鹿児島県知事
塩田 康一 様
川内原子力発電所に関する要請に対する回答書
2023年11月7日
九州電力株式会社
川内原子力発電所に関する要請書への回答
当社は、安全性の確保を大前提に原子力発電所を活用していくこととして
おり、川内原子力発電所につきましては、日頃より安全性・信頼性の向上に
努めながら、安全・安定運転に取り組んでおります。
川内原子力発電所1号機は 2024 年7月、2号機は 2025 年 11 月に運転開始
後 40 年を迎えることから、
運転期間延長につきまして、
2021 年 10 月から特別
点検を行い、
原子炉容器や原子炉格納容器などの健全性を確認しました。
また、
特別点検の結果を含めた劣化状況評価を行い、それを踏まえた施設管理方針を
策定しました。これにより運転開始後 60 年時点においても問題ないことを
確認したことから、2022 年 10 月に 20 年間の運転期間延長認可に係る申請を
行いました。今般、原子力規制委員会の審査を終えて、2023 年 11 月1日に認
可をいただきました。今後も引き続き発電所の運営にあたりましては、安全性
の確保を最優先に取り組んでまいります。
貴県におかれましては、2021 年 12 月に鹿児島県原子力安全・避難計画等
防災専門委員会に対し、運転期間延長に関する検証を依頼されました。これを
受けて分科会が設置され、計 17 回に亘る専門委員会及び分科会にて、科学的・
技術的な検証を実施いただき、その検証結果を報告書及び意見書に取り纏めら
れました。
その内容につきましては、県民の皆さまやUPZ内の関係9市町のご意見等
も踏まえた上で要請書として取り纏められ、2023 年 7 月 28 日に当社に対し
要請をいただきました。
川内原子力発電所の安全性確保に関しましては、今後も県民の皆さまへの分
かりやすい情報発信・説明等に努めてまいります。
また、いただいた 33 項目の要請につきましては、各項目において当社がこ
れまで実施してきた設備の高経年化に対する新しい知見の積極的な取入れや
発電所の健全性の維持・確認を目的とした設備の保全活動、教育・訓練、人材
育成について、
今後も継続的かつ着実に実施していくことに加え、
運転開始 40
年以降の川内原子力発電所1,
2号機の更なる安全性、
信頼性向上の観点から、
取組みの充実等の検討を行ってまいりました。
今回、その結果を取り纏め、ご報告するとともに、今後も継続的かつ着実に
取組みを実施してまいります。
当社は、今後とも、県民の皆さまに安心し、信頼していただけるよう、川内
原子力発電所1,2号機の安全・安定運転に万全を期すとともに、積極的な
情報公開と丁寧な説明に努めてまいります。
また、ご要請への回答については、鹿児島県原子力安全・避難計画等防災専門
委員会において詳細にご説明させていただきます。
九州電力株式会社
代表取締役社長執行役員 池辺 和弘
1.非破壊検査における検査員の力量の向上はもとより,新しい検査手法の開発
や研究に積極的に取り組むこと。
【回答】
新しい非破壊検査の手法に関する知見については、米国電力研究所、日本保全学会
などの会議への参加や海外電力に係る情報収集のための調査委託等を通じ、情報収集
に取り組んでいる。
また、電力会社が共同で実施している研究においても、非破壊検査手法の高度化
に向けて従来の超音波探傷検査に比べ効率的かつ信頼性の高い検査が可能となる
き裂検出手法について研究を進めている。
今後とも積極的に非破壊検査の手法に係る情報収集を行うとともに、
非破壊検査
手法の高度化については実機への適用に向けた実証試験等を実施していく。
なお、
力量を必要とする非破壊検査については、
検査、
工事ごとの適切な力量確認、
管理を今後も継続するとともに、
上記のような非破壊検査手法の高度化への対応を
通じ、検査員の力量の維持、向上を図っていく。
2.原子炉格納容器について,原子炉格納容器鋼板の構造健全性や気密性評価を継続的
に行うこと。
【回答】
原子炉格納容器については、現在、原子炉格納容器の構造健全性や気密性を確保
するために、定期検査ごとに、規制要求に基づき実施している原子炉格納容器漏えい
率検査による気密性評価に加え、
自主的に原子炉格納容器鋼板の外観点検等による
構造健全性評価を実施している。
今後も、
これらの原子炉格納容器の構造健全性や気密性評価の取り組みを継続的
に実施していく。
3.コンクリート構造物について,内部コンクリートの放射線照射量の多い部分,
及び長期加熱を受ける部分の健全性に関しては経過観察を行うこと。
【回答】
コンクリート構造物のうち内部コンクリートについては、現在、日常の目視点検
を実施するとともに、特別点検においてコアサンプルを採取して各種の試験を実施し、
その健全性を確認している。併せて、放射線照射量や長期加熱の影響が大きい部位
は内部コンクリートの炉心付近にあるため、放射線安全上、コアサンプルを直接採取
することが難しいことから、
原子炉格納容器内の線量率測定やコンクリート内部の
温度計測のデータを定期的に確認して経過観察を行っている。今後も引き続き、
これらの経過観察による確認を継続していく。
4.低サイクル疲労について,疲労累積係数が高い機器は,実過渡回数を把握した上で
再評価し,必要に応じ補修や取替え等の保全を検討すること。
【回答】
疲労評価においては、
過渡回数に 1.5 倍の余裕を考慮する等保守的な評価を実施
しており、評価後においても実績過渡回数を継続して把握し、想定した過渡回数を
下回ることを1年に1回確認する。想定した過渡回数を上回る場合には、低サイクル
疲労について再評価を行うこととしている。また、疲労累積係数の高い機器の分解
点検などの保全活動を通じて健全性に問題ないことも確認している。
今後も継続して分解点検などの保全活動を実施し、実機の状態や疲労評価を踏まえた
上で、必要に応じ補修、取替等を検討する。
5.低サイクル疲労について,機械的な疲労や腐食疲労などもあるので,保全の中で
監視し,状況に応じて交換すること。
【回答】
低サイクル疲労を含む疲労評価を実施している機器・設備については、点検計画
を策定し、
分解点検や漏えい試験等を実施し、
健全性に問題ないことを確認している。
また、技術評価においては、低サイクル疲労のほかに、機械的な疲労として、
高サイクル疲労やフレッティング疲労に対しても評価を実施し、
問題ないことを
確認している。
劣化が確認された設備については、
実機の状態を踏まえた上で、
必要に応じて補修、
取替等を実施しており、今後も、これらの取組みを継続していく。
なお、腐食疲労として低サイクル疲労評価対象機器のうち、腐食環境下として1次
冷却水に接液している機器については、
日本機械学会の環境疲労評価手法に基づき、
接液環境を考慮した疲労評価を行い、
疲労累積係数が許容値を下回ることを確認
している。
6.中性子照射脆化の予測式の更なる信頼性向上のためのデータ拡充や内部組織の
アトムプローブ及び電子顕微鏡観察等に積極的に取り組むこと。
【回答】
当社は、中性子照射脆化予測式の更なる信頼性向上のために、電力中央研究所
と共同で研究を行い、監視試験片の内部組織のアトムプローブ測定及び電子顕微鏡
観察を積極的に行いデータ拡充に努めている。今後とも継続的にこれらの取り組み
を実施し、中性子照射脆化に係るデータ拡充に取り組んでいく。
7.監視試験片のデータ取得は公平中立な機関も交えて実施し,その透明性を高める
こと。
【回答】
当社は、現在、規格に基づいた監視試験片のデータ取得とそのデータを用いた
原子炉容器の健全性評価について三菱重工業へ委託し、そのグループ会社である
MHI原子力研究開発にて監視試験片のデータ取得を実施している。また、中性子
照射脆化予測式の更なる信頼性向上のための知見拡充として、電力中央研究所と
共同で研究を行い、監視試験片のデータ取得を実施している。これらの機関は適切
な試験設備及び技術力を有し、
国内の監視試験片のデータ取得の十分な実績があり、
国の公的な研究も受託している信頼できる機関である。
監視試験片のシャルピー衝撃試験等については、過去の試験結果を用いて予測曲線
を算出しており、過去の試験データと統一的に取り扱うため、MHI原子力研究開発
において従来と同様な試験設備や体制等で実施していくことが必要と考えている。
また、電力中央研究所において、アトムプローブ及び電子顕微鏡観察結果を用いて
予測手法が開発されているため、
予測手法の更なる信頼性向上の観点からアトム
プローブ及び電子顕微鏡観察を今後も引き続き電力中央研究所において実施して
いく。
透明性の確保については、これらの試験データを活用した予測手法を採用する場合、
国により大学の専門分野の研究者など外部専門家を交えて技術評価が行われるため、
この過程で確保できると考えている。
MHI原子力研究開発及び電力中央研究所以外の公平中立な機関も交えた監視
試験片のデータ取得については、今回の要請を踏まえ、現在、公的な研究として
進められている原子力規制庁の廃止措置プラントの実機材の活用に係る研究の状況
も踏まえながら、検討を行っていく。
8.監視試験片の再装荷に係る検討や小型試験片に係る知見の拡充に取り組むこと。
【回答】
監視試験片の再装荷に係る検討や小型試験片に係る知見の拡充については、
現在、
他電力会社、メーカーと協働して検討しており、今後も取り組みを実施していく。
また、小型試験片の試験方法等については、現在、日本電気協会の規格(フェライト
鋼の破壊靭性参照温度 T0 決定のための試験方法 JEAC4216-2015)に規定されており、
今後とも、
当該規格の改定に応じて、
国による技術評価を要望していき、
他電力会社、
メーカーと協働して小型試験片に係る知見拡充に取り組んでいくこととする。
9.廃止措置プラントの実機材の活用に積極的に取り組むこと。
【回答】
廃止措置プラントの実機材の活用として、現在、原子力規制庁より廃止措置プラント
の実機材料等の提供依頼を受け、
同庁の研究計画に基づき2024 年度末までの予定で、
玄海原子力発電所の廃止措置プラントの監視試験片を貸与しており、今後とも、
綿密な調整を図りながら協力していく。今後も、当社の廃止措置プラントである
玄海原子力発電所1,2号機の廃炉材の活用について、積極的に検討していくこと
を考えている。
10.照射誘起型応力腐食割れに起因する新たな損傷事例等の新知見を注視し,炉内
構造物については,
交換事例等に基づき,
交換の必要性やその時期を検討すること。
11.バッフルフォーマボルトの非破壊試験等を実施し,今後の使用年数をより明確に
すること。
【回答】
炉内構造物において、
照射誘起型応力腐食割れの観点から最も厳しい評価となる
のは、バッフルフォーマボルトである。現時点では、バッフルフォーマボルトの
照射誘起型応力腐食割れに関する評価結果等から、直ちに問題となるような評価結果
は確認されておらず、交換が必要な状態ではないものの、今後も、原子力施設情報
公開ライブラリーに基づく国内のトラブル事象、米国電力研究所の研究成果、米国
原子力規制委員会からの情報通知文書、通達の確認等により、炉内構造物に係る
新たな損傷事例、
評価条件の変更となる事例などがないか国内外の新知見等を確認
していく。国外における新知見等については、従来より連携しているフランス電力
から収集した情報も活用する。
バッフルフォーマボルトの損傷予測結果では運転期間60年を超えてもボルトの
損傷は発生しない結果が得られているが、これらの知見収集を踏まえ、日本機械学会
「JSME S NA1 発電用原子力設備規格 維持規格」の記載に基づいた非破壊検査実施
やバッフルフォーマボルトを含む炉内構造物の交換の必要性や今後の使用年数に
ついて、検討を行っていく。
12.熱時効について,溶接熱影響部及び溶接後熱処理の影響評価は重要であり,今後
詳細な検討に必要な知見の習得に努めること。
【回答】
溶接熱影響部及び溶接後熱処理の熱時効によるステンレス鋼の靭性低下について、
これまでに有意な影響は、確認されていないが、これまで原子力施設情報公開
ライブラリーに基づく国内のトラブル事象、米国電力研究所の研究成果、米国原子力
規制委員会からの情報通知文書、通達の確認等を通じ情報を収集しており、継続的
に検討に必要な国内外の知見の収集に努めていく。
国外における新知見等について
は、従来より連携しているフランス電力から収集した情報も活用する。
13.絶縁低下について,改造等によってケーブルを設置する場合には環境条件の変化等
に配慮した再評価を行うこと。
【回答】
現在、改造工事等により新たにケーブルを布設する場合には、当該ケーブルの
環境条件を踏まえ、
運転開始後60年時点においても絶縁機能が維持されることを
再評価している。
また、改造工事等により、設置環境が著しく変化した場合は、設置環境の再測定
を実施することを社内規定に定めており、今後も、適切な対応を継続していく。
14.絶縁低下について,評価期間に達する前に低圧ケーブルの取替えの実施及び予防
保全としてこれまでに海水ポンプの絶縁更新及び高圧ケーブルの取替えを実施
してきているが,今後も適切な対応を継続していくこと。
【回答】
絶縁低下が想定されるケーブル及びポンプ
(電動機)については、現在、高経年化
技術評価における評価期間及び保全の結果による劣化傾向を踏まえて、
必要により
取替えを実施しており、今後も、適切な対応を継続していく。
15.コンクリートの強度低下及び遮蔽能力低下の評価において,中性化深さの推定式
としては,設計時の材料条件及び想定される環境条件など多種のパラメーターを
正確に取り込むこと。
【回答】
中性化深さの評価については、
現在、
建設当時の記録を詳細に確認するとともに、
運転開始後に二酸化炭素濃度、温度、湿度等の環境測定を綿密に行うことにより、
必要な多種のパラメーターを取り込んで評価を行っている。また、推定値と実測値
の相関関係の分析を行い、
ばらつきはあるものの両者が概ね一致することも確認
している。今後も引き続き、推定値と実測値の相関関係の分析を行うとともに、
最新の研究成果等を参照するなど、推定式の精度向上に努めていく。
16.コンクリートの強度低下及び遮蔽能力低下の評価において,塩分浸透予測式は,
最新の研究成果などを参照して精度の高い予測式とすること。
【回答】
塩分浸透の評価に使用している推定式については、現在、原子力規制委員会の
審査実績が豊富で、多くのパラメーターを用いる森永式を採用しており、酸素濃度等
に保守性を持たせた評価を行っている。また、推定値と実測値の相関関係の分析を
行い、ばらつきはあるものの両者が概ね一致することも確認している。今後も引き
続き、推定値と実測値の相関関係の分析を行うとともに、最新の研究成果等を参照
するなど、推定式の精度向上に努めていく。
17.コンクリートの強度低下及び遮蔽能力低下の評価において,
鉄筋の腐食に関しては
直接的な腐食状態の把握,
表面ひび割れの発生の有無の観察などを継続的に行うこと。
【回答】
現在、鉄筋の腐食については、鉄筋腐食に伴うコンクリートのひび割れ等がない
ことを日常の目視点検により確認するとともに、高経年化技術評価において10年ごと
にコアサンプルを採取して中性化や塩分浸透の進行状況を確認している。
今後も
引き続き、これらの目視やコアサンプルによる確認を継続するとともに、中性化や
塩分浸透に伴うひび割れが確認された場合や試験結果に顕著な進行が認められた
場合は、鉄筋の腐食状態を直接確認することとしている。
18.コンクリートの強度低下及び遮蔽能力低下の評価において,アルカリ骨材反応
(アルカリシリカ反応)
に関しては,
骨材周りのゲル物質の膨張に伴う内部応力の
増加,それに伴うコンクリート表面のひび割れなどを継続的に観察すること。
【回答】
アルカリ骨材反応については、今回の特別点検の結果を踏まえると、現時点では
急速に進行することはないと考えられるが、今後も引き続き、日常の目視点検に
おいてアルカリ骨材反応に起因するひび割れがないことの確認を継続していく。
また、今回の要請を踏まえて、10年ごとにコアサンプルを採取して顕微鏡観察に
よる進行段階の確認を行うなどにより、コンクリート構造物の健全性に影響を与える
ような反応性がないことを確認していく。
19.コンクリートの各劣化事象に関しては,新しい知見,海外事例などに基づき,
評価方法の高度化に努めること。
【回答】
コンクリートの各劣化事象に関しては、現在、最新知見等の収集・検討を実施して
評価を行っているが、今後も引き続き国内外の知見収集を行い、川内原子力発電所
への適用性を検討し、評価手法の高度化に努めていく。
20.設計の経年劣化対策の拡充には,国内の規制基準適合プラント間で設計比較する
とした原子力エネルギー協議会(ATENA)のガイドにとどまらない検討が必要と
考えられることから,海外で既に導入されている最新プラント等も含めた比較に
より,更なる安全対策の高度化を継続的に目指すこと。
【回答】
国内外の最新の科学的知見及び技術的知見については、当社において、現在、
安全性向上に資することを目的に、継続的に収集、分析・評価、反映しており、
その結果は安全性向上評価届出に記載し、公開している。
また、海外の新知見情報を活用した設計情報の比較については、今後、国内の
原子力発電所を有する電力会社で連携して検討を進めていく計画である。
21.原子力発電所を安全にかつ持続的に操業するには,
機器供給
(製造中止品への対応)
だけでなく,工事,運転,保守も含めたサプライチェーンが健全に機能する状態を
保つことが必要である。今後,サプライチェーン企業の事業撤退の加速や,運転に
必要な技術が失われる懸念があることから,サプライチェーンの維持に継続的に
取り組むこと。
【回答】
当社としては、
現在、
製造中止品や保守・保全工事の請負先に撤退に関する情報を、
原子力エネルギー協会(ATENA)のガイドラインに基づき、メーカー及び他電力から
体系的かつ継続的に入手・管理し対応している。
既存サプライヤー(製品や製品の部品の供給者)に対しては技術的な供給者評価
を行い、必要な能力を確認するとともに、既存サプライヤーの原子力産業撤退による
サプライヤーの変更があった場合でも、
当社は新規サプライヤーに対して技術的な
供給者評価を行うことで、サプライチェーンが健全に機能する状態を保っている。
製造中止品への対策としては、プラントメーカーと国内の加圧水型軽水炉を有する
電力各社の会議体や発電所から入手した製造中止品情報を電力各社と共有し、必要時
に融通し合う等の取り組みを行っており、今後ともこの活動を継続的に行う。
22.高経年化や運転期間延長に関わる機器や材料の劣化プロセスの評価において,
解析手法やデータはその基礎となるため,
新しい知見の取得を進めること。
また,
運転延長の審査後に改定・エンドースされたものは,
都度,
追加評価を実施すること。
【回答】
高経年化技術評価に関連する解析手法やデータに係る知見については、現在、
海外情報として米国電力研究所の研究成果等を確認しており、国内においてもプラント
メーカー等と協働して新たな解析手法等の導入の検討を継続して実施していく。
また、新しい知見、規格の改定情報等については、現在も幅広く情報を収集して
おり、高経年化技術評価の内容に影響する可能性のある規格類が改定され、エンドース
された場合には、
高経年化技術評価の内容の見直しの必要性について検討すると
ともに、見直しが必要な場合には、追加評価を実施することを社内規定に定め運用
を行っている。今後もこれらの取り組みを継続して実施していく。
23.経年劣化の状況確認のための体制を整備するとともに,定期的にその確認結果
を公表すること。
【回答】
経年劣化の状況確認のための体制整備については、現在、川内原子力発電所に
保全や設備管理に関する次長や課長などを設置し、
各担当課員がそれぞれの設備を
分担して検査、保全を実施し変化の状況を確認している。
今回の要請を踏まえ、
今後、
新たに高経年化を担当する役職を設置するとともに、
本店と発電所において、
高経年化技術評価に関する最新知見の取込み状況などの検討
を継続的に実施していくこととしており、今後も本店と発電所で連携をとり、経年
劣化の状況確認や保全活動を実施していく。
経年劣化の状況確認については、現在、定期事業者検査報告書により原子力規制
委員会へ報告し、その中で、経年劣化等により点検方法や点検頻度など、点検計画
の内容を変更する場合には、変更内容、理由について報告している。今回の要請
を踏まえ、公開の場である「鹿児島県原子力安全・避難計画等防災専門委員会」に
おいて、経年劣化の確認結果を報告していく。
また、経年劣化の状況確認のための高経年化技術評価については、運転開始後
30年目と40年目を迎える前に実施し、その都度、確認結果を公表している。
今後とも、
経年劣化の状況の確認結果の公表に係るこれらの活動を継続して行う。
24.非破壊検査や溶接等の知識を有する人材の育成に努めること。
【回答】
現在、川内原子力発電所の原子力訓練センターにおいて、各種非破壊検査や溶接
に係る教育、研修を行っている。
高経年化に関する教育については、原子力発電所において、国内外でこれまで蓄積
された、各機器の部位、材料ごとに想定される経年劣化事象を踏まえた保全計画
を策定、実施し、OJTによる教育等で、知識、技術力の向上に努めている。今後も
継続して人材育成に努めていく。
また、今回の要請を踏まえ、今後、川内原子力発電所に在籍する社員の非破壊検査
に係る資格取得に努めるとともに、新たに、非破壊検査や溶接等を含む高経年化技術
に関する研修を検討し、それらの知識を有する人材の育成を行っていく。
25.運転を継続するに当たっては,優秀な人材を安定的に確保することが不可欠で
あり,長期的な計画に基づく採用と社内教育に尽力すること。
【回答】
原子力発電所の安全・安定運転を将来にわたり継続するために、長期の要員計画
を定めるとともに、採用にあたっては、専門知識及び必要な資格を有する人材を
幅広く確保する採用計画としている。
また、中途採用においても、他電力やメーカーの発電所業務経験者等を積極的
に採用している。
採用後においては、川内原子力発電所の原子力訓練センターにおける実機を模擬
した設備や運転シミュレーターを使った訓練など、社内外の研修・教育に取組んで
おり、今後も引き続き尽力していく。
さらに、将来を担う学生に対し、インターンシップや発電所への受入れ及び出前
授業を継続して実施していく。
26.高経年化技術に関する研究に取り組む若手人材の育成・教育を支援し,計画的に
専門家の確保・育成に努めること。
【回答】
現在、当社では原子力発電所の安全・安定運転を継続して行うために、専門知識
を有する人材を幅広く確保するよう計画している。
高経年化に対しては、
すでに発電所に保全や設備管理に関する次長や課長などを
設置するとともに各担当課員がそれぞれの設備を分担している。
今回の要請を踏まえ、
今後、
新たに高経年化を担当する役職を設置するとともに、
本店と発電所において、
高経年化技術評価に関する最新知見の取込み状況などの検討
を継続的に実施していくこととしている。今後とも継続して人材を確保していく。
現在、川内原子力発電所の原子力訓練センターにおいて、実機を模擬した設備
を用いた保守技能向上を行う教育を行っている。
高経年化に関する教育については、原子力発電所において、国内外でこれまで
蓄積された、各機器の部位、材料ごとに想定される経年劣化事象を踏まえた保全計画
を策定、実施し、OJTによる教育等で、知識、技術力の向上に努めている。今後
とも継続して人材育成に努めていく。
また、高経年化技術に関する研究に取り組む若手人材を育成・教育するために、
今回の要請を踏まえ、今後、新たに、発電所における高経年化に関する教育や社外
における高経年化技術に関する研修を通じた支援を検討し、
若手人材や専門家の
計画的な確保・育成を行っていく。
27.計画外の運転停止,LCO逸脱などに関してデータを収集してトレンドを把握し,
顕著な劣化の兆候がないかを分析した上で,県に対して定期的に報告すること。
【回答】
原子炉の計画外自動・手動スクラム回数、計画外出力変化回数や、原子炉を安全
に停止するための設備、特定重大事故等対処施設を含む重大事故等対処設備における
機能故障件数(運転上の制限(LCO)逸脱件数)については、四半期ごとにデータ
を収集するとともに、トレンド把握及び顕著な劣化の兆候がないか分析を行っている。
今回の要請を踏まえ、今後、当該データやその分析結果について、定期的に鹿児島県
に報告していく。
28.重大事故等対処設備については,運用訓練を行い,その結果を県に対して報告
すること。
29.特定重大事故等対処施設において,原子炉格納容器の破損防止対策の信頼性を
向上するための設備に対する運用訓練を行い,その結果を県に報告すること。
【回答】
当社は社内規定に基づき訓練を行うとともに、安全協定に基づき、年1回、特定
重大事故等対処施設の活用を含む重大事故等に係る訓練の実績を報告している。
今後も引き続き報告していくとともに、今回の要請を踏まえ、訓練の評価結果等
も新たに鹿児島県に報告していく。
30.原子炉を運転中にパンデミックが発生した場合やパンデミックの発生期間中に
原子炉を起動して運転する場合には,
運転員の他,
原子炉を安全に運転するのに必要
な要員,
原子力発電所の警備と防護に必要な要員及び事故発生に備えた緊急対応要員
が,必要人数以上業務に従事できていること,または出動できる体制にあること,
さらには,欠員が生じる場合に備えて何らかの補完措置をあらかじめ講じておく
こと,かつ,当該補完措置が有効な状態であることを確認すること。
【回答】
当社は、万一のパンデミック発生時にも速やかに対応できるよう、必要な体制及び
要員の予備員を確保しており、
欠員が生じる恐れがある場合は速やかに予備員から
補充することとしている。
運転員の他、警備と防護に必要な要員、重大事故等対策要員及び特重施設要員
に欠員が生じた場合は、休日、時間外(夜間)を含め補充を行うことで、過去、
パンデミックが発生した際の対応状況を踏まえても十分な要員が確保できている
ことを確認している。
今後とも、必要な体制及び要員の予備員の確保の取組みを継続していく。
31.単に経年劣化に関する技術的基準をクリアしていることを確認するのみならず,
経年劣化を考慮した上で安全余裕や残余のリスクを継続的に把握し,
社会に開示して
リスクコミュニケーションを行っていくこと。
【回答】
現在、高経年化技術評価については、運転開始後30年目と40年目を迎える前に
実施し、都度、その確認結果を公表している。なお、高経年化技術評価の内容と
異なるような劣化状況が確認された場合には、高経年化技術評価の内容を見直し、
安全余裕等を確認している。
また、当社は原子力発電にはリスクが存在することを前提として、リスクを定量的
に評価する方法として確率論的リスク評価を活用し、可能な限りリスク低減に努めて
いる。
今後、高経年化技術評価に関する新たな知見が得られ、確率論的リスク評価に影響
を及ぼすような知見である場合は、その影響を確認し、原子力規制委員会に届出を
行っている安全性向上評価において結果を公表する。
さらに、リスクに関する情報について地域の皆さまと共有し、相互理解を深める
ためのリスクコミュニケーション活動を引き続き行っていく。
32.原子力発電所のテロ対策など,国の責任において実施すべきことについて,電力
事業者が主体となって国へ要望していくなど,電力事業者として国へ要請すべき
ことは,しっかりと対応すること。
【回答】
原子力発電所その他の重要な原子力施設の警備に関し、警備当局、自衛隊、規制
当局及び施設管理者の協力関係を緊密なものとするため、警察庁、海上保安庁、
防衛省、原子力規制庁、資源エネルギー庁、文部科学省、内閣官房及び電力事業者
により構成される
「中央原子力発電所等警備連絡会議」
が 2022 年 12 月に設置された。
当社も構成員となっており、当該連絡会議を通じて国との連携を密に、国に要請
すべきことは、しっかりと対応していく。
なお、立地県である鹿児島県にも「鹿児島県原子力発電所警備連絡会議」が設置
されており、警備に必要な情報の交換、関係者による現場実査、合同訓練等を推進
していく。
33.劣化状況の確認・評価に当たっては,対象とする機器や材料の範囲,検査方法等
も含め,国の基準に示されたもの以外の実施の必要性についても継続的に検討
すること。
【回答】
現在、劣化状況の確認・評価に当たっては、国の基準に示されたもの以外にも
日本原子力学会の「原子力発電所の高経年化対策実施基準」も用いて、最新知見等
の収集・検討を実施し評価を行っている。
今後もこれらの取り組みを継続するとともに、
今回の鹿児島県からの要請の内容
を踏まえ、
国や原子力学会の基準に示されたもの以外の実施の必要性も検討し、評価
対象とする機器や材料の範囲、検査や評価の手法の高度化に努めていく。
以 上

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