くろまる TNFDβ版v0.4の情報開示フレームワークを踏まえた開示
2022年12月にカナダで採択された新たな生物多様性に関する世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」をはじめ、昨今、自然資本への取り組みに世界的に
注目が集まっています。
九電グループでは、「脱炭素社会の牽引」を経営上の重要課題(マテリアリティ)と位置付けており、気候変動への対応として2020年からTCFD提言に基づくシナリオ分析と
情報開示を継続するとともに、生物多様性の保全や資源循環等を含む「環境負荷の低減」に向けた取り組みを進めています。
今回の「九電グループ TNFDレポート2023」では、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)β版v0.4の情報開示フレームワークおよび電気事業者向けのガイダンス
を参照し、事業活動における自然資本に関わるリスクや機会に関する分析を試行的に実施しました。
今後も継続的に、自然資本への影響と依存、リスクの評価を行い事業活動を展開することで、「ネイチャーポジティブ経済」への移行に貢献するとともに、ステークホルダーの
皆さまからの信頼向上に継続的に取り組んでまいります。
地域共生本部長メッセージ
評価結果概要
くろまる はじめに
九州の地域経済や生活は、九州の豊かな自然資本によって支えられており、その九州の発展なくして九電グループの発展はありません。九電
グループは、「九電グループ環境憲章」のもと、事業活動と環境が両立する環境経営を着実に推進する中長期的な基本方針として「環境活動方
針」を定め、豊かな自然環境を未来につなげるべく、事業活動に伴う環境負荷及び環境リスクの低減に努めるとともに、生物多様性の保全に取
り組んできました。
水源かん養林として保有してきた社有林 (大分県を中心とした4,447ha)は、生態系や水を育む森の役割を果たしており、 FSC ®(Forest
Stewardship Council®(森林管理協議会)・本部ドイツ)認証材の生産や、環境教育の場所として活用しています。また、くじゅう坊ガツル
湿原一帯において、希少な生態系を残す「坊ガツル」の湿原の維持することを目的とした「野焼き」を地域の皆さまと一緒に復活させるととも
に、希少植物の生態系を脅かす外来種植物の駆除活動や「ミヤマキリシマ」の植生保護活動を実施してまいりました(くじゅう坊ガツル湿原は、
「くじゅう坊ガツル・タデ原湿原」としてラムサール条約に登録)。
九電グループ TNFDレポート2023
発電・送配電の各事業領域において法令や地域との協定等を遵守した事業運営を行っており、自然資本への影響は概ね低く抑えられている一方で、燃料調達先におい
て自然資本に関わる影響・依存度が相対的に大きいと評価しました。また、地震・津波等の自然災害については、発生する蓋然性が一定程度高い事象を想定した結果、地
点が限定されている原子力発電所については対策を徹底しておりリスクは小さい一方で、火力発電所や水力発電所、送配電設備については相対的に大きいリスクがあ
ると評価しました。
このようなリスクに起因する財務影響について、南海トラフ地震により大分・宮崎地区を中心に送配電設備の損壊が発生した場合や、石炭火力発電に対する規制強化時
には、大きな影響があると評価しました。また、燃料調達先のリスク顕在化時、火力・水力・送配電設備損壊時に、一定の財務影響があると評価しました。
さらに、資源循環の取組みを加速させるため、本年7月、川内発電所跡地を拠点とする「サーキュラーパーク九州株式会社」を設立しました。
今後、地元の自治体や企業等と連携し、企業や地域の廃棄物の再資源化(リソーシング事業)や産学官のネットワークを活用した共同研究や実
証実験(ソリューション事業)等を通じて、サーキュラーエコノミーと脱炭素化の推進による持続可能な社会の構築に取り組んでまいります。
このような地域に根差した活動等は、TNFDの視点から分析を行うことで、改めて価値のある活動であることを認識しました。今回の開示に
つきまして、皆さまからのご意見をいただきつつ、引き続き試行錯誤しながら、より良い事業活動を展開し、「ネイチャーポジティブな経済社
会」づくりに向けて取り組んでまいります。
地域共生本部長
内村 芳郎
くろまる 自然資本に関するガバナンス(リスクのインパクト管理を含む)
環境諸課題に係る対応体制
(リスク・機会の評価、マネジメントプロセス)
ESGの取組みを強力に推進するため、2021年7月、取締役会の監督下に、社長を委員長とする「サス
テナビリティ推進委員会」を設置しました。本委員会では、ESG全般に係る戦略・基本方針の策定(マテリ
アリティの特定)、具体的方策の審議、施策実施状況の進捗管理に加え、気候変動に関する戦略・リスクに
ついての審議・監督を行います。また、本委員会の下には、ESG担当役員を議長とする「カーボンニュート
ラル・環境分科会」を設置し、環境問題全般について、より専門的な見地から審議を行っています。
年に2回以上開催する本委員会の審議結果は、取締役会に遅滞なく報告しており、取締役会はESGに係
る活動全般を監督しています。
しかく 九電グループの環境管理推進体制
くろまる 今回の分析の範囲と対象
TNFDβ版v0.4の情報開示フレームワークおよび電気事業者向けのガイダンスを参照して自然資本に
関わるリスクと機会を評価しました。
対象は、九電グループの「国内電気事業」のうち「火力発電(石炭・LNG)」、「原子力発電」、「水力発電」、
「地熱発電」(九州電力(株))、及び「送配電事業」(九州電力送配電(株))です。
今後は、TNFDv1.0の枠組み等を踏まえて改めて内容を見直すとともに、海外の電気事業や都市開発
等の非電気事業など今回対象外とした範囲に関しても評価を行うなど、TNFDの枠組みに沿った情報開
示の充実を進める予定です。
しかく 自然資本に関する目標
項目 目標
気候変動
(カーボンニュートラルビジョン2050p1、
ESGデータブック2023p8)
カーボンニュートラル ・2050年のカーボンニュートラルの実現
サプライチェーンの温室効果ガス排
出量(Scope1+2+3)
・2013年度と比較して温室効果ガス排出量を2030年に60%削減、国内事業は65%削減
環境管理の推進
(ESGデータブック2023p5)
環境管理の推進 ・法令違反件数:ゼロ
循環型社会形成
(ESGデータブック2023p5)
産業廃棄物の適正管理・処理
・石炭灰以外リサイクル率:98%
(うち廃プラスチックリサイクル率:90%)(2023年度目標値)
グリーン調達の推進 ・グリーン調達率:97%(事務用品類)(2023年度目標値)
サプライチェーンマネジメントの強化
(ESGデータブック2023p7)
サプライチェーンにおけるESGに対
する意識向上
・主要取引先に対するサステナビリティ向上の取組みに関するアンケートの回答率
:90%以上(2023年度目標値)
ステークホルダーエンゲージメントの充実
(ESGデータブック2023p7)
ステークホルダーからの満足度向上
(環境教育の充実)
・アンケートにおいて環境保全意識が向上したと回答した方の割合
:90%以上(2023年度目標値)
くろまる 自然資本関連の影響と依存
生物多様性を含む自然資本をプラスの状態に向けてゆくための重要な第一歩は、自社の事業活動(燃料調達含む)が、自然資本に与えている影響と依存している生態系
サービスについて把握することです。 TNFDβ版v0.4 のLEAPアプローチで提供されているガイドラインやENCORE(グローバルなデータに基づく評価ツール)等を参
考にしつつ、事業の前提となる発電所立地や設備、法令・自治体との協定等を踏まえ、事業における自然資本関連の影響と依存を5段階(Very High、High、Middle、
Low、Very Low)で評価しました。
しかく 事業における自然資本関連の影響と依存の評価一覧(自然資本関連等のヒートマップ)
(注記) ヒートマップ作成
にあたり、自然災害
については、過去約
30年間で発生した
事象、または、今後
30年間で発生する
可能性が高いとさ
れている事象が、発
生した場合を想定
しました。
Very HighHighMiddleLowVery Low
【凡例】
【参考】 ENCORE(グローバルなデータに基づく評価ツール)における自然資本関連の影響と依存の評価一覧(自然資本関連のヒートマップ)
汚染物質 汚染物質
無害化 濾過
燃料調達VeryHigh
High -VeryHigh
- High High High High High High High High - High - - Middle High -
発電 - High -VeryHigh
- High High Middle Middle High HighVeryHigh
Middle Very Low Very Low Low Middle Low Middle Low
燃料調達 High HighVeryHighVeryHigh
- High High High High High High Very Low Very Low Very Low Very Low Very Low Very Low Low - -
発電 - High -VeryHigh
- High High Middle Middle High HighVeryHigh
Middle Very Low Very Low Low Middle Low Middle Low
燃料調達VeryHigh
High -VeryHigh
- High High High High High High High High - High - - Middle High -
発電 - High -VeryHigh
- High High Middle Middle High HighVeryHigh
Middle Very Low Very Low Low Middle Low Middle Low
水力発電 発電VeryHighVeryHigh-VeryHigh- High - High High - -VeryHigh
Middle Very LowVeryHigh
Very Low High HighVeryHighLow地熱発電 発電 - - -VeryHigh
- High - High High - High MiddleVeryHigh
Very Low Very Low Very Low Middle Low Middle Low
Middle - - - - High - Middle - - - - - - High -VeryHigh
High - -
依存
自然資本関連
発電種別 工程
土地改変 直接採取 気候変動 汚染 その他 供給サービス 調整サービス 基盤サービス
陸域 淡水域 海域 水 水以外
温室効果
ガス
大気 水域 土壌 浸食防止 水流維持 水質維持
影響
火力発電
(石炭)
火力発電
(LNG)
原子力発電
廃棄物
騒音/
光害
表流水
提供
地下水
提供
気候調整 洪水防止
送配電
その他要因
汚染物質 汚染物質
無害化 濾過
燃料調達VeryHigh
High -VeryHigh
- High High High High High High High High - Very Low - - Middle High - Very Low
発電 - Low Low Low -VeryHigh
Low Low Low Low Low Low - Very Low Very Low Low Low Low Low Low High
燃料調達 High HighVeryHighVeryHigh
- High High High High High High Very Low Very Low Very Low Very Low Very Low Very Low Low Very Low - High
発電 - Low Low Low - Middle Low Low Low Low Low Low - Very Low Very Low Low Low Low Low Low High
燃料調達VeryHigh
High -VeryHigh
- High High High High High High High High - Very Low - - Middle High - Very Low
発電 - Low Low Low - Very Low Low Low Low Low Low Low - Very Low Very Low Low Very Low Low Low Low Very Low
水力発電
(一般水力)
発電 Middle Low - Low - Very Low - Low Low - - High - Very Low Very Low Very Low High High High Low High
水力発電
(揚水式)
発電 Low Low - Low - Very Low - Low Low - - Low - Very Low Very Low Very Low High High Low Low High
地熱発電 発電 - - - Low - Very Low - Low Low - Low Low - Very Low Very Low Very Low Low Low Low Low Low
Low - - - - Very Low - Low - - - - - - High - Low Low - - High
影響 依存
基盤サービス
陸域 淡水域
地震・
津波
発電種別 工程
土地改変 直接採取 気候変動 汚染 その他 供給サービス 調整サービス
原子力発電
送配電
自然資本関連
洪水防止 浸食防止 水流維持 水質維持
火力発電
(石炭)
火力発電
(LNG)
土壌 廃棄物
騒音/
光害
表流水
提供
地下水
提供
気候調整
海域 水 水以外
温室効果
ガス
大気 水域
分類 指標 参照先等
気候変動
Scope1,2,3
の温室効果ガス
(GHG)排出量
サプライチェーンGHG排出量
(Scope1,2,3)
(ESGデータブック2023p71)
陸上/淡
水/海洋
の利用変化生態系と事業活
動別の土地/淡
水/海洋利用の
変化度合い
土地:発電設備、変電設備の土地面積
(有価証券報告書2022年度第99期
p43〜47)
淡水:上水、発電用水の使用量(ESG
データブック2023p77)
海水:発電所の冷却水として活用、使
用量データなし
公害/公
害除去
土壌に排出され
る汚染物質の種
類別総量
基本的に自社設備からの汚染物質の
排出は無し
排水量及び排水
の主要汚染物質
の種類別濃度
排水量(ESGデータブック
2023p77)
各発電所における排水処理装置にて、
適切に処理を実施
有害廃棄物の種
類別総発生量
PCBの処理量(ESGデータブック
2023p75)
二酸化炭素以外
の有害物質の種
類別総量
(ESGデータブック2023 p72,73)
資源利用
/補完
水ストレスのあ
る地域からの総
取水量と消費量
発電用水の使用量(ESGデータブック
2023p77)
* 九州はAqueduct上、相対的に水
リスクが少ない地域とされている
陸上/海洋/淡水
から調達する高
リスクの天然商
品の種類別数量
推移
燃料(石炭、LNG、ウラン)の調達先・
調達量(ESGデータブック2023p26)優先生態系から
調達する天然商
品の種類別の量
とその割合
(今後検討)
しかく 影響と依存の指標
(TNFDβ版v0.4のコア指標)
しかく 自然資本関連等のヒートマップの評価理由
【自然資本関連】
【その他の要因】
発電種別 工程 評価理由火力発電石炭
燃料調達
陸域や淡水域における土地改変、水の直接採取、温室効果ガスの排出、汚染等で自然資本に影響を与える可能性が高いため、「大きい(HIgh)・非常に
大きい(VeryHigh)」と評価しました。また、地下水や表流水の提供や水流維持の水供給に関する生態系サービスへの依存度は「大きい(High)」と評
価しました。
発電
冷却水として海水・淡水を利用していますが、海水が大部分を占めており、淡水の利用は極めて少ないです。さらに、淡水に関しては、水リスクの少な
い九州(ESGデータブック2023p23)で取水しているため、地域の自然資本への影響は「小さい(Low)」と評価しました。また、発電所が立地する自治
体と協定を結ぶなどの合意形成に基づき管理を徹底しており、基準をクリアしなくなる前の段階で運転できなくなるため、大気汚染、廃棄物、騒音/光
害で地域の自然資本に与える影響は「小さい(Low)」と評価しました。ただし、温室効果ガスの排出が与える影響は「非常に大きい(VeryHigh)」と評
価しました。LNG燃料調達
陸域や淡水域、海域における土地改変、水の直接採取、温室効果ガスの排出、汚染等で自然資本に影響に与える影響は「大きい(HIgh)・非常に大きい
(VeryHigh)」と評価しました。。一方、石炭と比較すると、LNGは採掘方法の違いなどから生態系サービスへの依存度は「小さい(Low)・非常に小さ
い(VeryLow)」結果となりました。
発電
冷却水として海水・淡水を利用していますが、海水が大部分を占めており、淡水の利用は極めて少ないです。さらに、淡水に関しては、水リスクの少な
い九州(ESGデータブック2023p23)で取水しているため、地域の自然資本への影響は「小さい(Low)」と評価しました。また、発電所が立地する自治
体と協定を結ぶなどの合意形成に基づき管理を徹底しており、基準をクリアしなくなる前の段階で運転できなくなるため、大気汚染、廃棄物、騒音/光
害で地域の自然資本に与える影響は「小さい(Low)」と評価しました。
原子力
発電
燃料調達
陸域や淡水域における土地改変、水の直接採取、温室効果ガスの排出、汚染等で自然資本に影響を与える可能性が高いため、「大きい(HIgh)・非常に
大きい(VeryHigh)」と評価しました。、また、地下水や表流水の提供や水流維持の水供給に関する生態系サービスへの依存度は「大きい(High)」と評
価しました。
発電
冷却水として海水・淡水を利用していますが、海水が大部分を占めており、淡水の利用は極めて少ないです。さらに、淡水に関しては、水リスクの少な
い九州(ESGデータブック2023p23)で取水しているため、地域の自然資本への影響は「小さい(Low)」と評価しました。また、発電所が立地する自治
体と協定を結ぶなどの合意形成に基づき管理を徹底しており、地域の自然資本へ影響のない範囲で運転を行っているため、大気汚染、廃
棄物、騒音/光害で自然資本に与える影響は「小さい(Low)」と評価しました。
水力
発電
発電
一般水力については、一部KBA(KeyBiodiversityAreas)に建設されていることから、土地改変-陸域への影響は「中程度(Middle)」と評価しました
が、自然資本へのその他の影響については、生態系に大きな影響を与えるような発電所等の新設は近年行っていないこと、河川法など各種関係法令
を遵守した適切な運用を行っていること、立地地域との共生を図りながら生態系に配慮した様々な取組みを行っていることを踏まえ、「小さい
(Low)」〜「非常に小さい(VeryLow)」と評価しました。
また、水力発電設備は、山岳部や河川内に設備があることから、洪水や地震等の影響を受けやすい立地環境であるため、洪水防止機能・浸食防止機能
への依存度及び地震に対しては「大きい(High)」と評価しました。
一般水力については、一定量の水が必要なため、表流水の提供・水流維持の機能への依存度は「大きい(High)」と評価しました。一方、揚水については、
基本的に上池と下池で水を循環させて利用するため、表流水の提供・水流維持の機能への依存度は「小さい(Low)」と評価しました。
地熱
発電
発電
冷却水として主に地下から取り出した蒸気の凝縮水を利用しており、河川水の利用は極めて少ないです。さらに、河川水に関しては、水リスクの少ない
九州(ESGデータブック2023p23)で取水しています。また、発電所が立地する自治体と協定を結ぶなどの合意形成に基づき管理を徹底しており、地
域の自然資本へ影響のない範囲で運転を行っているため、水域・土壌の汚染、騒音/光害で自然資本に与える影響は「小さい(Low)」と評価しました。
*調達については今回は、評価対象外としました。
送配電
配電設備については台風の強風に伴う倒木等により、電柱の折損・倒壊や電線の断線から停電に至る場合があるため気候調整機能への依存度は「大
きい(High)」と評価しました。鉄塔設置箇所選定時に、地滑り・氾濫などが予想される不安定な箇所は選定しないこととしており、洪水防止、浸食防止
機能への依存度は「小さい(Low)」と評価しました。
評価理由
地震・津波
九州では、30年以内に3%以上の地震発生が予想される直下断層として「福智山断層帯」「警固断層帯」「日奈久断層帯」「雲仙断層群」があります。また、
沿岸では、日向灘(M7.0〜7.5程度が80%程度)、南海トラフ(M8〜9程度が70%〜80%)、安芸灘〜伊予灘〜豊後水道(M6.7〜7.4程度が4
0%程度)において、地震とそれに伴う津波のリスクがあります。また、海外においても地震とそれに伴う津波のリスクがあります。
LNG燃料調達・火力発電一般水力・送配電におけるリスクは「大きい(High)」と評価していますが、原子力発電は対策工事を実施しており「非常に小さ
い(VeryLow)」と評価しています。
くろまる 自然資本関連のリスクと機会
くろまる 自然資本関連のリスク
事業における自然資本関連の影響もしくは依存の程度が大きい(「大きい(High)」「非常に大きい(Very High)」)と評価した項目を対象に、リスクのカテゴリーの分類を
行ったうえで財務への影響を評価しました。燃料調達においては、燃料価格の上昇によるコスト増加リスクがあると評価しました。発電所の操業においては、法令や地域との
協定等を遵守しており自然資本を棄損するリスクを低減出来ている一方で、九州は地理的に気候変動に伴う災害の激甚化の影響を受け易く* 、台風や線状降水帯による水害
リスクがあります。石炭火力発電への規制強化時には、燃料費増加等のリスクがあります。また、九州やその周辺には、30年以内に3%以上の地震発生が予測されるトラフや
断層などがあり、地震・津波の被災リスクが想定されます。
* 九州は東シナ海からの偏西風を直接受ける島であり、線状降水帯が発生して大雨・洪水の被害を受けることがあります。また、日本の他の地域と比べて台風が上陸する頻度も高くなっています。
くろまる 自然資本関連の機会
九電グループは、以下のような事業機会を捉え、生物多様性に関する新たな世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の2030年グローバルターゲットの
各目標に向けて、取り組んでまいります。
事業における自然資本関連のリスクと機会を整理しました。(TNFDフレームワークのコアグローバルメトリクスとして、資本・資産・売上高等とリスク・機会の指標設定が推奨
されていますが、網羅的なデータの可用性を踏まえ、今回は対象外としました。)
〔財務影響評価基準〕 レベルI:10億円未満、レベルII:10億円〜100億円、レベルIII:100億円〜
生物多様性枠組みの項目 九電グループの取組み
目標3 保全 30by30アライアンスへ加盟・自然共生サイト認定審査へ申請中(ESGデータブッ
ク2023p20)
目標4 絶滅リスク 環境アセスメントの実施(ESGデータブック2023p17,18)
目標7 廃棄物 廃棄物の適正処理(ESGデータブック2023p22)
サーキュラーパーク九州の事業化(ESGデータブック2023p22)
目標8 気候変動 再生可能エネルギーの推進(ESGデータブック2023p9〜11)
安全性の確保を大前提として、原子力発電を最大限活用・熱効率の高い火力発電
所を最大限活用(ESGデータブック2023p13)
目標9 野生種の管理 環境アセスメントを実施(ESGデータブック2023p17,18)
「九電みらいの森プロジェクト」の実施(ESGデータブック2023p19)
生物多様性枠組みの項目 九電グループの取組み
目標10 生産システムの構築 J-クレジット創出支援・活用事業(ESGデータブック2023p16)
FSC®(Forest Stewardship Council®(森林管理協議会)・本部ドイツ)
認証材の生産(ESGデータブック2023p20)
サーモン養殖事業(ESGデータブック2023p49)
目標11 自然の寄与(NCP*)を
回復・維持・強化
坊ガツル湿原一帯での環境保全活動(ESGデータブック2023p19)
目標15 依存・影響の評価・開示 TNFDフレームワークに則った情報開示
目標21 データ・情報の提供 「九電グループ ESGデータブック」の公表
目標22
目標23
意思決定への参画
ジェンダー平等
人権デュー・ディリジェンスの実施(ESGデータブック2023p60〜62)
しかく TNFDβ版v0.4で提示されたリスク分類に基づくリスク
リスク分類 リスク種別 リスク概要 財務への影響 財務影響火力発電石炭燃料調達
物理的リスク
急性リスク 鉱山操業に伴う陸域土地改変による地滑りや地盤沈下、火災発生。
世界的な石炭価格の上昇による収支悪化。 レベルII
慢性リスク
鉱山操業に伴う陸域土地改変による陸域生態系の劣化・分断、外来種の侵入、地域の植生や植生環境への悪影響。
鉱山での過剰な水利用による帯水層の枯渇。干ばつの厳しさや頻度の増加による鉱山操業への支障。鉱山操業に
よる温室効果ガスの排出、有毒物質の大気放出、植生や土壌への悪影響、種の移動による生態系の変化。
移行リスク 法規制リスク
鉱山における慢性リスクの各項目への対策費の負担発生。
石炭の採掘過程を含む間接分の温室効果ガス排出について炭素費用の負担発生。発電
物理的リスク
急性リスク 地震・津波による火力発電所の設備損壊・停止。 復旧費用と代替電源の確保費用。 レベルII
慢性リスク 運転による温室効果ガスの排出。 賦課金や税金が導入された場合の石炭火力の
発電原価上昇や、LNG火力での代替による燃
料費の増加。
レベルIII
移行リスク 法規制リスク
石炭火力発電所の運転を規制するために賦課金や税金が導入された場合、運転に伴い排出される温室効果ガス
に対して費用負担が発生。石炭火力発電所の運転が規制される。LNG燃料調達物理的リスク
急性リスク
水の枯渇によるガス田の操業停止。有毒物質の偶発的な流出による環境への負の影響。汚染物質の偶発的な流出
による周囲の希少生物への負の影響。地震・津波によるLNG出荷設備の損壊、出荷不能。 世界的なLNG価格の上昇による収支悪化
なお、複数のプロジェクトから長期契約により
LNGを調達しており、財務への影響は一定程
度抑えられる。
レベルII
慢性リスク
陸域生態系、淡水生態系、海洋生態系への悪影響。汚染物質の排出により、底生植物や淡水植物が枯れる。汚染物
質の偶発的な流出による周囲の希少生物への負の影響。廃棄物を適切に処理せず、周辺環境を汚染。
移行リスク 法規制リスク 有害物質を排出したことにより現地政府が当社の調達先に対して操業停止命令。発電
物理的リスク 急性リスク 地震・津波による火力発電所の設備損壊・停止。 復旧費用。 レベルII原子力発電燃料調達物理的リスク
急性リスク ウラン採掘に伴う陸域の土地改変による地滑りや地盤沈下、火災発生。 世界的なウラン価格の上昇による収支悪化。
原子力発電コストに占めるウラン価格の割合
は小さく、財務的な影響を及ぼすほど大きな
影響がある可能性は低いため、財務リスクは
法規制リスクにて評価。
レベルII
慢性リスク
鉱山操業に伴う土地改変による陸域生態系の劣化・分断、外来種の侵入、地域の植生や植生環境への悪影響。鉱山
での過剰な水利用による帯水層の枯渇。干ばつの厳しさや頻度の増加による鉱山操業への支障。鉱山操業による
温室効果ガスの排出、有毒物質の大気放出、植生や土壌への悪影響、種の移動による生態系の変化。
移行リスク 法規制リスク ウランの採掘過程を含む間接分の温室効果ガス排出について炭素費用の負担発生。
水力発電 物理的リスク 急性リスク 洪水や地震等による水力発電所の設備損壊・停止。 復旧費用と代替電源の確保費用。 レベルII
送配電 物理的リスク 急性リスク
台風の強風に伴う倒木等により、電柱の折損・倒壊や電線の断線から停電に至る。 復旧費用。 レベルII
南海トラフ地震によって、大分・宮崎地区を中心に設備が損壊し、大規模停電が発生。 復旧費用。 レベルIII
*NCP: Nature Contributions to People

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