安全性向上評価届出書 第3章
「安全性向上に係る活動の実施状況に関する
中長期的な評価」について
第8回原子力に係る安全性・信頼性向上委員会資料
資料2
2022年11月29日
九州電力株式会社
目次 1
1.評価の目的
2.評価概要
3.評価結果
4.安全性向上計画
5.玄海の中長期評価における川内からの
見直し方針
・・・・・P2
・・・・・P3〜8
・・・・・P9〜13
・・・・・P14〜15
・・・・・P16
1.評価の目的 2
くろまる 中長期的な評価の目標及び目的
現状のプラントの状態を踏まえ、最新の国内外の知見等を参考にプラントの安全性について中長
期的な観点からレビューを行い、高いレベルの安全性確保を目標に、これを達成するために今後実施
すべき改善事項を抽出することを目的とする。
(注記) 安全性向上に係る活動の実施状況に関する中長期的な評価(以下、「中長期的な評価」)は、「実用発電用原子炉
の安全性向上評価に関する運用ガイド」で、「原則10年ごとに発電所の自主的な取組みを含めた活動について調査及び
分析し、安全性向上に対する中長期的な観点からの有効性を評価すること」と記載されている。
くろまる 評価実績
川内1号第4回(2021年6月15日届出)、川内2号第4回(2021年7月26日届出)に
て、IAEA特定安全ガイドNo.SSG-25「原子力発電所の定期安全レビュー」(注記)に基づき中長期的
な評価(中長期的な評価)を実施した。
(注記):発電所の定期安全レビュー(PSR)の実施に関する推奨事項及び指針を提供するためのガイド
2.評価概要(1/6) 3
IAEA特定安全ガイドNo.SSG-25「原子力発電所の定期安全レビュー」に基づき安全性向上に係
る活動の実施状況に関する中長期的な評価(中長期的な評価)を実施した。
くろまる 対象期間
川内1号:2014年9月10日 〜 2020年12月15日
川内2号:2014年9月10日 〜 2021年1月22日
新規制基準設置変更許可日〜特定重大事故等対処施設運用開始時の定期事業者検査終了日を評価対
象とした。
(新規制基準適合後から特重運開(約5年)経過し、運転経験等の知見が蓄積されたことから本評価を実施。)
くろまる SSG-25レビュー実施に関する関係法令等
・核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律 第43条の3の29
・実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則 第99条の2〜第99条の7
・実用発電用原子炉の安全性向上評価に関する運用ガイド
・IAEA 特定安全ガイドNo.SSG-25(Periodic Safety Review)
・日本原子力学会標準「原子力発電所の安全性向上のための定期的な評価に関する指針:2015」
・日本原子力学会標準「"原子力発電所の安全性向上のための定期的な評価に関する指針:2015"のより良い理解のため
に」(2020年発行)
評価概要(川内第4回届出実績)
2.評価概要(2/6) 4
くろまる レビューする安全因子
運転中のプラントの安全上重要なすべての要素を網羅的にレビューするために、IAEA SSG-25
にて推奨される以下の14の安全因子(SF)毎にレビューを行う。
SF1:プラント設計
SF2:安全上重要なSSC*の現状
SF3:機器の性能認定
SF4:経年劣化
SF5:決定論的安全評価
SF6:確率論的リスク評価
SF7:ハザード解析
SF8 :安全実績
SF9 :他プラント及び研究成果から得られた知見の活用
SF10:組織、マネジメントシステム及び安全文化
SF11:手順
SF12:人的要因
SF13:緊急時計画
SF14:環境への放射線影響
*SSC;構築物、系統及び機器
SF1:プラント設計
原子力発電所の設計及びその設計図書が、最新の許認可基準、国内外の規格・基準、事例(運転経験)
に照らして適切であるかを判断することである。
SF2:安全上重要なSSC*の現状
安全上重要なSSCの現状を確認し、少なくとも次回レビューまでの期間、これらが設計要求事項を満たす性能
及び妥当性を備えているかを検討することにある。加えて、このレビューでは、安全上重要なSSCの状態が適切に文
書化されていることを確認するとともに、必要に応じて継続的な保守、サーベランス及び供用期間中検査が行われ
ていることを確認する。
くろまる 各安全因子の目的
2.評価概要(3/6) 5
SF3:機器の性能認定
通常の運転状態及び想定される事故状態によってもたらされる環境条件下において、安全上重要な機器が必
要な機能を発揮することが保証されているかを確認することである。また、少なくとも次回レビューまで安全機能を発
揮することを保証する保守、検査及び試験の適切なプログラムを通して、その認定が維持されるかを判断することに
ある。
SF4:経年劣化
安全上重要なSSCに影響を与えている経年劣化の要素が有効に管理されているか、また、要求される全ての
安全機能が次回レビューまでの期間、経年管理プログラムにて有効に管理されるかを判断することにある。
SF5:決定論的安全評価
以下の要素を考慮したときに、既存の決定論的安全解析が、どの程度完全か、また、どの程度有効な状態を維
持するかを判断することにある。
・ 新規制基準適合時からSSCの全ての改造を含む、実際のプラント設計
・ 現在の運転モード及び炉心/燃料の管理
・ 安全上重要なSSCの現状、及び、次回レビューまでの期間において予想されるそれらの状態
・ 最新の検証された計算機コードの使用
・ 現在の決定論的手法
・ 現在の安全に関する基準及び知識(研究及び開発の成果を含む)
・ 安全余裕の存在及びその妥当性
くろまる 各安全因子の目的
2.評価概要(4/6) 6
SF6:確率論的リスク評価
以下を判断することにある。
・ 既存のPRA研究が、原子力発電プラントの代表モデルとして、引き続き有効である程度
・ PRAの結果が、リスクは十分に低く、また、全ての想定起因事象及び運転状態に対しバランスが取れているこ
とを示しているか
・ PRAの適用範囲(全ての運転状態及び特定された内部及び外部ハザードを含むこと)、手法及び程度(
すなわち、レベル1、2又は3)が、現在の国内及び国際的な基準及び良好事例に従っているか
・ 既存のPRAの適用範囲及び活用が十分か
SF7:ハザード解析
内部及び外部ハザードに対する原子力発電プラントの防護が適切かを判断すること。
SF8 :安全実績
プラントの安全性能指標並びに運転経験の記録(プラントでの事象の根本原因分析の評価を含む)が、安全
性向上策の必要性を示しているかを確認することにある。
SF9 :他プラント及び研究成果から得られた知見の活用
他の原子力発電プラントでの運転経験、並びに研究成果のフィードバックが適切か、また、これをプラント又は事
業者における合理的かつ実行可能な安全性向上策に取り入れているかどうかを確認することにある。
くろまる 各安全因子の目的
2.評価概要(5/6) 7
SF10:組織、マネジメントシステム及び安全文化
組織、マネジメントシステム及び安全文化が、原子力発電プラントの安全運転を確実にするため、適切且つ有効
かを判断することにある。
SF11:手順
運転及び作業手順を管理、実施及び遵守するため、また、運転上の制限及び条件並びに規制要求事項を遵
守し続けるための事業者のプロセスが、適切且つ有効かを判断することにある。
SF12:人的要因
原子力発電プラントの安全運転に影響を与える可能性がある様々な人的要因を評価すること、また、合理的且
つ実行可能な改善策を特定するよう努めることにある。
SF13:緊急時計画
緊急時計画の確立、緊急用資機材の整備、訓練の実施に関連して改善点を見出すことである。
SF14:環境への放射線影響
事業者が環境へのプラントの放射線影響をモニタリングするための適切且つ有効なプログラムを有するかを判断す
ることにある。これにより、放出が適切に制御されること、また、ALARA(As Low As Reasonably Achievable
;合理的に達成可能な限り低く)であることを確実にする。
くろまる 各安全因子の目的
2.評価概要(6/6) 8
くろまる 安全因子レビュープロセス
14の安全因子毎に設定するレビュー項目*に対し、以下のプロセスによりレビューを実施
調査結果の評価と分析
 好ましい所見、改善の余地が見込まれ
る所見への分類
(1) 文書の収集等によりレビューに必要な情報の調査
(2)安全因子間の相互調整を行った上で、レビュー項
目ごとにレビュー結果を判定【Y(満足)/N(満足し
ていない)】
調査等
 文書レビュー 等
 最新の国内外の規格・基準及び事例
改善の余地が見込まれる所見の安全重要
度(CAQ/Non-CAQ)の評価
CAQ:原子力安全(品質)に影響を及ぼす状態
安全性向上措置案の提案
(3)レビュー結果を好ましい所見/改善の余地が見込ま
れる所見に分類
(4)改善の余地が見込まれる所見は更に以下に分類
1HOLD
合理的かつ実行可能な改善策を特定できない所見
(例:研究等の知見を踏まえ継続検討)
2対応不要
改善策が必要と考えられない所見
(例:既に改善策を計画済みなので、対応不要)
3CR(状態報告;Condition Report)発行
安全性向上策が必要な所見
*レビュー項目: 各安全因子毎に、 IAEA SSG-25ガイドを参考に中長期的な有効性を確認するために定めた確認の項目
3.評価結果(1/5) 9
くろまる 安全因子レビューの結果(川内1号、川内2号ともに同数)
安全因子
(レビュー項目数)
レビュー結果 安全因子
(レビュー項目数)
レビュー結果
Y* N** Y* N**
SF1(5件) 5件(0) 0件 SF8(6件) 5件(0) 1件
SF2(12件) 10件(0) 2件 SF9(10件) 10件(0) 0件
SF3(9件) 9件(0) 0件 SF10(23件) 23件(0) 0件
SF4(16件) 16件(0) 0件 SF11(10件) 10件(0) 0件
SF5(7件) 7件(0) 0件 SF12(14件) 14件(0) 0件
SF6(8件) 3件(0) 5件 SF13(13件) 13件(0) 0件
SF7(6件) 5件(0) 1件 SF14(7件) 7件(0) 0件
* Y:最新の規格基準等を満足するもの。
( )内は、好ましい所見(現在の事例が、最新の規格及び基準において確立されている良好な事例よりも
高いパフォーマンスレベルにあるもの)の数
** N:最新の規格基準等を満足せず、改善の余地が見込まれるもの。
3.評価結果(2/5) 10
くろまる 改善の余地が見込まれる所見の内容(1/4)
レビュー項目
レビュー
結果
レビュー結果の
分析・評価
所見の
整理
所見の
分類*
所見の安
全重要度**陳腐化(より良い技術が新たに開発さ
れているにもかかわらず、古い技術を使用
していること)に関する安全上重要な
SSCの現状を確認する。N「設計の経年劣化評価ガ
イドライン(ATENA)」に
基づいた対応は、計画の
検討がなされているものの、
具体的な対応は実施さ
れていなかった。
改善の余
地が見込ま
れる所見2既 に 対
応 計 画
立案済―安全上重要なSSCの即座に代用品を
利用することができない、製造中止品へ
の依存度(例えば、使用している機器の
規格や接続型式が旧式で最新の機器と
交換しようとしても直ちに接続できない場
合等)を確認する。N「製造中止品管理ガイド
(ATENA)」に基づいた
対応は、計画等の検討が
なされているものの、具体
的な対応は実施されてい
なかった。
改善の余
地が見込ま
れる所見2既 に 対
応 計 画
立案済―【SF2:安全上重要なSSCの現状】
* 改善の余地が見込まれる所見について、「1HOLD」、「2対応不要」、「3CR発行」に分類
** 「3CR発行」とした所見に対し、安全重要度を評価
3.評価結果(3/5) 11
くろまる 改善の余地が見込まれる所見の内容(2/4)
レビュー項目
レビュー
結果
レビュー結果の
分析・評価
所見の
整理
所見の
分類*
所見の安
全重要度**PRAモデルに現在の設計及び運転特性を反
映していること、関連するすべての運転経験が
考慮されていること、すべての運転モードが含ま
れていることを確認する。 他1件(計2件)N第4回届出評価時点の既
設設備の図面等について活
用できていない。また、特重施
設を踏まえた評価について、
設置許可ベースの用途に限
定した評価となっており、運用
段階で定められた手順書を
基にした評価を行っていない。
改善の余
地が見込ま
れる所見3CR発行Non-CAQ
改善計画
立案
PRAに使用されている解析手法及び計算機
コードについて、使用している手法及び採用し
ている計算機コード検証基準が引き続き適切
であることを確認する。以前の手法を引き続き
使用する場合は、解析に採用した想定、適用
した保守性の程度及び特有の不確実さを含む、
その継続的な有効性を確認する。 他2件
(計3件)N伊方プロジェクトにおける海外
専門家からの指摘を踏まえた
知見(FMEAを使用した起
因事象の選定、成功基準の
BE化、EPRI手法)を反映し
たものとなっていない。
改善の余
地が見込ま
れる所見3CR発行Non-CAQ
改善計画
立案
【SF6:確率論的リスク評価】
* 改善の余地が見込まれる所見について、「1HOLD」、「2対応不要」、「3CR発行」に分類
** 「3CR発行」とした所見に対し、安全重要度を評価
3.評価結果(4/5) 12
くろまる 改善の余地が見込まれる所見の内容(3/4)
* 改善の余地が見込まれる所見について、「1HOLD」、「2対応不要」、「3CR発行」に分類
** 「3CR発行」とした所見に対し、安全重要度を評価
レビュー項目
レビュー
結果
レビュー結果の
分析・評価
所見の
整理
所見の
分類*
所見の安
全重要度**ハザード評価において(ハザードの発生頻度評
価、ハザードがもたらす影響評価など)使用し
ている評価手法、安全基準及び情報の最新
版を調査し、最新且つ妥当であることを確認す
る。そうでない場合は、必要に応じ、ハザード評
価を行うか、又は、修正する。NNRAの検討チームの報告書
「全国共通に考慮すべき震源
を特定せず策定する地震動
に関する検討報告書」を踏ま
えると、基準改正を行うことが
規制委員会で議論されており、
バックフィット対応が必要なこと
が明確である。
現在、「震源を特定せず策定
する地震動に関する検討チー
ム報告書を踏まえた標準応
答スペクトルに基づく地震動」
の対応方針を示した実施計
画書に従い対応することとして
いる。
現時点においては、規制基準
への対応評価が完了していな
いことから、安全性向上措置
候補の立案は困難である。
改善の余
地が見込ま
れる所見1HOLD―【SF7:ハザード解析】
3.評価結果(5/5) 13
くろまる 改善の余地が見込まれる所見の内容(4/4)
レビュー項目
レビュー
結果
レビュー結果の
分析・評価
所見の
整理
所見の
分類*
所見の安
全重要度**放射線被ばく線量と放射性廃棄物に関
するパフォーマンス指標については、それら
が指定されている制限値の範囲内であり、
その範囲内に抑制・管理することが十分
に可能であることを確認する。N集積被ばく線量について、
2018年、2019年度に
目標値(注記)を超える結果と
なっている。
(注記)定期検査中は計画線量の
90%、運転期間中は過去
の線量実績(3ヶ月の集積
線量)の内、最も低い線量
とし、これらをもとに目標値
を設定
改善の余
地が見込ま
れる所見2既に
対応済―【SF8:安全実績】
* 改善の余地が見込まれる所見について、「1HOLD」、「2対応不要」、「3CR発行」に分類
** 「3CR発行」とした所見に対し、安全重要度を評価
4.安全性向上計画(1/2) 14
くろまる 安全性向上計画
件名 概要 期待される効果
最新の図面・手順書のPRAモデ
ルへの反映
第4回届出評価時点(川内1
号:2020年12月15日、川内
2号:2021年1月22日)の
既設設備の図面及び手順書を
PRAモデルへ反映する。
最新のプラント状態を詳細に反映
したPRAが可能になる。
PRAモデルへの伊方プロジェクトに
おける海外専門家からの指摘を
踏まえた知見の反映
伊方プロジェクトにおける海外専
門家からの指摘を踏まえた知見を
反映する。
国際的な水準に比肩するPRAへ
の高度化を目指した活動の知見
を取り入れることで、PRAモデルを
高度化できる。
現状のプラントの状態を踏まえ、最新の国内外の知見等を参考にプラントの安全性について中長期
的な観点からレビューを行った結果、改善の余地が見込まれる所見のうち、SF6(確率論的リスク評
価)の5件についてCRを発行し、所見の安全重要度を「Non-CAQ」として整理のうえ今後の改善
計画を下記の通りとした。
改善においては、最新のプラント情報や海外専門家からの指摘を踏まえた知見を反映していくことで、
より良いPRAモデルの構築に、継続的に取り組んでいく。
4.安全性向上計画(2/2) 15
くろまる 安全性向上計画の実施時期・現状の進捗
件名 現状の進捗 実施時期(予定)
最新の図面・手順書のPRAモデ
ルへの反映
第5回届出において、内部事象出力運転
時PRAモデルへの反映を実施。
第6回届出において、内部事象停止時
PRA・外部事象出力運転時PRAモデルへ
反映予定。
第5回及び第6回安全
性向上評価届出時
PRAモデルへの伊方プロジェクトに
おける海外専門家からの指摘を
踏まえた知見の反映
第5回届出において、内部事象出力運転
時PRAモデルへの反映を実施。
第6回届出において、内部事象停止時
PRA・外部事象出力運転時PRAモデルへ
反映予定。
第5回及び第6回安全
性向上評価届出時
2件の安全性向上計画については、第5回、第6回安全性向上評価届出時に行われる、特定重
大事故等対処施設の運用開始に伴うPRA実施時に反映を予定している。
内部事象出力運転時PRAモデルへの反映は、川内1号については、2022年7月の第5回届出
にて実施済であり、川内2号については、2023年1月の第5回届出に向けて実施予定である。
今後は、届出スケジュールに従って、内部事象停止時PRA・外部事象出力運転時PRAにおいても
PRAモデルに反映を行っていく予定である。
5.玄海の中長期評価における川内からの見直し方針 16
くろまる玄海の中長期評価における評価方針
川内1/2号における中長期評価の実績を踏まえ、玄海3/4号の中長期評価においては、以下の点
について見直しを計画している。
川内1/2号の評価では、主にプロセス又はプロセスに抜けがないかが中心のレビューになりがちであった。
(具体的には、レビュー項目に該当するプロセスが規定文書に定められてあるかを確認すること、又
はレビュー項目に該当する全ての記録を確認し、プロセスに抜けがないかを評価。)
玄海3/4号の評価では、より安全措置向上措置案を抽出できるよう、プロセスの確認に加え、活動
結果(記録)から改善できるものは無いかという観点でレビューする計画である。 END

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