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2021 年5月
九州電力株式会社
経営概況説明会(5/10 開催)における質疑応答内容Q・ 新たな財務目標について、従来型の成長目標だけなく、ROEやキャッシュフロー
等も示されており非常に参考となる印象。
・ 一点目、前回の財務目標と実績で乖離が出ていたが、2025 年度の経常利益 1,250 億
円(国内電気事業 750 億円、成長事業 500 億円)の達成確度についてどのように考
えるか。国内電気事業については、原子力4基稼働で目途が立っているかもしれな
いが、一方で、ここ数年事業環境のボラティリティが高く、リスクが高まっている
印象。社長として、潜在的なリスクをどのように認識しているか。また、成長事業に
ついて、
500 億円の目標に向け、
足元から 200 億円以上の利益増加ということになる
が、どういったプロジェクトが実現すると成長事業の利益目標の確度が高まるのか
教えてほしい。
・ 二点目、2021 年度業績利益予想 700 億円について、一過性要因を除いたときの足元
の実力利益の水準をどの程度と考えているか。A・ 一点目、2025 年度の目標に関して、国内電気事業について、当社は原子力が4基稼
働しており価格競争力があることや、日本全国でカーボンニュートラルの機運が高
まっている中、高い非化石電源比率を活かし非化石取引市場でも強い立場であるこ
となどから、750 億円は十分達成可能な目標と考えている。
リスクがあるとすれば、何らかの理由で原子力の安定稼働に支障がでることだが、
リスクとして認識しているからこそ、原子力については万全の態勢をとっていこう
と考えている。
成長事業についても、これまでの投資により 2025 年度目標の7、8割はカバーでき
ると思っており、今後残りの2、3割について投資を進め目途を付けたいと思って
おり、こちらについても確度は高いものと考えている。
前回の目標については達成できず申し訳なく思っているが、当時の状況を振り返る
と、原子力が再稼働できておらず、川内の特重施設の扱いも不透明だった。当時と
比べると現在の状況の方が安定していると考えており、将来の見通しについても高
い確度で皆様へご説明できると考えている。
・ 二点目、現在の実力利益についてだが、2021 年度の業績予想 700 億円における一過
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性要因として、燃調期ずれ影響 70 億円、松浦発電所がアンローダーの事故の影響で
しばらく動かない可能性がありこの影響が最大で 70 億円程度、
また新型コロナ影響
が昨年度の半分程度の 100 億円程残ると見込んでいる。これら一過性要因を除いた
900 億円程度が我々の実力利益と考えており、前回の経営概況説明会でお伝えした
水準と同程度と認識している。Q・ 一点目、財務目標で参考指標とされているROEの水準感について、利益目標が達
成できれば8%と言及されたが、利益を単純に計算すると8%となったという意味
なのか、
それとも 2030 年やそれ以降も見据えて達成したいROEの水準として考え
ているのか。資本コストの考え方も含めてROEの考え方を教えてほしい。
・ 二点目、原子力新増設について、国のエネルギー政策として原子力新増設が認めら
れるかということと、新増設にあたって民間企業としてリターンが出るよう政策と
して担保されるかということが重要になると思うが、この二点を含めた九州電力と
しての新増設の可能性について考えを教えてほしい。A・ 一点目、ROE8%の意味だが、継続的に利益を出していくことで達成できる数字
と考えるが、同時に、我々は自己資本を充実させたいという思いがある。ROEと
自己資本の拡充は相反する関係だが、自己資本比率を 20%またはそれ以上に拡大し
ていく中でも、ROE8%の水準は確保したいという強い思いで提示させていただ
いた。日本全体の他社とも遜色のない数字と考えている。
・ 二点目、非常に難しい質問だが、まず電事連の会長としてお答えすれば、原子力は
発電時にCO2を発生しない電源であり、
建設時を含めたライフサイクルでみても他
電源と比べてCO2排出量は少ないと考えており、
地球温暖化問題の解決のためには
原子力を使うしかないと考えているし、
原子力を避けて 2050 年のカーボンニュート
ラルの議論はできないと考える。
次に、九州電力の社長としての意見だが、原子力の新増設は立地地点のご理解が必
要不可欠であるが、その意味では日本の原子力はまだ信頼回復の過程にいるものと
考えている。当社の川内原子力は運転再開後5年以上安定運転を継続しており、ま
た特重施設の設置により安全性は向上してきている。今後も満足することなく安全
性を追求していく。そういう姿を皆さまにご理解頂き、この会社になら新増設させ
てもよいと思って頂けるにはまだ時間がかかると認識している。将来的な新増設に
ついて、九州電力の社長として具体的に申し上げるのはまだ早いと考えている。
また、リターンの問題については、カーボンニュートラルという大きな目標を達成
するために原子力は必要であり、そのために安心して投資できるように、投資予見
性やリターンについては制度設計の中でしっかりやっていただくものと考えている。
- 3 -Q・ 一点目、2021 年度経常利益予想のステップチャートの中で、小売・卸売販売電力量
の増で+80 億円(前年比)となっているが、競争で販売単価が下がっている面もあ
ると思うが、単価減の効果をネットしても増益となっているのか。2020 年度の実績
とあわせて教えてほしい。
・ 二点目、非化石価値の売却益はどの程度か。具体的な金額は難しいと思うが、2020
年度について中間目標値を上回る部分は概ね売却したと考えてよいか。また、2021
年度の利益予想には原子力稼働増を踏まえた非化石価値売却益の増が織り込まれて
いるかどうか教えてほしい。A・ 一点目、2021 年度の小売・卸売販売電力量増による+80 億円については、
(販売数
量の増に当期の想定単価を乗じた収入増影響から算定したものであり)販売価格の
変動の影響も織り込んだ数字である。
カーボンニュートラルの実現のためにも今後電化に力をいれていく。九州は全国に
比べて電化率が低く伸びしろが大きいため、電化は進むと考えている。また、卸売
販売についても今後は増えていくと考えている。新電力も昨年度の需給ひっ迫の影
響等も踏まえ、スポット市場からだけでなく相対取引やベースロード市場から固定
費を負担したうえで供給を受けるようになると考えており、そういった新電力に対
し卸売を進めていくべきと考えている。これらの取組みを通じ、小売・卸売販売増
の 80 億円は達成できると考えている。
なお、この数字は 10 億 kWh 程度のコロナ影響を織り込んだ上での数字である。
・ 非化石価値についてだが、我々の非化石電源比率は、原子力と地熱・水力などを合
わせて 2019 年度実績で 44%なので非化石証書の販売で非常に強いポジション。こ
のポジションを活かし、高度化法目標達成に向けて非化石電源比率の足りない他の
一般電気事業者、新電力に対して全力で提供したい。Q・ 非化石比率の高さは小売営業の面で効果はあるか。非化石比率が高いから九電から
買いたいといった声は出ているか。A・ 家庭向けのメニューで月間 500 円を定額上乗せで非化石電源の電気をご使用いただ
けるプランを設定。
ご契約いただくことで EV 補助金の認定に必要となる非化石電源
利用の証明となるためEVをご検討されているご家庭から引き合いが多い。
・ 法人向けには、我々の売りである地熱や水力の電気をご使用いただく再エネECO
プランという料金を設定している。
2018 年9月の創設時は引き合いが少なかったが、
年を追うごとに反応が良くなっており、
昨年 10 月のカーボンニュートラル宣言を受
けて、今後も契約を伸ばしていけると思っている。
- 4 -Q・ 2025 年度経常利益目標 1,250 億円(国内電気事業 750 億円、成長事業 500 億円)と
あるが、2021 年度の国内電気事業、成長事業の利益予想はどの程度か。A・ 700 億円のうち、国内電気事業が 500 億円、成長事業が 200 億円である。Q・ 国内電気事業について、ここ数年、業界大で卸電力取引所の価格低下、競争進展に
よる小売での利幅低下が起こっていると思っているが、この kWh あたりの利幅の低
下について今後5年間どのようになると想定しているか。A・ 卸売については、
新電力にも JEPX だけに頼っていては危ないという感覚が広がって
おり、さらにベースロード市場の活用が増えてくる。また 2024 年からは容量市場が
開始され、固定費相当について負担していただけるようになる。さらに非化石市場
についても昨年から本格的に始動しており、原子力等のゼロエミ電源を多く持って
いる我々にとってはよいこと。
・ 小売については、新電力の戦略の問題と思うが、今年の1月の需給ひっ迫を受け、
相対卸やベースロード市場などの安定電源からの調達を考えると思うので、こちら
についても今までのような極端な価格競争は少なくなると考える。Q・ 財務目標について、定量目標の開示は充実してきているが、更なる要望として、W
ACC、ROICについても、目標ではなくとも投資家とのコミュニケーションツ
ールとして出してほしい。WACCについて何%程度をイメージしているか、RO
ICは現状何%程度か、2025 年ROE8%はROICでは何%程度か。関西電力で
はセグメント別のROAの開示をしているが、九電もROICのセグメント別の開
示を進めてはどうか。A・ 資本コストに近い概念となるが、料金算定規則に基づいて算定した現行小売料金原
価の事業報酬率は 2.6%である。事業別の資本効率性の開示については課題として
認識しているため今後検討していきたい。Q・ 一点目、非化石価値のマネタイズについて、非化石価値の下限 1.3 円/kWh は高すぎ
るという議論もあるが、九電の手ごたえとしてコメントはあるか。
・ 二点目、2020 年度業績予想の乖離について、業績予想の精度向上等に向けた具体的
なアクションプランがあれば解説して欲しい。
・ 三点目、玄海原子力の特重工事の進捗については、設置期限内の完成を目指すとの
表現だが、現実的に間に合う見通しなのか。
- 5 -A・ 一点目、今後需要家が非化石価値を購入できる市場ができることは聞いているが、
購入を希望する需要家が増えてくれば価格は上がってくるのではと考えている。
・ 二点目、業績予想については非常に申し訳なく思っている。1月の需給ひっ迫時に
業績予想を取り下げたが、この時点では先の想定ができない状況だったため予想を
取り下げることが一番誠実な対応と判断した。その後3月に公表した数字と実績と
で大きな差が出てしまったということに対して我々も反省しており、今後の予想精
度の向上について検討している。
・ 三点目、玄海の特重については川内の経験が活かされており順調に進んでいる。3
月末時点で土木工事が6割、機械が1割程度完了している。工事停滞の原因となる
ためコロナがリスクと考えており、クラスターの発生がないよう万全の体制で進め
ているところ。
・ 二点目の業績予想の精度向上に関する補足だが、今回、九電本体及び九電送配にお
いては、1 月時点の混沌とした状態の中で 2021 年度への費用の繰延など、緊急避難
的な収支改善の取組みの検討を行い、結果的に想定していた金額以上の費用減が発
生した。今後は、その要因分析と 2021 年度への繰延額の見極めをしっかり行ったう
えで、繰延分の支出要否について精査を行っていく。
グループ会社については、3月の公表時点では我々も情報を正しく拾い上げられな
かったという反省があるため、しっかりとコミュニケーションをとる体制を構築し
ていきたい。
以上の対策を実施したうえで、
まずは第2四半期決算時に夏季の需要動向も踏まえ、
業績予想の修正要否について検討したい。Q・ 送配電部門について、今後5年間をどのようにみているか。基本的には安定的に利
益が出るセグメントと他社からは言われるが、九電も同様の考えか。または5年間
で何割成長する可能性がある、経年化の影響で費用が増え厳しい見通しなど、異な
る見通しを持っているか。A・ 九州エリアの需要は長期的にほぼ横ばいの想定だが、本来これではいけないと考え
ている。
電化を進めるというカーボンニュートラル実現に向けた課題もあり、
また、
送配電会社は費用の7、8割が固定費で、収入は従量料金中心に回収するという収
支構造であり、需要が減れば送配電会社の経営は苦しくなると考えている。送配電
会社としても需要を増やす努力が必要であり、電化の推進や企業誘致などにもしっ
かり取り組むべきだと社内では話している。
・ さらに、2023 年の託送料金の見直しに向け、まずは基本料金と従量料金の比率を考
える必要がある。二つ目に現状行われていない発電事業者側への課金、三つ目が高
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経年設備の老朽化対応の織込み。この三点への対応が大きな課題と考えている。送
配電は規制料金であるため大きな利益は生まれないが、継続的に効率化を重ねるこ
とで利益を上げ、お客さまへの還元として託送料金を安くしていくことで新たな企
業誘致を進めるといった良いスパイラルにつなげていかなければならないと考えて
いる。Q・ LNG余剰について、2020 年度実績、2021 年度計画への織り込み、2022 年度以降の
見通しについて教えてほしい。
・ 広域連系系統のマスタープランにおいて、関門連系線の増強が議論されているが、
増強が進むことでどのようなメリットが生まれるか、2025 年度までとそれ以降の時
間軸で教えてほしい。A・ 一点目、LNG転売損についてだが、2019 年度は 180 億円程度の損失を計上し大変
苦労した。2020 年度は川内原子力が停止しLNGの消費が増えたこともあり転売損
は出ていない。2021 年度については、引き取り量削減や引き取り後ろ倒しの取組み
をしたことでLNG余剰はほぼ解消しており、若干は転売損が発生する可能性はあ
るが、2019 年度のような額にはならない見込み。
2019 年度はLNGスポット価格が異常な安値だったが現在は当時に比べ価格も上が
ってきており状況が違う。また、LNGの使い方として、転売、自家消費、バンカリ
ングなど、2019 年度の経験も踏まえて様々な選択肢、ノウハウを蓄積しており我々
のリスク耐性は高くなっている。2021 年度も、石炭価格や非化石価値との比較をし
ながらどの燃種を消費するかは都度考えるが、
大きな転売損は出ないと考えている。
2022 年度以降も引き続き様々な余剰対策を準備しているため 2019 年度のような状
況にはならないと考えている。
・ 二点目、
関門連系線増強に当たっては、
その先の送配電設備も整備する必要があり、
全て解決するのは 10 年以上のスパンの話なのだろうと考える。
広域機関が考える話
だが、コストメリットがあると判断し、コスト分担の比率が合理的であれば我々と
してはウェルカムであるし、それによって現在我々が行っている再エネ出力制御量
が減るのであれば、日本全体にとっても良い話だと考える。Q・ 非化石価値の価格について、需要家市場と高度化対応市場ができFITと非FIT
でマーケットが分かれ、FIT市場の方では需要家の強い要望もありかなり安い価
格で需要家へ直接販売されるという議論が聞こえてくる。需要家向けのマーケット
での価格低下が、電力会社同士でやり取りするマーケットへの間接的な影響につい
てどう考えるか。
- 7 -A・個人的には需要家向けに非化石価値をむやみに安く販売するべきではないが、需要
家市場の価格低下によって高度化法対応市場が大きな影響を受けるものではない
と考えている
以 上
本資料には、将来の業績に関する記述が含まれております。こうし
た記述は将来の業績を保証するものではなく、リスクと不確実性を
内包するものです。将来の業績は、経営環境に関する前提条件の変
化などに伴い変化することにご留意下さい。

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