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第8節 商務・サービスグループ ···································································· 270
流通・物流政策 ····················································································· 270
1.流通政策························································································· 270
1.1.サプライチェーンの効率化 ·································································· 270
1.2.新たなコンビニのビジネスモデルの再構築 ···················································· 270
1.3.消費喚起 ·················································································· 270
1.4.大規模小売店舗立地法 ······································································ 271
1.5.買物弱者対策 ·············································································· 271
1.6.外国人旅行者等消費税免税制度 ······························································ 271
2.物流効率化······················································································· 272
2.1.概要 ······················································································ 272
2.2.総合物流施策大綱(2021 年度-2025 年度)の策定 ·············································· 272
2.3.自動配送ロボットの社会実装 ································································ 272
2.4.環境負荷の低減に資する流通・物流の効率化 ·················································· 272
2.5.国際物流に関する取組 ······································································ 273
消費者政策 ························································································· 273
1.消費者行政(特定商取引法)······································································· 273
2.消費者相談······················································································· 273
商取引政策 ························································································· 273
1.取引信用行政····················································································· 273
1.1.概要 ······················································································ 273
1.2.割賦販売法を巡る動向 ······································································ 274
1.3.クレジット産業の動向について ······························································ 274
1.4.前払式特定取引業の動向について ···························································· 274
1.5.リース産業の動向について ·································································· 274
2.キャッシュレスの推進············································································· 275
2.1.概要 ······················································································ 275
2.2.キャッシュレス・ポイント還元事業 ·························································· 275
2.3.キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整備検討会 ······················ 275
2.4.キャッシュレス決済の利用シーン拡大に向けた取組み ·········································· 275
2.5.一般社団法人キャッシュレス推進協議会と連携した取組み ······································ 275
3.商品先物行政····················································································· 276
3.1.商品先物取引について ······································································ 276
3.2.商品投資事業について ······································································ 276
サービス産業政策··················································································· 276
1.主要産業・政策に関する主な動き··································································· 276
1.1.サービス産業··············································································· 276
1.2.ヘルスケア・医療機器産業··································································· 280
1.3.生物化学産業··············································································· 282
クールジャパン政策 ················································································ 286
1.主要産業・施策に関する主な動き··································································· 286
1.1.クールジャパン政策········································································· 286
1.2.観光・集客関連産業········································································· 286
1.3.ファッション政策··········································································· 287
1.4.デザイン政策··············································································· 287
1.5.2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた取組 ································ 287
国際博覧会出展事業 ················································································ 287
1.2020 年ドバイ国際博覧会への参加 ·································································· 287
2.2025 年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に向けた準備の本格化 ······································ 288 270第8節 商務・サービスグループ
流通・物流政策
1.流通政策
1.1.サプライチェーンの効率化
消費・流通分野においては、人手不足やそれに伴う人件
費の高騰、消費者ニーズの多様化が進行している中、新型
コロナウイルスの影響によりECの需要も拡大しており、
店舗運営やサプライチェーンの効率化による生産性向上
の実現が求められている。
そのため、IoT技術を活用したサプライチェーンの効
率化を図るため、
2020 年度は取組を以下の二点を中心に行
った。
第一に、RFID(radio frequency identifier)等の
IoT技術の普及に関し、RFIDの発行・貼付に要する
コストを製・配・販の各層で応分に負担し、全体的なメリ
ットが創出できるようにするための検討を行った。具体的
には、実証実験を通じて、サプライチェーン全体にRFI
Dを導入した際の製・配・販各層における導入コスト及び
効率化の効果を検証・数値化した。
この効果検証を踏まえ、
(一社)日本チェーンドラッグストア協会により「スマー
トストア実現に向けた電子タグ(RFID)実装へのアプ
ローチ」が発出された。
第二に、RFID等のIoT技術の活用に関し、コンビ
ニエンスストア及びスーパーマーケット、消費者の家庭に
おけるRFIDを活用した食品ロス等の社会課題の解決
に関する実証実験を行い、店頭における省力化や食品ロス
の削減・廃棄率の低下の可能性について検証を行った。
上述の二点以外にも、
2011 年5月に経済産業省がサプラ
イチェーンの効率化等を進めるために設立を主導した製・
配・販連携協議会(2020 年度時点で加盟企業は 52 社)に
おいて、
2020 年度は以下の2つのワーキンググループを中
心に活動を行った。
まず、1ロジスティクス最適化ワーキンググループでは、
三位一体の返品削減
(納品期限の見直し、
賞味期限の延長、
年月表示化)や配送効率化に向けた取組を継続するととも
に、返品削減実態調査、加盟企業からのベタープラクティ
ス事例の共有、特に優れた取組についてサプライチェー
ン・イノベーション大賞の表彰等、業界全体のロジスティ
クス最適化に向けた普及啓発活動を後押しする取組を行
った。加えて、トラックドライバー不足の課題に対応する
ために、納品リードタイムの延長についての議論を行った。
22019 年度に加工食品流通の小ワーキンググループを新
設し、納品リードタイムを延長する際の考え方と取組の方
向性について取りまとめ、2020 年度は、納品リードタイム
の延長の実現に向け、具体的な内容及び進め方について議
論を行った。
加えて、同協議会に設置されているリテールテクノロジ
ー勉強会において、経済産業省が行ったサプライチェーン
各層でのRFID導入コスト及び効果検証やダイナミッ
クプライシング等の実証実験の取組内容を共有し、サプラ
イチェーン全体の効率化、またテクノロジー導入から得ら
れるデータから生み出し得る新しい価値等について議論
を行った。
1.2.新たなコンビニのビジネスモデルの再構築
コンビニは、生活密着型の商品・サービスの提供に加え
防犯活動や災害対応等、地域社会において多様な役割を期
待される存在になっている。他方で、人手不足の深刻化や
オーナーの満足度の低下等、コンビニの成長を支えてきた
環境が大きく変化しつつあることから、課題や解決に向け
た方向性について検討する「新たなコンビニのあり方検討
会」
(2019 年6月〜2020 年2月)を開催し、報告書を取り
まとめた。報告書においては、加盟店の実情に合わせた多
様性を重視するフランチャイズモデルへの転換や、加盟店
支援やオーナーとの対話の強化といった方向性を提言す
るとともに、コンビニ各社や業界における持続的なビジネ
スモデルの構築に向けた取組についてフォローアップす
ることとした。これを踏まえ、2020 年 10 月に「新たなコ
ンビニのあり方検討会」のフォローアップ会合を開催し、
コンビニ各社の行動計画における進捗や報告書において
提言された事項の業界の取組状況について確認を行った。
1.3.消費喚起
消費喚起に加え、働き方改革とも連動し、充実感や満足
感を実感できる生活スタイルへと変革する取組であるプ
レミアムフライデーは、一般社団法人日本経済団体連合会
や官民連携の「プレミアムフライデー推進協議会」と連携
し、2017 年2月から全国的に推進し、4周年を迎えた。認
知度は約9割、ロゴマークの申請件数は 8,715 件(2021 年
3月末時点)となっている。 2711.4.大規模小売店舗立地法
「大規模小売店舗立地法」
(平成 10 年法律第 91 号)
は、
大規模小売店舗の設置者に対し、周辺地域の住民や自治体
の意見等を踏まえ、当該大規模小売店舗と周辺の生活環境
との調和に配慮を求める手続等を定めた法律であり、運用
は都道府県及び政令指定都市が担っているが、経済産業省
としても、同法を所管する立場から適切な運用を確保する
ため、次の施策に取り組んだ。
(ア)運用や解釈について、ホームページ等により情報提
供を行った。
(イ)経済産業省及び各経済産業局に設置されている大
規模小売店舗立地法相談窓口において、都道府県・
政令指定都市・大規模小売店舗設置者等からの問合
せに対応した。
(ウ)地域ごとに都道府県等連絡会議を開催し、大規模小
売店舗立地法の届出に関して、具体的事例の研究等
を通じて、都道府県及び政令指定都市間の情報交換
等を実施した。
(エ)都道府県、政令指定都市等の大規模小売店舗立地法
の担当者に同法の運用に必要な知識を習得させる
ため、流通立地政策研修を実施した。
また、2000 年6月の大規模小売店舗立地法施行後、2021
年3月までに計 12,557 件(月あたり平均で約 40 件)の新
設の届出があった
(参照表:大規模小売店舗の届出状況)。1.5.買物弱者対策
人口減少や少子高齢化等を背景に、地方の小売店舗閉店
や公共交通網の縮小、廃業により、日常の買物が困難とな
っている人々、いわゆる「買物弱者」への対応が必要。
買物機会の提供という、課題への対策を実施する自治体
や団体等からの相談に対応するとともに、国・自治体が実
施している買物弱者支援に関連する支援制度を経済産業
局とともに取りまとめ、経済産業省のウェブサイトに公表
し、横展開を図っている(2020 年度は 2020 年 11 月に公
表)。
1.6.外国人旅行者等消費税免税制度
訪日外国人旅行者数は、
2020 年度においては 412 万人と
前年の 3,188 万人から大幅な減少となった。コロナの収束
後を見据えた制度の拡充として、
2020 年度税制改正におい
ては、免税販売手続が可能な一定の基準を満たす自動販売
機を設置した場合、その自動販売機の設置に係る免税店の
許可について、
人員の配置が不要となる措置
(2021 年 10 月
から開始)を通じた更なる制度拡充が図られた。193450638786
738 731 730 749652500584621738705669571 548 5615034324580100200300400500600700800900大規模小売店舗立地法に基づく新設届出件数の推移(年度別)
2000年度については6〜3月のデータ 出典:経済産業省HP「大規模小売店舗立地法の届け出状況について」 2722.物流効率化
2.1.概要
物流は、我が国における豊かな国民生活や産業競争力、
地方創生を支える重要な社会インフラであり、人口の減少
や国際経済の不確実性の増大、新型コロナウイルス感染症
の流行など社会環境の大きな変化の中にあっても、我が国
経済の持続的な成長と安定的な国民生活を維持するため、
決して途切れさせてはならず、その機能を十分に発揮させ
ていく必要がある。
我が国が直面する物流の課題としては、人口減少の本格
化や労働力不足への対応、災害の激甚化・頻発化と国民の
安全・安心の確保、Society5.0 の実現によるデジ
タル化・イノベーションの強化、地球環境の持続可能性の
確保や SDGsへの対応、新型コロナウイルス感染症へ
の対応が挙げられる。
経済産業省においては、物流の課題への対応に向け、荷
主企業と物流事業者の連携・協働を通じた物流効率化を推
進している。
2.2.総合物流施策大綱(2021 年度-2025 年度)の策定
政府は、物流施策や物流行政の中長期的な指針を示し、
関係省庁が連携して総合的・一体的な物流施策の推進を図
るものとして、
「総合物流施策大綱」を 1997 年から6回に
わたって策定してきた。
「総合物流施策大綱(2017 年度-2020 年度)
」が 2020 年度
で目標年次を迎えたため、新たな総合物流施策大綱を国土
交通省、農林水産省とともに策定し、2021 年6月に「総合
物流施策大綱
(2021 年度-2025 年度)」が閣議決定された。
本大綱の下では、今後の物流が目指すべき方向性として、
1物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン
全体の徹底した最適化
(簡素で滑らかな物流の実現)、2労
働力不足対策と物流構造改革の推進(担い手にやさしい物
流の実現)
、3強靱で持続可能な物流ネットワークの構築
(強くてしなやかな物流の実現)の3つを観点とし、関連
する施策を位置付けている。また、本大綱で掲げた様々な
施策の進捗を定量的に把握するため、代表的な指標(KP
I)を設定した。
2.3.自動配送ロボットの社会実装
2020 年7月に閣議決定された成長戦略実行計画では低
速・小型の自動配送ロボットの本格的な社会実装に向け、
「遠隔監視・操作」型の公道走行実証を年内で可能な限り
早期に実現し、その結果を踏まえ、早期に制度設計の基本
方針を決定することとされた。
経済産業省では、令和2年度補正「自動走行ロボットを
活用した新たな配送サービス実現に向けた技術開発事業」
を通じた公道実証支援を実施するとともに、ロボットの利
活用者であるサービス事業者や自治体等、ロボット供給者
であるメーカーに加え関係省庁等で構成する官民協議会
等において、事業者の自動配送ロボット活用の展望等につ
いて議論を行った。
2.4.環境負荷の低減に資する流通・物流の効率化
(1)グリーン物流パートナーシップ会議の開催
物流部門の環境負荷の低減、物流の生産性向上等持続可
能な物流体系の構築には、荷主・物流事業者それぞれの単
独による取組だけではなく、それぞれが互いに知恵を出し
合い連携・協働することによる、物流システムの改善に向
けた先進的な取組が必要である。複数事業者間の協働によ
るそうした取組(グリーン物流パートナーシップ)を支援
し、普及促進を図ることを目的として、経済産業省、国土
交通省、
産業界が主催となり 2005 年4月に
「第1回グリー
ン物流パートナーシップ会議」を開催した。
2020 年度は、12 月に第 19 回グリーン物流パートナーシ
ップ会議を開催し、物流分野における地球温暖化対策及び
物流の生産性向上等に顕著な功績があった取組に対して
経済産業大臣表彰及び商務・サービス審議官表彰を行った。
(2)流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律
(物流総合効率化法、物効法)
(平成 17 年法律第 85 号)
物流総合効率化法は 2005 年に制定されて以降、倉庫等
の物流施設の整備を中核として物流業務を総合的・効率的
に進める事業を支援してきた。
昨今の物流分野の労働力不足への対応を推進するため、
効率化支援方策を「施設整備」によるものから「連携」に
よるものへ転換することとし、2以上の者の連携を前提に、
支援の裾野を広げ、モーダルシフト(トラックから鉄道・
船舶への輸送手段の転換)や共同配送を始めとした多様な 273取組を後押しできるようにするための「流通業務の総合化
及び効率化の促進に関する法律の一部を改正する法律」
(平成 28 年法律第 36 号)が成立し、2016 年5月に公布、
10 月に施行された。
本法改正以降、
2020 年度までに経済産
業省本省の認定案件は 26 件となった。
2.5.国際物流に関する取組
インドに進出する日系企業の競争力強化を目的に、2018
年度に物流人材育成支援に関する調査事業を実施した。調
査結果を踏まえ、倉庫管理者向けの資格認定講座の開講に
向けて、2019 年度にインド工業連盟と連携し、インドへの
専門家派遣と日本への受け入れ研修と通じたインド人講
師候補者の教育を実施し、
2020 年度に資格認定講座を開講
した。
消費者政策
1.消費者行政(特定商取引法)
経済産業省は
「特定商取引に関する法律
(特定商取引法、
特商法)」(昭和 51 年法律第 57 号)を消費者庁と共管して
いる。2008 年6月 27 日に閣議決定された消費者行政推進
基本計画により、この法律に係る執行は消費者庁が一元的
に行っており、経済産業省は、商一般の専門的な知見や、
物資等の生産・流通の専門的な知見等を活用して、消費者
庁と連携することとなっている。一方で、同法に係る消費
者庁長官の権限の一部が地方経済産業局長に委任されて
いるため、地方経済産業局長が消費者庁の下で同法の執行
を行っている。
(1)特定商取引法の概要
特定商取引法は、
事業者による違法・悪質な勧誘行為等を
防止し、消費者の利益を守ることを目的とする法律である。
具体的には、訪問販売や通信販売等の消費者トラブルを生
じやすい取引類型を対象
(注1)
に、
事業者が守るべきルー
ルと、
クーリング・オフ等の消費者を守るルール等
(注2)
を定めている。
(注1)規制対象となる7つの取引類型
(1)訪問販売
(2)通信販売
(3)電話勧誘販売
(4)連鎖販売取引(人を販売員として勧誘し、更
にその個人に次の販売員の勧誘をさせるかたち
で、販売組織を連鎖的に拡大して行う商品・役務
の取引のこと)
(5)特定継続的役務提供(長期・継続的な役務の
提供と、
これに対する高額の対価を約する取引の
こと。 現在、エステティックサロン、語学教室
など7つの役務が対象)
(6)業務提供誘引販売取引(
「仕事を提供するの
で収入が得られる」という口実で消費者を誘引
し、仕事に必要であるとして、商品等を売って金
銭負担を負わせる取引のこと)
(7)訪問購入
(注2)法律措置の主な内容
(1)行政規制 (2)民事ルール
(ア)氏名等の明示の義務
づけ
(ア)クーリング・オフ
((注記))
(イ)不適正な勧誘行為の
禁止
(イ) 意思表示の取消し
(ウ)広告規制 (ウ)損害賠償等の額の制限(エ)書面交付義務
((注記))申込みまたは契約の後に、法律で決められた書
面を受け取ってから一定の期間(訪問販売・電話勧誘
販売・特定継続的役務提供・訪問購入においては8日
間、連鎖販売取引・業務提供誘引販売取引においては
20 日間。
通信販売には、
クーリング・オフに関する規
定はない)内に、無条件で解約すること。
2.消費者相談
2020 年度における経済産業省の消費者相談件数は 7,742
件で、相談の種類は、
「特定商取引法関係」が 4,948 件と全
体の6割強を占めている。
契約関係の相談を取引類型別にみると通信販売(1,795件)が最も多く、
次いで訪問販売
(1,252 件)、割賦販売(733件)、電話勧誘販売
(718 件)、特定継続的役務提供
(628 件)、連鎖販売取引
(323 件)、訪問購入
(124 件)、前払割賦(122
件)、業務提供誘引販売取引(108 件)
、先物取引関係(52
件)であった。
商取引政策
1.取引信用行政
1.1.概要 274商品の販売・役務の提供に伴って信用を供与する取引を
行政対象としている。具体的には、
「割賦販売法」
(昭和 36
年法律第 159 号)による販売信用に関する取引秩序の維持
及び消費者保護、その他信用を供与して行う取引に関する
施策を講じている。
1.2.割賦販売法を巡る動向
決済テクノロジーの進展により、従来のクレジットカー
ドサービスとは異なる少額の後払いサービスや、蓄積され
たデータ等を用いた、従来より精度の高い新たな限度額審
査の手法が登場している。また、QRコード決済事業者や
ECモール事業者等、新たに大量のクレジットカード番号
等を取り扱う事業者も出現してきている。
このように、決済サービスや決済事業者の多様化が進む
中、消費者が安全・安心に多様な決済手段を利用できる環
境の整備を目指す
「割賦販売法の一部を改正する法律」(令和2年法律第 64 号)
が第 201 回通常国会で成立した
(2020
年6月 24 日公布)。本改正により、少額の分割後払いサービスについて登録
制度を導入することで、消費者の多様なニーズに応えた決
済サービスが提供されること、利用・返済履歴などを活用
したより精度の高い限度額審査が行われることで、消費者
の個々の事情に応じたサービスが可能となること、QRコ
ード決済事業者やECモール事業者等へのセキュリティ
対策の強化を通じ、新たなサービスを安全・安心に利用で
きる環境を整備が整備されることが期待されている。
1.3.クレジット産業の動向について
(1)割賦販売法に基づく登録事業者数の状況
2021 年3月末現在の割賦販売法に基づく登録事業者数
は、包括信用購入あっせん業者が前年比2社減の 253 社、
個別信用購入あっせん業者が前年比同数の 147 社、クレジ
ットカード番号等取扱契約締結事業者が前年比同数の 256
社となっている。
(2)クレジット取引のセキュリティ強化のための業界に
おける取組について
クレジット産業においては、
「国際水準のセキュリティ
環境」の実現を目指し、安全・安心なクレジットカード利
用環境の整備を進めるため、クレジットカード取引に関係
する幅広い事業者及び行政、業界団体等の連携により、ク
レジット取引セキュリティ対策協議会が 2015 年3月に設
立され、これまでに、関係事業者が各々の役割に応じて取
組むべきセキュリティ対策を、実務上の指針として取りま
とめ、2016 年に「クレジットカード取引におけるセキュリ
ティ対策の強化に向けた実行計画」を公表、それ以降、毎
年度、実行計画の必要な見直し等を行うなど、セキュリテ
ィ強化のための対策に取組んできた。
同「実行計画」は、2020 年3月末をセキュリティ対策の
実施期限としてクレジットカードの偽造防止による不正
利用対策として、クレジットカードや決済端末のIC化等
の取組みを進めてきたものであるが、上記のようなクレジ
ットカード取引を取り巻く環境も変化している状況を踏
まえて引き続き必要なセキュリティ対策を検討し実施し
ていくことが必要であり、また、指針等を技術の進歩やオ
ペレーション等の観点から適宜見直しを行うことが必要
であるといった認識から見直しを行い、
2021 年3月に新たに「クレジットカード・セキュリティガイドライン 2.0 版」
として公表した。
1.4.前払式特定取引業の動向について
(1)冠婚葬祭互助会の動向
1973 年に 347 社あった事業者数は、1986 年に 415 社と
ピークを迎えた後減少し、
2021 年3月末現在で前年比4社
減の 241 社となった。
一方、
前受金残高は 1973 年以降一貫
して増加してきており、2021 年3月末現在で前年比 52 億
円増の約2兆 4,778 億円となった。
(2)友の会の動向
1973 年に 178 社あった事業者数は、1985 年に 356 社と
ピークを迎えた後減少し、
2021 年3月末現在で前年比5社
減の 88 社となった。一方、前受金残高は 2021 年3月末現
在で前年比 192 億円増の約 5,342 億円となった。
1.5.リース産業の動向について
2020 年度のリース取扱高は4兆 5,910 億円(前年度比
13.9%減)、リース設備投資額は4兆 2,903 億円
(前年度比
14.1%減)となり、リース取扱高及びリース設備投資額は
3年ぶりの減少を示した。
リースは、特に中小企業の設備投資において重要な役割 275を担っており、民間企業投資に占めるリース設備投資額割
合(リース比率)は、2020 年度は 5.06%と、企業の設備投
資の5%強がリースを利用している。
2.キャッシュレスの推進
2.1.概要
キャッシュレスの推進は、1消費者や外国人観光客にと
っては、大量の現金を持たずに買い物が可能となり、2紛
失・盗難時の被害リスクが現金に比べて軽減されることに
加え、3事業者にとって現金処理コストの削減による生産
性向上の効果をもたらすなど、様々なメリットがある。
世界各国の民間最終消費支出に占めるキャッシュレス
決済比率の比較を行うと、キャッシュレス化が進展してい
る国は 40%〜60%台であるのに対し、日本は約 30%にと
どまっている。
また、近年、従来型のクレジットカードによらない決済
サービスなど新しいビジネスも現れており、決済方法は多
様化しつつある。
こうした状況も踏まえ、早期のキャッシュレス社会を実
現することを目的として、
2018 年7月に一般社団法人キャ
ッシュレス推進協議会を設立した。また、商務・サービス
グループにおいてキャッシュレス推進に関する専門的か
つ横断的な検討を行うため、2018 年 10 月に消費・流通政
策課にキャッシュレス推進室が設置された。
2.2.キャッシュレス・ポイント還元事業
2019 年 10 月より、キャッシュレス・ポイント還元事業
を実施した。消費税率引上げに伴い、需要平準化対策とし
て、キャッシュレス対応による生産性向上や消費者の利便
性向上の観点も含め、消費税率引上げ後の9か月間に限り、
中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を使ったポ
イント還元を支援した。
2.3.キャッシュレス決済の中小店舗への更なる普及促
進に向けた環境整備検討会
また、キャッシュレス・ポイント還元事業の総括を行う
とともに、キャッシュレス決済に関わる店舗や決済事業者、
ネットワーク事業者等の観点を踏まえ、キャッシュレス
決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた課題や方策
を検討するため、2020 年6月、計5回に及ぶ「キャッシュ
レス決済の中小店舗への更なる普及促進に向けた環境整
備検討会」を開催した。同検討会において、
「キャッシュレ
ス決済事業者の中小店舗向け開示ガイドライン」を策定し、
一般社団法人キャッシュレス推進協議会のホームページ
で決済事業者の中小店舗向け手数料や入金サイクル等の
情報が、一覧性のある形で公表された。2021 年2月に同検
討会でのこれまでの議論について、キャッシュレス決済事
業におけるコスト構造分析を中心に項目毎に整理すると
ともに、今後の取組みの方向性について記した中間整理を
とりまとめた。
2.4.キャッシュレス決済の利用シーン拡大に向けた取
組み
キャッシュレス決済の利用シーン拡大に向けて、
・中小・小規模事業者のキャッシュレス決済端末等の導入
を支援する、マイナポイント事業実施に伴うキャッシュ
レス決済端末導入支援事業
・観光地域づくりを行う観光地域づくり法人
(DMO)や、
商工会議所・商工会、商店街振興組合といった団体が行
う地域での面的なキャッシュレス決済導入の取組を支
援する面的キャッシュレス・インフラの構築支援事業
・災害時にも安全・安心にキャッシュレス決済を利用でき
るよう、クレジットカード等について災害時における特
別な決済方法の実務処理や不正対策等を検証し、決済事
業者や店舗の業務運用を整備する災害時のキャッシュ
レス決済実証・調査事業
・公共施設・自治体窓口等が実際にキャッシュレス決済を
導入するための手順及び検討事項について 2020 年4月
に公表された「公共施設・自治体窓口におけるキャッシ
ュレス決済導入手順書」を、自治体窓口や公共施設のキ
ャッシュレス化に取り組む先進的なモニター自治体の
協力を得て改訂等を 2020 年度に実施した。
2.5.一般社団法人キャッシュレス推進協議会と連携し
た取組み
一般社団法人キャッシュレス推進協議会により策定さ
れたコード決済の統一規格
「JPQR」
(店舗提示型コード
決済)の本格運用が、2020 年4月 27 日より全国で開始さ
れた。また、JPQRの一方式として、実際の店舗での支
払いに加え、請求書の支払いを自宅等で簡単に行うことが 276できる
「請求書払い」
が新たに規定された。
経済産業省は、
引き続き総務省及び同協議会と連携しながらJPQRの
普及促進を行っている。
2020 年9月にコード決済(QRコード決済)における不
正な銀行口座紐づけの防止対策に関するガイドラインを
同協議会にて策定した。
3.商品先物行政
3.1.商品先物取引について
商品の価格は、需給バランス等によって変動する。商品
の価格変動は、商品や当該商品を原材料とした製品等を購
入、販売する企業にとっては経営上のリスクであり、経営
を安定化させるためには価格変動に対処する必要がある。
商品先物取引はその一つの方法であり、特に、電力・ガス
システム改革による市場の自由化により、エネルギー分野
ではその必要性が高まっている。
2019 年3月、
東京商品取引所と日本取引所グループは経
営統合に関して基本合意を行い、
同年 11 月、
日本取引所グ
ループは東京商品取引所を完全子会社化した。
2020 年7月、
東京商品取引所は、
貴金属市場、
ゴム市場、
農産物市場を大阪取引所へ移管した。また、同月、日本商
品清算機構が、日本証券クリアリング機構に吸収合併され、
「金融商品取引法」
(昭和 23 年法律第 25 号)
に基づく取引
及び「商品先物取引法」
(昭和 25 年法律第 239 号)に基づ
く取引の清算が一元化された。これらに際して経済産業省
は、東京商品取引所等の定款変更等の認可を行った。
(1)商品先物取引の現状
(ア)取引量の動向
2020 年度の東京商品取引所における商品先物取引の年
間出来高(農作物除く)は、19,471 千枚となり 2019 年度
の出来高 21,332 千枚より減少した。
(イ)許可業者等
2021 年3月末現在の商品先物取引法に基づく商品先物
取引業者数は前年比2社減の 39 社、商品先物取引仲介業
者数は前年比1社減の3社であった。
また、2020 年度においては、同法共管省庁である農林水
産省とも連携し、商品先物取引の委託者保護及び商品先物
取引業者等の業務運営の健全化を図るため、商品先物取引
法に基づき、商品先物取引業者に対して立入検査を1件実
施した。
(ウ)委託者数
商品先物取引を行う委託者等の数は、
2021 年初は国内商
品市場取引では 23,530 人、外国商品市場取引では 46,298
人、店頭商品デリバティブ取引では 361,449 人であった。
(2)電力先物市場の創設に向けた取組
2016 年に電力の小売・発電の全面自由化が行われたこと
に伴い、今後の電力市場の動向も踏まえた適切な電力先物
市場の創設が必要となることから、2017 年 12 月に「電力
先物市場の在り方に関する検討会」を立ち上げ、2018 年4
月に報告書を取りまとめた。
2019 年度には、
8月に東京商品取引所からの電力先物の
試験上場申請を認可し、9月から取引が開始された。これ
を受け、我が国の電力先物取引の活性化に資するため、国
内の電力デリバティブ取引の実態やニーズ、海外の電力先
物取引が発展してきた経緯、関連する施策等について調査
を行うため、
「電力先物市場に係る調査事業」
を実施した。
3.2.商品投資事業について
商品ファンドは、顧客から資金を集めて商品先物取引等
の商品投資を行い、それにより得られる収益を顧客に分配
するものである。
2021 年3月末現在の
「商品投資に係る事業の規制に関す
る法律」
(平成3年法律第 66 号)
に基づく許可事業者数は、
前年比同数の6社であった。
サービス産業政策
1.主要産業・政策に関する主な動き
1.1.サービス産業
(1)サービス産業の現状
我が国を含めた先進国経済において、実質GDP、雇用
の両面で、サービス産業のウェイトは過半を占め、着実に
拡大を続けている。我が国においてはサービス産業が実質
GDPと全産業の就業者数に占める割合は7割超である。
2016 年3月の官民対話では、安倍総理がGDP600 兆円
を達成するため、
2020 年までにサービス産業の生産性の伸
び率を倍(2.0%)にすることを表明した。サービス産業は 277他の産業と比較して、労働生産性平均値の低さが指摘され
ているが、幅広い業種を含んでおり、業種の特性に応じた
細やかな施策に産学官を挙げて取り組むことが重要であ
る。
(2)サービス産業生産性向上のための取組
2015 年4月日本経済再生本部決定
「サービス産業チャレ
ンジプログラム」や 2017 年6月閣議決定「未来投資戦略
2017」に基づき、労働生産性の伸び率 2.0%を実現するた
め、次の施策に取り組んだ。
(ア)ITを活用した生産性向上
2017 年 12 月閣議決定「新しい経済政策パッケージ」に
おいて、3年間の政策集中投資期間で全中小企業・小規模
事業者の約3割に当たる約 100 万社へのITツール導入促
進を目指すことが決定された。
これを受け、中小・小規模事業者などの生産性向上を目
的とし、
平成 29 年度補正予算
「サービス等生産性向上IT
導入支援事業」)として 500 億円確保し、
約6万社強へのI
Tツールの導入を支援した。
加えて、平成 30 年度補正予算「生産性向上革命推進予
算」の一部として 100 億円の予算を確保し、より多種多様
な業務プロセスの改善を促していた。
また、令和元年度補正予算事業である「中小企業生産性
革命推進事業(3,600 億円)
」の内数として、働き方改革、
被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入など相次
ぐ制度変更等に対応する中小企業を継続的に支援すると
ともに、令和2年度1,2次補正予算を確保し、新型コロ
ナウイルス感染症の影響を乗り越えるために前向きな投
資を行う事業者向けに「特別枠」を創設し、約3万社弱の
事業者のウィズ/ポストコロナ時代に適応したビジネスモ
デルの転換を支援した。
加えて、中小サービス事業者等のDXによる一層の生産
性向上を実現するため、
令和2年度当初予算において、
「共
創型」サービス・IT連携支援事業を措置し、中小企業等
とITベンダーの協調による、ユーザーの現場課題に即し
たITツールの機能改善及び当該ツールの汎用化に向け
た取組を支援した。
(イ)おもてなし規格認証の創設
日本再興戦略改訂 2015 に盛り込まれた、サービス産業
の活性化・生産性向上を推進する施策として、サービスの
品質を「見える化」する仕組みの創設が提言され、2016 年
3月の第4回未来投資に向けた官民対話において、安倍総
理から「サービスの質を『見える化』する『おもてなし規
格』を作り、30 万社による認証の取得を目指す」との指示
があった。
これを受けて、サービス品質を高める事業者の認証を進
めていく「おもてなし規格認証」の運用を開始し、認定機
関及び認証機関並びに関係省庁との連携を進めながら
2020 年まで 30 万社による認証の取得を目指している。2021年3月末まででは、延べ約 15 万事業所が認証を取得する
とともに、最上位である紫認証の取得企業も 22 件誕生し
ている。さらに、2019 年1月から、外国語による問合せ対
応が可能か等を審査する
「トラベラー・フレンドリー認証」
を運用し、インバウンド対応に取り組む事業所を「見える
化」するための取組も進めている。
なお、2021 年3月に、同認証制度の運営・管理が4つの
認証機関からなるコンソーシアムである新団体「おもてな
し規格認証機構」に引き継がれることとなり、一般社団法
人サービスデザイン推進協議会から、認定機関としての運
営業務が移管された。
従来の「認定機関/認証機関」の構造から、
「認証機関の
連合体(=認証機構)
」になることで、制度運営・管理コス
トの効率化を図り、結果として、より多くの事業者が活用
しやすくなる制度となることを期待している。
(ウ)日本サービス大賞による業界全体の活性化
サービスの送り手と受け手の「価値共創」を軸に、
「革新
的で優れたサービス」を表彰することでサービス産業のイ
ノベーションと一層の生産性向上を促す第3回日本サー
ビス大賞は、日本全国各地から幅広い業種・業態、規模の
事業社より 762 件に及ぶ応募が寄せられた。2020 年 10 月
に表彰式が開催され、30 の企業・団体が内閣総理大臣賞を
始めとする各賞を受賞した。
(エ)サービス経営人材の育成
我が国では消費者嗜好の多様化、国内市場の縮小、競争の
激化が進んでいる。こうした厳しい環境の中、サービス事業
者が生産性を向上させ、成長を続けるためには、次世代の経 278営を担う人材を育成・確保することが重要課題である。
しかし、サービス産業に関する経営ノウハウの体系化は
不十分であり、マネジメントに特化した専門的、実践的な
教育機関も不足している。
このため、2015 年度より、産学共同で経営人材の育成カ
リキュラムを開発・実証する取組への支援を開始し、2018
年度はこれまで大学で開発されたプログラムの強化・効率
化とこれまで培われたサービス経営人材育成の知見・ノウ
ハウの横展開を行う取組を進めるため、産業界への発信を
目的としたシンポジウムや大学間のネットワーク組成の
ための中間報告会のほか、経営人材育成エコシステムの組
成に向けたエコシステム検討会や、産業界がプログラム開
発に対して求めるニーズの把握を目的としたワークショ
ップを開催した。
(3)スポーツの成長産業化
先進国、新興国において、スポーツ産業の市場規模は、
対GDPで3%程である。しかし、日本における市場規模
は対GDP比で約1%に低迷しており、市場規模拡大の余
地が大いにある。今後スポーツ産業を成長産業化させ、コ
ストセンターからプロフィットセンターに変えていく取
組が必要とされる。
2016 年2月、スポーツ庁と経済産業省は、
「スポーツ未
来開拓会議」
を立ち上げ、
同年6月には中間報告を公表し、
我が国のスポーツビジネスにおける戦略的な取組を進め
るための方針とともに、スポーツ市場規模を 2025 年に 15
兆円にするとの目標を掲げた。また、同年7月にスタジア
ム・アリーナ推進官民連携協議会を立ち上げ、
スタジアム・
アリーナ改革に向けた方針や、ガイドブックをまとめ、公
表した。
2017 年6月に閣議決定された未来投資戦略では、
「にぎ
わいやコミュニティ創出の拠点で、経済活性化の起爆剤と
なるスタジアム・アリーナを、2025 年までに新たに 20 拠
点実現する。
」と掲げ、2020 年8月から、モデルとなるス
タジアム・アリーナを選定するための募集を開始した。
また、日本のジュニア世代(小、中、高校生)のスポー
ツ環境においては、教員や地域住民によるボランティアを
主体とした、学校部活動や地域のスポーツクラブが中心的
な役割を担ってきたが、少子化による学校単位でのクラブ
存続難、教員の働き方改革の必要性の高まり、ボランティ
ア主体による指導の質のバラツキなど、様々な課題が指摘
されている。こうしたボランティア主体のスポーツ環境の
みならず、
「対価を取って」質の高い指導・プレー環境・コ
ミュニティを提供する新しいスポーツクラブ産業が日本
の各地で成長すれば、スタジアム・アリーナ整備と相まっ
て、ジュニア世代のみならず生涯を通じた多様なスポーツ
に取り組む環境が整い、スポーツクラブ産業を核とした地
域経済の新しい成長の道筋が見える可能性がある。そこで、
2020 年 10 ×ばつスポーツクラブ産業研究会」を立
ち上げ、これまでも推進されてきた「総合型地域スポーツ
クラブ」を含めた、持続可能なスポーツクラブ産業のあり
方について、課題の洗い出しと対策の方向性について検討
した。
(4)サービス産業の国際展開に向けた取組
「2020 年までにGDP600 兆円の達成」という目標を実
現するためには、
我が国GDPの 70%超を占めるサービス
産業の国際競争力を高め、外貨を獲得していく必要がある。
特にモノからサービスに需要がシフトしている、アジアを
含めた新興国への我が国関連事業者の進出を支援する必
要がある。
2018 年5月、
世耕経済産業大臣と鍾山中華人民共和国商
務部部長との会談において、サービス産業における日中協
力として、
「日中サービス貿易協力メカニズム」
を構築し、
サービス貿易・投資の環境を構築し、サービス分野の投資
及び互恵協力を進めていくことに合意した。
その後の日中首脳会談において、世耕大臣と鍾山部長と
の間で
「サービス貿易協力強化に関する覚書」
に署名した。
また、世耕経済産業大臣と何立峰中華人民共和国国家発展
改革委員会主任との会談においては、サービス産業におけ
る日中協力として、
「日中サービス産業協力メカニズム」を構築し、マクロ的な政策の交流を通じ、高齢化、教育等の
サービス産業領域での協力を進めていくことで合意した。
その後、日中首脳会談の場で、世耕大臣と何立峰主任との
間で
「サービス産業協力の発展に関する覚書」
に署名した。
また、日本のEdTechサービス・教育産業の海外展
開支援のため、
日本貿易振興機構と連携の下、
2018 年 12 月
に中国・北京にて開催された
「国際スマート教育 EXPO2018」
に、
2020 年1月には英国で開催された世界最大規模のEd
Tech展示会「BETT2020」にジャパンパビリオンを設置 279し、出展及び視察支援を行った。さらに 2020 年度は、令和
2年度予算事業「学びと社会の連携促進事業」にて、
「未来
の教室」実証事業の海外版として、日本のEdTechサ
ービス・教育関連企業がASEAN等に展開する際の製
品・サービス開発や実証・評価に資する実証事業を実施し
た。
また 2021 年3月には、
オンラインの教育関連マッチン
グイベントである「LEARNIT LIVE – VIRTUAL INTRODUCTION」
への参加支援を行った。
(5)教育産業に関する取組
「第4次産業革命」や、
「人生 100 年時代」、「グローバル
化」が進む中、世界は「課題解決・変革型人材(チェンジ
メーカー)」の輩出に向けた能力開発競争の時代を迎え、各国で就学前・初中等・高等・リカレント教育の各段階にお
ける革新的な能力開発技法(EdTech(注記)
)を活用した
「学びの革命」が進んでいる。
こうした中、就学前からリカレント教育に至るまで、教
育全体のあり方を再構築することを目指し、教育産業室に
おいて、EdTech等を活用した革新的な能力開発技法
の創出に向けた議論や実証事業を行った。
(注記)EdTech
(エドテック)
とは・・・
「Education
(教育)」と「Technology(科学技術)
」を掛け合わせた造語。教育
現場にデジタルテクノロジーを導入することで、教育領
域に変革をもたらすサービス・取組の総称。
(ア)
「未来の教室」
とEdTech研究会 STEAM検
討ワーキンググループ
「未来の教室」
とEdTech研究会では、
AIや動画、
オンライン会話等のデジタル技術を活用した教育技法で
あるEdTechを活用し、人の創造性や課題解決力を育
み、個別最適化された新しい教育をいかに作り上げるかに
ついて議論を行い、2019 年6月、実現すべき教育改革プラ
ンを「未来の教室ビジョン」(「未来の教室」とEdTec
h研究会第2次提言)としてとりまとめた。
その後、本研究会の下にSTEAM(注記)
検討ワーキンググ
ループを設置し、
「未来の教室」ビジョンの柱の一つ「学び
のSTEAM化」という考え方の更なる整理、STEAM
ライブラリー構想の精緻化を進め、
2020 年8月には中間報
告をとりまとめた。
(注記)STEAM(スティーム)とは・・・Science(科学)、Technology(技術)、 Engineering(ものづくり)、 Arts
(人文社会・芸術)及び Mathematics(数学)の5つの領
域を含む学際的な探究学習を目指す教育コンセプトの
総称。
(イ)
「未来の教室」実証事業
令和2年度予算
「学びと社会の連携促進事業」
では、2019年に「未来の教室」とEdTech研究会にて提示された
「未来の教室」
ビジョン
(第2次提言)
で示した考え方や、
前年度の「未来の教室」実証事業にて得られた結果・知見
をもとに、主に以下の内容で狙った効果を得られるかどう
かの実証事業を行った。・「未来の教室」で目指す「創る」と「知る」のサイクルを
有機的に回す「学びのSTEAM化」の実現に向け、自
治体単位での変革に向けた取組や学校単位でより質の
高いSTEAMカリキュラム開発を行う実証事業
・EdTechやSTEAMを駆使し、不登校等の児童・
生徒を取りこぼさず、またある領域に特異な才能を有す
る子どもを発掘し強みを伸ばす、
「学びの個別最適化」の多様なモデル創出実証事業
・学校等の教育現場で使いやすいEdTechサービスの
開発を目的として、先進学校とEdTech企業の協働
によるオープンイノベーション実証事業
(ウ)STEAMライブラリー構築事業
令和2年度予算
「学びと社会の連携促進事業」
において、
子供たちが伸びやかに「未来社会の創り手」に育つきっか
けを提供すべく、SDGsの社会課題等を入口とした探究
的・教科横断的な学びのための動画・資料コンテンツ群を
「STEAMライブラリー」として 2021 年3月に無料で
公開した。
(エ)EdTech導入補助金
令和元年度補正予算「先端的教育用ソフトウェア導入実
証事業」及び令和2年度補正予算「遠隔教育・在宅教育普
及促進事業」において、EdTech導入補助金として、
学校等教育現場にEdTechソフトウェア・サービスを
導入する事業を行う事業者に必要経費の一部を補助し、学 280校及び学校等設置者と教育産業の協力による教育イノベ
ーションの全国的な普及の後押しを行った。
1.2.ヘルスケア・医療機器産業
我が国において平均寿命は男女ともに 80 歳を超え、世
界一の健康長寿国になった。平均寿命が今後も伸びていく
ことが予想される中、公的保険制度を中心とした医療・介
護サービスはもちろんのこと、保険外も含めたサービスの
充実を行い、超高齢化社会へ対応していく必要がある。
(1)ヘルスケア産業の創出
少子高齢化が進む我が国では、国民の医療、介護、健康
に関する関心は高まりを見せており、生活習慣病の患者や
高齢者の単身世帯のさらなる増加が見込まれる状況にお
いて、運動・栄養指導や予防・健康管理サービス等、ヘル
スケア産業に対する需要もますます増えてくることが想
定される。
社会構造の転換に伴う医療・介護及びその周辺分野にお
ける需要は、産業面から見ると、高齢社会の需要に適切に
応えながら内需を主導し、雇用を創出する成長産業となり
うる側面を持っている。生活習慣病関連にかかる医療費を、
公的保険外のサービスを活用した予防・健康管理にシフト
させることにより、
「生涯現役社会の構築」、「医療費の適正
化」、「新産業の創出」を同時に実現することを目指す。
そのため、健康長寿社会の形成に資する新産業創出に向
けて、官民一体となって具体的な対応策の検討を行うため
に政府内に設置した健康・医療新産業協議会にて取りまと
めた「健康・医療新産業創出に向けた『アクションプラン
2020』
」に基づき、製薬産業・医療機器産業・介護福祉機器
産業や異業種製造業、その他公的保険外の様々なヘルスケ
アサービス関連産業が一体となり、実用化まで含めて新た
な付加価値を創出できる、
「総合的な健康・医療関連産業の
振興」を行った。
具体的には、企業・保険者の健康経営や健康への投資促
進を目的として、健康経営銘柄 2021 の選定を実施したほ
か、日本健康会議が「健康経営優良法人 2021」として、大
規模法人部門 1,800 法人以上、中小規模法人部門 7,930 法
人以上を認定した。さらに、
「健康投資の見える化」検討委
員会を開催し、健康経営の効果的な実施と様々な市場との
対話のための枠組みを示す「健康投資管理会計ガイドライ
ン」を策定した。
また、公的保険外サービスの活性化施策としてグレーゾ
ーン解消、ヘルスケアサービスの品質確保のため業界団体
等が踏まえるべき指針である「ヘルスケアサービスガイド
ライン等のあり方」に基づいた業界自主ガイドライン等の
策定支援、地域版次世代ヘルスケア産業協議会の設置の促
進等を行った。
同時に、日本認知症官民協議会のもと、認知症の人の意
見や思いを最大限尊重しながら、生活を支える広範な産業
(例:金融・IT・住まい・食・見守り等)と公的機関・
医療・福祉・当事者関係者等が連携しイノベーションを創
出していくための検討の場として、
「認知症イノベーショ
ンアライアンスワーキンググループ」が、2020 年 12 月、
2021 年3月の2回開催された。
その議論を踏まえ、認知症との「共生」に関する製品・
サービスの開発・普及に当たり、本人や家族のQOLの向
上やインフォーマルケアコストの削減といった社会的な
効果に加えて、介護費への影響や認知症の人の社会参画の
強化等による経済的インパクトを分析・評価することを目
的とする「認知症共生社会に向けた製品・サービスの効果
検証事業」を推進し、引き続き実施中である。
また、日本医療研究開発機構(AMED)の研究開発事
業として、認知症の「早期発見」
「進行抑制」等の領域にお
ける質の高い製品・サービスの社会実装に向けた大規模実
証事業(認知症対策官民イノベーション実証基盤整備事業)
を推進し、引き続き実施中である。
さらに、デジタルヘルスの推進も行っているところ。
2019 年度から3年間の実施期間を設定し、
AMEDの研究
事業として実施する、IoTデバイスやモバイルアプリケ
ーションの活用によって収集された個人の日常生活にお
ける健康データを取得・解析する事業においては、個人の
行動変容の促進や生活習慣病等の予防・管理・改善等に対
する効果を検証するとともに、医師の診療等に適切に活用
する手法の開発を促進し、その効率的な社会実装が進むよ
うなビジネスモデルの創出等に向けた実証研究事業を行
っている。
加えて、我が国のPHR(Personal Health Record)に
ついては、個人の保健医療情報のサマリー化・ヒストリー
化など個人が理解しやすい形で適切に提供され、自らの健
康管理・予防行動に繋げられるような仕組み・ルール整備 281が求められている。そのため厚生労働省の「国民の健康づ
くりに向けたPHRの推進に関する検討会」の下に設置し
た「民間利活用作業班」において、適切に民間PHRサー
ビスが利活用されるための民間PHR事業者におけるル
ールを検討し、
「民間PHR事業者による健診等情報の取
扱いに関する基本的指針」
及び
「民間利活用作業班報告書」
を取りまとめた。
また、新型コロナウイルス感染症の拡大による国民の健
康不安を解消するため、
「遠隔健康相談事業体制強化事業」
において、遠隔で効率的に医療者が相談に乗ってくれる健
康相談窓口を設置した。これにより、新型コロナウイルス
感染症の拡大状況に応じて、国民が気軽にチャット・テレ
ビ電話・電話等のツールを用いて、健康不安等を遠隔で医
師等に相談が十分に可能な体制を整備した。
これらの需給両面からのアプローチにより、健康寿命延
伸産業の市場創出を促した。
(2)医療・介護の国際化
日本は、少子高齢化という課題に世界に先駆けて直面し
ている国であり、その課題に対応するサービスや機器につ
いて世界をリードできる可能性がある。例えば、日本の医
療技術については、がん診断・治療等、国際的に評価され
ている分野が存在する。こうした日本の良質な医療機器や
サービスの国際展開を促進することは、国際貢献と国内に
おける関連産業の活性化に繋がると期待される。
経済産業省としては、ヘルスケア産業(医療・介護・健
康)の国際展開を後押しするため、2020 年度には海外にお
ける事業化に向けた実証調査事業について、新興国を中心
に 10 案件を支援した。
また、
医療を目的に訪日する外国人
患者受入を増加させる取組の一環として、特に中国やベト
ナムといったターゲット国向けに、日本の医療の強みをP
Rする広報素材を作成するとともに、日本の医療の強みを
広報し日本への医療渡航のフローイメージを持ってもら
うためのオンラインセミナーを実施した。
加えて、経済成長とともに進む高齢化により各国で高齢
化対応が求められている機会を踏まえ、介護サービス・福
祉機器の国際展開を後押しするため、中国地方政府等との
協力の下、南京市・上海市・北京市等において、現地ある
いはオンラインで商談会・ビジネスマッチングを行った。
(3)医療機器
(ア)業界の現状
国内の市場規模は、高齢化の進展に伴って 2019 年度に
は4兆 2810 億円となっている。
また、
我が国の医療機器の
輸出額は、2019 年度1兆 91 億円となっており、貿易収支
は輸入超過で推移している。
(イ)医療機器開発
健康的で安らかな生活を求める国民の願いは強く、がん
や生活習慣病等の克服、患者QOL(生活の質)や生存率
の向上をもたらす診断と治療の実現に向けて、革新的な医
療機器の研究開発の推進とその普及が求められている。
こうした中、2018 年度に開催した「医療機器開発の重点
化に関する検討委員会」において、医療機器開発事業の成
果最大化を図るためリソースの重点化を議論し、我が国の
医療機器に関する競争力のポテンシャル、公的支援の必要
性及び医療上の価値等を踏まえて、重点的に注力していく
べき5分野(1検査・診断の一層の早期化・簡易化、2ア
ウトカムの最大化を図る診断・治療の一体化、3予防、4
高齢化により衰える機能の補完・QOL向上、5デジタル
化/データ利用による診断治療の高度化)を策定した。
この重点5分野に基づき、
「未来医療を実現する医療機
器・システム研究開発事業」の後継事業として、2019 年度
から、
「先進的医療機器・システム等技術開発事業」を開始
し、開発に伴うコストやリスクが高い先進的な医療機器・
システム等の実用化開発や、将来の医療機器・システム開
発を見据えた要素技術や基盤技術の開発の支援を行った。
さらに、今後実用化が期待される先進的な医療機器の開
発の効率化・迅速化を図るため、
厚生労働省との連携の下、
薬事審査を見据えつつ、医療機器の開発に必要となる評価
方法等を明確化する医療機器開発ガイドラインの策定を
行った。
これらに加え、高度なものづくり技術を有する中小企業
や異業種企業、ベンチャー企業の新規参入と、医療機関・
大学等との連携を支援し、医療現場のニーズに応える医療
機器の開発・改良を行う「医工連携イノベーション推進事
業」を推進した。
「医療機器開発支援ネットワーク」では、医療現場のニ
ーズ把握、規制への対応、販路開拓等、医療機器開発にお
いて事業者・大学が抱える多数の課題を解決するため、開 282発初期から事業化に至るまで切れ目ないワンストップ支
援を行う伴走コンサル等を実施し、医療機器開発を推進し
た。
また、
2020 年度は新型コロナウイルス感染症が世界的に
流行し、日本にも大きな影響を及ぼした。こうした中、国
民の安全・安心を守るべく「ウイルス等感染症対策技術開
発事業」を実施し、感染症の診断に向けた技術の開発や、
ECMOシステムをはじめとした、重症患者等のための治
療機器の技術開発を行うなど、感染症の課題解決につなが
る医療機器やシステムの開発・実証等を推進した。
(ウ)福島県における東日本大震災からの復興
2011 年3月 11 日に発生した東日本大震災及び原子力災
害による被害を受けた福島県において、福島県民の医療・
福祉・生活の質の向上を図るとともに新産業・雇用創出を
通じて福島県の復興に資することを目的とした施策を実
施した。
具体的には、
福島県をはじめ全国の医療機器の研究開発・
安全対策、事業化を支援するため、大型動物を用いた安全
性評価や規制の許認可等に関するコンサルティング、医療
機器のトレーニング等の機能を備えた拠点であるふくし
ま医療機器開発支援センターの運営を支援した。
(4)福祉用具
(ア)業界の現状
2018 年度の市場規模は、約1兆 4,971 億円(前年度比
0.9%減)となっている。福祉用具は、主に高齢者、障害者
等の身体特性等に対応する機器であり、多品種少量生産の
製品が多く、中小企業性が強い。
(イ)ロボット介護機器開発
介護需要の増加や慢性的な介護人材不足という社会課
題をロボット技術により解決するため、高齢者の自立支援
等に資するロボット介護機器の研究開発を行う「ロボット
介護機器開発・標準化事業」を推進した。
(ウ)福祉用具開発
心身の機能が低下し日常生活を営むのに支障のある高
齢者、心身障害者及び介護者のQOL向上の実現のため、
福祉用具の研究開発を行う「課題解決型福祉用具実用化開
発支援事業」を推進した。
1.3.生物化学産業
(1)工業分野におけるバイオ技術の実用化・産業化
(ア)現状と課題
近年、バイオテクノロジーの進展に伴い、植物や微生物
等の生物を用いた物質生産技術(バイオものづくり技術)
が注目を集めている。欧米を中心に関連市場の獲得に向け
た取り組みがされており、今後、市場が急速に拡大すると
予想されている(OECDの報告によれば、バイオ関連産
業の世界市場は 2030 年までに 200 兆円規模へと拡大する
ことが見込まれている。)。特に、工業分野での著しい成長
が予想されており、革新的な新素材の創出等のバイオもの
づくりの基盤技術開発は急務である。
(イ)スマートセル事業
高機能な素材や画期的な医薬品等の創出、これらの生産
効率の向上を図るため、大規模ゲノム情報に基づいた生合
成経路を設計し、多数の遺伝子を組み込んだ長鎖DNAを
合成し、長鎖DNAを微生物に組込む技術を開発した。こ
れにより、従来技術では合成が困難だった医薬品等の有用
物質の生産やその生産効率を飛躍的に向上させた細胞、
「スマートセル」を創出する技術開発を行った。
次に、スマートセル作製に必要な技術を集約したプラッ
トフォームを構築した。プラットフォームを活用したスマ
ートセル設計の効率化により、希少化合物や高価な酵素な
どを安価かつ安定的に生産可能な微生物の構築や、有用物
質を大量に生産する植物を作製することが期待される。
(ウ)カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品
生産技術の開発
(A)現状と課題
パリ協定、SDGs等の策定を受けて、脱炭素化といっ
た社会的課題の解決と持続的経済成長の両立が求められ
ている。バイオものづくりによるバイオ由来製品生産技術
は、化学合成と比べて、省エネルギーでの物質生産が可能
であり、また、原料を化石資源に依存しないバイオマス資
源へ転換することも可能であることからカーボンリサイ
クル技術の一類型として注目されている。
しかし、バイオ由来製品の普及には、原料から最終製品 283に至るまでに生じる様々な課題(原料供給、物質生産にお
けるスケールアップの難しさ等)の解決のための生産技術
開発が急務である。
(B)課題に向けた取組
バイオ由来製品の普及に向けて、バイオものづくりを効
率的に行うための生物情報資源(微生物・植物・酵素)の
拡充、物質生産を効率的に行う産業用微生物・植物・酵素
の開発、工業化に向けたバイオ生産プロセス技術開発(大
量培養、物質の分離・精製・回収)を実施する。これら技
術の統合された基盤を整備し、バイオ由来製品の社会実装
とバイオエコノミーの構築に貢献する。
(2)バイオ医薬品関連の取組
(ア)現状と課題
医薬品産業は、日本を代表する知識集約型・高付加価値
産業の代表格であり、世界規模での高齢化等により医薬品
需要は大幅に伸びている。特に近年、遺伝子組換え技術、
細胞培養技術等を用いたバイオ医薬品(主に抗体医薬品)
が急速に普及しており、今後の世界のバイオ医薬品の医薬
品市場は成長していくものと思われるが、世界では新たな
創薬分野(新モダリティ)の開発も進められている。
バイオ医薬品は生産拠点が主に海外にあることから、国
内では製造技術が成熟しておらず、それを担う人材も育た
ないため、製造を支える装置や部材等の周辺産業も成長し
難い状況にある。
そのため、
国内への資金の還流が少なく、
創薬イノベーションが起きにくい状況になり、結果として
医薬品の創出も難しいという悪循環に陥っている。また、
バイオ医薬品の後発医薬品であるバイオシミラー生産に
おいても、日本では生産が難しいことから製造技術の確立
等の対策が急務である。
また近年、生命科学研究の進展により、個人の体質に基
づき、薬効が高く副作用の少ない薬を選ぶ「個別化医療」
の推進が求められている。患者の体質に合った薬剤の選択
を行うことで、経済的・社会的負担軽減に取り組む必要が
ある。
(イ)次世代治療・診断実現のための創薬基盤技術開発
上記現状と課題を踏まえて、経済産業省では従来の日本
の強みであった化学合成とは全く異なるバイオ医薬品の
製造技術に関して、個々の優れた要素技術、部材技術等の
周辺技術を有効活用して、バイオ医薬品の連続生産技術の
研究開発を実施した。また、我が国の優れた分析技術や合
成技術等を結集し、がん等の疾患細胞に特異的に発現する
タンパク質と糖鎖を同時に認識するバイオ医薬品の開発
技術を確立することにより、少ない副作用で治療を実現す
る糖鎖創薬技術の研究開発を行った。さらに、低分子医薬
と抗体医薬の特性を併せ持つ新たなモダリティとして期
待される中分子医薬の母核改変技術や膜透過シミュレー
ション技術の開発を行った。
加えて、奏功率の低い抗がん剤に対し、効果を奏する患
者を選択するため、免疫細胞の分子発現の解析技術等の患
者層別化マーカー探索技術の開発を行った。
(3)再生医療・遺伝子治療関連の取組
(ア)現状と課題
再生医療・遺伝子治療は、従来の方法では治療困難とさ
れる疾患の根本治療に途を開くものであり、将来的には慢
性疾患や高齢化に伴う疾患等の治癒により、健康長寿社会
の実現にも貢献するとして、世界的にも高い期待が寄せら
れている。
また、再生医療・遺伝子治療の市場は急速な拡大が予想
されており、特に遺伝子治療については 2020 年から 2030
年まで間に年率約 30%程度の高い成長性が期待されてい
る。こうした状況を踏まえ、再生医療・遺伝子治療の実用
化を促進し、当該産業分野の発展と国内外における競争力
強化を実現することは急務となっている。
(イ)再生医療・遺伝子治療の産業化に向けた基盤技術開
発事業
再生医療・遺伝子治療の産業化を促進するため、1再生
医療技術を応用し、様々な臓器の細胞を活用した医薬品の
安全性等を評価するための応用技術の開発、2有効性、安
全性、再現性の高い再生医療等製品の効率的な開発に必要
な技術基盤の確立、3高品質な遺伝子治療薬を製造するた
めに必要な高度製造技術開発等を実施した。
1再生医療技術を応用し、様々な臓器の細胞を活用した
医薬品の安全性等を評価するための応用技術の開発
新たな創薬分野の開発(抗体医薬、核酸医薬、遺伝子治
療薬等)では、細胞片や動物を使った実験では問題がなか 284ったにもかかわらず、治験で突然重篤な副作用が出るケー
スが発生しているほか、高コストが大きな課題となってい
る。非臨床における安価で確実な評価技術の確立は今後の
新薬開発の競争力強化に必要不可欠となっている中、世界
的に期待が高まっている、ヒト細胞を用いた生体模倣シス
テム(MPS:Micro-physiological System)の開発に取り
組んだ。
2有効性、安全性、再現性の高い再生医療等製品の効率
的な開発に必要な技術基盤の確立
再生医療等製品の実用化にあたっては、高品質・高均質
の再生医療等製品を効率的に製造できるような基盤の確
立が極めて重要であることから、ヒト細胞加工製品の製造
工程のコントロールにより品質のバラツキを押さえ、製造
効率を高めるアプローチ(Quality-by-Design)に資する基
盤開発に取り組んだ。
3高品質な遺伝子治療薬を製造するために必要な高度
製造技術開発
遺伝子治療の分野は、現在 3100 億円程度の市場規模で
あるところ、
2030 年までには 4.6 兆円規模になると期待さ
れており、欧米を中心に研究開発が積極的に行われている。
日本においても遺伝子治療の産業化を加速するため、高品
質で安全性の高い治療用ベクターの培養・製造技術等の開
発に取組んだ。
(ウ)再生医療の特性を踏まえた標準等の検討
日本の優れた技術を世界に普及させるため、一般社団法
人再生医療イノベーションフォーラムなどの業界団体を
中心に、標準化活動を実施した。
(エ)再生医療周辺の事業環境整備について
再生医療等製品の製造原料となるヒト細胞について、
2015 年度より、実際の入手、提供に係る実務的な検討及び
品質確保のための技術的な検討を進めた。
そのうち、
法的・
倫理的・社会的課題については、有識者検討会を設置して
行った議論を踏まえ、2020 年3月に「ヒト(同種)細胞原
料供給に係るガイダンス(初版)
」を公開し、2021 年3月
には、既存の規制を整理し、国内及び国際規格・法令等と
の整合性を反映させた「ヒト(同種)細胞原料供給に係る
ガイダンス(第2版)
」を公開した。
(4)バイオ産業化に向けた環境整備
(ア)創薬型ベンチャーの資金調達環境整備
(A)現状と課題
創薬を目指すバイオベンチャー(以下、創薬型ベンチャ
ー)は、1開発期間が長い、2開発資金が多額、3成功率
が低い、4薬事承認されないと売上げがない等、ビジネス
モデルが特殊なため、適切な企業価値評価の算定が困難で
あり、事業化の難易度が高い。創薬型ベンチャーにおける
創薬シーズの円滑な事業化のため、創薬型ベンチャーが継
続的に資金を調達できる環境の整備に取り組む必要があ
る。
(B)課題に向けた取組
創薬型ベンチャーと投資家の対話を促進することで、適
切な企業価値評価を促し、創薬型ベンチャーへの資金供給
を拡大することを目的として、2017 年から「バイオベンチ
ャーと投資家の対話促進研究会」を開催し、調査・検討を
進めている。2018 年4月には、伊藤レポート 2.0「バイオ
メディカル産業版」
(バイオベンチャーと投資家の対話促
進研究会報告書)を取りまとめ公表し、2019 年7月にはそ
の改訂版を公表した。
本研究会での検討を踏まえ、
2021 年3月には適切な企業
価値評価の促進のため、創薬型ベンチャー向けに、投資家
が創薬型ベンチャーの事業内容や将来性等を理解するた
めに必要な情報開示のポイントをまとめた「バイオベンチ
ャーと投資家の対話促進のための情報開示ガイドブック」
を策定した。
さらに、同検討を踏まえ、東京証券取引所により創薬型
ベンチャーが上場する際の審査のポイントの明確化や上
場廃止基準の改正が行われるなど、創薬型ベンチャー向け
の上場制度整備が進んだ。
(イ)遺伝子検査ビジネスについて
(A)現状と課題
近年、太りやすさなどの体質、病気のなりやすさ、血縁
判定、更には個人の能力・才能などを判定する名目として
提供されている消費者向け遺伝子検査ビジネスが注目を
集めるようになった。このうち体質等に関する検査は、生
活習慣病予防のための行動変容のきっかけ作りなどの健
康増進への寄与が期待されている。この一方で、専門家か
ら見てその意義や有用性が十分とは言いがたい遺伝子検 285査が提供されているなどの指摘もある。
(B)課題に向けた取組
健康・医療戦略本部の下に設置された「ゲノム情報を用
いた医療等の実用化推進タスクフォース」において、消費
者向け遺伝子検査ビジネスについて、課題を整理するとと
もに、今後必要な取組について検討を行った。
本タスクフォースの意見取りまとめ(2016 年 10 月)に
おいては、事業者の自主的な取組を促進すると同時に、国
内外の事業実態・規制状況を把握し、
分析的妥当性の確保、
科学的根拠の質の確保、遺伝カウンセリングへのアクセス
の確保に関して、実効性のある取組を行う必要があるとさ
れた。これを踏まえ、厚生労働省等の関係省庁と連携し、
2020 年度には2回(9月、2月)
「消費者向け(DTC)遺
伝子検査ビジネスのあり方に関する研究会」を開催し、調
査・検討を進めている。
(5)生物多様性・カルタヘナ法
(A)現状と課題
国際条約に則り、遺伝子組換え生物等が生物の多様性に
及ぼす負の影響を防止するため、
「遺伝子組換え生物等の
使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律(カ
ルタヘナ法)」(平成 15 年法律第 97 号)の適切な執行が引
き続き重要である。
また、バイオ産業にとって重要な素材である微生物等の
遺伝資源について、生物多様性が豊かな開発途上国等では
遺伝資源の入手等に対する規制が設けられつつあるが、そ
うした国々から円滑に遺伝資源が入手できるようにする
ことが益々重要となっている。
(B)課題に向けた取組
2020 年度は、
カルタヘナ法に基づく申請に対する確認を
74 件行った。また、試薬等の最終製品の中に残存する遺伝
子組換えウイルスの取扱いの見直しや包括確認申請手続
の見直し等の運用改善を行った他、遺伝子組換え生物の開
放系利用における審査の支援体制について引き続き検討
した。さらに、遺伝子組換え生物等の使用規制の運用見直
しの参考とすべく、諸外国の規制実態を調査した。事業者
等への情報発信としては、カルタヘナ法の規制の概要や運
用改善に関する説明会等を開催し、広く普及啓発を図った。
また、企業等が各国から遺伝資源を円滑に入手できる環
境整備のため遺伝資源に係るアクセス及び利益配分(AB
S)関連法制度や名古屋議定書への対応状況の調査を行う
とともに、ABSに関するセミナー開催や相談窓口の設置
等に引き続き取り組んだ。
加えて、遺伝資源に係る塩基配列情報へのアクセス及び
利益配分の国際的な交渉が行われている中、我が国として
の対応方針について検討を行った。 286クールジャパン政策
1.主要産業・施策に関する主な動き
1.1.クールジャパン政策
内需減少等の厳しい経済環境の中、自動車等の従来型産
業に加え、衣食住やコンテンツを始めとした日本の文化や
ライフスタイルの魅力を付加価値に変え(「日本の魅力」の事業展開)、新興国等の旺盛な海外需要を獲得し、
日本経済
の成長につなげていくことが必要である。
そのため、経済産業省においては、1海外現地での日本
ブームの創出、2現地で稼ぐためのプラットフォーム構築、
3日本への外国人観光客の誘客・消費拡大からなる3段階
の戦略的なクールジャパン政策を展開している。また、今
年度においては、コロナ禍におけるイベント開催制限で中
止・休園せざるを得なかった展示会・遊園地への支援も行
った。
(1)クールジャパンの推進
(ア)海外現地での日本ブームの創出
株式会社海外需要開拓支援機構による我が国の生活文
化の特色を生かした魅力ある商品又は役務の海外需要開
拓の支援を行うことで、海外現地での日本のファンの増加
を促進した。
(後述)
(イ)現地で稼ぐためのプラットフォーム構築
二国間協力の基本的な方向性と具体的なプロジェクト
をまとめた「日・サウジ・ビジョン 2030」の下、サウジア
ラビアへの進出・展開を目指す日本のエンターテイメント
企業
(遊園地・テーマパーク、
イベント)
の発掘に向けて、
JETRO等との連絡・調整を実施した。
(ウ)コロナ後の訪日外国人観光客の回復に向けた取組
コロナ後の訪日外国人観光客の回復を図るためには、デ
ジタル技術により旅の安心・安全を確保する非接触型サー
ビスの環境を整える必要がある。2019 年度は、デジタル技
術の活用例を記載した「スマートリゾートハンドブック」
を取りまとめたため、
2020 年度には経済産業省のウェブサ
イトに公開するとともに、地方経済産業局等を通じて更に
横展開を図った。
また、インバウンド回復後の更なる消費拡大を目指し、
外国人観光客のライフスタイル・趣向・市場動向に沿う形
でインバウンド需要開拓を行うため、外国人専門家と連携
して商材やサービスの磨き上げ、プロモーション、展示及
び販売、商流構築等の取組を支援する「外国人専門家との
共創によるインバウンド需要拡大事業」を引き続き実施し
た。
(2)株式会社海外需要開拓支援機構
株式会社海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)
を通じ、我が国の生活文化の特色を生かした魅力ある商品
又は役務の海外における需要を開拓する事業活動に対し、
リスクマネー供給や助言等の支援を実施した。
2020 年度は、
合計8件、約 115 億円の支援決定を行った(累計 51 件、約
1,072 億円)。
1.2.観光・集客関連産業
観光振興については、
「明日の日本を支える観光ビジョ
ン」
(平成 28 年3月 30 日明日の日本を支える観光ビジョ
ン構想会議決定)や「観光立国推進基本計画」
(平成 29 年
3月 28 日閣議決定)
において、
訪日外国人旅行者数を 2020
年までに 4,000 万人、2030 年までに 6,000 万人、訪日外国
人旅行消費額を 2020 年までに8兆円、
2030 年までに 15 兆
円へと増やすこと等を目標として掲げ、
「観光先進国」
への
新たな国づくりにむけて、政府一丸となって取り組んでい
くことを決定。この結果、2019 年度の訪日外国人観光客数
は 3,188 万人と7年連続で過去最高を更新した。
しかしながら、2020 年3月以降、コロナの影響による入
国制限で訪日外国人観光客数は激減。
2020 年7月に策定し
た「観光ビジョン実現プログラム 2020」では、まずは国内
旅行需要の喚起と観光産業の回復・体質強化を図り、イン
バウンドについては各国との人的交流が回復するまでの
時間を活用して、上質なサービスを求める旅行者に対応し
た施設設備や新たなコンテンツ作りを推進していくこと
が明記された。
同年 12 月には
「感染拡大防止と観光需要回
復のための政策プラン」も策定された。
また、コロナの影響により、多くの展示会は中止・延期
を余儀なくされ、展示会産業は厳しい状況となり、そうい
った展示会産業の現状と、コロナ禍での新たな生活様式に
対応した展示会等の事例を調査する委託事業を実施した。
さらに、展示会産業および遊園地産業に対しては、新型
コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言等の影響に 287より中止・延期・休園した展示会・遊園地のキャンセル費
用等を補助した。
1.3.ファッション政策
若手デザイナー支援コンソーシアムにおけるデザイナー
支援策の実施
2017 年に開催した
「ファッション政策懇談会」
にて議論・
検討された「政策提言(平成 30 年2月 23 日公表)
」を受け
て、2018 年に「若手デザイナー支援コンソーシアム」を設
立。協力機関と連携し、
「経営面」、「ものづくり面」、「販路
/ビジネスモデル面」における各種若手デザイナー支援策
を引き続き実施した。
図 若手デザイナー支援コンソーシアムについて(経済産
業省HPより)
1.4.デザイン政策
「グッドデザイン賞」
(日本デザイン振興会主催)、
「キ
ッズデザイン賞」(キッズデザイン協議会主催)、「機械
工業デザイン賞」(日刊工業新聞社主催)、「日本サイン
デザイン賞」(日本サインデザイン協会主催)等の後援及
び表彰を通じデザイン振興を支援した。
また、
地域における高度デザイン人材の活動促進を図る
ことを目的として「地域活性化に資する高度デザイン人材
の活動の在り方に関する調査研究」を実施し、デザインを
実践する際に役立つ共創ノウハウ等を報告書に取りまと
めた。
1.5.2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大
会に向けた取組
東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技大会の開
催により、日本が世界から注目を集めるこの機会を最大限
に活用し、国際社会における日本のプレゼンスを高めると
ともに、東日本大震災をはじめとする災害を乗り越え、被
災地復興、地方創生を含め日本経済の再興を進めることが
必要である。また、コロナ禍の影響によって開催が1年延
期となり、安全安心な大会の開催に向けた準備が重要とな
る。
経済産業省としては、関係省庁と連携しながら、テレワ
ークの集中的な実施を産業界に呼びかけるなどして、コロ
ナ感染防止対策としての人流抑制および交通輸送の円滑
化を推進してきた。また、電力の安定供給確保、サイバー
セキュリティ対策などにも取り組んでおり、安全・安心な
大会の実現に向けて支援した。
また、東京オリンピック・パラリンピックを機に地域活
性化を目指す有志の市町村の団体
「2020 年東京オリンピッ
ク・パラリンピックを活用した地域活性化推進首長連合
(平成 27 年発足、
令和2年度末時点加盟数:582 市町村)」との連携により、地域の魅力発信等を支援した。
国際博覧会出展事業
1.2020 年ドバイ国際博覧会への参加
アラブ首長国連邦・ドバイで開催される 2020 年ドバイ
国際博覧会は、
「心をつなぎ、未来をつくる」のテーマのも
と、国際博覧会条約に基づく中東初の登録博(大規模博)
として、
2021 年 10 月1日から 2022 年3月 31 日までの 182
日間、約 2,500 万人の入場者数を見込んで開催される(当
初は 2020 年 10 月 20 日から 2021 年4月 10 日までの開催
を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響に鑑
み、
約1年会期が後ろ倒しになった)。参加を表明している
国は 192 ヵ国。
2020 年度は、コロナ禍で制限のある中、日本館の建設を
進めるとともに、コンテンツ及び運営の見直し、ジャパン
デー等のイベント内容を検討し、2020 年 12 月には日本館
のアテンダントの募集を開始した。また、新型コロナウイ
ルス感染症の状況を踏まえ、バーチャル日本館などのデジ
タル技術を活用した展示手法を検討し、追加的に実施する
こととした。 288さらに、日本館への協賛、寄付の募集を継続し、協賛企
業3社追加(合計 30 社1団体)
、寄付企業4社追加(合計
8社)について 12 月 11 日に公表した。
2.2025 年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に向けた準
備の本格化
2018 年 11 月 23 日にパリで開催された第 164 回博覧会国
際事務局(BIE)総会において投票が行われ、2025 年の
国際博覧会の大阪・関西への誘致が決定した。万博の開催
に向けて、経済産業省は様々な準備を進めている。
くろまる2025 年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の概要
テーマ:いのち輝く未来社会のデザイン
(Designing Future
Society for Our Lives)
サブテーマ:Saving Lives(いのちを救う)
、Empowering
Lives(いのちに力を与える)
、Connecting Lives(いのち
をつなぐ)
コンセプト:People’s Living Lab(未来社会の実験場)
開催期間:2025 年4月 13 日〜10 月 13 日(184 日間)
開催場所:大阪府大阪市此花区夢洲
2020 年2月、公益社団法人 2025 年日本国際博覧会協会
(以下「協会」という。
)は、協会の主催イベントなどの広
報・プロモーションに取り組む「2025 年日本国際博覧会ア
ンバサダー」を任命した。
2020 年7月から、日本館の基本的な方針(ミッション、
コンセプト、建築・展示・情報発信計画等)を策定するこ
とを目的として、
9名の有識者参画の下、
「日本館基本構想
ワークショップ」を計5回開催し、2021 年4月に日本館基
本構想を公表した。
8月 25 日には、ロゴマーク選考委員会によりロゴマー
クが決定された。そのデザインはメディアやSNS等で大
きな話題となり、広く関心を集めた。
10 月には、機運醸成活動の一環として、参加型プログラ
ムである「TEAM EXPO 2025」を立ち上げた。SDGs達成
を応援することなどを目的として、協会が中心となり、企
業・自治体など幅広い主体が様々な活動を進めている。
9月 16 日には「令和七年に開催される国際博覧会の準
備及び運営のために必要な特別措置に関する法律」
(平成
31 年法律第 18 号)が全部施行された。同法に基づき、国
際博覧会担当大臣として井上信治大臣が就任し、同時に、
総理大臣を本部長とし全ての国務大臣で構成される 2025
年国際博覧会推進本部が内閣に設置された。
12 月1日にオンラインで開催された第 167 回BIE総会
において、大阪・関西万博の登録申請が承認された。承認
後直ちに、150 か国・25 国際機関を目標とする参加招請活
動を開始した。
12 月 21 日には、
第1回 2025 年国際博覧会推進本部が開
催され、
「2025 年に開催される国際博覧会(大阪・関西万
博)の準備及び運営に関する施策の推進を図るための基本
方針」
(以下、基本方針)の決定などを行った。同日に閣議
決定された基本方針では、大阪・関西万博を新たな技術や
システムを実証する「未来社会の実験場」とし、カーボン
ニュートラルやデジタル化等の幅広い分野でオールジャ
パンでの取組を推進していくことが示された。
12 月 25 日には、協会の「2025 年日本国際博覧会基本計
画」が公表された。基本計画では、万博の開催に必要な事
業や方針が示され、円環上の主動線と離散型のパビリオン
を組み合わせた新たな会場のイメージ図も披露された。
2021 年3月1日には、2025 年国際博覧会推進本部の下
に設置されている関係府省庁連絡会議の第1回会議が開
催され、関係府省庁の今後に向けた取組説明や幹事会・分
科会の設置について議論された。経済産業省からは日本の
革新的な技術を世界に向けて発信していくことを検討す
る旨、表明した。

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