1 九電グループの概要 2 価値創造ストーリー 3 戦略とパフォーマンス 4 事業を通じた価値創出 5 価値創出の基盤 6 データセクション
目次 43
KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
風力
九電グループでは、
陸上の風力発電だけでなく、
洋上風
力発電についても、
これまで蓄積した技術・ノウハウを活
かしながら導入拡大に向け積極的に取り組んでいます。
九電みらいエナジーは、
電源開発(株)、
北拓(株)、
西部ガ
ス(株)、
(株)九電工とコンソーシアムを組み、
福岡県北九州市
の響灘において、
日本初となる大規模洋上風力発電プロ
ジェクトを進めており、
2023年3月に建設工事を開始し、
2025年度の営業運転開始を目指しています。
バイオマス
未利用の木材等を燃料として発電するバイオマス発電については、
燃料が持続可能な形
で生産されたものであることを確認した上で、
九電みらいエナジーを中心に開発に取り組ん
でいます。
2023年3月には、
九電みらいエナジー等が出資する石狩新港バイオマス発電所が営業運
転を開始しました。
本発電所は、
木質ペレット並びにパーム椰子殻
(PKS)
を燃料としており、
約5�2万kWの発電を行います。 潮流
九電みらいエナジーは、
長崎県五島市沖で国内初の1,000kW級大型潮流発電の実証事
業に取り組んでいます。
本事業は、
2021年度まで同社が同地点で実施していた500kW級潮流発電実証事業の成
果を活用し、
潮流発電機の高効率化による技術面の実用化や商用化に向けてのビジネスモ
デル構築を目指すもので、
本事業を通じて日本における潮流発電の早期実用化を目指します。
また、
九電みらいエナジー及びキューデン・インターナショナルは、
シンガポール沖での小
型潮流発電
(7k×ばつ4基)
の実証事業に参画し
ています。
ラッフルズ灯台に供給する電力をディー
ゼル発電から潮流発電に置き換えるこ
とで、
海事
・港湾分野の脱炭素化に貢
献するだけでなく、
本実証で得られる
知見を海外における今後の分散型電
源事業の展開に活用します。
地熱
地熱については、
長年にわたり開発を行っており、日本最大規模の八丁原発電所等、
九電グループが国内
に保有する設備容量は約22万 kWと全国の設備容量
の約42%を占めています。培った技術を活かして、九州はもとより、
国内外で新規開発を進めています。
また、
インドネシアにおいては、
世界最大級となるサルーラ
地熱 IPP(注記)
プロジェクト
(約33万 kW)
に参画しています。
(注記):IndependentPowerProducer
(独立系発電事業者)、
発電だけを行って電気事業者に卸売販売をする事業者
しかく再エネ開発量[2022年度末時点、
海外含む]
電源の低・脱炭素化 [国内外における再エネ開発量目標:2025年400万kW、
2030年500万kW]
九電グループは、
これまで約261万kW の再エネ開発実績があり、
グループの強みである
地熱や水力の開発に加え、
導入ポテンシャルが大きい洋上風力やバイオマス等について拡大
を図り、
再エネの主力電源化を推進していきます。
水力
水力については、
1898年に建設された九州で最も
古い小山田発電所
(鹿児島)
や1955年に建設された
日本初の本格的なアーチ式ダムを有する上椎葉発電所
(宮崎県)
をはじめ、
長年の開発実績があります。現在
は、
未利用エネルギーを有効活用する新規開発と、既存設備のリプレース
(更新)
により、
出力
・発電量の向
上に取り組んでいます。
太陽光9�4万kW 地熱55�4万kW
風力20�7万kW バイオマス45�7万kW
水力129�5万kW
(揚水発電を除く)
しかく 再エネの主力電源化
〔脱炭素社会の牽引〕
脱炭素社会の牽引
出典:火力原子力発電技術協会
 「地熱発電の現状と動向」
をもとに作成
しかく国内における地熱発電所 (出力
[万kW]、2021年3月末時点)
上椎葉発電所
北九州響灘洋上ウインドファームの事業実施区域22.22.33(42%)
(42%)31.3(58%)
九電グループ
九電グループ以外
開発サイト
1 九電グループの概要 2 価値創造ストーリー 3 戦略とパフォーマンス 4 事業を通じた価値創出 5 価値創出の基盤 6 データセクション
目次 44
KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
脱炭素社会の牽引
脱炭素社会の牽引
原子力は、
CO2排出抑制面やエネルギーセキュリティ面等で総合的に優れた電源である
ことから、
安全性の確保を大前提に、
最大限活用していきます。
火力発電については、
再エネの導入増加に伴う出力
変動に対する調整力として重要な役割を担っており、燃料消費量、
CO2排出量抑制の観点から、
総合熱効率の
維持・向上に継続的に取り組んでいます。
今後も、
高経年化した火力発電所の廃止
・計画停止
や、
非効率石炭火力の2030年までのフェードアウトを
目指すことに加え、
燃焼時にCO2が発生しない水素・ア
ンモニアの発電用燃料への利用に向けた検討等、
環境
負荷の低減を図るための取組みを進めていきます。
しかく原子力発電所
(2023年3月末)
しかく九州電力の原子力発電によるCO2排出抑制効果 しかく原子力発電所の設備利用率(%)しかく火力総合熱効率の推移
しかく水素・アンモニアの混焼イメージ
高稼働率での原子力発電所の安全・安定運転の継続
水素・アンモニア混焼に向けた検討・技術確立
水素・アンモニア燃料のサプライチェーン構築
原子力の収益貢献
九州電力では、
長期的なエネルギーの安定確保や地球環境問題への対応等も踏まえ、安全性の確保を大前提として、
発電時にCO2を排出しない原子力発電を最大限に活用してい
ます。
安全性の確保を大前提に、
設備利用率の向上に向けた取組みを進めていきます。
2030年までの水素1%、
アンモニア20%混焼技術確
立に向け、
以下の取組みを推進しています。 ・燃料性状を踏まえた受入・貯蔵・払出設備の検討 ・
安全・安定燃焼のための試験実施 ・
燃料変更に伴う環境対策検討
2023年4月には、
苓北発電所において、
九州電力初と
なるアンモニア混焼試験を開始しました。
今後も、
混焼
技術の確立に向け、
積極的に取り組んでいきます。
燃焼時にCO2を排出しない水素・アンモニア燃料が本格導入される場合に備え、
上流から下
流までの安定的かつ経済的なサプライチェーンの早期構築を目指し、
国内外の様々な分野の企
業との協業関係構築及び共同検討を進めています。
原子力は、
天候や時間帯に左右されず、
発電可能な電源であることから、
安定した収益確
保に寄与するとともに、
運転中にCO2を排出しないことから、
再エネと同様に非化石価値取
引市場からの収益も期待できます。
安全対策費用等のコストを考慮しても、
中長期的観点から、
原子力は競争力のある電源
であり、
そのような点も踏まえ、
総合的に投資判断を行っています。
発電所名 出 力 運転開始 型 式
玄 海
3,4号機:
各118万kW
3号機:1994年3月
4号機:1997年7月 加圧水型
軽水炉
(PWR)
川 内
1,2号機:
各89万kW
1号機:1984年7月
2号機:1985年11月
(注)
玄海1号機は2015年4月、
玄海2号機は2019年4月に運転終了 玄海原子力発電所
(佐賀県)
川内原子力発電所
(鹿児島県)0.020.731.936.773.182.0
19.3 20.691.457.724.419.39.15.02.50.0
全国平均
九州電力
2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 202262.413.4
2021 (年度)
(注記)1:川内1、
2号機特定重大事故等対処施設設置工事に伴う
定期検査停止のため設備利用率低下
(注記)2:玄海3、
4号機特定重大事故等対処施設設置工事に伴う
定期検査停止のため設備利用率低下
(注記)1
(注記)2
しかく 原子力発電の最大限の活用 しかく 火力発電の低炭素化
努力を積み重ね、
アンモニア混焼技術の確立に向けて着実に前進
苓北発電所のアンモニア混焼試験は当社初の取組みで国内での事例が
限られていたため、
所内関係者と何度も打ち合わせを重ねて各課題の検討
を進めてきました。
混焼による環境や設備への影響を想定することに大変
苦労しましたが、
実際に混焼が始まり、
サーモカメラで火炎の状態や温度
変化を確認できた時は、
やりがいと達成感を実感できました。
カーボンニュートラルの目標達成に向けた取組みは、
まだスタートした
ばかりで難しい課題も多いですが、
貢献できるようにこれからも挑戦を続け
ていきます。
九州電力
火力発電本部 苓北発電所
オペレーショングループ
石橋 摩利央
VOICE20192016(%)(注記)熱効率は低位発熱量ベースで算定
発電端 送電端
2017 2018 2020 2021 2022
(年度)0414243444543.344.8 44.8 44.544.143.342.842.143.445.342.944.743.345.1404142434445404142434445
2013年度
実績値
(当社)
2022年度
実績値
(当社)
(注記)1
:2021年度のCO2排出係数
(調整後)
0.382kg-CO2/kWh使用
(注記)2
:2013年度のCO2排出係数
(調整後)
0.617kg-CO2/kWh使用
(注記)3
:2022年度実績については暫定値であり、
確定値については12月頃
国から公表予定
5,210万
トン
1,290万
トン(注記)2
2022年度
実績値
(当社)
800万
トン(注記)1 原子力に
よる
抑制効果
原子力
以外の
要因
原子力
以外の
要因
原子力に
よる
抑制効果
〈参考〉
原子力発電所が全台停止した場合
(2013年度)
との比較
3,320万
トン(注記)3
3,320万
トン(注記)3
1 九電グループの概要 2 価値創造ストーリー 3 戦略とパフォーマンス 4 事業を通じた価値創出 5 価値創出の基盤 6 データセクション
目次 45
KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
脱炭素社会の牽引
再エネ出力の予測精度向上
オンライン代理制御
(経済的出力制御)
の導入
九州電力送配電では、
再エネを最大限活用するため、
再エネ出力の予測精度向上に取り
組んでいます。
再エネ出力予測に必要な日射量予測においては、
九州各地の予測地点を細分化し詳細な
予測を把握するとともに、
複数の気象予測モデルを統合した予測を活用することで、
予測
精度の向上を図っています。
九州電力送配電では、
2022年12月に九州本土における太陽光発電所の出力制御方法を
オンライン代理制御に見直しました。
この方法では、
きめ細やかに出力調整ができるオンラ
イン発電所で実際の出力制御を行うため、
制御量をより少なくすることが可能となりました。
再エネの最大限受け入れ
コネクト&マネージの導入
九州では、
太陽光発電を中心とした再エネ発電設備の導入が急速に進んでいます。
このよ
うな中、
九州電力送配電では、
「火力発電の柔軟な運用」
「揚水発電所や大容量蓄電池の活用」
「既存系統の更なる有効活用」
等を通じた安定供給の維持と再エネの最大限の受け入れに取
り組んでいます。
その取組みの一つとして、
九州電力送配電で
は、
国の実証事業を受託し、
大容量蓄電システ
ムを備えた豊前蓄電池変電所を設置しました。
本実証事業で得られた知見・技術を活用し、
太陽光や風力発電の発電量の変動に応じて、
この大容量蓄電システムを効率的に運用する
ことで、
需給バランスの改善に努めています。
九州の再エネポテンシャルを最大限活用しつつ、
再エネ大量導入と電力品質維持を両立
させるため、
再エネ等の連系拡大や、
ネットワーク利用率の向上に取り組んでいます。
九州電力送配電では、
再エネを最大限受け入れできるよう、
「コネクト&マネージ」
を導
入し、
既設の送変電設備の容量を最大限活用しています。
具体的には、
設備の単一故障
(N-1故障)
が発生しても安定的に送電できる容量を確保
した上で、
N-1故障が発生した際には瞬時に発電を制限する
「N-1電制」
を導入すること
で、
運用容量を超えた電源接続を可能として
います。
また、
送変電設備の空きがある時間帯に
発電し、
空きが十分でない時間帯には発電
を抑制する
「ノンファーム型接続」
の受付を
2021年1月から基幹系統で開始し、
2023年
4月からはローカル系統に拡大しています。
しかく 送配電ネットワークの高度化
再エネ出力制御量低減のための技術開発事業
九州電力送配電では、
国の
「再生可能エネルギー出力制御量低減のための技術開発事
業」
を受託し、
関門連系線で事故が発生した際に、
瞬時に複数の発電所を停止させ、
九州エ
リアの需給バランスを維持する転送遮断システムを構築しています。
このシステムによって、
関門連系線の九州エリアから他エリアへの再エネの送電可能量を
最大で30万kW程度拡大することが可能
となり、
出力制御量の低減に効果的であ
ることを確認しました。
本実証事業で得られた知見・技術を活
用し、
今後も再エネの最大限の受入れに
向けて取り組んでいきます。( )ノ
ンファー
ム型接続により空き容量を活用
送変電設備の
潮流
N-1電制適用により運用容量を超えて接続
運用容量( )しかく
コネクト&マネージによる空き容量の活用等
(イメージ)
PCS収納パッケージNAS電池コンテナ
全252台
出力200kW/台
合計50,400kW
6kV受電設備収納パッケージ
66/6kV連系用変圧器
(×ばつ2台)
しかく大容量蓄電システムを備えた 「豊前蓄電池変電所」
全景
しかくシステムのイ
メージ
オンライン代理制御(経済的出力制御)の導入
九州電力送配電(株)では、2022 年 12 月に九州本土における太陽光発電所の出力制御方法をオ
ンライン代理制御に見直しました。
この方法では、
きめ細やかに出力調整ができるオンライン
発電所で実際の出力制御を行うため、制御量をより少なくすることが可能となりました。
今後もこの運用を的確に行い、
出力制御量全体の低減に取り組むとともに、
再生可能エネル
ギーの更なる受け入れに取組んでいきます。オオン
ンラ
ライ
イン
ン発
発電
電所
所 オ
オフ
フラ
ライ
イン
ン発
発電
電所所電力 電力
代理で制御 買
買取
取先先(小売会社)
(送配会社)
通常通り発電
代理分を
補填
代理分を
控除
発電料金 発電料金P13 1 九電グループの概要 2 価値創造ストーリー 3 戦略とパフォーマンス 4 事業を通じた価値創出 5 価値創出の基盤 6 データセクション
目次 46
KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
脱炭素社会の牽引
調達資金の充当状況及び環境改善効果
(2023年3月末時点)
IPP等投資事業
新たな事業領域への進出
海外コンサルティング事業
市場の成長性が高いアジアを中心に、
米国・中東にも進
出しており、
欧州やアフリカでの事業機会の発掘にも取り
組んでいます。
2022年度は、
当社グループ初のアフリカにおける未電
化地域への電力供給事業や東南アジアでの再エネ開発事
業への参画等の新たな取組みを展開しました。
近年、
島嶼国でのマイクログリッド事業や中東における送配電事業など、
事業領域の拡大
にも取り組んでいます。
グループ会社をはじめとした専門性の高いパートナーと協力し、
再エネ導入調査、
電力マ
スタープラン策定支援等を実施しています。
2022年度は、
2021年度からの継続案件である、
キューバの蓄電池とEMSを用いた電力
供給改善や再エネ導入を目指した電力マスタープラン作成プロジェクトに加え、
ケニアの送
電系統技術能力強化に向けたプロジェクトを実施しました。
九州電力は、
九電グループの2050年カーボンニュートラルの実現に向けた
「電源の低・脱炭素化」や「電化の推進」
の取組みについて、
幅広いステークホルダーの皆さまにこれま
で以上に知っていただくことや、
資金調達の多様化を図ることを目的に、
グリーン・トランジショ
ンファイナンスを推進しています。
2022年度は、
旧一般電気事業者として初となるトランジションボンドの発行や国の利子
補給制度初となるトランジションローンを実行しました。
今後、
ファイナンスの面からもカーボンニュートラルの実現に向けた取組みを推進してい
きます。
九電グループが国内外で蓄積した電気事業等に関する技術・ノウハウを活かし、
世界各国・地域のニーズに応じた再エネ、
低炭素化に資する火力発電、
送配電事業等に取り組んでいます。
海外における展開エリアは P05 参照 
〔海外持分出力目標:2030年500万kW〕
九電グループが参画する
「アラブ首長国連邦 海底直流送電事業」がPFI Award 2022を受賞しました
TOPICS
キューデン・インターナショナル及び九州電力送配電が参画する、
アラブ首長国連邦アブダビ
首長国で建設・運営される海底直流送電事業が、
PFIAward2022を受賞しました。
PFIAwardは、
PFI誌(注記)1
が、
世界各地区の電力部門において最も注目すべきプロジェクト・
ファ
イナンス(注記)2
案件を表彰するもので、
本プロジェクトは、
2022年の中東地域における対象プロジェ
クトとして選出されました。
海底直流送電事業でプロジェクト・ファイナンスが組成された実績
がない中、
大型のプロジェクト・ファイナンスによる融資組成を成功させたこと等が評価された
ものです。
しかく
「九州電力トランジションボンド」
しかくトランジションローン
(資金使途不特定)
しかくトランジションボンド 資金充当状況
しかくグリーン・
トランジションファイナンスの対象プロジェクトを含む主な環境改善効果
(注記):2021年度のCO2排出係数
(調整後)
0�382kg-CO2/kWhを使用
(注)
金額は、
億円未満を切り捨てで表示
(注記)1
:ProjectFinanceInternational誌。
ThomsonReuters社が発行するプロジェクト・ファイナンス業界の専門誌
(注記)2
:プロジェクトの将来キャッシュ・フローを返済原資とする資金調達方式
回号 発行日 発行額 年限 利率 資金の使途
第1回
2022年
5月24日
300億円 5年 0�350% ひびき発電所
(福岡県、
最新鋭の高効率LNG火
力発電所)
の開発及び既存火力発電所の休廃止
に係る新規投資及び既存投資のリファイナンス
第2回 250億円 10年 0�644%
借入年月 借入額 借入期間 特徴
2022年
11月
500億円 10年
・産業競争力強化法に基づく成果連動型利子補給制度を活用
(日本初)
・設定した環境目標を達成した場合、
国からの利子補給により最大0�2%
 の利下げ実施
発行額 充当金額 (うちリファイナンス充当分) 未充当金額残高
550億円 119億円 74億円 430億円
再エネ発電種別 地熱 水力 風力 バイオマス 太陽光 合計
九電グループ
再エネ開発量
約55�4万kW 約129�5万kW 約20�7万kW 約45�7万kW 約9�4万kW 約261万kW
2022年度CO2
排出削減量(注記) 約46万トン 約113万トン 約5万トン 約28万トン 約3万トン 約195万トン
出資先のペトログリーン社(注記)
が保有する
ナバス風力発電所
(フィリピン)
(注記):再エネ開発会社
しかく グリーン・
トランジションファイナンスの推進 しかく 海外事業の積極展開〜持続可能な社会づく
りへの貢献〜
1 九電グループの概要 2 価値創造ストーリー 3 戦略とパフォーマンス 4 事業を通じた価値創出 5 価値創出の基盤 6 データセクション
目次 47
KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
脱炭素社会の牽引
電化の推進
環境にやさしいエネルギーと、
九電グループのリソースを組み合わせ、
電化のポテン
シャルが大きい九州を中心に最大限の電化に挑戦し、
社会全体の温室効果ガス
(GHG)
排出削減に貢献します。
家庭部門では、
オール電化の良さをお伝えする
イベントやマスPR 等を拡充し、
様々な機会を捉え
た営業活動を展開することで、
オール電化住宅を
推進しています。
業務部門における空調・給湯設備では、
お客さま
設備の使用状況に応じた最適な高効率ヒートポン
プシステムの提案、
また、
厨房設備では、
電化厨房
の使いやすさ
・衛生面
・経済性等のメリットを幅広
く訴求することで、
電化設備の導入を進めています。
これらの取組みにより、
2050年における九州
の電化率100%を目指し、
2030年には家庭部門
で70%、
業務部門で60%の電化率実現に貢献し
ていきます。また、
その実現に向け、
2021年から
2030年合計の増分電力量として、
家庭部門で15
億kWh、
業務部門で16億kWhを目指します。
産業部門では、
ヒートポンプなど熱源転換機器の技術研究を行うとともに、
生産工程にお
ける幅広い温度帯
(温水、
蒸気、
加熱等)
の熱需要に対する電化に挑戦しています。
また、
お客
さまと共に現地調査・検討を行い、
エネルギーの利用効率向上に向けた省エネルギー提案を
行っています。
運輸部門では、
2030年で社有車の100%EV化を目指すとともに、
EVの普及促進に向け、
EVシェアリングサービスや充電インフラの拡大、
EVを活用したエネルギーマネジメントなど、
事業やサービスを提供しています。
〔社有車へのEV導入台数2022年度:95台
(累計:16%)〕電気給湯機・蓄電池等のリース・販売サービス
「九電スマートリース」
の提供
EV充電サービスの展開
お客さまの
「安心
・安全
・快適
・経済的で地球環
境にやさしい」
毎日の実現に貢献するため、
電気給
湯機・IHクッキングヒーターや蓄電池等を、1初期費用0円2修理費や定期点検も0円
(契約期間内)3高品質な工事等により、
お客さまに長く安心
してお使いいただける
「九電スマートリース」
を提
供しています。 マンション居住者に対して、
駐車場の各区画に
個人専用の EV 充電設備を整備し、
快適な EV 充
電環境を提供するサービス
「PRiEV
(プライブ)」を2023年1月から首都圏及び福岡市で開始して
います。
2023年6月には、
(株)ヤナセと業務提携契約を
締結し、
PRiEV 導入済
・導入予定の住宅における
EV 紹介などに共同で取り組んでいます。
国内最大級の出力となるEV用
「大容量充放電器」
を共同開発しました
TOPICS
九州電力と九電テク
ノシステムズ、
キューヘンの3社は、
電気バス等商用・業務用EVを導入・運行する企業・自治体等の事業所向け大容量充放電器を
共同開発しました。
現在国内で普及しているEV用充放電器は、
乗用EVと
組み合わせて一般家庭等へ電力を供給する出力10kW以下のものが主流で
すが、
今回開発した充放電器は、
1国内最大級となる45kWの放電出力、2工場等に使われる三相動力負荷にも供給可能、
32台のEVに同時接続し交
互に充放電が可能、
等の優れた特徴があります。
これらの特徴を活かし、EVの多目的活用を実現することで、
EVの導入拡大に貢献していきます。 大容量充放電器
しかく 家庭・業務部門
しかく 産業・運輸部門
増分電力量
実績
部門 2022年度 累計
(2021年度〜)
家庭 1�2億kWh 2�5億kWh
業務 1�0億kWh 2�1億kWh48%業務
部門58%家庭
部門201360%70%15億kWh16億kWh2030100%100%2050(注)
〔 〕
は増分電力量
(2021-2030年合計)
しかく九州の電化率向上に貢献
しかく九州におけるオール電化累計戸数0406080100120
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021130(万戸)44536067748085909498103108113117122127
オール電化住宅累計戸数
(年度)2022 1 九電グループの概要 2 価値創造ストーリー 3 戦略とパフォーマンス 4 事業を通じた価値創出 5 価値創出の基盤 6 データセクション
目次 48
KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
脱炭素社会の牽引
省エネの推進
エネルギー政策への提言・関与
地域のカーボンニュートラル推進やレジリエンス強化に向けた自治体等の協業ニーズに
対し、
九電グループのソリューションの提供を通じて地域・社会の課題解決に貢献し、
ゼロカー
ボン社会を共創していきます。
九州電力の、会員サイト
「キレイライフプラス」
では、
毎月の電気料金やご使用量をメールでお
知らせしたり、
パソコンやスマートフォンから確
認できるだけでなく、
他のご家庭とご使用量を
比較する
「省エネランキング」、ご使用量があら
かじめ設定した値を超えた場合にお知らせする
使用量超過メール等の便利なサービスを提供し
ています。
九州電力は、
DRを用いた需給バランスの最適
化により、
お客さまの省エネ・電気料金低減への
貢献、
九州電力の供給コスト削減ならびに再エネ
の有効活用に資する仕組みづくりを目指し、
スマ
ホアプリ
「九電eco/キレイライフプラス」
を利用
した、
DRサービスに取り組んでいます。
九電グループでは、
お客さまの豊かで快適な暮らしをサポートするため、
多様なサービ
スを提供し、
自社のみならず社会全体の温室効果ガス
(GHG)
排出削減にも貢献しています。
地域エネルギーシステムの構築
森林資源の活用によるJ-クレジット創出・活用事業
地域エネルギーシステムは、
電気
事業のビジネスモデルを大きく変革
させる可能性があり、
九電グループ
の強みを活かせる事業領域である
ことから、
新たな機会と捉え、
情報
収集や実証フィールドの選定に向
けて自治体等と調整しています。
具体的には、
地域エネルギーシス
テム構築に必要となる技術ノウハウ
の獲得や事業モデルの構築に向け
て実証地点を検討し、
実証実験を
計画しています。
自治体等が所有する森林からのJ-クレジット(注記)
創出支援事業を行っており、
九州電力の社
有林からもJ-クレジットを創出しています。
創出したJ-クレジットは、
九電グループの地域共生活動や、
地場企業の生産活動等のカー
ボンオフセットに活用予定です。
しかく地域エネルギーシステムのイメージ
(注記):森林によるCO2吸収量や再エネ利用・省エネ導入によるCO2削減量を国がクレジットとして認証し取引する制度
(注記):電力需要を減少または増加させることによリ、
需要と供給のバランスをとる仕組みで、
九州電力のご家庭向 けメニューに加入のお客さま
(スマートメーター設置済)
を対象に、
九州電力からのご案内に応じて、
お客 さま側
(需要側)
で節電または需要創出を行っていただく取組み
九州電力は、
GXリーグへの参画を通じ、
カーボンニュートラル
の実現に向けて同リーグのコンセプトである
「リーダーシップ」を発揮するとともに、
参画企業をはじめとしたステークホルダーの皆
さまと協働することで、
日本のGHG排出削減に向けた市場のルー
ル形成や、
ビジネス機会の創出等に最大限貢献していきます。
しかく 地域のカーボンニュートラルの推進
しかく 便利な情報をお届けする会員サイト
「キレイライフプラス」
しかく 家庭向けデマンドレスポンス(DR)(注記)
サービス
しかく GXリーグ基本構想への賛同
しかく「キレイライフプラス」
の会員さま向けサービス
電気料金・ご使用量
をWebで確認!暮らしに
役立つ情報
をメール配信!過去の使用状況
を表やグラフで確認!(最大24ヶ月)
お客さまの
最適料金プラン
をお知らせ
使用量超過メール
で使い過ぎを防止!!
時間単位・日単位で
使用量を
見える化!(注記)
(注記)
(注記)スマー
トメーターのお客さま向けサービス 検 索
キレイライフプラス
▼詳細はこちら
電気料金・ご使用量
をWebで確認!暮らしに
役立つ情報
をメール配信!過去の使用状況
を表やグラフで確認!(最大24ヶ月)
お客さまの
最適料金プラン
をお知らせ
使用量超過メール
で使い過ぎを防止!!
時間単位・日単位で
使用量を
見える化!(注記)
(注記)
(注記)スマー
トメーターのお客さま向けサービス 検 索
キレイライフプラス
▼詳細はこちら
トン
トン
トン
トン
トン
1 九電グループの概要 2 価値創造ストーリー 3 戦略とパフォーマンス 4 事業を通じた価値創出 5 価値創出の基盤 6 データセクション
目次 49
KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
脱炭素社会の牽引
(注記)1
:2022年12月に実施された生物多様性条約COP15において定められた、
生物多様性の世界目標
「昆明・ モントリオール生物多様性枠組」
の主要な目標であり、
2030年までに陸域の30%と海域の30%の保全を
世界各国が目指すもの。
(注記)2:環境省による民間の取組み等によって生物多様性の保全が図られている区域を認定する仕組み。2022 年度は認定実証事業として本仕組みを試行・検討し、
2023年度から正式な認定を開始。
環境負荷の低減
九州電力は、
グループ会社の九州林産と協働で、
4,447haの社有林を維持管理しています。
2005年 に は 環境 に 配慮 した 森林管理 が 行 わ れてい ることを 認証 す る FSC®
(Forest
StewardshipCouncil®
/ 森林管理協議会 )認証 を 電力会社として初 めて取得 する
(FSC-
CO18956)
等、
高い評価を得ています。
また、
社有林の維持管理により、
2022年度は年間約4�1万
トンのCO2を吸収固定しており、
そのうち約1万
トンについて、
J-クレジットを創出しています。
今後も社有林の維持管理を通じて、
水源かん養(森林が水を保ち川の水量を安定させる機能)
やCO2吸収等、
森林の持つ公益的機能の維持・向上に努めていきます。
九州電力は、
生物多様性に関する世界目標である
「30by30
目標」
(注記)1
に貢献するため、
環境省の
「30by30アライアンス」に参加しています。
2022年度には当社社有林が
「自然共生サイト」
(注記)2
の試行実
施において
「認定相当」
の評価を受けました。
2023年度は認
定取得に向けて取組みを進めていきます。
九電グループは、
事業活動に伴い環境負荷を発生させている企業グループとして、
環境保全に
真摯に取り組む責務があると認識しています。
このため、
事業活動全般にわたって、
事業活動と環境を両立する
「環境経営」
を推進し、
生物多
様性の保全や循環型社会の形成などに取り組むことで、
持続可能な社会の実現に貢献していきます。
しかく 社有林の維持管理を通じた持続可能な社会の形成活動
しかく
「自然共生サイト」
の認証を通じた30by30目標への貢献
資源循環の拠点
「サーキュラーパーク九州」
の実現に向けて
TOPICS
九電グループでは、
サーキュラーエコノミーと脱炭素の推進による
持続可能な社会の構築に向けて、
川内発電所跡地
(鹿児島県)
を資
源循環の拠点
「サーキュラーパーク九州」
として位置づけ、
取組みを
進めております。
2023年7月26日には、
(株)ナカダイホールディングスと共同で
「サー
キュラーパーク九州(株)」
を設立しました。
今後、
2024年4月の事業
開始に向け、
企業や地域の廃棄物を再資源化する
「リソーシング事業」
や、
産学官のネットワークを活用した共同研究・実証実験などの
「ソ
リューション事業」
等に取り組んでいきます。
―川内発電所跡地にて資源循環の社会実装に取り組みます―
(注記)1:2023年7月31日、
鹿児島県の立ち会いの下、
川内発電所の立地する薩摩川内市とサーキュラーパーク九州(株)において、
今回事業に係る立地協定を締結。
九州電力が設立した九電みらい財団は、
豊かな自然を守り続けること、
子どもたちが輝く未来
につなげていくことを目的として活動しています。
ラムサール条約に登録された坊ガツル湿原
(大分県竹田市)
一帯で
「野焼き」
等の生態系や景
観の保全活動に取り組むとともに、
九州電力の社有林
「く
じゅう九電の森」
(大分県由布市)
で、子供たちの環境保全意識啓発に向けた体験型の環境教育に加え、
VRを活用したデジタル環境教
育にも取り組んでいます。
また、
環境教育や市民交流の拠点となる森づく
りを目指し、
子どもたちや地域の皆さまと一緒
にカーボンニュートラルに取り組む
「九電みらいの森プロジェク
ト」
を九州各地で展開することとし、
第一弾として
「いさはや九電みらいの森」
(長崎県諫早市)での植林活動や環境教育を開始しま
した。
しかく 地域の皆さまと取り組む環境活動
立地協定調印式(注記)1
の様子
環境教育
坊ガツル
「希少植物保護活動」
坊ガツル湿原
「本焼き」
社有林
(大分県由布市、
山下池周辺)
1 九電グループの概要 2 価値創造ストーリー 3 戦略とパフォーマンス 4 事業を通じた価値創出 5 価値創出の基盤 6 データセクション
目次 50
KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
脱炭素社会の牽引
2022年12月にカナダで採択された新たな生物多様性に関する世界目標である
「昆明・モントリオール生物多
様性枠組」
をはじめ、
昨今、
自然資本への取組みに世界的に注目が集まっています。
九電グループでは、
「脱炭素社会の牽引」
を経営上の重要課題
(マテリアリティ)
と位置付けており、
気候変動
への対応として2020年からTCFD 提言に基づくシナリオ分析と情報開示を継続するとともに、
生物多様性の保
全や資源循環等を含む
「環境負荷の低減」
に向けた取組みを進めています。
今年は、
自然関連財務情報開示タスクフォース
(TNFD)
β版 v0.4の情報開示フレームワーク及び電気事業者
向けのガイダンスを参照し、
事業活動における自然資本に関わるリスクや機会に関する分析を試行的に実施し、
2023年9月に電力会社で初めてTNFD β版 v0.4に基づく情報開示を行いました。
(詳細については、
「九電グルー
プ TNFDレポート2023
(詳細版)」をご参照ください。) 今後も継続的に、
自然資本への影響と依存、
リスクの評価を行い事業活動を展開することで、
「ネイチャーポジティ
ブ経済」
への移行に貢献するとともに、
ステークホルダーの皆さまからの信頼向上に継続的に取り組んでいきます。
九州の地域経済や生活は、
九州の豊かな自然資本によって支えられて
おり、
その九州の発展なくして九電グループの発展はありません。
九電グ
ループは、
「九電グループ環境憲章」
のもと、
事業活動と環境が両立する
環境経営を着実に推進する中長期的な基本方針として
「環境活動方針」
を定め、
豊かな自然環境を未来につなげるべく、
事業活動に伴う環境負
荷及び環境リスクの低減に努めるとともに、
生物多様性の保全に取り組
んできました。
水源かん養林として保有してきた社有林
(大分県を中心とした4,447ha)
は、生態系 や 水 を 育 む 森 の 役割 を 果 た して お り、FSC®(Forest
Stewardship Council®
(森林管理協議会)・本部ドイツ) 認証材の生産
や、
環境教育の場所として活用しています。
また、
くじゅう坊ガツル湿原
一帯において、
希少な生態系を残す
「坊ガツル」
の湿原を維持することを
目的とした
「野焼き」
を地域の皆さまと一緒に復活させるとともに、
希少
植物の生態系を脅かす外来種植物の駆除活動や
「ミヤマキリシマ」
の植
生保護活動を実施してまいりました
(くじゅう坊ガツル湿原は、
「くじゅう
坊ガツル・タデ原湿原」
としてラムサール条約に登録)。 さらに、
資源循環の取組みを加速させるため、
2023年7月、
川内発電
所跡地を拠点とする
「サーキュラーパーク九州(株)」
を設立しました。
今後、
地元の自治体や企業等と連携し、
企業や地域の廃棄物の再資源化 (リソー
シング事業 )や産学官のネットワークを活用した共同研究や実証実験 (ソ
リューション事業 ) 等を通じて、
サーキュラーエコノミーと脱炭素化の推
進による持続可能な社会の構築に取り組んでまいります。
このような地域に根差した活動等は、
TNFD の
視点から分析を行うことで、
改めて価値ある活動で
あることを認識しました。
今回の開示につきまして、
皆さまからのご意見をいただきつつ、
引き続き試行
錯誤しながら、
より良い事業活動を展開し、
「ネイ
チャーポジティブな経済社会」
づくりに向けて取り
組んでまいります。
発電・送配電の各事業領域において法令や地域との協定等を遵守した事業運営を行っており、
自然資本への影響
は概ね低く抑えられている一方で、
燃料調達先において自然資本に関わる影響・依存度が相対的に大きいと評価し
ました。
また、
地震・津波等の自然災害については、
発生する蓋然性が一定程度高い事象を想定した結果、
地点が限
定されている原子力発電所については対策を徹底しておりリスクは小さい一方で、
火力発電所や水力発電所、
送配
電設備については相対的に大きいリスクがあると評価しました。
このようなリスクに起因する財務影響について、
南海トラフ地震により大分・宮崎地区を中心に送配電設備の損壊
が発生した場合や、
石炭火力発電に対する規制強化時には、
大きな影響があると評価しました。
また、
燃料調達先の
リスク顕在化時、
火力・水力・送配電設備損壊時に、
一定の財務影響があると評価しました。
TNFD β版 v0.4の情報開示フレームワーク及び電気事業者向けのガイダンスを参照して自然資本に関わるリスクと
機会を評価しました。
対象は、
九電グループの
「国内電気事業」
のうち
「火力発電
(石炭・LNG)」、
「原子力発電」、「水力発電」、「地熱発電」(九州電力)
及び
「送配電事業」
(九州電力送配電)
です。
今後は、
TNFD v1.0の枠組み等を踏まえて改めて内容を見直すとともに、
海外の電気事業や都市開発等の非電気事
業など今回対象外とした範囲に関しても評価を行うなど、
TNFDの枠組みに沿った情報開示の充実を進める予定です。
地域共生本部長メッセージ
評価結果概要
今回の分析の範囲と対象
TNFD提言
(β版)
を踏まえた開示 九州電力は、
2023年9月、
TNFD β版v0.4の情報開示フレームワークに沿って自然資本や生物
多様性に関する九州電力の考え方を示す
「九電グループTNFDレポート2023」
を公開しました。
(注記):TNFD:Taskforce on Nature-related Financial Disclosures。
自然資本及び生物多様性に関するリスクや
機会を適切に評価し、
開示するための枠組みを構築する国際イニシアチブ。
「九電グループTNFDレポート2023
(詳細版)」は九州電力のホームページ上で公開しています。
ホーム > IR情報 > 環境・社会・ガバナンス
(ESG情報)
https://www.kyuden.co.jp/ir_esg.html
地域共生本部長
内村 芳郎
1 九電グループの概要 2 価値創造ストーリー 3 戦略とパフォーマンス 4 事業を通じた価値創出 5 価値創出の基盤 6 データセクション
目次 51
KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
脱炭素社会の牽引
項目 目標
気候変動
(カーボンニュートラルビジョン2050P1、
ESGデータブック2023P8)
カーボンニュートラル ・2050年カーボンニュートラルの実現
サプライチェーンの温室効果ガス排出量
(Scope1+2+3)
・2013年度と比較して温室効果ガス排出量を2030年に60%削減、
国内事業は 65%削減
環境管理の推進
(ESGデータブック2023P5) 環境管理の推進 ・法令違反件数:ゼロ
循環型社会形成
(ESGデータブック2023P5)
産業廃棄物の適正管理・処理
・石炭灰以外リサイクル率:98%以上 (うち廃プラスチックリサイクル率:90%)
(2023年度目標値)
グリーン調達の推進 ・グリーン調達率:97%以上
(事務用品類)
(2023年度目標値)
サプライチェーンマネジメントの強化
(ESGデータブック2023P7)
サプライチェーンにおけるESGに対する
意識向上
・主要取引先に対するサステナビリティ向上の取組みに関するアンケートの回答率: 90%以上(2023年度目標値)
ステークホルダーエンゲージメントの充実
(ESGデータブック2023P7)
ステークホルダーからの満足度向上
(環境教育の充実)
・アンケートにおいて環境保全意識が向上したと回答した方の割合: 90%以上(2023年度目標値)
ESGの取組みを強力に推進するため、
2021年7月、
取締役会の監督下に、
社長を委
員長とする
「サステナビリティ推進委員会」
を設置しました。
本委員会では、
ESG全般に係る戦略・基本方針の策定
(マテリアリティの特定)、具体
的方策の審議、
施策実施状況の進捗管理に加え、
気候変動に関する戦略・リスクについ
ての審議・監督を行います。
また、
本委員会の下には、
ESG担当役員を議長とする
「カー
ボンニュートラル
・環境分科会」
を設置し、
環境問題全般について、
より専門的な見地
から審議を行っています。 年に2回以上開催する本委員会の審議結果は、
取締役会に遅滞なく報告しており、
取締役会はESGに係る活動全般を監督しています。
環境諸課題に係る対応体制
(リスク・機会の評価、
マネジメントプロセス)
しかく 自然資本に関する目標
しかく九電グループの環境管理推進体制
自然資本のガバナンス
(リスクのインパクト管理を含む)
しかくサステナビリティ推進委員会
しかくカーボンニュートラル・環境分科会
[構成]
委員長:
代表取締役社長執行役員
副委員長:ESG担当役員
(代表取締役副社長執行役員)
委 員:社外取締役、
関係統括本部長 等
[開催]
原則として年2回のほか、
必要に応じて開催
[構成]
議 長:ESG担当役員
(代表取締役副社長執行役員)
副議長:
コーポレート戦略部門長、
地域共生本部長
委 員:関係本部部長 等
[開催]
原則として年2回のほか、
必要に応じて開催
方針・計画等の提示、
モニタリング等
部門計画策定、
実施状況報告等ステークホルダー
情報開示
声の反映
取締役会
サステナビリティ推進委員会
カーボンニュートラル・環境分科会
・地球環境、社会、ガバナンス
に係る戦略・基本方針の策定
・実施状況のモニタリング など
・環境問題全般に関する専門的な
検討
各本部、グループ会社
監督 付議・報告
経営会議
・中期経営計画の策定
など
連携
付議・報告
統括/指示 付議/報告
対応体制
1 九電グループの概要 2 価値創造ストーリー 3 戦略とパフォーマンス 4 事業を通じた価値創出 5 価値創出の基盤 6 データセクション
目次 52
KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
脱炭素社会の牽引
しかく 事業における自然資本関連の影響と依存の評価一覧
(自然資本関連等のヒートマップ)
生物多様性を含む自然資本をプラスの状態に向けていくための重要な第一歩は、
自社の事業活動
(燃料調達含む)
が、
自然資本に与えている影響と依存している生態系サービスについて
把握することです。
TNFDβ版 v0�4のLEAPアプローチで提供されているガイドラインやENCORE
(グローバルなデータに基づく評価ツール)
等を参考にしつつ、
事業の前提となる発電所
立地や設備、
法令・自治体との協定等を踏まえ、
事業における自然資本関連の影響と依存を5段階
(VeryHigh、
High、
Middle、
Low、
VeryLow)
で評価しました。
しかく 自然資本関連の影響と依存
ヒートマップ作成にあたり、
自然災害については、
過去約30年間で発生した事象、
または、
今後30年間で発生する可能性が高いとされている事象が、
発生した場合を想定しました。
(注記)
【凡例】
自然資本関連 その他要因
影響 依存
地震・津波
発電種別 工程
土地改変 直接採取 気候変動 汚染 その他 供給サービス 調整サービス 基盤サービス
陸域 淡水域 海域 水 水以外
温室効果
ガス
大気 水域 土壌 廃棄物
騒音/
光害
表流水
提供
地下水
提供
汚染物質
無害化
気候調整
汚染物質
濾過
洪水防止 浸食防止 水流維持 水質維持
火力発電
(石炭)
燃料調達
VeryHighHigh -
VeryHigh- High High High High High High High High -VeryLow
- - Middle High -VeryLow
発電 - Low Low Low -
VeryHighLow Low Low Low Low Low -VeryLowVeryLow
Low Low Low Low Low High
火力発電
(LNG)
燃料調達 High High
VeryHighVeryHigh- High High High High High HighVeryLowVeryLowVeryLowVeryLowVeryLowVeryLowLowVeryLow- High
発電 - Low Low Low - Middle Low Low Low Low Low Low -VeryLowVeryLow
Low Low Low Low Low HighVeryHigh
原子力発電
燃料調達
VeryHighHigh -
VeryHigh- High High High High High High High High -VeryLow
- - Middle High -VeryLowHigh発電 - Low Low Low -VeryLow
Low Low Low Low Low Low -VeryLowVeryLowLowVeryLowLow Low LowVeryLow
Middle
水力発電
(一般水力)
発電 Middle Low - Low -VeryLow
- Low Low - - High -VeryLowVeryLowVeryLow
High High High Low High Low
水力発電
(揚水式)
発電 Low Low - Low -VeryLow
- Low Low - - Low -VeryLowVeryLowVeryLow
High High Low Low HighVeryLow
地熱発電 発電 - - - Low -VeryLow
- Low Low - Low Low -VeryLowVeryLowVeryLow
Low Low Low Low Low
送配電 Low - - - -VeryLow
- Low - - - - - - High - Low Low - - High
1 九電グループの概要 2 価値創造ストーリー 3 戦略とパフォーマンス 4 事業を通じた価値創出 5 価値創出の基盤 6 データセクション
目次 53
KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
脱炭素社会の牽引
しかく 自然資本関連等のヒートマップの評価理由 しかく 影響と依存の指標 (TNFD β版v0.4のコア指標)
発電種別 工程 評価理由火力発電石炭
燃料
調達
陸域や淡水域における土地改変、
水の直接採取、
温室効果ガスの排出、
汚染等で自然資本に影響を与える可能性が高いため、
「大きい(HIgh)・非常に
大きい(Very High)」
と評価しました。
また、
地下水や表流水の提供や水流維持の水供給に関する生態系サービスへの依存度は
「大きい
(High)」と評
価しました。
発電
冷却水として海水・淡水を利用していますが、
海水が大部分を占めており、
淡水の利用は極めて少ないです。
さらに、
淡水に関しては、
水リスクの少な
い九州
(ESGデータブック2023P23)
で取水しているため、
地域の自然資本への影響は
「小さい(Low)」
と評価しました。
また、
発電所が立地する自治
体と協定を結ぶなどの合意形成に基づき管理を徹底しており、
基準をクリアしなくなる前の段階で運転できなくなるため、
大気汚染、
廃棄物、
騒音/光
害で地域の自然資本に与える影響は
「小さい
(Low)」と評価しました。
ただし、
温室効果ガスの排出が与える影響は
「非常に大きい
(Very High)」と評
価しました。LNG燃料
調達
陸域や淡水域、
海域における土地改変、
水の直接採取、
温室効果ガスの排出、
汚染等で自然資本に与える影響は
「大きい(HIgh)・非常に大きい(Very
High)」
と評価しました。
一方、
石炭と比較すると、
LNGは採掘方法の違いなどから生態系サービスへの依存度は
「小さい(Low)・非常に小さい(Very
Low)」
結果となりました。
発電
冷却水として海水・淡水を利用していますが、
海水が大部分を占めており、
淡水の利用は極めて少ないです。
さらに、
淡水に関しては、
水リスクの少な
い九州
(ESGデータブック2023P23)
で取水しているため、
地域の自然資本への影響は
「小さい(Low)」
と評価しました。
また、
発電所が立地する自治
体と協定を結ぶなどの合意形成に基づき管理を徹底しており、
基準をクリアしなくなる前の段階で運転できなくなるため、
大気汚染、
廃棄物、
騒音/光
害で地域の自然資本に与える影響は
「小さい
(Low)」と評価しました。
原子力
発電
燃料
調達
陸域や淡水域における土地改変、
水の直接採取、
温室効果ガスの排出、
汚染等で自然資本に影響を与える可能性が高いため、
「大きい(HIgh)・非常に
大きい(Very High)」
と評価しました。
また、
地下水や表流水の提供や水流維持の水供給に関する生態系サービスへの依存度は
「大きい
(High)」と評
価しました。
発電
冷却水として海水・淡水を利用していますが、
海水が大部分を占めており、
淡水の利用は極めて少ないです。
さらに、
淡水に関しては、
水リスクの少な
い九州
(ESGデータブック2023P23)
で取水しているため、
地域の自然資本への影響は
「小さい(Low)」
と評価しました。
また、
発電所が立地する自治
体と協定を結ぶなどの合意形成に基づき管理を徹底しており、
地域の自然資本へ影響のない範囲で運転を行っているため、
大気汚染、
廃棄物、
騒音/光
害で自然資本に与える影響は
「小さい
(Low)」と評価しました。
水力
発電
発電
一般水力については、
一部KBA(KeyBiodiversityAreas)に建設されていることから、
土地改変-陸域への影響は
「中程度
(Middle)」と評価しました
が、
自然資本へのその他の影響については、
生態系に大きな影響を与えるような発電所等の新設は近年行っていないこと、
河川法など各種関係法令を
遵守した適切な運用を行っていること、
立地地域との共生を図りながら生態系に配慮した様々な取組みを行っていることを踏まえ、
「小さい(Low)」〜「非常に小さい(Very Low)」と評価しました。
また、
水力発電設備は、
山岳部や河川内に設備があることから、
洪水や地震等の影響を受けやすい立地環境であるため、
洪水防止機能・浸食防止機能
への依存度及び地震に対しては
「大きい
(High)」と評価しました。
一般水力については、
一定量の水が必要なため、
表流水の提供・水流維持の機能への依存度は
「大きい
(High)」と評価しました。
一方、
揚水については、
基本的に上池と下池で水を循環させて利用するため、
表流水の提供・水流維持の機能への依存度は
「小さい(Low)」
と評価しました。
地熱
発電
発電
冷却水として主に地下から取り出した蒸気の凝縮水を利用しており、
河川水の利用は極めて少ないです。
さらに、
河川水に関しては、
水リスクの少ない
九州
(ESGデータブック2023P23)
で取水しています。
また、
発電所が立地する自治体と協定を結ぶなどの合意形成に基づき管理を徹底しており、
地域
の自然資本へ影響のない範囲で運転を行っているため、
水域・土壌の汚染、
騒音/光害で自然資本に与える影響は
「小さい(Low)」と評価しました。
(注)
調達については今回は、
評価対象外としました。
送配電
配電設備については台風の強風に伴う倒木等により、
電柱の折損・倒壊や電線の断線から停電に至る場合があるため気候調整機能への依存度は
「大
きい
(High)」と評価しました。
鉄塔設置箇所選定時に、
地滑り・氾濫などが予想される不安定な箇所は選定しないこととしており、
洪水防止、
浸食防
止機能への依存度は
「小さい
(Low)」と評価しました。
評価理由
地震・津波
九州では、
30年以内に3%以上の地震発生が予想される直下断層として
「福智山断層帯」
「警固断層帯」
「日奈久断層帯」
「雲仙断層群」
があります。
また、
沿岸では、
日向灘(M7.0〜7.
5程度が80%程度)、南海トラフ
(M8〜9程度が70%〜80%)、安芸灘〜伊予灘〜豊後水道(M6.7〜7.
4程度が
40%程度)
において、
地震とそれに伴う津波のリスクがあります。
また、
海外においても地震とそれに伴う津波のリスクがあります。
LNG燃料調達・火力発電・一般水力・送配電におけるリスクは
「大きい
(High)」と評価していますが、
原子力発電は対策工事を実施しており
「非常に
小さい(Very Low)」
と評価しています。
分類 指標 参照先等
気候変動
Scope1,2,3の
温室効果ガス
(GHG)
排出量
サプライチェーンGHG排出量(Scope1,2,3)
(ESGデータブック2023P71)陸上/淡水/
海洋の利用
変化
生態系と事業活
動別の土地/淡水
/海洋利用の変化
度合い
土地:発電設備、
変電設備
の土地面積
(有価証券報告
書2022年度第99期P43〜P47)淡水:上水、
発電用水の使用量(ESGデ ー タ ブ ッ ク2023P77)海水:発電所の冷却水として
活用、
使用量データなし
公害/公害
除去
土壌に排出され
る汚染物質の種
類別総量
基本的に自社設備からの汚
染物質の排出は無し
排水量及び排水
の主要汚染物質
の種類別濃度
排水量
(ESGデータブック
2023P77)
各発電所における排水処理
装置にて、
適切に処理を実施
有害廃棄物の種
類別総発生量
PCBの処理量
(ESGデータ
ブック2023P75)
二酸化炭素以外
の有害物質の種
類別総量
(ESGデータブック2023
P72,73)
資源利用/
補完
水ストレスのあ
る地域からの総
取水量と消費量
発電用水の使用量
(ESGデー
タブック2023P77)
(注)
九州はAqueduct上、相対的に水リスクが少ない地
域とされている
陸上/海洋/淡水
から調達する高
リスクの天然商
品の種類別数量
推移
燃料
(石炭、
LNG、
ウラン)の調達先・調達量
(ESGデータ
ブック2023P26)
優先生態系から
調達する天然商
品の種類別の量
とその割合
(今後検討)
【自然資本関連】
【その他の要因】
1 九電グループの概要 2 価値創造ストーリー 3 戦略とパフォーマンス 4 事業を通じた価値創出 5 価値創出の基盤 6 データセクション
目次 54
KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
脱炭素社会の牽引
事業における自然資本関連の影響もしくは依存の程度が大きい(「大きい(High)」
「非常に大きい(VeryHigh)」)と評価した項目を対象に、
リスクのカテゴリーの分類を行ったうえで財務への影響を評価しました。
燃料調達においては、
燃料価格の
上昇によるコスト増加リスクがあると評価しました。
発電所の操業においては、
法令や地域との協定等を遵守しており自然資本を毀損するリスクを低減出来ている一方で、
九州は地理的に気候変動に伴う災害の激甚化の影響を受け易く(注記)、台風や線状
降水帯による水害リスクがあります。
石炭火力発電への規制強化時には、
燃料費増加等のリスクがあります。
また、
九州やその周辺には、
30年以内に3%以上の地震発生が予測されるトラフや断層などがあり、
地震・津波の被災リスクが想定されます。
(注記):九州は東シナ海からの偏西風を直接受ける島であり、
線状降水帯が発生して大雨・洪水の被害を受けることがあります。
また、
日本の他の地域と比べて台風が上陸する頻度も高くなっています。
〔財務影響評価基準〕
レベルI:10億円未満 レベルII:10億円〜100億円 レベルIII:100億円〜
(注記)NCP:NatureContributionstoPeople
九電グループは、
以下のような事業機会を捉え、
生物多様性に関する新たな世界目標である
「昆明・モントリオール生物多様性枠組」
の2030年グローバルターゲットの各目標に向けて、
取り組んでいきます。
事業における自然資本関連のリスクと機会を整理しました。
(TNFDフレームワークのコアグローバルメトリクスとして、
資本・資産・売上高等とリスク・機会の指標設定が推奨されていますが、
網羅
的なデータの可用性を踏まえ、
今回は対象外としました。)自然資本関連のリスク
しかく 自然資本関連のリスクと機会
自然資本関連の機会
しかく TNFDβ版v0.4で提示されたリスク分類に基づくリスク
リスク分類 リスク種別 リスク概要 財務への影響 財務影響火力発電石炭燃料調達
物理的リスク
急性リスク 鉱山操業に伴う陸域土地改変による地滑りや地盤沈下、
火災発生。
世界的な石炭価格の上昇による収支悪化。 レベルII
慢性リスク
鉱山操業に伴う陸域土地改変による陸域生態系の劣化・分断、
外来種の侵入、
地域の植生や植生環境への悪影響。
鉱山での過剰な水利用による帯水層の枯渇。
干ばつの厳
しさや頻度の増加による鉱山操業への支障。
鉱山操業による温室効果ガスの排出、
有毒物質の大気放出、
植生や土壌への悪影響、
種の移動による生態系の変化。
移行リスク 法規制リスク
鉱山における慢性リスクの各項目への対策費の負担発生。
石炭の採掘過程を含む間接分の温室効果ガス排出について炭素費用の負担発生。発電
物理的リスク
急性リスク 地震・津波による火力発電所の設備損壊・停止。 復旧費用と代替電源の確保費用。 レベルII
慢性リスク 運転による温室効果ガスの排出。 賦課金や税金が導入された場合の石炭火力の発電原価上
昇や、
LNG火力での代替による燃料費の増加。
レベルIII
移行リスク 法規制リスク 石炭火力発電所の運転を規制するために賦課金や税金が導入された場合、
運転に伴い排出される温室効果ガスに対して費用負担が発生。
石炭火力発電所の運転が規制される。LNG燃料調達物理的リスク
急性リスク
水の枯渇によるガス田の操業停止。
有毒物質の偶発的な流出による環境への負の影響。
汚染物質の偶発的な流出による周囲の希少生物への負の影響。
地震・津波による
LNG出荷設備の損壊、
出荷不能。 世界的なLNG価格の上昇による収支悪化。
なお、
複数のプロジェクトから長期契約によりLNGを調達
しており、
財務への影響は一定程度抑えられる。
レベルII
慢性リスク
陸域生態系、
淡水生態系、
海洋生態系への悪影響。
汚染物質の排出により、
底生植物や淡水植物が枯れる。
汚染物質の偶発的な流出による周囲の希少生物への負の影響。
廃棄物を適切に処理せず、
周辺環境を汚染。
移行リスク 法規制リスク 有害物質を排出したことにより現地政府が当社の調達先に対して操業停止命令。発電
物理的リスク 急性リスク 地震・津波による火力発電所の設備損壊・停止。 復旧費用。 レベルII原子力発電燃料調達物理的リスク
急性リスク ウラン採掘に伴う陸域の土地改変による地滑りや地盤沈下、
火災発生。 世界的なウラン価格の上昇による収支悪化。
原子力発電コストに占めるウラン価格の割合は小さく、
財務的な影響を及ぼすほど大きな影響がある可能性は
低いため、
財務リスクは法規制リスクにて評価。
レベルII
慢性リスク
鉱山操業に伴う陸域土地改変による陸域生態系の劣化・分断、
外来種の侵入、
地域の植生や植生環境への悪影響。
鉱山での過剰な水利用による帯水層の枯渇。
干ばつの
厳しさや頻度の増加による鉱山操業への支障。
鉱山操業による温室効果ガスの排出、
有毒物質の大気放出、
植生や土壌への悪影響、
種の移動による生態系の変化。
移行リスク 法規制リスク ウランの採掘過程を含む間接分の温室効果ガス排出について炭素費用の負担発生。
水力発電 物理的リスク 急性リスク 洪水や地震等による水力発電所の設備損壊・停止。 復旧費用と代替電源の確保費用。 レベルII
送配電 物理的リスク 急性リスク
台風の強風に伴う倒木等により、
電柱の折損・倒壊や電線の断線から停電に至る。 復旧費用。 レベルII
南海トラフ地震によって、
大分・宮崎地区を中心に設備が損壊し、
大規模停電が発生。 復旧費用。 レベルIII
生物多様性枠組みの項目 九電グループの取組み
目標3 保全 30by30アライアンスへ加盟・自然共生サイト認定審査へ申請中
(ESGデータブック2023P20)
目標4 絶滅リスク 環境アセスメントの実施
(ESGデータブック2023P17,18)
目標7 廃棄物
廃棄物の適正処理
(ESGデータブック2023P22)
サーキュラーパーク九州の事業化
(ESGデータブック2023P22)
目標8 気候変動
再生可能エネルギーの推進
(ESGデータブック2023P9〜11)
安全性の確保を大前提として、
原子力発電を最大限活用・熱効率の高い火力発電所を最大限活用
(ESGデー
タブック2023P13)
目標9 野生種の管理
環境アセスメントを実施
(ESGデータブック2023P17,18)
「九電みらいの森プロジェクト」
の実施
(ESGデータブック2023P19)
生物多様性枠組みの項目 九電グループの取組み
目標10 生産システムの構築
J-クレジット創出支援・活用事業
(ESGデータブック2023P16)
FSC®(ForestStewardshipCouncil®
(森林管理協議会)
・本部ドイツ)認証材の生産
(ESGデータブック2023P20)
サーモン養殖事業
(ESGデータブック2023P49)
目標11
自然の寄与
(NCP(注記))を回復・維持・強化
坊ガツル湿原一帯での環境保全活動
(ESGデータブック2023P19)
目標15 依存・影響の評価・開示 TNFDフレームワークに則った情報開示
目標21 データ・情報の提供 「九電グループESGデータブック」
の公表
目標22
目標23
意思決定への参画
ジェンダー平等
人権デュー・ディリジェンスの実施
(ESGデータブック2023P60〜62)( ) 1 九電グループの概要 2 価値創造ストーリー 3 戦略とパフォーマンス 4 事業を通じた価値創出 5 価値創出の基盤 6 データセクション
目次 55
KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
脱炭素社会の牽引
九電グループは、
気候変動対応を経営上の重要課題
(マテリアリティ)
と位置付けており、
2020年からTCFD提言に基づくシナリオ分析と情報開示を継続して実施しています。
また、
九電グループの温室効果ガス
(GHG)
の排出に関する削減目標が、
国内エネルギー事業者として初めて国際的なイニシアチブである
「ScienceBasedTargets
(SBT)
イニシアチブ」
から、
科学的根拠に基づいた目標
(science-basedtargets)
であると認定されました。
今後も、
同提言を活用した戦略策定、
同提言の枠組みに沿った情報開示の充実を通じ、
「脱炭素社会の牽引」
を実現するとともに、
ステークホルダーの皆さまへの説明責任を果たしていきます。
九州電力は、
2019年7月、
TCFD(注記)
提言に賛同しました。
(注記):TCFD:
TaskForceonClimate-relatedFinancialDisclosures G20財務大臣・中央銀行
総裁会合の要請を受け、
金融安定理事会
(FSB)
によって設立されたタスクフォース。
2017年
6月、
気候関連のリスクと機会がもたらす財務的影響について情報開示を促す提言を公表。
カーボンニュートラルをはじめとするESGの取組みを強力に推進するため、
2021年7月、
取締
役会の監督下に、
社長を委員長とする
「サステナビリティ推進委員会」
を設置しました。
本委員会では、
ESG 全般に係る戦略・基本方針の策定
(マテリアリティの特定)、具体的方策の
審議、
施策実施状況の進捗管理に加え、
気候変動に関する戦略、
リスクについての審議
・監督を
行います。
また、
本委員会の下には、
ESG 担当役員を議長とする
「カーボンニュートラル・環境分
科会」
を設置し、
カーボンニュートラルを含む環境問題全般について、
より専門的な見地から審
議を行っています。 年に2回以上開催する本委員会の審議結果は、
取締役会に遅滞なく報告しており、
取締役会は
ESGに係る活動全般を監督しています。
2021年11月に公表した、
九電グループが目指す2050年のゴールや、
2030年経営目標
(環境
目標)
の上方修正を含む
「カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプラン」
は、
カーボン
ニュートラル・環境分科会及び本委員会での議論を経て、
取締役会で決議しました。
今後も、
気候変動リスク・機会の評価・管理プロセスの更なる充実・強化を図り、
九電グループ
の企業価値向上につなげていきます。
リスクマネジメントシステムに関する詳細は P86 参照
取締役のスキルマトリックスは P78 参照)
九州電力は、
取締役
(監査等委員である取締役及び社外取締役を除く。)及び役員に対する業
績連動報酬を支給しており、
その業績指標の一つとして、
カーボンニュートラルに向けたGHG削
減量を採用しています。
(役員報酬に関する詳細は P79 参照)
気候変動に係る対応体制
(リスク・機会の評価・マネジメントプロセス)
取締役会・サステナビリティ推進委員会等における主な気候変動関連議題の議論状況
(2022年7月以降)
気候変動対応と役員報酬の連動
対応体制監督
取締役会・
マテリアリティの見直し
(要否検討含む)・
中期ESG推進計画策定方針、
中期ESG推進計画の進捗・
GHG排出削減に向けた施策・
統合報告書発行方針・開示内容
(TNFD・TCFD開示内容含む)・
資本市場との対話内容
(外部ESG評価向上に向けた取組み含む)・
SBT認定取得・
GXリーグ関係執行
サステナビリティ
推進委員会
TCFD提言に基づく取組み
しかくサステナビリティ推進委員会
しかくカーボンニュートラル・環境分科会
[構成]
委員長:
代表取締役社長執行役員
副委員長:ESG担当役員
(代表取締役副社長執行役員)
委 員:社外取締役、
関係統括本部長 等
[開催]
原則として年2回のほか、
必要に応じて開催
[構成]
議 長:ESG担当役員
(代表取締役副社長執行役員)
副議長:
コーポレート戦略部門長、
地域共生本部長
委 員:関係本部部長 等
[開催]
原則として年2回のほか、
必要に応じて開催
しかく ガバナンス・
リスクマネジメント
方針・計画等の提示、
モニタリング等
部門計画策定、
実施状況報告等ステ�クホルダ�
情報開示
声の反映
取締役会
サステナビリティ推進委員会
カーボンニュートラル・環境分科会
・地球環境、社会、ガバナンス
に係る戦略・基本方針の策定
・実施状況のモニタリング など
・環境問題全般に関する専門的な
検討
各本部、グループ会社
監督 付議・報告
経営会議
・中期経営計画の策定
など
連携
付議・報告
統括/指示 付議/報告
対応体制 [ ] 1 九電グループの概要 2 価値創造ストーリー 3 戦略とパフォーマンス 4 事業を通じた価値創出 5 価値創出の基盤 6 データセクション
目次 56
KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
脱炭素社会の牽引
気候変動に係る政府間パネル
(IPCC)
第6次報告書やIEAの報告書、
国の第6次エネルギー基本計画等を踏まえてシナリオ分析を行い、
気候変動が九電グループに及ぼす影響を評価しました。
これらの分析結果は、
九電グループの低炭素移行計画である
「カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプラン」
に適切に反映の上、
その着実な推進に向けて
「中期 ESG 推進計画」
を策定しています。
アクションプラン
については、
サステナビリティ推進委員会、
カーボンニュートラル・環境分科会において進捗状況を確認・審議するとともに、
社会情勢や技術革新の動向等を踏まえ適切に見直しを図っていくこととしています。
なお、
昨年より、
電気事業
(国内・海外・再エネ事業)
に関するリスク・機会とその財務影響に加え、
成長事業であるICTサービス事業と都市開発事業におけるシナリオ分析も実施しています。
シナリオ分析
[1.5°Cケース]
シナリオ
シナリオドライバー
リスク・機会
発現
時期
発現
可能性
財務インパクト
(損益ベース) 対応戦略
大項目 中項目 小項目
世界全体で、
カーボ
ンプ ライシン グ 等 の
規制が強化され、
気候
変 動 対 応の取 組みが
進展している。
その結
果、
GHG削 減 が 順 調
に進展。
気 温 の 上 昇 が 抑え
ら れ る た め、
九 電 グ
ル ープ の 主 な 事 業 領
域 で ある九 州 でも異
常 気 象や出水 率 の 増
減 等の事 象が 現 状か
ら大きく増加しない。
国 内では 再 エネや
原 子力発 電の最 大 限
の 活 用 な ど、
ゼ ロ エ
ミッション電源の導入
が進んでいる。
顧 客 の 環 境 意 識も
高く、
野心的な省エネ
が進展するとともに、
EVの普及も含めたあ
らゆる分 野 で の 電 化
が進展している。電気事業(再エネ・海外含む)
政策・
規制
GHG排出規制
強化に伴う
コスト・投資
カーボンプライシング
(税・排出権など)
移行リスク
(政策・規制)
中・長 中
GHGを削減しなかった場合、
100〜150億円程度の費用増
(カーボンプライシングを2,000〜3,000円/t-CO2と仮定)
・GHG排出量削減
・エネルギー政策への提言・関与
非効率石炭フェードアウト、
火力総合
熱効率向上
短・中・長 高
数百億円
(自社LNG火力に水素1%、
石炭火力にアンモニア20%を
混焼した場合の燃料費上昇額)
・既設火力での混焼技術の確立
・水素・アンモニアのサプライチェーンの構築
・再エネや原子力を用いたカーボンフリー燃料製造
・石炭火力からLNGコンバインド火力への振替
技術
再生可能エネ
ルギーの主力
電源化
再エネ開発推進による収益拡大
(海外含む)
機会
(エネルギー源)
短・中・長 高 再エネ事業での経常利益130億円
(2025年度)
・強みである地熱や水力の開発
・導入ポテンシャルが大きい洋上風力やバイオマス等の開発
・蓄電池・揚水の活用
系統の安定性低下
移行リスク
(技術)
中・長 低 小〜中 デジタルの活用による需給運用・系統安定化技術の高度化
原子力の
最大限の活用
原子力の設備利用率向上
機会
(エネルギー源)
中・長 中 設備利用率が1%向上した場合50億円程度の燃料費削減効果 定検短縮、
長期サイクル運転、
電気出力向上
原子力の計画外停止
移行リスク
(政策・規制、
技術)
短・中・長 低 1か月の停止で100億円/基程度 設備の実態に合わせた適切な修繕費及び改良工事費の予算配分の実施
市場
電力需要
電化の進展による販売電力の増加
機会
(製品・サービス)
短・中・長 高
電化目標達成した場合の売上増600億円程度
(2030目標KPIを達成した場合の売上増)
九州の電化率向上への貢献
-家庭:住宅関連事業者との連携強化 -業務:高効率ヒートポンプシステムの提案 等
分散型エネルギーシステムの普及や競
争激化等による販売電力の減少
移行リスク
(市場)
中・長 高 小売販売電力1%減で150億円程度の売上減 DER制御技術の確立と蓄電池を用いたアグリゲートビジネスの展開
燃料価格 燃料価格の上昇 短・中・長 高 一定の影響はあるが、
原子力の安定稼働を前提に影響を低減
・供給ソースの分散化
・契約上の価格固定化オプションの活用等による価格上昇の抑制
【石炭】
・価格安定性の高い新たな指標を用いた価格決定方式の多様化を検討
【LNG】
評判 信用力
カーボンニュートラルへの取組みが投
資家から不十分と評価されることによ
る資金調達コストの上昇
移行リスク
(評判)
中・長 中
8億円程度
(2022年度の資金調達実績約7,000億円の金利が0.1%
変動した場合の影響額)
・アクションプランの着実な実行
・KPIの進捗の適切な開示など、
情報開示の推進
製品・
サービス
顧 客ニーズ の
変化
非化石価値の販売
機会
(製品・サービス)
短・中・長 高
200億円〜400億円
(非化石価値を全量販売した場合の売上ポテンシャル)
・ゼロエミ電源の最大限の活用
・再エネ・CO2フリープランの拡充
地域のカーボンニュートラルニーズ
拡大
機会
(製品・サービス)
中・長 高
数億円程度
(分散型エネルギーシステム、
EVサービス等による売上増)
・DER制御技術の確立と蓄電池を用いたアグリゲートビジネスの展開
・EVを活用した新たなビジネスモデルの検討ICTサービス・都市開発事業
政策・
規制
GHG排出規制
強化に伴う
コスト・投資
カーボンプライシング
(税・排出権など)
移行リスク
(政策・規制)
中・長 中 小
省エネ性能向上、
創エネによるZEB・ZEH化、
再エネ由来電力導入、
DX活用の推進によ
り差別化・高付加価値化を図り、
収益性を維持・向上。
また、
カーボンプライシング導入の
影響低減を図る
省エネ法強化等に伴うコスト増
移行リスク
(政策・規制)
中・長 高 小
製品・
サービス
顧 客ニーズ の
変化
脱炭素、
省エネニーズの高まりを受け
た電化の推進、
エネルギーマネジメント
ニーズの増加 機会
(製品・サービス)
短・中・長 高 中
レジリエント確保に関連した製品・
サービス需要の拡大
中・長 中 小
・自治体災害対応ニーズへの適格な対応、
協定の締結
・ドローンサービスや無停電電源装置等の関連製品・サービスにおける他社との協業、
及び 競合他社との差別化
物理
設備被害
台風・洪水・集中豪雨等自然災害に伴
う損失の発生
(被災設備の復旧費増、
稼働停止による収益減)
物理リスク
(急性)
短・中・長 低 小
災害に強い施設の建設、
ハザードマップを活用した開発地点の選定・防災対策の実施、
保険付保によるリスクヘッジ等により影響を最小化
・分散構成や災害に強い通信ネットワークの構築
・災害対策マニュアル等の作成
オペレーション
コスト平均気温上昇に伴う空調電力コストの
増加
物理リスク
(慢性)
中・長 高 小 ・データセンターの空調エネルギー効率改善 等1.5°Cケース[ 発 現 時 期 ]
短期:現在〜2025年度、
中期:2026年度〜2030年度、
長期:2031年度〜2050年度
[財務インパクト] 小:
10億円未満、中:
10〜100億円、大:
100億円以上 *財務インパクトのうち注釈のないものは2022年度実績を用いた
[ 検 討 の 前 提 ]
1�5°C上昇ケース:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次報告書(SSP1-1�9シナリオ)、
IEAWEO2022
(NetZeroEmissionsby2050(NZE)シナリオ)、第6次エネルギー基本計画 等
4�0°C上昇ケース:気候変動に関する政府間パネル
(IPCC)
第6次報告書(SSP5-8�5シナリオ) 等
しかく 戦略
(リスク
・機会と対策)
〜シナリオ分析に基づく気候変動対策〜
[対応戦略の具体的な内容は P42〜49 に記載〕
1 九電グループの概要 2 価値創造ストーリー 3 戦略とパフォーマンス 4 事業を通じた価値創出 5 価値創出の基盤 6 データセクション
目次 57
KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
脱炭素社会の牽引
シナリオ分析
[4.0°Cケース]
シナリオ
シナリオドライバー
リスク・機会 発現時期
発現
可能性
財務インパクト
(損益ベース) 対応戦略
大項目 中項目 小項目
国・地域によって気候
変動対応の取組みに温
度差があり、
世界全体で
見ると、
GHG排出量 削
減が進んでいない。
世界全体で気温が上
昇し、
九電グループの主
な事業領域である九州
も含め、
異常気象や出水
率の増減等の事象が増
加し、
海外の資源開発地
の一部では操業不能な
どの影響が顕在化する。
国内では再エネや原
子力発電の最大限の活
用など、
ゼロエミッショ
ン電源の導入が進んで
いる。
さらに原子力に関
しては、
脱炭素電源の必
要性の高まりから、
新型
炉開発に向けた議論が
進展する。
顧客の環境意識も高
く、
野心的な省エネが進
展するとともに、
EVの普
及も含めたあらゆる分野
での電化が進展してい
る。
カーボンプライシング
等の規制は、
世界全体の
GHG排出削減が不十分
であることから、
先進国
の発電事業者に対し、更に厳しいものが課されよ
うとしている。電気事業(再エネ・海外含む)
政策・
規制
GHG排出規制
強化に伴う
コスト・投資
カーボンプライシング
(税・排出権など)
移行リスク
(政策・規制)
中・長 中
GHGを削減しなかった場合、
200〜300億円程度の費用増
(カーボンプライシングを4,000〜6,000円/t-CO2と仮定)
・GHG排出量削減
・エネルギー政策への提言・関与
非効率石炭フェードアウト、
火力総合
熱効率向上
短・中・長 高 1.5°Cよりも大きい
・既設火力での混焼技術の確立
・水素・アンモニアのサプライチェーンの構築
・再エネや原子力を用いたカーボンフリー燃料製造
・石炭火力からLNGコンバインド火力への振替
技術
原子力の
最大限の活用
原子力の計画外停止
移行リスク
(政策・規制、
技術)
短・中・長 低 1か月の停止で100億円/基程度 設備の実態に合わせた適切な修繕費及び改良工事費の予算配分の実施
市場 電力需要
電化の進展による販売電力の増加
機会
(製品・サービス)
短・中・長 高 1.5°Cケースほど顕著でない
九州の電化率向上への貢献
-家庭:住宅関連事業者との連携強化
-業務:高効率ヒートポンプシステムの提案 等
分散型エネルギーシステムの普及や競
争激化等による販売電力の減少
移行リスク
(市場)
中・長 高 小売販売電力1%減で150億円程度の売上減 DER制御技術の確立と蓄電池を用いたアグリゲートビジネスの展開
評判 信用力
カーボンニュートラルへの取組みが投
資家から不十分と評価されることによ
る資金調達コストの上昇
移行リスク
(評判)
中・長 中
8億円程度
(2022年度の資金調達実績約7,000億円の金利が0.1%
変動した場合の影響額)
・アクションプランの着実な実行
・KPIの進捗の適切な開示など、
情報開示の推進
製品・サービス
顧 客ニーズ の
変化
カーボンニュートラルニーズの拡大
機会
(製品・サービス)
中・長 低 1.5°Cほど顕著でない ・ゼロエミ電源の最大限の活用
物理
燃料
水力発電量の減少
物理リスク
(慢性)
中・長 低
数億円程度/%
(出水率1%変動による収支感応度)
FIT・FIP制度等を活用した、
既設発電所の更新や新規開発の推進
資源開発地の操業不能
物理リスク
(急性)
中・長 低
燃料価格の上昇により300億円程度の燃料費増
(石炭:10$/t、
LNG:1$/MMBtuの価格上昇による感応度)
・供給ソースの分散化
・契約上の価格固定化オプションの活用等による価格上昇の抑制
【石炭】
・価格安定性の高い新たな指標を用いた価格決定方式の多様化を検討
【LNG】
設備 設備被害 中・長 高
災害復旧費用 71億円
(2022年台風14号実績)
・無電柱化の推進
・災害対応力の向上(訓練等)ICTサービス・都市開発事業
政策・
規制
GHG排出規制
強化に伴う
コスト・投資
カーボンプライシング
(税・排出権など) 移行リスク
(政策・規制)
中・長 中 小
省エネ性能向上、
創エネによるZEB・ZEH化、
再エネ由来電力導入、
DX活用の推進によ
り差別化・高付加価値化を図り、
収益性を維持・向上。
また、
カーボンプライシング導入の
影響低減を図る
省エネ法強化等に伴うコスト増 中・長 高 1.5°Cケースほど顕著でない
製品・サービス
顧 客ニーズ の
変化
脱炭素、
省エネニーズの高まりを受け
た電化の推進、
エネルギーマネジメント
ニーズの増加 機会
(製品・サービス)
短・中・長 高 1.5°Cケースほど顕著でない
レジリエント確保に関連した製品・
サービス需要の拡大
中・長 中 1.5°Cケースよりも大きい
・自治体災害対応ニーズへの適格な対応、
協定の締結
・ドローンサービスや無停電電源装置等の関連製品・サービスにおける他社との協業、 及び競合他社との差別化
物理
設備被害
台風・洪水・集中豪雨等自然災害に伴
う損失の発生
(被災設備の復旧費増、
稼働停止による収益減)
物理リスク
(急性)
短・中・長 中 1.5°Cケースよりも大きい
災害に強い施設の建設、
ハザードマップを活用した開発地点の選定・防災対策の実施、
保険付保によるリスクヘッジ等により影響を最小化
・分散構成や災害に強い通信ネットワークの構築
・災害対策マニュアル等の作成
オペレーション
コスト
平均気温上昇に伴う空調電力コストの
増加
物理リスク
(慢性)
中・長 高 1.5°Cケースよりも大きい データセンターの空調エネルギー効率改善等4.0°Cケース[ 発 現 時 期 ]
短期:現在〜2025年度、
中期:2026年度〜2030年度、
長期:2031年度〜2050年度
[財務インパクト] 小:
10億円未満、中:
10〜100億円、大:
100億円以上 *財務インパクトのうち注釈のないものは2022年度実績を用いた
[ 検 討 の 前 提 ]
1�5°C上昇ケース:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次報告書(SSP1-1�9シナリオ)、
IEAWEO2022
(NetZeroEmissionsby2050(NZE)シナリオ)、第6次エネルギー基本計画 等
4�0°C上昇ケース:気候変動に関する政府間パネル
(IPCC)
第6次報告書(SSP5-8�5シナリオ) 等
「カーボンニュートラルビジョン2050
(アクションプラン含む)」の詳細は九州電力ホームページ
(以下)
をご覧ください。
https://www�kyuden�co�jp/ ホーム > サステナビリティ > カーボンニュートラルビジョン2050
1 九電グループの概要 2 価値創造ストーリー 3 戦略とパフォーマンス 4 事業を通じた価値創出 5 価値創出の基盤 6 データセクション
目次 58
KYUDEN GROUP INTEGRATED REPORT 2023
脱炭素社会の牽引
KGI(2050年) 指標 中期目標・KPI
(2030年) 2022年度実績供給側サプライチェーン
GHG排出量
「実質ゼロ」
サプライチェーン
GHG排出量
サプライチェーンGHG排出量を60%[国内事業は65%]削減
(2013年度比) 26%削減 [国内事業は28%削減]
再エネの主力電源化 再エネ開発量500万kW
(国内外) 302万kW
(国内外、
既決定案件(注記)1)
火力発電の低炭素化
省エネ法ベンチマーク指標 (A指標:1�0以上/B指標:44�3%以上/石炭単独指標:43�0%以上)
の達成
A指標:0�98、
B指標:43�02%、
石炭単独指標:41�66%
水素1%・アンモニア20%混焼に向けた技術確立
水素・アンモニア混焼技術の調査・検討
(2023年4月より苓北発電所1号機でアンモニア混焼試験を実施)需要側社会のGHG排出削減への貢献
ー九州の家庭・業務部門の電化率
100%の実現に貢献
電化の推進 九州の電化率向上に貢献
(家庭部門:70%、
業務部門:60%) 家庭部門:61%、
業務部門:48% (注記)2
家庭部門 増分電力量15億kWh
(2021-2030年累計) 増分電力量:1�2億kWh
業務部門 増分電力量16億kWh
(2021-2030年累計) 増分電力量:1�1億kWh
運輸部門 社有車100%EV化
(特殊車両を除く) 社有車のEV割合:16%
(95台導入)
社会のGHG排出削減への貢献 GHG排出削減貢献量700万t-CO2 約100万t-CO2 低・
脱炭素の業界トップランナーとして、
2050年のサプライチェーン温室効果ガス
(GHG)
排出量の
「実質ゼロ」
に挑戦するとともに、
九州の電化率向上への貢献などにより、
社会のGHG排出削減に大きく貢献していくことで、
九電グループの事業活動全体の
「カーボンマイナス」
を2050年よりできるだけ早期に実現します。
また、
2050年カーボンニュートラルに向けた中間目標として、
2030年の経営目標
(環境目標)
を、
日本政府が示したGHG排出削減目標を大きく上回る水準に設定し、
これらの達成に向けた具体的行動計画
(進捗等詳細は
P40〜41 参照)
を策定しています。
九電グループでは、
2050年カーボンニュートラルの実現に向け、
再エネ事業の推進を目的に、
非化石価値
取引市場の取引状況等を基に社内炭素価格を設定し、
投資判断に活用しています。
社内炭素価格は、
非化石価値取引市場
(高度化法義務達成市場)
の取引価格
(0�6〜1�3円 /kWh)
等を基
に1,400〜2,900円/t-CO2程度と設定しています。
脱炭素に向けた取組みの加速に向け、
社会情勢等も勘案しつつ、
社内炭素価格の更なる活用
(適用範囲拡
大や価格水準の見直し等)
を含めて検討します。
2022年度は、
旧一般電気事業者として初となるトランジションボンドの発行や国の利子補給制度初となる
トランジションローンを実行しました。
(グリーン・トランジションファイナンスの推進に関する詳細は P46 参照)
2021〜2025年度の投資総額 約5,000億円
(うち再エネ関係約2,500億円)
インターナルカーボンプライシング
(社内炭素価格)
サプライチェーンGHG排出量
(経営目標)
の推移
(詳細は P95 )
電源の低・脱炭素化に向けた投資総額
約100
約100
6,166
4,510↓GHG排出量
(Scope1+2+3)
「実質ゼロ」↓2,600
さんかく65%
単位:万t-CO2
カーボンマイナス
(排出量<排出削減貢献量)
の早期実現
6,096
4,341
3,972
3,840
2,200
(国内)2013700
2030 〜 205020222021
(注記):GHG排出量データは
「ESGデータブック2023」
上で、
デロイトトーマツサステナビリティ(株)による第三者保証を受けています。サプライチェーンGHG排出量
(注記)GHG排出削減貢献量
【社会のGHG排出削減への貢献に向けた取組み】
九州域内での電化の推進
(電化率向上への貢献)
九州域外・海外での再エネ開発推進
適切な森林管理によるCO2吸収 等
再エネの主力電源化
原子力の最大限の活用
火力発電の低炭素化
さんかく60%
(注記)1:現段階で2030年までに開発が見込まれる案件の合計 (注記)2:資源エネルギー庁
「都道府県別エネルギー消費統計の2020年度値
(暫定値)」をもとに当社試算
しかく 指標と目標 〜気候関連の目標の設定とその進捗〜

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /