1 九電グループの概要 2 価値創造ストーリー 3 戦略とパフォーマンス 4 事業を通じた価値創出 5 価値創出の基盤 6 データセクション
目次 24
KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
持続的な企業価値の向上に向けて
九電グループの企業価値について、
PBRを資本収益性
(ROE)
と今後の成長期待
(PER)
に分解し、
分析を行いました。
その結果、
当社の PBR が低位に推移している主な原因は、
「実績としての業績水準の低さ」
「財務面への懸念や、
中長期的な収益機会の不透明さ」
により、
株式市場から期待される利益成長率が低いためと認識しています。
持続的な企業価値向上
(継続的な PBR1倍超)
を実現するためには、
1資本コストを上
回る資本収益性の実現
(ROE の向上)
と2足元の業績回復・将来の成長性に対する評価
の向上
(PER の向上)
が不可欠であると考えています。
2023年度
現在(注記)1
中期的な
水準PBR0.9倍程度
継続的に
1倍以上
を目指すROE20%程度(注記)2ROIC2.5%程度
(期ずれ除き2.0%程度)
2.5%以上
財務レバレッジ
(自己資本比率10.4%)
20%程度PER4.5倍程度
= ×ばつ
2023年4月に目標値を公表したROIC によるマネジメントを通じて、
資本効率を意識し
た継続的
・安定的な利益創出、
成長事業の着実な拡大を進めていくことで、
今後自己資本
の拡充による財務基盤の回復を図る中においても、
資本コストを上回るROE8%程度の
水準を中期的に達成していきたいと考えています。
具体的な方向性として、
それぞれ以下のような取組みを進めていきます。
自己資本を拡充する中に
おいても、中期的な ROE
は資本コストを上回る8%
程度を想定
8〜10%程度
資本効率実績 の 低さ、財
務面・中長期的 な 収益機
会への懸念を払拭し、業
績 の 安定性・成長性に対
する評価を向上
期待利益成長率の
改善により上昇
(注記)1:株価:2023年8月末時点、
1株あたり純利益:2023年度業績予想
(8月時点)
ベース、
1株あたり純資産:2022年度末時点
(優先株除き)
(注記)2:2023年度は、
業績の回復に対し、
自己資本は回復の途上であることから、
中期的な水準より高い資本効率となる見込み
左記の財務面の取組みを推進し、
財務目標である連結経常利益1,250億円以上に向け
て毎期着実に利益の実績を積み上げていくことに加え、
安定的な利益の創出を支える財
務基盤の強化・
それによる株主還元の充実に努めていきたいと考えています。加えて、非財務面の取組みとして、
中長期的な成長期待を高めるカーボンニュートラルなどの環境目
標への取組みや、
持続的な企業価値向上の原動力となる人的資本の強化を実践し、
資本
コストの抑制や、
期待利益成長率の向上につなげていきます。
さらに、
こうした今後の当社の成長戦略を資本市場の皆さまに評価していただくため、
IRを通じた皆さまとの積極的な対話に取り組みます。
PBR・ROE・PERの現状の水準と今後の方向性
ROEの向上
PERの向上
しかく 取組みの視点と対応の方向性
目指す姿
持続的な
企業価値の
向上
(PBR1倍超)
目標 等
取組みの視点1資本コストを上回る
資本収益性実現
(ROE向上)
2025年度財務目標・
経営指標
連結ROIC 2.5%以上
連結ROE 8%程度
連結経常利益
1,250億円以上
自己資本比率
20%程度
早期の50円復配
【財務面の取組み】
ROIC目標
(2023.4公表)
達成に向けたマネジメン
トサイクルの着実な推進
継続的・安定的な利益創
出、財務基盤強化・それ
による株主還元の充実
【非財務面の取組み】 2030年度環境目標
サプライチェーン
GHG排出量 60%減
九州の電化率
家庭部門:70%
業務部門:60%
2030年度 従業員
エンゲージメント 80%
一人あたり付加価値の
向上:1.5倍
【市場との対話】2足元の業績回復・
株主還元による
信頼獲得
将来の成長性に
対する評価獲得
(PER向上)
株主資本コスト抑制
期待利益成長率改善
対応の方向性
中長期的な成長期待を高
めるカーボンニュートラル
や人的資本等の非財務面
での取組み
上記等の取組みに関し、
積極的な対話活動を通じて理解を
促進
しかく 現状分析・今後の方向性
持続的な企業価値
の向上に向けて
資本コストや株価を意識した経営を通じて、
中長期的な企業価値を高めるべく、
2022年度よ
り新たな経営指標として
「ROIC」
を導入し、
2025年度に
「連結2.5%以上」、2030年度に
「連結
3.0%以上」
とする、
グルー
プ 大 の ROIC 目標を新た
に公表しました。
国内電気事業では効率
性と安定供給のバランスを
図りながら、
資本コストと
同等以上 の ROIC を安定
的に確保していきます。一
方、
成長事業では、
資本コ
ストを大きく上回るROIC
を目指していきます。
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KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
持続的な企業価値
の向上に向けて
当社の現在の資本コストについては、
株主資本コストが6%程度、
WACC が
1.2%程度と認識しています。一方、
今後の財務改善に伴う資本構成の変化等
を見据えると、
中長期的なWACCの水準は、
一定程度上昇すると想定しており、
今後の経営判断はこの水準を念頭に行っていきます。
財務改善に伴
う資本構成 の
変化等 により
今後上昇
株主資本
コスト
6%程度WACC1.2%程度
当社の中長期的な成長について、
投資家の皆さまに評価していただくためには、
足元
の業績回復を着実なものとし、
それにより財務基盤の拡充と安定的・継続的なキャッシュ
の創出、
ひいては株主の皆さまへの安定的な配当を行っていくことが必要であり、PERの向上につながるものと考えています。
2023年度は原子力の高稼働等により、
業績はV字回復を見込んでいます。
財務目標
である2025年度連結経常利益1,250億円以上、
2030年度の経営ビジョンである連結
経常利益1,500億円以上に向けて、
原子力の安定稼働に加え、
これまで投資を行ってき
た成長事業からのリターン増加により、
着実な利益成長を実現していきます。
利益成長による営業キャッシュフローの増加に加え、
原子力の安全対策工事も一巡
したことで、
フリーキャッシュフローは2023年度から黒字を見込んでいます。
創出した
キャッシュを原資に、
資本効率を意識した投資を進めることで更なるキャッシュフロー
創出の基盤にするとともに、
早期の50円復配・財務目標である自己資本比率20%の達
成につなげていきます。
連結ROIC目標の達成に向
け、
ROICを事業別の管理指
標とし、
事業部門が自律的に
改善を図っていくとともに、
取締役会及びコーポレート
戦略部門では、
その進捗をモ
ニタリングし、
連結目標達成
に向けて適切な経営資源配
分に努めていきます。 加えて、
資本効率の重要性
を従業員が理解・意識し、具体的な業務に落とし込むこと
ができるように、
ROICツリー
等も活用し、
全社大での理解
推進に取り組んでいます。
ROICマネジメントサイクル
当社の資本コストについて
しかく ROE・ROICと資本コストのイメージROE2019-2021
平均
2019-2021
平均2025目標2025目標ROIC2%1.3%8%
程度2.5%以上
連結 ROIC
目標値
目標設定の
視点
(参考)
目標達成に
向けた事業
別見通し
連結 ROIC>
中長期 WACC
株主価値向上と
財務基盤強化の両立
持続的な
企業価値の創出
2025年度 2030年度
(2019〜21平均)1.3%国内電気事業ROIC成長事業ROIC株主価値 ROE 8% ×ばつ ×ばつ
自己資本比率
20%程度ROIC<WACC投下資本スリム化・最適化投資のスリム化・最適化投資削減経営基盤の強化利益率改善売上拡大・質向上ROIC
主な取組み内容経営リスク低減利益拡大事業環境を踏まえた販売戦略の推進
固定費削減
人的資本経営の推進 / 労働生産性向上
資材調達・工事の効率化
燃料費等の削減・リスク低減
安定供給等を踏まえた設備のスリム化・最適化
収益性・リスク等を踏まえた資産ポートフォリオの構築
電力の安定供給維持DX・
技術基盤の強化
収益性・リスク等を踏まえた投資の見極め / 選択と集中
燃料・資材等の在庫最適化・削減
収支・財務基盤の安定化
投資回転率向上
(投資回収の早期化)
ガバナンスの強化
(ステークホルダーとの信頼構築 等)
電力需要創出
(電化推進、
地域活性化)
新規プロジェクトの探索・開発力向上
既存プロジェクトのバリューアップ
競争力のある供給力確保
(ゼロエミッション電源の最大限活用 等)
販売電力量
拡大
新規・成長
事業拡大WACC(低減)
更なる財務改善
2.5%以上
2.5%程度
5〜6%程度
3.0%以上
2.5%以上
6〜7%程度
さんかく
さんかく
さんかく
さんかく
さんかく
さんかく
効率性と電力の安定供給のバ
ランスを図り、
WACC 以上の
ROICを安定的に確保
事業 / 投資の選択と集中によ
り、
中長期的にWACCを大き
く上回るROICを目指す
しかく 資本収益性を意識したROIC経営の推進
しかく 中長期的な利益成長期待の向上に向けた取組み
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KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
持続的な企業価値
の向上に向けて
PBR の改善を含む企業価値向上に向けた取組みについては、
年に1度、
取締役による
進捗確認と、
必要に応じた見直しの検討を行います。
財務面の取組みに加えて、
非財務面の取組みについても、
当社が中長期的な成長を行
うためには重要となります。人的資本投資による非財務資本の拡充や、
脱炭素に向けた
取組みを行うことが、
将来の成長性に対する評価の獲得につながり、
PER の向上にも貢
献するものと考えています。
人的資本経営の更なる強化に向けた取組みについては P67 、
カーボンニュートラル実
現を通じた成長については P42 に詳細を掲載しています。
非財務面の取組み
コーポレート戦略部門長メッセージ
当社の持続的な企業価値の向上に向けては、
PBRをROEとPER
に分解して捉え、
取締役会でも議論を行いました。
資本効率について、
2023年度は原子力稼働率向上により大きく改
善する見込みであるものの、
今後はそれを一過性のものではなく安
定し
て実現すると
ともに、
成長事業の拡大とバランスシートのコン
トロー
ルを両立させ、
一層の伸長を図る必要があると考えています。
こうし
た課題認識のもと、
新たな経営指標としてROICを導入しました。
現在はマネジメントのPDCAサイクルに組み込み、
ROICを軸とした各事業の分析や改善
の方向性について、
取締役会をはじめ社内で議論を行っています。
特に電気事業では安定供
給とのバランスを考慮する必要がありますが、
コーポレート戦略部門としては、
各事業に対し
てROICを意識した運営を促すとともに、
事業ポートフォリオの最適化や更なる資本効率の
向上を進めていくことで、
企業価値の向上につなげていきます。
また、
ROIC経営の社内への浸透にも取り組んでおり、
経営トップが事業所と対話を行う際
にROICについての解説を行っているほか、
各所の事業計画も資本効率を意識したものに見
直しを進めています。
目標や取組みが形骸化しないよう、
継続的に経営層から資本効率の重
要性を発信していきます。 財務面においては、
2022年度の業績悪化により、
自己資本が大きく毀損することとなりま
した。
それら財務の状況や中長期的な収支の状況を鑑みて、
配当を無配にしたことは、
株主
の皆さまには大変申し訳なく思っております。
今後継続的な成長を実現し、
それにより安定的
に株主の皆さまへの還元を行うためにも、
財務の改善は当社にとって喫緊の課題となっ
ています。
財務の安定性向上に向けては、
転換権のないB種優先株式を従前のA種から1,000億円増
額して2,000億円発行し、
一定の底上げを図っていますが、
今後はCFの向上・ROICを意識し
た投資配分を行い、
株主還元、
有利子負債削減を着実に進めていきます。
今後自己資本の拡充によりROEの分母が大きくなるとすれば、
PBRの向上にはROICの
改善とともに更なるPERの向上が不可欠だと考えています。
安定した利益が積み上げられる
ことを実績で示していくとともに、
50円復配といった株主還元、
人的資本経営の更なる強化
やカーボンニュートラルの実現といった非財務面の取組みにより、
当社の中長期的な成長性
を資本市場の皆さまに評価いただけるよう、
企業価値向上に全社一丸となってしっかりと取
り組んでいきます。
コーポレート戦略部門長
木戸 啓人
営業 CF
3,400
電気事業
投資等
1,700
成長投資
1,000FCF700
原子力利用率向上による利益増
成長事業の投資リターン増
効率化による固定費削減 等
営業 CF の増加
原子力安全対策工事の減少 等
財務目標期間内の
可能な限り早期に50円復配
自己資本比率20%程度を目指す
B 種優先株式の発行 等
電気事業投資の抑制
国内電気事業
成長事業
WACC 以上の ROICを
安定的に確保
中長期的にWACCを大きく
上回るROICを目指す
資本効率を意識した利益拡大
中長期的な
キャッシュフローの
創出
株主還元の充実
財務安定性の向上
配当
有利子負債抑制
(億円)
しかく 今後の取組みの進捗確認
しかく 2025年度のCF
(キャッシュフロー)
イメージ

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