ審議案件となります。
まずは最初の議題ですけれども、宇宙基本計画(契約制度見直し)への対応状況についてです。本件につきましては、昨年12月の第80回の当部会で、実態調査等、それを踏まえた見直しの方向性について、中間報告としてご説明いただきました。本日は、その後の検討の進捗状況と、今後の具体的な取り組みの計画について、JAXAから改めて報告いただきます。
それでは、JAXA経営企画部の三保部長、資料の説明をお願いいたします。

【三保部長(JAXA)】 本日は、ご報告のお時間を頂戴いたしまして、どうもありがとうございます。JAXA経営企画部より本件につきまして、ご説明させていただきます。
資料の2ページ目でございますけれども、背景・経緯等について記載してございます。2023年6月に閣議決定されました、宇宙基本計画におきまして、JAXAの契約制度の見直しとして、フロントローディングの強化、官民開発リスク分担の見直し及び民間事業者の適正な利益確保等の施策の検討を進めるということが明記されてございます。これを踏まえまして、JAXAでは、2023年の7月より、組織横断的な体制で検討をして参りまして、検討結果の一部を取りまとめてございます。また、民間事業者の適正利益確保に向けましては、外部有識者委員会での検討を行っているところでございます。
次ページ以降で、検討結果及び対応状況をご報告させていただきます。資料の3ページでございます。宇宙基本計画の抜粋でございますけれども、JAXA等の独立行政法人を含む国等のプロジェクトの実施に際しては、民間事業者にとっての事業性・成長性を確保できるよう、契約制度の見直しを進めるとされてございます。JAXAにおいてということで、具体的にはということで、いくつかの論点が記載されてございます。
それらに対する具体的な打ち手を、このページの下半分に示しておりますけれども、1つ目のフロントローディングの強化に関しましては、プロジェクトとなっていく候補を支援する取り組みをしていくということ、そしてプロジェクトマネジメントに柔軟性を持たせようということ、ならびに適切な総開発費の設定に向けて努力しようということが書いてございます。
2つ目の官民のリスク分担の見直しにつきましては、開発フェーズ移行後の請負契約の適用の条件、そしてそのフェーズを見直して柔軟に運用していこうと考えてございます。また、低価格の応札に対しても対応していこうということも示してございます。
3つ目のプロジェクトの進捗に応じた支払いの仕組みの改善ということでございますが、開発の難易度や技術リスクの低減状況を踏まえた官民の役割分担を進めてまいりますと共に、民間側の状況にも踏まえました、適切な契約形態や条件、そして支払いなどの契約条件を検討して設定してまいりました。
4番目の著しい物価・為替変動への対応ということですが、こちらにつきましては、コスト変動調整率の導入ということも検討してまいりました。
5番目の民間事業者の適正利益の確保につきましては、有識者委員会を設置しまして議論を実施しているところでございます。
6番目ですが、民間とのコミュニケーションの充実ということで、新たな民間事業者も登場しておりますところ、JAXAの調達制度について企業が十分な理解と予見性を持って参画できるよう、コミュニケーションを充実化させて丁寧な説明を実施していこうと考えてございます。
それぞれにつきまして、内容を次ページからご説明させていただきます。まずは丸1フロントローディングの強化でございます。プロジェクトの候補(プリプロジェクト)を、この段階で優先度の高いものを識別して、伴走型の取り組みを通じて、しっかり支援していこうということを考えております。良い提案を引き出すためのコンサルティングや、人的・資金的なリソースを優先して投じるなどを考えてございます。四角の中が、特に重点的にと考えているところでございますが、コンポーネントレベルにとどまらないシステムレベルでの成立性をしっかり検討するということ。そして、机上検討だけでなく、試験用ハードウェアのモデルの試作や検証といったものを早めに実施する。あるいは、技術に対してTRLだけではない性能指標の識別や検証を推進していくといったことを考えているところでございます。これらに対しては、宇宙基本計画の別の項目でも掲げられておりますとおり、JAXA組織の拡充が必要な状況と考えておりまして、上記の取り組みに関しても、JAXAにおける人的リソースの強化を図ってまいる所存でございます。
次のページでございます。フロントローディング強化の内、柔軟なマネジメントへの転換といったものを示してございます。プロジェクトに移行する前の活動、つまり、プリプロジェクトの時点での活動ということでございますが、この時点でリスクを適切に低減するということを推進するために、JAXAにおける開発プロセス(プロジェクト段階に移行するタイミング)に一定の柔軟性を付与しようということを考えてございます。プロジェクトそれぞれの特性に応じた柔軟なマネジメントを可能にすることによって、フロントローディングの促進を図ってまいりたいと考えております。
次のページでございます。フロントローディングの強化のうち、適切な総開発費の設定についての説明しているページでございます。ミッションの難易度や複雑性が増す状況ではございますけれども、引き続き精度の高いコスト推算に努めていくと同時に、コスト推算に資するフロントローディング活動の実施も促進してまいります。具体的な内容は四角内に書かれておりますけれども、ミッション定義段階におけるフロントローディングの活動といったものは、技術的なリスクの低減はもちろんでございますけれども、コスト推算の裏付けとなる観点も考慮して、フロントローディングの実施内容を定めてまいりたいと考えてございます。なお、プロジェクトに移行した後におきましても、開発の難易度を踏まえて、総開発費を再精査していくといった活動は引き続き必要であるというふうに考えているところでございます。
次のページでございます。丸2官民のリスク分担の見直しについてです。これまでプロジェクトの実行段階に入る前までに技術リスクを十分に低減して、企業の責任で実施を請け負うことができるようにしようという前提の元で進めてまいりましたが、開発難易度やリスクが高くて、事前の技術的リスクの低減が十分ではなかった場合におきましては、企業が当初に予想しきれなかったようなリスクや追加費用が発生してしまうのではないかという懸念がございました。そして、請負契約の元では、企業側がこれを負担せざるを得ない状況になってしまうということから、この原則を見直す方針といたしました。
どのように見直すかといったものを、8ページ目に示してございます。請負契約を適用するためには、ここに示されますAとBが両方とも満たされるものにしようということを考えてございます。まず1つ目のAのところに書きましたけれども、技術リスクが十分に低減できており、JAXA側の仕様要求が確定し、契約相手方(企業側)が仕事の完成を約定することが現実的であって、仕事を完成させるためのプロセスは契約相手方に委ねられるという場合、かつ、JAXAの逐次判断や契約相手方への指示が不要であるという条件が整ったところで、請負契約という形態に移行するのが望ましいだろうということを考えてございます。
次の9ページでございます。このフェーズを見直した柔軟化といったものを、図に示しております。請負契約適用の条件は先ほどご説明しましたが、そういった前提条件を踏まえまして、どこから請負契約とするかというフェーズにつきましては、個々のシステム開発ごとの開発難易度や技術リスクの低減状況を踏まえるために、丸1〜丸6といった複数のパターンを想定いたしまして、その中から最も適切なものを選択できるようにしております。早い段階から移行するものもあれば、右に行くに従ってフェーズは進んでいくわけですが、請負契約に移行するタイミングが遅いものまで、それぞれの事情・状況に応じて判断していくといった見直しを掲げてございます。
続きまして10ページでございます。もう1つは低価格応札への対応でございます。これまでRFPの実施に際しては、企業側の戦略等々も含めて、低価格で応札されるといったことも、原理的には可能な状況でございましたけれども、そういったことが収益等々に影響している懸念も考えられます。四角の中で下線を引きましたけれども、総原価を下回る価格を提案した場合は不合格となるといったことを明記して、低価格応札を防止していこうといった取り組みを考えてございます。
続きまして11ページでございます。プロジェクトの進捗に応じた支払いの仕組みの改善、あるいは民間とのコミュニケーションの充実といったことでございます。四角の中の1つ目に記載しましたように、RFPでの競争を行う前の段階で企業と調達面の対話を行いまして、官民の役割分担や適切な契約形態、そしてその契約の性質にあった契約条件、支払い条件等を十分に検討して設定していこうと考えてございます。また、契約の性質上、必要性が認められれば、マイルストーン払いといったような、進捗に応じた支払い手法を柔軟に取り入れていこうと考えてございます。これら企業との調達面での対話は、競争の前の段階で技術面のフロントローディングと平行して行われるものであると考えておりますので、調達面のフロントローディングと呼ぶこととしまして、制度として確立いたします。これらによって、企業がより高い予見性を持ってJAXAの調達に参画することができるようになると考えております。
次に12ページでございます。著しい物価や為替変動への対応といったことでございます。こちらにつきましては、コスト変動調整率を導入するという方針といたしまして、24年度に新規で立ち上がる衛星プロジェクトに対して適用する方針としてまいりました。今後、適用範囲の拡大について、さらなる検討や企業対話を進めるとともに、必要となる予算要求を行うなどの検討を進めてまいる所存でございます。
次のページでございます。13ページになります。民間事業者の適正利益の確保についてですが、これらにつきましては、経費率改善に関する有識者委員会をJAXAの中に設置しておりまして、検討を実施しているところでございます。検討の内容が整いましたら、改めて報告することも含め、今後検討を進めてまいりたいと思っています。
最後の14ページでございます。今後の予定でございます。JAXAとしましては、宇宙基本計画が示しております契約制度の見直しに係る対応としまして、今回ご報告させていただいた各具体的な施策の実現のために制度や体制の整備を進めてまいります。それを通じまして、基本計画で求められている民間事業者にとっての事業性・成長性の確保に貢献してまいりたいと考えております。簡単ではございますが、ご報告とさせていただきます。ありがとうございました。

【村山部会長】 どうもありがとうございます。ただいまのご説明について、ご意見やご質問がございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。松岡委員、お願いいたします。

【松岡委員】 京都大学の松岡です。ご説明どうもありがとうございました。最初のほうに説明いただいた、フロントローディング強化についてご質問したいと思います。資料の4ページ目ですが、ここの四角に囲われた3つの項目は、全て大事なことと思います。3つ目の、キー技術に対するTRLに現れない性能指標の識別と検証の実施も大変大事なことではあると思いますが、実際にこれを実現するとなると、なかなか大変なこともあるのかと思いました。適切な検証を行うためには、このキー技術をよく理解している人材が必要ではないか、この検証を実現するための専門的な知識がないと、なかなか実現していかないのではないかと思いました。このようなことについての細かい検討は今後にあると思いますが、こういう方向で進めていくという例をご紹介いただければ、理解が深まると思います。よろしくお願いいたします。

【三保部長(JAXA)】 ご質問ありがとうございます。最初に、全体の体制については、経営企画部から説明させていただき、事例等につきましては、担当部署から併せて説明させていただきます。
先生がご指摘されますとおり、技術に通じたもの、専門性が理解されたものがハンドリングしていくというのは、非常に重要だと考えておりまして、JAXAでは、チーフエンジニア室というものが設けられております。そこには、各分野、JAXAの中での各活動に関して、非常に技術の専門性の高いものをチーフエンジニアとして抱えております。そういったメンバーが、プロジェクトの実施状況等をモニターしておりまして、適切な評価や助言を行うような体制を整えております。もちろん、体制が万全であるかといったものにつきましては、キリがないところではございますので、引き続き充実を図っていきたいというふうには思ってございます。
具体的な事例等につきましては、チーフエンジニア室長より少し補足させていただきます。

【辻本チーフエンジニア室長(JAXA)】 JAXAのチーフエンジニア室の室長を務めている辻本と申します。よろしくお願いいたします。
体制といたしましては、三保からご説明がありましたとおり、チーフエンジニア室、あるいは、これまでにプロジェクトマネージャ等を経験しましたメンバーからなるチーフエンジニア等がおりまして、そういったところで社内的には、評価・助言といったところを進めながら行っていきたいと思っております。
ただ、新規的な技術につきましては、JAXAでも取り扱ったことがないような事案もございます。具体的な事例というのは、これから具体化していきますので、本日お示しすることはできないのですが、そういったものにつきましては、国内の外部有識者の先生、あるいは必要に応じて海外の専門の研究者の方にお知恵をいただきながら、プロジェクトの立案といったところに反映していきたいというふうに考えております。

【松岡委員】 どうもありがとうございます。私の質問では事例と申し上げてしまいましたが、具体的にどのような部署が担当するかというご質問した。チーフエンジニア室、あるいは関連する方々で見ていただくということが、大変よくわかりました。どうもありがとうございます。

【村山部会長】 どうもありがとうございます。私からも1つ質問させていただきたいと思います。総原価を下回る価格での入札を禁止するというのがありました。これは、もちろん禁止しなければならないんですけれども、実際やるのは結構難しい問題が絡んでくると思います。どこで総原価の計算をするのでしょうか。

【三保部長(JAXA)】 全体の概要を私からお話しまして、調達部から補足をしていただきます。RFPの際に、技術編と価格編といった内容がございます。その価格編の中で価格の積算及びその根拠について、企業から提示をいただくことになり、その内容が適切であるかどうかといったものを、JAXA内の十分な経験を持つ複数のメンバーで評価をするといったことが、これまでなされてきております。その中で、この総原価についても確認をするということを運用として考えております。実際の細かい運用に関しまして、調達部より補足させていただきます。

【辻部長(JAXA)】 調達部長の辻と申します。よろしくお願いいたします。総原価のほうでございますが、入札を始める前に、関係するメーカー等々から参考見積もりを徴取しまして、それによって設定するものですので、ある意味、メーカー自身が「この価格で」と言っている価格がベースになります。それを下回ってきているという提案というのは、適正ではないという判断になる、そういうような関係になっております。以上です。

【村山部会長】 実際は企業によって原価が違うと思うので、非常に難しい問題が絡んでいると思いますが、そのあたりの精査をよろしくお願いいたします。他にいかがでしょうか?
この契約問題は地味ですが、非常に重要な問題でして、JAXAのニーズと企業の技術力を結びつける鍵となるのが、この契約制度です。だから、本当にしっかりとしたものを作らなければいけない中で、以前、防衛分野の契約制度を宇宙に持ってくるという話がありました。防衛分野と宇宙分野は、かなり違うところがありまして、特に宇宙分野は、これからどんどん民間からも入ってくるので、その契約制度が民間と違うことによって参入をためらうようなことがあると非常に困りますので、宇宙分野に即した契約制度を作っていただくように努力していただきたいというのが1つ。
契約制度に100%の正解はないと思います。いずれにせよ、何か問題が出てくると思います。これは海外でも同じでして、いろいろな試みをされていると思いますので、そのあたりの事例も調べられて、成功例・失敗例を踏まえて、日本独自の宇宙に関する契約制度を作っていただければというふうに思います。よろしくお願いいたします。

【三保部長(JAXA)】 ご指導ありがとうございます。その方向で、できるだけ良いものを続けていきたいと思いますし、改善の努力も怠らずに進めていきたいと思います。どうもありがとうございます。

【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは、次の議題に移らせていただきます。次の議題は、H3ロケット3号機によるだいち4号の打ち上げ結果及び運用状況についてです。ご案内のとおり、H3ロケット3号機は7月1日に打ち上げられ、搭載された先進レーダー衛星「だいち4号」の軌道投入に成功しました。試験機2号機に続く打ち上げ成功で、H3ロケットは本格運用の段階に入りました。また「だいち4号」も定常運用に向けて、搭載機器の確認作業を順調に続けています。本日は、H3ロケット3号機の打ち上げ結果と、「だいち4号」の現在の運用状況について、JAXAからご説明をいただきます。
それでは、JAXA岡田理事、H3ロケットプロジェクトの有田プロジェクトマネージャ、先進レーダー衛星プロジェクトの有川プロジェクトマネージャ、説明をよろしくお願いいたします。

【岡田理事(JAXA)】 JAXAの岡田でございます。ただいま部会長にご紹介いただきましたとおり、H3ロケット3号機によって、大切な「だいち4号」を宇宙に届けることができました。ロケットの飛行結果は大変良好でして、この結果を持って、H3ロケットは本格運用の段階に入ったと言えると思います。これまで委員の皆さまにご指導いただきましたこと、そして多くの皆さまに見守っていただきましたことを感謝しております。
また「だいち4号」につきましては、クリティカルフェーズを順調に乗り越えまして、計画どおり、初期運用の段階を迎えております。本日は、これらの状況について、両プロジェクトマネージャよりご説明させていただきます。

【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 それでは、資料88-2に基づきまして、ご説明をさせていただきたいと思います。次のページをお願いします。本日の目次でございますけれども、3号機の打ち上げ結果概要、フライト結果、打ち上げ結果、まとめまで、有田のほうからご説明いたします。そして「だいち4号」の運用状況、広報活動につきましては、有川のほうからご説明を差し上げたいと思います。
次をお願いします。まずは、3号機の打ち上げ結果の概要でございます。H3ロケット3号機につきましては、2024年7月1日12時6分42秒に、種子島宇宙センターから打ち上げを行いました。3号機は、計画どおり飛行いたしまして、搭載しました先進レーダー衛星「だいち4号」を、所定の軌道に投入いたしました。
また、本打ち上げにおきまして、打ち上げ計画書等に基づきまして、安全確保、関係機関への通報等を計画どおり実施いたしております。
次をお願いします。3ページ目ですが、フライトごとのイベント、それからそのフライト結果、事前の予測値との差を示しております。先ほど申し上げた時刻に、オンタイムでリフトオフをいたしまして、その後SRB-3の分離、衛星フェアリングの分離、第1段エンジンの燃焼停止、1/2段分離。ここまで、およそ3秒早い形で進みました。おそらく、1段のエンジンの性能がやや良かったことに起因していると考えております。そして、第2段エンジンの推力の立ち上がりを迎えまして、約11分燃焼した後に1回目の燃焼停止、そして「だいち4号」を分離するというところまで行いました。ここまで11秒早いということで、これは第2段エンジンの性能が高かったことに起因していると考えております。そして、地球を1周回した後、第2段のエンジンのほうを前方に向けて逆噴射する形でエンジンを15秒間ほど燃焼させまして、軌道離脱燃焼を完了して、ミッションを完了いたしております。
続きまして、4ページ目でございます。こちらのほうに、機体に搭載しましたカメラからの画像を示しております。上段がイベントの前で下段がイベント後の状況でございます。左から、SRB-3の分離、1/2段の分離、フェアリングの分離、最後に「だいち4号」の分離というふうに来ておりますけれども、「だいち4号」の姿が太陽によるハレーションで少し見えづらくなっておりますけれども、いずれのイベントにおきましても、良好に分離が機能したということを確認しております。
続きまして、5ページ目でございます。機体各部の挙動の評価でございますけれども、まずシステムにつきましては、全般良好でございました。電気系につきましては、全般良好でございまして、2号機の周回中に発生した慣性計測装置(IMU)の精度低下につきましては、3号機に向けて、スクリーニングという対策を施しましたけれども、これが良好に機能いたしまして、今回は問題なく機能しております。推進系につきましても、全般良好でございます。1段エンジンにつきましては、今回、初めてLE-9エンジンを66%の推力に絞るというスロットリング機能を初適用いたしましたが、こちらについても良好に機能いたしました。また、試験機1号機の不具合の原因になりました2段エンジンにつきましては、所定のシーケンスに従って着火いたしまして、異常な兆候はございませんでした。次に構造系ですが、こちらも全般良好でございまして、2号機で発生しました、SRB-3の構造の一部の温度上昇についても、サーマルカーテンへの対策が功を奏したということで、温度上昇が見られずに良好な結果を得ております。
続きまして、6ページ目でございますけれども、飛行経路の評価でございます。両方とも黒の破線で計画を示しておりまして、赤の実線が飛行結果でございます。いずれも、ほぼ線が重なっている状況にございまして、右の図に示しましたとおり、ニューギニア島の北の海上で「だいち4号」を予定どおり分離しております。
7ページにまいりまして、軌道投入精度の結果でございます。こちらも軌道長半径、離心率、軌道傾斜角等の軌道要素につきまして、許容値3σに対しまして、その1/10以下の0.2σという非常に良い結果が得られておりまして、右の図に示しますように、試験機2号機と同様に非常に良い結果を得ることができました。
続きまして8ページ目です。ここまでのロケット側の打ち上げ結果のまとめを示しております。H3の3号機は「だいち4号」を所定の軌道に投入しまして、制御再突入も良好に行われました。この結果、ロケットや地上設備が正常に機能したということを確認いたしました。H3ロケットは、この試験機2号機に続く、今回の3号機の打ち上げ成功により、本格的な運用段階という新しいステージに移行することができました。
今後、固体ロケットブースタなしの30形態やLE-9の恒久仕様の開発、それからコストダウンや作業スケジュールの短縮等の努力を継続いたしまして、H3ロケットにさらに磨きをかけ、打ち上げの成功を積み重ねてカスタマーの信頼を得られるロケットに育ててまいりたいと考えております。
この先は有川プロマネにバトンタッチいたします。

【有川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ここからは「だいち4号」プロジェクトマネージャ有川より、ご説明させていただきます。
4月の利用部会のおさらいになりますけれども、「だいち4号」は、災害監視や情報把握など、「だいち2号」のLバンドSAR(合成開口レーダ)のミッションを引き継ぐ衛星です。「だいち2号」より、高分解能の3mを維持しつつ、観測幅を4倍の200kmへと大きく向上させたものでございます。左下側の絵が、軌道上にある「だいち4号」の絵になっております。
次のスライドをお願いします。H3ロケット3号機によって、7月1日の12時6分に打ち上げていただきました。その後「だいち4号」は、衛星分離、太陽電池パドル展開、その後PALSAR-3というSARの大型アンテナを3段階に分けて展開いたしました。右上にありますAIS(船舶自動識別信号装置を受信するアンテナ)を展開し、3日間のクリティカル運用を終了したというものでございます。
次のスライドをお願いします。ただいま申し上げましたとおり、打ち上げ後に予定されていた、一連の運用を無事に完了いたしました。これをもちまして、7月3日に、クリティカル運用期間を予定とおり終了したということの、プレスリリースを発出しております。下の絵に示しておりますのは、この期間に衛星搭載のモニターカメラで搭載した、各展開後の画像になります。上から2ポツ目になりますが、現在は、衛星の各機器の機能・性能の健全性を確認しているところです。今後の運用状況・お知らせ等につきましては、右側のQRコードにございます、サテライトナビゲーターで随時発信をしていく予定としております。
次のスライドお願いいたします。「だいち4号」の技術達成目標といたしまして、丸1、丸2、丸3を掲げておりました。丸2に関しまして高速伝送の軌道上技術実証ということで、進捗がございましたので、ご報告いたします。表の下のポツでございます。Kaバンド26GHz帯の電波による、衛星から地上への直接伝送ということで、こちらにつきまして、3.6Gbpsでの高速通信に成功いたしました。この速度は、世界の地球観測衛星における、現段階における最高性能となります。こちらにつきまして、先ほど15時に、サテライトナビゲーターに記事を掲載したところでございます。今後1年間にわたりまして、地上の気象などの状況において性能を評価してまいります。また、今後、光衛星間通信の実証も予定しておりますので、これらと合わせ、今後の地球観測衛星の試金石になるのではないかと考えております。
次のスライドをお願いします。こちらにありますとおり、クリティカル運用は無事に終了いたしました。
現在は、左から2番目の初期機能の確認運用ということで実施しております。この中のマイルストーンといたしまして、初観測画像のプレスリリースを7月末に予定しております。また、この後、災害時の緊急観測につきましては、基本的には初期機能確認運用が終了したあと、つまり、10月以降に正式な運用を開始する予定としておりますが、それまでの期間においても、国内の大規模災害が発生した際には、可能な範囲で対応を実施してまいりたいと考えております。
最後の14ページにまいります。「だいち4号」とH3ロケット3号機の一体となった広報活動を行ってきたご紹介でございます。打ち上げライブ中継におきましては、JAXAの関係者のみならず、ユーザーである国土地理院と茨城県庁にもご出演いただきました。また、応援アンバサダーになっていただいている三浦大知さんにもご出演いただき、瞬間で7万5,000を超える視聴数をいただきました。
左下の打ち上げや衛星状況に関わる、積極的な情報発信ということで、YouTubeライブなどのライブ配信による、透明性のある情報発信を行ってまいりました。右下に書いてありますのは、今回特筆すべき事項でございますが、7月13日に、TBS音楽特番「音楽の日2024」におきまして、三浦大知さんが、打ち上がるH3ロケットを背景に、イメージソングであります「ALOS」を歌唱する姿がゴールデンタイムにオンエアされまして、大変大きな反響を得たところでございます。今後も「だいち4号」の継続的な情報発信、また利用拡大に取り組んでまいりたいと思います。ご報告は以上です。

【村山部会長】 どうもありがとうございます。ただいまの説明について、ご意見やご質問がございましたらお願いいたします。いかがでしょうか。米澤委員、お願いいたします。

【米澤委員】 どうもありがとうございます。大変嬉しく思っております。AISのほうは既に運用されているのでしょうか。状況を教えていただければ嬉しいです。よろしくお願いいたします。

【有川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ご質問ありがとうございます。AISにつきましても、順次、機能の確認を進めているところです。アンテナは先ほど申し上げたとおり展開済みで、受信機のオンにも成功しております。今後、軌道上におけるAISの信号受信といった機能の確認や所望の性能が達成できているかというものを、順次確認していく予定としております。

【米澤委員】 実際の運用はいつぐらいからになりそうでしょうか?

【有川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。9月末までは初期機能の確認を予定しておりますが、それ以降は順次、AISの情報につきましても公表できるように準備を進めてまいりたいと思います。

【米澤委員】 どうもありがとうございます。よくわかりました。

【村山部会長】 続きまして笠原委員、お願いいたします。

【笠原委員】 ありがとうございます。H3の3号機と「だいち4号」の打ち上げ成功について、本当におめでとうございます。また、お疲れさまでした。
一点質問ですが、H3は順調に軌道投入をした後に、第2段機体軌道離脱燃焼というのを実施されて、衛星の軌道とは、また別の軌道に入られ、軌道離脱したというふうに認識していますが、これは恐らく、デブリ化を避けるような目的なのではないかと理解をしたのですが、今後のH3についても、非常に多数打ち上げられると思うのですが、この第2段は最終的にリエントリーするような形なのか、あるいは、もっと安全な軌道に飛行されているのか、そのあたりのことをお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?

【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 笠原先生、ご質問ありがとうございます。お答えいたします。
2ページ目に書いてございますけれども、第2段機体の制御再突入を良好に実施したというふうに書いてございまして、今回のミッションにつきましては、第2段の制御再突入を行いまして、オーストラリアの西の海上に廃棄することができております。こういった比較的低い高度の軌道を、例えば、今回の「だいち4号」のような、太陽同期軌道、あるいはHTV-Xを打ち上げる低軌道のような、比較的低い軌道からは、制御再突入を行って、海上に廃棄することは十分に可能だというふうに考えております。
また、静止トランスファー軌道のほうに打ち上げたものにつきましては、非常にエネルギーが大きい軌道になりますので、そこから制御再突入を行うことは、非常に大きな打ち上げ能力のロスになるというところもあります。そこにつきましては、まだ世界各国とも定常的にやっているものではないというところがございます。ただ、デブリ防止というのは、大事なところでございますので、国際ルールでは、25年以内に地球に落下してくるようにという、デブリとしての宇宙空間にとどまる期間を可能な限り短くするということで、近地点をできるだけ下げるような、軌道上のマニューバをやるということを考えているという状況でございます。

【笠原委員】 有田プロジェクトマネージャ、本当にどうもありがとうございました。よく理解できました。

【村山部会長】 他の方はいかがでしょうか?追加の質問もないようですので、次の議題に移らせていただきます。ご説明どうもありがとうございました。
次の議題は、宇宙輸送分野における取り組み、今後の基幹ロケット開発方策についてです。先ほどの報告でもあったように、H3ロケットもようやく本格運用をスタートさせたところですが、政府における宇宙輸送の取り組みとして、基幹ロケットの高度化や、2030年代における次期基幹ロケットの運用開始を目指すといった内容が既に示されているところです。本日は、こうした宇宙輸送分野、特に基幹ロケットに関する今後の具体的な取り組みについて、現在のJAXAの検討状況をご説明いただき、委員の皆さまから忌憚のないご意見をいただければと思います。なお、JAXAの説明に先立ち、まずは事務局から宇宙輸送政策の現状や本日の議論の位置づけを説明していただいた後、JAXAから説明を受けたいと思います。
それでは、文部科学省の竹上企画官、JAXA岡田理事より、資料の説明をお願いいたします。

【竹上企画官(事務局)】 ありがとうございます。事務局の竹上です。部会長からご案内のあったとおり、宇宙輸送政策を巡る政府内の議論の状況、特に、既に政策の方向性が示されている内容もありますので、私から、資料88‐3‐1を用いて、まずはそうした状況と、本日の議論の位置づけを簡単に説明し、その後続けて、JAXA岡田理事から、資料88-3-2についてご説明いただく予定としております。
まず、1ページ目でございます。こちらは前回の部会でもご紹介させていただきましたが、年末に予定されている基本計画工程表の改定に向けた重点事項、要は、今後何に力を入れていくかということですが、ここでは、H3ロケットの高度化、打上げの高頻度化や、次期基幹ロケットを始めとする次世代の宇宙輸送技術の研究開発を推進していくといったようなこと、また、民間事業者によるロケット開発等の研究開発を推進するという事項が、既に掲げられております。それを実行するために、例えば宇宙技術戦略のローリングを行うことや、宇宙戦略基金による支援の強化・加速、あるいはJAXAの体制強化や既存事業の再編・強化、人的資源の拡充・強化といったことに取り組む方向性についても、既に出されているところでございます。
2ページ目をご覧ください。改めて、宇宙輸送分野における近年の主な政策の変遷を振り返りたいと思います。H3の後の次の輸送システムをどうするかといった議論については、政府内では、令和元年9月に、この部会の下に小委員会を設置いただきました。その後、文科省のロードマップ検討会に議論を引き継いでいただいて、令和3年6月に、そのロードマップ検討会の中間取りまとめが出され、そこで当時、官ミッションに対応する基幹ロケット発展型(次期基幹ロケット)と民間主導による高頻度往還飛行型の2本立ての宇宙輸送システム開発を進めるという方向性が出されました。この部会でも報告させていただきまして、その中で、共通的な技術開発からやっていくという方針を立て、令和4年度から、JAXAでそうした技術開発を支援する将来宇宙輸送プログラムというものが、施策として始まりました。
次の囲みで、令和5年6月に宇宙基本計画が3年ぶりの改定をされて、ここでは、基幹ロケットの取組、あるいは民間ロケット、次期基幹ロケットを含めた新たな宇宙輸送システムの構築、制度環境という4本柱が示されました。民間ロケットの支援の具体的な取組については、これまで文科省としてはあまりやってこなかったのですが、令和5年度から、SBIRフェーズ3基金という事業を開始しました。さらに、令和5年5月の段階で、内閣府の宇宙政策委員会のほうで、技術戦略を作るための小委員会が設置されまして、令和6年3月に、輸送小委員会での議論を踏まえて、この4本柱の技術開発を具体的にどうやって進めていくかという技術戦略とロードマップが宇宙政策委員会で策定されました。その技術戦略を受けて、令和6年4月に、宇宙戦略基金の基本方針及び実施方針が決定され、輸送関係のテーマなどの公募も始まっているところです。政府側で政策を作り、その都度連動して、具体的な施策が始まっている状況にございます。
簡単に補足資料もご説明できればと思います。例えば、6ページは革新的将来宇宙輸送システムのロードマップです。当時、文科省の検討会で描いたロードマップですけれども、その時に、基幹ロケット発展型、次期基幹ロケットについては、2030年代に初号機を打ち上げていくということ、あるいは、高頻度往還飛行型宇宙輸送システムについても目標を掲げて、まずは一番下にある共通的な要素技術開発をやっていくという方向性を打ち出しました。
7ページ目は宇宙基本計画ですけれども、ここにはっきりと方向性が示されています。2つ目の段落ですけれども、基幹ロケットであるH3ロケット及びイプシロンSロケットは打上げ成功の実績を積み重ねた上で、20年代後半には、高頻度な打上げと、より大きな輸送能力、より安価な打上げ価格を実現する宇宙輸送システムを、我が国全体で構築するといったことや、2030年代には、H3ロケットに続く次期基幹ロケットを運用し、新たな宇宙輸送を行うことで、我が国の宇宙開発利用の将来像を実現していくということ。さらに次期基幹ロケットについては、機体の一部を再使用化した上で、打上げ頻度や輸送能力を向上させるとともに、打上げ価格を低減する。将来的には、産学官が連携する中で、完全再使用化や有人輸送にも対応できる拡張性を持つことが期待されるといった政策の方向性が既に記載されているところでございます。
さらに、13ページに、その後に具体化した技術戦略の記述がございます。ここに、具体的な技術として何を進めていくかということで、6種類の技術が特定されていますが、今後の次期基幹ロケットの目標についても、先ほどご説明した将来輸送ロードマップから、目標の時期や単位質量あたりの打上げコストといった目標がそのまま引用されています。14ページにあるように、技術ロードマップとして、政府全体の見解として、こうした線が引かれているところでございます。
今、我が国の宇宙輸送政策について、ここまで政府として決定している状況という中で、3ページ目に戻っていただきまして、主な論点ということで、既に一定の方向性は出ておりますけれども、文科省及びJAXAにおいては、今後の工程表や技術戦略の改定、あるいは予算要求を毎年やっていく必要があり、そうした中で、
丸1基幹ロケットの高度化、打上げ高頻度化に向けた具体的な取組
丸2次期基幹ロケットに向けた具体的な取組
丸3次期基幹ロケット以外の、次世代の宇宙輸送システムに向けた具体的な取組
について、これは支援策も含めてですが、これらをしっかりと議論していく必要があると考えております。こうした内容は、本部会でも定期的に報告を行いたいと考えております。
まずは本日、丸1、丸2を中心に、JAXAにおける最新の検討状況を報告し、意見交換をいただくということ、また、本日いただいたご意見等も踏まえた上で、年末の工程表の改定や技術戦略の次の改定を見据えた意見交換を、また改めて本年中のどこかでやっていただくようなことも考えております。以上が、本日の議論の位置づけと背景情報です。続きましてJAXAのほうからよろしくお願いいたします。

【岡田理事(JAXA)】 JAXA岡田より、お手元の資料88-3-2に基づきまして、ご説明させていただきます。先ほど論点整理をいただきまして、ありがとうございます。丸1と丸2を中心にご説明していきたいと思います。
2ページを開いていただきたいと思います。このページには、今回の資料の筋書きを載せてございますけれども、最初のポツは、先ほどH3ロケットについてご説明したとおり、3号機の打ち上げにより、本格的な運用段階に入ったと考えています。これまでの開発で培ってきた技術・人材・産業の基盤を大事にしながら、またH3ロケットにさらなる磨きをかけていく必要がございます。具体的には、固体ブースタなしの30形態の打ち上げ、LE-9の恒久対策型もまだ開発途上でございますので、これらを完成しつつ、基盤をより強固にしていくことが大事なことだと考えております。
さらに、その技術戦略の基本的な考え方に照らしますと、宇宙活動の重要基盤であります輸送ということに関しましては、能力を強化し、安価かつ高頻度の打ち上げを実現していくというのは基本中の基本であるというふうに考えております。本日は、これらの背景を踏まえましてご説明したいのは、基幹ロケットの基盤を維持向上しながら、環境の変化や社会的な要請に答えて、柔軟に性能強化していくということを目指した姿というのは、どういうものかということでございます。
3ページを開いていただきますと、宇宙技術戦略のあらましを載せてございます。これは既に皆さまもご承知の話ですが、この宇宙輸送システムの多様なバリエーションとして、下の図にあるような宇宙輸送のニーズに確実に対応していくということが非常に重要だと考えております。それにはイノベーションを積極的に創出することも重要であるということを述べております。こういったことに答えるためには、高頻度で柔軟性の高い宇宙輸送サービスとして進化させなければならないと考えております。その具体の内容を4ページ以降でご説明していきます。
4ページにまいります。このページでは基幹ロケットの役割とそのあり方について、述べてございます。基本的な整理も含めておりますけれども、まずは輸送の意義と基幹ロケットの役割です。何と言っても、自立的な宇宙活動の実現のために、他国に依存しない宇宙輸送システムは政策の基本でございます。かつ、基幹ロケットというのは、必要な技術・人材・産業の基盤を継続的に維持するという役割が非常に重要だというふうに考えております。
2つ目にまいりまして、自立性確保及び国際競争力強化のための要件でございますけれども、今述べましたとおり、自立性確保のためには、安定した開発・運用事業の機会を持つことが重要であります。H-IIAロケットのように、50機安定的に運用するというだけではなく、開発という機会も、非常に重要だということをここに加えております。特に、継続的なロケット開発の確保という意味で申し上げますと、これまで我が国の大型ロケット開発は、我々時々“式年遷宮”と呼んでおりましたけれども、20年程度の間隔で立ち上げておりました。20年というと、技術や人材の基盤の途絶のリスク、ギリギリのところで、なんとか繋いでいただいたという思いでありまして、まさにH3開発でも、その技術・人材基盤が未来に繋がったと考えております。非常にありがたかったです。そういったことを、非常に重視しておりまして、そういった基盤を土台として、また民間ロケットとの競争などにより、我が国全体の共通基盤として活用していくことが必要と考えております。また、産業基盤の維持という観点で言いますと、何と言っても、打ち上げ機会の確保、あるいは打ち上げや試験設備などのインフラの更新・充実が不可欠です。特に、我が国の打ち上げ試験設備の多くは、既に整備後50年近く経っているものもございまして、老朽化との戦いです。これには新しい概念として、リスクマネジメント保全などを加えまして、老朽化と戦いながら、打ち上げを安定的に行う策を講じておりますけれども、総合システムという観点での対応が、抜本的に必要ではないかというふうに考えております。こういった基盤的な課題に対処しながら、打ち上げ需要に適切に答え、カスタマーの皆さまの信頼を保ち続けることが、非常に重要と考えております。
以上を踏まえた基幹ロケットのあり方といたしましては、技術・人材・産業基盤の維持向上のために、総合システムとしてのロケット技術開発を、後世に確実に継承するということ。そして、新たな技術革新を可能とする裾野の拡大を行うことで、次世代の人材の確保・育成を進めていかなければならないと考えております。また、官需衛星を着実に打ち上げながら同時に商業ミッションである民需を獲得していくために、この基幹ロケットの強化によって社会的な要請に応えながら、将来に渡り国際競争力を保持しなければならないと考えております。
これらをもとに 5ページに参りまして、今後の開発方策における基本的な考え方を述べさせていただきます。3つの柱です。1つ目は、技術・人材・産業基盤維持向上です。これはH3やイプシロンSロケットの基盤を成熟させながら、段階的に強化するということ。そして新たな技術革新にも気を逃さずに挑戦することで、持続的かつ安定した基盤を構築するということです。また、構築した土台として、民間ロケット事業との競争に貢献したいというふうに考えております。
2つ目の柱は、官需衛星の着実な打ち上げでございます。工程表で示される衛星の打ち上げ、ならびに、宇宙技術戦略で示される将来構想の実現に必要な打ち上げ能力と高い信頼性を持ったロケットシステムを獲得し、これを維持するということです。
加えまして、3つ目の柱として、国際競争力の強化です。マーケットが、かなり変化しております。常に変化する需要動向を、競合分析を踏まえまして、海外競合ロケットと比肩し得る能力を持ち、頻度高く、ならびに多様化・大型化する衛星動向への対応を、柔軟性とスピード感を持って進めることが重要だと考えております。
6ページには、さらに具体的に、基幹ロケットの開発方策の検討した結果を載せてございます。先ほども申し上げましたが、非常に変化が激しい状況の中で、ロケットの性能目標というのは、柔軟に見直しながら、最新化することが重要であります。20年に1回刷新するだけでは済まなくなってきているということで、これらに対応するために、持続的かつ段階的な開発プロセス(ブロックアップグレード方式)という非常に大きな概念を構築し、基盤の維持・向上を図っていきたいというふうに考えております。
下のほうに、図でお示ししておりますけれども、さらに2030年代には、再使用化を軸とした抜本的なコストダウンと打ち上げ頻度を持ち合わせた次期基幹ロケットを実現するという目標をゴールにし、基幹ロケットを総合システムとして、ここに向けてアップグレードしていくことが重要であると考えております。この次期基幹ロケットにつきましては、本日メインではご紹介いたしませんが、18ページに以降に内容をご紹介しておりますので、ご確認いただきたいと思います。
また、並行して、老朽化したインフラの刷新・拡充、あるいは、現在実施中の基幹ロケットの打ち上げの高頻度化に向けた取り組みを確実に行い、将来にわたって高頻度に打ち上げるための土壌を整えていきたいと思います。あるいは、新たな機能を実現するための飛行実験場の検討なども、重要な検討事項というふうに考えております。
7ページには、さらにブロックアップグレードの全体構想を具体的に述べさせていただいております。このアップグレードの仕様、あるいは開発項目というのは、非常に激動する打ち上げ需要動向や研究開発の成熟度、あるいは課題対応の喫緊度を考慮し、柔軟に設定することが重要です。ですので、最初に全てを設定すると言うよりは、段階的に詳細化していく、あるいは段階的に見直していくということが重要と考えておりまして、2025年度からアップグレードを立ち上げて、並行して、さらにその先のアップグレードの設定をしながら流れを試行していくということを考えております。このアップグレードのプロセス全体を、基幹ロケット高度化と我々は呼んでおります。大きな考え方として、下半分に載せておりますが、このアップグレードの区切り、そのものも重要な検討要素ですが、ここには、今我々が考えている3段階をお示ししております。
アップグレード1としまして、戦略基金の創設などによって、かなり増加すると予想されているミッションに柔軟に対応していくということで、複数衛星の搭載、あるいはコンステレーションへの対応を中心に考えていきます。併せて、システムをアップグレードするための基本である、信頼性の構築・検証、あるいはスキームそのもの、特にアビオニクスシステム、それに該当しますけれども、そういったスキームを確立して、システムの脆弱性の評価、あるいはロバスト性向上の対応に資するものを設けていきたいというふうに考えております。
アップグレード2では、再使用化/使い切りを問わず、低コストの製造技術、あるいは、それを支える部品・コンポーネントの簡素化・量産化、あるいは、高頻度化技術によって、国際競争力の確保、打ち上げ事業基盤の安定化に資するものを得ていきたいと思います。
アップグレード3では、大型輸送などに対応するための打ち上げ能力向上です。これは再使用技術の飛行実証をあらかじめ行うことで、次期基幹ロケットに繋げてまいりたいという考えでございます。
8ページには、アップグレード1の目的と方向性を補足として載せてございます。まずは衛星の需要にフィットさせて、複数衛星の打ち上げやコンステレーションの需要、あるいは相乗り需要などが見込まれる中で、目指す方向性としては、大きくは2つあります。イプシロン、あるいは民間小型ロケットの協業により、小型かつ単独、また少数で打ち上げられる衛星に対応していくということ。それから、H3では、多数機同時に搭載するようなものに対応していくというふうに、ユーザーに異なる多様な、かつ、喫緊のニーズに適切に答えられる輸送サービスの実現を目指すということで、赤枠で囲んでございますように、いろいろなインターフェースがロケットで異なるようですと、乗り換えも非常にしづらいので、規格の共通化をしていくという戦略的に意味があるのではないかというふうに考えております。
最後のページですけれども、ここは、実現方針と言うことで、具体的な取り組み方についてです。先ほど、3つの柱でご説明した内容にどのように取り組んでいくかをいうことを、赤枠で囲んでおります。
一つ目のご説明としてはブロックアップグレード、これは基幹ロケットをベースにしていくわけです。次期基幹ロケットを完成させるというのは少し先のターゲットとしてある。つまり、そのプロジェクトとそれから研究機能とを別々に走らせていくのでは最後に合流することもなかなか難しくなってきますので、ここはJAXAの中で一体化して研究開発体制を構築していく必要があるというふうに考えています。
また、二つ目の重要な話として、先にマネジメント開発検討委員会で報告させていただきましたように、現在の基幹ロケットを安定して高頻度に打ち上げていく実績を積み重ねながら、信頼性の確保と打ち上げ基盤の整備に努めたいと思っています。これは非常に重要な点だと考えています。
最後にJAXAと産業界の連携分担を適切に行いまして、一貫性を持った基盤的活動を行うということで、産業エコシステムの構築を継続して推進してまいりたいというふうに考えております。
10ページ以降は添付資料でございますので、本日は説明を割愛させていただきますけれども、これまでの我が国のロケットの開発状況あるいは各国のブロックアップグレードの状況を載せてございます。18ページ以降は、将来輸送システムのプログラムの取り組み状況を載せてございますのでご確認ください。以上です。

【村山部会長】 丁寧な説明を本当にありがとうございます。ただいまの説明についてご意見やご質問がありましたらお願いいたします。特に研究開発をブロックアップグレード方式に変えていくというのは非常に重要なポイントです。まずは山崎委員からお願いいたします。

【山崎委員】 ご説明ありがとうございます。おっしゃってくださったように、ブロックアップグレードは技術の伝承の面からも、またニーズに柔軟に対応していく面からも非常に大切な点だと思っております。説明の中でも低コスト製造技術ということもありましたけれども、ブロックアップグレードしやすい設計技術や製造技術も含めて意識しながら、より良いアップグレードしやすい体制に整えられていくことに期待したいと思います。
質問としましては、こうして培った技術を総合システムとしていくということですけれども、これからどんどん民間打ち上げ需要も増えていく中で、得られた技術を民間に移転されていくようなことも、ぜひ進めていただけたらとは思うのですけれども、技術の民間移転については、今どのように考えていらっしゃるでしょうか。

【岡田理事(JAXA)】 民間移管というのが、これまでの概念で、いわゆる民間移管だけに私は留まるとは思っておりません。H3ロケットで試行錯誤しながら進めてまいったように、民間に主体性を持たせたような、既に開発体制を組んでスタートするという進め方もあると思いますし、共創という取り組みもあると思います。その他にもまだ新しい取り組みの方法が多々あると思いますし、基金の動きもございますので、これらのバリエーションを適切に捉えて、それを実現していくことが重要だというふうに考えています。

【山崎委員】 ありがとうございます。

【岡田理事(JAXA)】 ありがとうございます。私もブロックアップグレードは非常に重要な点として考えていることで、モジュール設計というのはあると思いますので、そういったことも含めて、ブロックアップグレードしやすいような考え方というのは、これからも検討を続けたいと思います。

【村山部会長】 私もそこは極めて重要だと思いまして、やはり設計の段階からアップグレードしやすいようにやっておかないとできないわけですよね。かなり体系的な考え方がいると思うんですけれども、その辺りも含めてよろしくお願いいたします。

【岡田理事(JAXA)】 はい、第一段階の重要なポイントだと考えております。

【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして、木村委員お願いいたします。

【木村委員】 改めまして、成功おめでとうございます。安定的に定常運用の段階に入られるということで、非常に喜ばしいと思っていて、その中でこうした議論が次のステップに向けて出てきたのは非常に良いことじゃないかなというふうに思っています。期待を込めてなんですけれども、今後の計画においてブロックアップグレードという話もありましたが、能力の向上と多様性に対する適応、一方で信頼性の確保、さらには低コスト化ということが求められていて、これはいずれもベクトルが違う方向を向いていて、どう整合させるかというのは結構難しい問題だと思います。先ほどのモジュール化というのは非常に良いポイントだと思いますし、可能性は高いと思うのですけれど、具体的に信頼性を維持しつつ多様性に適応するというところのプランがありましたら、ぜひ教えていただけるとありがたいと思います。

【岡田理事(JAXA)】 木村先生、原因究明では大変お世話になりました。ありがとうございました。いろいろなアドバイスをいただきまして感謝しております。おっしゃられる点、二律背反のような状況というのは確かにございますし、また、これをどうやって運用をしながらアップグレードしていくかというのも非常に重要な要素です。おそらく先生のおっしゃられることも、その中に含まれてくると思っています。
正直申しまして、今は確たる答えがありません。概念としては持っていますし、問題意識としても、よく理解できる話ですが、これはブロックアップグレードの第一段階でしっかりと詰めていき、先生がおっしゃっていただいた「信頼性」というキーワードを、ブロックアップグレードの第一段階に込めておりますけれども、このブロックアップグレードの第一段階では多様なミッションに適応していくという、主にユーザーインターフェースの部分と並行して、以降で我々が取り組むべき考え方についてしっかりとまとめてまいりたいというふうに思っております。

【木村委員】 ありがとうございます。なかなか難しい問題だと思います。ただ、低コスト化と信頼性向上というのは背反に見えて、実は効率化という意味においては同一ベクトルを見ているんですよね。ですから、信頼性確保するためにコンサバに構えるのではなくて、そこを効率的に進めるというような方針で考えられるといいかなと思いました。ありがとうございます。

【岡田理事(JAXA)】 ありがとうございます。おっしゃるとおり、信頼性とコストは必ずしも相反していなくて、そこを解決するのは“知恵“だと私は思っております。H3でも試みたことではありますけれども、さらにそこを進めていきたいと思っております。

【木村委員】 頑張ってください。ありがとうございます。

【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして、秋山委員お願いいたします。

【秋山委員】 秋山です。打ち上げ能力の向上というご説明があった点について質問したいと思います。7ページに、アップグレード3の目標の中で、打ち上げ能力向上、それも深宇宙探査等の大型輸送需要に対応するという言葉をいただいておりますが、その中で、深宇宙探査というのを目標にするとしたら、アップグレード3で対応するならば、2020年代の後半には、そういった目標に向けた研究開発の活動が始まっているという理解ですけれども、そうすると、その目標として、3ページには月火星等の深宇宙という絵もありますけれども、実際に深宇宙を探査で目指すとして、ミッションによっては要求が異なると思います。例えば、火星でも、火星本体に着陸があるのか、もっと野心的に木星以遠を目指すのかといった要求によってロケットの性能も異なってくると思います。ミッションの側とのコミュニケーションや、どういったものを目指すのかという、大きな目標の立て方みたいなものは、現在どのようにされているのでしょうか。

【岡田理事(JAXA)】 ありがとうございます。まだミッションと具体的な話をしているわけではないと考えていますけれども、一つ我々がイメージとして持っているのは、能力向上するのに最も効果的かつ手っ取り早いのは、上段のアップグレードなんですね。H3ロケットの上段をアップグレードすることで能力を向上させることによって、システム設計的には能力がかなり上がる側にいきますので、現在のインフラの制約をどういうふうに考えて、上段をどういうふうなシステムにするかということを、先ほどおっしゃっていただいたようなミッションが具体になってくるところと擦り合わせながら進めていきたいというふうに考えております。また、それによって、単位出力あたりのコストも下がっていく側にいくと思いますので、それらをブロックアップグレード3の段階で考え始めるというよりは、既に考えながら3の段階を迎えたいというふうに考えています。

【秋山委員】 ありがとうございます。

【岡田理事(JAXA)】 一例ですが、今JAXAでは、それが最も効果的だと考えています。

【秋山委員】 もう一つ、推進剤についてはいかがでしょうか。一つ前の資料で見せていただいた中では、宇宙空間での輸送ネットワークやメタンのような言葉もありました。そういう方向性も入っているという理解でよろしいでしょうか。

【岡田理事(JAXA)】 バリエーションとしては取り得ると考えておりまして、将来宇宙輸送システムの研究の中で、さまざまな燃料の技術的知見を得たいというふうに考えておりますので、そういう研究段階を経て、最終的にどういうシステムにどういうものを適用していくかというところを、ある時期に選択するんだと考えています。やはり推進系プロペラントの選択は大きな判断ですので、しっかりと下地を整えた上でのことだというふうに考えています。

【秋山委員】 わかりました。ご説明どうもありがとうございました。

【村山部会長】 他の方はいかがでしょうか。このブロックアップグレードですけれども、実は最初に議論した契約方式とも絡んでおり、これをするためには契約方式も変えていかなければと思いますので、この辺は総合的にやっていただければと思います。どうもありがとうございました。

【岡田理事(JAXA)】 ありがとうございます。

【村山部会長】 JAXAにおかれましては、本日いただいたご意見などを踏まえて、さらなる取組の検討を進めていただければと思います。本部会においても、また改めて意見交換の場を設けたいと思います。それでは次の議題に行きたいと思います。
最後の議題は、月面探査における当面の取組と進め方についての取りまとめについてです。近年、米国指導のアルテミス計画をはじめ、中国やインドなど各国の月面探査活動が活発化しており、また日本でも、今年1月のSLIMによる月面へのピンポイント着陸成功や、4月に日米間で署名された与圧ローバによる月面探査の実施取組における日本人宇宙飛行士の2回の月面着陸機会の確保など、成果が出てきているところです。そうした状況を踏まえ、同部会に属する国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会(ISS小委員会)においては、本年3月より、当面の月面探査における取組とその進め方について、精力的な検討を実施いただき、先般、その内容が小委員会で取りまとめられました。本日はその内容について、ISS小委員会の中須賀主査よりご報告いただき、委員の皆さまのご審議を経て、本部会で決定できればと考えております。
中須賀主査より、お願いします。

【中須賀主査】 ただいま、部会長からご説明いただきましたが、今回、私は小委員会の主査になりまして、前藤崎先生から引き継いでやっております。今回、初登場になりますけれども、どうぞお見知りおきいただければと思います。よろしくお願いいたします。
今、部会長からもご説明いただきましたけれども、月面探査がどんどん本格化してきたというところで、この我々の小委員会も3月から6月にかけて、5回にわたって、月面探査の取組について、当面の取組と、それから進め方を議論いたしまして、報告書を取りまとめました。今回ご報告させていただきたいと思います。
まず1章です。国際宇宙探査の基本的な考え方ということで、これは、これまでの部会とか小委員会において取りまとめた報告に基づいて、基本的な考え方を記載しております。
2段落目でございますけれども、国際宇宙探査の意義が書いてあります。例えば、国際宇宙探査は新たなフロンティアを開拓、人類の活動領域の拡大を目指す活動である。得られる知見は人類の共有財産になるということ、それから有人での宇宙探査は、高度で複雑な探査活動を行えることに加え、人の宇宙への適応に関する知見も得られるということで、大きな意義を有しているということが書かれてあります。また、我が国が国際宇宙探査に積極的に参画することは、宇宙先進国としての役目であるということ、それから特に大事なのは、国際宇宙探査に関するルール形成に向けてイニシアティブを発揮するということが大事で、これが期待されているということを書いてあります。さらに、我が国が国際宇宙探査に参画することによって、科学技術、イノベーションの活性化、産業競争力の強化、人材育成、協力国との関係強化、国際プレゼンスの向上といった、我が国への裨益もあるというふうに考えています。
第3段落目は、国際宇宙探査を進めるにあたっては、国際協力のもとで進めるということの大事さ、それから宇宙科学探査と国際宇宙探査が日本の柱としてあるので、これをしっかり連携していくということが大事であるということ、それから月だけではなく火星につながるステップバイステップアプローチを基本とするということが重要であるということを書いてあります。また、優先度の高い技術、今後の波及効果が大きい基盤技術の獲得を進めるということ、民間企業、異分野の研究者の参画拡大が大事であるということも記載しております。
続いて各論に入っていきたいと思います。まずは現在の国際動向ということで、アルテミス計画は、2019年10月に参画を決定しています。この中の進捗としては、打ち上げロケット宇宙船の開発や月周回有人拠点・ゲートウェイの国際協力の枠組みが構築されているということが記載されています。それから他国では、中国が2030年までに有人での月面着陸を行う、それから35〜45年にかけて、月科学研究ステーション(ILRS)を建設する構想を発表しているということが記載されています。それから月面探査の将来像、月面経済圏、その発展の見通しについては、国内外で検討が進んでおります。アメリカではNASAがMoon to Mars Architecture、これは月面着陸から火星探査に向けた取り組みについて段階的に検討を進めているということです。日本でも内閣府の中では、2023年に月面活動に関するアーキテクチャについて、関係者による検討に着手しています。それから各国での月面の探査活動が活発化しているということについても記載しています。日本はご存知のとおり、1月のSlimのピンポイント着陸が良かったです。それからインドとの国際協力による月極域探査機(LUPEX)の開発が進んでいるという状況ですね。海外では中国やインドの無人探索機での月面着陸の状況。それから今年2月には、米国の民間企業が、初の月面着陸に成功しました。さらに6月には中国が、世界初となる月の裏側からのサンプルリターンの成功などを記載しているということで、各国も頑張っているというところで、日本も頑張らなきゃいけないということでございます。
アルテミス計画の中では、今年4月に、日本が有人与圧ローバを開発することを発表しました。それからNASAは曝露ローバの開発事業者選定を行って、月面の移動手段等の開発などの取組も積極的に進められているということが書かれてあります。
3章です。月面探査に関する当面の取組というところで、最初に全体で大事なところをまとめてあります。共通する方向性としては、各国の状況に鑑み、我が国として切迫感を持って、戦略的に月面探査を進める必要があるということが書かれています。2段落では、将来的な月面活動における国際規範、ルール形成、あるいは国際市場の獲得や国際協力プロジェクトの形成を視野に入れつつ取組を進めることが必要であるとしています。特に、この国際規範、ルール形成において、日本はこれまであまり得意でなかったのですが、先行して多くの活動を積み重ねた国が、実質的に大きな発言力を持つということが慣例でありますので、我が国の発言力の確保の観点からも、我が国の月面活動を産学官で活発に展開されることがとても大事であるということが書かれてあります。
続いて、それぞれ具体的な取組について、意義や現状、今後の進め方について説明しております。まず、水資源等の探査です。月は水が見つかったことで、一気に意義が高くなったということでございます。それが資源として活用できる可能性がある一方で、この水資源がどれぐらいあるのか、あるいはどういう形態であるのか、どこにたくさんあるのかということについて、あまり明確になっていないので、水の現地資源としての利用可能性を判断することが、今後重要な課題であるということで、各国ともそれを目指した着陸機器等の開発が進んでおります。我が国は、その流れでは水資源を探査するLUPEXという極域探査機をインドと国際協力ミッションとして進めているということです。さらに総務省は、テラヘルツセンサーという名前で、水資源のマッピングを行う月周回からの観測センサーの開発が進められているというふうになっております。
それから今後の進め方ということに関して、LUPEXは、他国に先駆けて水資源の利用可能性を明らかにするという観点から、2020年代中頃の打ち上げを目指して開発に取り組むことが重要であるということ。それから水資源の全体像に関しては、先ほどのいわゆるテラヘルツセンサーのような周回衛星によるマッピング、それから月面の掘削等による直接観測を組み合わせた効果的・効率的な水資源の調査のあり方を検討する。これは一省庁だけではできない場合には、複数省庁の連携が大事であるということでございます。
それから2番、月面における宇宙科学の推進というところで、この月面の観測に関しては、3つの大事な目標が提案されています。月面天文台、月サンプルの選別・採取・分析、月震計ネットワークという、この「月面3科学」を取り組むべき、当面の目標として具体化を進めていこうということで、宇宙科学コミュニティからの提案がございます。これらの取り組みによって、次の期限を含めた進化の過程等の学術的な知見に加えて、有人探査や将来の月面開発に資する月面の情報を得ることができるとしています。この「月面3科学」を今後どう進めるかということですけれども、この3つの活動を連携しつつ、さらに国際プロジェクトであるアルテミス計画とも相乗効果をもたらすようになるということをうまく工夫して具体化を進めるということが大事である。また、装置の開発とその月面実証、小規模観測、大規模観測へと段階的に進めていくということが現実的である。それから国際協力、国際調整による推進が不可欠であるということ。それから月面で使用する機器の共通課題、あるいは越夜の克服等に向けた技術開発も重要であるということが記載されています。さらに、学術的な価値だけではなくて国際協力・国際調整に向けた議論をリードしていく、あるいは標準化への貢献、デファクトスタンダードの獲得、日本の強みである技術について、他国よりも早く月面実証を行うことが必要であるというふうにしています。最後に月面3科学のタイムスケールとして、最初のステップとしての月面実証は、2020年代後半を目標に実現することが重要であるとしています。
続きまして、アルテミス計画の構成要素ということで、まずは有人与圧ローバです。これは最近ニュースにもなっておりますけれども、4月に署名した与圧ローバによる月面探査の実施取り決めにおいて、日本における有人与圧ローバの提供、それから米国による日本人宇宙飛行士の2回の月面着陸の提供等が規定されました。それから日米共同声明においては、日本人宇宙飛行士が米国人以外として初めて月面着陸するという共通の目標も発表されたということを記載しています。
この有人与圧ローバは、月面における長距離の移動機能と居住機能の両方を兼ね備えていると。有人の月面探査範囲を飛躍的に拡大するなど、唯一無二の重要な役割を果たすことが期待されています。それから有人与圧ローバの開発は、宇宙探査の発展に貢献するものであることも併せて記載しています。また、これのためには複数の新たな技術開発が必要となっています。例を挙げると、月面走行システム、高密度で蓄電するシステム、収納可能な太陽電池パネルなどの技術が必要になるということで、これらは、宇宙探査に応用可能なだけではなく、地上への波及効果も期待できる。それから、このような技術開発を通して、我が国の技術力や開発プロセスそのものの底上げにもつながることが期待できることを記載しています。さらに有人与圧ローバは、初めて我が国がシステム全体の設計を担う有人システムです。有人システムとしては、部分的にいろいろとやってきましたけれども、システム全体の設計を担うのは初めてなので、この開発を通じて将来の有人輸送機の開発にもつながる技術が得られると期待しております。有人与圧ローバの今後の進め方としては、フロントローディングの結果も踏まえつつ、2031年の打ち上げを目指して、本格的な開発に着手する必要があるとしています。
今度は月測位システムです。将来の宇宙探査において、地球上のGPSのようなものを月に作る測位インフラの構築に向けて、欧米の宇宙機関を中心に国際的な検討が進められており、日本は初期から参加しています。その中で月測位インフラの総合運用性を確保するための仕様やフォーマット、あるいは要求等の検討調整、具体的なシナリオ案の提案がなされているということが記載されています。この月測位システムは、やはり日本として非常に重要で、我が国がその一翼を担う可能性があるインフラの一つであるというところで、我が国の民間企業等が、月周回測位衛星の開発や運用サービスを受託するということが考えられるということ。そのためには、月測位システムに関する技術実証を欧米と同時期に実施して、国際的な議論で我が国の技術要求等を示し貢献していくことが求められるということが記載されています。今後の進め方に関しては、現在宇宙戦略基金の技術開発テーマの一つとして、月測位システム技術が設定されています。この技術の実証を早期に実施して、国際的な議論に積極的に参加していくことが重要であるとしています。
次はゲートウェイの建設・運用及び利用に関しては、各国においてゲートウェイの提供要素の開発が進められていて、我が国も居住機能や物資補給などを提供することになっています。また、ゲートウェイの利用ミッションの検討もJAXAを中心に進められていることが記載されています。今後は、2020年代後半のゲートウェイ運用開始に向けて、国際協力のもとで我が国の取り組みを着実に進めるということが必要であるとしています。
3番は、月面への輸送能力、機械の確保というところで、少なくともいろいろなことをやるためには、ペイロードを月面に自立性・自在性を持って輸送する能力の確保が重要であるとしています。まず月面着陸技術に関しては、先ほど申し上げたSLIMのピンポイント着陸の成功、着陸後に越夜に複数回成功していることは非常に大きな成果ですけれども、月面の水資源や科学的な価値が高い場所は限られているために、狙った場所にピンポイントで着陸することができる高精度着陸技術というのは、非常に有用性の高い技術であるということです。越夜は、一回の着陸で長期間、複数回の調査等を可能にするということで、月面活動の効率を高めることに期待が集まる技術でございます。また、米国では、持続的かつ効率的な月面探査活動を進めるという観点から、商業月面ペイロード輸送サービスプログラム(CLIPS)を実施して、民間参入の促進等を目指しています。日本企業も一部、CRPSにアメリカ企業と共同で参加するというようなことも行われているということも記載しています。
このような状況に鑑みて、月輸送に関する今後の進め方としては、我が国としても日本企業は、国際影響競争力を確保しつつ、月面輸送サービスを提供することを通じて、自律的・持続的な月面活動を実施していくことを目指すべきであるとしています。また、日本企業の事業化の成功に向けては、SLIMで得られた高精度着陸技術や越夜技術などについては、我が国の民間企業に移転しつつ、さらに発展させ、世界に先駆けて実証していくことが大きな優位性になるということで、月極域にピンポイント着陸し、一定期間継続して探査活動を行う取組を民間主導で早期に実施できるよう検討する必要があるということも書かれています。また、継続的な月面輸送サービスの在り方については、関係府省と連携しつつ検討していくことが必要であるということも記載しています。
4番は、将来の火星探査に向けた取組ということで、火星探査は有人活動といった観点だけではなく、惑星科学の進展等の科学的観点からも大きな意義を有しています。火星への有人探査については、今後月面活動が進展する中で具体化が進んでいくと考えられるということを記載しています。我が国では、火星において宇宙科学を中心に調査研究を実施しつつ、将来の有人探査への活用にも資するキー技術の開発、火星環境の調査を進めていくことが望ましいとしています。
アメリカは現在、Mars Sample Return計画、中国は火星サンプルリターンミッションを計画しているということ、日本は火星衛星の探査計画(MMX)を進めているということに加えて、我が国におけるMMXの次の取組としては、火星本星の探査を小型の着陸機で実施することが考えられますけれども、まずは、必要かつ重要な技術を我が国の民間企業の参画を目指しつつ、段階的に開発、獲得することが重要であるとしています。特に日本独自の革新的な技術としては、大気突入・着陸技術であるエアロシェル技術について、宇宙戦略基金の技術開発デモの一つとして設定されています。これで着実に開発を進めることが重要であります。また、宇宙空間での探査機等の輸送を担う軌道間輸送技術の検討、あるいは国際基準のガイドラインで定められた惑星保護技術(プラネタリプロテクション)の獲得も進める必要があるとしています。
5番目、持続的な活動のための産学官の基盤整備ということで、持続的かつ効果的な月面活動や将来の月面経済圏の創出のためには、非宇宙分野も含めた参画機関を増やし、人材の裾野の拡大と産学官の多様なプレーヤーが支える基盤の構築が不可欠としています。非宇宙分野の民間企業の参画の促進については、JAXAが宇宙探査イノベーションハブを実施しており、この10年間で約250件以上の民間企業等が参画するなど、一定の成果が上がっています。今後の月面探査の本格化に向けて、あるべき月面活動のニーズを明確にした上で、地上の技術を生かした技術開発を進めていくことが効果的であるとしています。
今度は大学ですけれども、人材育成や先端的な研究開発、学術基盤の確保など、宇宙活動を支える重要な役割を担っておりますけれども、その取り組みをより効果的・効率的に展開するために、各大学との特徴や強みを生かした拠点形成とそのネットワーク化を進めることが重要であるということが書かれてあります。
宇宙戦略基金に関しては、国際プレゼンスの確保、優れた科学的成果の創出、国際的な大型計画への貢献につなげるなど、探査等の分野における方向性に沿った技術開発において、非宇宙分野も含めた多様な民間企業の参画やスタートアップの活性化が大事であるということ。また、大学等においては、拠点形成、それから宇宙探査汎用イノベーションハブの成果の発展に基金を効果的に活用することが重要であるということが記載されています。
最後です。4番の月面探査に関する情報発信、人材育成国際連携についてです。まずは情報発信については、国民からの理解や指示を得るため、月面探査の意義や成果について積極的に発信するということ、国際協力を効果的に推進する観点から協力相手国に対する発信などが重要であることが書かれています。人材育成においては、長期留学、国際共同研究の参画等によって、どんどん日本人を国際化していくということ、逆に海外からの人材を呼び込むということも重要であることが書かれています。最後の国際連携については、アジア・太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)等も活用して、月面探査を目指す国々との協力について検討することが大事であるということが書かれてあります。
最後は、これまでの資料等がWEBの形で書かれておりますので、ご参考いただければと思います。以上でございます。

【村山部会長】 非常に丁寧かつ分かりやすくご説明いただいてありがとうございます。ただいまの説明についてご意見やご質問がありましたらお願いいたします。予定の時間は5時になっておりますので、もし、退室が必要な方は出ていただいても結構ですが、その前に質問したい方がいらっしゃればお願いいたします。木村委員、お願いいたします。

【木村委員】 木村でございます。大変丁寧な説明ありがとうございます。方向性として、非常に適切に分析され、次のステップで何をすべきか、それからそれが将来どうつながっていくかというお話が丁寧にまとまっており、私も賛同いたします。
特にこの中で、さらにその先という言い方になるのかもしれないのですけれども、有人与圧ローバがあり、ゲートウェイがあり、そこで有人の拠点、あるいは、そこで暮らすような技術というのを、日本が持つことになるわけですよね。将来、月面で拠点を作るときに非常に重要な技術を、この中で持ち得るのではないかと思っています。その次のステップで、さらにこれらの技術が拠点につながっていくような話に発展できると良いのではないかと思っております。その中で、先ほどご指摘いただいたように産学の連携、あるいは非宇宙の参入も非常に重要な要素ではないかと思っています。イノベーションハブは一つの枠組みだと思うのですけれども、例えば、暮らすことになってくると、宇宙工学ではない分野がほとんどで、衣食住に関連するところが入ってくる可能性がありますし、それらで目指しているところは、地上でも必要とされている技術というか、資源の循環や環境の浄化につながっている技術だと思うので、よりクローズアップして進めていければ良いと思います。そのあたりについて追加で何かご意見があればお願いいたします。

【中須賀主査】 ご賛同いただいて感謝します。木村先生がおっしゃったことも大変大事だと思っておりまして、特に地上技術とうまく連携をしていかなければ、ビジネスでやっても、この宇宙での利用を待っているだけでは、なかなかすぐに動かないですよね。だから、ベンチャーがこういったことに必要ないろいろな技術の中で「これは民間にも地上でも使えるからビジネスとしてもやっていきたい」という部分ができてきて、研究をしっかりやって尖がった技術を持ち、それが地上にも使え、そこで実証されたのが、やがて宇宙に使われていくということが大事。宇宙というのが一つのアイデアのきっかけとなって、地上で使えるものが、そこで培われて、それが実証された後に宇宙でさらに使われていくという流れをうまく作っていけたらいいなというふうに思いますね。そういう意味でいうと、どういうことが宇宙では必要なのかということを、こういった可能性のある若い人たちにどんどん知らせていくこと、これが大事ではないかという気がしているので、そういう機会をどんどん持っていきたいなというふうに思います。

【木村委員】 そうですね、そこはすごく賛同いたします。地上でも環境関連など、日本はものすごく力を持っていると思います。宇宙だけだと、まだマーケットとして設定するのは、なかなか難しいかもしれないのですけれども、環境問題や資源問題、あるいはインフラの整わない地域等でのサステナブルな暮らし、そういったところも併せて実現できるといいと思っています。ぜひ、その辺りを一緒にご検討いただければと思います。ありがとうございます。

【中須賀主査】 木村先生も、ぜひご協力ください。よろしくお願いします。

【村山部会長】 どうもありがとうございます。続きまして、笠原委員お願いいたします。

【笠原委員】 中須賀先生、ご説明ありがとうございます。近年稀に見るような未来を感じるご説明で、非常に興奮しながら聞かせていただきました。この日本において、将来発展する世界というのをなかなか思い描けなかったのですが、本日の中須賀先生のご発表で、そういう気持ちにさせていただいて大変ありがたいと思っております。2つ質問させていただきたいと思います。
後半のほうで、強調されていたと感じたのですが、イノベーションハブを始めとするコミュニティ全体が幅広く発展する力が必要だということと、前半のほうで、さまざまな新しい魅力的なプロジェクトをご紹介いただきました。例えば、月面ローバは、世界に勝ち得るキーシステムに感じたのですが、思いきり広げて全体を活性化することと、どこで勝っていくのかというところの2点について、中須賀先生の感触を教えていただきたいと思って質問させていただきました。よろしくお願いいたします。

【中須賀主査】 ありがとうございます。これは人によって意見が違うと思いますので、あくまで私の意見ですけれども、私は水だと思っています。月において大事なのは水で、水を使って燃料基地にすることによって、月から火星に行くと、よりエネルギーが少なくて済みますから、そういう意味で水が見つかったことはすごく大きなことで、この水をどこにあるかを調べること、それから、その位置にピンポイントで着陸することはSLIMで実証しています。それからローバでその位置まで行って、その時にどこにあるかということをちゃんとナビゲートしなければいけないから、それは測位衛星技術が使えるということで、ある種ここで書かれている、いくつかの技術をうまく組み合わせることによって、まさにピンポイントで水探査ができることが日本の強い技術になるのではないかと思っております。そのあたりに、1つ力を入れていくべきではないかと個人的に思っています。
皆さんの意見とは違うかもしれませんけれども、そういったことを、しっかりやりながら、この技術は日本に勝てない、日本に任せてしまおうというようなものを、早い段階で日本として示していくことが必要だと思います。その1つの例が、今申し上げた水に関する技術であるというふうに思っております。以上でよろしいでしょうか。

【笠原委員】 どうもありがとうございます。大変勉強になります。以上でございます。

【村山部会長】 ありがとうございます。他の方はいかがでしょうか。松岡委員、お願いいたします。

【松岡委員】 京都大学の松岡と申します。ご説明どうもありがとうございました。月と火星という、将来が大変楽しみな計画をお話しいただいて、私も大変夢を持ちながら聞かせていただきました。
どんどん計画が大型化するために、特に日本にとって、国際化は避けて通れないことではないかと考えております。資料の2ページ目にある3ポツの、月面探査に関する当面の取組の下の文の最後のところに、月面活動における国際規範、ルール形成、国際市場の獲得、国際協力ということが書いてあります。これらは大事なことですが、一方で、これをきちんと形成することは、それぞれの国の事情が違うということもあり、なかなか難しいかもしれないという予想もあります。日本の考える国際規範・ルールというものに、必ずしも他の国がアグリーしてくれるものでもないかもしれない。どういう仕組みで今後進めていくとうまくいくと期待されるか、お考えが何かあれば、追加でお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いします。

【中須賀主査】 ありがとうございます。とても大事で、かつ日本がこれまであまり得意ではなかったという分野でもあり、私も答えがあるわけではありません。今後、我々の委員会でもしっかりと議論していかなければいけない課題だと思っています。例えば、少し前に行われたウィーンでの国連COPUOSです。国連の中の委員会でいつも中国ではものすごい数で来るのですが、今回もたくさんやってきて、月科学研究ステーション(ILRS)をみんなやりましょうと訴えているんですよね。こういうことを、日本としてもある程度やっていかなければならないのではないかと思います。こういう国際連携の場、あるいはいろいろな国々に何をそれぞれの国が目指しているかということを伝える場に、もっともっと日本人として出ていって、中国と喧嘩する必要はないかもしれませんけれども、それに近いレベルの日本としてのプレゼンスを示すことが大事だと思います。これは必要条件であって、十分条件ではないと思います。これだけではないけれども、これもやらなければおそらく何も起こらないので、まずはこれをやる。その中で、今度は国際的なルール作りに強い人材を作って、ずっとそのコミュニティの中で存在感を示し、いわゆるいつも出てくる顔になっていくということが必要です。月に関してはムーンビレッジや民間のものもありますし、国連のCOPUOSのような公的なものもありますから、そういったところに行って、できれば同じ人が、この月に関しては、ある種日本のスポークスマンとなり「こういうことを日本はやろうとしているから一緒にやりましょう」ということを言い続けることが大事だと思います。同時に、日本に実証された技術がないときにそれをやってもついてこないので、「こういう技術があるよ」ということを早い段階で実証して、その技術をもとにそういう呼びかけをしていく、この両睨みの戦略が私は必要かなというふうに思います。よろしいでしょうか。

【松岡委員】 日本として技術を磨いて、実績を積んで、それをしっかりアピールしていく。それができる人材をしっかり育てるということと理解いたしました。どうもありがとうございます。

【村山部会長】 ここは非常に日本の大きなポイントですね。ルール形成と言いながらも専門家が育っていないことは、10年以上前から言われていますよね。

【中須賀主査】 今申し上げたCOPUOSで言うと、私も何回かこの会議に出て、UNICEC-GLOBALという団体の活動をスピーチをしているんですけれども、中国はすごく優秀なエースが数十人規模で来るんですね。多分日本は5人くらいしかいません。議論になっても彼らの勢いには全然勝てないところがあり、日本としてちゃんと考えていかなきゃいけないんじゃないかと、いつも思っていました。以上です。

【村山部会長】 それは同感です。他の方はいかがでしょうか。
それでは、資料88-4ですけれども、この報告書は個人的にも非常によく書けた報告書だと思うんですけれども、宇宙開発利用部会として決定することに異議はございませんか。
それでは、決定されたということでお願いいたします。

【中須賀主査】 ありがとうございました。

【村山部会長】 今日はお忙しい中、どうもありがとうございました。本日の議事はこれで終了となります。開始が15分遅れて申し訳ありませんでした。最後に事務局から連絡事項があればお願いいたします。

【竹上企画官(事務局)】 本日もありがとうございました。冒頭に不手際があり、大変失礼いたしました。会議資料等の公開について申し上げます。本日の会議資料は、文科省ホームページに、既に掲載させていただいております。また、本日の配信動画ですが、今のところ、明日の午後2時を目処に文科省ホームページで公開したいと思います。
議事録につきましては、委員の皆さまにご確認いただいた後、文科省ホームページに掲載させていただきます。最後に、次回の宇宙開発利用部会ですが、来月8月後半の開催を予定しております。委員の皆さまには別途ご連絡いたします。事務局からの事務連絡は以上となります。

【村山部会長】 どうもありがとうございました。それでは、以上をもちまして閉会といたします。本日も非常に長い時間ご議論いただきまして、誠にありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課

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