九州電力(株) 総合研究所
Annual Report 2020
2020年度 総研アニュアルレポート
九州電力(株) 総合研究所
Annual Report 2020 目次
総合研究所の将来ビジョン
技術開発の基本方針
組織情報
技術開発の実施状況
【研究グループ紹介】
くろまる 共創推進グループ
くろまる 化学・金属グループ
くろまる ネットワーク技術グループ
くろまる 系統高度化グループ
くろまる 社会インフラグループ
くろまる 低炭素化技術グループ
くろまる 地域エネルギーシステムグループ
くろまる 生物資源研究センター 農業電化グループ
技術コンサルティング及び研究設備レンタル
社外発表及び社外表彰
知的財産の保有と活用に向けた取組み
・・・・・・・・・ 02
・・・・・・・・・・・・ 03
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 04
・・・・・・・・・・・・ 05
・・・・・・・・・・・ 07
・・・・・・・・・・・ 09
・・・・・・・・ 11
・・・・・・・・・・・ 13
・・・・・・・・・・ 15
・・・・・・・・・・ 17
・・・・・ 19
・・ 21
・・23
・・・・・・・・・・・24
・・・・・25
- 01 -
研究・技術開発を通じ、
『技術』を、「きずき」、「みがき」、
「つなぐ」ことで、
お客さまと共に新たな価値を創ります
くろまる 技術を「きずき」、確固たる基盤をつくりつづけます
くろまる 技術を「みがき」、変革にも迅速かつ柔軟に対応しつづけます
くろまる 技術を「つなぎ」、新たな価値を創造しつづけます
<総合研究所の将来ビジョン 制定の目的>
取り巻く環境が大きく変化する中、
「九電グループ経営ビジョン」を踏まえ
総合研究所員・外部パートナーが
同じベクトルで価値共創の実現を
進めていくために、「将来のありたい姿(想い)」
を共有する必要があると考え、
『総合研究所の将来ビジョン』を策定(2019年4月)
- 02 -
総合研究所の将来ビジョン
技術開発の基本方針
しかく持続的な成長を支える先進技術開発への挑戦
中長期的な観点から、九電グループ事業基盤の維持・強化及び持続的な成長に
繋がる先進技術の開発に挑戦
既存事業領域 成長事業領域
しかく各事業部門の事業基盤を支える
技術ソリューションの推進
しかく九電グループの成長に繋がる
イノベーションの創出
各事業部門・グループ会社との連携を強化し、
エネルギーの安定供給とコスト低減を基軸とした
ソリューションをスピーディーに創出
革新的技術の活用、技術マーケティング等に
より九電グループの成長及び地域社会の発展
に繋がるイノベーションを創出
しかく基盤技術の維持・向上と発展
将来(先進)技術領域
ソリューション提供の源泉となる基盤技術(技術力・設備)の維持・向上と発展
しかく果敢に挑戦し続ける人、成長を実感できる職場づくり
o九電グループの連携を強化し、各事業部門の事業基盤を支える
技術ソリューションのスピーディな創出に取り組む
o革新的技術の活用、技術マーケティング等により、九電グループ
の成長に繋がるイノベーションを創出
o九電グループの持続的な成長を支える先進技術の開発に挑戦
- 03 -
組織情報(各グル ープの 主な担 当分野 )
研究スタッフ(2グループ)
研究企画グループ 共創推進グループ
研究実施(7グループ)
化学・金属グループ 社会インフラグループ
ネットワーク技術グループ
くろまる中長期技術開発戦略
くろまる総合研究所の業務運営統括
くろまる研究計画・管理 くろまる人材育成
くろまる研究成果広報
くろまる化学分析・評価技術 くろまる腐食、防食技術
くろまる環境保全・修復技術 くろまる寿命評価技術
くろまる非破壊検査技術 くろまる健全性評価技術
低炭素化技術グループ
くろまる変電・送電・配電設備保全技術
くろまる雷害対策関連技術
くろまる絶縁・高電圧関連技術
くろまるグループ会社や他事業者等との共創プロジェクトの
企画立案、推進
くろまる全社の知的財産出願、管理、活用促進
くろまる植物工場プロジェクト
くろまるバイオマス混合新燃料開発プロジェクト
くろまる社会インフラ(土木建設設備等)の構造評価・
保全高度化技術
くろまるコンクリート関連技術
くろまるエネルギー貯蔵技術、熱利用技術
くろまる電化推進技術(ヒートポンプ、EVインフラ技術等)
くろまる水素、CCUS、バイオマス、太陽光関連技術
系統高度化グループ 地域エネルギーシステムグループ
くろまる電力の安定供給・品質維持に関する技術
くろまる高度な系統解析技術
くろまるエネルギーマネジメント技術、エネルギー関連情報
利活用技術
くろまる次世代配電技術(マイクログリッド等)関連技術
くろまる地域エネルギーシステム構築コンサルティング支援
農業電化グループ
生物資源研究センター
くろまる農業分野の省エネルギー・電化推進技術
くろまる微生物利活用技術
くろまる農業電化コンサルティング支援
くろまる沿 革
1951年 九州電力(株)設立
1952年2月 技術研究所設置
1956年6月 総合研究所へ名称変更
1965年9月 薬院から現在地(福岡市南区塩原)へ移転
1992年6月 現在の本館竣工(旧館は実験棟に改造)
2010年7月 技術本部設置(総合研究所、土木部)
2017年4月 テクニカルソリューション統括本部設置
(情報通信本部、土木建築本部、総合研究所)
しかく総合研究所
しかく生物資源研究センター
1946年 九州配電(株)農業電化指導農場設立
1951年 九州電力に農業電化試験場を移管
1962年 前原町に農業電化試験場前原分場を開設(2014閉鎖)
1986年 農業電化試験場を佐賀支店から総合研究所へ統合
2001年 生物資源研究センターへ名称変更
福岡市南区塩原2丁目1-47
佐賀市高木瀬東1丁目10-1
- 04 -
技術開発の実施状況
総合研究所では、九電グループの競争力強化のため、既存事業領域での事業基盤強化と
成長事業領域での収益拡大を両輪とした技術開発を推進しています。
2020年度は48件の研究に取り組みました。主な研究件名は、以下のとおりです。
《件名の末尾に★を付記したものは、「研究グループ紹介」で内容を掲載しています》
- 05 -
研究企画グループ
共創推進グループ
化学・金属グループ
ネットワーク技術グループ
研究目的 研究件名
コスト低減 総研建屋ZEB化に関する調査研究
研究目的 研究件名
低・脱炭素化 バイオマス混合新燃料開発研究★
電化推進 植物工場に関する研究(年間を通じたイチゴ栽培技術の確立)★
研究目的 研究件名
設備保全の高度化 火力発電ボイラ低合金鋼チューブ材の短時間過熱による健全性評価に関する研究★
設備保全の高度化 ボイラ用高強度オーステナイト系ステンレス鋼の余寿命診断技術に関する研究
設備保全の高度化 高クロム鋼厚肉溶接部の余寿命診断技術に関する研究
安定供給 内燃力発電プラントにおける脱ヒドラジン水処理法の実機適用化研究
安定供給 暴露試験による腐食評価に関する研究
コスト低減、安定供給 イオン交換樹脂運用の高度化(交換頻度延長対策等)に関する研究
コスト低減 深紫外光を利用した発電設備での海生生物付着抑制可能性調査
設備の安定運用 回転機器の軸受診断技術高度化に関する研究
設備運用の高度化 火力発電プラントにおける脱ヒドラジン水処理法の実機適用化研究
低・脱炭素化 海域環境修復に関する研究(再生原料を活用した藻場の造成・再生・保全技術に関する研究)★
研究目的 研究件名
安定供給 部分放電測定手法の高度化に関する調査研究
安定供給 ガス絶縁機器の内部状態推定に係る基礎研究
安定供給、コスト低減 6kVケーブルの寿命協調を踏まえた診断技術に関する研究
安定供給、コスト低減 配電線事故の原因推定機能の精度向上に関する研究
安定供給、コスト低減 雷エネルギーの把握による効果的な雷被害対策に関する研究
コスト低減 PLCを活用した部分放電測定に係わる研究★
設備保全の高度化 鉄塔の塗膜劣化評価に関する調査研究★
設備保全の高度化 巡視の高度化・自動化に関する調査研究
大気・水質環境等の改善 塗料性能確認及びVOC低減対策(水性塗料)適用に関する研究
新規事業領域 落雷エネルギー測定システムに関する研究
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農業電化グループ
生物資源研究センター
地域エネルギーシステムグループ
低炭素化技術グループ
社会インフラグループ
系統高度化グループ
研究目的 研究件名
電力品質の維持 【国プロ】再エネ大量導入時の周波数及び系統安定性の維持に資する研究★
総合エネルギー事業領域
【国プロ】分散型エネルギーリソースを活用したアグリゲーションシステムの実証に
関する研究★
研究目的 研究件名
低・脱炭素化 藻類バイオマスによるCO2削減に関する基礎研究
低・脱炭素化 水素エネルギー開発動向調査
低・脱炭素化 カーボンリサイクル技術開発動向調査
低・脱炭素化 電力貯蔵技術の開発動向調査
電化推進 蒸気ボイラ給水予熱特化型CO2ヒートポンプの開発★
電化推進 電気バス導入拡大に向けた課題抽出と対応策に関する研究
電化推進 電気バス向け大容量充放電器の開発★
研究目的 研究件名
コスト低減 高経年水力土木設備のうちゲートピア部の健全性評価および補強対策に関する研究★
再エネ設備の安定運用 AI(機械学習)による導水路トンネル覆工背面空洞調査の高度化に関する研究
再エネ設備の安定運用 導水路補強工事の合理化に関する研究★
DX推進 空調を対象とした設備見守り支援技術開発に関する研究
産業廃棄物の再資源化
パルスパワーによる廃棄コンクリート減容に関する研究のうち破砕効率低減防止
のための処理水濁度軽減に関する研究
将来新技術 人工衛星センシング情報の利活用に関する調査研究
研究目的 研究件名
再エネ主力電源化 SVCとSCC-ShRの協調制御手法の開発★
再エネ主力電源化 スマートメータデータ分析による需要家ロードカーブの解明★
研究目的 研究件名
電化推進 ヒートポンプを用いたトマトの高効率生産技術の開発★
電化推進 ヒートポンプの施設園芸への普及拡大に関する調査研究
環境保全 希少植物の保全技術に関する研究
国(NEDO)の支援のもと、石炭火力発電所で使用するためのバイオマス混合新燃料の
製造技術を開発しました。
・木質バイオマスと褐炭を改質(乾燥、乾留等)したものを混合成型して製造
・試験用ボイラによる燃焼性や灰付着性、また粉砕性にも問題ないことを確認
・これまでの成果より、既設の大型石炭火力発電所の大幅な改造を施すことなく
使用可能な見込み
共創推進グループ
くろまる グループ紹介
我が国では、2030年における温室効果ガスを46%削減、2050年には実質ゼロという
目標を掲げており、火力発電所のCO2排出量低減は重要な課題です。
環境負荷低減と経済性の両立を目指した化石燃料を代替する燃料として、褐炭(低
品位な石炭)と木質バイオマスを活用した「バイオマス混合新燃料」の開発に取り組
んでいます。
CO2を吸収し成長する木質バイオマスによる発電は「京都議定書」における取扱い上、
CO2を排出しないものとされており、石炭の代替利用で地球温暖化防止に貢献します。
くろまる 今後の展開
既設の石炭火力発電所での運用が可能で、かつCO2排出量低減が見込まれるバイオ
マス利用技術について、NEDO国際実証要件適合性等調査を受託し、実証研究に向け準
備しています。
安達 貴弘
江崎 博文
石原 雄太
犬丸 哲朗
研究担当者
当グループは、九電グループの成長に繋がるイノベーションの創出を目指し、2020年7月に誕生しました。
「グループ会社や他事業者などとの共創プロジェクトの企画立案・推進」、「全社の知的財産出願・管理・
活用促進」、「植物工場」並びに「バイオマス混合新燃料開発」のプロジェクトによる研究を行っています。
九電グループの社員と共に、技術をつないで新たな価値を創造しつづけ、感動にときめく組織になること
を目指して、地球温暖化防止や農業の活性化など、持続的な地域社会の発展・成長に貢献します。
- 07 -
研 究 グ ル ー プ 紹 介
くろまる 主な研究成果
バイオマス混合新燃料の開発 【研究期間2018〜2025年度】
くろまる 目的・背景
くろまる 成果概要
くろまる 今後の研究予定テーマ
総合研究所の強みである農業電化で培ってきた技術・知見を活かし、先進技術を
活用した環境制御による高度な生産技術やノウハウ(暗黙知)を見える化(形式知
化)することで、既存農家の生産性向上(収益拡大)や農業への若年層の新規参入
などを支援し、九州地域の農業活性化につなげます。
引き続き、年間を通じたイチゴの安定生産と高温期
の品質確保を検証し、検証3年目は最終目標6トン/10a
を目指します。
獲得した栽培知見やノウハウ(定点カメラによる
生育状態の評価、栽培作業の動画化など)を検証しな
がら、農業関係者へのニーズ調査、設備・運営面での
コスト低減方策を検討し、農業電化の更なる普及と
スマート農業技術の確立を目指します。
出木場 秀作
田中 要
研究担当者
田川 直
嘉村 孝
収穫したイチゴの販売例
・バイオマス混合新燃料開発研究(NEDO実証前調査の受託等)
・植物工場に関する研究(夏秋イチゴの果実品質の安定化等)
- 08 -
年間を通じたイチゴ栽培技術の確立 【研究期間2018〜2022年度】
だいやまーく通年栽培の生産技術の開発
福岡県朝倉市に太陽光利用型植物工場を設置した実証規模試験ほ場「上寺いちご
園」(育苗ハウス1棟、生産ハウス2棟)を建設しました。
2019年9月から、年間を通じたイチゴの収量増大や品質安定といった生産性向上の
可能性について検証を開始しました。
栽培コンサルタントの指導のもと、統合環境制御を活用した通年生産に係る栽培
知見やノウハウなどを蓄積しています。
検証2年目は5.1トン/10a(目標5トン)を達成しました。収穫したイチゴは、試験
ほ場近くにある道の駅で販売し、連日完売が続く人気農産物となっています。
また、百貨店での期間限定販売もほぼ即日完売とお客さまから好評価を得ました。
くろまる 目的・背景
くろまる 成果概要
くろまる 今後の展開
だいやまーく金属組織の劣化とクリープ破断強度
低合金鋼管の金属組織の劣化度合い
を3段階に分割し、劣化度合いに応じた
模擬材を作製しました。
この模擬材を用いて、劣化の進行に
伴う金属組織変化の調査及びクリープ
破断試験を実施し金属組織劣化毎の
組織観察データ、クリープ破断データ
を取得しました。
だいやまーくクリープ余寿命の簡易評価手法開発
取得した金属組織観察データ及び
クリープ破断データから、金属組織の
劣化度合いによってクリープ破断強度
に違いがあることが認められました。
この関係に基づき、低合金鋼管が
局所的に熱影響を受けた際に金属組織
の劣化度合いから管の取替範囲を判断
するマニュアルを作成しました。
当グループは、お客さまに良質で廉価な電気を安定してお届けするため、当社事業基盤を支える電力設備
の運用・保守の高度化に資する現場密着型の研究に取り組んでいます。
また、当社が地域の一員として、持続可能な社会の構築に貢献し続けていくために、地球環境問題、社会と
の協調、地域環境の保全に資する研究活動にも積極的に取り組んでいます。
くろまる グループ紹介
火力発電ボイラにおいて、低合金鋼(注記)1管が使用されている過熱器管、再熱器管等で、
高温の燃焼ガスの熱影響を局所的に受けたことに起因してチューブリークが発生した
際、リーク管だけでなくリーク管に隣接した管も熱影響を受けているため、管の劣化
状態によって管の取替範囲を判断する必要があります。
現状、管の取替範囲の判断は、管の残肉厚及びレプリカ法(注記)2による金属組織の劣化
有無に基づいて行われていますが、金属組織の劣化有無は定性的な指標であり、金属
組織の劣化度合いに応じたクリープ破断強度(注記)3が考慮されていません。
このため、金属組織の劣化度合いとクリープ破断強度との関係性から管の取替範囲
を判断できる簡易手法の構築に取り組みました。
実機の低合金鋼においてチューブリークが発生し、管の取替範囲を判断する時は、
作成したマニュアルを活用し、設備の保全に寄与していきます。
燃焼ガス
流れ方向
組織劣化範囲(イメージ)応力
破断時間
クリープ破断強度
[凡例]
:劣化大
:劣化中
:劣化小
[凡例]
:破口部
:劣化大
:劣化中
:劣化小
管寄せ
(注記)1 低合金鋼
炭素鋼に一つ又は
数種の元素(合金元
素)を添加して性質
を改善した鋼(合金
鋼)のうち、合金元
素総量が5質量%以
下のもの
(注記)2 レプリカ法
金属組織観察面の
凹凸をアセチルセル
ロースフィルムに転
写し、顕微鏡で金属
組織を観察する手法
研究担当者
原田 洋
(注記)3 クリープ破断強度
金属材料は、ある
温度以上の高温では、
一定応力下で時間と
ともに変形が進み、
破断する。この時の
破断時間及び温度に
対する応力の値低合金鋼管- 09 -
化学・金属グループ
研 究 グ ル ー プ 紹 介
くろまる 主な研究成果
低合金鋼チューブ材短時間過熱時の健全性評価手法開発
【研究期間2018〜2020年度】
くろまる 目的・背景
くろまる 成果概要
くろまる 今後の展開
くろまる 今後の研究予定テーマ
・電力品質の維持向上及びコスト抑制に資する電力設備保全技術の高度化
・現場設備のトラブルや不具合に対応した原因調査や対策の検討
・発電所から排出される廃棄物の有効利用など循環型社会の形成や環境
保全に資する研究
当グループは、2004年より、磯焼け(注記)1対策に
着手し、独自の技術やノウハウを織り込んだ製
品を通じ、九州を中心に沿岸海域の環境保全に
取り組んでいます。
開発した藻場増殖礁(注記)2は、2021年3月末現在
で、1,946基の採用実績があり、磯焼けに悩む
各地で成果が注目されています。
躯体には、海洋コンクリートを用いますが、
その製造においては、自然環境保全に配慮した
循環型社会形成推進の観点から、原材料に再生
原料を使用したり、再生原料の使用率の向上が
求められています。当グループでも、原料の一
部に石炭灰を活用した部材(注記)3を開発し、製品と
してラインナップしています。
さらに近年では、CN (注記)4やエネルギーの地産
地消を中核とする循環型社会が標榜されるなか、
地域再エネ電源として期待される木質バイオマ
ス発電所が急増しており、発生する燃焼灰の処
分が課題となりつつあります。
このため、当グループでは、木質バイオマス
燃焼灰に着目し、海洋コンクリート原材料の代
替材としての適用性について調査や技術検討を
行っています。
当グループの強みである海域環境修復技術に、今回の知見を融合させることで、新
たな用途開発や新規ビジネスの創出に向け、調査や検討を行う予定です。
(注記)1 磯焼け
浅海の岩礁・転石
域において、海藻の
群落(藻場)が季節的
な消長や多少の経
年変化の範囲を越
えて著しく衰退ま
たは消失して貧植
生状態となる現象
(注記)2 開発した藻場増殖礁
(図1参照)
藻場礁に魚類の食
害ネットを装着した
もので、海藻の種を
供給する母藻基地と
して機能させ、周囲
の藻場の再生を促進
(特開2007-006796
号増殖礁他)
(注記)3 石炭灰を活用した
部材例(図2参照)
・中間育成プレート
✓石炭灰や高炉スラ
グを重量比で約6
割使用
✓根が活着し易いよ
う、表面形状を工
夫(特開2006-
282406号セメント
スラリー及び石炭
灰の利用方法)
・FAブロック、FAブロッ
ク台座
✓藻場礁の着底基質の
中央部に配置された
小型ブロックとその
台座
(注記)4 CN(Carbon Neutral)
環境化学の用語で、
「何かを生産したり一
連の人為的活動を
行った際に排出され
るCO2と吸収される
CO2が同じ量であ
る」という概念
研究担当者
坪田 晃誠
- 10 -
沿岸海域の環境修復に向けた藻場の造成・再生・保全技術の開発・実証
【研究期間2020〜2021年度】
くろまる 目的・背景
くろまる 成果概要
2020年度は、木質バイオマス燃焼灰を混錬したコンクリートを海洋環境下で使
用することを想定し、灰の成分はもとより、強度等の基本物性の調査のほか、安
全性等の確認を行い、木質バイオマス燃焼灰が海洋建材の原料として適用可能な
見通しを得ることができました。
図 1 ネット付き藻場増殖礁(k-hatリーフβ型)
(上段:沈設前、下段:沈設し2年経過後)
図 2 原料の一部に石炭灰を使用した部材の例
(上段:中間育成プレート、下段:FAブロック、FAブロック台座)
【 中間育成プレート 】
【 FAブロック 】 【 FAブロック台座 】
くろまる 今後の展開
鉄塔の塗膜(注記)1の状態は、作業員が昇塔して目視で点検しています。
このため、多くの労力が必要で、また、劣化状態の判定は作業員の主観によるため、
人によって判断に差異が生じることもあります。
このような従来の点検手法における課題を解決するため、ヘリコプター等により上
空から撮影した写真を用いた画像診断手法を検討しました。
だいやまーく塗膜劣化診断手法の開発
鉄塔の塗膜は、基本的には役割の
異なる「上塗り」と「下塗り」で構成
されています。
年数が経つと、まずは上塗り塗装
が劣化し、塗膜厚の減少や剥がれが
生じ、下塗り塗膜が現れていきます。
これら上下2つの層は、一般的に色
が異なることから、画像解析(色の
分類)を実施することで下塗り塗膜
の出現(塗膜剥離)割合が算出可能
です。
この画像解析には機械学習(注記)2の
技術を採用しています。
塗膜剥離の割合を劣化指標として
数値化することで、鉄塔の空撮画像
から定量的かつ客観的な診断が可能
となる塗膜劣化診断手法を開発しま
した。
送電・変電・配電設備の保全高度化技術、雷害対策や絶縁などの高電圧技術をコア技術として、電力設備
の高経年化対策やコスト低減、業務の省力化などの課題解決に向けた研究開発を実施しています。
また、ディープラーニングや機械学習、画像認識技術など、新技術の現場業務への適用にも積極的に取り
組んでいます。
(注記)1 鉄塔の塗膜
鉄塔は、建設当初
は溶融亜鉛めっきで
錆を防ぐ。その後、
めっきの劣化が進行
する前に塗装で塗膜
を形成して防錆。
鉄塔を長期間使用
するするためには再
塗装が必要なので、
施工時期の適切な判
断が必要
研究担当者
蓮尾 卓也
くろまる 今後の展開
塗膜の模式図(2回塗り)
塗膜剥離の割合算出による劣化診断
上塗り塗膜と下塗り塗膜の色の組合せは各鉄塔で異なるため、機械学習による
色の分類後、どの色が上塗り塗膜色であるか等の判断は現状では人が実施する必要
があります。
今後、この工程を自動判断できるよう、学習データを蓄積し改良していきます。
くろまる グループ紹介
部材
抽出
解析
解析
部材拡大図
(注記)2 機械学習
コンピュータが大
量のデータの中から
パターンやルールを
発見し、アルゴリズ
ムやモデルを構築す
る手法。人間では処
理ができないような
大量のデータを短時
間で扱うことが可能
- 11 -
ネットワーク技術グループ
研 究 グ ル ー プ 紹 介
くろまる 主な研究成果
鉄塔の塗膜劣化診断手法の開発 【研究期間2018〜2020年度】
くろまる 目的・背景
くろまる 成果概要
だいやまーくPLCを活用したPD検出原理
PLCには、PDなどによる外乱が入ると、
その周波数帯域のデータ伝送量を下げて、
外乱の影響を受けにくい状態を保つ機能
があります。
これを利用し、周波数帯毎のデータ
伝送量の総和(PHYレート(注記)3)の変化に
着目し、PDを検出する手法を考案しまし
た。
だいやまーくPD測定システムの構築
開発中のPD測定システムでは、安価
なフェライトコア(注記)4をセンサとして用い、
対象機器の接地線に取付けます。
接地線に流れるPD信号をこのセンサ
で抽出し、PLC通信線に注入して、PCで
PLCの通信状態を計測します。
だいやまーく測定結果と異常原因分析への活用
PDの発生により、データ伝送量が
少なくなることを確認し、PDの検出が
可能であることが示されました。
また、針-平板電極放電、沿面放電、
ボイド放電等の多様な放電の特性を把握
できることを確認しており、欠陥の種類
の同定に活用できることも期待されます。
くろまる 今後の研究予定テーマ
・電力設備の絶縁劣化状態をリアルタイムで遠隔監視するシステムの開発
・AI技術やICT技術を活用した架空線路の保全技術の高度化
・配電線事故の原因推定機能の精度向上
くろまる 成果概要
(注記)1 PD
(Partial Discharge)
電力機器の絶縁体
中の微小な空隙部に
電界が集中すること
で発生する微弱な放
電であり、長時間続
くことで絶縁材料の
劣化が進み、絶縁破
壊に至る可能性有
電力機器の異常診断に、機器の内部で発生する部分放電(PD(注記)1)を測定する方法が
あります。PDの測定装置は、現状では高額であることから、低価格化が望まれてい
ます。
そこで全く新しい発想で、電力線搬送(PLC(注記)2)という通信技術を応用して、安価
なPD監視システムの開発に取り組んでいます。
研究担当者
くろまる 今後の展開
PDの発生を遠隔監視できるシステムを
構築し実フィールドでの検証を行います。
また、PDの定量評価手法の確立を目指
します。
(注記)2 PLC
(Power Line
Communication)
既存の電力線に通
信信号を重畳させて
高速通信を可能とす
る通信方式であり、
コンセントにPLCを差
し込むだけで電力線
を介し通信が可能
PD測定装置の構成
里 秀文
(注記)4 フェライトコア
酸化鉄を主成分と
する磁性体で、一般
的に電子機器のノイ
ズ対策に用いる
外乱によるデータ伝送量変化
フェライト
コア
減衰器
くろまる 目的・背景
PLCを用いたPD測定装置による検出例
低いPHYレート値が
多く出現
00 01 10 11 0 1
データ伝送量:2bit 1bit信号の振幅信号の振幅
00と01を識別
できない
0と1を識別
できる
(注記)3 PHYレート
PHYsical
transmission rate
(情報伝送速度)
- 12 -
PLCを活用した部分放電測定システムの開発【研究期間2017〜2020年】
当社が将来に亘って担う「系統運用」を支える「高度な系統解析技術」を当グループの共通基盤技術とし、
「電力の安定供給」と「電力品質の維持」に関する技術開発と併せて、部門横断的な課題解決に取り組みます。
・平常時の系統運用はもとより、過酷事故時や将来系統においても電力の安定供給を維持するための
技術開発の推進
・再エネの増加等、電源構成の変化する状況下においても経済性と電力品質の両立を図る技術開発の推進
・電力の安定供給や品質維持の基盤となる高度な系統解析技術の維持・向上推進
くろまる 主な研究成果
電力系統の慣性力をリアルタイムに把握するための技術開発
【研究期間2019〜2021年度】
くろまる 目的・背景
くろまる 成果概要
広域系統の
詳細データ収集
くろまる 今後の展開
引き続き、推定精度の向上に取組み、電力系統の慣性力を把握するための基盤的
な手法の開発と常時監視システムの開発に必要となる要求仕様をとりまとめ、将来
の監視システム等への適用を目指し、研究を進めます。
常時監視システムのイメージ(注記)3
研究担当者
伊是名 篤志
本郷 賢和
再エネ大量導入に伴い発電所の同期発電機が減少すると、慣性力(注記)1の低下により
電源脱落時等の周波数低下が増大し、最悪の場合、発電機の連鎖的な解列により広域
的な停電に至るリスクが指摘されています。
このため、国の支援(注記)2のもと、電力系統潮流の周期的な変動から、慣性力をリアル
タイムに推定する技術を開発しています。
だいやまーく常時監視システムの開発
50Hz・60Hz系統の変電所
各20か所(九州内5か所)に
測定装置を設置し、測定され
た電力の変動から30分毎に
慣性力を推定できるシステム
を構築しました。
だいやまーく慣性力の推定
電力系統潮流の周期的な
変動から慣性力を推定した
結果を右図に示します。
推定結果は系統並列中の
発電機仕様から求まる慣性
力(黒線)と変化トレンド
がほぼ一致しており、慣性
の推定手法として有効であ
ることを確認できました。
慣性力推定結果例(注記)4
慣性力
くろまる グループ紹介
(注記)1 慣性力
同期発電機の回転
エネルギーにより周
波数の変動を抑制す
る力
(注記)2 国の支援
国立研究開発法人
新エネルギー・産業
技術総合開発機構
(NEDO)の委託事業
(2019〜2021年度)
(注記)3 出典
「系統慣性等の低
下に対応するための
基盤技術開発(その
1〜事業概要〜)」
2021年電気学会全国
大会より引用
(注記)4 出典
「系統慣性等の低
下に対応するための
基盤技術開発(その
3〜系統慣性推定手
法の精度向上につい
て〜)」2021年電気
学会全国大会を一部
改変し引用
- 13 -
系統高度化グループ
研 究 グ ル ー プ 紹 介
くろまる 今後の研究予定テーマ
・分散型エネルギーリソースを活用した次世代制御技術の実証に関する研究
・再エネ大量導入時の周波数及び系統安定性の維持に関する研究
【NEDO実証事業】
だいやまーくV2G制御システムの開発(2018〜2019)
6拠点・16台のEV充放電ステーションを
遠隔で管理・制御するV2Gシステムを開発
し、総合研究所に設置しました。
機能検証の結果、福岡地区、宮崎地区の
EVに対して、V2Gシステムから遠隔で制御
指令を行い1分以内に応動することを確認
しました。
今後の普及拡大が見込まれるEVを電力需給バランスの調整に活用するため、EVに
蓄電された電力を電力系統に逆潮流させるV2G(注記)1技術等について検証を行いました。
また、定置型蓄電池やヒートポンプ給湯機など多様な分散型エネルギーリソース
を統合管理するVPP(注記)2システムを構築し、機能検証を行いました。
2022年度から開始されるFIP(注記)6制度を見据えて、再生可能エネルギーアグリ
ゲーションに必要な変動性の高い太陽光発電設備の発電量予測技術の高度化や
発電インバランス回避のための蓄電池等分散型エネルギーリソースの制御技術
に関する実証を行うこととしています。
だいやまーくVPPシステムの開発(2020)
V2Gシステムに対して電気バス、定置
型蓄電池、ヒートポンプ給湯機等の分散
型エネルギーリソースを管理・制御する
RA(注記)3のシステムとの連携機能、需給調整
市場(注記)4への参入を目指した外部システム
との連携機能を追加しました。
機能検証の結果、需給調整市場におけ
る三次調整力(注記)5の商品要件に沿ったシス
テムの応動を確認しました。
市場参入に向けては、エネルギーリ
ソースの獲得や、新たなビジネスモデル
の検討が今後の課題となっています。
研究担当者
古田 昭宏
榎本 孝史
鈴木 直人
尾造 宏之
(注記)1 V2G
Vehicle to Grid
(注記)2 VPP
Virtual Power Plant
(注記)3 RA
Resource Aggregator
(注記)4 需給調整市場
計画と実需給の乖
離を補正する調整力
を取引する市場
(注記)5 三次調整力
需給調整市場にお
いて、調整力は応動
の速さに応じて一次
〜三次に区分される。
三次は、このうち最
も応動の遅いもの
(注記)6 FIP
Feed-In-Premium
- 14 -
分散型エネルギーリソース統合制御システムの開発
【研究期間2018〜2020年度】
くろまる 目的・背景
くろまる 成果概要
くろまる 今後の展開
だいやまーく材料試験による検証
SRS工法で補強したコンクリート梁の
材料試験の結果、ピアを部分補強した
場合でもピア全周を補強した場合と同等
の補強効果が得られることが分かり、
ダムピアのような構造上で全周補強が
難しいコンクリート構造物に有効である
ことを確認しました。
だいやまーく3次元FEM解析による評価
当社に実存するダム形状をモデル化
してSRS工法により全周補強、部分補強
した場合の最大変位と残留変位について
3次元FEM解析で評価しました。
その結果、弾性域では補強効果に差は
見られないが、既設部分の鉄筋が降伏
するレベルの応力を受ける際には顕著な
補強効果が表れることを確認しました。
高度成長期に建設・整備した電力インフラの老朽化が進む中、維持管理・更新費用の増加が見込まれる
一方で、更なる長期供用や設備保全にかける費用の抑制・平準化が求められています。
適切な維持管理がなされなければ重大事故発生の危険性が高まることから、AI(人工知能)や人工衛星
データ等のデジタル技術を活用して、コスト負担が少ない設備の点検・診断技術の研究に取り組んでいます。
また、コンクリート材料等の長期供用に関する技術確立を通して、持続可能な社会構築に貢献します。
くろまる 主な研究成果
くろまる グループ紹介
(注記)1 PCM
Polymer Cement
Mortar(ポリマーセ
メント モルタル)
の略
(注記)2 SRS工法
補強対象の表面コ
ンクリートをはつり、
補強鉄筋を配した上
からPCMを吹きかけ、
既設部と一体化させ
ることで耐震性能を
向上させる工法
当社が保有する水力発電設備においても、鉄筋コンクリート構造物の老朽化が
進んでおり、補修・補強の必要性が高まっています。
これまで事例が少なかったダムピアの耐震補強について効果的な工法を提案する
ために、既設部分を補強鉄筋とPCM (注記)1で被覆するSRS工法(注記)2を応用した方式の確立に
向けて、材料試験と3次元FEM(注記)3解析を行って評価を行いました。
研究担当者
(注記)3 FEM
Finite Element
Methodの略
「有限要素法」と
訳され、微分方程式
を近似的に解くため
の数値解析の方法
篠﨑 正弘
くろまる 今後の展開
本研究では、SRS工法によるダムピアの耐震補強の効果について評価しました。
今後は、既設部の鉄筋量、ダム形状などの解析より得られた細長比のような重要
な因子について検証することで、より詳細な補強効果の評価等に発展できると考え
ています。
- 15 -
社会インフラグループ
ダムピア(柱脚)の補強工法を提案【研究期間2018〜2020年度】
研 究 グ ル ー プ 紹 介
くろまる 目的・背景
くろまる 成果概要
だいやまーく製品の開発
本研究では、以下の3製品を開発しま
した。
・カーボングリッド格子材を改良し、
従来品の樹脂と炭素繊維の組み合わせ
のうち、炭素繊維の一部を安価な材料
(ガラス繊維等)に置き換え、費用削減
を図ったハイブリッドグリッド
・従来品と同等の強度で、自由に曲げる
箇所を持たせた隅角部の施工に特化
したフレキシブルグリッド
・従来のアンカーに突起(レベラー部)を
持たせ、モルタルの厚さ管理の効率化
を図ったレベラー付きアンカー
だいやまーく開発品の施工における評価
開発品の施工時の効果を確認するため
に、小丸川発電所石河内ダム左岸にある
仮設トンネルにおいて、従来品と開発品
を使用した場合の作業時間から施工効率
を、モルタル覆工厚さの分布から出来形
をそれぞれ比較しました。
その結果、施工効率では開発品の方が
約1.3倍(98m2/日→130m2/日)に向上する
ことが確認できました。
また、出来形も基準の厚さ(12mm)に対
し、開発品のアンカーの効果で均一かつ
平滑となることが確認できました。
くろまる 今後の研究予定テーマ
・音響技術活用によるRC構造物の非破壊検査に関する研究
・火力発電所跡地の材料劣化度分析に関する研究
くろまる 目的・背景
くろまる 成果概要
(注記)1 FIT
Feed-In Tariff Program
再生可能エネル
ギー源を用いて発電
された電気を、国が
定める価格で一定期
間電気事業者が買い
取ることを義務付け
る制度
当社では、9か所の水力発電所を再開発しFIT(注記)1にて売電する計画があります。
FITの認定を得るためには、導水路設備の補強を行う必要があり、カーボン
グリッド格子材とモルタル吹付による補強を実施予定です。
しかし、トンネルの長さ方向について、発生する応力に対して補強材が過剰
な設計となっており、余分な工事費用が掛かるためコスト削減を目的に本研究
を提案しました。
研究担当者
池田 博嗣
上野 貴行
くろまる 今後の展開
本工法は、当社内の導水路設備工事のみに限らず、全国の水力発電設備の修繕や
補強に適用できる工法であるため、当社内での現場実績の確立を行った後に、全国
展開を予定しております。
- 16 -
導水路用の補強材料開発 【研究期間2019〜2021年度】
当グループは、低炭素化社会実現に向けた技術開発について需要側と供給側の両面から取り組んでいます。
需要側では、運輸部門での電気自動車充放電技術、業務・産業部門でのヒートポンプ利用拡大等の電化
推進、供給側では、再エネと組合わせた水素の利活用や藻類バイオマス燃料等によるCO2削減の技術開発に
取り組んでいます。
また、新技術調査として、カーボンリサイクルや電力貯蔵技術の開発動向、電化促進技術等の調査を行
っています。
くろまる 主な研究成果
くろまる グループ紹介
研究担当者
大容量充放電器は、当社、九電テクノシステムズ(株)殿および(株)キューヘン殿の3社で
開発に着手しました。
2020年度は、前年度に評価したプロトタイプ試作機(出力50kW級)の改良版(製品版
試作機)を設計・製作して、各種評価試験を実施。V2Hガイドライン(注記)1(CHAdeMO検定
基準)で規定された性能を満足することができました。(CHAdeMO認証取得済)
製品版試作機は、西日本鉄道(株)殿のアイランドシティ自動車営業所(福岡市東区)に
設置(12月)し、当社、九電テクノシステムズ(株)殿及び西日本鉄道(株)殿の3社で、電気
バスを用いた電力の需給バランス調整に活用するための実証試験を行いました。
電気バスの蓄電池(105.6kWh)の充放電を遠隔で制御させることで、バス運行計画に
合わせて、電力ピークカット等のエネルギーマネジメントに適用できることを確認しま
した。
くろまる 目的・背景
くろまる 成果概要
我が国におけるCO2 排出量に占める運輸部門の割合は約2割で、その約9割を「自動車
交通」が占めています。
CO2 排出量の削減を図るために電化推進は社会的な課題であり、特に大型車(路線
バスやトラックなど)に関しては、運用面や設備の導入コスト面などの課題があり、
普及が進んでいません。
そこで、大型車向けの大容量充放電器を開発し、事業者の電気自動車導入を支援する
ことで、運輸部門の電化推進に取り組みます。
くろまる 今後の展開
電気バスと大容量充放電器(製品版試作機)を用いて、バス営業所での充放電
フィールド検証を継続実施するとともに、競争力のある製品化を目指して低コスト
タイプへの改良に取り組みます。
充放電制御のイメージ 充放電器(製品版試作機)
と電気バス(西日本鉄道(株)
殿所有)
石橋 弘次
坂江 摩己
(注記)1 V2Hガイドライン
電気自動車等の蓄
電・発電能力を活用
して、屋内配線に給
電を行うVehicle to
Home (V2H)について、
電気安全及び車両と
接続機器の互換性を
確保するために作成
されたガイドライン
- 17 -
低炭素化技術グループ
電気バス向け大容量充放電器の開発【研究期間2019〜2023年度】
研 究 グ ル ー プ 紹 介
くろまる 今後の研究予定テーマ
研究担当者
谷口 怜翼
研究担当者
河野 悦朗
共同研究先の昭和鉄工(株)殿に
おいて、試作機の設計・製作及
び工場試験を終了し、2020年度
末より実証試験を開始し、現在、
試験データを採取・データ分析
中です。
くろまる 目的・背景
くろまる 成果概要
食品工場では、食品や容器類の殺菌および洗浄用として、燃料に重油を使用した
蒸気ボイラが多くあります。そこで、蒸気ボイラ燃料を削減するために、蒸気ボイ
ラへ供給する前の給水を予熱するCO2冷媒(注記)1のヒートポンプの開発を行い、さらなる
省エネ推進やCO2削減に貢献することを目的としました。
なお、給水温度は、工場稼働中の昼間は低温で、停止中の夜間は高温で予熱する
など最適運転を可能としました。
くろまる 今後の展開
(注記)2 蓄熱タンク
工場停止時の夜間
などにヒートポンプ
で作った温水を貯め
ておくタンク
(注記)1 CO2冷媒
フロンではなく自
然界に存在するCO2
を冷媒としたもの
電化推進技術
・運輸部門(充放電器等)
・産業部門(熱利用)等
電源低・脱炭素化技術
・水素エネルギー
・CCUS
・各種バイオマスエネルギー
・蓄電池 等
「九電グループ カーボンニュートラルビジョン2050」
実現への挑戦
技術情報の提供 技術開発の推進
低炭素化技術グループの技術開発・調査領域
国の「2050年カーボンニュートラル(注記)1 」宣言を踏まえ、九電グループはカーボン
ニュートラルの実現に挑戦することを宣言し、2021年4月に「九電グループ カーボン
ニュートラルビジョン2050」を策定しました。
当グループでは、エネルギー需給両面からカーボンニュートラル実現に貢献できる
よう技術の開発や調査を進めています。
運輸・産業分野での電化推進技術開発はもとより、エネルギー供給側におけるさま
ざまな低・脱炭素化技術の最新動向把握、技術性・経済性評価等を行い、主管部門や
グループ会社へ情報提供を行っています。
調査対象技術は、水素エネルギー、CCUS (注記)2、各種バイオマスエネルギー、蓄電池
など多岐にわたり、カーボンニュートラル実現に必要となる技術の最適な組み合わせ
を探索していきます。
(注記)1 カーボンニュートラル
温室効果ガスの排
出量から森林等によ
る吸収量を差し引い
て、全体としてゼロ
にすること
(注記)2 CCUS(Carbon
dioxide Capture,
Utilization and
Storage)
CO2 を回収・有効
利用・貯留すること
・お客さまの電化推進に資する技術の開発
・電源の低炭素化に資する技術に関する開発動向調査
- 18 -
蒸気ボイラ給水予熱特化型C02ヒートポンプの開発 【研究期間2020〜2021年度】
【トピック】九電グループ カーボンニュートラルビジョン2050実現への挑戦
2021年度末までの実証試験を経て、
2022年度目途での商品化を目指します。
だいやまーく協調制御手法の検討
SCCは、設置箇所の電圧値が設定した
しきい値を超過した際に開閉器(SLGS)
に対して投入・開放指令を出力し、
リアクトルが投入・開放されることで
配電系統の電圧を調整します。
したがって、SVCをSCC-ShRの投入・
開放電圧の間で動作させることで、
SCC-ShRよりもSVCが先に動作し、協調
制御が可能になると判断しました。
だいやまーく実証試験
系統電圧を変化させた場合の協調制御
の可否を実証試験にて確認しました。
電圧上昇時、下降時のいずれの場合も、
先にSVCが動作して電圧を維持しますが、
容量上限に到達して電圧を維持できなく
なった後にSCC-ShRが投入・開放する
協調制御が確認できました。
当グループは、これまでに培った
・スマートグリッド実証試験等による配電系統運用に関する技術
・VPP実証事業によるエネルギーリソースの活用技術
の融合を図り、
・分散型電源の普及拡大に対応した、配電系統の運用、構築と電力品質維持
・エネルギーマネジメントサービスや地域マイクログリッドシステム構築、運営事業への参入、
実装といった次世代配電ネットワーク実現
に取り組んでいます。
くろまる 主な研究成果
くろまる グループ紹介
くろまる 目的・背景
くろまる 成果概要
(注記)1 静止型無効電力
補償装置(SVC)
サイリスタを用い
た高速制御により無
効電力を遅れから進
みまで連続的に変化
させて電圧を調整す
る機器
(注記)2 自律型配電線電
圧調整装置(SCC)
開閉器に制御指令
を出力し、リアクト
ル/コンデンサの
投入/開放により
電圧を調整する機器
太陽光発電(PV)に起因する電圧上昇対策の1つとして、九州電力送配電では、
静止型無効電力補償装置(以下、SVC)(注記)1を使用しています。
SVC1台で容量が不足する場合はSVC2〜3台の並列運転を行っていますが、2台目
以降をSVCよりも低コストである自律型配電線電圧調整装置(SCC) (注記)2とリアクトル
(ShR)(以下、SCC-ShR)に置き換えることで低コスト化が可能と考え、SVCとSCC-
ShRの協調制御に取り組みました。
研究担当者
長尾 潤
くろまる 今後の展開
今後は実系統で本手法の有効性を確認し、
実際の運用に繋げていく予定です。
実証回路
実証結果SVC300kVASS: 計測箇所
模擬負荷
装置SLGSShR
300kVASCC配電線インピーダンス
- 19 -
地域エネルギーシステムグループ
SVCとSCC-ShRの協調制御手法開発 【研究期間2020〜2021年度】
研 究 グ ル ー プ 紹 介
だいやまーく分析対象
同一配電系統に設置されている
同一契約のSMデータのうち、2020
年(1年間)のデータについて分析
しました。
だいやまーく前処理
SMデータは、30分の使用量である
ため、一つのSMデータのデータ数は
1年間で17,568(×ばつ366)となり
ます。
つまり、17,568次元ベクトルでの
クラスタリングとなり、SMデータの
数に比例してデータ数が増加するた
め、一般のPCでは学習ができません
でした。
このため、各SMデータの特徴を損
なわず、SMデータのデータ数を削減
するため1日毎の平均化処理を行い
ました(図1)。
また、電力量は契約電流に依存す
ると考えられるため次元数を削減
した後に標準化を行いました(図2)。
くろまる 今後の研究予定テーマ
・配電ネットワークの高度化に向けた効率的な設備構成や電圧調整機器
の効果的な運用等に関する検討
・地域エネルギーシステム構築、運営に関する検討、調査
くろまる 目的・背景
くろまる 成果概要
(注記)1 機械学習
コンピューターに
大量のデータを学習
させ、データに潜む
パターンやルールを
発見させる技術
(注記)2 クラスタリング
機械学習の一種で
データ間の類似度に
もとづいて、データ
をグループ分けする
手法
九州電力送配電は、託送業務の効率化等を目的に2016年からスマートメータ(以
下、SM)の導入を開始しており、2023年度末を目途に管内の全低圧需要家へ設置を
行っています。
このSMから得られる需要家の30分の電力量(以下、SMデータ)の配電系統の運用
への活用を目的に、機械学習(注記)1の1つであるクラスタリング(注記)2を用いてSMデータの
分析を行いました。
研究担当者
(注記)3 GPU
並列的な計算処理
が可能で、3Dグラ
フィックスや機械学
習のような定型的か
つ膨大な計算処理を
行うのに適したプロ
セッサ
田中 俊生
くろまる 今後の展開
今回は平均化したデータを使いましたが、今後は詳細にデータを分析するため
にGPU(注記)3の活用を検討し、SMデータの有効活用に資する研究を進めていきます。
図1 1日毎の平均化処理によるデータ数の削減
図2 ×ばつ46件のデータ
図3 クラスタ数3でクラスタリングした際の
各クラスタの中心値
だいやまーくSMデータのクラスタリング
クラスタ数3で契約電流50AのSMデータをクラスタリングした際に、各クラスタの
中心値には以下の特徴が観測され、同一契約に対して複数のロードカーブモデルが
必要なことが分かりました(図3)。
クラスタ-0: 冬季に使用量のピークが観測され、夏季の使用量は小さい
クラスタ-1: 夏季に使用量のピークが観測され、冬季の使用量は比較的小さい
クラスタ-2: 使用量に顕著なピークはないが、年間を通して1ヶ月に4回程度の
周期的な変化がある
- 20 -
スマートメータデータ分析による需要家ロードカーブの解明
【研究期間2019〜2022年度】
だいやまーくトマトの栽培状況
2018年産の都道府県別のトマト
栽培面積は、熊本県が1,250haと全国
シェアの11%を占め第一位です
(右表)。
このうち大玉(冬春)トマトでは
熊本県は全国シェアとしては面積で
19%、出荷量で28%となります。
なかでもJA八代殿管内は面積で
8%、出荷量で11%と全国一の産地
です。
当センターは、1946年に九州配電(株)の農事電化指導農場として発足し、1951年に九州電力(株)
電化試験農場として承継。その後の変遷を経て現在に至ります。
これまで、ヒートポンプの利用技術、省エネ技術、貯蔵技術、植物の機能性等、時代の要請に対応し
た研究を推進してきました。
2020年7月、農業の電化推進による低炭素化社会の実現に向け、グループ名を農業電化グループに改
め、引続き九州の重要な産業である農業分野の成長・発展に寄与する研究に取り組んでいます。
くろまる 主な研究成果
くろまる グループ紹介
ヒートポンプ周年利用によるトマトの高効率生産技術の開発
【研究期間2020〜2023年度】
くろまる 目的・背景
くろまる 成果概要
昨今の原油高騰により施設園芸農家では、冬期に高温で栽培する農作物(ハウス
ミカン、マンゴー、ピーマン、バラ等)を中心に、暖房コスト低減を目的として国
の補助事業を活用したヒートポンプの導入が進展しています。
九州においては、栽培面積が広いトマトやイチゴの栽培では、管理温度が低く暖房
のコスト低減効果が小さいため、ヒートポンプの導入が進んでいない状況です。
しかしながら、栽培面積が広いことから暖房に要するエネルギー消費量はハウス
ミカンに匹敵し、ヒートポンプの導入(熱源転換)が図れれば、電化推進に極めて有効
な作物となります。
そこで、共同研究先であるJA八代殿管内のトマトを対象とした、ヒートポンプの
周年利用技術(高温期の夜間冷房および低温期の暖房)を確立することで、「ヒート
ポンプ普及活動を通じた農業電化の推進」に向けて取り組んでいます。
大玉トマトの冬春栽培面積及び出荷量
だいやまーく現状の課題と取り組みの方向性
1 現状の課題
夏期の育苗において、高温の影響による苗の品質低下(花飛び、根の生育不
良等)や定植後の初期生育不良(活着(注記)1の遅延等)、収穫初期の障害果(裂果(注記)2
等)発生により単価が高い秋期(10〜11月)の出荷量が少ないことが課題です。
2 取り組みの方向性
夏期の夜間冷房の増収効果と低温期の暖房での運転コスト低減効果について
検証し、ヒートポンプ周年利用技術を確立していきます。
写真
研究担当者
栗山 孝浩
(注記)1 活着
植え付けた苗がそ
の場所で根を生やし
て生育を始めること
(注記)2 裂果
果実が過熟や急激
な吸水など生理的な
要因で割れること。
果皮の発育が果肉
の発育より小さい時
に発生
- 21 -
(ha) (%) (t) (%)
熊本 543 19 83,300 28
静岡 273 9 28,200 9
千葉 237 7 13,970 9
茨城 205 7 27,200 9
福岡 119 4 15,642 5
その他 1,533 53 133,788 44
全 国 2,910 ― 302,100 ―
九 州 926 32 121,180 40
JA八代 231 8 33,255 11
〔 資 料〕 農 林水 産 省 平成 30年産 指 定野 菜 の作 付 面積 、 収 穫量 及 び出 荷 量
面積 出荷量
都道府県
生物資源研究センター 農業電化グループ
研 究 グ ル ー プ 紹 介
くろまる 今後の研究予定テーマ
・ファインバブル水の農作物への育成効果等の検証
・希少植物の保全技術に関する研究
・天山発電所地域におけるキノコ栽培可能性の調査
(注記)3 ハイブリッド暖房
導入コストを抑え
ながら省エネを可能
とする暖房方式。
運転コストの安い
ヒートポンプの運転
を優先し、暖房負荷
が大きくなり管理温
度を維持できなくな
るとヒートポンプと
併用して重油暖房機
を補助的に運転起動
くろまる 今後の展開
1年目の実証試験結果を踏まえて、更なる収量増及びコスト低減に向け、以下
の取り組みを実施する予定です。
・2年目: 夜間冷房による収量増加
社内試験で把握した好適夜間冷房温度をフィードバック
・3年目: 夜間冷房+除湿・補光・ CO2 施用による収量増加
夜間冷房に加え、社内試験で把握した除湿・補光・CO2施用技術の
フィードバックによる2〜3月期の収量増加
JA八代殿における冬春トマトの作型と温度管理
だいやまーく実証試験の方法
JA八代殿管内の生産者ハウス(約
10a)にヒートポンプを設置し、育苗期
及び定植後の夜間冷房が生育や収量に
及ぼす影響、ヒートポンプと重油暖房
機とのハイブリッド暖房(注記)3による運転
コストの低減効果について検証を行っ
ています。
ヒートポンプ設置ハウス ヒートポンプ(室外機)
ヒートポンプ(室内機) 育苗の状況(夜間冷房)
だいやまーく実証試験の結果
2020年度は、第1作目の実証試験として取り組みました。その結果、育苗期の夜間
冷房で苗の品質向上効果及び定植後の夜間冷房で生育促進や開花収穫が早まる効果
を確認しました。
なお、現在のところ夜間冷房による増収効果やハイブリッド暖房による運転コスト
の低減効果は未確認ですが、実証試験を継続し、次作以降での検証を目指します。
育苗時の生育状況
夜冷有り(根張りが良好) 夜冷無し(根張りが不良)
収穫期の生育状況 収穫期の果実
- 22 -
技術コンサルティング及び研究設備レンタル
【参考】主な技術コンサルティングのご紹介
- 23 -
総合研究所では、お客さまからのご依頼を受け2020年度に「2件」の技術コンサル
ティングを実施しました。
くろまる 技術コンサルティング
件 名 概 要 担当グループ
ボイラー高圧蒸気配管損傷原因
調査
配管の溶接部付近からの蒸気
リーク発生原因を調査
化学・金属グループ
ボイラー経年劣化診断技術支援
業務委託
ボイラーの経年劣化部位を
クリープ寿命の観点から評価し、
老朽度評価を実施
化学・金属グループ
<技術コンサルティング実績:2件>
担当グループ メニュー 概 要
共通
講師派遣 電力分野全般の基礎・専門技術に関する講師派遣
技術調査 専門的な技術分野に関する技術情報等の調査提供
化学・金属
グループ
潤滑油管理・評価 機器潤滑油や作動油等の性状評価
化学分析・評価
大気、水質、材料、燃料等の化学分析、評価
(状態原因推定・対策方法の提案など)
腐食、防食コンサ
ルティング
金属材料の腐食環境の分析・評価から、最適な防食方
法の提案及び経年管理
金属材料損傷原因
調査
高度な分析装置や解析技術を用いた金属材料損傷破面
の詳細分析と損傷原因の推定
高温設備用金属材
料の劣化・余寿命
診断
ボイラ等の高温設備用金属材料のレプリカ採取による
組織(クリープボイド、析出物)検査、採取サンプル
材を使用したクリープ破断試験等による劣化・余寿命
診断
ネットワーク
技術グループ
電力設備用品の
測定試験
電力設備用品の各種電気特性等に関する試験(加速劣
化、高電圧破壊、耐電圧、動作開始電圧)
生物資源研究
センター
農業電化
グループ
農業分野への電気
利用技術に関する
コンサルティング
• ヒートポンプを適用した作物の暖冷房栽培技術、好
適な低温処理条件等の究明、効率的な電照・補光栽
培、農産物の貯蔵技術などのコンサルティング及び
試験・研究
• 施設園芸や養液栽培に関する専門技術のコンサル
ティング及び養液栽培装置の導入設計、栽培技術の
指導
• 農作物毎の好適な養液栽培技術(栽培手法、栽培環
境条件)に関する試験・研究
(注記)その他の技術コンサルティングについては、下記ホームページをご参照ください。
http://www.kyuden.co.jp/service_tech_consulting_index.html
【参考】振動試験装置(一例)
総合研究所では、お客さまからのご依頼を受け2020年度に「13件」の研究設備
レンタルを実施しました。
くろまる 研究設備レンタル
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設備・装置名 件数
振動試験装置 6件
土木試験設備 1件
交流耐圧試験装置 1件
(注記)その他の研究設備レンタルについては、下記ホームページをご参照ください。
http://www.kyuden.co.jp/service_tech_rental_index .html
< 主な用途 >
電力機器、一般産業用・民生用電子機器及び自動車部品
・電装品に対する各種規格試験及び信頼性評価試験
< 装置概要・特徴 >
•供試品は一度取付けるだけで垂直・水平の振動試験が可能
•加振力:19.6kN/周波数範囲:5〜100Hz
•最大振幅:51mm
•最大積載重量:250kg(冶具を含めた量)×ばつ1m
•正弦波試験のみ(ランダム波、ショック波は試験不可)
設備・装置名 件数
複合サイクル試験装置 1件
原子吸光分析装置 1件
ウェザーメーター 1件
所外関係(生物資源研究センター他) 2件
2020年度は、これまでの研究成果を学会や専門誌等で「15件」発表しました。
また、研究の内容や成果が評価され、澁澤賞などを受賞することができました。
<研究設備レンタル実績:13件>
項 目 主な実績
学会発表 電気学会、日本建築学会 など
専門誌発表 電気学会論文誌、電気設備学会誌、電力土木技術協会誌 など
<社外表彰実績:2件>
項 目 内 容
社外表彰
・澁澤賞(再エネ出力制御を伴う需給運用支援システムの開発)
・日本機械学会九州支部賞(音響法による復水器冷却管の微小リーク管探傷技術の構築)
<社外発表実績:15件>
当社では、知的財産を総合研究所で一元管理しており、 2020年度は、「12件」の特許
出願と「4件」の特許登録となりました。 Zero Drive(データ保護システム)、K-hat
リーフβ型(漁礁)やプラズワイヤー(防錆処理)など、これまでに得られた特許・ノウハ
ウは、他企業でもご活用いただいております。
<特許取得・出願実績>
〔参考〕2020年度末九州電力特許保有件数:国内 112件、海外 70件
国 内 海 外 国内・海外合計
取得件数 4件 0件 4件
出願件数 9件 3件 12件
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知的財産の保有と活用に向けた取組み
技術開発を効率的・効果的に進めていくためには、お客さまのニーズの把握から、技術
開発成果の活用までのサイクルを回していく知的財産マネジメントが重要になります。
そのため、九電グループの収益拡大や地域貢献に資する技術開発のため、下記の2点を
強化しています。
くろまる 収益拡大や地域貢献に向けた知的財産面からの取組み
<1 お客さまのニーズの掘り起こし>
地元企業A
地元企業B
地元企業C
情報交換
支 店
(主管部)
・自治体
・金融機関
(信金、地銀等)
・産業技術センター
・産業振興財団
・発明協会 等
豊富な地域情報を
保有する公的機関等
サービス
提供
ニーズ
把握
連携
お 客 さ ま ニ ー ズ の 把 握
協働
総合
研究所お客さま
グループ
会社
九電グループ
(注記)「知的財産
マッチング」
等を活用した
アプローチ
ニーズ把握
企業紹介
情報収集
情報発信
<国内取得特許(4件)の内訳>
特許の名称 共同出願人 登録番号 登録日国内
申請データ状態表示システム、申請データ
状態表示方法及びプログラム
東芝デジタルソリューションズ(株) 6710308 2020年5月28日
電子証明書導入・運用システム、電子証明書
導入・運用方法、及び証明書申請装置
(一財)日本情報経済社会推進協会、
ハミングヘッズ(株)、(株)アシスト
6715379 2020年6月10日
電力制御システム及び電力制御方法 単独出願 6751797 2020年8月19日
管検査装置及びこれを用いた管検査方法 非破壊検査(株) 6785198 2020年10月28日
〔参考〕2020年度の海外登録件名は無し
<ライセンス新規契約締結実績> 年度 2016 2017 2018 2019 2020
契約件数 4件 3件 2件 0件 3件
<2 知財マッチングへの参画>
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<知的財産における企業価値向上に向けた取組み>
知的財産には、技術開発の成果等を保護する「特許権」、商品やサービス名称等を保護
する「商標権」、音楽や絵画、ソフトウェアを保護する「著作権」などが存在します。
これらの知的財産は、企業の持続的な価値向上に寄与することから、企業防衛のために適
切な対応を行うことが大切です。
(参考) 知的財産とは
【直接的効果】
【間接的効果】
また、事業活動において事前に他社の知的財産権を侵害していないか確認することは、
CSR経営を行う上で重要なことです。
総合研究所では、定期的に知的財産に関する研修を実施しています。
<日常業務における知的財産リスク>⇔ライセンス契約 特許使用
ライセンス料
特許提供
九電グループ
ライセンス収入
ライセンス収入
ライセンス収入
協働
総合研究所
グループ会社
自治体等による
「知的財産マッチング」
の場
特許PR 外部技術
活用ニーズ
他企業A
他企業B
・・・
他企業C
商品・製品化
販売
お客さま
×ばつ
ニーズ
佐賀市高木瀬東1丁目10-1
くろまるJR佐賀駅から佐賀市営バス(32番)乗車し、
東高木バス停下車、徒歩10分
くろまる車(佐賀大和インターから6km、15分)
くろまるタクシー(JR佐賀駅から3km、10分)
福岡市南区塩原2丁目1-47
くろまる福岡空港から地下鉄乗車し博多駅下車
博多駅前A(美野島方面)から西鉄バス(47、48、48-2番)乗車し、
清水四丁目下車、徒歩1分
くろまる天神から西鉄バス(W1〜W4番)乗車し南市民センター前下車、徒歩5分
くろまる西鉄大橋駅から西鉄バス(47、48、48-2、63番)乗車し、清水四丁目
(九電総研前)下車、徒歩1分
くろまるJR竹下駅下車、徒歩10分
くろまるタクシー(JR博多駅から15分、福岡空港から25分)
南市民
センター前
バス停
九州電力(株) 総合研究所 Annual Report 2020 2021年6月発行
〔作成部署・お問合せ先〕
九州電力株式会社 テクニカルソリューション統括本部
総合研究所 研究企画グループ
〒815-8520 福岡市南区塩原二丁目1番47号
T E L:092-541-3090(代表)
Email:gyoumukanri_souken@kyuden.co.jp
パナソニック
佐賀北警察署

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