第5節 産業技術環境局


第5節 産業技術環境局 ................................................................. 240
産業技術政策········································································· 240
1. 2016 年度の産業技術政策に関する主な動き(総論)··································· 240
1.1.産業構造審議会産業技術環境分科会 ··········································· 240
1.2.国立研究開発法人審議会 ····················································· 240
1.3.総合科学技術・イノベーション会議 ··········································· 240
1.4.国立研究開発法人産業技術総合研究所及び国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合
開発機構 ··································································· 241
2.研究開発支援 ······································································ 243
3.産学官連携の動き ·································································· 246
4.民間企業が行う研究開発の促進 ······················································ 247
5.知的財産の創造への支援 ···························································· 249
6.研究開発の評価 ···································································· 250
7.国際協力への取組 ·································································· 250
8.産業技術に関する調査 ······························································ 252 240第5節 産業技術環境局
産業技術政策
1. 2016 年度の産業技術政策に関する主な動き
(総論)
我が国を取り巻く経済・社会情勢は、
大きく変化して
いる。
情報通信技術の急速な発展とグローバル化の発展
に伴い、情報、人、組織、物流、金融など、あらゆるも
のが瞬時に結び付き、
相互の影響を及ぼしあう時代に突
入している。
それに伴い、
既存の産業構造や技術分野を
転々と超えて付加価値が生み出され、
イノベーションの
創造プロセスや経済・社会の構造が日々大きく変わりつ
つある。
また、
知のフロンティアの拡大に伴い、
知識や技術の
全てを個人や一つの組織だけで有することが困難とな
っている。このため、新たな価値の創出には、多様な専
門性を持つ人材が結集し、
チームとして活動することが
鍵となっている。
加えて、
イノベーションのスピードを
巡る競争の激化等もあり、
民間企業においては、
自社の
保有する資源・技術のみを用いて製品開発等を行う、いわゆる「自前主義」から、戦略的に組織外の知識や技術
を積極的に取り組む
「オープンイノベーション」
へと舵
を切っていくことが、
イノベーションの戦略的な展開に
欠かせないものとなりつつある。
2016 年度には、
5 月に産業構造審議会 産業技術環境
分科会 研究開発・イノベーション小委員会において、
イノベーションを推進するための取組に関する中間取
りまとめを公表した。
そして、
革新的な技術シーズを生
み出し、それを迅速に事業化する「橋渡し」のシステム
の構築と、
イノベーションの推進を担う人材の育成・流
動化に向けて下記の取組を行った。
1.1.産業構造審議会産業技術環境分科会
中央省庁改革の一環として、2001 年1月6日をもっ
て産業技術審議会は廃止となり、
これに代わり、
経済産
業省の産業技術政策を総合的に審議する場として、
産業
構造審議会の下に産業技術分科会が設置された。
その後、
当省の政策課題を集中的、
効率的に審議でき
るよう、産業構造審議会の組織見直しが行われ、2013
年7月に、
産業技術分科会と環境部会の所掌事務を統合
する形で、産業技術に関する各種の政策や環境の保全、
資源の有効利用等に関する事項を審議する産業技術環
境分科会が設置された。当該分科会の下には、研究開
発・イノベーション小委員会、
知的基盤整備特別小委員
会、地球環境小委員会、廃棄物・リサイクル小委員会及
び産業環境対策小委員会の5つの小委員会が設置され
ている。
2016 年度には、5月に研究開発・イノベーション小
委員会において
「イノベーションを推進するための取組
について」
と題する中間取りまとめを公表するなど、各小委員会においてそれぞれが担う政策課題について審
議が行われた。また、2016 年8月に第4回産業技術環
境分科会を開催し、
イノベーション政策、
基準認証政策
及び地球環境政策について審議が行われた。
1.2.国立研究開発法人審議会
2014 年に独立行政法人通則法が改正され、各独立行
政法人の業務の特性に応じたマネジメントや目標管理
を行うために独立行政法人が3つの類型に分けられ、研究開発を主要な業務として行う法人は
「国立研究開発法
人」とされることになった。2015 年4月に改正独立行
政法人通則法が施行されたことにより、
経済産業省所管
の独立行政法人のうち産業技術総合研究所、
新エネルギ
ー・産業技術総合開発機構、
宇宙航空開発機構及び日本
原子力研究開発機構の4法人が国立研究開発法人とな
った。
「国立研究開発法人」
については、
主務大臣は中長期
目標設定や業績評価等を行うにあたり
「研究開発に関す
る審議会」
の意見を聴かなければならないとされている
ことを受け、経済産業省に「研究開発に関する審議会」
として「国立研究開発法人審議会」を設置し、さらに、
その下に経済産業省所管の各国立研究開発法人の評価
等を審議するための部会
(産業技術総合研究所部会、新エネルギー・産業技術総合開発機構部会、
宇宙航空開発
機構部会及び日本原子力研究開発機構部会の4部会)を設置した。
2016 年度には、同審議会を 8 月に開催し、各法人の
2015 年度に係る業務の実績に関する評価に対する意見
等について審議を行った。
1.3.総合科学技術・イノベーション会議
(1)総合科学技術・イノベーション会議について 241我が国全体の科学技術を俯瞰し、
総合的・基本的な科
学技術政策の企画立案及び総合調整を行うことを目的
とし、2001 年1月に内閣府に総合科学技術会議が設置
され、2014 年5月の「内閣府設置法の一部を改正する
法律」の施行に伴い、
「総合科学技術・イノベーション
会議」と名称変更された。内閣総理大臣が議長を務め、
経済産業大臣を含む関係閣僚や有識者の 14 人が議員と
なっている。2016 年度においては、同会議が 11 回開催
されたほか、2016 年1月に閣議決定された第5期科学
技術基本計画の推進に向け科学技術イノベーション政
策推進専門調査会等が開催された。
(2)科学技術イノベーション総合戦略 2016
2016 年5月、世界で最もイノベーションに適した国
を目指し、
更なる科学技術イノベーション政策の推進と
着実な実行に向け、
「科学技術イノベーション総合戦略
2016」
(総合戦略 2016)が策定された。同戦略では、第
5 期 科 学 技 術 基 本 計 画 の 円 滑 な 始 動 に 向 け て 、
「Society5.0」
の深化と推進、
若手をはじめとする人材
力の強化、
大学改革と資金改革の一体的推進、
オープン
イノベーションの推進による人材、
知、
資金の好循環シ
ステムの構築、
科学技術イノベーションの推進機能の強
化5つの「重きを置くべき取組」が位置づけられた。各
政策分野においては、
「基本的認識」及び「重きを置く
べき課題」の下、その解決に向けた「重きを置くべき取
組」が掲げられた。
(3)総合戦略 2016 における重きを置くべき施策
総合科学技術・イノベーション会議の下、総合戦略
2016 に定められた「重きを置くべき取組」に関連する
各省庁の施策が
「重きを置くべき施策」
として特定され、
2016 年9月の同会議で決定された。(4)科学技術イノベーション官民投資拡大イニシアテ
ィブ
科学技術・イノベーションの一層の活性化・効率化と、
経済社会との有機的連携の強化を図るため、2016 年6
月、
経済財政諮問会議及び総合科学技術・イノベーショ
ン会議の下に経済社会・科学技術イノベーション活性化
委員会が設置された。
同委員会にて
「科学技術イノベー
ション官民投資拡大イニシアティブ」
が取りまとめられ、
2016 年 12 月の総合科学技術・イノベーション会議・経
済財政諮問会議合同会議にて決定された。
同イニシアテ
ィブでは、
経済社会・科学技術イノベーションの活性化
に向け、
予算編成プロセス改革アクション、
研究開発投
資拡大に向けた制度改革アクション、
エビデンスに基づ
く効果的な官民研究開発投資拡大アクションの3つの
アクションが示された。また、2016 年2月に科学技術
イノベーション官民投資拡大推進費ターゲット領域検
討委員会が設置され、
科学技術イノベーション官民投資
拡大推進費に係る研究開発投資ターゲット領域の選定
及び関連する事項についての調査・検討が開始された。(5)特定国立研究開発法人による研究開発等の促進に
関する特別措置法
我が国の科学技術の水準の著しい向上を図るため、特定国立研究開発法人による研究開発等の促進に関する
特別措置法案が第 190 回国会に提出され、
内閣委員会で
の審議を経て 2016 年5月に制定、公布された。同法で
は、
世界最高水準の研究開発の成果の創出が相当程度見
込まれる国立研究開発法人として、
物質・材料研究機構、
理化学研究所、
産業技術総合研究所の3法人を特定国立
研究開発法人に定められ、
目標、
評価等に関する国家戦
略の見地からの総合科学技術・イノベーション会議の関
与、
卓越した研究者等が最大限能力を発揮できるような
措置、
情勢変化への対応を迅速に行うことが必要と認め
るときの措置要求など、
国際的な産業競争力の強化が行
われた。1.4.
国立研究開発法人産業技術総合研究所及び国立
研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
(1)国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)
(ア)概要
産総研は、2015 年度からスタートした第4期中長期
目標期間において、
産業技術政策の中核的実施機関とし
て、
革新的な技術シーズを事業化へとつなげる
「橋渡し」
の役割を果たすことを最重要の経営課題と位置付けた。
「橋渡し」
機能の抜本的な強化を促すため、
目標期間の
終了時(2020 年3月)までに、民間企業からの資金獲
得額を 2014 年度までの3年間の実績
(平均約 46 億円/ 242年)の3倍(約 138 億円/年)以上とすること等を目標
として掲げ取り組むこととした。
また、
2016 年 10 月に特定国立研究開発法人へ指定さ
れ、
イノベーションシステムの中核機関となることが期
待されている。
(イ)2016 年度の主な業務実績・「橋渡し」の着実な実施により、企業等との共同
研究や受託研究等による、2016 年度の民間資金
獲得額は前年度 38%増の 73.4 億円となった。
表:民間資金獲得額の推移2012年度2013年度2014年度2015年度2016年度
民間資金獲得
額(億円)
45.6 45.1 46.2 53.2 73.4
・マーケティングを担う専門人材としてのイノベ
ーションコーディネータを民間企業等外部機関
から積極的に採用し、72 名の体制を整えた。加
えて、公設試験研究機関(公設試)等の人材を
産総研イノベーションコーディネータとして委
嘱または雇用
(前年度の 55 名から 90 名に増加)
し、総勢 162 名の体制となった。
・イノベーションコーディネータが主導するマー
ケティング活動や連携企業及び連携候補企業を
招待するマッチングイベント「テクノブリッジ
フェア」の全国開催等による組織的かつ重層的
なマーケティング活動の実施により、テクノブ
リッジフェア招待企業からの資金獲得額約 31
億円(前年度 21 億円から約 1.5 倍)の成果に結
び付いた。
・技術コンサルティング制度について、所内・所
外の制度利用者に満足度調査を実施し、改善点
を抽出するなどの取り組みにより、
2016 年度は、
275 件、総額 303 百万円の実績をあげ、件数、
金額ともに前年度(84 件、77 百万円)の 3 倍を
超えた。
・産総研の職員を出向させる等の人事交流を生か
して公設試等と密接に連携し、地域企業へのマ
ーケティング活動を行った。このような取組の
結果、35 件の中堅・中小企業との受託研究、共
同研究を新たに開始した。
・各地域センターが所在する地域ごとに創設した
地域中核企業からなるテクノブリッジ・クラブ
の参加企業数は、前年度の 181 社から増加し、
全国で 219 社となった。テクノブリッジ・クラ
ブをきっかけとしてこれまでに行った受託研究、
共同研究等は 122 件となった。・「政府関係機関移転基本方針」に基づき、2016
年 5 月に石川県と福井県の両県の公設試内に連
携拠点として「石川サイト」と「福井サイト」
を設置し、
技術相談を実施した結果、
それぞれ 6
件と 10 件の共同研究等が成立した。
・大型ライセンス契約の成約により、技術移転収
入は約 4.7 億円
(前年度 3.3 億円から約 1.5 倍)
となり、知財を活用した事業化の推進に大きく
貢献した。
・産総研技術移転ベンチャーに対して、知的財産
権の一部譲渡(5 社)
、独占的実施権の許諾(2社)、契約一時金免除(4 社)等の支援措置を行
った。また、新たに産総研技術移転ベンチャー
を 4 社認定し、累計 133 社となった。これら産
総研技術移転ベンチャーに対して資金調達や販
路開拓を支援し、産総研技術移転ベンチャー3
社が投資ファンド等から総額約 11.2 億円の出資
を受けた。
・新規のクロスアポイントメント契約を 20 件締結
し、
前年度末の 24 件から 44 件にほぼ倍増させ、
クロスアポイントメント制度の活用を進めた。
また、リサーチアシスタント制度の柔軟化(雇
用期間、従事期間)を図り、活用実績は、前年
度 105 件の約 1.7 倍の 174 件となった。
・東日本大震災の復興支援として、福島再生可能
エネルギー研究所において被災地域における新
たな産業の創出を支援する「被災地企業のシー
ズ支援プログラム」を実施し、2016 年度は 19
件のテーマを採択した。さらに、産業人材育成
事業として 2016 年度は地元の大学等と 16 件の
共同研究を行い人材を受け入れ、ポスドク、技
術研修、リサーチアシスタント等で計 94 名の再
生可能エネルギー分野の人材育成を行った。
・大学の基礎研究力と産総研の技術力を融合して 243革新技術シーズを開発する「オープンイノベー
ションラボラトリ(OIL)」を大学内に 6 件設置し
た。また、企業ニーズにより特化した大型の共
同研究を実施するための「連携研究室(冠ラボ)」
を所内に 5 件設置した。(2)国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開
発機構(NEDO)
2013 年4月から 2018 年3月までの第3期中長期目標
期間において、NEDOは、産業技術及びエネルギー・
環境分野の中核的政策実施機関として、
内外の最新の技
術動向や政策動向を的確に把握しつつ、
政策当局との緊
密な連携の下、
産学官の機能を組み合わせ、
最適な実施
体制を構築し、
技術開発事業の適切なマネジメントとそ
の成果の普及等の業務を展開している。なお、2014 年
度末には、
プロジェクトマネージャーへの大幅な権限付
与等による技術開発マネジメントの機能強化、
新たなイ
ノベーションの担い手として期待される中堅・中小・ベ
ンチャー企業への支援強化など、
技術開発プロジェクト
推進体制の抜本的な強化を図るために第3期中長期目
標・計画の変更を行った。
2016 年度は、変更後の第3期基本計画に基づき、産業・
社会に大きな影響をもたらしうる非連続なイノベー
ションの推進のため、
非連続ナショナルプロジェクトを
新たに設定した。
また、
オープンイノベーションに関す
る知見・ノウハウの共有を図るとともに、
その取組を産
業界に広めるためのマインド形成の場として 2014 年度
に設立された「オープンイノベーション協議会」(NE
DOが事務局)が、日本初となるオープンイノベーショ
ンに関する各種データや国内外の推進事例を記載した
「オープンイノベーション白書」を公表した。
2.研究開発支援
(1)NEDO技術戦略研究センター(TSC)
産業技術やエネルギー・環境技術分野の技術戦略の策
定及びこれに基づく重要なプロジェクトの企画・構想等
に取り組む研究機関として、2014 年4月に、NEDO
に技術戦略研究センターを設立した。
技術戦略研究センターでは、
専門的知見や人的ネット
ワーク等を有する者をフェロー等として招へいし、
グロ
ーバルな視点で技術戦略を継続的に策定・改訂していく
体制を整えた。また、コンピューティング、人工知能、
ロボット、ナノ炭素、水素、機能性材料等の幅広い技術
分野の中から、
ポジション分析によって重点的に取り組
むべき分野を選定し、技術戦略を策定。2016 年度末ま
でに、技術レポート「TSC Foresight」として 17 分野を
公開した。
(2)産総研人工知能研究センター(AIRC)
2015 年5月に整備したAIRCにおいて、国内外の
多様な人工知能研究のトップ・新進気鋭の研究者や優れ
た技術を集結し、
先進的な人工知能の開発・実用化と目
的基礎研究の進展の好循環
(エコシステム)
の形成を目
指した研究開発を実施した。
また、
AIRC内において
民間企業研究者や大学教員も参画した産官学の人工知
能連携研究室を設立した。
(3)世界的な研究開発拠点としてのTIAの形成
(A)拠点形成に向けた背景
欧米を中心に、
産学官が連携する国際的で、
大規模な
研究開発拠点の構築が進められており、
国境を越えて資
金・人材が集められているところである(例:ベルギー
"Interuniversity Microelectronics Centre"、フラ
ンス"MINATEC"、米国
"Albany NanoTech"等)。また、これらの研究開発拠点では、大学と協力して、最
先端研究と次世代人材育成を一体的に行っているケー
スが多い。
このような状況を踏まえ、我が国においても、2009
年6月、産総研、独立行政法人物質・材料研究機構(NIMS)、国立大学法人筑波大学(筑波大)
、一般社団法
人日本経済団体連合会が、
世界最高水準の先端的なナノ
テクノロジーの研究設備・研究者が集積するつくばに、
ナノテクノロジーの国際的な研究開発拠点
「つくばイノ
ベーションアリーナナノテクノロジー拠点
(TIA-nano)」を構築するために連携する旨を合意し、2012
年度には大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研
究機構
(KEK)
が中核機関として加わった。
また、2016年 4 月には国立大学法人東京大学が新たに参画したこ
とを受けて、
つくばから外への連携の拡大と、
研究領域
での新たな連携の拡大を目指すこととなったため、「T 244
IA」に改称した。
TIAにおいては、
多様な領域をシステム化プラット
フォーム
(ナノエレクトロニクス、
パワーエレクトロニ
クス、MEMS)
、先端材料プラットフォーム(ナノグ
リーン、カーボンナノチューブ)
、共通基盤プラットフ
ォーム(光・量子計測、人材育成、共用施設ネットワーク)の3つのプラットフォームに統合し、
総合的な研究
能力(人材、施設、知的財産等)を結集することで、知
の創出から産業化までを一貫して支援している。
(B)取組
2016 年度から東京大学の参画を機に、これまでの先
進的ナノテクノロジー分野だけでなく、
ナノバイオ、バイオ動態制御、藻類バイオマス、計算科学、データ駆動
科学、計測技術等の研究領域にも分野を拡大している。
また、
新たな取組として、
参画する5機関の研究者が
連携して、
将来のイノベーションの芽となる研究テーマ
を調査するために、
TIA連携プログラム探索推進事業
「かけはし」をスタートさせた。
(4)文部科学省・経済産業省合同検討会
環境・エネルギー分野等において、
我が国が官民の総
力を挙げて 2030 年頃の実用化を目指して取り組むべき
革新的技術(非連続型技術)を特定するとともに、特定
された技術の研究開発推進における文部科学省、
経済産
業省の役割や両省連携の仕組みについて方向性を示し、
両省に提言することを目的として 2011 年に設置された。
2016 年度は6月に第 12 回、7月に第 13 回、2月に第
14 回が開催された。
(5)未来開拓研究
2012 年4月に取りまとめられた産業構造審議会産業技
術分科会研究開発小委員会報告書の中で、新たな国家プ
ロジェクト制度の創設等が提言された。これを受けて、
文部科学省等との緊密な連携の下、
府省縦割りを排除し
て、
基礎から実用化まで一気通貫で研究開発を推進する
「未来開拓研究」を 2012 年度に創設し、3テーマを指
定した。2013 年度には新たに4テーマを追加し、同年
度以降は計7テーマを実施している。
(6)個別の研究開発事業
(A)次世代人工知能・ロボット中核技術開発(2016 年
度予算額 30.6 億円)
2015 年度に引き続き、場面や人の行動を理解・予測
し適切に行動する賢い知能や、
屋外で高速かつ精密に距
離を計測するセンサや自律的に多様な作業を実現する
制御技術など、
未だ実現していない次世代の人工知能・
ロボット技術における中核的な技術の開発を、
産学官の
連携により実施した。
また、新たな技術の導入にあわせて必要となるリスク・
安全評価手法等の共通基盤技術の研究開発を実施し
た。
(B)インフラ維持管理・更新等の社会課題対応システ
ム開発プロジェクト(2016 年度予算額 19.3 億円)
インフラの維持管理・更新等に係るコストの増大及び
技術人材不足の解決を目指し、
的確かつ迅速にインフラ
の状態を把握できるモニタリング技術及び人間が容易
に立ち入れない場所を点検・調査するロボット技術等の
開発を行っている。
2015 年度に引き続き、各インフラの現場ニーズを的
確に捉えた技術開発に取り組んだ。
モニタリング技術開
発においては、
センシング技術、
イメージング技術等の
基盤技術の開発を行い、ロボット技術開発においては、
点検・調査用の各種ロボットシステム開発、
及びロボッ
トに搭載可能な非破壊検査装置の開発を行った。
(C)革新的新構造材料等技術開発
(2016 年度予算額 36.5
億円)
2015 年度に引き続き、鋼板、アルミニウム、マグネ
シウム、チタン、炭素繊維、炭素繊維複合材料の材料開
発及び各種部材開発を実施した。
最適設計により複数の
材料を複合的に用いる
「マルチマテリアル化」
による更
なる軽量化に向け、各材料の高強度化(軽量化)と、高
延性化(高加工性)の両立を促進した。また、高強度材
同士や異種材間の接合技術や、
最適な材料設計、
評価手
法等の開発を実施するとともに、
中性子ビームを用いた
解析手法及び接着技術について検討を開始した。
(D)次世代パワーエレクトロニクス技術開発プロジェ
クト(2016 年度予算額 21.5 億円)
シリコン(Si)など従来の材料に比べ、電力損失が
1/100 以下、数 kV の高耐圧性など、優れた性能を有し
た炭化珪素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)など新材料の次 245世代パワーエレクトロニクスの実用化を目指し 2013 年
度から事業を開始している。
2016 年度は、1低炭素社会を実現する新材料パワー
半導体プロジェクト-新世代 Si パワーデバイス技術開
発、
2次世代パワーエレクトロニクス応用システム開発
など実施した。
中でも試作 SiC モジュールの Si-絶縁ゲ
ートバイポーラトランジスタ(IGBT)に対する損失評価
では、従来の Si パワー半導体と昇圧コンバータを用い
た電動システムに対してパワーコントロールユニット
(PCU)損失 1/3 以下を実証した。
(E)ナノ炭素材料実用化プロジェクト(2016 年度予算
額 15.0 億円)
[(注記)2016 年度に事業終了。]ナノ炭素材料は、
軽量で電気や熱の伝導が良いなどの
特長を有し、
リチウムイオン電池等で実用化されている
のを始め、
省エネ家電や輸送機器など多くの分野で実用
化が見込まれる。
これまでの開発により実用化フェーズに移行しつつ
あるが、
依然として実プラントレベルの安定高効率化と、
応用製品化は十分ではない。2016 年度は、引き続きナ
ノ炭素材料の具体的な製品に関する実用化研究を行う
とともに、
高効率プラント技術の開発に取り組んだ。また、安全性評価、計測技術等の基盤技術を構築した。(F)革新的水素エネルギー貯蔵・輸送等技術開発
(2016
年度予算額 15.5 億円)
本事業では、
再生可能エネルギーから低コストで効率
良く水素を製造する技術や、
水素をエネルギー輸送媒体
に効率的に転換・貯蔵する技術開発等を行う。
2016 年度は、本事業における水電解装置の効率目標
値を達成した。また、長期連続運転と性能・耐久評価を
昨年度から継続して実施した。
また、
液体水素タンクの
断熱技術試験を行い断熱技術の見通しを得た。さらに、
水素専焼タービン向け燃焼器の開発に着手した。
(G)エネルギー・環境新技術先導プログラム(2016 年
度予算額 21.5 億円)
2050 年に温室効果ガス半減など、エネルギー・環境
分野の中長期的な課題解決には、
既存技術の延長ではな
い非連続・革新的な技術開発と実用化が必要となる。このため、
本事業では、
従来の発想によらない新技術の研
究を推進し、将来の国家プロジェクトにつなげるべく、
先導研究を行う。
2016 年度は、昨年度に引き続き「地熱発電次世代技
術の開発」、「画期的なエネルギー貯蔵技術の開発」、「I
oT社会に向けたデバイス技術の開発」
など8つのプロ
グラムを設定し、全体としては、26 件のテーマについ
て、先導的な研究を実施した。
(H)高輝度・高効率次世代レーザー技術開発(2016 年
度予算額 20.0 億円)
2016 年度より本事業を開始し、我が国のものづくり
産業の競争力強化を図るため、
高いニーズはあるものの
未だ他国が実現できていない高効率・高輝度な次世代レ
ーザー加工技術の開発を行っている。
具体的には、
電子
部品の高品質微細加工を可能とする短波長領域、
自動車
部品の表面改質などを可能とするキロジュール級のレ
ーザーシステム開発、
半導体レーザーなどの次世代レー
ザー光源開発、
レーザー加工条件の最適化や加工現象の
メカニズム解明など効率的な加工を実現するための基
盤研究に取り組んだ。
(I)高温超電導実用化促進技術開発(2016 年度予算額
15.0 億円)
2016 年度より本事業を開始し、電力送電、運輸、医
療など高温超電導実用化のための4分野が採択された。
1電力送電用超電導ケーブルシステムの実用化開発及
び2運輸分野への高温超電導適用基盤技術開発では、石狩超電導直流送電システムのガイドライン策定(2016
年度終了)
、東京電力旭変電所における超電導交流送電
システムの系統連携試験の開始、
鉄道き電線用長距離冷
却システムのポンプおよびコンパクト冷凍機の設計・製
作などが実施された。
また3高温超電導高安定磁場マグ
ネットシステム技術開発では、
線材製造の良品率を大幅
に改善するとともに 10-13
Ω台の超電導接続に成功した。
4高温超電導高磁場コイル用線材の実用化開発では、製造速度および臨界電流密度の 2016 年度目標値をクリア
し、さらなる生産性向上に取り組んでいる。(J)超先端材料超高速開発基盤技術プロジェクト
(2016
年度予算額 17.8 億円)
本事業では、
高い断熱性と軽量性を兼ね備えた窓に使
う透明シートなどの有機系の機能性先端材料創出を目
指し、
開発スピードの劇的な短縮を実現するため、
マル
チスケールシミュレータ
(原子レベルからマイクロメー
トルレベルまでの異なる尺度でのシミュレーションを 246連携させて、
材料のミクロからマクロまでの挙動を一括
して把握)やAI等による計算科学、プロセス技術、先
端計測技術を一体的に開発して、
従来技術の延長上に無
い革新的な材料開発基盤技術を確立する。
2016 年度は、マルチスケールシミュレータの設計、
モデル素材の自在合成プロセスの高速化、
表面・界面特
性のマルチ物性計測技術の確立などを行った。
(K)人工知能に関するグローバル研究拠点整備事業
(2016 年度第 2 次補正予算額 195.0 億円)
人工知能技術に関する最先端の研究開発・社会実装を
推進するために、
国内外の叡智を集めた産学官一体の研
究拠点の構築に着手した。
具体的には、
人工知能技術に
関する最先端の研究開発・社会実装を推進するために、
国内外の叡智を集めた産学官一体の研究拠点を構築す
るもので、
東京大学の柏キャンパスに材料・デバイスの
試作及び健康・医療介護の模擬環境を含む研究棟と模擬
環境から得られたデータを処理するサーバ及びサーバ
棟の整備、
産総研臨海副都心センターにロボット模擬環
境を含む研究棟の整備にそれぞれ着手した。
3.産学官連携の動き
(1)産学官連携体制の整備
(ア)概要
TLO(Technology Licensing Organization:技術
移転機関)は、大学等の研究者の研究成果を特許化し、
それを企業へ技術移転する法人であり、
産と学の
「仲介
役」
の役割を果たす組織である。
大学等発の新規産業を
生み出し、
それにより得られた収益の一部を研究者に戻
すことにより研究資金を生み出し、
大学等の研究の更な
る活性化をもたらす
「知的創造サイクル」
の原動力とし
て産学連携の中核をなす。
TLOについては、1998 年に制定された「大学等に
おける技術に関する研究成果の民間事業者への移転の
促進に関する法律(TLO法)
」において、文部科学大
臣と経済産業大臣により実施計画の承認を受けた承認
TLO並びに、
国又は独立行政法人における研究成果の
技術移転を行う、
所管大臣の認定を受けた認定TLOが
規定されており、
承認TLO及び認定TLOに対して特
許料等の軽減などの措置が講じられている。
2016 年度末現在の承認TLO数は 36、認定TLO数
は1である。
(イ)
産学官連携による共同研究強化のためのガイドラ
イン
2025 年度までに大学・国立研究開発法人に対する企
業の投資額を OECD 諸国平均の水準を超える現在の 3 倍
とすることを目標に(
「日本再興戦略 2016」)、産学連携
を深化させ、
イノベーション創出を図る具体的な行動を
産学官が対話をしながら実行・実現していく場として
「イノベーション促進産学官対話会議」
を文部科学省と
ともに創設した(2016 年 7 月)
。当該会議において、産
業界から見た大学・研究開発法人が産学連携機能を強化
する上での課題と、
それに対する処方箋を議論し、
平成
28 年 11 月に
「産学官連携による共同研究強化のための
ガイドライン」として取りまとめた。
(ウ)
シーズ発掘調査事業及びシーズ活用研究開発事業
(2016 年度予算額 0.9 億円)
我が国経済の自立的・持続的な成長のため、
大企業や
大学等に眠る技術、アイデア、人材、地域に眠る資源を
最大限に活用し、
新事業を生み出す仕組みを整備するた
め、シーズ発掘調査事業において、TLO、自治体・公
設試、
地域金融機関等からなるコンソーシアムを形成し、
大学発の技術シーズの事業化を総合的に支援する体制
を構築し、
新事業創出を促進する取組に対して補助を行
った。
また、
シーズ活用研究開発事業において、
産学官の技
術や資源を適切に組み合わせた産学官連携体制の構築
を通じて、
地域発の優れた実用化技術の事業化を促進し、
新事業の創出に資することを目的として、
企業と大学等
が共同で実施する実証研究に対して補助を行った。
2016 年度は、シーズ発掘事業2件、シーズ活用研究
開発事業4件の事業の継続支援を行った。
(2)産業技術人材育成施策
(ア)概要
産業界の求める人材ニーズにマッチした産業競争力
に資する人材育成として、
技術の事業化を図ることでイ
ノベーションを促進するような実践力のある産業技術
人材の育成が求められている。
このため、技術人材育成の質の確保に必要な施策等、
人材育成面での産学連携を促進する施策を展開してい 247る。
(イ)理工系人材育成に関する産学官円卓会議
2015 年3月に策定された「理工系人材育成戦略」を
踏まえ、同戦略の充実・具体化を図るため、産学官の対
話の場として
「理工系人材育成に関する産学官円卓会議」
を文部科学省と共同で設置した。2016 年度は同会議を
計 2 回開催し、
産業界の将来的な人材ニーズを踏まえた
大学等における教育の充実方策、
企業における博士号取
得者の活躍の促進方策、
初等中等教育等における産業を
体感する取組の充実方策等について議論し、
「理工系人
材育成に関する産学官行動計画」
を策定した。
また同計
画に基づき、
「人材需給ワーキンググループ」を計 3 回
開催し、取りまとめを行った。
(ウ)
理系女性活躍促進支援事業
(2016 年度予算額 0.2
億円)
理系女性が有するスキルと産業界が求めるスキルの
見える化を行うことにより、
女性自身がどのようなスキ
ルを身につければ良いか把握できるような仕組みを構
築するための事業を実施している。
2016 年度は、補助事業として一般社団法人研究振
興・産業技術振興協会が当該システムの整備を行い、平成 29 年3月にシステムを公開した。(3)国立大学法人等によるベンチャーキャピタル等へ
の出資
我が国の産業競争力を強化するためには、
大学の研究
成果の活用を図ることが重要である。
2013 年 12 月に産
業競争力強化法が制定され、
国立大学法人等が、
国立大
学法人等の研究成果を活用する大学発ベンチャーに対
して経営上の助言等を行う認定事業者
(ベンチャーキャ
ピタル等)に対し、出資を行うことが可能となった。こ
れにより、
大学の研究成果の活用を図る大学発ベンチャ
ー等を効果的に支援することを可能とし、
大学の研究成
果の事業化等を促進する。
2016 年度は8月に東京大学協創プラットフォーム開
発株式会社の特定研究成果活用支援事業計画の認定を
行った。
2016 年度末時点で、4法人及び同法人が無限責任組
合員となる投資事業有限責任組合の特定研究成果活用
支援事業計画を認定しており、
同計画に基づき大学発ベ
ンチャーの支援が進められている。
4.民間企業が行う研究開発の促進(1)研究開発税制のオープンイノベーション型の抜本
的拡充
我が国が今後 30 年、
50 年経っても世界経済をリード
する存在であるためには、
イノベーションの継続的な創
出が不可欠である。
そのためには、
研究開発投資額とい
ういわば「量」の拡大に加えて、その「質」の向上を図
ることも必要である。この点については、近年、製品や
サービスのライフサイクルの短期化や知識・技術が深化
していること、
またグローバルに人材の流動化が起きて
いることなどを踏まえると、
企業内部と外部のアイデア
や技術を有機的に結合させて価値を創造する
「オープン
イノベーション」
が真に根付いていかなければならない。
しかしながら、
我が国のオープンイノベーションの取
組は、
国際的に見ても進んでいる状況ではなく、
例えば、
企業が支出する研究開発費のうち、
大学で使用される割
合はわずか1%程度と、
資金の流動性も非常に低く、自前主義がまだまだ根強い。
こうしたことを背景に、
企業のマインドを自前主義か
らオープンイノベーション志向へ変革することを目指
し、
研究開発税制について、
オープンイノベーション型
の抜本的拡充を行った。
具体的には、2015 年度税制改正において、オープン
イノベーション型について、
控除率を拡充
(12%→20%
又は 30%)
、対象費用の拡大、控除上限の別枠化といっ
た措置を講じている。
また、
総額型とオープンイノベー
ション型について、それぞれ控除上限を 25%、5%の
恒久的措置としたほか、
増加型、
高水準型の措置につい
て、適用期限を 2016 年度末まで延長するとともに、繰
越控除制度は廃止としている。 248(2)技術研究組合法
技術研究組合は、1961 年に制定された「鉱工業技術
研究組合法」に基づき、企業、大学、独立行政法人等の
多種多様な組織が一つの研究開発目標の下、
共同で研究
開発を行うために主務大臣認可により設立される組織
である。
主な特徴として、
[1]法人格を有していること、
[2]賦課金を支払う組合員に対し研究開発税制が適用
されること、
[3]組合が有する試験研究用資産に優遇税
制(圧縮記帳)が適用されること等がある。同法制定以
来、2016 年度末までに 259 件(全省庁分)の技術研究
組合が設立された。
また、昨今、研究開発力の強化に資するものとして、
外部資源を活用したオープンイノベーションへの期待
が高まる中、従来制度の使い勝手を向上させるため、
2009 年6月には「技術研究組合法」へと抜本的な改正
を行い、[1]設立組合員数の緩和、[2]大学・独立行政
法人の組合員資格の明確化、
[3]株式会社への組織変更
等を可能としている。
法改正の効果により、法改正当時 32 件だった組合数
は、2016 年度末時点で 53 件に増加した。また、技術研
究組合から株式会社への組織変更第1号として、2014
年5月には
「グリーンフェノール・高機能フェノール樹
脂製造技術研究組合」が、
「グリーンフェノール株式会
社」に組織変更を行っている。
(ア) (3)オープンイノベーションの推進
(イ) 我が国のイノベーションシステムの強化の
ためには、日本の持つ「強み」
「優位性」を活かした戦
略策定の下、国内外問わず優秀な人材・技術を確保・流
動化しながら、企業・大学・ベンチャー企業等、プレイ
ヤーの垣根を打破してそれを流動化させ、
各プレイヤー
が総じて付加価値を創出するための
「オープンイノベー
ション」
の推進が必要である。
オープンイノベーション
推進の観点から、税制面等でのインテンセィブの付与、
優れた技術シーズと事業化との間の
「死の谷」
を乗り越
えるための「橋渡し」機能の強化を行うとともに、オー
プンイノベーションのメリットや具体的方法への理解
を我が国企業に広く浸透させることが重要である。2015年2月設立の
「オープンイノべーション協議会」
と、2014年9月設立の「ベンチャー創造協議会」が、オープンイ
ノベーションの推進における効率的かつ効果的な運営
を目指し、
成果の最大化及び加速化を図るため、
新組織
に改組し、2017 年3月に「オープンイノベーション・
ベンチャー創造協議会」
として発足した。
同協議会では
具体的なビジネスを創り出すためのベンチャー企業と
のマッチングイベントやオープンイノベーションの先
進事例の紹介、
啓発普及活動などを実施することでオー
プンイノベーションの促進を図っている。
(ウ) 事業概要
(エ) (A)中堅・中小企業への橋渡し研究開発促進事
制度
研究開発促進税制
売上高に対する試験研究費の割合に応じ、試験研究費の総額の8%〜10%を税額控除
税額控除額の上限:法人税額の 25%(恒久的措置)
上記恒久措置に加え、
[1]試験研究費の増加額の5〜30%を税額控除(増加型)
[2]試験研究費の額が売上金額の 10%を超える場合、その額に一定の割合を乗じた額を税額控除(高水
準型)
([1]、[2]いずれかの選択適用で2年間(2016 年度末まで)の時限措置)
税額控除額の上限:[1]、[2]とも総額型と別枠で法人税額の 10%
特別試験研究に係
る税額控除制度
産学官連携により共同研究又は委託研究を行った場合、その際に要した額(特別試験研究費)の下記割
合を税額控除
・相手方が大学・特別研究機関等の場合 30%
・相手方がその他(企業間、中小企業からの知財権使用)の場合 20%
税額控除額の上限:法人税額の5%(恒久的措置)
中小企業技術基盤
強化税制
中小企業の支出した試験研究費の総額の 12%を税額控除。
(恒久的措置)
税額控除額の上限:法人税額の 25%(恒久的措置)
表:研究開発税制の詳細 249業
(オ) 中堅・中小企業等は特定の優れた技術を有し
ていても、
事業化を目指すためにはそれのみでは不十分
なことがあるため、
革新的な技術シーズを事業化に結び
つける
「橋渡し」
機能を有する研究機関との共同研究を
行う事業者に対する支援を行っている。
2016 年度には、
「橋渡し研究機関」
としての要件に該当していることを
NEDOが確認した研究機関が 196 となり、
それらの機
関の能力を活用して共同研究を実施する 34 事業者に対
して支援を行った。
(カ) (B)研究開発型ベンチャー支援事業
(キ) 我が国は優れた技術力を有しており、それを活
用したベンチャー企業の創出・発展のポテンシャルは大
きい。2016 年度は研究開発型ベンチャーの育成とエコ
システム構築を図るため、
ハンズオン機能のある国内外
のベンチャーキャピタル(VC)等を 25 社認定し、認
定されたVCが出資するベンチャー企業 13 社に対し実
用化開発支援を行った。
(ク) さらに、我が国では、大企業における外部連携
の実績としてベンチャー企業が少なく、
また米国と比較
してベンチャー企業の買収が低調であり、VC 等からの
リスクマネー供給も不足しているのが現状である。2016年度は具体的な技術シーズを活用した事業構想を持ち、
事業会社との共同研究を実施するベンチャー企業 12 社
に対し事業化支援を行った。
5.知的財産の創造への支援
(1)特許料等の減免制度
「大学等における技術に関する研究成果の民間事業
者への移転の促進に関する法律
(TLO法)」に基づく、
2016 年度における承認TLO及び認定TLOに対する
特許料及び審査請求料の軽減実績は、それぞれ 717 件、
170 件であり
(2015 年度はそれぞれ 626 件、
168 件)、「産
業技術力強化法(産技法)
」に基づく、2016 年度におけ
る大学及び大学研究者に対する特許料及び審査請求料
の軽減実績は、それぞれ 5,759 件、3,246 件であった
(2015 年度はそれぞれ 4,148 件、3,074 件)。また、産技法等に基づく、2016 年度における研究開
発型中小企業に対する特許料及び審査請求料の軽減実
績は、それぞれ 20,964 件、6,079 件であった(2015 年
度はそれぞれ 15,234 件、4,858 件)。(2014 年1月 19 日に
「産業活力の再生及び産業活動の
革新に関する特別措置法」が廃止され、2014 年 1 月 20
日以降、
承認TLOに対する特許料等の軽減措置の根拠
法律はTLO法となった。)(2)日本版バイ・ドール制度
日本版バイ・ドール制度は、産技法に基づき、政府資
金による委託研究開発
(独立行政法人等を通じて行うも
のを含む。
)及び請負ソフトウェア開発の成果に係る特
許権等を、同法第 19 条第1項各号に定められた一定の
条件を受託者が約束する場合に、
受託者に帰属させるこ
とを可能とする制度である。
2016 年度においても引き続き、経済産業省が実施し
た研究開発委託事業に本制度を適用した。(3)委託研究開発における知的財産マネジメントに関
する運用ガイドライン
(ア)背景・当ガイドラインの概要
経済産業省は、日本版バイ・ドール制度の運用等、国
の委託による研究開発プロジェクトにおける知的財産
マネジメントの在り方について検討を行い、2015 年5
月に委託研究開発における知的財産マネジメントに関
する運用ガイドラインとして取りまとめ、
以下の事項等
を整理した。
(A)成果の事業化の重要性などの基本的な考え方を
明示した。
(B)研究開発の委託者に、プロジェクトごとに当該
プロジェクトの知的財産マネジメントに係る基本的
な方針(
「知財方針」
)を策定することを原則義務付
けた。
(C)プロジェクト開始前から終了後に至る知財関連
の業務手順を提示した。
(イ)
委託研究開発におけるデータマネジメントについ
て(案)を別冊として策定
国の研究開発の成果を最大限事業化に結びつけ、
国富を最大化する観点等を考慮すれば、知的財産の
マネジメントのみならず、ここで取得または収集
する研究開発データを利活用するためのマネジメン
トに関する観点の追加が重要であることから、国の 250委託研究開発プロジェクトの担当者が研究開発デー
タのマネジメントを実施するに当たり考慮すべきと
考えられる事項を 2016 年 12 月に取りまとめ、試行
的に適用を開始した。
6.研究開発の評価
(1)評価実施実績
産業構造審議会産業技術環境分科会研究開発・イノベ
ーション小委員会評価ワーキンググループは、
経済産業
省の研究開発事業等の評価の実施、
審議及び研究開発の
評価システムや手法など、
評価の在り方についての審議
を行っている。
技術に関する施策評価は、
各年度の評価実施計画で対
象となった技術施策について、
当該施策の下に位置付け
られる技術に関する事業を俯瞰し、
各事業の相互関係等
に着目した評価を実施している。
<2016 年度 技術に関する施策評価実施案件>・放射性廃棄物処分関連分野に係る研究開発プログ
ラム(技術に関する事業評価3件を含む。)技術に関する事業ごとの評価については、研究開発
制度及びプロジェクトを対象としている。
事前評価は、新規に事業を開始する前に実施し、中
間・終了時評価は、
各年度の評価実施計画で対象となっ
た事業について実施している。下表に 2016 年度に経済
産業省が実施した研究開発評価の実績を示す。
また、2016 年度は、国が行う研究開発の評価につい
ての基本的な方針を示したガイドライン
「国の研究開発
評価に関する大綱的指針」が、総合科学技術・イノベー
ション会議においてまとめられたことを踏まえ、
経済産
業省技術評価指針の改正を行った。
(2)追跡調査・追跡評価
今後の研究開発マネジメントの向上に資する情報を
得るため、
研究開発事業終了後の実用化状況等に関する
追跡調査・追跡評価を実施している。
2016 年度は、追跡調査 37 事業、追跡評価は1事業を
対象に実施している。
7.国際協力への取組
(1)科学技術協力協定に基づく二国間協力
我が国では、
科学技術協力をより一層推進させるため、
二国間の科学技術協力協定を締結し、
研究者等の国際的
交流、
国際的な共同研究開発、
定期的な情報交換や共同
シンポジウムの開催、
人材交流等を行っている。
締結状
況は次のとおりである。
締結国:47 か国・機関
米国、
フランス、
ドイツ、
イギリス、
イタリア、
オランダ、
スウェーデン、
フィンランド、
カナダ、
オーストラリア、韓国、中国、インド、イスラエ
ル、ロシア、旧ソ連(10 か国)
、ポーランド、旧
ユーゴスラビア(6か国)
、ブラジル、インドネシ
ア、ルーマニア、ブルガリア、チェコ、スロバキ
ア、
ハンガリー、
ノルウェー、
南アフリカ共和国、
ベトナム、スイス、ニュージーランド、EU、ス
ペイン、エジプト
(2)国際共同研究の推進
(ア)エネルギー・環境分野の国際共同研究
2009 年の日米クリーンエネルギー技術協力の合意に
基づき、2010 年よりエネルギー・環境技術分野におけ
る国際共同研究を主に米国と進めている。2015 年度か
ら開始した
「革新的エネルギー技術国際共同研究開発事
業」では、2050 年頃に実用化されるような温室効果ガ
ス削減に資する革新的エネルギー技術について、
国際共
同研究を実施している。2016 年5月の「G7北九州エ
ネルギー大臣会合」
の共同声明では、
クリーンエネルギ
ー技術の開発を促進するため、
関連する研究機関間の協
力の重要性が確認された。
また、2016 年6月には、
「第 21 回締結国会議(COP21)」の場で立ち上げられたクリーンエネルギー関連
表:2016 年度研究開発評価実績
研究開発評価の種類 評価実施件数
技術に関する施策評価 1件
技 術 に 関 す
る 事 業 評 価
( 研 究 開 発
制 度 評 価 及
び プ ロ ジ ェ
クト評価)
事前評価(事業開
始前に実施。)3件
中間・終了時評価
(事業実施途中及
び終了後に実施。)15 件 251の研究開発強化に係る国際イニシアティブ「ミッショ
ン・イノベーション」の第一回閣僚会合に参加した。参
加国はクリーンエネルギー分野の政府研究開発投資を
5年間で2倍にすることを目指すこと、
新たな投資は革
新的な技術に焦点を当てること、
投資の戦略は各国の事
情に基づき独自に取り組むこと、
に合意し、
各国は当該
分野への研究開発投資を2倍にする計画を発表した。我が国も、2050 年頃を見据えた長期的に抜本的な排出削
減効果が見込まれる地熱発電、
水素技術など革新的技術
に焦点を当て、研究開発費を倍増する計画を表明した。
さらに、2016 年 11 月には第 22 回締結国会議(COP
22)の場で、ミッション・イノベーションの活動の一つ
として、
参加国有志による7つの技術分野の研究開発促
進の取組である
「イノベーションチャレンジ」
が立ち上
げ ら れ た 。 我 が 国 は 「 Carbon Capture Innovation
Challenge」及び「Converting Sunlight Innovation
Challenge」の2つのイノベーションチャレンジに参加
している。
(イ)2国間の国際共同研究の促進
経済産業省及びイスラエル経済省間で 2014 年7月に
締結された産業R&D協力に関する覚書に基づき、
共同
研究に関する資金支援の枠組みを構築し、
イスラエルと
の研究開発協力を開始した。
また、日独間の国際共同研究を促進するため、2017
年3月にドイツ・ハノーバーで開催された
「国際情報通
信技術見本市(CeBIT)
」において、経済産業省、
NEDO及びドイツ連邦経済エネルギー省間で
「研究・
開発及びイノベーションに関わる相互協力に係る共同
声明」を締結した。(3)APEC科学技術イノベーション政策パートナー
シップ(APEC/PPSTI)
APEC/PPSTI
(科学技術イノベーション政策
パートナーシップ)は、これまで開催されてきたIST
WG(産業科学技術作業部会)の後継として 2013 年から
開催されている。2016 年5月にはペルーにおいて第8
回APEC/PPSTI会合が開催された。
APEC/
PPSTIでは、政府の関係者の他、産業界、学会の参
加を得てイノベーションについての議論を行っている。
(4)イノベーション技術政策作業部会(OECD/
CSTP/TIP)
(TIP:The Working Group on
Innovation and Technology Policy)
C S T P ( Committee for Scientific and
Technological Policy)は、1969 年に設立された科学
研究委員会を前身とし、数回の改組の後、1972 年に現
行の組織となった。
CSTP傘下のTIPでは、
年2回定期会合を開催し、
生産性の向上、知識の創出・普及・活用、持続可能な成
長等に向けて、
イノベーションの観点から分析・助言を
行い、
各国の科学技術政策への相互理解を向上させるこ
と を 目 的 に 活 動 し て い る 。 2016 年 度 は 、 System
Transformation
(実証や規制等、
政策によって誘導され
るイノベーションの事例分析に関する取組)及び
Knowledge Triangle
(研究機関だけではなく教育機関が
イノベーションに大きな役割を果たすとし、
高等教育機
関、資金供給、地域システム、イノベーションシステム
の評価法等、
エコシステムを事例分析する取組)
の2テ
ーマについて、各国の調査・分析が行われた。
(5)ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログ
ラム(HFSP:Human Frontier Science Program)
生体の持つ複雑かつ優れた機能の解明を中心とする
基礎研究を国際的に共同して推進し、
その成果を広く人
類全体の利益に供することを目的として、我が国が
1987 年のヴェネチア・サミットにおいて提唱し、創設
された国際共同研究助成制度。参加国・地域(運営支援
国・地域)は、日本、米国、イギリス、ドイツ、フラン
ス、
イタリア、
カナダ、
スイス、
韓国、
オーストラリア、
EU、インド、ニュージーランド、ノルウェー、シンガ
ポールの 15 か国・地域となっている。
事務局は国際ヒューマン・フロンティア・サイエン
ス・プログラム推進機構が務めており、
経済産業省から
は 2016 年度分として約 4.8 億円(4,327 千米ドル)の
拠出を行った。
なお、
HFSPの研究助成制度の1つで
ある研究グラント事業
(国際共同研究チームへの研究費
助成)
について、
2016 年度は 100 件を採択した。
また、
研究グラント受賞者の中からこれまで 26 人がノーベル
賞を受賞している(2016 年度までの総計)。 252
8.産業技術に関する調査
世界経済の活動のグローバル化が加速し、
国際競争が
激化する中、
我が国が持続的な経済成長を通じて豊かな
国民生活を実現していくには、
世界の動向を見据えた上
で、
成長分野における創造的・革新的な研究開発を促進
してイノベーションを生み出すとともに、
その成果を効
果的に活用するための環境の整備が極めて重要であり、
こうした課題の解決に資する研究開発を強化するため
の投資の拡充、
産学連携の推進や技術人材育成等の産業
技術政策を強力かつ戦略的に推進していくことが必要
である。
このため、国内外の研究開発の動向等を的確に捉え、
我が国の産業技術政策の国際的な観点からの比較・検証
及び国際競争力強化を目指した研究開発戦略の検討等
に必要となる調査分析を行い、
実態を踏まえた効果的か
つ合理的な産業技術政策の企画立案等に役立てた。
具体的には、我が国企業のイノベーション創出活動、
研究開発税制の海外主要国の制度や国内での利用実態
や、
大学発ベンチャーの成長要因に関する調査及び研究
開発事業終了後の実用化状況等に関する追跡調査・追跡
評価等を実施した。

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