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職員インタビュー4

独立行政法人日本貿易振興機構 ヨハネスブルク事務所
朝倉 大輔(2009年入省・総合職係長級)
(注記)役職等はインタビュー当時

世界を見据えた政策を社会に実装していく「責任」と「やりがい」

──入省当初や現在のポジションにおける業務内容を教えてください。

入省当初は、産業人材政策室(現:産業人材課)に配属され、若年者雇用対策や雇用に関する制度の検討にあたりました。その後、外務省に出向してインドネシア・ジャカルタにあるASEAN日本政府代表部で、日本とASEANの経済協力事業の立ち上げや「地域的な包括的経済連携(RCEP)」交渉を担当しました。

帰国後、アジア大洋州課で引き続き日本とASEANの経済関係の強化にあたったのち、技術・人材協力課にてASEAN地域における産業人材育成政策の再検討やアフリカ事業の立ち上げを経験しました。

そして2020年6月から1年間、内閣官房東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局(内閣官房オリパラ事務局)に企画官として着任。東京大会の実現に向けた業務に邁進したのち、2021年7月末にジェトロ・ヨハネスブルク事務所に次長として着任しました。

現在は、経済産業省大臣官房参事にも委嘱されており、経済産業省およびジェトロへのアフリカ全体の情勢報告やアフリカにおける新規事業の立ち上げにあたっています。

──入省後、特に印象に残っているプロジェクトはありますか?

一つ目は、最初に配属された産業人材政策室での若年者雇用対策です。当時はリーマンショックの直後で急速に雇用情勢が悪化し、日本全体の求人倍率は1倍を大きく割り、雇用が全く足りていない状況でした。大卒の就職内定率が上がらないというニュースも広がっており、就職氷河期の再来ともいわれていました。

しかし、ある民間企業が当時発表した「大卒求人倍率」を見ると、倍率は1倍をわずかに超えており、大卒の新規採用では仕事はあるのに就職できない人がいる。つまり、ミスマッチが生じていることが分かりました。また、大手企業への求人倍率は4倍以上と求職者が殺到しているものの、中堅・中小企業に限ると1倍を割っており、思うように学生を採用できていないという実態も見えてきました。

当時、大手の人材広告会社のポータルサイトには、主に大企業の求人広告しか載っておらず、学生の多くは中堅・中小企業の求人を知る機会がなかったのです。そこで中堅・中小企業と学生をマッチングする事業を提案し、実現することができました。

──まさに、雇用における社会システムの再設計ですね。

本来、前述のような事業は民間企業によるビジネスで解決したほうが持続可能性は高いと思っていたため、その事業は3年でやめることとし、その後、民間企業が参入して市場を育成していただけるように事業を構築しました。

もう一つ、印象に残っているのは、ASEAN10カ国+6カ国の16カ国で始まったRCEP交渉で経済協力分野の交渉を妥結に導いた経験です。通常、RCEPのような経済連携交渉は、東京から出張して交渉にあたるのですが、経済協力についてはジャカルタの外交団が主に参加していたこともあり、私はASEAN日本政府代表部からRCEPの経済協力分野の交渉に参加する機会を得ることができました。

経済協力分野というのは、通常は新興国側が要求を押し込むために、交渉の終盤に議論がまとまっていくものなのですが、RCEPにおいては初めてまとまった分野が経済協力でした。RCEPは当初、各分野での交渉がなかなか進まず、交渉が始まって数年たっても一つの分野も妥結しないという状況であり、交渉そのものが漂流しかねないという危機感すら漂い始めていました。

そこで、一つでも成果を出そうとASEAN側が目を付けたのが、意外なことに経済協力分野でした。この機運を逃すまいと、オーストラリア、ニュージーランド、韓国といった方向性を同じくする国々の外交団を代表部の会議室に招いて作戦会議を開催し、連携して一気に交渉をまとめることができました。

前例のない分野での「挑戦」が「経験」となり、付加価値に

──入省後、これまでの経験が生かせたと実感できる場面はありましたか?

内閣官房オリパラ事務局での業務は、これまでの経験やスキルを総動員できたように思います。事務局では、各省からの出向者や地方自治体、民間企業からの出向者など、さまざまなバックグラウンドを持つ方々と机を並べました。国際オリンピック委員会(IOC)は、オンライン会議に出てくる理事にどこかの国の貴族がいるかと思えば、IOCの放送分野を取り仕切る敏腕ビジネスパーソンまでさまざまで、多様なバックグラウンドを持った方々で組織されていました。

その際、これまで民間企業を含むさまざまな組織で働き、ASEAN各国やその他の国々と交渉を重ねてきた経験は大いに役立ちました。東京大会の実現のためのルールを定めた「プレイブック」というものが作成されたことを覚えている方もいらっしゃるかもしれません。作成にあたり、各国と文書交渉にあたってきた経験は大いに役立ちましたし、大会関係者の入国を円滑に実現するための対応にあたっては、IT業界にてエンジニアとシステムの仕様の議論をした経験も生きました。

──今後、経済産業省で目指したい理想像やキャリアプランを教えてください。

これまで、前例があまりない分野で多くの経験をさせていただきました。また、各国との交渉は双方ともに国を背負っていますので常に真剣勝負でどうなるか分からないことばかりでした。今後もこういった新しい分野、先がどうなるか容易には見通せない分野で、自ら政策的方向性を見いだし、実現していく仕事ができればと思います。

──この記事をご覧の方へメッセージをお願いいたします。

既に、民間企業での経験より経済産業省での経験のほうが長いのですが、それでも時折「民間企業との違いは?」と聞かれることがあります。私の場合、「組織に属して働くという意味において、民間企業で働くことと経済産業省で働くことの間に本質的な違いは感じない」と答えています。

もちろん、経済産業省は新卒採用者が職員の大半を占めてきたので、組織としての同質性が高いと感じることはあります。また、これまで関わってきた業務のそれぞれは、国という立場だからこそ経験させてもらえたことばかりでした。両者にさまざまな違いはあると思います。

しかし、組織に属して仕事をする以上、自分の属する部署や自分自身の目標を設定し、それに向かって業務に邁進することに変わりはありません。その点からいえば、民間企業に属する感覚とあまり大きな差はないと感じています。「役所」だからと特別に身構えなくてもいいと思います。

ビズリーチ 公募ページ「経済産業省」(2022年11月8日公開)より転載

最終更新日:2023年9月1日

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