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外国公務員贈賄罪Q&A

質問

回答

Q1 外国公務員等に対する贈賄を禁止する趣旨は何ですか?

1997年12月にパリのOECD本部において、我が国を含む33ヶ国により「国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約(以下「外国公務員贈賄防止条約」という。)」が署名されました(1999年2月発効)。

この条約は、国際商取引における外国公務員への不正な利益供与が、国際的な競争条件を歪めているとの認識のもと、これを防止することにより、国際的な商取引における公正な競争を確保することを目的としています。

これが我が国においても、外国公務員等に対する贈賄を禁止する趣旨です。

Q2 なぜ、不正競争防止法で外国公務員等に対する贈賄を規制するのでしょうか。対象となる行為は「不正競争」(第1条)の一部ですか?

外国公務員贈賄罪は、国際商取引における公正な競争を確保することを目的とするものであり、国内的な実施に際しては、事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施の確保を法目的とする不正競争防止法により対応することが適切であると判断されたからです。

また、国際商取引における外国公務員への不正な利益供与は、不正競争防止法第2条第1項各号に掲げられた「不正競争」の行為類型には該当しませんが、不正競争防止法による規制には、競争手段の不正さに着目し、不正な行為を競争手段として用いることを公益侵害性の高い行為ととらえ、これを禁止し、違反に対して刑事罰を科すという類型もあることから、外国公務員贈賄罪を不正競争防止法に規定しています。

Q3 「何人も」の定義は何ですか。日本国外で贈賄を行った日本人についても、処罰の対象となるのですか?

第18条第1項の規制対象となる行為を日本国内で行う全ての者が、本法の対象となり得ます。すなわち、日本国民及び外国人がその国籍に関係なく、犯罪の構成要件の一部をなす行為が日本国内で行われ、又は構成要件の一部である結果が日本国内で発生した場合には、本法の適用を受けます。

また、日本国民については、刑法第3条の例に従い、日本国外で規制対象行為を行った場合にも、本法の適用を受けることを第21条第6項に規定しています。

Q4 「営業上の不正な利益」とはどのようなものですか?

本法において「営業」とは、判例上、単に営利を直接に目的として行われる事業に限らず、事業者間の公正な競争を確保する法目的からして、広く経済収支上の計算に立って行われる事業一般を含むと解されています。したがって、「営業上の利益」とは、事業者が「営業」を遂行していく上で得られる有形無形の経済的価値その他の利益一般を意味します。

例えば、取引の獲得、工場建設や商品の輸出入等に係る許認可の獲得などがこれに該当します。一方、販売目的のためものではなく、現地において自らが生活するために最低限必要な食糧の調達のための便宜などは、「営業上の利益」にならない可能性があります。

また、「不正の利益」とは、公序良俗又は信義則に反するような形で得られるような利益を意味しています。

Q5 途上国においては、ビザの取得や公共サービスを受ける際に、外国公務員から金銭等を要求されることも多いと聞きますが、このような支払いも犯罪となるのでしょうか?

金銭の支払い等が「営業上の不正の利益を得るため」の利益提供に該当し得るものと考えられるため、金銭等の要求を拒絶しましょう。

Q6 例えば、通関等の手続において、事業者が現地法令上必要な手続を行っているにもかかわらず、事実上、金銭や物品を提供しない限り、現地政府から手続の遅延その他合理性のない差別的な不利益な取扱いを受けるケースが存在しますが、そのような場合の支払いも犯罪となるのでしょうか?

このような差別的な不利益を回避することを目的とするものであっても、そのような支払自体が「営業上の不正の利益を得るため」の利益提供に該当し得るものである上、金銭等を外国公務員等に一度支払うと、それが慣行化し継続する可能性が高いことから、金銭等の要求を拒絶することが原則です。

また、支払要求の更なる助長を防止する観点から、自社単独で又は現地日本大使館・領事館や現地商工会議所等を経由して拒絶の意思を明らかにすることが望ましいです。

Q7 生命・身体に対する危険の回避を主な目的として、やむを得ず行った利益供与等についても犯罪となるのでしょうか?

生命・身体に対する危険の回避を主な目的として、やむを得ず行った利益供与等は、「不正の利益」を得る目的がないと判断される場合があり得ます。

また、例えば、支払を行わないと暴行される可能性がある場合など、生命、身体に対する現実の侵害を避けるため、他に現実的に取り得る手段がないためやむを得ず行う必要最低限の支払については、緊急避難の要件を満たす可能性があります。

Q8 「国際的な商取引」とはどのようなものですか?

「国際的な商取引」とは、国際的な商活動を目的とする行為、すなわち貿易及び対外投資を含む国境を超えた経済活動に係る行為を意味しています。

具体的には、(1)取引当事者間に渉外性がある場合、(2)事業活動に渉外性がある場合、のいずれかであって、営利を目的として反復・継続して行われる事業活動に係る行為を意味しています。
例えば、

  • 日本に主たる事務所を有する商社が、X国内のODA事業(例えば橋の建設)の受注を目的として、日本でX国公務員に贈賄する事例
  • Y国に主たる事務所を有する日系の建設業者が、東京のY国の大使館の改築工事の受注を目的として、日本でY国公務員に贈賄する事例

などが国際的な商取引に当たるとして本規定の対象となると考えられます。

Q9 「職務に関する行為」とはどのようなものですか?

「職務に関する行為」とは、当該外国公務員等の職務権限の範囲内にある行為はもちろん、職務と密接に関連する行為を含むものであり、刑法第197条〔収賄罪〕の規定中の「職務」と同義です。

具体的には、過去、刑法の贈収賄罪に関する判例で認められた、慣習上当該公務員が行っている事務や職務の遂行のために関係者に対し各種働きかけが、職務と密接に関連する行為として挙げられます。

Q10 「金銭その他の利益」とはどのようなものをいうのですか?

本法に規定される「金銭その他の利益」とは、金銭や財物等の財産上の利益にとどまらず、およそ人の需要・欲求を満足させるに足りるものを意味します。

したがって、金銭や財物はもちろん、金融の利益、家屋・建物の無償貸与、接待・供応、担保の提供などの財産上の利益のほか、異性間の情交、職務上の地位などの非財産的利益を含むいっさいの有形、無形の利益がこれに該当します。

Q11 外国公務員等に対する接待や贈答の取扱いはどうなっているのですか?

外国公務員等にかかる旅費、食費などの経費負担や贈答は、典型的な贈賄行為ともなり得るものです。もっとも、純粋に一般的な社交や自社商品・サービスへの理解を深めるといった目的によるものであって、外国公務員等の職務に関して、自社に対する優越的な取扱を求めるといった不当な目的もないのであれば、必ずしも「営業上の不正の利益」を目的とする贈賄行為と評価されるわけではありません。

具体的には、時期、品目や金額、頻度その他の要素から判断して、純粋に社交や自社商品・サービスへの理解を深めることを目的とする少額の贈答、旅費の負担、娯楽の提供等が想定されます。これらについては、社内における慎重な検討を確保する観点から現地法令等も勘案して策定された社内基準に基づいて判断され、その結果が適切に記録されることによって事後的な監査の機会が確保されることが望ましいです。

(i)「営業上の不正の利益」を得るための支払と判断される可能性が大きいと考えられる行為

  • 外国公務員等へのスポーツカーの提供 ‒ 外国公務員等への少額であっても頻繁な贈答品の提供
  • 外国公務員等への換金性のある商品券の贈答
  • 外国公務員等の家族等をグループ企業で優先的に雇用すること
  • 自社商品・サービスとの関係が乏しいリゾート地への外国公務員家族の招待
  • 外国公務員等の関係する企業をエージェント、コンサルタントとして起用すること
  • 物品等の金額や経済的価値にかかわらず、入札直前の時期における支払

(ii)「営業上の不正の利益」を得るための支払とは必ずしも判断されない可能性がある行為

  • 広報用カレンダー等の提供など、宣伝用物品又は記念品であって広く一般に配布するためのものの贈与
  • 業務上の会議における茶菓や簡素な飲食物の提供
  • 業務として自社事業所を往訪する外国公務員に対して、交通事情上必要な場合に、自社自動車等を利用させること
  • 現地社会慣習に基づく季節的な少額の贈答品の提供
  • 自社が展示会へ出展するだけでは商品・サービスの内容、品質への理解に至らないため、自社工場・研究所(現地国内に限らず、日本ないし第三国を含む)の視察を要する場合における、一定の社内基準に基づいて選定された外国公務員等が要した旅費の負担(現地法令等を踏まえた自社の基準に基づく実費)
  • 上記視察に付随した、合理的かつ相応な範囲の会食(なお、金額基準が定められた、視察地国又は当該外国公務員の国の公務員腐敗防止法令がある場合には、当該基準を参考とした会食費)や視察の空き時間等に実施する観光の提供

Q12 「外国公務員等」には具体的にはどのような者が該当するのでしょうか?

不正競争防止法第18条第2項においては、本法の対象となる外国公務員等について、次の5つに分類して定義しています。

1外国の政府又は地方公共団体の公務に従事する者(第 1 号)
2外国の政府関係機関の事務に従事する者(第 2 号)
(我が国でいえば、特殊法人や独立行政法人がこれに該当します。)
3外国の公的な企業の事務に従事する者(第 3 号)
4公的国際機関の公務に従事する者 (第 4 号)
(国連やWTO等の職員がこれに該当します。)
5外国政府等から権限の委任を受けている者(第 5 号)
(我が国でいえば、指定検査機関の職員がこれに該当します。 )

なお、「外国」には、我が国が国家として未承認の国も含まれます。

Q13 外国公務員贈賄については、何度か規定が改正されていますが、何故ですか?

外国公務員贈賄防止条約では、各締約国の措置の同等性を確保することが必要であるとの認識の下、条約第12条において、条約の完全な実施の監視及び促進のための締約国間の協力が求められています。

これを受け、OECD 贈賄作業部会において、平成11年2月の条約発効後、条約締約国の実施法の整合性審査(フェーズ1審査)、当該審査の指摘事項についてのフォローアップ審査(フェーズ1プラス審査)、実施法の運用状況(実効性)の審査(フェーズ2審査)、フェーズ2審査のフォローアップ及び執行面に重点を置いた審査(フェーズ3審査)、が順次行われており、全条約加盟国の制度・運用が継続的に監視されています。また、平成28年より、主要な贈賄作業部会横断的な課題や、フェーズ3審査までに確認された指摘事項等の進捗に関する審査(フェーズ4審査)が開始されました。

我が国に対しても、平成11年10月にフェーズ1審査、平成14年4月にフェーズ1プラス審査、平成16年12月及び平成17年1月にフェーズ2審査、平成18年6月にフェーズ2bis 審査、平成19年10月にフェーズ2フォローアップ審査、平成23年12月にフェーズ3審査、平成26年2月にフェーズ3フォローアップ審査、令和元年6月にフェーズ4審査が行われました。

お問合せ先

外国公務員贈賄防止総合窓口
経済産業省 知的財産政策室
電話:03-3501-1511 内線2631
(9時30分〜12時00分、13時00分〜17時00分)
(注記)土曜日、日曜日、祝日を除く

最終更新日:2023年3月24日
経済産業省 〒100-8901 東京都千代田区霞が関1-3-1 代表電話 03-3501-1511
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