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グローバル展開を支援する通商政策

電気電子機器は、自動車などと並んで日本の貿易の中で大きな割合を占める分野であり、日本の代表的な工業製品となっています。また日本の多くの電気電子メーカーが海外に進出しており、国際化が進んでいます。これに伴もない、人、モノ(貿易)、お金(投資)の国境を越えた流れはますます太くなっており、その発展のためには障壁をなくしていくことが重要となっています。

一方で、日本企業はアジア諸国等のメーカーとの激しい競争にさらされています。このため、国際競争力の確保の観点からも、自由で公正な通商ルールの整備が喫緊の課題となっています。

こうしたことから、政府には、貿易・投資の自由化と、我が国電気電子機器産業が、その競争力をいかんなく発揮できるような自由で公正な環境づくりの両方に資するための通商戦略を求められています。具体的には、1WTO(世界貿易機関)、2EPA(経済連携協定)、3その他二国間の枠組みの3つの手法を駆使して進めています。

世界貿易機関(WTO)交渉の推進

電気電子分野アプローチ

日本は、すでにほとんどの電気電子製品の輸入関税を撤廃しています。しかし下表にあるように、先進国を含む多くの国で関税が課されています。

各国の関税率(MFN税率)(単位:%)
アメリカ EU(欧州連合) 中国 インド 日本
テレビ 0 – 5 14 30 10 0
DVDプレーヤー 0 14 20 10 0
ビデオカメラ 2.1 4.9 – 14(注記) 0 10 0

(注記)EUのビデオカメラの税率は、製品の性質によって4.9%と14%に分けられるが、後者の税率はEU拡大に伴う補償措置のため2009年末まで12.5%となる。

そこで日本政府は、WTOにおいて電気電子分野の関税をゼロとする提案を行っています。これは、同分野の貿易額が大きい国々が自発的に関税撤廃を行うことで、事実上、同分野の関税障壁をゼロにするというものです。

現在、同提案には米国や韓国、タイなどが賛同しており、これらの国々と提案内容を調整すると同時に、EU(欧州連合)や中国などにも働きかけを行っています。

情報技術協定(ITA)

パソコンなどのコンピュータや携帯電話をはじめとする通信機器、IT機器に必要不可欠な半導体、半導体製造装置などは、WTOのITAにより、約70ヵ国・地域で関税が撤廃されています。ITAはIT製品の価格の引き下げに資することで、その普及を促してきたと言えます。しかし今、ITAは以下の課題を抱えています。

まず、地理的な拡大です。先進国のほか、近年WTOに加盟した中国やベトナムなどはITAに当初から参加していますが、中南米諸国などITAに参加せず、関税が残る国もあります(例えばブラジルの携帯電話の関税は16%)。

もう一つの課題は、近年のIT分野の技術進歩によって新機能の追加や技術的融合が進んだ結果、ITAの対象範囲について各国の間で理解の相違が生じていることです。例えばパソコンの表示装置として使われる液晶モニタは、コンピュータの出力装置としてITAの対象(関税ゼロ)ですが、EUではビデオ信号を受信できる機能を持つ機種をビデオモニタ(ITA非対象)として14%の関税を課しています。またプリンター(ITA対象)、スキャナー(同)、ファクシミリ(同)とコピー(ITA非対象)の機能を持ち、コンピュータやネットワークに接続するデジタル複合機については、日本や米国ではITAに鑑み関税をゼロとしていますが、EUは毎分12枚以上のコピーができる機器についてはコピー機と同じ6%の関税を課しています。

これに対して日本は、2007年1月のITAワークショップ、3月のITA10周年シンポジウムなどを通じて、ITAの趣旨に基づく解釈・運用を行うことの重要性を訴えています。

経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)の戦略的推進

電気電子産業とEPA

WTOには多くの国が参加しているため、世界規模で自由化を進めることができるというメリットがある反面、多くの国と利害調整が必要となるため調整に長い時間がかかってしまう傾向があります。

こうしたことから、近年ではFTA交渉が盛んに行われています。日本も2002年にシンガポールと最初のEPA((注記)モノやサービス貿易の自由化に加え、投資や知的財産権の保護などより広い分野を対象としていることから、このように呼称しています)を締結したのを皮切りに、メキシコ(05年4月発効)やチリ(07年3月署名)、東南アジア諸国(シンガポール(02年11月発効)、マレーシア(05年12月発効)、タイ(07年3月署名)、フィリピン(06年9月署名)、インドネシア(06年1月大筋合意)、ブルネイ(06年12月大筋合意)、ベトナム(交渉中))と続きました。

こうした動きを電気電子産業の観点から見ると、2つの意義があります。一つは、日本企業が海外工場に輸出する部品の関税の引下げや、サービスや投資などの自由化を進めることで、日本企業の現地進出及び活動を支援し、貿易・投資を促す点です。これは東南アジア諸国やメキシコ、インド等とのEPAが当てはまります。

もう一つは、日本企業と海外の競合企業との競争条件のイコールフッティングです。例えば、韓国が先にFTAを締結したことにより、日本企業の競争条件が不利な立場になっていたチリやアセアンとの協定が当てはまります。

日アセアンEPA

今や日本のメーカーの電気電子機器のすべてが"Made in Japan"というわけではなく、日本メーカーが開発・設計し、アジア諸国など世界各地にある日系メーカーの海外工場で生産したものを第三国に輸出するという構図が一般化しています。例えば、タイの工場で生産したテレビをインドに輸出したり、メキシコ工場で組立てた薄型テレビを米国に輸出したりする「外→外」のほか、日本からマレーシアに部品を輸出し、その部品を使って最終製品を組立て、タイに輸出するという「日→外→外」の図式もあります。

ところが、そのような場合、日本との二国間のEPAでは日本から輸出した部品のみが対象となり、日系メーカーの海外工場から第三国に輸出される最終製品はEPAの非対象となります。そこで日本、アセアンを一体と見なし、日本及びアセアン域内国の輸出入全体を関税引下げの対象とするのが、現在交渉中のアセアンとのEPAです。すでにアセアンと同様の協定を結んでいる中国や韓国との競争の観点からも、早期の締結が望まれます。

本年5月には、日アセアン包括的経済連携(AJCED)が大筋合意しました。

今後のEPA

東南アジアに続き、現在、インド、GCC(湾岸協力会議諸国;サウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦などペルシア湾岸6カ国)、スイス、オーストラリアとの交渉が進められています。今後のEPAは主に2つの傾向を持つと考えられます。

一つは、電気電子製品などの大市場である、米国やEUとのEPAです。これまで欧米とのEPAは、欧米の貿易障壁がアジア諸国などと比べて低く、またWTOを中心とする世界貿易体制に与える影響も大きいことから、積極的に議論されてきませんでしたが、韓国が米国とのFTAに07年4月に合意し、さらにEUとの交渉を開始したことから、今後は議論が活発になると考えられます。電気電子産業は数%の利益率でしのぎを削る競争状態が続いており、FTAにより削減される関税率の差は日本企業にとって非常に大きいと言えます。

二つ目は、さらに大きな範囲を対象としたEPA、FTAです。現在、日本とアセアンとの交渉が行われていますが、中国や韓国、インドなどを含む東アジアFTAや、APEC(アジア太平洋経済協力)ワイドのFTA(FTAAP)構想など、さらに地理的にも経済的にも規模の大きなものを目指す動きが現れています。これらの実現には多くの問題がありますが、世界規模で活動する電気電子メーカーにとっては大きなチャンスとなる可能性があります。

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