九州電力 総合研究所
Annual Report 2019
2019年度 総研アニュアルレポート
九州電力 総合研究所
Annual Report 2019 目次
総合研究所の将来ビジョン
技術開発の基本方針
組織情報(注記)
技術開発の実施状況
表彰実績及び保有特許
知的財産への取組み
技術コンサル及び設備レンタル実績
【各研究グループ紹介】(注記)
くろまる 化学・金属グループ
くろまる ネットワーク技術グループ
くろまる 系統高度化グループ
くろまる 社会インフラグループ
くろまる 低炭素化技術グループ
くろまる 地域エネルギーシステムグループ
くろまる 生物資源研究センター 農業電化グループ
【特集(共創推進グループ)】
くろまる バイオマス混合新燃料開発研究
くろまる 年間を通じたイチゴ栽培技術の
見える化を検証
(注記)2020年7月のグループ編成見直しを反映した形で制作しています
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総合研究所の将来ビジョン
〜2019年4月1日 制定
研究・技術開発を通じ、
『技術』を、「きずき」、「みがき」、
「つなぐ」ことで、
お客さまと共に新たな価値を創ります
くろまる 技術を「きずき」、確固たる基盤をつくりつづけます
くろまる 技術を「みがき」、変革にも迅速かつ柔軟に対応しつづけます
くろまる 技術を「つなぎ」、新たな価値を創造しつづけます
<総合研究所の将来ビジョン 制定の目的>
取り巻く環境が大きく変化する中、
「九電グループ経営ビジョン」を踏まえ
総合研究所員・外部パートナーが
同じベクトルで価値共創の実現を
進めていくために、「将来のありたい姿(想い)」
を共有する必要があると考え、
『総合研究所の将来ビジョン』を策定
- 02 -
技術開発の基本方針
しかく持続的な成長を支える先進技術開発への挑戦
中長期的な観点から、九電グループ事業基盤の維持・強化及び持続的な成長に
繋がる先進技術の開発に挑戦
既存事業領域 成長事業領域
しかく各事業部門の事業基盤を支える
技術ソリューションの推進
しかく九電グループの成長に繋がる
イノベーションの創出
各事業部門・グループ会社との連携を強化し、
エネルギーの安定供給とコスト低減を基軸とした
ソリューションをスピーディーに創出
革新的技術の活用、技術マーケティング等に
より九電グループの成長及び地域社会の発展
に繋がるイノベーションを創出
しかく基盤技術の維持・向上と発展
将来(先進)技術領域
ソリューション提供の源泉となる基盤技術(技術力・設備)の維持・向上と発展
しかく果敢に挑戦し続ける人、成長を実感できる職場づくり
o九電グループの連携を強化し、各事業部門の事業基盤を支える
技術ソリューションのスピーディな創出に取り組む
o革新的技術の活用、技術マーケティング等により、九電グループ
の成長に繋がるイノベーションを創出
o九電グループの持続的な成長を支える先進技術の開発に挑戦
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組 織 情 報
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総合研究所は、電気事業を中心とした「既存事業領域の事業基盤強化」と
新たな事業・サービス提供など「成長事業領域における収益拡大」に資する
技術開発を推進しており、『九電グループ経営ビジョン2030』の実現に
向け、成長事業領域の技術開発や昨今の社内外の環境変化等へ迅速・的確に
対応するため、2020年7月1日にグループ編成を見直しました。
新たな体制となりました「九州電力(株)総合研究所」を引き続き、宜しく
お願いします。
くろまる 2020年7月グループ編成見直し
見直し前 新体制(2020年7月〜)
総合研究所長
:廃止 :設置
<見直し内容>
総合研究所長
生物資源研究センター
生物資源G
(センター長兼務)
研究企画G(副所長兼務)
イノベーション推進G
(副所長兼務)
化学・金属G
ネットワーク技術G
系統高度化G
土木G
エネルギー応用技術G
エネルギー開発G
生物資源研究センター
農業電化G
(センター長兼務)
社会インフラG
地域エネルギーシステムG
共創推進G(副所長兼務)
化学・金属G
研究企画G(副所長兼務)
ネットワーク技術G
系統高度化G
低炭素化技術G
研究企画・管理、共創推進(2グループ)
研究企画グループ 共創推進グループ
研究実施(7グループ)
化学・金属グループ 社会インフラグループ
ネットワーク技術グループ
くろまる中長期技術開発戦略
くろまる総合研究所の業務運営統括
くろまる研究計画・管理 くろまる人材育成
くろまる研究成果広報
くろまる化学分析・評価技術 くろまる腐食、防食技術
くろまる環境保全・修復技術 くろまる寿命評価技術
くろまる非破壊検査技術 くろまる健全性評価技術
低炭素化技術グループ
くろまる変電・送電・配電設備保全技術
くろまる雷害対策関連技術
くろまる絶縁・高電圧関連技術
くろまるグループ会社や他事業者等との共創プロジェクト
の企画立案、推進
くろまる全社の知的財産出願、管理、活用促進
くろまる植物工場プロジェクト
くろまるバイオマス混合新燃料開発プロジェクト
くろまる社会インフラ(土木建設設備等)の構造評価・
保全高度化技術
くろまるコンクリート関連技術
くろまるエネルギー貯蔵技術、熱利用技術
くろまる電化推進技術(ヒートポンプ、EVインフラ技術等)
くろまる水素、CCUS、バイオマス、太陽光関連技術
系統高度化グループ 地域エネルギーシステムグループ
くろまる電力の安定供給・品質維持に関する技術
くろまる高度な系統解析技術
くろまるエネルギーマネジメント技術、エネルギー関連
情報利活用技術
くろまる次世代配電技術(マイクログリッド等)関連技術
くろまる地域エネルギーシステム構築コンサルティング支援
農業電化グループ
生物資源研究センター
くろまる農業分野の省エネルギー・電化促進技術
くろまる微生物利用技術
くろまる農業電化コンサルティング支援
くろまる各グループの主な担当分野
くろまる沿 革
1951年 九州電力(株)設立
1952年2月 技術研究所設置
1956年6月 総合研究所へ名称変更
1965年9月 薬院から現在地(福岡市南区塩原)へ移転
1992年6月 現在の本館竣工(旧館は実験棟に改造)
2010年7月 技術本部設置(総合研究所、土木部)
2017年4月 テクニカルソリューション統括本部設置
(情報通信本部、土木建築本部、総合研究所)
しかく総合研究所
しかく生物資源研究センター
1946年 九州配電(株)農業電化指導農場設立
1951年 九州電力に農業電化試験場を移管
1962年 前原町に農業電化試験場前原分場を開設(2014閉鎖)
1986年 農業電化試験場を佐賀支店から総合研究所へ統合
2001年 生物資源研究センターへ名称変更
福岡市南区塩原2丁目1-47
佐賀市高木瀬東1丁目10-1
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<産学官連携実績(代表件名)>
既存事業領域 成長事業領域
国プロ
・バイオマス混合新燃料開発研究
・再エネ大量導入時の周波数及び系統
安定性の維持に資する研究
・需要家側エネルギーリソースを活用
したバーチャルパワープラント構築
実証事業(V2G実証事業)
大 学
・電力用ポリマー機材の劣化実態に関
する研究
・雷エネルギーの把握による効果的な
雷被害対策に関する研究
・ガス絶縁機器の内部状態推定に係る
基礎研究
・太陽光発電の大量連系に伴う配電系
統の電力品質に関する研究-グループ会社
メーカー 他
・AI(機械学習)による導水路トン
ネル覆工背面空洞調査の高度化に関
する研究
・電気バス向け大容量充放電器の開発
技術開発の実施状況
このうち、大学やグループ会社、メーカーとの共同研究を「33件」実施し、技術的課
題の迅速な解決に向け、オープンイノベーションを活用した研究開発に取り組みました。
総合研究所では、九電グループの競争力強化のため、既存事業領域での事業基盤強化と
成長事業領域での収益 拡大 を両 輪とした 技術開発を推進しており、2019年度は「52
件」の研究に取り組みました。そのうち、既存事業領域の研究が約8割の「41件」、成長
事業領域の研究テーマは「11件」で、着実に成果を上げています。
【 既存事業領域(41件) 】 【 成長事業領域(11件) 】
<事業領域別研究カテゴリー分類>
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コスト削減
21 件
安定供給
14 件
その他
(調査研究等)
6 件
エネルギーマネジメント
1 件
需要創出
3 件
農業2件ICT1件その他
(調査研究等)
4 件
2019年度は、これまでの研究成果を学会や専門誌等で「29件」発表しました。そのう
ち7件は、研究内容や成果が評価され、表彰を受賞することができました。
ま た 、 「 14 件 」 の 特 許 出 願 と 「 12 件 」 の 特 許 を 取 得 し ま し た 。 デ ー タ 保 護 シ ス テ ム
(Zero Drive)やプラズワイヤー、無停電工法など、これまでに得られた特許・ノウハウ
は、他企業でもご活用いただいており、ライセンス料として当社収益にも貢献しています。
現在、保有特許の有効活用、並びにお客さまのニーズを掘り起こし、収益拡大や地域貢献
に資する技術開発を行うため、自治体等が主催する「知財マッチング(地場企業への開放特
許の紹介)」へ参加しています。
<社外公表実績:29件>
<表彰受賞実績:7件>
<特許取得・出願実績>
<取得した特許件名一覧>
〔参考〕2019年度末九州電力特許保有件数:国内186件、海外80件
項 目 主な実績
学会発表 電気学会、電気・情報関係学会、日本鉄鋼協会 など
専門誌執筆 スマートグリッド、電気設備学会論文誌
項 目 内 容
社内表彰
業務改革表彰
(健闘賞) 1件
所長表彰
(結果表彰)2件、(プロセス表彰)4件
国 内 海 外 国内・海外合計
取得件数 3件 9件 12件
出願件数 10件 4件 14件
特許の名称 共同出願人 登録番号 登録日
国 内
雷電荷量の推定方法およびシステム 国立大学法人静岡大学 6504662 2019年4月5日
ダム運用管理システム、プログラム送
信装置、ダム管理方法及びプログラム
当社単独 6559379 2019年7月26日
無効電力補償装置 (株)キューヘン 6668128 2020年2月28日海外
ドイツ 材料片掬取装置 神戸工業試験場 602006058163.7 2019年7月31日
イギリス 材料片掬取装置 神戸工業試験場 1995583 2019年7月31日
フランス 材料片掬取装置 神戸工業試験場 1995583 2019年7月31日
イタリア 材料片掬取装置 神戸工業試験場 502019000074888 2019年6月19日
チェコ 材料片掬取装置 神戸工業試験場 1995583 2019年6月19日
ドイツ
石炭をチャー・原料ガス製造と発電に
利用する複合システム
当社単独 112012001242 2019年10月10日
イギリス 管体の残留応力改善方法 三菱重工業(株)、北海
道・東北・東京・中
部・北陸・関西・中
国・四国電力(株)、電源
開発(株)、日本原電(株)
2119799 2019年9月4日
フランス 管体の残留応力改善方法 2119799 2019年9月4日
韓国 電源装置(BMCPU) 当社単独 10-2053785 2019年12月3日
表彰実績及び保有特許
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技術開発を効率的・効果的に進めていくためには、お客さまのニーズの把握から、技術
開発成果の活用までのサイクルを回していく知的財産マネジメントが重要になります。
そのため、九電グループの収益拡大や地域貢献に資する技術開発のため、下記の2点を
強化しています。
くろまる 収益拡大や地域貢献に向けた知的財産面からの取組み
1 お客さまのニーズ(潜在的課題)の掘り起こし
2 九電グループ外への積極的活用提案(知的財産マッチングへの参画)
<1 お客さまのニーズの掘り起こし>
<2 知財マッチングへの参画>
知的財産への取組み
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支 店2017 また、事業活動において事前に他社の知財を侵害していないか確認することは、CSR
経営を行う上で重要と考えております。
総合研究所では、定期的に知的財産に関する研修を実施していきます。
<知的財産における企業価値向上に向けた取組み>
<日常業務における知的財産リスク>
知的財産(知財)には、技術開発の成果等を保護する特許権、商品やサービス名称等を
保護する商標権、音楽や絵画、ソフトウェアを保護する著作権などが存在します。
これらの知財は、企業の持続的な価値向上に寄与することから、企業防衛のために適切な
対応を行うことが大切です。(当社の知財は総研で一元管理しています。)
(参考) 知的財産とは
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【直接的効果】
【間接的効果】
【他者の権利を侵害】
技術コンサル及び設備レンタル実績
【参考】主な技術コンサルティングのご紹介
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総合研究所では、お客さまからの依頼を受け、2019年度に「2件」の技術コンサル
ティングを実施しました。
くろまる 技術コンサルティング
件 名 内 容 担当グループ
画像処理技術に関するコンサ
ルティング
画像処理技術に関する講習会への
講師派遣
ネットワーク技術
グループ
地熱発電所におけるタービン
ロータの健全性評価の検証
地熱発電所のタービンロータの健
全性評価の妥当性を検証
化学・金属グループ
<技術コンサルティング実績:2件>
担当グループ メニュー 概 要
共通
講師派遣 電力分野全般の基礎・専門技術に関する講師派遣
技術調査 専門的な技術分野に関する技術情報等の調査提供
化学・金属
グループ
潤滑油管理・評価 機器潤滑油や作動油等の性状評価
化学分析・評価
大気、水質、材料、燃料等の化学分析、評価
(状態原因推定・対策方法の提案など)
腐食、防食コンサ
ルティング
金属材料の腐食環境の分析・評価から、最適な防食方
法の提案及び経年管理
金属材料損傷原因
調査
高度な分析装置や解析技術を用いた金属材料損傷破面
の詳細分析と損傷原因の推定
高温設備用金属材
料の劣化・余寿命
診断
ボイラ等の高温設備用金属材料のレプリカ採取による
組織(クリープボイド、析出物)検査、採取サンプル
材を使用したクリープ破断試験等による劣化・余寿命
診断
ネットワーク
技術グループ
電力設備用品の測
定試験
電力設備用品の各種電気特性等に関する試験(加速劣
化、高電圧破壊、耐電圧、動作開始電圧)
生物資源研究
センター
農業電化
グループ
農業分野への電気
利用技術に関する
コンサルティング
• ヒートポンプを適用した作物の暖冷房栽培技術、好
適な低温処理条件等の究明、効率的な電照・補光栽
培、農産物の貯蔵技術などのコンサルティング及び
試験・研究
• 施設園芸や養液栽培に関する専門技術のコンサル
ティング及び養液栽培装置の導入設計、栽培技術の
指導
• 農作物毎の好適な養液栽培技術(栽培手法、栽培環
境条件)に関する試験・研究
(注記)その他の技術コンサルティングについてはホームページを参照ください。
http://www.kyuden.co.jp/service_tech_consulting_index.html×ばつ1,000mm
【参考】主な研究設備レンタルのご紹介
総合研究所では、お客さまからの依頼を受け、「10件」の研究設備レンタルを実施
しました。
くろまる 研究設備レンタル
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設備・装置名 件数
振動試験装置 3件
土木試験設備 2件
傾斜平板耐トラッキング試験装置 2件
赤外スペクトルライブラリー ほか 1件
恒温恒湿槽 1件
植物工場実証試験設備 1件
<研究設備レンタル実績:10件>
(注記)その他の研究設備についてはホームページを参照ください。
http://www.kyuden.co.jp/service_tech_rental_index .html
【主な用途】
電力機器、一般産業用・民生用電子機器及び自動車部品
・電装品に対する各種規格試験及び信頼性評価試験
【装置概要・特徴】
•供試品は一度取付けるだけで垂直・水平の振動試験が可能
•加振力:19.6kN/周波数範囲:5〜100Hz
•最大振幅:51mm
•最大積載重量:250kg(冶具を含めた量)×ばつ1m
•正弦波試験のみ(ランダム波、ショック波は試験不可)
振動試験装置
恒温恒湿槽
・電力品質の維持向上及びコスト抑制に資する電力設備保全技術の高度化
・精密で効率的に発電設備の健全性を確認するための設備診断技術の高度化
・現場設備のトラブルや不具合に対応した原因調査や対策の検討
安価で安定した電気をお届けするため、当グループでは、当社事業基盤を支え
るボイラやタービンなどの電力設備の保全や健全性確認など、運用・保守・検
査・診断技術の高度化に関する研究に取組むほか、これまで培ってきた金属材料
等の診断・解析技術を活用し、現場設備のトラブルや不具合発生時には、損傷原
因の調査や対策の検討など現場に密着した活動に取組んでいます。
くろまる 主な研究テーマ
内燃力発電プラントにおける
ヒドラジン(注記)1を含まない水処理法を検証
くろまる 目的・背景
くろまる 成果の概要
くろまる 今後の展開
(図、写真)
腐食試験片(注記)2
化学・金属グループ
くろまる グループ紹介
(注記)1 ヒドラジンの
関係法令
・安衛法における
健康障害を防止
するための指針
の化学物質
・毒物及び劇物取
締法における劇物・水質汚濁防止法
における指定物質・化審法における
優先評価化学物
質など
(2020.8現在)
(注記)2 腐食試験片
・金属材料の腐食
速度を求めるた
めに使用する金
属片(写真では
ほとんど腐食し
ていません)
九州には離島が多く、島内の電力供給のほとんどを内燃力発電プ
ラントが行っています。そこでは、発電用ディーゼルエンジンの冷
却水と排ガスの排熱を回収するボイラの給水に腐食防止のためヒド
ラジンを用いた水処理を行っています。このヒドラジンは、ロケッ
ト燃料やエアバックなど広い分野で使用されていますが、発がん性
の疑いがあることから、作業員の安全衛生向上のために、ヒドラジ
ンを含まない水処理法に取り組みました。
水処理の目的は、設備を構成する金
属材料の腐食防止と化学成分が濃縮し
析出することによる熱交換率低下防止
です。ヒドラジンを含まない複数の水
処理法を机上検討し、選定したものに
ついて、実際の設備を用い試験した結
果、ヒドラジン使用時と同等の良好な
効果が得られました。
その他の内燃力発電プラントへ展開
することにより、作業員の安全衛生向
上と電力の安定供給維持に寄与してい
きます。
岡 寿則
研究担当者
内燃力発電プラント
- 12 -
・ケーブル、地中化設備、変電設備の劣化診断手法の開発
・架空送電鉄塔鋼管内面腐食の診断装置の開発
・配電設備巡視における画像認識、AI技術の活用
送電・変電・配電設備保全高度化技術、電力設備の雷害対策や絶縁などの高電
圧技術をコア技術として、電力設備の高経年化対策やコスト低減、業務の省力化
などの課題解決に向けた研究開発を実施しています。
また、ディープラーニングや機械学習、画像認識技術など、新技術の現場業務
への適用にも積極的に取組んでいます。
くろまる 主な研究テーマ
雷のエネルギー(雷電荷量(注記)1)計測システムの開発
くろまる 目的・背景
くろまる 成果の概要
くろまる 今後の展開
ネットワーク技術グループ
くろまる グループ紹介
(注記)2 雷害対策
電力設備への雷
の直撃を防止す
る架空地線や落
雷時の過電圧を
抑制する避雷器
による雷害対策
により、配電線
や送電線の損傷
を防ぐ対策を行
っています。
(注記)1 雷電荷量
電荷量とは通過
電流の積算値の
ことで、例えば
避雷器の場合な
ら、一定の電圧
(制限電圧)と
掛け合わせるこ
とで、処理エネ
ルギーに換算で
きます。
配電線や送電線の効果的な雷害対策(注記)2の確立をめざし、落雷時の
電流や電磁界を観測し、雷電荷量を推定する手法を開発しました。
(特許登録済み)
この推定手法を活かし、本研究では、雷電荷量を計算するシステム
を開発することで、雷被害の把握や雷害対策の効率化に貢献します。
雷電界測定装置から電界変化量を
計算する装置を開発し、気象や落雷
位置情報データと組み合わせて、雷
電荷量を計算するシステムを開発し
ています。
これにより、すでに配信されてい
る雷電流波高値に加え、雷電荷量の
データ提供が可能となります。
雷電荷量をリアルタイムで計測し、
配信するシステムを構築し、データ
の精度を検証します。また、雷電荷
量データを集めて分析することで雷
の地域特性などを明らかにしていき
ます。
高野 浩二
従来
今回開発
時間
電流値[kA]
雷電流
波高値
時間
:雷エネルギー[C]
(雷電荷量)
電流値[kA]
雷電流
波高値
研究担当者
- 13 -
・再エネ大量導入時の周波数及び系統安定性の維持に資する研究
【NEDO実証事業】
・再エネ大量連系系統の系統特性把握に関する研究
・V2G実証に関する研究
当社が将来に亘って担う「系統運用」を支える「高度な系統解技術」を当
グループの共通基盤技術とし、「電力の安定供給」と「電力品質の維持」に
関する技術開発と併せて、部門横断的な課題解決に取組んでいます。
V2G(注記)1制御システムを開発
くろまる 目的・背景
くろまる 成果の概要
くろまる 今後の展開
系統高度化グループ
くろまる グループ紹介
(注記)1 V2G
(Vehicle to
Grid)の略
(注記)2 需給調整市場
ゲートクローズ
後の需給ギャッ
プ補填、30分未
満の需給変動へ
の対応、周波数
維持のための調
整力の取引を行
う市場
今後の普及拡大が見込まれる電気自動車(EV)を電力需給バラ
ンスの調整に活用するため、EVに蓄電された電力を電力系統に逆
潮流させるV2G技術等について、技術検証を行っています。
6拠点・16台のEV充放電ス
テーション及び、複数拠点の
EVを遠隔で管理・制御するV2G
システムを構築しました。
実証試験の結果、福岡地区、
宮崎地区に分散したEVを制御
でき、制御指令に対して1分以
内に応動することを確認しまし
た。
実証事業の最終年度となる
2020年度は、需給調整市場(注記)2
への参入を目指し、多様なエネ
ルギーリソース(電気バス、蓄電
池、エコキュート)との連携試験
を行なっていきます。
研究担当者
古田 昭宏
榎本 孝史
鈴木 直人
尾造 宏之
くろまる 主な研究テーマ
- 14 -
くろまる 主な研究テーマ
社会インフラグループ
くろまる グループ紹介
既存のコンクリート構造補強工の改良案を開発
くろまる 目的・背景
くろまる 成果の概要
くろまる 今後の展開
(注記) FIT
再生可能エネル
ギー源を用いて
発電された電気
を、国が定める
価格で一定期間
電気事業者が買
い取ることを義
務付ける制度
当社では、既設の水力発電所のうち9か所を再開発する計画があ
り、FIT(注記)の「新設区分」の認定を得るために導水路(トンネル)を
カーボン格子筋とモルタル吹付で補強します。これまでの補強材
(格子筋)の設計値は、トンネルの横断方向(円周方向)の応力で
決まっており、奥行き方向(軸方向)に対して余裕があるため、そ
のコスト削減を目的に本研究を提案しました。
本研究では、カーボン格子筋を改
良し、カーボン格子筋とガラス格子
筋を直行させて組み合わせた、ハイ
ブリッドタイプの格子筋を考案しま
した。
トンネル奥行き方向にガラス格子
筋を配置することで設計の合理化に
よる材料コスト削減に加えて、導水
路奥行き方向への施工追従性向上の
成果も得ることが出来ました。
当社の導水路設備工事のみに限ら
ず、全国の水力発電設備の修繕や補
強に適用できるため、本工法の特許
取得と全国展開を目指します。
上野 貴行
池田 博嗣
研究担当者
ハイブリッド格子筋
試験施工の様子
高度成長期に建設・整備した電力インフラの老朽化が進むなか維持管理・更新
費用の増加が見込まれる一方で、設備保全にかける費用の抑制・平準化が求めら
れています。私たちのグループでは AI(人工知能)やロボット等の技術を活用し
てコスト負担が少ない設備の点検・診断技術の研究に取組んでいます。また、コ
ンクリート廃材等の資源を積極的に再生利用する技術確立を通して、持続可能な
社会構築に貢献します。
・AIを利用したトンネル覆工背面空洞の判定高度化システムを開発
・AIを利用した空調設備の故障予兆システムを開発
・コンクリート解体がらの有効活用(再生骨材等の製造)を開発
- 15 -
・電気バス向け大容量充放電器の開発
・地産地消型水素製造・利活用ポテンシャル調査
・蒸気ボイラ給水予熱特化型CO2 ヒートポンプの開発
当グループは低炭素化社会実現に向けた技術開発について、需要側と供給側の
両面から取組んでいます。需要側では、輸送部門での電気自動車充放電技術、業
務・産業部門でのヒートポンプ利用拡大等の電化促進、供給側では、再エネと組
合わせた水素の利活用や藻類バイオマス燃料等によるCO2 削減の技術開発に取
組んでいます。また、新技術調査として、カーボンリサイクルや電力貯蔵技術の
開発動向、電化促進技術等の調査も行っています。
くろまる 主な研究テーマ
低炭素化技術グループ
くろまる グループ紹介
石橋 弘次
電気バス向け大容量充放電器の開発
くろまる 目的・背景
くろまる 今後の展開
大型車(路線バスやトラックなど)向けの大容量充放電器を九電
グループで開発し、事業者の電気自動車導入を支援することで、運
輸部門の電化推進に取組んでいます。
電気バスと大容量充放電器を用
いて、電気バスの蓄電池を遠隔で
充放電制御して、電力需給バラン
ス調整への活用を検証します。
くろまる 目的・背景
谷口 怜翼
研究担当者
(注記) NEDO
「新エネルギー
・産業技術総合
開発機構」の略
称、経済産業行
政の一翼を担う
日本最大級の公
的技術開発マネ
ジメント機関
地産地消型水素製造・利活用ポテンシャル調査
(2020〜2021年度NEDO委託事業「水素社会構築技術開発事業/総合調査研究」)
水素はエネルギー安全保障と温暖化対策の切り札となりうるもの
と位置付けられ、水素社会実現に向け国レベルで開発が促進されて
います。本調査は、NEDO(注記)からの委託により、都市部での水素利
活用により再エネを最大限活用する地産地消モデルを検討し、低炭
素化の可能性検証、実証・実現に向けたアクションプランを策定す
ること
を目的
として
実施し
ます。
研究担当者
- 16 -
くろまる 主な研究テーマ
配電系統の電圧不平衡(注記)1現象の解明と対策
くろまる 目的・背景
くろまる 成果の概要
くろまる 今後の展開
くろまる グループ紹介
(注記)1 電圧不平衡
三相交流で、電
圧の大きさ等が
等しくない状況
で、三相モータ
等へ悪影響を及
ぼす
(注記)2 相互リアクタ
ンス
電線に電流が流
れることで他の
電線に生じるリ
アクタンス
メガソーラ発電所が末端に連系した配電系統で、逆潮流の増加に
伴う電圧不平衡拡大現象が発生しました。メガソーラ発電所は三相
PCSで構成されており、出力電流は平衡と考えられるため、電流が
平衡であっても電圧不平衡が生じる原因は、インピーダンスが不平
衡であるためと想定し、メカニズムの解明と対策の検討に取り組み
ました。
インピーダンス不平衡は、電線
相互の距離が作用する相互リアク
タンス(注記)2の不平衡が原因で生じる
と考えられます。この電圧不平衡
には、配電線路の亘長を3等分する
2か所で電線を入れ替える「撚架」
が対策として有効であり、潮流計
算による確認を経て、実際の配電
系統において効果を確認できまし
た。
今後も、配電系統の再エネの連
系量は増加することが予想されま
すので、再エネの積極的な受け入
れと電力品質の維持に資する研究
に取り組みます。
田中 俊生
研究担当者6.36.66.97.2
0 4 8 12 16 20 24
電圧[kV]撚架後の電圧
撚架のイメージa相b相c相a'aa'''a''b'bb'''b''c'cc'''c''L L L
地域エネルギーシステムグループ
・太陽光発電に起因したフリッカや電圧不平衡拡大等のメカニズムの解明
・九州V2G実証事業(主に需要家・リソース側)
・地域エネルギーシステム構築、運営に関する検討、調査
分散型電源の普及拡大に伴い、電力設備の効率的な運用、構築と電力品質維持
に向けた研究に取組むとともに、スマートグリッド実証試験等で培ってきた電力
系統運用に関する技術と、VPP実証事業にて培ったエネルギーリソースの活用技
術を融合し、エネルギーマネジメントサービスや地域マイクログリッドシステム
構築、運営事業への参入、実装に向けた検討に取組みます。6.36.66.97.2
0 4 8 12 16 20 24
電圧[kV]Vab Vbc Vca TM1 TM2
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撚架前の電圧
保全成功の
植物種
国、県の
希少種指定
フユノ
ハナワラビ
(鹿児島県)準危惧種
ハタザオ
ツルマメ
カワヂシャ
(国)準絶滅危惧種
(鹿児島県)準危惧種
・ヒートポンプ周年利用による省エネ・高効率生産技術の研究
・施設園芸へのヒートポンプ普及拡大に関する調査研究
・環境アセス重要種の保全・増殖に関する研究
生物資源研究センターは、1946年に九州配電(株)農事電化指導農場という
名称で発足し、1951年、九州電力(株) 電化試験農場として承継。その後の変
遷を経て現在に至ります。これまでヒートポンプの利用技術、省エネ技術、貯蔵
技術、植物の機能性等、時代の要請に対応した研究を推進してきました。
2020年7月、グループ名を農業電化グループに改め、引続き九州の重要な産
業である農業分野の成長・発展に寄与する研究に取組みます。
くろまる 主な研究テーマ
希少植物の保全技術を開発
くろまる 目的・背景
くろまる 成果の概要
くろまる 今後の展開
生物資源研究センター 農業電化グループ
くろまる グループ紹介
国や鹿児島県が保護を要する
希少種として指定する植物等で
あって、川内原子力発電所(鹿
児島県薩摩川内市)周辺におい
て確認されたものに対して、保
全技術の研究開発を実施してい
ます。
当センターにおけるハウス栽
培による繁殖後、現地への植栽
を継続してきた。これにより、
4種の希少植物の自然繁殖に成
功し、同植物種の保全対策を確
立しました。
まだ現地での自然繁殖が確実
でない希少植物種等に対して、
繁殖条件の解明、並びに植栽を
進めています。
研究担当者
オオバノ
トンボソウ
ショウロ
【保全対策が未確立の植物種等】
藤原 亮太
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【特集1】バイオマス混合新燃料開発研究
(共創推進グループ)
くろまる 目的・背景
くろまる 成果の概要
くろまる 今後の展開
日本では2030年における温室効果ガスを26%削減、2050年ま
でに80%削減という目標を掲げており、火力発電所のCO2排出量
低減は重要な課題です。
環境負荷低減と経済性の両立を目指した化石燃料を代替する燃料
として、褐炭(低品位な石炭)と木質バイオマスを活用した「バイ
オマス混合新燃料」の開発に取組んでいます。
CO2を吸収し成長する木質バイオマスによる発電は「京都議定
書」における取扱い上、CO2を排出しないものとされており、石炭
の代替利用で地球温暖化防止に貢献します。
国の支援(注記)のもと、石炭火力発電所で使用するためのバイオマス混
合新燃料の製造技術を開発しました。
・木質バイオマスを加工(半炭化)したものと褐炭を改質
(乾燥、乾留等)したものを混合成型して製造
・既設の大型石炭火力発電所の大幅な改造を施すことなく
使用が可能
また、2019年4月には、オーストラリアのビクトリア州と
技術開発や資源利活用に向けた協力関係を締結しました。
既存の石炭火力発電所での運用が可能で、かつ利用率向上が見込
まれるバイオマス利用技術について、適用性調査や経済性調査を踏
まえ、実証研究に向け準備しています。
安達 貴弘
江崎 博文
写真
写真
石原 雄太
犬丸 哲朗
写真
研究担当者
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(注記) 国の支援
国立研究開発法
人 新エネルギ
ー・産業技術総
合開発機構
(NEDO)の委
託事業
【特集2】年間を通じたイチゴ栽培技術の見える化を検証
(共創推進グループ)
くろまる 目的・背景
くろまる 成果の概要
くろまる 今後の展開
総合研究所の強みである農業電化で培ってきた技術・知見を活か
し、先進技術を活用して得た高度生産の技術、ノウハウ(暗黙知)
を見える化(形式知化)することで、既存農家の生産性向上(収益
拡大)や農業への若年層の新規参入等を支援し、九州地域の農業活
性化につなげます。
出木場 秀作
田中 要
研究担当者
田川 直
嘉村 孝
福岡県朝倉市に植物工場実証規模試験ハウスである「上寺いちご
園」(育苗棟1棟、生産棟2棟)を建設、2019年4月から栽培を開始
しました。
年間を通じたイチゴの栽培による生産性向上(収量、品質)の可
能性について検証を開始。栽培コンサルタントの指導のもと、栽培
スキル、ノウハウの知見を蓄積しながら、栽培実証初年度は、収量
目標4t/10aに対し4.3tを達成しました。
収穫したイチゴは、地元の道の駅
や現地直売会で販売を行いました。
年間を通じた安定生産と高品質イチゴの栽培検証を継続し、最終
的に6t/10aを目指します。
蓄積した栽培スキル、ノウハウ(定点カメラによる生育観察、環
境制御と植物生育データの突合など)を検証しながら、農業関係者
へのニーズ調査、設備・運営面でのコスト低減方策を検討し、農業
電化の普及とスマート農業サービスの提供につなげます。
生産棟A
実証規模試験ハウス「上寺いちご園」
ハウス内には温度等の環境制御を
行うユニットが並ぶ
ハウス内のイチゴ栽培の様子
生産棟B
育苗棟
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MEMO
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佐賀市高木瀬東1丁目10-1
くろまるJR佐賀駅から佐賀市営バス(32番)乗車、
東高木バス停にて下車、徒歩10分
くろまる佐賀大和インターから6km、車で15分
くろまるJR佐賀駅から3km、車で10分
福岡市南区塩原2丁目1-47
くろまる福岡空港から地下鉄博多駅にて下車
JR博多駅から西鉄バス(47、48、48-2番)乗車、
清水四丁目バス停にて下車、徒歩1分
くろまる天神から西鉄バス(W1〜4番)乗車、
南市民センター前にて下車、徒歩5分
くろまる西鉄大橋駅から西鉄バス(47、48、48-2、63番)乗車、
清水四丁目にて下車、徒歩1分
くろまるJR竹下駅で下車、徒歩10分
くろまるタクシー JR博多駅から15分、福岡空港から25分
南市民
センター前
バス停
九州電力 総合研究所 Annual Report 2019 2020年10月発行
〔作成部署・お問合せ先〕
九州電力株式会社 テクニカルソリューション統括本部
総合研究所 研究企画グループ
〒815-8520 福岡市南区塩原二丁目1番47号
T E L:092-541-3090(代表)
Email:gyoumukanri_souken@kyuden.co.jp
パナソニック

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