【参考】
玄海原子力発電所1,2号機(廃止措置中)について
玄海1,
2号機については、
運転を終了し、
廃止措置を実施しているところです。
関連温度の結果は、以下の通りです。
玄海1号機の関連温度
取出回数 取出時期
中性子照射量
(×ばつ1019
n/cm2)[E>1MeV]
原子炉容器が監視試験片の中性子
照射量に到達する相当運転年数(注記)1
監視試験片(母材)
の関連温度(注記)2
(°C)
[実測]
第1回
第1回定検
(1976 年 11 月)
0.5 約5EFPY(1982 年頃) 35
第2回
第4回定検
(1980 年4月)
2.1 約 20EFPY(2003 年頃) 37
第3回
第 14 回定検
(1993 年2月)
3.5 約 33EFPY( - (注記)3) 56第4回
第 26 回定検
(2009 年4月)
6.5 約 66EFPY( - (注記)3) 98玄海2号機の関連温度
取出回数 取出時期
中性子照射量
(×ばつ1019
n/cm2)[E>1MeV]
原子炉容器が監視試験片の中性子
照射量に到達する相当運転年数(注記)1
監視試験片(母材)
の関連温度(注記)2
(°C)
[実測]
第1回
第1回定検
(1982 年 2 月)
0.6 約6EFPY(1987 年頃) 7
第2回
第4回定検
(1985 年 11 月)
2.5 約 24EFPY(2010 年頃) 8
第3回
第 13 回定検
(1997 年8月)
4.0 約 38EFPY( - (注記)4) 13(注記)1 定格負荷相当年数(EFPY)であり、定格出力で連続運転したと仮定して計
算した年数。なお、定格負荷相当年数は容器内面から板厚 1/4 の位置におい
て算出。
(注記)2 関連温度は脆化の傾向を示すもので、原子炉容器が割れる温度ではなく、この値
自体が判定の対象となるものではない。
(但し、新設炉に対しては、運転期間
末期の予測値が93°C未満と規定している。)(注記)3 2015 年4月27日運転終了のため、相当運転年数に到達せず。
(注記)4 2019 年4月 9日運転終了のため、相当運転年数に到達せず。
玄海1号機の原子炉容器の材料の粘り強さは、万一の事故時に冷たい水が注入された場合に、
材料に作用する力に対して十分な余裕を有していることを確認しました。
また、上部棚吸収エネルギー(材料の粘り強さ)の測定結果についても、JEAC4206(注記)
に規定される
基準値を満足しており、プラント評価時期の原子炉容器の健全性を確認しています。
(注記) 電気技術規程 JEAC4206(「原子力発電所用機器に対する破壊靱性の確認試験方法」(社)
日本電気協会)に記載
玄海原子力発電所1号機試験片の取り出し時期と関連温度
取り出した試験片の実際の試験評価は、
(社)日本電気協会の電気技術規程(JEAC)(注記)
に基づき行います。
同規程では、粘り強さが変化する目安の温
度として「関連温度」(注記)を求めることになってい
ます。
第4回目に取り出した試験片の関連温度は
98°Cと評価されました。これは、原子炉容器の
運転開始から58年後の関連温度を予測してい
ることになります。
実際の試験片の関連温度の変化は右図の
とおりです。
98°Cは、性質が変化する境い目であり、原子
炉容器が割れる温度ではありません。
(注記)同規程では、「脆性遷移温度」の代わりに、粘り強さが変化する目安になる温度として、「関連温度」を使っています。
玄海1号機原子炉容器の中性子照射脆化に対する国の見解について
平成24年8月 原子力安全・保安院は、「玄海1号機の原子炉は、運転時間の経過と共に中性子
照射脆化が進んでいるが、通常の運転時だけではなく事故時を想定した場合においても、十分な粘り
強さは失われておらず、健全であることを確認した」との見解を示しました。
原子炉容器と同じ材料でできている監視試験片(平成21年4月取り出し)の粘り強さを評価した結
果、運転開始から58年時点でも健全であると確認されました。
上記については、原子力安全・保安院の「高経年化技術評価に関する意見聴取会」で、専門家によ
り、計14回審議された結果です。
Q「玄海1号機は老朽化して、
脆化が進んだ」と聞きましたが・・・
照射試験片の試験結果により、原子炉容器の健全性を
確認しました。A (補足)
玄海1号機の原子炉容器の健全性
(1)加圧熱衝撃事象に対する原子炉容器の健全性
【万一の事故】
・非常用炉心冷却装置が作動することにより、原子炉内に
冷たい水が注入された場合、高温である原子炉容器外側
と、水と接する内側の温度差により、引張応力が発生し
ます。
【評価】
・玄海1号機において、引張応力などにより材料に作用
する力は下図の1(青線)のようになります。
・第4回までの監視試験結果に基づいて設定した60年
運転相当の材料の粘り強さは2(緑線)となります。
【評価結果】
・60年の運転期間でも、材料の粘り強さは、材料に作用
する力に対して十分な余裕を有しています。
温度分布
外側 内側引張応力
冷却水の
流れ
原子炉容器
・このことから、玄海1号機においては、運転開始後60年を経過しても、事故時
に冷たい水が注入された場合の原子炉容器の健全性は、十分に確保されます。
【原子炉容器の温度と材料に作用する力、材料の粘り強さの関係】
運転期間が長くなっても、
材 料 の 粘 り 強 さ の 低 下
(脆化の進行)は小さい。
非常用炉心冷却装置が
作動し、
炉心に冷たい水
が 注 入 さ れ た 場 合 の
材料に作用する力
(注記)1 JEAC4201-2007 に基づき
運転期間中の照射による脆化量
(粘り強さの低下量)を予測
冷却水
注入開始
[MPa]材料作用力[1]各時点材料粘強[23]2 60 年運転時点(注記)1
3 平成 23 年度(注記)11原子炉容器の材料の粘り強さ
材料の粘り強さは
作用する力より十分
大きい
(2)上部棚吸収エネルギー
上部棚吸収エネルギー(材料の粘り強さ)の測定結果は、JEAC4206(注記)
に規定
される基準値を満足していることから、
60年運転を想定しても問題ない
ことを確認しています。
(3)原子炉容器(母材)のミクロ組織及び化学成分
ミクロ組織観察、化学成分調査を実施した結果、特異な脆化傾向を示すデータ
は認められませんでした。
(注記) 電気技術規程 JEAC4206(
「原子力発電所用機器に対する破壊靱性の確認試験方
法」
(社)日本電気協会)に記載。
【玄海1号機原子炉容器の健全性に関する国の見解(平成 24 年 8 月 29 日)】〇平成24年8月29日、原子力安全・保安院が、
「玄海1号機の原子炉は、運転
時間の経過と共に中性子照射脆化が進んでいるが、通常の運転時だけではなく
事故時を想定した場合においても、十分な粘り強さは失われておらず、健全で
あることを確認した」との見解を示しました。
〇玄海1号機の原子炉容器が受ける中性子の量が、第4回の監視試験片が受けた
中性子の量に到達するまでの間(注記)12
、これまでの適切な保守管理・運転管理
を前提に、原子炉容器は十分健全であると確認されました。
(注記)1 原子炉容器の内面から板厚の 1/4 の深さ
の位置で、運転開始後約85年に相当
(注記)2より厳しく評価できる中性子照射量が多い
内面の位置で、運転開始後約58年に相当
〇上記については、原子力安全・保安院の「高経年化技術評価に関する意見聴取
会」で、専門家7名により、計14回審議された結果です。
2内面
1板厚
1/4 の位置
原子炉容器原子炉容器 玄海1号機 原子炉容器の第4回監視試験片の機械試験結果
玄海1号機第4回シャルピー衝撃試験結果を表1〜3に示す。
表1 第4回シャルピー衝撃試験結果(母材)
試験温度
[°C]
吸収エネルギー[J]140 87
140 80
140 75
120 63
120 62
100 47
100 44
100 43
80 30
80 17
60 24
60 23
表2 第4回シャルピー衝撃試験結果(溶接金属)
試験温度
[°C]
吸収エネルギー[J]160 127
160 125
160 125
130 119
100 82
75 77
75 68
50 65
50 60
50 45
25 20
25 13
表3 第4回シャルピー衝撃試験結果(熱影響部)
試験温度
[°C]
吸収エネルギー[J]150 170
150 168
110 156
110 123
80 126
19 670 330 29
Tr30:衝撃試験において 41J の吸収エネルギーを示す遷移温度のことをいう。
Tr50:衝撃試験において 68J の吸収エネルギーを示す遷移温度のことをいう。
しろまる第4回試験片の関連温度(脆性遷移温度)
第4回試験片の関連温度(注記)1
=関連温度初期値(-16°C)(注記)2
+温度移行量ΔT(114°C)(注記)3
=98°C
(注記)1:関連温度は、
関連温度初期値に温度移行量ΔT を加算することで算出する。
(注記)2:関連温度初期値は、
落重試験及びシャルピー衝撃試験を両方実施して算出する。
(注記)3:温度移行量ΔT=照射前試験と第4回試験のシャルピー衝撃試験による吸収エネルギー
41J に対応する温度の差=95°C-(-19°C)=114°C
・照射前試験結果シャルピー衝撃試験による吸収エネルギー 41J に対応する温度
=-19°C
・第4回試験結果シャルピー衝撃試験による吸収エネルギー 41J に対応する温度
=95°C注:
照射前から第3回監視試験片の機械試験結果については、
玄海エネルギーパークで公開しています。
図 玄海1号機照射前〜第4回シャルピー衝撃特性(母材)
ΔT=114°C

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