令和6年度 産業競争力強化法の改正について


新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための
産業競争力強化法等の一部を改正する法律
制度概要
(産業競争力強化法関連)
2024年9月
目次11.成長意欲のある中堅企業に対する成長支援
2.特別事業再編計画
3.募集新株予約権の機動的な発行に関する制度
4.特定新需要開拓事業活動計画
5.産業競争力基盤強化商品の生産及び販売の促進
中堅企業者への集中支援の枠組み構築
⚫ 産業競争力強化法において、中小企業者を除く従業員数2,000人以下の企業を「中堅企業者」と定義。
⚫ さらに、積極的に賃上げやリスクを取った投資等を行う成長意欲の高い中堅企業を「特定中堅企業者」
として定義し、設備投資やM&Aを促進する税制措置等を講じ、国内経済の成長と新陳代謝を促進する。
中堅企業の
国内経済
への貢献
・中堅企業は、大企業を超える国内売
上・投資や給与総額等の伸びがあり、
国内経済に大きく貢献。
・他方、中小企業政策の対象外として
大手と同列の大企業と位置付けられ、
中堅企業の課題に応じた措置が講じ
られて来なかった。
常用従業員数2,000人以下の会社等(中小企業者を
除く)を「中堅企業者」、賃金水準が高く国内投資
に積極的な中堅企業者を「特定中堅企業者」(注記)として
新たに定義し、以下を措置。
(注記)主務省令で基準を規定
1特定中堅企業者・中小企業者が特別事業再編を行
う場合(複数M&Aを行う計画認定スキーム)
➢ 中堅・中小グループ化税制(損失準備金制度を拡
充し、株式取得額の最大100%・10年間を積立可能)
➢ 日本政策金融公庫による金融支援
2特定中堅企業者が事業再編を行う場合
➢ 知財管理に関するINPITの助言・助成
➢ 日本政策金融公庫による金融支援
中小・中堅・大企業の10年間での伸び額・率
給与総額(兆円)
2.4 2.5 2.8
中小企業 中堅企業 大企業
+20.1%
+18.0%
+12.3%
設備投資額(兆円)
中小企業 中堅企業 大企業1.31.50.7+37.5%
+7.3%
+56.8%
(注記)別途、地域未来投資促進法に基づく承認を受けた特定中堅企
業者向けに、設備投資減税を拡充(最大6%の税額控除)2背景・課題 産業競争力強化法の一部改正 3特定中堅企業者の要件
⚫ 国内投資・雇用者の所得の向上と国内産業の新陳代謝をより効果的・効率的に活性化させていくため、産
業競争力強化法で措置する支援の対象となる特定中堅企業者については、成長志向が強く、国内経済に
貢献する高いポテンシャルを有するものとし、「雇用」、「成長投資」、「経営力」の3つの観点から設定。
企業規模
• 中堅企業者:常時使用する従業員の数が2,000人以下の会社及び個人(中小企業者を除く)
(注記)ただし、以下のものを除く
1 みなし大企業
2 風営法に基づく風俗営業又は性風俗関連特殊営業に該当する事業を営むもの
3 暴力団対策法に基づく暴力団員等が役員にいるものや、暴力団員等が事業活動を支配するもの
【指標1】
良質な雇用
の創出
• 直近の事業年度において、以下のいずれも満たすこと(地域における良質な雇用を生み出す役割を重視)
1賃金(常時使用する従業員1人当たり給与等支給額)が業種別平均以上
2常時使用する従業員数の年平均成長率(3事業年度前比)が業種別平均以上
【指標2】
将来の成長性
• 直近3事業年度のうち、いずれかの事業年度が、中堅企業者の業種別平均以上の売上高成長投資比率
であること(将来成長に向けた十分な成長投資を実行しているかどうかを重視)
(注記)成長投資は、1設備投資額(有形固定資産投資)、2無形固定資産投資額、3研究開発費、4教育訓練費のい
ずれか
十分な
経営能力
(注記)特定中堅企業者が事業計画の認定を受ける場合に確認(支援措置の活用において必要)
• 更なる成長を目指した経営ビジョン(長期的に目指す姿、事業戦略、成果目標、経営管理体制)を策
定・提出し、外部有識者で構成される評価委員会が十分な経営能力を有しているかどうかを確認123 目次41.成長意欲のある中堅企業に対する成長支援
2.特別事業再編計画
3.募集新株予約権の機動的な発行に関する制度
4.特定新需要開拓事業活動計画
5.産業競争力基盤強化商品の生産及び販売の促進 5制度の概要
⚫ 成長意欲のある中堅企業・中小企業が、複数の中小企業を子会社化し、親会社の強みの横展開や経営の
効率化によって、グループ一体となって成長を遂げる計画を特別事業再編計画として認定し、認定を受けた取
組に対して、税制優遇や金融支援等の支援措置を講じる。
事業所管
大臣
1申請
2計画認定
3支援・
特例措置
中堅企業者
中小企業者
経営資源の
一体的活用による
新たな需要の開拓
税制・会社法・金融支援 等
各種制度
グループ化の取組や組織内
ベストオーナー再編を促進 6特別事業再編計画の要件
要件 要件の具体的内容
申請事業者
中堅企業者(注記)又は中小企業者(常時使用する従業員2,000人以下の者に限る。)
(注記)中堅企業者のうち、特に賃金水準や投資意欲が高い「特定中堅企業者」のみが税制措置(中堅・中小グループ化税制、登録免許税の軽減)を
活用することが可能。
過去の
M&Aの実績
過去5年以内に、取得価額1億円以上のM&A(事業構造の変更)を実施していること
計画期間 5年以内
成長要件
(事業部門単位)
計画の終了年度において次の両方の達成が見込まれること。
1従業員1人当たり付加価値額 9%向上
2売上高 1.2倍
財務の健全性
(企業単位)
計画の終了年度において次の両方の達成が見込まれること。
1有利子負債/キャッシュフロー≦10倍 2経常収入>経常支出
雇用への配慮、
賃上げ
1計画に係る事業所における労働組合等と協議により十分な話し合いを行うこと、かつ実施に際して雇用の安定等に十分な配慮を行うこと
2雇用者給与等支給額 2.5%(年率)の上昇
事業構造の変更
取得価額1億円以上のM&Aであって、次のいずれかを行うこと。
1吸収合併、2吸収分割、3株式交換、4株式交付(議決権の50%超を保有することとなるものに限る。)、5事業又は資産の譲受
け、6他の会社の株式又は持分の取得(議決権の50%超を保有することとなるものに限る。)
前向きな取組
計画の終了年度において次のいずれかの達成が見込まれること。
1新商品、新サービスの開発・生産・提供 ⇒ 新商品等の売上高比率を全社売上高の1%以上
2商品の新生産方式の導入、設備の能率の向上 ⇒ 商品等1単位当たりの製造原価を5%以上削減
3商品の新販売方式の導入、サービスの新提供方式の導入 ⇒ 商品等1単位当たりの販売費を5%以上削減
4新原材料・部品・半製品の使用、原材料・部品・半製品の新購入方式の導入 ⇒ 商品1単位当たりの製造原価を5%以上削減
グループ内連携
特別事業再編を実施する事業者全体の方針の下、次のいずれかを実施することで成長を達成することが見込まれること。
1グループ内の経営資源とM&Aにより取得する他の事業者の経営資源を組み合わせて利用すること
2生産、販売、人事、会計又は労務等に係る経営管理の方法をM&Aにより取得する他の事業者に導入し、経営の効率化を図ること 7特別事業再編計画の措置の全体像
支援措置 活用可能な事業者
税制
中堅・中小グループ化税制(中小企業事業再編投資損失準備金の拡充枠)
(注記)課税の特例の確認を
受ける必要
登録免許税の軽減
(注記)課税の特例の確認を
受ける必要
債権放棄時の資産評価損の損金算入
金融支援
指定金融機関による長期・低利の大規模融資
(ツーステップローン)
必要な資金の借入等に関する
(独)中小企業基盤整備機構による債務保証
中小企業投資育成株式会社法の特例
会社法
現物出資等の円滑化
略式組織再編とキャッシュ・アウトの円滑化
株式併合の円滑化
株式を対価とするM&Aの円滑化
スピンオフの円滑化
民法 事業譲渡時の債権者のみなし同意
独禁法 企業結合時の主務大臣から公正取引委員会への協議
中堅
中堅
中堅
中堅
中堅
中堅
中堅
中堅
中堅
中堅
中堅
特定
中堅
特定
中堅
特定
中堅
特定
中堅
特定
中堅
特定
中堅
特定
中堅
特定
中堅
特定
中堅
特定
中堅
特定
中堅
特定
中堅
特定
中堅
中小
中小
中小
中小
中小
中小
中小
中小
中小
中小
中小
中小
中小
目次81.成長意欲のある中堅企業に対する成長支援
2.特別事業再編計画
3.募集新株予約権の機動的な発行に関する制度
4.特定新需要開拓事業活動計画
5.産業競争力基盤強化商品の生産及び販売の促進
株主総会
(特別決議)
➢ 発行数の上限
➢ 有償・無償の区別(有償の場合、
ストックオプションの取得額の最低額)
➢ ストックオプションの内容
➢ 発行数の上限
➢ 有償・無償の区別(有償の場合、
ストックオプションの取得額の最低額)
➢ ストックオプションの内容
取締役会
➢ 具体的な発行数(上限内)
➢ 具体的な金額(最低額以上)
➢ 割当日
➢ 払込みの期日
➢ その他(社債に付する場合の事項)
➢ 具体的な発行数(上限内)
➢ 具体的な金額(最低額以上)
➢ 割当日
➢ 払込みの期日
➢ その他(社債に付する場合の事項)
➢ 権利行使価額
➢ 権利行使期間
➢ ・・・
上記事項を定めた上で、
以下の事項を委任可能
(1年間に限って有効)
上記事項を定めた上で、
以下の事項を委任可能
(会社設立後最大15年間、有効)
➢ 権利行使価額
➢ 権利行使期間
募集新株予約権の機動的な発行に関する制度の創設
⚫ ストックオプションは、特にスタートアップにおいて、人材確保の観点から重要だが、スタートアップを含む非公開会
社においては、株主総会の決議でストックオプションの内容を定めることが必要。
取締役会に決定を委任できる範囲・期間が限られており、柔軟性や機動性に欠ける状態。
⚫ スタートアップの人材確保をより後押しするため、産競法改正により会社法の特例を措置し、スタートアップに
よるストックオプションの柔軟かつ機動的な発行を可能とする。9会社法の規定
改正内容
(改正産競法で措置する会社法の特例)
目次101.成長意欲のある中堅企業に対する成長支援
2.特別事業再編計画
3.募集新株予約権の機動的な発行に関する制度
4.特定新需要開拓事業活動計画
5.産業競争力基盤強化商品の生産及び販売の促進
特定新需要開拓事業活動計画の認定制度
⚫ 企業と大学等が共同で実施する研究開発について、標準化と知的財産を一体的に活用する戦略(オープン
&クローズ戦略)の策定・活用を促進するための計画認定制度を創設する。
⚫ これにより、研究開発成果の社会実装・市場化を推進し、企業の収益力の向上につなげる。
背景・課題 改正内容
産業競争力強化法における認定制度の創設 【新規】
◼ 企業・大学等が共同で実施する研究開発について、
標準化と知財を一体活用した戦略(オープン&クロー
ズ戦略)に取り組む計画を認定
特定新需要開拓事業計画の認定
⚫ 研究開発成果を社会実装するためには、標準化
や知財によるルール形成が必須、国際競争も活発
化。
⚫ 日本の企業や大学等の研究機関は、標準化や知
財を一体的に活用した戦略(オープン&クローズ戦
略)を、十分に構築・活用できていない。
⚫ 企業・大学等の、知見・人材・体制や資金などの不
足を刺激し、収益力を向上させる。
• 認定した企業・大学等の活動に対するINPIT、NEDO
による助言
(参考2)大学発SUから見た課題
(アンケート結果)
✓ 大学発特許を活用しているが、知財
戦略・財源の不足により外国出願が
十分カバーされていなかった。
✓ 大学からの特許実施許諾に係る対象
エリアが日本だけに限定されているもの
もあり、もっと先を見越した特許戦略
が必要だった。
✓ 当社は大学発ベンチャーであるため出
願は大学が主体となることがあるが、権
利を譲り受けても権利範囲や各国移
行が不十分である。
(参考1)ISO・作業部会の議長ポスト数
(中国が2022年に世界3位まで急伸)
(出所)国際標準化協議会「ISO事業概要」
(注記)日本は世界5位
(出所)スタートアップが直面する知的財産の課題に関する調査
研究報告書(令和3年度)(経済産業省一部加工)11(出所) 一般社団法人日本能率協会(JMA)「日本企業の経営課題2021」
(経済産業省一部加工)
(参考3)企業の研究開発領域で重視さ
れている要素 (参考4)想定イメージ
・A大学とB社・C社が、商用化段階に
至っていない基礎研究PJを共同実施。
・オープン&クローズ戦略が意識されていな
いことが多く、その後も、単なる知財移
転にとどまったり、国際標準化競争に
劣後するといったおそれあり。
⇒研究開発の早期段階での、オープン&
クローズ戦略の策定を後押しし、市場
獲得につなげる。
(注記)INPITによる助言・・・知的財産に関する年間12万件以上の支援実績を活かして、新たに
取得した知的財産を経営戦略に組み込むノウハウ等について能動的に助言を行う。
(注記)NEDOによる助言・・・今後の技術開発の方向性やその社会実装への行程を整理した技術
戦略や、当該戦略の作成過程において得られた情報や分析結果などの非公表のものを含
む知見を活用して、研究開発成果の市場化に向けた助言を行う。
目次121.成長意欲のある中堅企業に対する成長支援
2.特別事業再編計画
3.募集新株予約権の機動的な発行に関する制度
4.特定新需要開拓事業活動計画
5.産業競争力基盤強化商品の生産及び販売の促進
戦略分野国内生産促進税制の創設(法人税)
⚫ 米国のIRA法、CHIPS法や欧州のグリーン・ディール産業計画をはじめ、戦略分野の国内投資を強力に推進する
世界的な産業政策競争が活発化。我が国も、世界に伍して競争できる投資促進策が必要。
⚫ 具体的には、戦略分野のうち、総事業費が大きく、特に生産段階でのコストが高いもの(電気自動車、グリー
ンスチール、グリーンケミカル、持続可能な航空燃料(SAF)、半導体(マイコン・アナログ)など)について、
初期投資促進策だけでは国内投資の判断が容易でなく、米国もIRA法で生産・販売段階での支援措置を開
始していること等を踏まえ、我が国も、産業構造等を踏まえた、生産・販売量に応じて税額控除措置を講ずる新
たな投資促進策が必要。
⚫ こうした新たな投資促進策は、企業に対して生産・販売拡大の強いインセンティブを与え、本税制が対象とする
革新性の高い製品の市場創出を加速化することも可能。
初期投資の割合が大きいもの
初期投資
生産段階のコスト
時間軸費用
初期投資支援
初期投資支援が有効
生産段階のコストが大きいもの
時間軸費用
初期投資
生産段階のコスト
生産段階への措置
戦略分野国内生産促進税制を措置13 (参考)戦略分野国内生産促進税制の制度設計について
戦略分野ごとの単位あたり控除額
大胆な国内投資促進策とするための措置
⚫ 対象商品ごとの生産・販売量に応じた税額控除措置
➢ 戦略的に取り組むべき分野として、産業競争力強化法に対象商品を法定
➢ 本税制の対象分野のうちGX分野については、GX経済移行債による財源を活用
⚫ 産業競争力強化法に基づく事業計画の認定から10年間の措置期間+最大4年(注記)の繰越期間
⚫ 法人税額の最大40%(注記)を控除可能とする等の適切な上限設定
(注記) 半導体については繰越期間3年、法人税の20%まで控除可能
物資 控除額
電気自動車等
EV・FCV 40万円/台
軽EV・PHEV 20万円/台
グリーンスチール 2万円/トン
グリーンケミカル 5万円/トン
SAF 30円/リットル
物資 控除額半導体マイコン
28-45nm相当 1.6万円/枚
45-65nm相当 1.3万円/枚
65-90nm相当 1.1万円/枚
90nm以上 7千円/枚
アナログ半導体
(パワー半導
体含む)
パワー(Si) 6千円/枚
パワー(SiC, GaN) 2.9万円/枚
イメージセンサー 1.8万円/枚
その他 4千円/枚
(注)競争力強化が見込まれる後半年度には、控除額を段階的に引き下げる。(認定時から8年目に75%、9年目に50%、10年目に25%に低減)
半導体は、200mmウェハ換算での単位あたり控除額。14

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