第1節 資源エネルギー庁
石油・天然ガス政策··································································· 407
1.石油・天然ガス政策の概要 ························································· 407
2.原油価格の推移 ··································································· 407
3.上流(開発)政策について ························································· 408
3.1.石油・天然ガス資源開発の推進 ··············································· 408
3.2.産油・産ガス国との関係強化 ················································· 409
3.3.国内資源開発の推進 ························································· 410
3.4.流動性の高いLNG市場の構築 ··············································· 411
4.中・下流(精製・流通)政策 ······················································· 411
4.1.石油精製業への政策 ························································· 411
4.2.石油流通業への政策 ························································· 412
5.LPガス政策 ····································································· 413
5.1.LPガスの安定供給の確保 ··················································· 413
5.2.流通の合理化・効率化 ······················································· 413
5.3.取引の適正化 ······························································· 413
5.4.需要家側における燃料備蓄の推進 ············································· 413
6.バイオ燃料政策について ··························································· 413
7.地熱政策について ································································· 414
8.石油・LPガス備蓄制度 ··························································· 415
8.1.石油備蓄制度 ······························································· 415
8.2.LPガス備蓄制度 ··························································· 416
石炭、資源及び海洋開発政策··························································· 416
1.石炭政策 ········································································· 416
1.1.石炭需給の状況 ····························································· 416
1.2.石炭政策の概要 ····························································· 416
2.鉱物資源政策 ····································································· 417
2.1.鉱物資源産業の現状 ························································· 417
2.2.個別施策の概要 ····························································· 419
3.海洋開発施策 ····································································· 420 407石油・天然ガス政策
1.石油・天然ガス政策の概要
我が国は、2度のオイルショックの経験を踏まえ、
エネ
ルギー・セキュリティー向上の観点から一次エネルギーに
占める石油依存度の低減を図り、1973 年度(第一次オイ
ルショック時)には 75.5%だった我が国の一次エネルギ
ー総供給に占める石油依存度は、2010 年度には 39.8%ま
で低下した。
しかし、2011 年に発生した東日本大震災及びそれによ
る原子力発電所の停止により、
原子力の代替発電燃料とし
て、石油依存度は再び上昇に転じた。2015 年度の石油依
存度は、41.0%となっている。
表:石油依存度の推移
石油依存度
1973 年度(第一次オイルショック) 75.5 %
1979 年度(第二次オイルショック) 70.1 %
1990 年度 55.9 %
1995 年度 53.6 %
2000 年度 49.1 %
2005 年度 46.8 %
2010 年度 39.8 %
2015 年度 41.0 %
(注記)石油依存度:
国内石油供給量/一次エネルギー国内供給量(%)
(出典)
「総合エネルギー統計」をもとに作成
一方、
天然ガスは、
石油に比べて地政学的リスクも低く、
化石燃料の中で最も温室効果ガスの排出が少ないクリー
ンなエネルギー源として、
第一次オイルショック以降、その存在感を強めてきた。
東日本大震災以降はその増加傾向
がさらに加速化し、
一次エネルギー国内供給に占める割合
は、1973 年度は 1.6%であったところ、2010 年度には
19.2%、
2015 年度には 24.3%を占めるまでになっている。
表:天然ガス依存度の推移
天然ガス依存度
1973 年度(第一次オイルショック) 1.5 %
1990 年度 10.7 %
2000 年度 13.8 %
2010 年度 19.2 %
2015 年度 24.3 %
(注記)天然ガス依存度:
国内天然ガス供給量/一次エネルギー国内供給量(%)
(出典)
「総合エネルギー統計」をもとに作成
このとおり、石油・天然ガスは、国民生活・経済活動の
基盤であり、
特に災害時のエネルギー供給において重要な
役割を占めることから、
その安定供給の確保は今後ともエ
ネルギー政策上重要な課題である。
一方で、
石油についてはほぼ全量を輸入に依存し、その
多くを地政学リスクの高い中東地域に依存(2016 年度の
中東依存度は 87.2%)している状況にある。
表:輸入原油の中東依存度の推移
中東依存度
1973 年度(第一次オイルショック) 77.5 %
1979 年度(第二次オイルショック) 75.9 %
1985 年度 68.8 %
1990 年度 71.5 %
2000 年度 87.1 %
2010 年度 86.6 %
2016 年度 87.2 %
(出典)資源・エネルギー統計年報・月報を基に作成
我が国としては、
石油・天然ガスの安定的かつ低廉な供
給確保に向けて、
上流分野においては、独立行政法人石油
天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)を通じたリ
スクマネー供給や、
政府による資源外交の積極的な展開等
により供給源の多角化に取り組むとともに、
国内資源開発
にも取り組んでいる。また、中流分野においては、石油精
製分野や石油・LPガスの備蓄等の政策に取り組んでおり、
これらの取組を総合的かつ戦略的に推進していくことに
より、エネルギー安全保障の実現を目指している。
2.原油価格の推移
2014 年 7 月以降に急落した、WTI(ウェスト・テキ
サス・インターミディエイト)原油価格は、中国をはじめ
とした世界経済の先行き不透明感や、米国、ロシア、石油
輸出国機構(OPEC)加盟各国等、主要産油国の高水準
生産を受けた供給過剰感等から、2015 年度も下落基調が
続き、2016 年2月には、2003 年以来の安値水準となる 26
ドル台/バレルまで下落した。その後は、年後半以降の需
給引き締まり見通し等を受け上昇に転じ、11 月にOPE
C加盟国が約8年ぶりに減産で合意、12 月にはOPEC
加盟・非加盟主要産油国が約 15 年ぶりに協調減産で合意
して以降は、おおむね 50 ドル/バレル前後で推移した。
原油価格の低迷により、石油・天然ガス田を開発する、
いわゆる上流開発の投資額は、
2年連続で減少した。この
上流開発投資の減退は、
中長期的には供給逼迫による原油
価格の高騰につながるものであるため、
上流開発投資の促 408進が重要となっている。
図:WTI原油価格の推移
3.上流(開発)政策について
石油・天然ガスの大部分を海外からの輸入に依存する我
が国において、
石油・天然ガスの安定供給の確保を実現す
るため、
我が国企業による海外における資源権益の獲得が
必要となる。
しかしながら、2014 年7月以降の原油価格の低迷を受
け、世界全体で上流開発投資が縮小している。IEA(国
際エネルギー機関:International Energy Agency)によ
ると、2015 年、2016 年と2年連続で減少し、また、2016
年は 2014 年比で約 51%減の 4,330 億ドルであった。2017
年は微増が予想されているものの、
引き続き世界的な上流
開発投資の低迷が続いている。こうした状況は、
我が国上
流開発企業においても同様であり、
原油価格低迷を受けて、
純利益及び開発投資額が大幅に減少している。
この状況が
続けば、中長期的には、
新興国が牽引する需要の増加に供
給力が追いつかなくなり、
原油・天然ガス価格の急騰する
危険性がある。
図:世界の上流開発投資の落ち込み
(出典)IEA「World Energy Outlook 2016」
こうした中、
我が国企業による石油・天然ガス開発を継
続させるため、
政府としては、
JOGMECを通じたリス
クマネー供給や、
政府による積極的な資源外交等の取組を
さらに加速化させていく。
また、
最も安定的な供給源となる、
国内の資源開発にも
取り組んでいく。
我が国では、エネルギー基本計画(2010 年6月閣議決
定)において、国産を含む石油・天然ガスの自主開発比率
(石油及び天然ガスの輸入量及び国内生産量の合計に占
める、
我が国企業の権益下にある石油・天然ガスの引取量
(国産を含む)の割合)を 2030 年までに 40%以上とする
という目標を掲げており、2016 年度は過去最高水準の
27.4%となった。
この目標の達成に向け、
引き続き自主開
発比率の更なる向上、
ひいてはエネルギー安全保障の強化
に努めていく。
図:自主開発比率の推移
3.1.石油・天然ガス資源開発の推進
前述のとおり、2014 年夏以降原油価格が低迷し、世界
的に上流開発投資が低迷、
将来の需給ひっ迫が懸念される 409中、2016 年5月、我が国が8年ぶりに議長国を務めたG
7伊勢志摩首脳会議において、
エネルギー価格の下落と乱
高下が、
世界経済の将来の成長に対するリスクとなり得る
点が共有され、
上流開発投資の促進に主導的な役割を果た
すことが首脳間でコミットされた。
他方、原油価格の低迷に伴い、
資源権益の資産価格も低
下するなど、優良資産を効率的に獲得するとともに、
非戦
略的資産の売却・処分や企業買収等の思い切った投資判断
を通じて、自主開発比率を飛躍的に向上させ、
エネルギー
安全保障を強化する絶好の機会でもあると言える。
こうした背景から、2016 年秋の臨時国会において、J
OGMEC法改正法案を提出し、
同年 11 月に可決・成立、
同月に公布・施行され、JOGMECによるリスクマネー
供給機能を大幅に強化した。
具体的には、JOGMECの出資支援の対象を拡充し、
石油ガス田の個別権益の取得のみならず、
我が国企業が行
う海外の資源会社の買収や資本提携に対する支援、
我が国
企業が探鉱を手掛けた油田の開発に対する支援を可能と
するほか、
民間企業では実施困難な海外の国営石油企業の
株式の取得をJOGMECが直接行うことが可能となっ
た。
この法改正によって拡充された機能を含め、
JOGME
Cによるリスクマネー供給等による支援を通じた自主開
発の推進や海外のフロンティア地域における地質構造調
査の実施等、総合的な石油・天然ガスの上流開発政策を積
極的に推進している。2016 年度は以下の事業を実施した。
(1) 石油・天然ガスに係る探鉱出資・資産買収等出資
JOGMECにおいて、
我が国資源開発会社等による石
油・天然ガスの探鉱・開発や油ガス田の買収等を資金面で
支援するため出資を行っている。
(2) 石油・天然ガスに係る債務保証
石油・天然ガスの開発事業資金や資産買収に関連する資
金の借入に際し、
JOGMECにおいて債務保証を実施し
ている。
(3) 海外地質構造調査等事業
世界においても探鉱実績が少なく、
事業リスク等が高い
海外のフロンティア地域等において、
JOGMECが、地質構造の調査を行うことにより、
我が国企業の進出を促進
する。
2016 年度は、
2014,2015 年度に実施したケニア及び
セーシェルに加え、
ウズベキスタンでの地質構造調査を実
施した。
(4) 海外投資等損失準備金
海外で行う石油・天然ガス等の探鉱・開発事業に対する
投資等について、事業失敗による損失等に備えるために、
投資等を行った内国法人に一定割合の準備金の積立を認
め、これを損金に算入することを認める制度である。
3.2.産油・産ガス国との関係強化
産油・産ガス国における日本企業の権益の獲得・更新等
を図っていくため、
総理大臣や閣僚級を始めとするハイレ
ベルな資源外交を積極的に展開するとともに、
資源国との
多面的な関係を強化するため、
技術や医療面での協力・人
材交流・投資促進・インフラ整備など相手国のニーズに合
わせて日本の強みを活かした協力を幅広い分野において
推進している。
引き続き、
我が国企業による権益の獲得に
貢献すべく、2016 年度は以下の取組を実施した。
(1) 資源外交の積極的展開
世界有数の埋蔵量と生産量を誇る巨大油田群を保有す
るアラブ首長国連邦(UAE)について、2015 年度に引
き続き、2016 年5月、11 月、2017 年3月に高木経済産業
副大臣が、2017 年1月には世耕経済産業大臣が訪問し、
ムハンマド・アブダビ首長国皇太子を始めとする政府要人
との意見交換を行うことにより、2018 年に権益期限を迎
えるアブダビ海上権益等の日本企業の石油権益の獲得延
長について働きかけを行った。その結果、2017 年1月、
国際石油開発帝石株式会社(INPEX)が保有するアブ
ダビ海上のサター油田及びウムアダルク油田(合計生産
量:日量約 3.5 万バレル)の権益期限の延長について、
アブ
ダビ国営石油会社
(ADNOC)との間での基本合意した
(権益比率 40%、25 年間)。
また、我が国と地理的にも近接し、豊富な石油・天然ガ
スの埋蔵量を有するロシアとは、2016 年5月にソチで、
12 月に山口及び東京で日露首脳会談が行われた。この会
談では、
安倍総理大臣からプーチン大統領に提案した8項
目の「協力プラン」について、企業等が行うプロジェクト 410に関する文書に署名が行われた。全部で 82 ある成果文書
のうち、政府・当局間のものも含め、石油・天然ガス開発
に係る文書は計 13 件あり、これらのプロジェクトの実現
が進むことで、今後ロシアからの安定的かつ低廉な石油・
天然ガス供給の増加が見込まれる。
(2) 産油・産ガス国開発支援等事業
資源国との戦略的かつ重層的な関係を構築するため、資源国のニーズに対応して、人材育成・交流、先端医療、環
境対策技術など、
幅広い分野での協力事業を日本企業等の
強みを活かし実施するとともに、
資源国に対する日本から
の投資促進等について支援した。2016 年度は、UAEに
おける我が国先端医療技術の導入支援、日アブダビ教育・
交流センター運営等の留学促進事業等のプロジェクトを
実施した。
3.3.国内資源開発の推進
日本周辺海域における石油・天然ガス等の国産資源は、
最も安定的な供給源であるため、
国内開発の推進も併せて
実施していく必要がある。
そのため、
「海洋基本計画」
(2013
年4月閣議決定)・「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」
(2009 年3月策定、2013 年 12 月改訂)を踏まえ、その開
発を計画的に進めている。
(1) 国内基礎物理探査
2008 年2月に経済産業省の公船として導入した三次元
物理探査船「資源」を用いて、我が国周辺海域での石油・
天然ガスの賦存データを取得すべく、2008 年度より国に
よる探査を計画的に実施している。2016 年度は、我が国
周辺の4海域(西津軽海域、天北西方海域、鳥取から兵庫
沖海域、
茨城沖海域)
において探査を実施し、
約 5,350 km2
の三次元物理探査データの取得及び取得したデータの処
理・解析を行った。また、西津軽海域においては、初の日
本人主体による探査を実施した。その結果、2016 年度末
時点で累計約 4.8km2
もの探査を達成した。現在のペース
で順調に進めば、
2018 年度末までに累計約 6.2 万 km2
の海
域の探査・収集を行う、
との目標を達成する見込みである。
また、
6月から 10 月末に島根・山口沖にて基礎試錐(試掘調査)を実施した。目標としていた地層において、薄い
ガスの層やガスの徴候を確認し、さらに、
最深部で高圧の
ガス層を示唆する想定外の強いガス徴に遭遇するという
成果を得た。
本試掘により得られた地質データの詳細な解
析・評価により、
島根・山口沖におけるガス埋蔵の可能性・
有望性をさらに高める情報が得られたことから、
今後本海
域における日本企業による探鉱活動の活性化およびガス
田の発見が期待される結果となった。
(2) メタンハイドレートの開発・商業化
メタンハイドレートは、
メタンガスと水が低温・高圧の
状態で結合した氷状の物質で「燃える氷」とも称される。
日本周辺海域での賦存が確認されており、
将来の国産資源
として期待されている。
他方、
その商業化に向けては技術
的な課題が多く、現在その整備に取り組んでいる。
主に太平洋側に存在する砂層型メタンハイドレートに
ついては、2017 年度に実施予定の第2回海洋産出試験に
向けた事前の準備として、2016 年5月から6月にかけて
試験実施海域において生産坑井等の事前の掘削作業を実
施するとともに、2017 年度以降の具体的な目標やスケジ
ュール等の確認や見直しを実施した。
主に日本海側に存在する表層型メタンハイドレートに
ついては、2013 年度から 2015 年度にかけて日本海側を中
心に資源量の把握に向けた調査を実施し、
メタンハイドレ
ートが存在する可能性があるとされる
「ガスチムニー構造」
を合計で 1,742 箇所確認した。
また、上越沖の1箇所にお
いて、
表層型メタンハイドレートの存在量を試算したとこ
ろ、
メタンガスに換算して約6億m3
(我が国の年間天然ガ
ス消費量の約2日分に相当)
の存在が見込まれるとの結果
を得、
その結果を9月に公表した。
この調査結果を踏まえ、
2016 年度後半より表層型メタンハイドレートの回収技術
に関する調査研究も開始した。
(3)水溶性天然ガス
非在来型の天然ガスである水溶性天然ガスについては、
我が国は世界最大の生産国であり、
これらに含まれるヨー
ドの生産量は世界の3割以上
(世界第2位)
を占める重要
な国産資源である。
このため、
水溶性天然ガスの生産量拡
大や効率的な開発を目指し、2015 年3月に業界及び有識
者からなる「水溶性天然ガス田の生産に係る技術検討会」
において取りまとめた、
かん水還元強化技術の調査・試験
を 2015 年度から引き続き実施した。 4113.4.流動性の高いLNG市場の構築
我が国は世界のLNG需要の約1/3を占める世界最
大の需要国である。
LNGは化石燃料の中で最も温室効果
ガスの排出が少ない事に加え、2016 年度の中東依存度が
約 24%と石油に比べ調達先の多角化が進んでおり、エネ
ルギー・セキュリティーの観点からも重要なエネルギー源
である。
これまで、日本・韓国・欧州が世界の主要なLNG需要
地域であったが、近年その状況が変化しており、特に、中
国やインドを始めとしたアジア地域が、
国内エネルギー需
要の急増や国内ガス生産の減少等を背景に、
今後の世界の
LNG需要拡大を牽引していくことが見込まれている。また、欧州では、天然ガス供給の対ロシア依存度低減を目指
すフランスやイタリア、
東欧諸国などの国々で、
LNG輸
入量の拡大や新規輸入を目指した計画が進められている。
LNGの調達に際しては、
これまでの伝統的なLNG契
約は、長期契約がその太宗を占め、
また原油価格に連動す
る価格決定方式が通常であったため、
東日本大震災後の原
油高の影響等により、
その調達価格の高騰が課題となって
いた。
一方で、米国や欧州では、
原油価格に連動する価格決定
方式ではなく、
ガスそのものの需給を反映した価格の影響
力が増し、また、世界的なLNG需要の拡大や、米国や豪
州等からのLNG輸出量の増加が見込まれている。
加えて
国内では電力・ガス小売全面自由化が予定されており、LNGを取り巻く環境変化により、
需要家のLNG調達行動
が変化していくことが見込まれる。
こうした環境変化は、
より柔軟で流動性の高いグローバ
ルなLNG市場の実現の好機であり、
合理的な価格で安定
的にLNGを調達する環境を整備し、
我が国のLNG需給
安定化、価格の抑制・安定化に繋げていくことが期待され
ている。
このため、我が国は、
流動性の高いLNG市場の構築に
向けて、取り組むべき課題をまとめた「LNG市場戦略」
を、2016 年5月に北九州市で開催されたG7エネルギー
大臣会合において、林経済産業大臣より発表した。
これに加えて、LNG市場の発展に向けた生産国・消費
国間の連携を強化するために、2016 年 11 月に東京で「L
NG産消会議 2016」を開催し、閣僚級、関係企業のトッ
プを含め、世界約 32 か国・地域から 1,000 人を超える関
係者が参加した。
当会議において、
世耕経済産業大臣より、
2016 年5月に発表した「LNG市場戦略」において重要
とされている、
流動性の高いLNG市場を実現するための
3つの基本要素
(1仕向地条項の緩和等によるLNGの取
引容易性の向上2LNG関連設備への第三者アクセスの
実現等オープンかつ十分なインフラの整備3LNGの需
給を反映した価格指標の確立)
について、
日本が主導して
推進していくこと等を世界に発信し、
具体化に向けた大き
な一歩となった。
今回の会議では、
柔軟で流動性のあるL
NG市場の発展に向けた企業の取組、
アジアにおけるLN
G利用促進に向けた産消の連携、合理的で利便性・透明性
の高いLNG価格指標の確立について活発な議論が行わ
れた。
また、
東京商品取引所が 11 月に海外の価格報告機関(プラッツ、シンガポール取引所)との間で、アジアのLNG
市場発展に向けた協力及び電力市場発展に関する経験の
共有に関する覚書を締結するなど、
民間においてもLNG
取引活性化に向けた取組が進んでいる。
4.中・下流(精製・流通)政策
4.1.石油精製業への政策
石油製品需要見通しによれば、
今後、
石油製品の国内需
要は大きく減少することが見込まれる状況にある。一方、
世界の石油製品需要は今後も増加していく見通しである。
特に、
アジア地域においては、
顕著な需要増加とあわせて、
製油所の新設や増設により、
石油精製能力も増加し、
国際
競争の激化が予想される。
このような状況を踏まえ、
政府では、
2016 年 10 月に
「石
油精製・流通研究会」を設置し、将来の安定供給を支える
サプライチェーン構築に向けた政策的支援の方向性につ
いて、
各分野の有識者による議論を行った。
同研究会では、
国内製油所の国際競争力強化及び石油精製業の海外展開
の促進を図っていくとの今後の政策の方向性が示された。
また、政府としては、国内需要が減少していく中でも、
将来にわたり国内のエネルギー供給拠点となる製油所を
維持していくため、
製油所の精製効率の維持・向上を通じ、
原油の有効利用を図るべく、
「エネルギー供給構造高度化
法」
(高度化法)
に基づく判断基準
(以下
「告示」)を示し、
国内精製設備の最適化などを促進してきた。
具体的には、
これまで、
2010 年4月から 2014 年3月と、 4122014 年4月から 2017 年3月の2度の告示により、
製油所
における重質油分解装置及び残油処理装置の装備率の向
上を義務付けた。
二次告示によって国内製油所における残
油処理装置の平均装備率は 45%程度から 50.5%程度まで
向上した。
こうした取組により、
国内製油所の重質油分解装置等の
装備率は世界的に高い水準を実現した。
一方、
実際の分解
能力の活用は十分ではなく、
国際競争力の高い他国の製油
所と比べて多くの残渣油を生産している事が指摘されて
いる。このため、2017 年4月以降に向け、原油の有効利
用のみならず、
国際競争力強化の観点から、
重質油分解装
置等の有効活用
(稼働率向上、
製油所間連携、
能力増強等)
を促すための新たな告示の在り方の検討を行った。
地震等の災害対策については、2011 年3月に発生した
東日本大震災における経験を教訓として、
大規模災害が発
生した場合の石油サプライチェーンの早期回復を目的と
した対策に取り組んでいる。
例えば、2013 年度に実施した製油所における設備の地
震や液状化等に対する耐性総点検結果等を踏まえ、
入出荷
設備の被害最小化・早期回復を図るべく、
1耐震・液状化・
津波対策、
2設備の安全停止対策、
3入出荷バックアップ
能力増強策等の支援を実施した。2016 年度末時点で、各
石油精製・元売会社の製油所の耐震性強化等の進捗割合は
38%となっている。
また、各石油精製・元売会社に対して、南海トラフ巨大
地震等が発生した際に石油供給を早期回復させるべく、製油所からSS
(サービスステーション)
等に至る系列供給
網全体を包含した
「系列BCP」
(業務継続計画:Business
Continuity Plan)の見直しを要請している。各社が策定
した
「系列BCP」
については、
外部有識者で構成する
「系
列BCP格付け審査委員会」
において評価を実施し、
各社
において「被災製油所において、24 時間以内に平時の1
/2の入出荷機能を確保」
するために必要な取組が進めら
れている。2016 年度には、各社の格付け評価について、
前年度からの改善が見られた。
さらに、2012 年に石油備蓄法を改正し、災害時に石油
精製・元売各社が連携して石油供給を行うための
「災害時
石油供給連携計画」
の届出制度を導入した。
新たな制度の
災害時における円滑な活用に向けて、石油業界や内閣府、
地方公共団体と連携した訓練を実施している。
このような取組を進める中、2016 年4月に発生した熊
本地震においては、
系列BCPに基づく各社の取組に加え、
「災害時石油供給連携計画」に基づく対応などによって、
被災地に対する石油供給が概ね円滑に実施された。
4.2.石油流通業への政策
石油製品は、
省エネ等の進展により構造的な国内需要の
減少が見込まれるが、
経済活動や社会生活に不可欠な物資
として、
一般家庭を含む全国の最終消費者に対し、
平時か
ら安定供給を確保することが必要である。
他方で、
SSは、
厳しい経営環境により 1994年度末の 60,421か所をピーク
に、2015 年度末には 32,333 か所まで減少している。
2016 年4月に発生した熊本地震では、東日本大震災後
に整備した中核SSが発災後速やかに営業を再開し、警察・
消防等の緊急車両や災害復旧車両に対する優先的な給
油が発災後 10 日間で延べ 1,600 回行われるなど、概ね円
滑に燃料が供給された。
一方、
停電等により稼動停止する
SSが多く、
一部の地域で混乱が生じたことから、
災害時
に地域住民向けの燃料供給拠点となる自家発電機を備え
た「住民拠点SS」を今後 2019 年度頃までに全国 8,000
箇所整備する方針を固め、着手した。
さらに、平時から「石油製品のサプライチェーン」を維
持・強化するため、
地下タンクの入換や地下タンクの漏え
い防止措置等のSSが地域社会と共生していくために不
可欠となる環境・安全規制強化への対応や、SSの生産性
向上や地域の総合生活サービス拠点への転換によるSS
経営基盤の強化に対する支援を行った。
また、
SS数の減少に伴い、
近隣にSSがないいわゆる
SS過疎地も増加していることから、
SS過疎地対策を推
進するため、国、石油元売会社、石油連盟、石油商業組合
など業界団体等で組織するSS過疎地対策協議会のもと
で、自治体・地域住民等に対し、地域コミュニティに不可
欠であるSSの機能を維持するための取組を働きかける
とともに、
SS過疎地において地元の自治体のリーダーシ
ップのもと、
石油元売会社や石油販売業者、
国等が一体と
なって課題解決に取り組む一助となるよう、
「SS過疎地
対策ハンドブック」を取りまとめた。さらに、離島などの
地域における課題の解決を図るための支援についても引
き続き実施した。 4135.LPガス政策
LPガスは、
全国の約半数の世帯や大部分のタクシーで
使用されるなど国民生活に密着した重要なエネルギーで
あり、
今後もその安定供給等に向けて政策的な対応が求め
られるところである。
5.1.LPガスの安定供給の確保
LPガスの供給は、1960 年代までは国内の石油精製過
程から生産される分離ガスが中心であったが、
その後輸入
の比率が高まり、1980 年代以降、輸入比率は、3/4程
度で推移している。
我が国のLPガスの主な輸入先は、
中東諸国に大きく依
存している状況であったが、
米国のシェールガス随伴のL
Pガスの輸入がここ数年で増大した結果、2016 年度には
米国からの輸入が最も多く輸入全体の約 38%となり、中
東依存度は約 54%まで低下した。しかしながら、政情が
不安定な中東諸国への依存度が依然として高い状況であ
り、安定供給の確保は引き続き課題となっている。
(参照
図:LPガスの輸入の構成)
図:LPガスの輸入の構成
5.2.流通の合理化・効率化
LPガスは、
複雑かつ多段階の流通経路を経由して配送
されており、
また全国で約2万社ある小売事業者の大多数
が中小零細事業者であることから、
流通の合理化・効率化
による経費削減を行うとともに、
早急に構造改善を推進し
て強固な経営基盤を確立し、
競争力を強化することが課題
となっている。こうした状況下で、
小売事業者の中にはL
Pガス充填所の統廃合や集中監視システムを活用した効
率的な流通・販売体制の構築などの取組が進展している。
経済産業省としても、
LPガス販売事業者等の構造改善
に資する取組やLPガス充填所の共同利用の推進等に対
する支援を実施した。
5.3.取引の適正化
LPガスは、
消費者等から、
家庭用LPガスの取引にお
いて、
小売価格の不透明性や取引方法に対する問題点が指
摘されている。
電力・都市ガスが自由化される中、
LPガスが消費者か
ら選択されるエネルギーとなるためには、
これらの問題を
早急に是正する必要がある。
このため、2015 年2月に総合資源エネルギー調査会資
源・燃料分科会石油・天然ガス小委員会の下に、
「液化石
油ガス流通ワーキンググループ(以下「液石WG」)」を設
置し、
LPガス料金の透明性の促進を目指した対策等の審
議を行い、2015 年5月に報告書が取りまとめられた。
この液石WGの報告書を受け、2016 年2月には、
「液化
石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施
行規則
(平成9年通商産業省令第 11 号)」の一部改正や
「液
化石油ガスの小売営業における取引適正化指針」
を策定す
るなどし、
LPガスの料金の透明化の促進に資する措置を
講じた。
5.4.需要家側における燃料備蓄の推進
災害時において、燃料供給側における強靱化だけでは、
道路等が寸断した場合に、燃料供給が滞る可能性がある。
そのため、
避難所や社会的重要インフラなどにおいて、災
害時に自家発電機等を稼働させるための燃料備蓄を推進
することが求められる。
具体的には、避難所や病院・老人ホーム等に、災害対応
型LPガスバルクや石油タンクといった燃料タンク及び
自家発電機等を導入するための支援を実施した。
6.バイオ燃料政策について
バイオ燃料は、
植物等を原料として製造されるため、ラ
イフサイクルでの二酸化炭素の排出量が少なく、
地球温暖
化対策として期待されている。
また、運輸部門の石油依存
度の低減を図る観点からも有効な手段の一つである。
我が国では、
エネルギー供給構造高度化法に基づく「非
化石エネルギー源の利用に関する石油精製業者の判断の
輸入の構成(2016年度)
輸入合計 約1,050万トン 414基準」において、2011年度から2017年度までの石油精製業
者によるバイオエタノールの利用の目標量を設定してお
り、
2016年度は目標量である44万klの導入を達成した。また、
食料を原料としない次世代バイオエタノールの生産技
術を確立するため、研究開発を実施した。
さらに、
航空輸送分野における二酸化炭素の排出量削減
のため、
バイオジェット燃料の導入が国際的に期待されて
いるところ、
バイオジェット燃料の研究開発を実施すると
ともに、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技
大会期間中に、
バイオジェット燃料を用いたフライトを実
現するべく、各種課題の整理等を行った。
これらの取組を含め、
バイオ燃料の導入に向けた具体的
な支援措置は、以下のとおりである。
(1)税制措置
(ア)ガソリン税の免税措置
バイオエタノール等をガソリンに混合する場合、
混合し
たバイオエタノール分についてはガソリン税を免税した。
(2013年4月から2018年3月末まで)
(イ)バイオETBEの関税の無税化措置
ガソリンに混和するためのバイオ由来のETBEにつ
いて、関税を無税化した。
(1年間の暫定措置)
(ウ)バイオエタノールの関税の無税化措置
ガソリンに混和するためのバイオエタノールについて、
関税を無税化した。
(1年間の暫定措置)
(2)予算措置
(ア)バイオ燃料製造の有用要素技術開発
セルロース由来のバイオマスからのエタノール生産の
低コスト化・高効率化に向けて、
原料植物の改良生産技術、
有用糖化酵素・有用微生物によるエタノール発酵の生産技
術などにおいて技術開発を支援した。
(イ)セルロース系エタノール生産システム総合開発実証
事業
セルロース系バイオエタノールの要素技術の最適な組
合せ検証と一貫生産システムのパイロットプラント実証
による技術開発を支援した。
(ウ)戦略的次世代バイオマスエネルギー利用技術開発事業食糧生産活動に影響しない原料を用いた次世代技術の
開発と既存技術の高効率化を目指した実用化技術開発を
支援した。
(エ)微細藻類燃料生産実証事業費補助金
我が国のエネルギー自給率の向上及び温室効果ガス削
減の観点から、
福島県の土着の微細藻類を活用した国産バ
イオ燃料の生産を実用化するための技術開発を支援した。
7.地熱政策について
地熱発電は、ベースロード電源を担う再生可能エネ
ルギーであり、長期エネルギー需給見通し(2015年7
月16日経済産業省決定)においては、2030年度に設備
容量を約140〜155万kWまで増加するとの目標を掲げて
いる。
また、
我が国は、
世界第3位の地熱資源量
(2,347
万kW)を有していることから、地熱発電の導入拡大が
期待されている(参照:表 主要国における地熱資源
量及び地熱発電設備容量)。表:主要国における地熱資源量及び地熱発電設備容量
(出典)JICA作成資料(平成22年)及び産業総合技術研究所作成資料(平成2
0年)等より抜粋して作成
After R. Bertila(2015) Geothermal Power Generation in the World 2010-2014 Update
Report, roceedings World Geothermal Congress 2015,Melbourne, Australia, April2015一方、地熱資源開発にあたっては、開発コストが高く、
リードタイムが長いといった課題が存在するとともに、地域の方々への丁寧な説明も重要である。
これに対応し、地
熱発電の更なる導入を促進するため、
以下の措置を講じた。
(ア)地熱資源開発調査事業費補助金
地熱資源量を把握するため、
JOGMECが空中物理探
査等を実施するとともに、
地熱資源開発事業者が実施する 415地表調査や掘削調査等の26件に対して支援を実施した。
(イ)地熱開発理解促進関連事業支援補助金
地熱の有効利用等を通じて、
地域住民への地熱開発に対
する理解を促進することで、
地域との共生を図り、
地熱資
源開発を促進する事業を支援した。
ソフト事業
(セミナー
開催や地熱発電所視察等)44件、ハード事業(熱水を利用
したハウス栽培事業等)3件等に対して支援を実施した。
(ウ)地熱資源探査出資等事業
安定的な蒸気噴出を確認するための探査事業に対する
出資や、
発電に用いる井戸の掘削や発電設備の設置等を行
う開発事業に対する債務保証を実施した。2016年度は、岩手県の松尾八幡平地域における地熱資源開発事業につい
て、債務保証契約を締結した。なお、本案件は、初期段階
の地熱資源開発調査事業費補助金から、
最終段階の債務保
証まで、
JOGMECの一連の支援施策を全て活用した初
の案件である。
(エ)地熱発電技術研究開発事業
地下の地熱貯留層の探査精度の向上や、
発電に用いる井
戸の掘削期間の短縮化・低コスト化などに資する技術開発
を実施した。
(オ)環境アセスメント調査早期実施実証事業
地熱発電等の導入を加速化するため、
3〜4年程度を要
する環境アセスメントの手続期間を半減することを目指
した実証事業を実施した。
(カ)軽油引取税の課税免除の特例措置
地熱資源開発のために使用する動力付試すい機
(ボー
リング機械)の動力源で使用する軽油について、
軽油引取
税の課税を免除した。
8.石油・LPガス備蓄制度
8.1.石油備蓄制度
我が国の石油備蓄制度は、
国が所有する備蓄石油をJO
GMEC又は石油精製業者に管理委託している国家備蓄
と、
石油精製業者等による民間備蓄の二本立てとなってい
る。
(1)東日本大震災を踏まえた石油供給体制の強化
東日本大震災の経験を踏まえて 2012 年に改正・施行し
た「石油の備蓄の確保等に関する法律」に基づき、災害時
の石油供給体制の強化を行っている。
具体的には、ガソリン、灯油、軽油、A重油の4油種の
国家製品備蓄について、2014 年度には、国内需要の4日
分に相当する量を全国各地に分散して積み増し、
被災地に
おける供給体制を強化した。
(2)国家備蓄石油保有の考え方
国家備蓄石油については、地政学的リスクや国際エネ
ルギー情勢といった我が国を取り巻くエネルギー安全保
障環境の観点とともに、
将来的に減少傾向にある国内石油
需要についても勘案し、
十分な量を堅持していくことが必
要である。
2015 年7月総合資源エネルギー調査会資源・燃料分科
会の報告書で
「国家備蓄と産油国共同備蓄の 1/2 を合計し
て 90 日分程度の量」を確保すべきであるとの提言がなさ
れたことを受け、これまで石油備蓄目標では約 5000 万 kl
と、数量基準で示されていたところ、2015 年度策定の目
標では、
「国家備蓄と産油国共同備蓄の 1/2 を合わせて我
が国の輸入量の 90 日分程度に相当する量」を確保するこ
ととし、日数基準の考え方へと変更した。2016 年度末時
点で我が国は 171 日分を保有しており、IEA 加盟国 29 カ
国中9番目かつ平均程度の備蓄日数を維持している。
(3)産油国の国営石油会社との共同備蓄事業
我が国の危機対応力向上のため、
政府支援の下でサウジ
アラビア及びアラブ首長国連邦の国営石油会社に国内の
民間原油タンクを貸与し、
我が国への原油供給が不足する
際には、
当該タンク内の原油を我が国向けに優先供給する
産油国共同備蓄事業を実施している。
サウジアラビア国営石油会社との間では、2013 年6月
に事業の延長に合意し、同年 12 月には貸与タンク容量を
拡大し、100 万 kl の原油タンクを貸与した。
また、2016 年9月、産油国共同備蓄事業の3年延長及
び 2017 年度中のタンク容量 30 万 kl 増量に合意し、同年
12 月、JOGMEC とサウジアラムコとの間で原油タンク貸借
等に係る更新契約を締結した。
アラブ首長国連邦との間では、2014 年2月に安倍総理
大臣とムハンマド皇太子との首脳会談において、
100 万 kl
までの貸与タンクの増量に合意し、同年 11 月には、高木
経済産業副大臣とアブダビ最高石油評議会
(SPC)スウ
ェイディ委員との間で、
本プロジェクトを継続・拡充する
覚書を締結した。 4168.2.LPガス備蓄制度
LPガスについても、その安定供給確保を目的として、
1981 年度より「石油の備蓄の確保等に関する法律」に基
づき、
民間のLPガス輸入業者による民間備蓄を実施して
いる。民間備蓄は、1988 年度末に現行の 50 日備蓄を達成
している。
また、民間備蓄に加えて、150 万トンを目標とする国家
備蓄事業を推進している。
国家備蓄は、
全国5ヶ所に建設
された国家備蓄基地において実施しており、このうち、
2005 年度に建設が完了した地上3基地(七尾基地(石川県)、福島基地(長崎県)
、神栖基地(茨城県)
)について
は、2008 年度中にガスインが終了した。
また、2012 年度に建設が完了した地下2基地(倉敷基
地(岡山県)
、波方基地(愛媛県)
)へのガスインを進めて
おり、2016 年度は 20 万トンのガスインを行った。これに
より、波方基地でのガスインが終了した。2017 年3月末
時点での国家備蓄量は 135 万トンとなっている。
石炭、資源及び海洋開発政策
1.石炭政策
1.1.石炭需給の状況
(1)世界の石炭需給
世界のエネルギー需給は、
新興国を中心とした経済成長
を背景に、2040 年に向け 1.3 倍に増加し、その中で石炭
消費は 2040 年に向け 1.1 倍に増加する見通し(一次エネ
ルギーの中で石炭の割合は、29%から 25%へ縮小する)。主な要因としては石炭火力発電による需要の増加であ
り、世界の石炭火力の発電電力量は 2040 年に向け約 1.2
倍に増加する見通し
(電源構成に占める石炭火力の割合は
41%から 30%へ縮小する)。(2)日本の石炭需給
日本の一次エネルギー需給において、石炭は約 27%を
占める中核的なエネルギーであり、電力構成においても、
石炭火力は、発電電力量の約 32%を占め、ベースロード
電源として重要な役割を果たしている。
一方、我が国は、
石炭需要のほぼ全量を海外から輸入し
(2015 年輸入量は 191 百万トン)
、豪州とインドネシアに
約8割を依存している。
また、
我が国は世界全体の石炭輸
入のおよそ 20%を占めるインド(2015 年輸入量は、222
百万トン)
、中国(2015 年輸入量は、204 百万トン)に次
いで世界第3位の石炭輸入国である。
(3)石炭の特徴
石炭は、石油、天然ガスに比べ、経済性、供給安定性に
優れている。
石炭の価格は熱量当たりの比較で原油・LN
Gの約 1/2〜1/3 である。また、石炭の可採年数は他の化
石燃料と比べて長く、石油や天然ガスの約2倍である。
図:燃料価格(CIF)の推移
(出典)エネルギー経済研究所 計量分析ユニット
1.2.石炭政策の概要
(1)安価で安定的な供給の確保
今後の新興国を中心とした石炭需要の増大を背景に、我が国の石炭の安定供給確保のため、
産炭国との政策対話や
共同調査等を通じて、
重層的に協力関係の強化等を図ると
ともに、
民間企業の権益確保支援を行うなど、
新たな石炭
供給源の確保への取組を実施した。
(ア)海外炭探鉱支援等事業
産炭国において、
我が国企業が行う探鉱活動を支援する
とともに、
新興の産炭国リスクの高い地域ではJOGME
Cが当該国政府、企業と共同で探鉱活動の支援を行った。
(イ)海外炭開発支援調査事業
産炭国において石炭を輸送するための鉄道や港湾等の
インフラ整備状況等の調査を行い、
調査報告会やセミナー
の開催を通じ、我が国企業等に情報共有し、企業の探鉱・
開発を支援した。加えて、産炭国において探鉱・開発段階
における様々な技術的課題に対応する事業者の取組を支
援した。
(2)環境に配慮した石炭利用の推進
石炭ガス化燃料電池複合発電とCO2分離・回収技術の
組合せによる次世代の石炭火力発電の実現を目指すなど、
主に以下のクリーンコールテクノロジー
(CCT)
の開発 417等を実施した。
(ア)石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業
石炭火力の発電効率を大幅に引き上げるIGFC
(石炭
ガス化燃料電池複合発電)とCCUS(CO2回収・利用
技術)
を組み合わせた次世代の石炭火力発電技術の実現を
目指し、基幹技術である酸素吹石炭ガス化複合発電
(酸素
吹IGCC)技術に関する実証事業に加え、2016 年度か
らCO2分離回収設備を追設する実証事業を開始した。
(イ)石炭利用技術開発
石炭の利用を積極的に推進するため、
環境に調和したC
CTの技術開発及び石炭の利用に伴い副次的に発生する
石炭灰の発生・利用実態調査等を実施した。
(ウ)クリーンコール技術開発
石炭火力発電の高効率化及びCO2分離・回収に関する
技術開発・調査を進めるとともに、
未利用資源の活用によ
る石炭調達先の多角化などを見据え、
低品位炭利用に関す
る技術開発・調査を実施した。
(エ)次世代火力発電に係る技術ロードマップ
IGFC等の次世代火力発電技術の早期確立、
実用化を
目指し、
火力発電の高効率化と環境負荷の低減を実現する
ため 2016 年6月に「次世代火力発電に係る技術ロードマ
ップ」を策定した。
(3)日本の低炭素技術の海外展開
世界的に気候変動問題へ政策的な対応の必要性が高ま
っている中、
我が国が有する世界最高水準の石炭火力発電
技術等の優れたCCTを海外に移転するため、
主に以下の
事業を実施した。
(ア)クリーンコール技術海外普及展開等事業
新興国において発電所の新規増設や老朽火力発電所の
リプレースの需要が見込まれるところ、
我が国が有する高
効率石炭火力の導入促進のため、
相手国と連携したFS事
業やモデル実証を実施した。
(イ)気候変動対応クリーンコール技術国際協力事業
石炭資源の需要が増加するアジア等において、
我が国の
優れたCCTの海外普及を目指し、
国際会議やセミナーを
開催、技術交流や研修事業等を実施した。
(4)国内石炭政策
我が国唯一の坑内掘炭鉱は、
釧路コールマイン株式会社
のみである。また、中小露天炭鉱は北海道に7炭鉱(2017
年3月末現在)ある。
国内炭生産量は約 126 万トン
(2016 年度実績)
であり、
石炭鉱山労働者数は 558 人(2017 年3月末現在:鉱員、
職員及び請負の合計)である。
2000 年3月に成立した「石炭鉱業の構造調整の完了等
に伴う関係法律の整備等に関する法律」
の施行に伴い、
「石
炭関係諸法」は 2001 年度末をもって廃止され、2016 年現
在は経過措置業務を実施している。
(ア)
産炭国に対する石炭採掘・保安に関する技術移転事業アジア地域を中心とした産炭国において、
我が国の炭鉱
技術者の派遣研修事業や、
海外産炭国の炭鉱技術者を国内
に受け入れる国内研修事業を実施。
これにより産炭国との
重層的な協力関係を強化し、
ひいては我が国への海外炭の
安定供給を確保することにつながった。
2.鉱物資源政策
2.1.鉱物資源産業の現状
(1)鉱物資源の特性
我が国は、
金属を含めた鉱物資源の大消費国であり、鉱
石の供給をほぼ全面的に海外鉱山に依存している。
鉱物資源は減耗性の資源であるとともに、
一般的に希少
性が高いことから、
新たな鉱物資源の供給源を確保するた
めの探鉱開発を不断に行うことが必要不可欠である。
表:資源の上位産出国(2016 年)
(2)産業活動を支える金属鉱物資源
金属鉱物資源は、自動車、家電、情報関連機器、電力網
等の基礎素材として国民生活及び産業活動に必要不可欠
なものである。
特に、
レアメタルは情報技術を中心とする
先端的な産業において不可欠なものであるが、
エネルギー 418資源とは異なり代替困難な素材である。
表:レアメタルの用途(例)
ニッケル ステンレス鋼、
IT関連分野
(電子部品)、リチウムイオン電池部材
リチウム リチウムイオン電池部材
コバルト 充電式電池(リチウムイオン電池部材)
レアアース ハイブリッド自動車用高性能磁石モーター
白金族(プラ
チナ・パラジ
ウム)
排ガス浄化触媒、電子材料(IC用接点)
アンチモン 難燃助剤(合成樹脂等)
、摩擦材(自動車
ブレーキ)
タングステン 高速度鋼、超硬工具(ドリル、カッター)
タンタル タンタルコンデンサ、超硬工具(バイト・
ドリル等)
バナジウム 高張力鋼、耐熱鋼(パイプライン、船舶、
橋梁等)
モリブデン ステンレス鋼、耐熱鋼・構造用合金(自
動車用、産業機械用)
マンガン 高張力鋼、構造用合金
クロム ステンレス鋼、構造用合金鋼、スーパー
アロイ(原子炉材、航空機部品等)
(3)鉱物資源産業の業態
1970 年代までは国内にも多数の金属鉱山が存在し、山
元に製錬所が設置され金属事業
(鉱山開発及び鉱石の製錬)
が行われていたが、
その後の円高や金属価格の低迷により、
鉱山部門を縮小した。
2000 年代以降、
新興国需要の前に、
日本への鉱石供給が危ぶまれ、
再び鉱山開発に向かい始め
ている。
また、
付加価値の高い電子材料事業部門の強化や、
より安定かつ低コストでの原料確保を図るため、
リサイク
ルを扱う環境関連事業の強化が図られている。
(ア)金属事業部門
国内外の鉱山で鉱石を採掘するとともに、
採掘した鉱石
を国内の製錬所において銅などの金属地金に製錬する事
業部門。代表的な事業所の例は次のとおり。
しろまる菱刈鉱山(鹿児島県:金鉱山)住友金属鉱山株式会社
しろまる佐賀関製錬所(大分県:銅)パンパシフィック・カッパ
ー株式会社
しろまる契島製錬所(広島県:鉛)東邦亜鉛株式会社
しろまる飯島製錬所(秋田県:亜鉛)秋田製錬株式会社
(イ)電子材料事業部門
金、白金、ニッケルなどの金属地金を電子関連製品向け
に加工する事業部門。
(ウ)環境関連事業部門
これまで培った製錬技術や施設を利用したリサイク
ル(自動車の鉛バッテリー、家電等)
、汚染土壌の浄化
など環境関連の事業部門。
(4)最近の鉱物資源価格の価格動向
銅価格は、1998 年以降、概ねトン当たり、1,500 ドル〜
2,000 ドル程度で推移していたが 2003 年以降急速に上昇
した。リーマンショックの影響で一時は下がったものの、
資源ナショナリズムなどの台頭で、
資源国の抱え込みが生
じ、2011 年3月には 10,000$/tを突破した。その後、価
格の低迷が続き、
2016 年3月時点では、4,800$/t で推移。
(参照 図:非鉄金属価格の推移)
図:非鉄金属価格の推移(2017 年3月)
(5)鉱物資源産業の性格
(ア)探鉱活動のリスク
鉱床の奥地化、
深部化、
世界的な鉱床の品位の低下等に
伴い、
探鉱には多大な資金と先進的な技術が必要となって
いる。
(イ)鉱山開発のリスク
近年、
鉱山開発の規模は経済性を追求するため、
大型化
する傾向にある。また、従来に比較し、環境対策などに多
額の資金が必要となっている。
(ウ)寡占化の傾向
世界的な鉱物資源メジャーは、
企業買収等により、収益
力を高めるとともに、資源供給のシェアを拡大。
(エ)中国を始めとするアジア諸国における需要増
近年、
中国を始めとしたアジア諸国では鉱物資源需要が
急増しており、鉱石の需給が急速に逼迫化しつつある。
(例)中国における銅地金の消費量
しろまる1997 年に 127 万トンであった消費量が 2007 年には 513
万トンと 3.8 倍に増加。 419しろまるこの間の増加分(359 万トン)は、日本における年間消
費量(128 万トン:2007 年)の 2.9 倍に相当。
(オ)EV・PHV等の次世代自動車向け車載用蓄電池に
必要な原料への需要増加
世界で環境・エネルギー制約が強まる中、EV・PHV
等の次世代自動車の普及が拡大し、
それに伴い車載用蓄電
池(液系リチウムイオン電池)市場も今後拡大し、大量生
産によるコスト競争が激しくなる見込み。
そのため、
それ
ら製品の原料となる銅、ニッケル、リチウム、コバルト等
の資源への需要増が見込まれている。
(6) 非金属鉱業の概要
我が国で採掘している非金属鉱物資源の大半は、
石灰石
及びけい石であり、
特に石灰石は、
我が国で自給できる鉱
物として、窯業製品(セメント等)や鉄鉱石の粉鉱石を焼
結鉱にさせる原材料等に利用されている。生産量は、1990年度から 95 年度の約2億トンのピークから、2015 年度で
は約 1.4 億トンと減少している。
表:非金属鉱業の概要(石灰石鉱業)
鉱山数 従業員数
(人)
生産量
(億トン)
1990 年度 323 9,382 2.0
1995 年度 319 9,217 2.0
2000 年度 291 8,362 1.8
2005 年度 260 6,948 1.7
2010 年度 254 6,645 1.3
2011 年度 253 6,583 1.4
2012 年度 230 6,426 1.4
2013 年度 227 6,290 1.5
2014 年度 223 6,275 1.5
2015 年度 224 6,418 1.4
(7)採石業の概要
採石業は、
業況の活況と砂利資源の枯渇に伴いその重要
性を増し、生産量は 1990 年に約7億トンとピークに達し
たが、2015 年では約 2.3 億トンと減少している。
表:採石業の概要
採石場数 従業員数
(人)
生産量
(億トン)
1990 年 5,089 46,866 7.0
1995 年 4,706 43,755 5.5
2000 年 4,358 38,755 5.3
2005 年 3,594 26,383 3.5
2010 年 2,956 22,629 2.2
2011 年 2,879 22,574 2.1
2012 年 2,786 22,037 2.2
2013 年 2,732 21,625 2.3
2014 年 2,286 20,621 2.3
2015 年 2,279 20,355 2.3
2.2.個別施策の概要
(1)資源外交
中長期的に我が国企業による投資を促進し、鉱物資源
の供給源の多角化・安定供給確保につなげるため、
我が国
にとって重要かつ安定的な鉱物資源供給国や、
鉱物資源の
ポテンシャルは大きいもののインフラや鉱業政策面など
鉱業投資環境に課題を有する地域との継続的な関係構築
に取り組んだ。
チリについては、2014 年 7 月の安倍総理訪問時に署名
した日チリ間の鉱業分野における関係強化のための覚書
に基づき、2016 年4月にチリ鉱業省と共催で日智鉱業官
民合同会議を実施し、
協力強化に向けた具体的な取組内容
について合意。ペルーについては、2016 年 11 月、APE
C首脳会合・閣僚会合の開催に伴う安倍総理のペルー共和
国訪問に合わせて、
世耕経済産業大臣がエネルギー鉱山省
タマヨ大臣と、
鉱業分野に関する覚書を両国首脳会談の場
で署名し、
本覚書に基づく包括的な枠組みを通じて、日本
企業の投資促進と現地での操業環境を改善し、
加えてペル
ー共和国の経済発展に寄与することで、Win-Win な関係を
構築することとした。
アフリカ地域については、2016 年8月にケニアで開催
された TICAD VIで、エネルギー・資源開発を含むインフ
ラ案件のリスクマネー供給の拡大や、
次回までの3年間で
さらに 1,000 名の資源分野の人材育成を目標とした新た
な取組の実施を表明。
南アフリカ共和国については、2016
年 10 月に東京で開催された鉱業分野における「南アフリ 420カ共和国投資促進セミナー」
(経済産業省・独立行政法人
石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)共催)
の機会を利用し、
井原経済産業大臣政務官とズワネ鉱物資
源大臣とのバイ会談を実施、また、2017 年2月の「マイ
ニング・インダバ」の開催に合わせて、再び井原政務官は
ズワネ大臣とのバイ会談を行い、
その場で、
鉱業分野にお
ける両国間の協力関係の強化を図るための覚書に署名。マダガスカルについては、2017 年 2 月に井原経済産業大臣
政務官が同国を訪問し、
ラジャオナリマンピアニナ大統領
及びラクトゥアリマナナ財政予算大臣と会談し、
我が国へ
のニッケルの輸入や日本企業等が出資するプロジェクト
に悪影響を与えないための働きかけ等を実施した。
また、我が国のODAや政策金融等の政策手法を総動
員し、個別の資源国側の事情に合った協力事業を行い、二国間関係を戦略的に強化した。これらの施策とともに、JOGMECを通じた資源開発調査をアフリカ、
中央アジア、
東南アジア等の地域で実施、
更に探鉱出融資・債務保証の
リスクマネー供給などにより、
日本企業の権益取得を支援
した。
(2)海外探鉱開発支援
資源開発に係るリスクマネーの供給に加え、
海外におけ
る民間企業の探鉱活動を支援するため、
資源国との関係強
化の観点から、
我が国の環境保全技術や探査・採掘・選鉱・
製錬技術を活用し、
探鉱や開発調査、
共同での鉱山開発事
業を推進した。
(3)資源開発調査に係る技術協力を通じた人材育成等
鉱物資源を保有する開発途上国に対し、
地質調査、
ボー
リング調査など、
資源開発調査を通じた人材育成等を実施
した。
(4)レアメタルリサイクルの技術開発
非鉄金属製錬から発生するスラグや煙灰等の副産物か
ら、
ブレーキ材や難燃材に利用されるアンチモンを回収す
るための技術開発等を実施した。
(5)希少金属備蓄
代替が困難で、
供給国の偏りが著しい希少金属につい
て、短期的な供給障害等に備える備蓄を実施した。
平常時は適切に保管を行い、
供給障害等発生時には迅
速に備蓄を放出する制度により、
我が国産業競争力を支
えている。
3.海洋開発施策
我が国はエネルギー・鉱物資源の安定供給確保の対策と
して、資源産出国との関係強化、供給源の多角化・多様化
に努めており、
これに加えて、
他国の資源政策に影響され
ない安定的な自らの資源供給源を持つための取組を進め
る必要があり、我が国近海のエネルギー・鉱物資源の探
査・開発を行うことは極めて重要である。そのため、
「海
洋基本法」
(2007 年7月施行)及び「海洋基本計画」
(2008
年3月)に基づき策定した「海洋エネルギー・鉱物資源開
発計画」
(2009 年3月)に従い、その開発を計画的に進め
てきた。2013 年4月に改定した「海洋基本計画」や、最
近のエネルギー・鉱物資源を取り巻く諸情勢の変化を踏ま
え、
2013 年 12 月に
「海洋エネルギー・
鉱物資源開発計画」
を改定した。同計画において、鉱種毎に、新たな開発の目
標と達成にいたる筋道、
必要となる技術開発を記すととも
に、各省庁との連携、国と民間の役割分担、さらには、横
断的配慮事項として、人材育成、国際連携、海洋の環境保
全、
国民の理解促進に留意し、
適切に進めることとしてい
る。
(1)石油・天然ガス開発の推進(再掲)
日本周辺海域における石油・天然ガス等の国産資源は、
最も安定的な供給源であるため、
国内開発の推進も併せて
実施していく必要がある。
そのため、
「海洋基本計画」
(2013
年4月閣議決定)・「海洋エネルギー・鉱物資源開発計画」
(2009 年3月策定、2013 年 12 月改訂)を踏まえ、その開
発を計画的に進めている。
(1) 国内基礎物理探査
2008 年2月に経済産業省の公船として導入した三次元
物理探査船「資源」を用いて、我が国周辺海域での石油・
天然ガスの賦存データを取得すべく、2008 年度より国に
よる探査を計画的に実施している。2016 年度は、我が国
周辺の4海域(西津軽海域、天北西方海域、鳥取から兵庫
沖海域、
茨城沖海域)
において探査を実施し、
約 5,350 km2
の三次元物理探査データの取得及び取得したデータの処 421理・解析を行った。また、西津軽海域においては、初の日
本人主体による探査を実施した。その結果、2016 年度末
時点で累計約 4.8km2
もの探査を達成した。現在のペース
で順調に進めば、
2018 年度末までに累計約 6.2 万 km2
の海
域の探査・収集を行う、
との目標を達成する見込みである。
また、
6月から 10 月末に島根・山口沖にて基礎試錐(試掘調査)を実施した。目標としていた地層において、薄い
ガスの層やガスの徴候を確認し、さらに、
最深部で高圧の
ガス層を示唆する想定外の強いガス徴に遭遇するという
成果を得た。
本試掘により得られた地質データの詳細な解
析・評価により、
島根・山口沖におけるガス埋蔵の可能性・
有望性をさらに高める情報が得られたことから、
今後本海
域における日本企業による探鉱活動の活性化およびガス
田の発見が期待される結果となった。
(2) メタンハイドレートの開発・商業化
メタンハイドレートは、
メタンガスと水が低温・高圧の
状態で結合した氷状の物質で「燃える氷」とも称される。
日本周辺海域での賦存が確認されており、
将来の国産資源
として期待されている。
他方、
その商業化に向けては技術
的な課題が多く、現在その整備に取り組んでいる。
主に太平洋側に存在する砂層型メタンハイドレートに
ついては、2017 年度に実施予定の第2回海洋産出試験に
向けた事前の準備として、2016 年5月から6月にかけて
試験実施海域において生産坑井等の事前の掘削作業を実
施するとともに、2017 年度以降の具体的な目標やスケジ
ュール等の確認や見直しを実施した。
主に日本海側に存在する表層型メタンハイドレートに
ついては、2013 年度から 2015 年度にかけて日本海側を中
心に資源量の把握に向けた調査を実施し、
メタンハイドレ
ートが存在する可能性があるとされる
「ガスチムニー構造」
を合計で 1,742 箇所確認した。
また、上越沖の1箇所にお
いて、
表層型メタンハイドレートの存在量を試算したとこ
ろ、メタンガスに換算して約6億m3
(我が国の年間天然ガ
ス消費量の約2日分に相当)
の存在が見込まれるとの結果
を得、
その結果を9月に公表した。
この調査結果を踏まえ、
2016 年度後半より表層型メタンハイドレートの回収技術
に関する調査研究も開始した。
(3)水溶性天然ガス
非在来型の天然ガスである水溶性天然ガスについては、
我が国は世界最大の生産国であり、
これらに含まれるヨー
ドの生産量は世界の3割以上
(世界第2位)
を占める重要
な国産資源である。
このため、
水溶性天然ガスの生産量拡
大や効率的な開発を目指し、2015 年3月に業界及び有識
者からなる「水溶性天然ガス田の生産に係る技術検討会」
において取りまとめた、
かん水還元強化技術の調査・試験
を 2015 年度から引き続き実施した。
(2)海洋鉱物資源開発の推進
海洋鉱物資源は、
海底熱水鉱床、
コバルトリッチクラス
ト、マンガン団塊、レアアース泥の4種類が存在する。こ
れまで、
JOGMECが所有する海洋資源調査船等を用い
た資源量評価等や、
生産技術に関する基礎的な研究・調査
等を実施した。
(ア)海底熱水鉱床
沖縄海域で新たに海底熱水鉱床を 2014 年度に2箇所、
2015 年度に2箇所を発見した。2016 年5月には、沖縄海
域伊是名海穴の海底熱水鉱床の資源量を 740 万トンと確
認した。
2016 年度は、資源探査を継続的に実施するとともに、
採鉱・揚鉱技術、選鉱・製錬技術の開発や環境影響調査等
を進めた。また、2017 年度に実海域で採鉱・揚鉱パイロ
ット試験を行う予定であり、
試験実施に必要な準備や調整
等を進めた。
(イ)コバルトリッチクラスト
2014 年1月に国際海底機構(ISA)と 15 年間の探査
契約を調印した南鳥島の南東沖約 600km の 3000km2
におい
て、資源量調査や環境基礎調査を行った。
(ウ)マンガン団塊
2001 年に国際海底機構(ISA)と 15 年間の探査契約
を調印したハワイ沖の 75,000km2
について、
2016 年度に探
査契約の5年間の契約延長を行うとともに、
鉱区の環境基
礎調査を行った。
(エ)レアアース泥
2016 年7月に「レアアース堆積物の資源ポテンシャル評価
報告書」を発表し、現在の評価と今後に向けた課題を示すと
ともに、これに向けた取組として南鳥島周辺海域における賦
存状況調査等を実施した。

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