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2 0 2 1 年 1 1 月
九州電力株式会社
経営概況説明会(11/11 開催)における質疑応答内容Q・ 一点目、配当について、従来から社長は 50 円復配の早期達成に意欲的だが、改めて
どういうマイルストーンで復配の判断に至るのか聞きたい。今回は利益水準の説明
が多かったが、このくらいまで行くと 50 円への復配を判断しやすいなど、社長の判
断材料として一番重要なのは収益力か、財務体質かを聞きたい。
・ 二点目、実力利益水準はタイムラグ影響を戻すと 1,000 億円を超える水準で、成長
分野でも着実に進捗しているとの説明だったが、今年は原子力稼働率が 90%と例年
より高い水準である。ベースの稼働率を仮に 80%と置いた場合でも、実力利益水準
として 1,000 億円以上を稼げる手応えが社長にあるのか。また、川内の運転期間延
長を行う場合に、稼働率を下げるような特別な対策工事が必要になる可能性がある
か、そこはあまり懸念材料としてみる必要はないのか。原子力の稼働率と実力利益
水準について、中長期的な観点で聞きたい。A・ 一点目、
2025 年が財務目標のターゲットだが、
それまでのできるだけ早い時期に 50
円に戻せればと考えている。自己資本比率は 20%を目指すが、その水準を達成した
ら復配するというわけではなく、それを視野に入れながらということで考えている。
利益目標についても、2025 年目標として 1,250 億円を設定しているので、そのライ
ンに乗っているかどうかというところが大きな判断材料になるのではないかと考
えている。
今期は配当予想を 40 円としているが、
投資家の皆様を失望させるほど遠
い将来でなく 50 円に復配できると今のところは考えている。
・ 二点目、今年度の実力利益水準は 1,000 億円程度と考えている。ただしあくまで現
在の状況での話で、他にもプラス要因はあると考えている。例えば原子力稼働率に
関しては、ベースの実績としては 80%を超えていると認識しているが、今後も向上
に取り組んでいきたい。定期検査の効率的実施などの取り組みで、稼働率はもう少
し上げていけるのではないかと考えている。
少なくとも 80%程度の稼働率であって
も 1,000 億円の実力はあると、私は考えている。川内については、現時点で運転期
間延長を決めたわけではないが、仮に運転延長を申請し、その審査において規制委
員会から追加工事が必要という判断が出てくる可能性はあるが、少なくとも現在は
安全運転を継続できており、特別点検でも問題が無いということになれば、大きな
追加工事は必要ないと認識している。
- 2 -Q・ 一点目、上期電力販売量はコロナ影響を除いても増えているが、競争の状況はどう
なっているのか。電力量で勝っている印象だが、ステップチャートを見ていると単
価を下げているわけでもないように見える。販売活動がうまくいっているように見
える背景は。
・ 二点目、通期予想に関して、効率化効果を上乗せしているが、その中身としては燃
料価格上昇の影響を受けて一時的に繰り延べをしただけか、構造的に来年度以降も
効果が継続するものと考えてよいか。A・ 一点目、販売が好調な件だが、一つには九州域内を中心にお客さまに寄り添って活
動してきたことが定着してきて、離脱取戻しなどの成果につながっているのではな
いかと認識している。価格面においては、昨冬の需給ひっ迫による市況価格上昇の
経験が競合他社の提案・入札に影響を与えているとすれば、当社の競争力が高まっ
ているということではないか。これからも引き続き、価格競争力を高め、さらに価
格以外の面でもお客さまのニーズに添った提案を行う。お客さま企業でもカーボン
ニュートラルへの取り組みが求められる中で、従来から省エネ診断等の営業活動を
推進していることも効果が出ている要因ではないかと思っている。
・ 二点目、今期の効率化効果について、一時的な要因と恒常的な要因の分析まではで
きていない。効率化による収支改善効果70〜80億円のうちには、実施の繰り延
べ分も含まれているとは思うが、例えば、DXをテコとした業務効率化を新たな発
想で進めることを目指しており、
そういった効果もあるのではないかと考えている。Q・ 一点目、ROICの活用について検討中とお話しいただいたが、九電の現状認識を
聞きたい。昨年度ROICは 1.34%という水準(タイムラグ影響込)だが、現状の
ROICはWACCを上回っているのか。ROEの実績は5%程度だが、現状の低
い自己資本比率を踏まえると評価が難しい。今後自己資本比率を改善していく中で
は、ROICを引き上げていかないとROEは改善しないと考えている。
・ 二点目、ガバナンスに関して、経営と執行の分離について、関電や東電の事例も踏
まえた上で、社長はどう考えているか。また、社外取締役に関して、今年の春に改定
されたコーポレートガバナンスコードの中で筆頭社外取締役の設置についての提言
があるが、それに関する動きはあるか。他社説明会では社外取締役が株式市場とコ
ミュニケーションをとる場を設定してほしいというお願いをしているが、九電は前
向きに動いているためその点はポジティブに評価している。A・ 一点目、今年度の業績予想を前提として連結ベースで計算するとROICは 1.5%
程度であり、WACCと比較して概ね同程度の水準と認識している。ROICの活
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用・開示については社内で議論を進めているところだが、既に実施中の枠組みとし
ては、個別の投資案件ごとに資本コストをベースとしたハードルレートを投資判断
の基準とすることで資本効率性の確保を図っている。また、ROEについては、先
般公表した財務目標とともに中期レンジで8%程度を目指すこととしている。RO
ICに関しては引き続き検討を進めていきたい。
・ 二点目、ガバナンスに関して、執行と監督という位置付けに関しては、社長以下が
執行、
会長をはじめとする取締役会が監督している。
取締役会の実効性に関しても、
社外取締役の意見を受けて、取締役会とは別に懇談会という形で、リスク分析や経
営分析、重要戦略などについて共通の認識を持っていただくことにしているため、
非常に有効に機能していると思っている。社外取締役に関しては、投資家からのニ
ーズがあれば対話の機会を設けることを考えている。現在の体制としては、監査等
委員でない方が2人、監査等委員が3人。監査等委員以外の2人は社外・海外経験
も豊富な方々であり、どちらが筆頭というわけではなく両者で引っ張って行っても
らえればと思っている。Q・ 一点目、原子力の定期検査について言及していたが、13 か月運転の定検インターバ
ルを伸ばすことについて、実際に規制側にどういう働きかけを行うか。受け入れの
動きはあるか。
・ 二点目、インターナルカーボンプライシングについて、九電の事業活動に当てはめ
て分析をしているか。分析をしているのであれば、そこから得られる示唆があれば
教えていただきたい。
・ 三点目、ROICについて、各事業部門のROICが見えるようになった場合、そ
れをどのように使っていくのか。現時点での社長の意見を聞きたい。A・ 一点目、原子力の定期検査について、先ほど申し上げたのは定検期間短縮によって
全体の稼働率が上がるという話だが、ご指摘のとおり定検インターバルを 13 か月
から 18 か月まで伸ばすことはルール上は可能と認識している。電力会社と原子力
規制委員会との対話の中でも、委員長は後ろ向きではなかったと認識している。C
O2排出削減に大きく貢献するため、原子力の稼働率向上は取り組むべき重要課題。
定検期間短縮、定検インターバル延伸、どちらも稼働率向上に向けて重要な方策で
あり検討していきたいと思っており、規制委員会も最初からNOというスタンスで
はないと認識している。
・ 二点目、インターナルカーボンプライシングは、社内の投資判断に利用している。
ただ、すべての事業領域に適用するまでには至っていないため、これからの検討課
題と思っている。カーボンフリーのものは将来利益が拡大する可能性が高く、それ
が使えなくなるリスクも低いので、投資判断には活用している。
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・ 三点目、既存のビジネスでのROIC活用については社内で検討している。どうい
った事業単位で評価するか、事業間のシナジーをどう考えるかなど検討課題がある。Q・ 燃料価格上昇について、九州域内では相対的に九電本体の競争力が高まるのは理解
できるが、逆に九電みらいエナジーの方は、調達コストの上昇等により競争力が低
下するリスクもあるのではないか。
・ 利益ガバナンスの改善について、今年度の業績予想を行うなかでうまく反映されて
いる部分や、以前の業績予想と比べて手ごたえがあった部分、エピソードなどがあ
れば具体的に紹介してほしい。A・ 一点目、燃料価格上昇について、当社は原子力や再エネの活用により、燃料価格上
昇局面で競争力が高まっている。燃料費調整単価を見ても当社の上り幅は小さく、
他社と比較した優位性は直感的にご理解頂けるだろう。九電みらいエナジーについ
ては、九州域内での立ち位置ほど有利ではないが、競争力が他社に劣後するほどの
状況ではないと考えている。相対取引をはじめとする多様な電力調達手段の検討に
よりリスクヘッジも行っている。今後も引き続き営業活動を強化していきたい。
・ 二点目、利益ガバナンスについて、過去にも業績予想を何度か修正したが、私が1
番記憶に残っているのは、今年 1 月の業績予想取下げである。これについては多く
の批判をいただいたが、
真意としては、
とにかく正しく情報公開することが重要で、
先が見通せないからという理由で業績予想を変えないことは誠実ではないと判断
した。本来は、当初の業績予想が当たることが投資サイドの方々にとって好ましい
だろうが、今年1月の判断については、そういう誠実さを評価していただければと
思う。また今期は、グループ会社との情報連携や、収支管理に関する社内関係箇所
との連携強化を図っている。その成果という意味では、当初の業績予想は現状変え
ずに済んでいるし、今後もこの業績予想を達成できるよう、収支管理を徹底してい
きたいと考えている。Q・ 上期の域外及び域内の収支水準に関し、JEPXの市場価格の変動影響はどのくら
いあるか。域内では他社に比べて競争力が高いのは理解できるが、域外では域内と
逆のことが起こっても不思議ではないと思う。
・ 送配電事業に関し、旧一電各社で業績に違いが出ているようだが、需給調整市場の
開設は九電の上期実績や通期予想にどのような影響を与えているのか。他の旧一電
会社では損失がでているところもあり、電事連として国へ働きかけるなどの対応は
あるのか。
- 5 -A・ 一点目は非常に難しい質問だが、まず域内で考えると、卸電力取引市場の価格が高
いということは、当社が販売する場合に高く売れるものの、当社が購入する場合や
市場価格に連動して算定される再エネ交付金などはマイナスの影響を受ける。競争
環境の面では、当社は原子力や再エネの活用により燃料価格上昇の影響を受けにく
いが、スポット市場からの電力調達が多い新電力等は影響が大きいため、相対的に
当社にとってはプラスの影響となる。域外については、他社の状況も踏まえて九電
みらいエナジーがどういう価格を出すかという話と、リスクヘッジをどう考えてい
くかという話があるが、経営戦略にかかわることであり詳細は申し上げにくい。競
争対応という意味では、価格だけでなく「九州繋がり」などを活用した新規開拓も
行っている。
・ 二点目、需給調整市場について、これまで再エネ電源の急激な出力増減に対応して
きた当社としては、入札という形で透明性をもって対価を得られるようになり、九
電本体にとっては良いことである。一方、送配電事業の収入となる再エネ交付金の
原資が今年度少なかったこともあり、九州電力送配電の対価支払分の全てを負担し
ていただけていない状況で、その部分ではマイナスの影響もある。影響が大きい他
の電力会社もあると聞いているが、これは基本的に電事連ではなく送配電網協議会
がエネ庁と話すべきことだと考えている。Q・ 燃料等の調達に関して電気事業のボラティリティが大きくなっている状況下におい
て、電力各社のポジションの取り方次第で損益に差がでてくるものと認識している
が、九電のボラティリティに対するヘッジの方針や考え方について伺いたい。A・ 当社には複数のバランスの取れた電源があり、自社単独でヘッジできる部分が大き
く、先物などで電力調達価格を固定してヘッジするような方法の必要性は低いと考
えている。一方、自社電源を持たない新電力にとっては、今年 1 月に起きたスポッ
ト価格上昇のようなボラティリティはとても耐えられるものではない。九電みらい
エナジーも、多様な調達方法でヘッジしていると認識している。Q・ 今年1月の業績予想取下げは個人的には評価している。意見は分かれると思うが、
基本的にはファンダメンタルは素直に開示すべきで、悪ければ株価は下がり、良け
れば上がるのが当然。一方、電力業界全体に言えることだが、利幅の変動について
開示がなく数値を使って議論ができない。競争悪化による減益と言った場合、数量
要因と価格要因に分解して分析できないことに不満を感じている。要望になってし
まうが、利益ガバナンスや情報開示についてはさらに深堀りしていただき、可能な
範囲で他社にも横展開していただきたい。
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・ カーボンマイナスまで踏み込んで公表することは、普通の電力会社にはできないこ
とで英断だと評価する。正式発表の際には、本日説明のあった方向感で、適切な開
示を期待する。可能であれば「S+3E」の視点で記載いただくと業界としてもい
いことだと思う。A・ 当社の開示スタンスについて評価いただき感謝する。電気は自動車のようにデザイ
ン性などで差別化するのが難しい商品特性。営業活動や省エネ診断などの付加価値
により、電気単体ではなく電気が生み出す効用で商売をしたいと思っているが、そ
れを数量と価格で分析するとなると非常に難しい面もある。競争上不利にならない
ような開示の仕方を今後も検討していきたいと思っているが、他社への横展開につ
いては難しいだろう。
・ カーボンマイナスについても評価頂き感謝する。化石燃料を再エネなどに転換して
自社のGHG排出量を減らすというだけでなく、電化を進めることによって日本全
体の排出量を減らすための活動、例えばEV活用事業、業務用の電化提案などを九
電グループ全体で一生懸命取り組んでいる。当社の電源がカーボンニュートラルに
なるだけでなく、
2050 年に向け日本全体のカーボンニュートラルに大きく貢献でき
るよう、カーボンマイナスという旗印を立ててやってはどうかということで検討し
ている。Q・ 九電みらいエナジーは販売を伸ばし、利益もそれなりに伸びていると思うが、販売
がうまくいっている要因とそれが利益に繋がっている要因を教えてほしい。調達面
ではうまくヘッジできているようだが、競争力の観点とはまた違う話だと考えてい
る。特に今年はピーク時の電力調達が大変なので、販売に合わせてどう調達してい
くかという課題があり、そういった点も含めて九電みらいの販売が伸びている背景
を教えていただきたい。
・ 燃料調達について、石炭のスポット価格上昇が上期と通期の業績にどのように影響
として入っているか。また、LNGのスポット価格上昇はプラスマイナスの影響が
両方あると思うが、転売策も含めて業績にどれだけ織り込まれているか教えてほし
い。A・ 一点目、九電みらいは、東京を中心にJAL等との業務提携を含め様々な料金プラ
ンを出しており、入札でも順調に獲得できている。強みと言えば、積極的に営業活
動を進めていることも大きいが、やはり九州にゆかりのある方との「九州繋がり営
業」ができるという点が大きいのではないかと思っている。首都圏にも九州発の企
業や経営者が九州出身というところも多い。調達面では分析を重ねて多様化を図っ
ているが、そこは他の新電力も同様の対応をしていると思うので、やはり営業力が
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大きな強みになっていると思う。
・ 二点目、燃料価格上昇の影響について、石炭のスポット価格は一時 250 ドルを超え
る水準まで高くなったが、こういった影響がダイレクトに効いてこないよう調達時
期を分散したり、複数の炭種をブレンドして焚くなどの努力をしている。足元の価
格は少し落ちついてきているので安堵している。LNGは長期契約で購入している。
安定供給が最優先だが、需給状況を十分に検証したうえでLNGが十分足りると判
断できれば転売していくことはありうる。冬の需給状況を見ながらにはなるが、現
在の価格水準を考慮すると、転売した場合は通期の業績に貢献するのではないかと
考えている。Q・ 社長から実力利益 1,000 億円以上との話が出たが、前回説明会では 900 億円程度と
の説明だったと認識しており、この半年で実力利益が上がった背景を教えてほしい。
・ カーボンマイナスの考え方については、社会全体でよりアクティブに電化を促進し、
その排出削減効果を九電の削減量として広くカウントすることで、九電のサプライ
チェーン全体の排出削減だけでなく、社会全体の削減にも貢献するという理解でい
いか。また、長い時間軸で見たときに、原発の新増設やリプレースの話も動きとし
ては出てくるのか。A・ 実力利益の 1,000 億円だが、今期は販売電力量が増えており、その利益貢献分 100
億円程度の影響を加味している。九州電力送配電の需給調整市場で取り漏れている
マイナス分を考慮すると、本当はもう少し強いのではないかと個人的には思う。
・ カーボンマイナスについては、ご理解のとおりで、電化の推進や域外での再エネ推
進等により排出削減効果を加えてマイナスになるということ。カーボンニュートラ
ルを達成するには、原子力が非常に重要。電事連会長として申し上げているのは、
再エネの主力電源化、火力発電における水素・アンモニア・CCUS 活用、そして原子
力、この3点セットで推進するということ。その中でも計画的に発電でき、技術的
にも確立している原子力は重要だと考えている。今回の第6次エネルギー基本計画
では、新増設・リプレースの文言は入らなかったが、役所や議員の方々と対話する
なかで、私はぜひこの文言を入れていただきたいと言っている。理由として、まず
は人材面。新増設やリプレースの話がなければ、人材が集まらず、長期的な育成も
できなくなる。もう一つはサプライチェーンの問題で、原子力に必要な鉄鋼や部材
などの供給が続かなくなることも考えられる。さらに、原子力発電所がある地元の
方々も将来を不安に思われるかもしれない。当社は、現在稼働している4基すべて
について、今後も安全・安定運転を積み重ねなければならないと思っている。国際
的には、一昨日、フランスのマクロン大統領が原子力の新規開発を再開すると表明
した。
EUでも、
電気料金上昇やCO2排出の面で原子力は必要との見方が強くなり
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つつあると認識している。世の中の流れが少しずつ変わっていくなかで、日本国内
でも議論が進んでいけば、原子力はやはり必要で、カーボンニュートラルのために
は大事な電源であるという共通の認識に立てていただけるものと考えている。
以 上
本資料には、将来の業績に関する記述が含まれております。こうし
た記述は将来の業績を保証するものではなく、リスクと不確実性を
内包するものです。将来の業績は、経営環境に関する前提条件の変
化などに伴い変化することにご留意下さい。

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