平成28年4月28日
商務情報政策局 情報経済課
平成27年度 我が国経済社会の
情報化・サービス化に係る基盤整備
(ブロックチェーン技術を利用したサービスに
関する国内外動向調査)
報告書概要資料1 本調査の趣旨
背景
• ビットコイン等の価値記録の取引に使用されているブロックチェーン技術は、その構
造上、従来の集中管理型のシステムに比べ、
1『改ざんが極めて困難』であり、
2『実質ゼロ・ダウンタイム』なシステムを
3『安価』に構築可能
という特性を持つともいわれ、IoTを含む非常に幅広い分野への応用が期待され
ており、「フィンテックの次」の注目技術である
• 我が国企業は個別に技術検証が始まった段階であり、あらゆる産業分野におけ
る次世代プラットフォームとなる可能性をもつ当該技術において、主導権を海外
企業等に握られる恐れがある2目的
l 数あるブロックチェーン技術の詳細とその優位性・課題を比較分析する。
l 当該技術が活用されるべき有望分野を把握する。
l 当該技術が社会経済に与えるインパクトを把握する。
l 今後の当該技術を用いた産業促進に向けた政策の指針を得る。
ブロックチェーンとは
• ビットコイン等の価値記録の取引を第三者機関不在で実現している3 ブロックチェーン技術とは
• ビットコインを実現させるために生まれた技術であり、いくつかの暗号技術がベース
• P2Pネットワークを利用してブロックチェーンデータを共有し、中央管理者を必要と
せずにシステムを維持することを実現4・トランザクション情報の集合等を含んだブロックがチェーン状に連なっているもの
・ネットワーク上の複数ノードが、新しいブロックを相互に承認し、チェーンに足していく
ビットコインでは、アドレスAから
アドレスBへ5BTC移動等の取引情報
ブロックチェーン概念図
トランザクション情報
トランザクション情報
トランザクション情報
ハッシュ値(暗号技術)
値 値 値
トランザクション情報
ビットコインからみるブロックチェーン技術の特徴と課題
• ビットコインだけでなく、様々な分野に適用可能な特徴と課題がある51.新ブロック生成に時間がかかる
ブロックチェーンの種類によるが、データ処理の確定に数秒〜10分程度かかるので、即時性が必要なアプリケーションには不向き。
2.単位時間あたりのトランザクション件数が限られている
規定されているブロックに格納できるデータ量の上限と、新ブロック生成にかかる時間との関係から算出する、1秒間に処理できる
トランザクション件数がVISA等の既存決済システムと比べて劣っている。
3.実ビジネスでの運用手法等が確立されていない
実ビジネスへの適用例が少ないこともあり、ブロックチェーンに関わる各性能要件や仕様が明確ではなく、いわゆるSLA(Service
Level Agreement)が整備されていない。
【課題】
ハッシュ・電子署名
Proof of Work
(PoW)P2Pビットコインの構成技術
データの
連続性の保証
各ノードによる
ブロックチェーンデータの
共同保有
P2Pネットワークによる
データ通信
アプリケーションの実行
 スクリプトによりアプリケーションを実行可能
 真正性の保証された取引が可能
(二重支払の防止)
 データのトレーサビリティが可能で、
透明性の高い取引が可能(改ざんが困難)
 サーバコスト(構築/運用)の低廉化
 安定したシステムの構築・運用が可能
(ゼロ・ダウンシステム)
 中央管理者が不在でも、悪意を持つユーザが
いてもエコシステムが安定維持される
ビットコインの
ブロックチェーンの機能
ビットコインで実現されたこと
ブロックチェーン技術の発展トレンド
• 3つの軸(注)で、ブロックチェーン技術の改変・発展が進んでいる6価値情報(数値)の移転の
記録
財やサービスの権利の
所在と移転の記録
取引や手続きの登録PoWコンセンサス
アルゴリズム
の改善
ビットコイン
・Abra
・Openbazzar
・Everledger
・Ascribe
・BitHealth
・Filament
・・・
"altcoin"
・Litecoin
・Monacoin
・・・
Colored Coins
・Swarm
・Colu
・Votososial
・・・NEMRipple
mijin
Sidechain
・Liquid
Ethereum
・Augur
・Filament
・・・
2ブロックの生成時間を短縮
1ブロックチェーンの用途を拡張
BitsharesNxt・VoxelnautsOmniCounterparty
・Swarm
・Getgems
・Storj
・・・Eris・EverledgerOrbStellar
Peercoin
(参加は自由)
パブリック
(参加は自由)
コンソ シアム
(承認が必要)
コンソーシアム
/プライベート
(承認が必要)
3参加者を制限
ビットコインの
ブロックチェーンを
利用した拡張
異なるチェーン間での
価値交換が可能
自由なブロックチェーン
システム構築が可能
(注)3軸の説明
1記録内容を数値に限らず、権利や契約条件等にも拡大
2ブロック生成時間の短縮のための承認アルゴリズム等の改善
3ブロック生成時間短縮やシステム堅牢性の負担軽減のため
参加者を限定
独自のトークン
を発行可能
ブロックチェーン技術活用のユースケース
• ビットコイン発祥のブロックチェーン技術を改良しながら、金融以外の分野にもユー
スケースが広がっており、「ビットコイン2.0」と呼ばれている7ストレージ
シェアリング
コンテンツ
コミュニケーション
認証
資産管理 商流管理
将来予測
医療IoT公共
資金調達
ポイント/リワード
金融系
プリペイドカード
(BuyAnyCoin)SNS(Synereo、Reveal)
デジタルID
(ShoCard、OneName)
ゲーム
(Spells of Genesis、
Voxelnauts)
移⺠向け送金
(Toast)
新興国向け送金
(Bitpesa)
アーティスト向けリワード
(PopChest)
bitcoinによる資産管理
(Uphold(旧Bitreserve)
決済
(SETL、
FactoryBanking)
金保管
(Bitgold)
ギフトカード交換
(GyftBlock)
ライドシェアリング
(LaʼZooZ)
マーケットプレイス
(OpenBazaar)
ベーシックインカム
(GroupCurrency)
リワードトークン
(Ribbit Rewards)
ソーシャルバンキング
(ROSCA)
メッセンジャー、取引
(Getgems、Sendchat)
医療情報
(BitHealth)
デジタルアセット管理・移転
(Colu)
ダイヤモンドの所有権
(Everledger)
土地登記等の公証
(Factom)
アート作品所有権/真贋証明
(Ascribe/VeriSart)
未来予測、市場予測
(Augur)
証券取引
(Overstock、Symbiont、
BitShares、Mirror、
Hedgy)
為替・送金・貯蓄等
(Ripple、Stellar)
bitcoin取引
(itbit、Coinffeine)
薬品の真贋証明
(Block Verify)
市政予算の可視化
(Mayors Chain)
投票
(Neutral Voting Bloc)
バーチャル国家/宇宙開発
(BitNation/Spacechain)
ストリーミング
(Streamium)
アーティストエクイティ取引
(PeerTracks)
トラッキング管理
(Provenance)
クラウドファンディング
(Swarm)IoT(Adept 、Filament)
マイニングチップ
(21 Inc,)
マイニング電球
(BitFury)
サプライチェーン
(Skuchain)
データの保管
(Stroj、BigchainDB)
イスラム向け送金/シャリア遵法
(Abra、Blossoms)
ブロックチェーン技術に関するサービス事例
• 海外では大企業等を巻き込み様々な分野での実証が展開されつつある。
国内では研究発表や実証で企業の動きは徐々に活発化8R3 CEV社
世界各国の42社の金融機関が参加するコンソーシアムを主導しており、参加している企業群によ
るPrivate Distributed Ledgerを構築、複数の実証実験を実施中。
NASDAQ
ブロックチェーン技術を活用した未公開株式取引システム「Nasdaq Linq」を発表。
Chain社 他
ブロックチェーンを活用したコンテンツ利用許諾管理に関する研究結果を発表。手軽な映像利用許
諾管理技術が求められている中でのソリューションとしての位置付け。
NTTサービスエボリューション社
Linux Foundation IBM社 他
ブロックチェーン技術を活用した共同開発プロジェクト「Open ledger」プロジェクトを発表。オープン
ソース分散型台帳(Distributed Ledger)フレームワークとその開発者の育成を行うとしている。
証券業務でのブロックチェーン技術の利活用に向けた実証研究を実施してきており、Dragonfly
FinTech, 住信SBIネット銀行と協業し、適用シーンの具体化を推進するとしている。
野村総合研究所社
ブロックチェーン技術の展開が有望な事例とその市場規模
• 幅広い分野へ影響を与える可能性がある9 ブロックチェーン技術が社会経済に与えるインパクト
• 市場だけでなく、産業構造へ影響を与える可能性がある10【価値の流通・ポイント化プラットフォームのインフラ化】
【権利証明行為の非中央集権化の実現】
【オープン・高効率・高信頼なサプライチェーンの実現】
【遊休資産ゼロ・高効率シェアリングの実現】
【プロセス・取引の全自動化・効率化の実現】
 ポイントが、発行体以外との取引にも利用されるようになる。その結果、
ポイントが転々流通することで通貨に近い利用が可能となるとともに、ポ
イント発行額以上の経済波及効果が生じる。
 さらにポイントサービスが預金・貸出に類する機能を獲得することで、信
用創造の機能を獲得し、日銀による景気対策(金融政策)以外にも
⺠間企業による仕掛けができる可能性。
 土地の登記や特許など、国管理のシステムをオープンな分散システ
ムで代用可能になり、届出管理等の地方自治体業務減少といっ
た、政府の業務負担減少が可能。
 本人証明としての印鑑文化や、各種契約時(スマホ、銀行口座
開設等)の際の本人確認のための書類提出等のプロセスが変
化・代替される可能性がある。
 遊休資産の稼働率のほか、入場券、客室、レンタカー、レンタルビ
デオ等の利用権限管理に劇的な効率化がもたらされる。
 究極的にはC2C取引が、現在のシェアリングエコノミーのプラット
フォーム事業者を介在せずに行われる環境が構築される
 「生産者/サービス提供者」と「消費者」の境界がなくなることで、
「プロシューマ」というあり方が一般化する。
 小売店(川下)、卸(川中)、製造(川上)で分断されている在庫情
報や、川下に集中していた商流情報が共有されることで、サプライ
チェーン全体が活性化/効率化するとともに、川上の交渉力の強
化につながる。⇒流通のアンバンドル化
 電化製品等は、IoTの進展や製品保証とも連携することで、最終
消費者への販売後のプロダクトライフサイクルをトラッキング可能とな
り、売切りではないビジネスへ転換することが容易になる。
 各企業におけるバックオフィス業務(契約や取引の執行、支払・決
済、稟議などの意思決定フロー等)の大半を置きかえることが可能。
 IoTとスマートコントラクトによるマイクロペイメントを組み合わせること
で、受益者負担をより正確に反映した公共サービス等のコスト負
担の仕組みが構築可能。
(例えば、ゴミの量や道路の利用量に応じた課金による税徴収等)(注記)ボックス内は将来起こり得る
産業構造へのインパクト例
(注記)
政策に求められること
⺠間における社会実装を促進するため、実証事業の支援や、政府自らも実証して
いくことで広くブロックチェーン技術の有用性を周知する111ブロックチェーンを活用した新ビジネスの検証のための⺠間実証の促進と、成果及び
課題の集積を行い、広く公開していくことで市場の発展を促すこと。
例:地域限定ポイント、電子チケットサービス等の実証や、そうした実証を通じた
SLA(Service Level Agreement)の策定 等
2暗号分野など既存の技術的蓄積を生かしつつ、これまで不十分だったブロックチェー
ンの数理的、情報理論面からの検証を後押しすること。
例:大学等での研究拠点、研究者間のネットワーク 等
3行政分野におけるブロックチェーン技術の導入を進めることで、行政の効率化、高度
化を推進しつつ、率先垂範すること。
例:文書管理、特許、土地登記、投票、徴税、婚姻・出産届 等
4ブロックチェーンの社会実装を円滑に行うため、必要に応じて規制等を見直すこと。
例:消費税法(仮想通貨やポイントへの課税)、資金決済法(国際送金)、電子
署名法(法的証拠能力の明確化) 等

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