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人材委員会 研究者・教員等の流動性・安定性に関するワーキング・グループ(第3回)議事録

1.日時

令和6年6月12日(水曜日)14時00分〜16時00分

2.場所

文部科学省15F局1会議室及び Web 会議(ZOOM)

3.議題

  1. ワーキング・グループの論点整理(案)について
  2. その他

4.出席者

委員

川端委員、狩野委員、川田委員、樋口委員、宮崎委員、安田委員

文部科学省

生田人材政策課長、髙見人材政策推進室長

5.議事録

科学技術・学術審議会 人材委員会
研究者・教員等の流動性・安定性に関するワーキング・グループ(第3回)

令和6年6月12日


【川端主査】 それでは、定刻になりましたので、只今から科学技術・学術審議会人材委員会の研究者・教員等の流動性・安定性に関するワーキング・グループの第3回を開催させていただきます。本日の会議は、冒頭より傍聴者に公開しておりますので、よろしくお願いいたします。
本日は皆さんに御出席いただいているということで、定足数は満たしているということで進めさせていただきます。対面のほうとしては私と狩野委員と川田委員、オンラインに安田先生と樋口先生と宮崎先生ということで、宮田先生がオブザーバーとして入っておられるという状態です。
それでは、議事に入る前に、まず委員会のオンライン開催に当たる事務局からの注意事項と、資料確認をお願いします。對崎さん、お願いします。
【對崎人材政策課長補佐】 ありがとうございます。本日の会議、対面とオンライン、ハイブリッドでの開催ですので、対面での御出席の方は、御発言の際は挙手などで主査に合図をいただきまして、オンラインの先生方は挙手機能等で、主査より指名を受けましたらお名前をおっしゃっていただいた上で御発言いただければと思います。機材の不具合等ございましたら、対面で御出席の委員の皆様は会場の事務局までお知らせいただくとともに、オンラインで御出席の委員の皆様はメールにてお送りしております事務局の連絡先に御連絡をいただければと思います。
資料につきましてはZoomでの共有も行いますが、会場ではお配りしておりますので、各自お手元でも資料を御確認いただけます。
資料確認ですが、本日、次第と、資料1がワーキング・グループの論点整理案、参考資料1が委員のリストです。
事務局からは以上です。
【川端主査】 それでは、議題1ということで、ワーキング・グループの論点整理についてです。
こちらは事務局よりの御説明ということから始めたいと思います。お願いします。
【對崎人材政策課長補佐】 ありがとうございます。資料1、論点整理の案を御覧いただければと思いますが、こちらは前回御議論いただいた項目のたたきのようなところに、少し肉づけをしております。
構成としては変わっておりませんが、0ポツとして、本ワーキングの位置付け・対象者等は、1回目のワーキング・グループでお示しした、本ワーキングでどのような方を対象にするのか、どのような方向性で議論するのかというところを簡単にまとめておりまして、基本的にはその3つの項目に書いておりますとおり、1つ目は科学技術・イノベーション政策の観点から、研究力向上に資する若手研究者の環境支援をいかに行うかという点での対応策を検討しているということ。2つ目の丸が、過去の経緯として、ポスドクのガイドラインの整備を2020年に行いまして、その時のポストドクターの定義に倣って、このような方を対象にして議論を中心にはしているということ。3つ目の丸として、本ワーキングで目指すべき方向性を共有しながら、若手研究者を取り巻く環境を整理して研究力強化に資するとともに、キャリアパスの理想に近づける環境を整えて、研究者のチャレンジングな活動を推奨・支援できるような雇用に関する方策について、論点整理を行うということです。
1ポツ、背景・経緯としましては、1つ目の丸は、ポストドクター等を取り巻く環境に関する議論として、元々はポスドク1万人計画というのを1996年の科学技術基本計画の第1期の中で書いておりまして、これに向けてポスドク等の支援拡充を行ってきまして、1999年度に達成をし、その上で、第2期の基本計画の方でもこの数値目標の達成に言及するとともに、引き続きの施策の課題を残しているところです。
2ページに行っていただきまして、第2期の基本計画の中では、ポストドクター等のキャリアパスをしっかり確立するというところで、研究者の流動性の向上や多様なキャリアパスを確保するという方策を示しています。
第3期においてもこの方向性を継続した上で、これまで記載をしてきているところで、少し下の段落に行き、「こうした」の段落ですが、ポストドクター等に対する自立支援や多様なキャリアパス支援を促進するための施策を検討・実施するということと併せて、これに関する調査、ポストドクター等の雇用の状況の調査を継続的に行ってきているところです。
直近では2020年に、先ほども記載のとおりですが、人材委員会のほうで「ポストドクター等の雇用・育成に関するガイドライン」を整備して、これの周知を行うとともに、文科省のほうでも政策や制度整備を図ってきたという状況です。
2ページ目、2つ目の丸ですが、当該ガイドラインの整備後に、2023年度以降には労働契約法の10年特例のルールから10年が経過して、特例対象者については本格的な無期転換申込権が発生しているという状況であり、こうした状況は引き続き定期的な調査を実施して、状況把握をしていくというところです。
また、2ページ下からの項目として、若手研究者の育成・確保については、若手研究者比率等の達成目標の設定と、達成に向けた取組の実施や、若手研究者向けの研究スタートアップ経費の重点施策に取り組んでいるという点があります。
また、最後4つ目の丸として、博士課程教育リーディングプログラムや卓越大学院プログラム、卓越研究員事業を通して、大学院教育の充実や人材交流促進、博士人材のアカデミア以外のキャリアパスの多様化等を進めてきているところです。
2ポツで現状として、こちらも1回目から様々データ等でお示ししているところですが、研究者全体の数は長期的には増加傾向にありますが、若手研究者を始めとして、任期つきの教員の割合が高くなっています。また、2つ目の丸ですが、教員全体に占める若手研究者の割合が減少傾向にあるとともに、ポストドクター等の数も減少傾向にあるということです。
それで、前回のときにも少し数字ベースで議論をさせていただきましたが、研究者の流動性や安定性を議論するに当たって、雇用形態の違いによるストックの人数だけではなくて、人材のフローについても留意する必要があるということで、これについては、特に有期雇用の研究者・教員等のストックアンドフローについて、ある程度実態把握が必要ではないかということで、4ページ目に、前回も議論にあった、無期雇用の場合の教員のストックアンドフローをお示ししております。こちらは学校基本調査と教員統計調査の令和4年度のデータから抽出しておりますが、教員の全体数が18万8,000人ほどであるのに対して、採用で入る人が1万1,000人規模で、定年と転職とその他を含めた離職者全体が1万3,000人という状況で、それぞれ年代ごとの内訳もこちらに示しており、こうしたフローの部分のデータを有期雇用の研究者に関しても取ってみると、その差、あるいは違いも出てくるかと思われます。
民間と比較して転職率がどうなのかというところで、こちらは、上にお示しした教員全体のほうでは、転職率は無期雇用の方に関しては2.5%という状況ですが、厚生労働省の調査によりますと、有期・無期含めた全体の一般労働者の転職者割合は7.2%となっています。
また、4ページ目、次の丸ですが、文部科学省のほうでも雇用財源の多様化・充実化に向けて様々な施策を講じているというところは前回書いてあるとおりで、最後の丸の無期転換ルールの10年特例に関しても、特例対象者のうち8割が雇用を継続されて、無期転換申込権が発生しているという状況ですので、この特例の在り方等を見直す必要があるかどうかの検討に当たっては、今後の運用状況も注視して確認していく必要があります。
3ポツが課題ですが、こちらは前回お示ししているものとほぼ同じで、基本的には、先般来申し上げているガイドラインの状況等のフォローアップが必要ということ、様々な調査から出てきている課題、特にポストドクター向けのキャリアパスの整備、しっかりとしたトレーニング等の機会、メンター等の配置等、様々な調査の中から明らかになってきた課題を特に記載しています。
4ポツ、対応策ですが、こちらも項目は前回お示ししているとおりです。まず(1)として、ポストドクター等を含む若手研究者のキャリアパスのあるべき方向性ですが、1つ目の丸として、人材流動性やキャリアパスのモデルについて、こちらは各大学・研究機関で様々な取組が行われているという取組例は御紹介している通りですが、各機関における取組例の一番下に、前回宮崎先生におっしゃっていただいた、無期雇用とするポストと有期雇用とするポストを、そのポストの内容に応じて各機関の人事・雇用戦略に基づいてすみ分けているといった事例もあるのではないかということを書いています。
前回の御意見を踏まえた今後の対応例として幾つか書いており、こちらは前回いただいた御意見をほぼそのまま記載している状況ですが、1つ目が、まず有期雇用の若手研究者について、どのようなポストやキャリアパスがあるのか、ロールモデルやケースを文部科学省が紹介するといった対応。また2つ目として、有期雇用の研究者の実態把握を行って、研究者の全体のフローを描くというのは、先ほどの調査が必要というところにも関係してまいります。
また3つ目として、文部科学省において、産学連携、地方創生や地域貢献に取り組む研究者の取組や、論文以外の行政評価の仕方に関する具体的事例を把握して紹介すること。また、その前提として、研究者が共通して持つべき能力・スキルは何かといった議論も深める必要があるといったこと。また、これも少し議論いただいたところですが、比較的大規模の研究費を機関で執行する場合に、一定以上の割合を機関の環境整備や体制構築等に使用することを許容するなど、柔軟な予算執行ができないかという検討。
また、政府の若手研究者支援策と併せて、各機関の本部の事務機能の強化や改革が、部局や研究間を超えた調整において必要ではないかといったことも御意見いただきました。
丸2番は10年特例の状況とキャリアパスの関係ですが、こちらは課題のところで申し上げたとおり、引き続き今年度の調査を実施する予定ですが、実態把握とともに、運用状況の把握が必要ではないかというところです。
また、(2)といたしまして、ポスドク等のキャリアパスの多様化に向けた各機関及び文部科学省における今後の取組ということで、こちらもキャリアパスの構築のための環境整備というところで、幾つか事例を御紹介したものは前回示しているとおり、最後8ページに移っていただき、前回の御意見として、各機関でキャリア支援に関する優良事例が提供されているといったことがありますので、アカデミアの研究者は一般の転職サイトにあまり登録しない傾向がある一方で、民間企業の就職エージェントが接しているような例もあるので、機関としてのキャリア支援をもう少し充実させる必要があるのではないか。また、機関内でURA等の研究開発マネジメント人材等の職種への転換を呼びかける、あるいはキャリアカウンセリングの担当部署を設けるといった例もあるというお話もいただきました。
最後に(3)として、その他留意事項として、こちらも上のところに書いているものは前回お示ししているとおりで、国際的な流動性に配慮する必要、あるいは機関の規模やエフォートによって若手研究者の在り方が変わるといったところを留意事項に書いておりまして、前回の御意見等を踏まえた今後の対応として、海外でのポスドク経験の推奨や支援、あるいは男性・女性の両方に配慮した研究とライフイベントの両立に向けた支援、あるいはポスドク本人やこれから博士を目指す学生向けの、こうした事例の作成や周知といったことも考えられるのではないかといった御意見をいただきました。
本日は、こちらの中身とともに、特に対応策や課題のところで、国、各機関、個人というそれぞれの階層がありますが、それぞれの方に対して、どのようなアプローチが可能かといったところで、また御意見もいただければと思います。よろしくお願いいたします。
【川端主査】 ありがとうございます。前回、かなり突っ込んだ議論をいろんな意味でさせていただいて、それをうまく、これでカテゴライズしてまとめていただいたという状態です。
とはいえ、まだ抜けているし、こう並べてみるとやはり少し違うというところも出てきているようにも思います。
そんなことも含めて、まずは、ここに今書かれているものにさらに足すもの、あるいはもう少しこういう意味ではない、こういう話が入るべき、何かそういう話で、まず付け足し的な話も含めてやれたらなと思いますが、そんなところから始めることでいかがでしょうか。
では、川田先生から。
【川田委員】 ちょっと細かいところなのですが、確認したいところが2つあります。1つは、どこに入れるのか、経緯なのか現状なのか課題なのか、あるいは、この論点整理よりは、論点整理した上でのその先の政策的な課題の中に出てくる話なのか、自分でも整理しきれていないところがある点ですが、私が専門である労働法の観点からすると、有期雇用に関して、今年の4月に労働基準法施行規則が改正されて、まさにここで問題になっているような有期雇用の場合の予定している雇用の上限については、最初に契約を結ぶときに労働条件明示の対象に含めること、加えて、無期転換権が発生する契約を結ぶときには、その無期転換権の行使に関する事項を説明することというような改正が行われています。要するに、労働法制全体としても、無期転換を含めた有期雇用に関するルールの明確化が進んでいるという状況を、何らかの形で盛り込んで、これは恐らく、今のレベルでは各機関がしっかり対応してくださいという話になっていくと思うのですが、これは何らかの形で論点整理の中にもあったほうがよいと思っています。
それからもう1つの点ですが、私がこういった分野の用語に疎いのかもしれませんが、5ページの7個ある丸の一番下のところで、「大学・研究機関ごとの研究者雇用戦略が偏在しており」という書き方をしている、この「偏在」というのは、この場合どう理解したらいいのだろうか。 取りようによっては、何か全体の一部にだけあるという意味になって、そうすると大学・研究機関ごとに雇用戦略がないところもあるのかというようにも読めてしまうような気がしますが、多分それはそうではないような気がします。
ヒアリングの中では、個々の部局ごと、場合によっては研究室ごとに戦略はあるが、大学全体としての確たる戦略があるとは言えないようなケースなどもあったと思いまして、それ自体は、そういう現状を把握した上で何か対策が必要なのかということを考えていくというのは、その先の政策的な課題に関わってくると思いまして、まずはこの「偏在」という言葉で何がイメージされていたのかというのが少し分からなかったところもあり、できたらより明確にしたほうがよいと思いました。
以上です。
【川端主査】 ありがとうございます。
いかがですか。
【髙見人材政策推進室長】 今おっしゃっていただいたような、本部で一元的な雇用戦略というのを、大学全体として、例えば年齢層別にどれだけの研究者を配置するのがいい、あるいは中長期的な戦略を持っている大学もあれば、そうではなくて、基本的には部局の自治の中で雇用戦略をつくっていて、本部が一元的にというのは明示的にはないというところもあると思うので、そのことを申し上げたかったということです。
「偏在」という言い方が、確かにおっしゃるとおり、少し誤解を招くような言い方だったかもしれません。
【川端主査】 恐らく、少し下に例示を入れるとよいかと思います。
今の話だと、前も出ましたが、部局によっては有期雇用をシニアにも導入しているという、それは戦略的にそういうものをやっているところもあり、全然やっていないところもあり、若手を最初から無期雇用にしてしまっているというところもあります。そんな話ですよね。もっと具体的に。
【川田委員】 それだったら、内容としてはとてもよく分かりました。あとは何かうまく表現できれば。
【髙見人材政策推進室長】 はい。
【川端主査】 あと、最初の労働法に関する話に関しては、現状、大きなトラブルは起こっていないということは、要するに、伝えようとはしている。ただ、向こうが全然聞いたことがないというアンケート結果が出ているから、それはやはり問題だというところが整理されていくというところですね。ありがとうございます。
よろしいですかね。では次に。狩野さんから。
どうぞ。
【狩野主査代理】 はい。まずは改めてこの取りまとめ、大変だったと思います。文部科学省の皆様、ありがとうございました。
拝見して、今日改めて説明を伺いながら、もう少しあり得るかもしれないと思ったことを申し上げます。
それは、ステークホルダーごとに主語を変えた場合の目線はどうか、というまとめ方はあるかな、ということです。つまり、「雇われる側」と「雇う側」、あと、「予算あるいはルールを決める側」の3者が少なくとも存在するように思うのです。もちろん、それぞれの中でも、しかも多様なのです。その中で、一元的に何はまとめられるのかということを考える必要があるのだと思いながら、改めて伺いました。
「雇われる側」の目線に立つと、チャレンジをする元気が出る程度の安心感が欲しいということがきっとあるのだと思うのですが、それは一体どうやったら得られるのかということが、一つきっと論点だなと思いました。
これは、本当は学術的には心理学か何かを援用する必要があり、私はすぐには分からないのですが、ただ、今までの話を伺っていると、一つに生きていくことそのもの、つまり、家族を持つとか、様々な意味での生きていくことそのものに対する安心感が、どうもまだ十分でないという声が一つ聞こえたと思います。あと、活動内容そのものも安心感が十分でないということは聞こえたと思っておりました。
活動内容というのは、つまり科学のどんな活動をしていくのかというところについて、例えばプロジェクト雇用の場合にはそれに沿った生き方をしなければいけなくて、十分チャレンジできない、あるいは、今の時代に合ったチャレンジをしたいと思うが、学術界のルールにうまく合っていかないというような不安等、そういう不安がどうもありそうだということは思いました。
もう1つあった可能性としては、10年の間に十分成果が出なかったときに、アカデミアに行く以外に、ほかにどんな道があるのかという情報が足りないことによる不安感というのもあったように思いました。
ですので、今挙げた要素以外にもあるのかもしれませんが、取りあえず思い起こすと、そんなところが主な不安のもとか、あるいは安心感をより差し上げられるもとかという感じはしました。
もう1つ不安の要因として、これも仮説ですが、いわゆる御本人以外の、本人を支えていく人たちの中で、非正規雇用というものに対する恐れがきっと昨今の世の中で様々あって、それとこの制度が非常に裏表あったものに見えてしまっているのではないかという感じもするところです。ですので、例えばこの時期を、「自分の強みを確認して、その後のキャリアを試しながら、あるいは考える時期」というような設定に持っていただけるようにする、何かの表現があるとよいということを思いました。
そうであるとすると、「あなたがその期間に試したことの中で、自分が得意だと思ったこと」が「何々」であれば、「次のキャリアはこういうものもある」ということを、例えばどこかで提示してあり、あるいは、そこに試しに行けるような制度設計というか、そういうものが一元的にもしあると、少し今回の不安の減少につながるかもしれないということを思って伺っておりました。
続いて、「雇う側」から見た安心感をもう少し増やすにはどうしたらいいかということを考えますと、こちらは少し言い方が難しいときもありますが、長期にわたって人件費を出し続けられるという確約ができるのかどうかという点に、一つ不安感のもとがあるのであろうと。これは大学あるいは研究機関にとどまらず、企業も最近そうであろうと思うのですが、そこが一つ大きいと思いました。これは手当てができるのかどうか、少しよく分かりません。
それから、先ほど川田先生からあったような、労働基準法遵守的な意味で、相手の何か不安感があるとすれば、そこについては、どこそこまではやって大丈夫という情報があるといいのかもしれないということは一つ思いました。
それから、やはり組織の中で、例えばこういう雇われる立場の方に対して何がいいかというのを決める人たちと、雇われる側の年代が違いますので、不安を持っている人たちに対して、どういう方策が適切なのかということを聞く必要がきっとあるのだと思います。そういう機会をより設けていきましょうというような話をする点もあるということは一つ思いました。
もう1つだけあるのは、産業技術総合研究所で無期雇用を初めからされているというお話があったところです。ほかの組織で若い人たちを有期雇用にしないといけないから、自分のところでもそうしなくてはいけない、という雰囲気をもし誰かが感じているとすれば、これも一種の不安なのかもしれません。しかし、別にそんなことはないと。何なら無期に初めからしても、この程度のことは発生するけど、この程度のことしか起きないというような情報を、これも一元的に提供するということで、乗り越えられる不安感もあるのかもしれないということは、一つ思いました。
今の、少なくとも2つのステークホルダーから見た視点で、この内容をうまく書いていくと、一元的にやることによって、チャレンジをする元気が出るにはどうしたらいいかということを、少しまとめた形で言えるということは、思いました。
なお、この委員会が属している「政府側」から見た不安感がどこにあるのかは、少し今まであまり掘り起こしをしていないのでよく分かりませんが、少なくとも、一つには予算の裏づけがそう簡単ではないということもありましょうし、あまりに一元的なものを決めてしまって、多様性を潰してしまったら困るということの不安もあるかもしれませんし、そんなところがあるのでしょうか、と思います。それらを乗り越えられるような、うまく設定ができるといいなということは思って伺っておりました。
以上です。
【川端主査】 ありがとうございました。いや、本質的なポイントです。
私もこの話の出発点は、今、狩野先生が言われた、要するにドクター等若い人にとって、アカデミアが魅力的でないという、この1点から始まる話だと思います。
要するに、博士進学にとても強いプロモーション、モチベーションが起こらないなどの理由で、修士卒の段階で民間企業に就職してしまおうとなっている。
ドクターに行くためには、その向こうにあるアカデミアが当然魅力的だというのが、我々の世代だったら、当たり前だったのですが、今はそうじゃなくてセレクションできる職業がたくさんあって、その中の1つの職業としてみた時に学生にとってアカデミアの職が魅力的かということになっています。先ほど狩野先生が言われたような、任期付きで不安定だとか、任期が切れた後どうなるか分からないとか、そんなような不安感のほうで、魅力的に見えなくなっているのではと思います。このため、現状とか課題の最初に、掲げてもよいことかと思います。これを解決するための方策として、大学、各機関での人事制度やそれらが連携する国全体としての連携の制度の在り方、さらにはそれを学生さんたちに届ける情報発信の方法とか、いろんなものが対策としてつながっていくと思いました。そうですよね。極めて本質的な話だったと思います。
では、安田先生、どうぞ。
【安田委員】 ありがとうございます。改めて、研究力強化のために今この議論をしているということでよろしいでしょうか。
研究力強化が最終ゴールだとした場合、若くて優秀な人が、頑張れば明るい未来が研究者になればきっとあるということを信じられて、その能力を発揮できるようにシステムを変えていくことが必要だと思います。前回の会議でも狩野さんが少し指摘されていたことですが、そもそも「研究力強化」のための「研究力」、あるいは「研究者たるもの」というものが、今、多様化している中で、何が一番大事なのかというか、本質的に何なのかということを、やはりもう一回考える必要があると思います。
今、研究論文をひたすら書いてきた人だけでなく、実務家教員も入れましょう、地域貢献をはじめ、研究内容の社会実装など様々な社会貢献が研究者に求められる中、結構大学の中でも外でも、大学が求められる役割というのも非常に多様化しています。このような中で良い研究者とは、新しい知識生産をする、あるいは新しい価値観を生み出す場所と思うのですが、そのための評価が若い人たちから見たときに、ちゃんと自分が能力を発揮でき、正しく評価されそうかどうかというところが一つ大事だと思います。あと、やはり本当に国全体の「研究力強化」をするには、研究者は最低限どうあるべきであって、すごく時間が制約されている中で、そういう新しい知識生産や新しい価値を生み出していくためには何を優先してやればよいのかが明白になる必要もあると思います。
【川端主査】 いや、極めてど真ん中なコメントですね。
それこそ議論する場があってもいいぐらいに、多様化が進み過ぎているという部分もありますし、進まなければならないのかもしれないし、というところはあると思います。
狩野さん、どうぞ。
【狩野主査代理】 では、取りあえず安田先生のことに対して、私の私案を申し上げます。
1つは、「インパクト」という言葉がありますけど――別に政策の名前でなく、いわゆる「インパクト」ですね――これは一体どういうときに出るのかという調査研究の結果を、OECDのレポートで一つ見たことがあります。その内容というのは、特に中長期的な「インパクト」が出るものというのは、今はあまり組み合わされたことがないものが組み合わさった結果の中からほぼ出ているという統計的な結果が出ていました。そうすると、現状のいわゆる研究の支援体制、日本におけるものではあまりそういうことは支援されていないかもしれない付近から、ハイリスク・ハイリターンのものが出るという、そういう結果がありました。
ただ、そうした「インパクト」は公表直後に出るのではなく、10年ぐらいかかってようやっと出てきますと、そういう結果でありました。
近いものの中の組合せのものからは、ステディなものは出るのだが、そこまでのでっかいものは出ないという、結果でした。我々科学者的なセンスからも、そうだろうな、という結果になっていて、それを定量的に示してくれた結果があってよかったなと思った経験がございます。
例えば、では企業において、そのインパクトは一体どういうふうなもので、大学あるいは研究機関とどうすみ分けをするのかというところ。これも私の仮説ですが、まず企業体では、当然ですがお金を回す必要があるというところがあるので、お金に比較的、一定程度つながりを感じるものをどうしても優先されるのだろうというふうに思っています。
国家が進めていくつまり公費でやっていくものは、そういう意味でいうと、今すぐにはお金の回りが分からないかもしれないけれども、中長期的にそこにつながっていくであろうという期待の下に投資しているのではないか、というのが私の仮説です。もしそうだとすると、そういう意味では、すぐには価値が一般に伝わらなくても、将来インパクトがあるというふうに信じられるものを追いかけていくというのを、ぜひ、本当は、公費を使う研究機関では追いかけていくのがいいのではないかということは、仮説として申し上げてみたいと思います。
次に、新しいことに対して証拠をつけてそれを示していく、しかもなるべく再現性が高いものを示していくというのが、科学の一つの特徴だと思っております。それができるということが最低要件として言ってもいいことと思っております。
というのも、じゃあ芸術と科学は何が違うのかという質問に対しては、証拠の必要程度と再現性の必要程度が違うのだろうということになると思うからです。芸術は人間にとって大切な活動なのですが、科学という意味合いで言うのであれば、そこを確認していくことが必要なのだろうと思います。
その時に、先ほど申し上げた、遠い分野同士のときにどういう証拠だったら適切なのかというところの議論はあまり簡単でなくて、でも、それは今後開発していかないと、多分我が国でないと出せないみたいなものは出て行きにくくなるのだろうということは思います。その辺りを今後議論していく必要があるのだろうなというふうに思って、こういう委員会の仕事にも携わっております。
以上です。
【川端主査】 ありがとうございます。
今の話は科学技術っぽいですよね。だから、イノベーションとか人文科学も含めた新しい展開だとすると、そういう整理がつかない部分が多分あって。という意味からしても、非常に多様な世界を抱えながら社会とのつながりの部分をつくっていくから、大学ごとの人事戦略が少しずつ違って、やり方が違ってというので、ごめんなさい、ぜひこういうような議論が、きっとどこかでやられているのかもしれませんけど、そういう話の多様性の部分があるということは御理解いただけるとよいと思います。
樋口先生、どうですか。
【樋口委員】 少し話題は変わるのですが、前回、大学と企業の違いの一つで、部署が簡単に替われないとかという話も確かあったということと、それから、この最後の、前回の意見を踏まえた今後の対応のところで、ライフイベントと両立ができるような働き方というのもあったと思います。今回もう少し踏み込んでもよいのではと思ったのは、研究者として働くときに、常に業績を上げて次のステップアップを目指すような働き方以外の、今は少しキープができるようなポジションがあればいいのですが、その名前がないなと。
ポスドクというと、次の職を得ないといけない、走り続けるという概念の働き方の1種類だと思います。もちろん女性のライフイベントに考慮した科研費等もありますが、そうではなくて、ゆっくりと研究に携わっていたい人が働けるような――うまく言えませんが、新しい名前のそのようなポジションがあると、一旦そのポジションで子育てもしながら、研究のスピードを落として継続できる。そして、次にステップアップしたいと思ったときに、もう一度そこから上を目指していくことができたりするようなキャリアパスに関する議論ももう少しできるといいなと思います。すなわち、大学の中の働き方の多様性という議論もあってもよいのではないかと、このまとめを見ながら思いました。
【川端主査】 おっしゃるとおりと思います。一本道で駆け上がる、それ以外は、という考え方とは違う時代のような気もしますよね。それはぜひ、メッセージだとか、何かいろんなもので出せたらなと思いますけど。
宮崎さん、どうぞ。
【宮崎委員】 宮崎です。資料、長い議事録をここまでコンパクトにしていただいて、非常にありがたく思います。もう、議事録見たときに驚くほどの長さだったので。
それで、今回、無期雇用の方のファクトのデータ、ストックアンドフローを出していただいて、実は少し私、議論として、これ、有期のものでないという前提ではあるのですが、流動性あるではないかと思いました。
実際これ、無期だけ見ると7%は動いているということですよ。このフローは多分、産総研なんかと比べて圧倒的に高いと思って見ていました。
つまりは、無期であってもフローは流れているのではないかと思ったのが特にあって、特に……。
【川端主査】 ごめんなさい、宮崎先生、大学の無期のフローは2.5で、一般的な労働者が7.2。
【宮崎委員】 うん。で、今これで見ると、離職者全体の1万3,000人って、教職員全体の中の7%ぐらいになります。
【川端主査】 これ、教員ですね
【宮崎委員】 教員。そうすると、特にこれ、年代別に出ているのでよく分かるのですが、今話題になっている20代、30代、40代前半ぐらいなので、入ってくる人が6,000人ぐらい入ってくるのですが、転職のところで2,000人ぐらいはもう抜けているんですよね。つまり、無期で入っても、皆さん回っているのだというふうに思います。
だから、流動性がないわけではないというふうに実は思って、「あれっ、流動性の議論をしなきゃいけなかったのにどうしたことだろう」とちょっと思ったというのが、正直なところです。これ、転職以外とかというのも含めてですけれども、かなりな人数が、30代だけを見ても、5,000人入ってきて3,000人以上は抜けていっているのです。
それで、これは流動性の問題ではなくて、流動性というか、どういう者が本当の一番問題なのか。これ、有期のところを見ればほとんどがフローしているのだと思いますが、そうすると、さっき狩野先生がおっしゃったような心理的な不安のところが実は最大になるもので、有期という名前の不安さを持っているところが、心理的なものの問題点が一番大きくて、不安がゆえに研究に集中できないとか、不安がゆえにアクティビティーが落ちてしまうというものが、実は根底の一番大きな問題というふうに、この数字を見て思いましたというところが1つと、それから、我々、今年から修士採用とか始めて、私、最終面接とかやっているのですが、皆さん修士の方が、私、もっと経済的理由とかということで博士に行っていないのだなと思ったのですが、多くの最終面接に来る方がおっしゃるのは、違うのです、実は。
博士を取ってもその先の就職が不安定だとか、働く先が見つからない。研究はしたいが、博士を取ったところでどうなるのか分からないから、大学の先生を見ていて、大学に残るのも大変そうだし、と思ってしまうというのが理由と言って最終面接に来られる方、すごく多いです。特に、進学でマスターぐらいまで国立で出てきている方って、経済的理由というよりは圧倒的にそちらのほうが大きくて。
とすると、今の科学研究、いわゆる技術力、研究力の向上を見たときに、大学そのものの見えている職員の研究者としての人たち、そういう人たちのメンタリティー、それから、それを見ている学生たちのメンタリティー、そういうところが本質的というように、実は今日、数字を見させていただいて思いました。
なので、そういった意味では、最初の頃に川端先生がたしか、プロジェクト研究予算だから有期でしか雇えないというたがを外してしまえば、皆さん無期で入れば、流動はするし、そこの中で研究をしている姿を見て研究者になりたいと思う者も増えてくるのかもしれないと思ったのと、先ほど、産総研が全て無期にした理由は、テニュアトラックをかけても、産総研の場合は9割以上パーマネント化します。なので、それならば最初からなぜ無期ではいけないのかという議論になって、全員が無期化したというところにあります。
先ほど、たしか数字の中で、10年特例で約8割は雇用継続されているということなのですよね。これが有期か無期かは別として、継続するのであれば、結局、大学の中において必要な人材で、欲しいからいるのですよね、10年間。なので、そういう者はやはりしっかり安定的な無期で雇用してあげて活用していく、そのほうがパフォーマンスは上がるのではないと思いましたという、私の今日の報告を聞きながらの意見です。
【川端主査】 ありがとうございます。いや、まさにそうなのですよね。どこかで考え方をどう変えられるかなんでしょうね。
そのパーマネント化のところ、さっきお話しになったように、今、人事がやはり部局単位でやっている部分があります。部局ごとに人件費を確保して、その中で外部資金をさらに足して、その中で回そうとするから、その部局で人件費がなくなったら誰も引取り手がないという、こういうことをどう整理するという。
それが、例えば今、産業技術総合研究所のように機関全体で雇用するという立ち位置になっていったときには、もう少し違う格好があるのかもしれない
その上で、今のいわゆる外部資金の膨らみ方、要するに時限がついている資金としてのお金の量が、少ない量だったらよいのですが、言わば全体の大学セグメントの10%とか20%というものを占め始めると、それのかなりの部分が人件費に流れていると、どう取り込めるかという話との整理が出てくるでしょうね。
すみません、ただの意見を意見で返しているだけなので。
【宮崎委員】 はい、大丈夫です。どうぞ。
【川端主査】 安田先生、どうぞ。
【安田委員】 今の話で、実は少し私、地方大学等を見ていると、今、宮崎先生がおっしゃったことも真実だと思うのですが、真逆のことも少しあって。
一つは、私が体験したのがテニュアトラックで、宮崎大学も9割ぐらいが頑張ればテニュアになれるテニュアトラック制度を運用していたのですが、このテニュアトラック制は非常に、自分を成長させてくれました。もちろん未来の定職が確約されていないからこそ大学運営や授業などの負担を軽くしてもらったことも大きかったのですが、きちんと評価してもらえるという信頼があれば、任期があったとしても前向きに頑張ることができると実感しました。無期雇用は、もうそれ以上のことはなくて、安定していて一番よいのですが、テニュアトラックには、求められる成果がそんなにむちゃくちゃでなければ頑張る機会になると思いました。あと、東大に来ると学生の多くはやはり宮崎先生がおっしゃっていたような、学費や生活費よりも未来の職自体を気にしている人が多いと感じるのですが、宮崎大学にいたときは、博士課程に行きたいし、すごく研究を続けたいがお金がない、という方がすごく割合として多くて、チャレンジ精神はあって頑張りたいという学生も多く見てきました。お金の問題はやはりゼロではないというところ、少し補足的なのですが、宮崎先生の御意見に加えて、参考までということで発言させていただきました。ありがとうございます。
【川端主査】 今の安田先生の話、今、新SPRINGとか、多分その頃にはまだなかった制度がかなり動いていて、ドクターの中のかなりの割合に生活費がばさっと動いていたり、卓越が動いていたりで、私自体そういう人たちと話す機会があって、話したときには逆に、さっきの宮崎先生が言われるような話を学生さんから聞くことが多くて、お金もあるし、キャリアパスもあるし、先も見えているし、カリキュラムももう超一流のカリキュラムなのに、学生さんが行きたがらない。修士で就職しますという学生さんが多々います。え、何で、という話をしたときに、やはりどこかここかに様々な魅力――彼らが思うところのその先の魅力だとかとかみ合っていないのでしょう。
確かに安田先生が言われるように、地方の感覚は地方でやはりありますよね。おっしゃるように。テニュアトラックの活用のされ方も多分、大きい大学とは違う活用のされ方がされているかもしれないですし。おっしゃるとおりだと思います。
樋口先生、どうぞ。
【樋口委員】 さきほどの安田さんのお話を聞いて、宮崎大学のテニュアトラックが、次のプロモーションを考えた有期雇用だったのだと思いました。私の経験の中には、教育選任義務のついた有期雇用もあって、担当講義のない前期に、所属大学の若手の留学支援に申請を希望しても、90%専任義務を理由に日本を離れてはいけないと言われたことがありました。ルール上仕方なかったのかもしれませんが。
このような経験を通して、有期雇用では、若手研究者の先のキャリアを見据えて、大学がどのような制度・環境のポジションを用意するかということも含めて考える必要があると思いました。パターンに合わせて、うまく設定すれば、安田さんのおっしゃっているような若手育成も可能だと思います。
【安田委員】 まさにおっしゃるとおりで、地方大学でも破綻しているテニュアトラックで高すぎるハードルを若手に課して、みんな優秀な人が途中で抜けていく本末転倒な運用も存在したことはたしかです。頑張ればテニュア資格が通るというテニュアトラックならばよいと思います。
【樋口委員】 本当にいろんなパターンがあると思うので、むしろそれは、有期・無期だけの話でなく、若手研究者の先を見据えて大学がどう雇用をセッティングするかというところも含めての議論になると思います。有期雇用のマイナス面だけをみるのではなく、ぜひうまく活用してほしいというコメントです。
【狩野主査代理】 今のを伺いながら思ったのですが、先ほどの私の整理でよろしければ、主語が「雇う側」のときに、どういうセッティングをすれば皆さんに元気が出るのかというアイデアというのでしょうか、というのを上手にまとめておくことも、もしかして「政府」という主語でできるかもしれないと思ってお伺いしました。
例えば無期雇用に設定するのであれば、「こういうことを設定してあれば、何とかずっと回る」という情報を、実例付きで紹介してもいいものがあれば出し、有期雇用の場合であったとしても、例えば今、安田さんがおっしゃったような、「デューティーを少し減らす代わりに有期雇用なのだが、したがってゴール設定はこういうふうだというときには、これだけ元気が出ている」という、うまい何か上手な表現があると、「雇う側」も情報が取れてよいというふうに、聞きながら思いました。
以上です。
【川端主査】 もともとテニュアトラックは、パーマネントのポストはあるが、その前を有期雇用にして、デューティーを落として頑張ってもらって審査をしてという、そういうスタイルです。制度ができた初期のころは運用がむちゃくちゃな大学もたくさんあって、ポストがないのにテニュアトラックをつくるみたいな、そんな訳の分からないところもあった時代もありましたが、今はさすがにそのような大学は非常に少ないと思います。ただ、それ以上に組織の実情に合わせた発達のさせ方があって、改めてチェックするのがよいかもしれないですね。グッドプラクティスとして展開できているものがあれば、それはそれで有期雇用のよい例になります。
で、最初に安田先生が言われたのか、要するに能力の評価のさせ方も、テニュアトラックも研究一本のテニュアトラックでないテニュアトラックもあっていいと思います。だから、そういうようなバリエーションが出始めているというのも、見えやすくはなりますよね。一般的な人事では評価方法の詳細が表にあんまり出てこないので。テニュアトラックの審査だと当然、その審査の内容だとかいろんな基準だとかが出てくるので、受ける人々にとってわかりやすく面白い形で出てくるかもしれないですね。なるほど。
【狩野主査代理】 もう一回いいですか。先ほど申し上げたことに関係するのですが、大学の経営側に関係してきて思うことなのですが、自分がそういうことを経験した立場のときに持っていたものの記憶がやはり次第に薄れるのです、残念ながら。正直なことを言って。
それの結果として、あるいは自分が経験したときとは今は違う状況が起きているかもしれないのにもかかわらず、そうした時代の変化を把握できないうちに「制度を決める側」に回ってしまうと、よかれと思ってやったつもりが、実は今の当事者各位にとっては良くないということが起きるのだと思います。
そういう意味でいうと、逆の立場に今度あることを想像すると、自分が自分の運命を誰かに預けている、つまり自分が制度を決められる側にはいない状況で、自分の運命に関係することって、なかなかやはり発言しにくいと思います。
したがって、ここのコミュニケーションを何とかよくする方法等を考えないといけないのだろうと思うのですが、それを一体どうやったらいいのかということも、実はこの中にもしかして入っているかもしれない気はしてきました。
それが、本当は各職場でできれば一番よいのですが、もしそれだとやりにくいということがあったときに、そうはいっても政府で全部まとめるとすると、1万人もおられる方々全部に聞くわけにはいかないし、各場所や組織の特徴もあるし、そこはどうやって何かルールであるかお金であるか分かりませんが、設計したらうまくいくのだろうというのは、今聞いていて思った点でした。
【川端主査】 どうぞ、川田先生。
【川田委員】 私も、今までの話と思っていたことを併せて、例えば5ページ辺りの検討課題の中で、有期雇用についての考え方として、多分様々な組織等が置かれている状況ごとに違いがある、いくつかの異なる考え方がありうるということを前提にした上で、有期にすることの意味、逆から言うと、実は無期でもやろうと思えばできることがあるのではないかという話を整理するようなことがあってよいというふうに思ったというのが一つです。
あと、少し話のレベルが変わるかもしれませんが、関連して、前回も、また今日も議論にあった、外部資金を使うときの使える幅というのは、実はこの話に影響し得る話かと思います。
要するに、幅が限られているというのは、一般的な労働法でいうと担当する職種がとても限定されて、その担当する職種がなくなってしまったら、もうほかに異動させることもできないというケースに近いような状況だと考えられて、それよりは、できることの幅がある程度あるような状況であるほうが、もともとの仕事がなくなったときに、ほかに移るということがやりやすくなるという話につながり得ると、少し今考えたところです。
【川端主査】 なるほどね。そうですよね。
樋口先生、どうぞ。
【樋口委員】 今の御意見を聞いていて思い出したのですが、まとめのところのセーフティネットに、働く側が職をキープできるように、次の職探しのための期間をプロジェクトにプラスできるといいのではないか、という議論があったと思います。例えば、5年プロジェクトの予算において、5年で予算が終わってしまうと、雇用された研究者はプロジェクト終了前に次の就活をするので、実質、最後の1年はプロジェクト雇用の研究者がいないという問題もあったように思います。予算の使い方の制度を見直すという話です。今の川田先生のお話を聞いて、その点を付け加えてもらってもよいと思いました。
コメントです。
【川端主査】 そうですよね。
【狩野主査代理】 いいですか、1つ。事務局の皆様が答えにくい内容かもしれませんが、もしお答えになれる範囲があれば、というところは、今のプロジェクト経費を財務省から受け取られた場合に、その中に含まれる人件費の使い方の自由度は、どのぐらい余地があるのかということ。今のお話みたいな。
つまり、そのプロジェクトの中で終了する必要があるというのは、国の法律的などこかで決まっているのか、あるいは運用のところなのか。もしそれが分かれば、今日の議論が少し、次のステップに行き得ると思ったのですが。お答えになれなければ結構です。
【川端主査】 どうぞ。
【髙見人材政策推進室長】 つぶさに今、制度的なところを把握しているわけではないのですが、ただ、我々が運用していくときには、人件費の部分だけ、例えば1年間分空いてしまったから大学の中にプールして、あるいは他のことに使えるようにしてもよいという運用はしていないと思います。
それは運用上していないというところはありますし、それが何らかの法制度上の要請かというところは確認が必要ですが、ただ、やはりこの研究プロジェクトに関する経費として人件費も出していると思えば、当該プロジェクトに関するところで完結させるのが当然の前提のようなところだと思います。
そのため、そこを柔軟化するというところを攻めていくのは、やや厳しいのではないかという感覚は持っております。
【狩野主査代理】 例えば、間接経費的な言い方があり得て、事業費があって、人件費の部分はもしかすると間接経費的な意味合い、あるいは、今のような年限が終わりかけのときのお金に関しては、間接経費は組織が使えるものとして渡すので、その中で措置してという言い方がもし可能であると、もしや、現行のルールと整合的なままで、今の話が先に進めるということがあるかというのも思ったのですが、どうでしょうか。
【川端主査】 前回も出しましたが、やはりプロジェクト5年に対して、そこで働く人たちの任期が断片化していく。要するに、5年任期は3年で次のポストをやるとあと1年半が空いてしまって、それをまた新しい人を採って仕事をさせたときに、パフォーマンスを考えたらどう見てもよくないという。
だったら、5年走った後に次のポストを探せる1年があるみたいな制度があるとよいと思います。そのための人件費というのが、例えば間接経費的な基金化ができると活用しやすくなる。現状、今の間接経費は使える用途がもう限定されているので、このセーフティネット用に使える資金として別途配置されるとやりやすい。ただ、繰り越すときにね……。と思いながら、さっきからぼうっと。中期計画の4期5期繰り越すときはどうするのかと思いながら。
でも、それは制度論なので。要するに、パフォーマンスを上げるという立場からもそれはあったほうがよく、人材が活躍、育成されるという意味でもあったほうがよい。これ、ドクターの就活と一緒なのです。特にこちらは雇用されている人の話だから、いい制度になる気もしますけどね。
【川田委員】 少し的外れかもしれませんが、そのプロジェクトの事業の中に、例えば若手人材の育成という考え方というのは入っていないのでしょうか。
【川端主査】 はいどうぞ。
【生田人材政策課長】 一番根幹にあるのは財政法上で、日本の場合、単年度主義というのが変わらない限り、やれることの限定はあると思います。ただ、先ほど話がありましたように、間接経費については、かなり今柔軟化した運用が進んできているはずで、国立大学も今様々な規制緩和をしていく中で、間接経費をある意味プールして、経営執行部の経営戦略に基づいて使うというやり方は増えてはきております。ただ、問題は稼げるというか、外部資金を取れる大学は多分それができるのですが、取れない大学は、至って結局それがリーチでないというところはあると思っておりまして、あとは、若手人材育成のプロジェクトなのかどうかはともかくとして、なるべく今、区切らないような予算措置の仕方に政府としても変わっていこう、後は、単年度をなるべくうまく泳ぐためにも、基金化のようなものもうまく使いながらという流れと思うのですが、そこはお互いの知恵の出し合いですよね。
【川端主査】 そうですね。あと、間接経費に産学連携強化経費というのがさらに出て、それの第三の間接経費みたいなものが出てくるといいなというのが1個と、それからさっきの、もうかるところはできるという話なのですが、もうかるところが困っています。もうけていないところは別に困っていません。それは運交金でやればよいのですから。その中でやるのだから、全部パーマネント化しようと思ったらできる制度を自分たちで変えているだけだから、それは変えればいい話と思うという気はします。
【川田委員】 少し話が大きくなり過ぎるかもしれませんが、要するに、単年度主義というのも、究極的には財政規律をしっかりするための手段であるので、その財政規律という観点から考えたときに、何か、例えば場面別ですが基金化みたいな動きもあるため、何かどこか動かせるところはあるのではないか。逆に言うと、財政規律の観点から譲れないところというのはしっかり押さる必要があるということにはなると思います。
【狩野主査代理】 今、「仕組みを大事にする」という考え方と、それから何というのでしょうか、「組織立てを大事にする」という考え方と、それに加えて「個々人も大事にしよう」という感覚が入りつつあるのが今回のこの話であるようには思うのです。そのときに、今までの仕組みの中ででき切らない、その「個々人を大事する」仕方があったときに、とはいいながら、あまり大きなルールを変えないでも、その気持ちを表現できるにはどうしたらよいかということに今なっている気はします。
【川端主査】 おっしゃるとおり、宮崎さんが最初のほうで言われたように、これは言わばメンタリティーの話の部分がかなりな意味を持っている。要するに、アカデミア全体に対してとても不安がっている人たちがたくさんいて、本当はもっとアカデミアに行きたいのに、躊躇するメンタリティーに対して何が発信できるかということになればと思います。そのときに、ではパーマネントで、みんなパーマネントですよというのは原理的に無理な話なのですが、いや、でもフローを考えたら十分流動しているから、みんな、頑張ればどうにかなる世界観というような、そんな話も含めた発信のさせ方がどれほどできるかが重要な気がします。
ちょうど宮崎さんのほうからどうぞ。
【宮崎委員】 今のお金の問題って、非常に微妙だとは思うのですが、やはり狩野先生がおっしゃったところはなるほどと思ったのは、人に寄り添う制度をつくるというところです。我々も財務省あるいは会計検査院から言われて、これは目的外使用等と様々なお叱りを受けることもあるので、そういう意味での役所側からの締めつけというのは我々のところもかなり今ありますが、一方で、人ありきの組織、大学なんかは特に教育という観点からすると、人ありきの組織なので、例えば、可能かどうかは分からないのですが、そのプロジェクトの予算のところにきちんとミシン目が入っていて、事業費と、それからそれを実施するプロジェクトの雇用費というのは別のお財布になっていて、例えば残ったお金というのは、ミシン目をつけるときに、もちろん事業のための人件費には使うが、その中に一種、先ほどの川田先生がおっしゃったような人材育成みたいな趣旨を読み込ませているお財布をつくっておいて、それで余ったとしても、次のプロジェクトが走るときに、その一部を基金のように動かして、人材育成をする、若手を育てていくという予算として使えるような何か工夫をしていくことができるとよいのではないかと。
科研費の基金化のときには、特に皆さん助かっているので、あのような基金化が可能なものと似たような仕組みをつくっていくと、すごく活用できると思いますし、やはり私は、必ずしも全ての雇用がパーマネント化がよいとは思いません。産業技術総合研究所も、パーマネント化したところは、背に腹は代えられずというところ、逆に何か悪いポイントはあります。先ほど安田先生がおっしゃったみたいに、5年頑張ろうといって、その間すごくみんな一生懸命仕事をするので、アクティビティーは、きっちりその成果は確保できるという、テニュアトラックのよさはあります。これはテニュアトラックからパーマネントになったら、みんな急に仕事をしなくなってしまうので。それって結構あります。パーマネント、いわゆるテニュアトラック・ロスという感じになるのですが。なので、パーマネントはパーマネントでの問題意識は若手に対してはあります。
でも、やはり一方で、人に寄り添うと、様々なライフイベントも重なるような、30代をやはり尊重し、次の世代を引き上げていくという観点から立ったときには、やはりメンタリティーの問題だけであればパーマネントを、それから、非常に年限的にもより長めのピリオドで、例えば3年というのは、かなり長いように見えて、研究を始めてみると足りない等あるので、しっかり5年ぐらいのピリオドは、あなたをここで雇用するというような長めの設定ができる、あるいは何かそういう長めに設定しておけばみんな流動します。早いうちに抜けていく人は抜けていくので。なので、そういったような、今の若い人たちの考え方や、そこの自分たちでの選択をプロモーションできるような仕組みというのでしょうか、そういうものがないと、なかなか人は居着かないというのが、みんな企業に流れるのは、そういうものがいろいろと整っているところに皆さん流れていっているのですよね、基本的には。
昔、私たちの時代って、大学に残っても、お給料が安くても、大学に残っているところに対するプライドみたいなものがあって、薄給でも頑張れると思っていたのですが、今の若い人たちは、いや、福利厚生がよくてお給料がよいところに行きたいから、同じ研究をするのでも給料が高いところに行こうと言ってしまうような世代になってきているので、社会がそうなので、やはり人を大切にするという制度を大学は、昔はスパルタでもみんな行ったのですが、そうでない構造改革というのは、文部科学省がやるとしたら、そういうところと思います。
【川端主査】 今のはとてもよいお話で、私も思うのですが、要するに、雇用のときのミニマムの期間というのがあってよい気がします。1年でなく、最低3年という、そんな束があって、だから、プロジェクトはあと1年半で終わるかもしれないが、その先の1年半の3年間あると言っているうちに、宮崎さんが言うみたいに異動していくというのがね。そこでずっと居続けるのではなく、3年ならどこかでポストがあるとぼんやり思える、あるいは様々なことは考えるというのがあるという。だから、そのミニマムの期間というのが、何かどこかに設定できるといいなと。
もう一つ、さっき川田先生が言われたみたいに、エフォートの話でいうと、今、文部科学省系だったら、事業の中のエフォート管理で、専念義務の部分に2割とか、要するに自由な時間、例えば科研費に申請ができるなど人件費がそういうふうなつくりになっているはずなのです。このプロジェクトのためのお金はこれで、それ以外に、その人の育成のためとしての使える人件費というのがどこかに――それを明確に考えたら、その先にもそういう人件費が措置されていてもよいという気はします、おっしゃるように。
あともう一個、最初のほうに出てきた、樋口先生も言われた、一本道でないような、都度都度使えるようなポストみたいなものがたくさんあっても、それがもっとオープン化されているとよいのですが。何かJREC-IN Portalというのもそういったポストがなかなか見えているような見えていないような気はします。安田先生、やはり見えているのですか。
【安田委員】 私は定期的に見ています。過去のJREC-IN Portalの登録が残っているので通知がいまだに少し来ています。結構みなさんあれは見ているのではないかという気はします。
【川端主査】 仕事の形自体も、より様々なタイプの仕事も含めて、公募なのか分からないですが、何かそういう募集がたくさんあるみたいな話が出ていて――まあ、地理的な問題はあるのでしょうが。幾ら出ても、宮崎に行きますかって言われたら、いやちょっと待ってという話で、それが地元にあればという、そんな気はしますけどね。なるほど。
【安田委員】 JREC-IN Portalは今、主にアカデミアに限られると思うのですが、例えば企業の研究職も同列に入れてもらって、同じような科研費の区分で関連するところで募集があると、JREC-IN Portalを見ている人も、次の職を探すポスドクの人も見つけることがたやすくてよいように思います。
【狩野主査代理】 それは人間がすると大変なことになるので、何か機械学習的なものを活用してそういう連結が図れるような経費があってもいいかもしれませんね。
【川端主査】 そうですよね。
はいどうぞ。
【髙見人材政策推進室長】 JREC-IN Portalなのですが、企業のポストも、今も掲載できるようにはなっておりますが、なかなか企業の方が掲載しようとするにはハードルが高いというところがあるようでして、そこをいかにより多くの企業からポストを出してもらえるようにするかということで、システムの改修を図ろうと今JSTのほうでしていまして、そこの実際担当に携わっていらっしゃる方が、企業からいらしている方というところもあって、どの辺が使いにくいか、あるいはデータの取扱いというところを具体的に分かっている方に、今改修に携わっていただいているというような状況ですので、いつ頃までに多くの企業からのポストが来るようになるのかというところは、少しまだ調整中といいますか、進行中なところはあるのですが、その方向で今やろうというようには今JSTとは取り組んでいる最中という状況です。
【狩野主査代理】 そこでぜひ科研費の細目では語り尽くせない世界があるというのを少し認識していただいて、それはそれで、また変化のもとにしてやっていただけるとよいと思うときもありますね。それぐらいの言い方をしておきます。
【川端主査】 樋口先生、どうぞ。
【樋口委員】 少し前の私の発言に追加なのですが、技術補佐員とポスドクの間のようなイメージの働き方がない、そもそも職名がない、と思います。例えば子育てしている間に、現在のポスドクのように次のステップアップを狙って、ばりばり働いて、論文を書くのではなく、しかし、技術補佐員でなく博士の学位を持って研究するというような働き方、人件費の設定が使えるとよいと思います。その職についている間は当然研究のスピードは落ちるので、それに見合った評価にはなるとは思うのですが、そのような選択肢があり、そして、それを経た後に、また戻ってステップアップを目指していけるという道があると、ライフイベントと並行して研究しやすいと思いました。現行制度の一人前のポスドクあるいは助教になると、その制度の中でほかの人と同じお給料をもらい、同じように働くことが求められる。しかし、そうではない、例えば企業における時短という働き方のような職種が、大学にはないと、ふと思いましたので、追加をお願いします。
【狩野主査代理】 私が知っている、アメリカで働いているイギリス人がちょうどその働き方をしておりまして、その人がいないと、多分そのラボは回りません、見ていると。というのは、教授はどちらかというと、今の大学のトップが求められるような仕事にだんだんなってきていて、アメリカで、お金を稼ぎに行く、それから宣伝しに行くというような仕事で、要は現場研究室には居ないわけです。そうすると、研究室を誰が回すのかという、実験科学は特に、ということになります。そこに関して、自分は管理職に「ステップアップ」したいわけではないが、研究は好きで活動をやっていて、その人がいると論文もどんどん出てくるというような人がいてくれることによる何か安定感がきっとあるのです。それはでも、「技術補佐員」ではなく、「ポスドク」でもなく、それからいわゆる「教員」でもなく、「リサーチスペシャリスト」とでも呼ぶのでしょうか、しかしそういうことに長けている人の活躍していただく方法として、そういう仕事があったなと思って見ておりました、アメリカでは少なくとも。
【川端主査】 樋口先生、今の技術職員というのがいますよね。それと別個に技術補佐員というのは、事務職の中に、パートタイムの人等、様々な形で存在すると思うのですが、それ以外に何かいるという感じなのですか。
【樋口委員】 そうですね、例えば、こちらが全部条件の設定もして、実験をお願いする形ではなく、このようなデータが必要だと伝えたら、方法や条件を自分で考えて実験をできる人がいます。しかし、お給料や職階の設定がない。
【川端主査】 そうですね。おっしゃるとおりですね。
【樋口委員】 はい。それで、そういう職階があると、そのような働き方の選択ができるのではないかという意味です。
【狩野主査代理】 今何か研究職の中で次に行こうとすると、みんな教員か、あるいは管理職的リサーチャーにならないといけないという風潮はあるように、この国では思っているのですが、そういう能力も全員があるわけではないという。そのときに、何かつらい思いをしてそちらに行くよりかは、せっかくだから研究能力を生かしきっていただくような働き方もあってもよいという意味だと思います。
【川端主査】 多分、技術補佐員というような形で、今言われたみたいに、関係する職の内容はとても広いのです。秘書的な人もこの頃はこの職で雇用していたり、それからまさに技術職員のレベルの人だが技術補佐員になっていたりという、様々な人があって、なのに給与がとても安いのです。しかも5年任期なのです。だから、本当だったらこれで積み重ねられるような職として成立していてもいいかもしれない。
【狩野主査代理】 はい、というのがあって、その方々がそういう働き方もできたと思うのですが、何かそれをさせるとどうたらこうたら議論があって、どちらかというと、あまりそういう働き方というか、雇い方をそうでなくしたという経緯があったと思います。
【川端主査】 今、うちは直接やりませんが、機器共用の中でも、要するにオペレーター的な動かし方ができる人で専門的な知識があって、しかも、ある意味ではその装置に張りついている必要はなくて、ウェブで相談相手になってくれるだけでも、家からでもできるみたいな、そんなようなやり方もあるのではないかという話も何度かやったことがあります。なかなかそういう人にちょうどいい人と、あと、今本当に言われた処遇の話がどうしても限界になってしまい活用ができないという。ではそういうパーマネントのポストを持ってくればよいかというと、今度は事務職員全体のポストとの話になったりするので。とはいえ、今おっしゃったようなポストがより明確になっていてもいいような、それはおっしゃるとおりだと思います。
安田先生どうぞ。
【安田委員】 ありがとうございます。私は瀬戸内海区水産研究所に長いこと出入りしていたのですが、そのときに感じたのが、地元のパートタイムの女性、アルバイトの方が実験のとても重要なところをたくさん担っていて活躍しています。時に、研究室はもはやその人がいないと回らないような事態も実際にはあります。5年任期があることで、6か月間は一回職場を離れる必要があり、初任給も振り出しに戻ってしまう。救済のための期限が逆に雇われている本人からしても全然幸せではなくて困ってしまうケースが多々あります。研究機関や大学によっては、もう5年任期、10年任期のときに、パーマネントか、パートタイムかというところで選ぶことになって、一応パーマネントにしてしまうことがあるらしいのですが、そうすると、今度お金が切れたときに訴訟問題になってしまうということで、そういうリスクで実際何かいろいろもめているという話を聞いて、そういう意味での技術職員の有期雇用の年数、あるいはそれをパーマネントにしないといけないという選択をする必要があるという実態はお伝えしておきたいと思います。
【狩野主査代理】 それが始まったときを思い起こすと、結局、「雇う側」が気に入らない人が、「雇われる側」はその役割が気に入っていて長く居たいといったときの行き違いの回避の仕方が結局開発できていなかったということをもって、その任期をつけるという方策に出たという理解を私はしているのですが、そこの何か上手な「片思い」の解消法というのですかね、それがうまくいくと……。
【川田委員】 多分、先のほうに行ったときに検討課題にはなるだろうと思っていました。無期化した場合に、でも、予算がなくなってしまう可能性があるとすると、予算がなくなってポストを維持できなくなったときにどうなるのかという話はどうしても出てきてしまうと思います。ただ、労働法の一般的な考え方からすると、それでも無期転換の一般的な要件を満たす程度に有期雇用が続くのであれば、基本的には無期転換をしてくださいということなのだと思いますが、そのときの契約の結び方、あるいはポストがなくなってしまったときの対応の仕方をしっかり分かっておくというか、整理をしておくというのは課題になると思います。
【狩野主査代理】 確かに。そこはだから、政府ができることの一つかもしれないですね。その応募のカタログ化というのでしょうか、こういう可能性はあるかもしれないということでしょうか。
【川端主査】 多分そういう話を一生懸命やられている宮崎さん、どうぞ。
【宮崎委員】 まず、産業技術総合研究所においてですが、実は、ドクターを持った人で、高度専門技術者というポストがあります。2年ほど前からつくられましたが、これは、先ほど樋口先生がおっしゃったような、学位も持っているし、これやってねといったら、それをばりばりやれるというポジションなのですよね、これは。では研究職に戻れるかと言われると、少しまだそこに戻ってくるパスというよりは、研究者で、研究力はさほどないが、テクニカルにはとても重要であるというような人を流すパスをつくりました。前に私発言したかもしれませんが、大学の中のポジションの数が、やはりとても限られて、とても狭いので、キャリアパスのイメージがたくさんできないというのはありますよね。いわゆる助教で准教授のような、ある決まったポジションしかないように見えるので、そうすると、その能力に合わせて、あるいはタイミングに合わせての配属の仕方が多様化しないというような問題点があるかと思うのですが、そこは、例えば産業技術総合研究所側では、そういう多様なキャリアパスのためにはポジションをつくっていくという。そこは、逆に言うと、流動性を高めるためには、役所側からしっかりそこのポジションを全ての大学に適用できるように、個別の大学でカスタマイズするのではなくて、他の大学にも移れるようなポジションとしてつくっていくということが1つ必要かと思います。産総研の場合は、そこを外に出すというわけではないのですが、いわゆる部局ごとに雇用するというよりは、もう少し違うところまでその人を配属できるようなシステムのためには、全体の設計が必要なのかもしれないと思いました。
あと、やはりその辺りで、我々も抱えている問題ですが、評価の在り方というのが非常に難しいと。どれだけの仕事をしたら、では研究職のほうに戻れるのか、他の評価制度の中で、他の大学に行こうと思ったときに、そんなポジションがない人が今度来るとなると、どのくらいのレベルの人かが分からないというところで、評価制度が多分大学ごとに違うと思います。どうしてもその流動性を高めるために分かりやすいのが、論文数、あるいは論文の業績リストみたいなことになって、成果のクオリティーをそこで見定めるということになってしまうので、ポジションをつくって様々な職種をつくった場合には、その評価の制度の在り方がまたとても難しくなると思います。
少し私、大学の中でどういう評価制度を動かしているか分からないのですが、産業技術総合研究所は結構評価制度が細かいので、とても能力評価と、単年度ごとの業績評価と、長期評価と様々動かしているのですが、やはりそういうものを基軸に流動性を高める、この人はスコア幾つのようなものが、どこに行っても同じようにある程度推しはかっていけるようになると、本当は動かしやすいのだろうなと。
それでも、我々のところでも、部局ごとの評価の凸凹はあるので、そこはある程度スーパーバイズ的に上が見つつ、ここの部署はすごく評価が厳しい部署等を凸凹を見つつやるのですが、そういったものも、人を動かす、あるいはポジションをつくっていくときには切り離せないポイントかと思いました。
【川端主査】 今おっしゃったように、やはり流動性のベースは、研究者の評価の基軸、他大学に行ったとき、あるいはほかのところに行ったときに機関の評価の基軸って、それは今までは、やはり論文数、あるいは外部資金、産学連携をやっていた、地方創生をやっていた等というのが、次第にそういうプロジェクトをどんなものを回していたという経験のような話が、やっと評価の中に入り始めた。これはまだ大学の研究者・教員のゾーンは分かるのだが、先ほどの例えば、博士を持ってサポート部隊に入っている等、そういうゾーンの人たちにとって、今本当におっしゃったように、他の機関に持っていったときに評価される基軸が何かというのはとても難しい。一生懸命URAだとか、そういう話を、今共通化しようという話があっても難しいですよね。
髙見さんどうぞ。
【髙見人材政策推進室長】 こちらのワーキングと並行して、もう一つのワーキングで、研究開発マネジメント業務人材に係るワーキング・グループというのをしているのですが、そちらの議論といたしまして、やはり現行のURAをはじめとした研究開発マネジメント人材及び技術職員の各機関における人事制度が必ずしも確立されていないというところを、現状であり、かつ課題として捉えており、機関ごとにそのありようは異なるとは思うのですが、文部科学省でグッドプラクティスを集めて周知することが中心になるとは思いますが、各機関における人事制度のガイドラインをつくっていこうという話が今出ております。その中に盛り込む項目といたしましては、まさに評価の在り方としてどのようにやっているのか、あるいは職階をどのようにつくっているのか、そして昇給・昇格の要件としてどういうことを要件にしているのか、そういったところはぜひ、グッドプラクティスを収集するにしても、ポイントとして捉えながらつくっていくというのは1つ今考えようという話をしております。
【川端主査】 多分、URAも、それが産学連携も絡んだ人たち全部をまとめて、今一番つくりやすい時期かもしれないですね。マーケットが大きくなっています。だからこそ、今、大学間で引き抜き合いをしています。そういうものがあるがこそ、価値がはっきりしてきます。今まで学内だけで価値を見ていたのが、お互いにほかの機関で、あれはすごいぞといって引き抜いて、処遇が決まる等様々なことが起こってくる。そうすると、今までの給与体系と全然違う給与体系に次第になりかけている。という意味で、今の話の働き方の別の、URA、あるいは産学連携、地方創生という人材のゾーンはゾーンで、また動き出しているという。そこに向かって大学の先生たちが、いや、あちらも面白そうだといって動き始めるという、そんな話が起こりつつあるというのは確かに、どこかで表に出てもいいような気がしますよね。
【狩野主査代理】 少しだけいいですか。
【川端主査】 はい、どうぞ。
【狩野主査代理】 人材委員会の全体のほうで今出ている話題の中に、新しいことをつくっていける人たちをどういうふうに高めるかという内容の紙を作る作業が入っています。そちらのほうで、新しいことをつくっていくためにはどんな能力セットが必要かという内容が含まれていまして、そこの3つほどの柱にできるか、あるいはその下位目標として幾つかあるか等を議論しています。その3つの柱は、1人の人が全部持っていろという意味でなく、個々の能力を集めて集合的に実現すると、全体として新しいことが出てくるという発想にしようという話になっています。
そこと連動させるとすれば、その評価システムのような話は、それらの柱に対して、どの柱が各個人ではどのぐらい強いのかという何かポートフォリオのようなものにして表現することを、表現するだけは例えば最低限の必要にして、それをどう使うかについては多様性を尊重というような言い方にするのは、もしかすると一案かと思っていました。
何でこういう言い方をしたかというと、例えば若手研究者の採用について政府が努力目標をつくる等されると、それ自体は非常に大きな成果を生みますが、どうしても力が強ければ、影と光と両方とも強いので、「全員する必要がある」と設定してしまうと、大変なことになるときも、やはりあるわけですよね。なので、政府が実施する中で、どこまでは「全員がしないといけない」という規定にし、どこから先は「多様性を確保できるように頑張る」かということも、少しやはり最近考える必要があると思っています。そこは今回のこの内容をつくるに当たっても、少し注意深く考えられる範囲は考えておいたほうがよいと。予想がつかないこともたくさんありますが。ということを思いながら発言しました。
【川端主査】 おっしゃるとおり。
もう一回人事的な話に戻ると、ヒアリングしていてもそうですが、やはり機関ごとにそれなりの最適化はされているんですよね。例えば地方だからといったら、やはりそこは任期つきよりはパーマネントで採らないとよい人が来ないから、もう全部パーマネントにしているという、そんなような動かし方もあるし、いやいや、もっと競争的な環境の中でというところもあり、様々な形での運用のさせ方があって、だから、1個のグッドプラクティスで全部は終わらないと思うけど、ベースの何かは今回のこの話で、その上に様々な多様性が乗っている等の工夫ができるとよいのではないかと思う。
先ほどの話に少し戻ると、働き方の話は、僕はとても大切な話になっていくのだろうと思っていて、かなり前から思っているのですが、若い学生から見たときに、一本道の働き方というのが、とてもそれに対して抵抗ある若い人がたくさんいます。ラボでばりばりしている先生の下にいる大学院生って、あのようにはなりたくないというような感じで逃げていく、あるいは何かすごいラボほど学生が集まらないというような、だから留学生だらけになる等、何か様々な話があって。だから、いろんな形があっていい中で、それを志向する人もいてよいという、その様々な形がというところがより表に出て、それが働き方の中にも入っていればいいのですが、若干先ほどの話に絡むと、そういうポストをパーマネント化するのであれば、それはまた大変なことかもしれなくて、そうすると、本来パーマネント化する必要がある話のポストが減るあるいは増える、何かそんな話になる等、様々なことが起こるところをどう調整していくかは、各大学、あるいは外部資金の中にも何かそういう制度が入っていてもよいという、そんな気はしますね。
なかなか面白い話が次第に出てきますね。今言っていただいている話は、ぜひ様々な形で盛り込んでいければと思います。
少し私、言い方を変えると、アカデミアというか、研究の、そのバウンダリーは民間も入っているから様々なものがあってよいが、流動性というのが1機関で閉じていないのがアカデミアではとずっと思っています。だから、我々の中でも採用するに当たっては、1機関でずっと行っている人間よりは、海外へ出た、あるいはほかの機関でやっていたという人を評価します。やはり、そういうところを見てきた人だという。ということは、1機関の人事制度でありながら、アカデミア全体で流動する人事制度が、要するに、若い人たちにとったら、この大学はそうなのだではなく、アカデミア全体はこうなのだという。だから頑張ればそれなりに生きていけるような世界がそこにはあるのだということが何か示せることが重要かという。それが民間とは違うところのような気がするのですが。
【狩野主査代理】 今のお話で思い出したのですが、アカデミアの人事の決まり方って、比較的学協会ベースの知り合いでつながっていくということをよく見かけます。それで、そこについての言及は、一応政府としては今回していないのですが、例えば、新しい領域をもしサポートしていきたい等ということであるとすると、立ち上がりかけの学協会のようなものが関係する職のリストのようなものは、あまり最初には明確でないので、そういうときに何かサポートをするような発想があるかどうかというのを今思いつきましたので、言ってみました。
例えば大学でいうと、何か私が勤めているところに今、「起業部」なる部活動があって、大学本部が少し支援してみる、あるいはデータサイエンス部というのがあって、それも大学が教員も含めてサポートするような体制にしている等の例があるのですが、そういうのは、多分学生だけでもし盛り上がっていたとしても、なかなか力を持ちにくいところが、大学本部が少し何かの機会にサポートするようなことをすることによって、その動きが盛り上がっていくみたいなものを、今の勤め先では見ます。
というような働きをすることによって、先ほどから少し初めのほうに話があった、学者の中では比較的新しいトライアルなのだが、社会としては、そういう学者の働き方も必要だと思っていることをサポートするような可能性があるというのを、頭を今少しよぎったので、言っておいてみました。あまりやると、政府が大きすぎてしまう可能性があるのであれですが。失礼しました。
【川端主査】 新しい世界ですよね。
諸般いろんな切り口でどうぞ、御発言ください。
安田先生、何かあります?
【安田委員】 いや、何か少し話がずれてしまうかもしれないので、流動性という……。
【川端主査】 どうぞ。
【安田委員】 インクルーシブ担当を長い間大学でやっていて、今、流動性という面で1つ困っているのが、女性の割合を増やす必要があるのですが、なかなか女性の教員で、特に何か上位職の人を増やすのが難しいという面があり、絶対数が少ないということ、もう生活の基盤がある中で動いてもらうというときに、やはり多分男性が動いてくるよりも女性が動いてくるほうが何か少しハードルが高いというのがまだ社会的にもあるのというところの両方を感じており、すごい苦し紛れなのですが、パーセンテージを増やすためにはクロスアポイントメントや、部分雇用をもう少し増やす必要がある等、様々な話が出ている状況なのです。
例えば、多様な働き方の文脈でいうのであれば、クロスアポイントの中でも、遠隔雇用ができる、あるいは少しまだ私の頭の中でもまとまり切っていないのですが、樋口先生がおっしゃられていたような、100%のフルではないが、研究職につながっているという意味で、エフォートとしては100%でなく、例えば30%、40%、60%か分からないですが、そういう割合で、博士人材や高度人材を雇用できる等、そういうものがあると、女性の割合を増やそう等、そういうときにも、流動性という意味で所得が増えていいかもしれないですし、今子育て等、様々な意味でキャリアアップのペースを一旦落としたいと思っている、男性でも女性でもそういう人たちが、フルではないが研究職に関われるという形で、何かそういうのも1つ可能性として考えてよいというのを思っています。思いつきの発言で申し訳ありません。
【狩野主査代理】 今の点は、ありがとうございます。それも人材政策課の範疇だと思うので、少し話を広げてみます。私もそういう役割に勤め先でなっているので、安田さんが困っておられるのは知っているけれども、それでも東京の方角にみんな動いていくという議論に、地方に居るとなっております。結局、でもその比率を増やすということの意味合いは何なのかというと、違う背景を持っていると違う意見が出るだろうという意味合いが強いと思っています。そうなのであれば、別に、おっしゃるとおりで、フルタイム雇用である必要はそこまでないのかもしれないですよね。掛け持ちしていただいても、様々な視点を入れていただければよいということかもしれなくて。
という意味では、場合によったら、政府目標の在り方を少し変更して、でも、そうすると、特定の個人にたくさんの負担がかかるという結末を迎えますが、でもやはり、それであったとしても、少し関わってくる数が増えて、その組織における意思決定のときに入るインプットの種類が増える、あるいは視点の背景が増えるということを先に目指したほうがよいのではないかと思うときもある、というコメントをさせていただきます。
【安田委員】 ありがとうございます。
【川端主査】 少なくとも、働き方が多様になればなるほど、多様な働き方を
する人が10年迎えるはずが、10年で無期転換申込権が生じることが逆に多様性を消していく。そこを超えたらパーマネントにする必要があるから、そういう働き方の人は、いや、それ以上はいてもらうのは困るみたいな話になっていくと、それは本来の制度の趣旨と逆な方向に行く。先ほど川田先生が言われたように、要するにパーマネント化という制度自体の持っているものと、アカデミアの合わせ方、本当に、普通の労働者と同じ考え方が、今はそのままのだが、今後の動かし方で、そこに何か逆に多様性を消していくルールにならないのかというのは少し気になりました。今だって、先ほど少し出たように、この人とても優秀で来たが、5年で切る必要があるという、切る必要があるというのは変だけど、5年以上いるとパーマネント化するから、ではこれを、実験補助のような、そういう方もそうだけど、ではその人にパーマネントのポストを渡してよいか等の話になると、どうしてもそこは、今はヘジテートしているわけです。だから、せっかくこんなに優秀なのだが、ここで一旦切る必要がある、そうすると処遇がまた下がる、あるいは上がる、何かそんな話がある等、様々な意味で多様性を消すような動きの部分もやっているのは確かのような気がします。それはそれでいま一度リマインドする必要がある世界かもしれないです。
ありがとうございます。様々な話を聞きながら、あと10分になってまいりましたが。ここは一番と何かお話しされたい方。
【樋口委員】 1個だけ。
【川端主査】 樋口先生どうぞ。
【樋口委員】 これから話すことには様々な考え方があると思いますが、最初に狩野さんが言われた挑戦する期間というのは研究者にとって大事だと思っていて、それは、助教、あるいはポスドクに該当すると思います。これに、連動してくるのが、全員PIあるいは大講座制です。どちらにも、いいところ悪いところというのがあって、もちろん、若い人がPIになるチャンスは絶対必要だと思う一方で、チャレンジングタイムのときには、大講座制だからこそ安心してチャレンジできるような助教のポストも大事だと思います。それらは両方併用して運用されてもよいと思っています。だから、研究者は全てPIでなく、大講座も残すし、若くてPIの人もあり得るというような。
【川端主査】 はい。
宮崎さん、どうぞ。
【宮崎委員】 あまり私の立場から、大学の職員でない立場から言ってはいけないと思ったのですが、樋口先生が言ってくれたので。
長い間思っていることがあって、若手を育てるために若手に早くからPIを任せるというので、皆が小ぢんまりとした個人商店がとても増えていて、そのことが、重要なこともあります。無論自立させるためには重要なのですが、一方で、育ち切らないまま皆が一家のあるじになって、お金は取る必要があるし、研究もする必要があるし、学生も育てる必要があると、あらゆるものを一人一人が個別に持つと、大企業が必ずしもいいとは言いませんが、個人商店が多過ぎることが研究力の低下につながっていく部分もあるのではないかと思っていて、我々の昔の科学の時代をノスタルジックによかったと言うわけではないのですが、大きい組織だからこそ、中での人材育成が実はしっかりできる、あるいは個別にすることによって意見を出しにくいということがあって、やはりある程度の升があって、中で様々なレイヤーの人たちがいて、学生がいて、ポスドクがいてというような中での科学の醸成というのは実は重要ではないかと私自身は思っています。
やがてPIになっていく人たちに、早くから独り立ちさせるがゆえに、やらなくてはいけない業務がとても多くかさんでいて、研究をする時間が取れないということをよく耳にするので、産業技術総合研究所は、研究をするときにチーム体制を取りますが、チームリーダーになるとやることは多いのですが、それ以外の下のチーム員でいるときは、自分が一生懸命働いてお金を取ってこなくても研究に専念できるという時期がある、あるいは、幾つかのレイヤーの人たちと切磋琢磨することで育成していくという体制を取るのですが、大学にはその仕組みが全く欠落してしまってきているので、そこは何か仕組みとして、大学の人はどう考えているのかと長い間思っていたのですが、そこのバランスをうまく取りながら大学を構築していくと、下から見たときの、若い先生が昔の若い頃から、学生実習はする、あるいは授業をする、お金を取るのに必死になる、研究で学生の面倒を見ているという、何かブラックな企業の個人商店の主を見るよりは未来が開けると時々思うことがあります。大学にいない身からしての、少し昔を回顧するところはありますが、科学力の低下の一つにそこはあるのかもしれないと思っています。
【川端主査】 ありがとうございます。おっしゃるとおり。
【狩野主査代理】 1点だけ加えさせてください。
【川端主査】 狩野さんどうぞ。
【狩野主査代理】 助教という枠が、今までトレーニングの期間という捉え方があり得たのですが、最近の業績主義的な考え方の中で、そこがあまりトレーニング期間でない扱いをする必要がある風潮になってきています。そうすると、お金があってポスドクが雇える人以外は、そういうトレーニングの機会を若い人に作ることができなくなってきています。そこも大学で少し困ったと思っているということを付け加えさせていただきます。
【川端主査】 ありがとうございます。この話はね。別にそのとおりで、これは揺れているのだと僕は思います。行き過ぎていますね、
【樋口委員】 両方あってよいと思うのですが、あまりにも職階の名前が少な過ぎます。だから、多様化するには、まずは職階の名前を新たに色々作ってみる。大講座制の助教の名前をそのまま使うと、独立した助教とは違うと思うので、まずはネーミングから働き方の定義を変えて、多様な働き方を浸透させる入り口にできるのではないかと思います。若い時から独りで研究を進めるのが得意な人も、育成されて自由に羽ばたける人もいると思うので両方の働き方があってよい。ただ、同じ助教という一言でまとめられると、ややこしいという気が少ししました。
【川端主査】 そうですよね。だから、テニュアトラック助教等、一時そんな名前や、様々な助教がありました。
そろそろ時間なので、ごめんなさい、ある方向でとてもまとまった格好で終わればよかったのですが、最後はとても大きい話まで行って。でも、そういう話がベースの上にこれは乗っている話だと思うので、今日いただいた話、それから、もしもう一声何かというのであれば、またメールででもいただいて整理をさせていただければと思います。
ではここまでということで、事務局のほうから事務連絡に行っていいですか。お願いします。
【對崎人材政策課長補佐】 本日もありがとうございます。本日の皆様の御意見も踏まえ、先ほど川端主査からありましたように、論点整理は修正等をさせていただきます。まだまとめ切れなかった点もあるかと存じますので、今後、書面審議など別途の開催のような形式を少し主査とも相談させていただきたいと思っております。
また、通常の事務連絡ですが、議事録を本日作成し、また委員の皆様にお目通しをしていただいて、主査に御確認の上で、文科省のホームページを通じて公表をいたします。
以上です。
【川端主査】 ありがとうございました。また2時間ぱんぱんの議事録ができると思いますが、皆さんよろしくお願いします。
というわけで、それでは本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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