岩永 清邦 氏 KIYOKUNI IWANAGA
合同会社葉隠 代表社員
地域に根付き、
ウチとソトの架け橋となるゲストハウスの運営事業の概要12
合同会社葉隠は、
空き家の活用による地域の活性化
をミッションとする事業者である。
佐賀市内で空き家を
リノベーション1したゲストハウスを2施設経営している。
代表の岩永氏は、
大学卒業後、
JICAの海外協力隊とし
て中国内陸部で子供たちに野球を指導する事業に携
わった後、
地元である佐賀に戻り、
同地を拠点として活
動する認定NPO法人地球市民の会に入職した。NPOとして行政からの委託や助成を受けながら社会課題解
決に携わる中で、
委託や助成は継続性がなく、
課題解
決へのアプローチが弱い場合もあると実感した。
収益
を確保しつつ社会課題に取り組む重要性を感じていた
時に、
地域に空き家が増え、
体感治安が悪化しているこ
とに気がつき、
これをビジネスで解決することにした。
前述の海外活動の経験から、
日本人と外国人の交流が
人の成長や地域の活性化に寄与すると感じていたこと
もあり、
空き家を活用したゲストハウスの運営を構想し、
2017年に合同会社葉隠を設立。
クラウドファンディン
グによる資金調達を経て、
佐賀駅そばの空き家をリノ
ベーションしたゲストハウス
「HAGAKURE」
の営業を
開始するに至る。
「HAGAKURE」
は2階がドミトリータイプの宿泊施
設、
1階が佐賀の地酒などを提供するバーであり、
宿泊
者と地域住民が酒を酌みかわしながら交流する場とし
て機能している。
コロナ禍以前は宿泊客の8割がアジ
ア圏を中心とする外国人であり、
日本人と外国人の交
流の場を作るという岩永氏の構想が実現したと言える。
なお、
同社のHPは、
日本語・韓国語・中国語・英語だけ
でなく、
ヨーロッパからの集客を意識しフランス語にも
対応している。
フランス語対応にあたっては、
地元商工
会の講師派遣制度を活用して、
フランス人の語学講師
をインターンとして受け入れた。
実際、
この効果でヨー
ロッパからの顧客も一定数いるという。
事業の初期段
階においては人的リソースが不足しがちであり、
社会
起業家に専門家を派遣することは、
行政や企業ができ
る支援であることがわかる。
2023年、
佐賀市内に2つ
目のゲストハウスをオープンさせており、
そちらは感染
症下のゲストハウスの形を追求し、
非接触型の滞在を
可能にしている。
地域の空き家対策と、
地域住民と観光客の交流による地域活性化社会課題への対応
前述のとおり、
同社は地域の空き家対策と、
地域住
民と観光客の交流による地域活性化に取り組んでいる。
ゲストハウス2施設の運営により、
それらの地域課題へ
のアプローチは形を整えつつある。
その上で同社が地域課題の解決にあたり重視して
いるのが、
地域とのつながりである。
「0から1をつくる
ところでいかに地域の人を巻き込めるか」
に心を砕い
ているという。
「HAGAKURE」
立ち上げの資金をクラ
ウドファンディングで調達したときは、
地元の企業や住
民、
前述のNPOの関係者などの下に、
一件一件足を運
び、
丁寧な説明をすることで900万円超の支援を得た。
岩永氏は
「地域課題の解決において、
課題意識への共
感はもちろん重要だが、
それ以上に、
誰がその事業を
佐賀市で得たノウハウを基に他地域への展開今後の展望同社は佐賀市で得たノウハウを基に、
より空き家問
題が深刻な中山間地域でも同様の取組を展開するこ
とを検討している。
その中で、
岩永氏が行政など広域
の機関に期待していることの一つが、
「広報と情報共有
の充実」
である。
「HAGAKURE」
の立ち上げにおいて、
事務的な手続きが煩雑かつ窓口がばらばらであること
が困難の一つであった。
事業の立ち上げにあたって何
をすべきか、
どこに行くべきかの情報共有が、
起業家の
数を増やすために必要であると考えている。
実施するのかという、
事業者個人への信頼感が肝要で
ある」
と述べている。
地域の活性化など、
地域住民との
密なコミュニケーションが必要とされる社会課題解決
においては、
課題を解
決する主体が地域にど
れだけ根付いているか、
信用されているかが事
業 立ち上 げを成 功さ
せる要因となることを
示唆している。
また、
岩永氏は社会課題・地域課題の解決に取り組
むにあたって、
持続可能性の観点から
「NPOと社会起
業家の水平分業」
を提案している。
課題の抽出やソ
リューションの開発など、
マネタイズできない活動は非
営利団体のNPOが担い、
マネタイズできる活動は切り
分けて社会起業家が担うという考え方だ。
実際、
岩永
氏は地球市民の会の事務局長と葉隠の代表を兼任し、
支援者の獲得などで両者のシナジーを効かせている。
「外国人」
「日本人」
という言葉がなくなっている世界になってほしい。
日本全体として人口減少
が続く中、
世界中をターゲッ
トとして地域の魅力を発信することで、
その地域に興味のある人
が訪れ、
定住し、
ともに地域を作っていく。
地域として懐が広くなっていくことで、
様々な背景
を持つ人たちが生きやすい地域になっていくのではないか。
2050年に
こうあってほしい
世界
九州で活躍する若手社会起業家
企業情報
空き家対策、
雇用、
交流の拠点
解決を目指す社会課題
企 業 名
所 在 地
業 種
資 本 金
従 業 員 数
活動エリア
:合同会社葉隠
:840‐0804 佐賀県佐賀市神野東2‐4‐12
:宿泊業
:700万円
:1名
:佐賀市
空き家リノベで
地域に交流のハブをつくる
取材日
(令和6年1月31日)
現在
古い建物を新たな使用に耐えうるよう修繕,
改造すること.
(建築学用
語辞典)1 図表:ビジネスモデルと社会課題
地域が抱える課題
人口減少
地域の活性化
体感治安の悪化
地域の活力低下
観光による多文化交流
空き家リノベ、
ゲス
トハウス
葉隠の取り組む領域
空き家の増加
KIYOKUNI IWANAGA
1階はバー営業も行い、
宿泊客と地域住民の
交流の場として機能する
HAGAKUREの外観。
空家をリノベーションした
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