2023年7月14日
九州電力株式会社
安全性向上評価届出書 第2章(2.2.2項)
「国内外の最新の科学的知見及び技術的知見」について
第10回原子力に係る安全性・信頼性向上委員会資料 資料1 11.目的
2.新知見の収集方法
(1)収集対象
(2)収集期間
(3)各新知見情報の概要
(4)各新知見情報のスクリーニング
3.新知見情報の例(玄海3号機第3回届出の例)
(1)新知見情報の収集結果
(2)まとめ
目 次 21.目的
 2011年3月に発生した福島第一原子力発電所事故において、以下の反省が抽出された。
・ 発生確率が極めて小さいとし、シビアアクシデント対策が不十分であった
・ 法令要求を超えて、安全性を自ら向上させるという意識が低かった
・ 世界の安全性向上活動に学び、改善していく取組みが不足していた
 上記を踏まえ、NRAガイド(実用発電用原子炉の安全性向上評価に関する運用ガイド)
では、以下の旨が定められている。
安全性向上評価届出の第2章(安全性の向上のため自主的に講じた措置)のうち、
「2.2 調査等」では、「国内外で得られた最新の科学的及び技術的知見(注記)」について、
幅広く調査し、安全性向上に資する自主的な追加措置が抽出された場合には、
「2.3 安全性向上計画」にその実施に係る具体的な計画を記載する。
((注記)以下、「新知見」という。)
 これらを踏まえ、当社では安全性向上に資する新知見に関する情報の収集、分析・評価、
反映に自主的かつ継続的に取組んでいる。 3(2)収集期間
前回定期事業者検査終了日翌日〜今回定期事業者検査終了日までの期間(注記)
(注記)情報入手時期。情報の種類により、まとめて入手するものもあり、
発行された時期と必ずしも一致しない。
(1)収集対象
NRAガイドに記載のa~fの情報に加え、g、hも対象にして新知見情報の収集を行って
いる。
a. 安全に係る研究
b. 国内外の原子力施設の運転経験から得られた教訓(一般産業の情報含む)
c. 確率論的リスク評価を実施するために必要なデータ
d. 国内外の基準等
e. 国際機関及び国内外の学会等の情報(自然現象に関する情報以外)
f. 国際機関及び国内外の学会等の情報(自然現象に関する情報)
g. メーカからの提案
h. 国内事業者の安全性向上評価にて抽出された自主的な追加措置
2.新知見の収集方法
自主的に追加 4a. 安全に係る研究
原子力安全に関する研究の成果であり、自社研究、電気事業者共通課題として実施して
いる研究(電力共通研究等)に加え、 国内外機関の研究成果を対象としている。
区分 収集対象 収集方法
自社/電力共通研究
・ 自社研究
・ 電力共通研究
―(自社の情報)
国内機関の研究
・ 経済産業省(METI)
・ 日本原子力研究開発機構(JAEA)
・ 原子力規制委員会(NRA)
電気事業者共同で収集
(電中研、調査会社が助勢)
国外機関の研究
・ 経済協力開発機構/原子力機関
(OECD/NEA)
・ 国際PSAM協会(注記)
・ 米国原子力規制委員会(NRC)
・ 米国電力研究所(EPRI)
・ EU安全研究(NUGENIA)
・ 欧州原子力学会(ENS)
・ 欧州技術安全期間(EUROSAFE)
(注記) Probabilistic Safety
Assessment and management
【具体例】
 PWRにおける過酷事故用電気計装品に関する経年劣化評価研究 PhaseII(ケーブル)[電力共通研究]
⇒ 重大事故等環境下におけるケーブルの経年劣化評価に係る研究。高経年化技術評価に反映。
 航空機落下事故に関するデータ(平成12年〜令和元年)NRA技術ノート(NTEN-2022-2001)[国内研究]
⇒ 航空機落下確率の評価に反映
2.新知見の収集方法 (3)各新知見情報の概要 5区分 収集対象 収集方法
運転経験
・当社の不適合情報
・国内他社のトラブル情報等
(ニューシア(トラブル/保全品質)情報
・国外原子力発電所トラブル情報
・海外メーカ情報
・原子力安全推進協会の重要度文書 等
「未然防止処置」活動の
結果から収集
NRAの指示文書等
・原子力規制委員会指示文書
・原子力エネルギー協議会(ATENA)発出文書
・被規制者向け情報通知文書
―(自社の情報)
b.国内外の原子力施設の運転経験から得られた教訓
当社で発生した不適合情報、国内外の原子力施設のトラブル情報に加え、
原子力規制委員会等による事業者への指示文書も対象としている。
不適合情報、トラブル情報については、必要に応じて水平展開(運用見直し、設備対策)
を行う「未然防止処置」活動から得られた情報収集している。
【具体例】
 柏崎刈羽原子力発電所5号機 高圧炉心スプレイ系ディーゼル発電機の不具合について[運転経験]
⇒ ロックアウトリレーの不具合により、ディーゼル発電機が起動しなかったトラブル。
予防保全によりロックアウトリレーを取替。定期的な取替計画を策定。
 原子力発電所におけるデジタル安全保護回路のソフトウェア共通要因故障緩和対策に関する技術要件書
(ATENA 20-ME05 Rev.1) [NRAの指示文書等(ATENA発出文書)]
⇒ 事業者が自主的に標記対策を行うにあたっての要求事項について記載したもの。
本ガイドを参考に、安全対策工事を計画。
2.新知見の収集方法 (3)各新知見情報の概要 6c.確率論的リスク評価を実施するために必要なデータ
確率論的リスク評価(PRA)に関し、モデル高度化や機器故障率データ整備に資する
情報を対象としている。
区分 収集対象 収集方法
プラント情報 ・プラントの設計、運用等のデータ 他 -(自社の情報)
ハザード評価 ・国内外の学会情報
自社(PRA評価担当箇所)
フラジリティ評価 ・電力共通研究
システム評価 ・伊方プロジェクトにおける原子力リスク研究センター
(NRRC)技術諮問委員会(TAC)及び
海外専門家レビューコメント専門家レビューコメント
・電力中央研究所報告書
・NRC報告書(NUREG等)
・EPRI報告書 等
ソースターム評価
被ばく評価
上記以外
・電力共通研究
・電力中央研究所報告書
・NRRC技術諮問委員会(TAC)コメント
・海外専門家レビューコメント
・国際会議(PSAM)予稿
【具体例】
 人的過誤確率の算出にEPRIの最新手法「HRA Calculator」 を使用することとした。[システム評価]
2.新知見の収集方法 (3)各新知見情報の概要 7d.国内外の基準等
国内の基準としては、原子力発電所の設計、運用に適用されている民間規格類、
国外の基準としては、米国、欧州主要国及び国際機関の基準類(注記)を対象としている。
(注記)公開情報等を通じて規制動向の把握が可能なもの。
区分 収集対象 収集方法
国内の規格基準
・日本電気協会規格
(規程(JEAC)、指針(JEAG))
・日本機械学会規格
・日本原子力学会標準
自社で収集
国外の規格基準
・国際原子力機関(IAEA)基準
・米国 原子力学会(ANS)基準
・米国 NRC審査ガイド(Reg.Guide)
・米国 原子力規制委員会(NRC)一般連絡文書(Bulletin,
Generic Letter, Order) 等
電気事業者共同で収集
(電中研、調査会社が助勢)
【具体例】
 原子力発電所の高経年化対策実施基準:2022(追補1)[国内の規格基準(日本原子力学会)]
⇒ 東海第二発電所,泊発電所1号機の高経年化技術評価報告書の知見を反映した改訂。
当社の高経年化技術評価に利用。
2.新知見の収集方法 (3)各新知見情報の概要 8e.国際機関及び国内外の学会等の情報(自然現象に関する情報以外)
国際機関及び国内外学会等の情報については、各種委員会や大会での報告、論文発
表されている原子力発電所の安全性、信頼性の維持、向上に関連する先進事例等に係る
情報を収集している。
区分 収集対象 収集方法
国内の学会活動
・日本原子力学会(和文論文誌、Journal of
Nuclear Science and Technology)
・日本機械学会(日本機械学会論文集、Mechanical
Engineering Journal)
・日本電気協会
・電気学会(論文誌B)
電気事業者共同で収集
(電中研が助勢)
国外の学会活動
・米国 原子力学会(ANS)
・米国 機械学会(ASME)
・Institute of Electrical and Electronic
Engineers(IEEE)
・国際原子力機関(IAEA)関連資料
・米国 原子力エネルギー協会(NEI)会議資料 等
電気事業者共同で収集
(電中研、調査会社が助勢)
【具体例】
 リスク情報を活用した原子力発電所運用の実用的な意思決定手法とその安全上の効果
[国内の学会活動(日本原子力学会和文論文誌)]
⇒ 直ちに反映は不要だが、(新知見ではなく)動向を把握すべき参考情報として抽出。
2.新知見の収集方法 (3)各新知見情報の概要 9f.国際機関及び国内外の学会等の情報(自然現象に関する情報)
地震、津波、竜巻及び火山の各現象に対する原子力施設の安全性に関連する可
能性のある国の機関等の報告、学協会等の大会報告、論文、雑誌等の刊行物、海
外情報等について収集している。
区分 収集対象 収集方法
耐震、津波
・地震調査研究推進本部
・中央防災会議
・地震予知連絡会
・原子力規制庁
・産業技術総合研究所
・海上保安庁
・日本機械学会
・日本建築学会
・日本地震学会
・IAEA情報
・NRC情報
・電力中央研究所 等
電気事業者共同で収集
(メーカ等が助勢)
竜巻、火山
その他自然災害
・地震調査研究推進本部
・産業技術総合研究所
・中央防災会議
・環境省(原子力規制庁)
・防災科学技術研究所
・国土地理院
・気象庁
・国土交通省港湾局の
観測記録
・日本保全学会
・日本建築学会
・日本気象学会
・日本風工学会
・地震研究所彙報
・京都大学防災研究所年報
・アメリカ地球物理学連合
(AGU)
・電力中央研究所 等
自社で収集
(メーカ等が助勢)
【具体例】
 日本海南西部の海域活断層の長期評価(第一版) -九州地域・中国地域北方沖
(地震調査研究推進本部) [国内の学会活動(津波)]
⇒ 直ちに反映は不要だが、(新知見ではなく)動向を把握すべき参考情報として抽出。
2.新知見の収集方法 (3)各新知見情報の概要 10g.設備の安全性向上に係るメーカ提案
従来から施設管理の仕組みの中で行われる、メーカから設備の運用・保守性の向上や
設備改善の推奨提案、部品の製造中止情報の提供情報を収集している。
区分 収集対象 収集方法
メーカ提案
・メーカ提案書
・Framatomeセミナー
・WH社ワークショップ 等
自社で収集
(メーカ等が助勢)
h.国内事業者の安全性向上評価にて抽出された自主的な追加措置
収集期間中に提出された国内事業者の安全性向上評価にて抽出された追加措置につ
いて、各社HPや各種ワーキング等で情報を収集している。
区分 収集対象 収集方法
自主的な追加措置 国内事業者の安全性向上評価にて抽出された追加措置
自社で収集
(各社HP、ワーキング等)
【具体例】
 確率論的地震ハザード高度化を踏まえた地震PRAの実施 [自主的な追加措置(伊方3号第2回届出)]
⇒ 直ちに反映は不要だが、(新知見ではなく)動向を把握すべき参考情報として抽出。
2.新知見の収集方法 (3)各新知見情報の概要 11【STEP1】 1次スクリーニングにおいて検討対象外とする情報(Noに該当)
・原子力関連施設のうち運転中の商用軽水炉以外の施設(例 将来炉、再処理等)
・将来の燃料技術
・保障措置、核物質防護(核物質管理)(サイバーセキュリティ等は検討対象) 等
【STEP2】 2次スクリーニングにおいて検討対象外とする情報(Noに該当)
・既往データ等に基づいており、新たな知見が示されていない。
・既往の知見の取りまとめ等であり、新たな手法等を提案していない。
・今後の研究動向を注視する必要がある。(検討事例が少ない、検証データ数が少ない等)
・実務に適用するには、更なる検討が必要である。
・工学的判断に基づき暫定的に採用した手法や条件が多数あり、実務に適用する段階にない。
・具体的な効果が示されていない。
・発電所の安全性を直ちに向上させるものではない。
【STEP3】 評価対象の新知見情報とする情報
・既設プラントの設備設計や運用等に直ちに反映すべき水準
のもの。
【STEP4】 参考情報とする情報
・今後の研究動向等によっては、プラントの安全性、信頼性向
上につながりうる情報。(次回以降の安全性向上評価の際に、
必要に応じて検討対象 の情報に含める。)
 収集対象に応じた、整理、分類方法
(スクリーニングフロー)を用いて、
新知見・参考情報・検討対象外を判断
 右図は、
『国内外機関の安全研究、学会等の
情報(自然現象に関する情報以外)
のスクリーニングフローの例
2.新知見の収集方法 (4)各新知見情報のスクリーニング 12(注記)直ちに反映は不要だが、今後の動向を把握すべき知見
ー:"該当なし"を示す
分類 収集分類 収集数
検討結果
(届出記載対象)
新知見 参考情報(注記)
a.安全に係る研究
・ 電共研
約40件
2件 -
・ 自社研 - -
・ NRA等の研究開発 約40件 1件 3件
・ 国外機関の研究開発 約160件 - -
b.国内外の原子力施設の運転経験から得られた教訓
・ 運転経験からの教訓 約200件 33件 -
・ NRAの文書指示等 8件 8件 -
c.確率論的リスク評価を実施するために必要なデータ ・ PRAを実施するために必要なデータ 約300件 3件 -
d.国内外の基準等
・ 国内の規格基準 約40件 15件 -
・ 国外の規格基準 約840件 - -
e.国際機関及び国内外の学会等の情報
・ 国内の学会活動 約640件 - 5件
・ 国外の学会活動 約1240件 - 2件
f.国際機関及び国内外の学会等の情報
(自然災害)
・ 耐震、津波 約150件 - 15件
・ 竜巻、火山その他自然災害 約80件 - 3件
g.メーカからの提案 ・ メーカからの提案 約40件 - -
h.国内事業者の安全性向上評価にて抽出された
自主的な追加措置
ー 約80件 - 1件
計 約3800件 62件 29件
3.新知見情報の例 (1)新知見情報の収集結果
玄海3号機第3回届出の例 13 今回の収集対象期間に収集した新知見に関する情報に対して評価を行い、
安全性向上に資すると判断し、玄海3号機に反映すべき知見を抽出した。
 玄海3号機に反映すべき知見については、その反映状況を確認し、
既に反映されていること又は反映に向けた検討が進められていることを確認した。
 このことから、新知見に関する情報の収集、評価及びプラントへの反映に係る仕組みは
適切に機能している。
(玄海3号機第3回届出の例)
3.新知見情報の例 (2)まとめ END

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