R&I グリーンボンドアセスメント
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R&I グリーンボンドアセスメントは、グリーンボンドで調達された資金が、環境問題の解決に資する事業に投資される程度に対する R&I の意見であり、事実の表明ではありませ
ん。対象事業の環境効果等を証明するものではなく、環境効果等について責任を負うものではありません。R&I グリーンボンドアセスメントは、信用格付業ではなく、金融商品取
引業等に関する内閣府令第 299 条第 1 項第 28 号に規定される関連業務(信用格付業以外の業務であって、信用格付行為に関連する業務)です。当該業務に関しては、信用格付行
為に不当な影響を及ぼさないための措置と、信用格付と誤認されることを防止するための措置が法令上要請されています。R&I グリーンボンドアセスメントは、投資判断や財務に
関する助言や、投資の是非等の推奨をするものではありません。R&I は、R&I グリーンボンドアセスメントに際し関連情報の正確性等につき独自の検証を行っておらず、これに関
し何ら表明も保証もいたしません。R&I は、R&I グリーンボンドアセスメント(変更・取り下げ等を含む)に関連して発生する損害等につき、何ら責任を負いません。R&I グリー
ンボンドアセスメントは、原則として申込者から対価を受領して実施したものです。なお、詳細につき https://www.r-i.co.jp/docs/policy/site.html をご覧下さい。1/13九 州 電 力 株 式 会 社 第 ( 未 定 ) 回 社 債
( 一 般 担 保 付 ) ( グ リ ー ン ボ ン ド )
:GA1(予備評価)
2021 年 4 月 28 日
ESG 推進室
担当アナリスト:篠原 めい
格付投資情報センター(R&I)は、九州電力が行う資金調達につき R&I グリーンボンドアセスメントを付
与しました。本件は予備評価であり、最終的な発行内容等を確認し、改めて評価を行います。
しかくR&I グリーンボンドアセスメント概要
評 価 対 象 九州電力株式会社第(未定)回社債(一般担保付)(グリーンボンド)
発 行 額 100 億円程度
発 行 日 2021 年 6 月(予定)
償 還 日 2031 年 6 月(予定)
資 金 使 途 再生可能エネルギー
評 価 GA1(予備評価)
【項目別評価】
項 目 評 価
調達資金の使途
プロジェクトの評価と選定のプロセス
調達資金の管理
レポーティング
発行体の環境活動
(注記) 各項目を 5 段階で評価し、 (最上位)から (最下位)で表示している。
【総合評価】
グリーンボンドの調達資金は既設の水力及び地熱発電所の再開発及び設備更新に充当される。主要設備の
長寿命化に加え、発電効率の向上から一定割合で発電量の増加が見込まれる。いずれのプロジェクトも既設
発電所の敷地を最大限活用して造成を最小限とし、周辺の生態系や地域住民等に与える影響を抑えており、
明確な CO2 削減効果が見込めると判断した。九州電力グループは 2021 年 4 月、パリ協定が目指す世界共通
の長期目標と整合的な 2050 年カーボンニュートラルの実現に挑戦すると発表し、ロードマップでは電源の
低・脱炭素化に向けて国内外での再エネ導入量の拡大を掲げている。再生可能エネルギープロジェクトを資
金使途とする本グリーンボンドは、その達成を目的とした資金調達として位置付けられる。経理担当部門が
調達資金を管理し、発行から数年以内に充当が完了する予定である。資金が全額充当されるまでの間、資金
充当状況及びインパクト・レポーティングを年次で実施し、各指標について再生可能エネルギー種別に実務
上可能な範囲で開示される。
「九電グループ カーボンニュートラルビジョン 2050」に掲げる戦略を実現する
ための組織体制として、社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し ESG を推進する。
R&I グリーンボンドアセスメントの評価方法は以下のウェブサイトに掲載しています。
https://www.r-i.co.jp/rating/products/esg/index.html
R&I グリーンボンドアセスメント2/13I.発行体の概要
 日本の国内総生産の約 1 割を占める九州を供給区域とする大手電力会社。九州全域と周辺の離島が主要
な販売エリアとなっており、事業規模は大きい。電源構成では再生可能エネルギーと原子力の合計で約
6 割を占める。
 2019 年 6 月に策定・公表した「九電グループ経営ビジョン 2030」では「経営基盤である九州の持続的
発展に貢献し、地域・社会とともに将来にわたって成長していく」として、地域に根差した長期的な視
点からグループ経営の将来像を描いた。
 九電グループ経営ビジョン 2030 では電力の安定供給を通じた地域活性化と低炭素社会の実現を同時に
追求する。重要な要素となる再生可能エネルギー事業においては、九電グループが強みとする地熱や水
力の開発に加え、洋上風力やバイオマス発電などに取り組み、2030 年に再エネ開発量で 500 万 kW を
目指している。
 2021 年 4 月には「九電グループ カーボンニュートラルビジョン 2050」を発表。2050 年カーボンニュ
ートラルの実現に向けて、電源の低・脱炭素化と電化の推進を 2 本の柱にエネルギー需給の両面から取
り組みを推進するためのロードマップを開示した。
R&I グリーンボンドアセスメント3/13II.個別評価項目
1. 調達資金の使途
(1)対象プロジェクト
 九州電力はグリーンボンド・フレームワークで以下の適格クライテリアを定めた。グリーンボンドの調
達資金はこの適格クライテリアを満たしたプロジェクトに関連する新規投資及びリファイナンスへ充当
する。なお、リファイナンスについては、グリーンボンドの発行日から 24 カ月以内に運転開始または出
資した事業に限る。
 R&I は本債券の資金使途が地熱・水力の再生可能エネルギープロジェクトに該当することを確認した。
<適格クライテリア>
 九州電力は本債券の調達資金を以下のプロジェクトに全額充当する。
<プロジェクトの概要>
 新竹田水力発電所新設工事
竹田発電所は大分県竹田市に位置する水力発電所。一級水系である大野川水系の一般水力である。
1955 年の運転開始から 60 年以上経過し、設備の老朽化が進行していたことから、同発電所を廃止
し「新竹田発電所」を新設する。本工事は水車・発電機、導水路等の高経年化対策並びに未利用水
の有効活用を目的とした再開発工事であり、最大使用水量の増量及び発電機の効率向上により、最
大出力 7,000kW から 8,300kW にリニューアルする。2019 年 9 月に工事を着工し 2022 年 6 月に
運開予定である。
対象事業
グリーンボンド原則
プロジェクトカテゴリー SDGs ターゲット
地熱・水力・太陽光・風力・バイオマスの再生可能
エネルギーの開発、
建設、
運営、
改修に関する事業 再生可能エネルギー
7. エネルギーをみんなに そし
てクリーンに/13. 気候変動に
具体的な対策を
プロジェクト名称 電源種別 所在地
最大出力
更新前
最大出力
更新後
運開時期
1 新竹田水力発電所 水力 大分県竹田市 8,300kW(新設)
2022 年 6 月
(予定)
2 軸丸水力発電所 水力 大分県豊後大野市 12,500kW 13,600kW
2025 年 3 月
(予定)
3 大岳地熱発電所 地熱 大分県玖珠郡九重町 12,500kW 14,500kW 2020 年 10 月
R&I グリーンボンドアセスメント4/13<竹田水力発電所全景>
[出所:九州電力]
 軸丸水力発電所更新工事
軸丸発電所は大分県豊後大野市に位置する水力発電所。一級水系である大野川水系の一般水力であ
る。1920 年の運転開始後、1954 年の増強工事を経て 60 年以上経過しており設備の老朽化が進行
していることから更新工事が必要となっている。本工事による発電機の効率向上等により、最大出
力 12,500kW から 13,600kW にリニューアルする。2021 年 4 月に工事を着工し 2025 年 3 月に運
開予定である。
<軸丸水力発電所全景>
[出所:九州電力]
 大岳地熱発電所更新工事
大岳発電所は大分県玖珠郡九重町に位置する地熱発電所。本工事では、既設発電所設備を運転しな
がら、
隣接地に新たな設備を建設。
出力の増加と地熱資源の有効活用を図り、
最大出力を 12,500kW
から 14,500kW にリニューアルした(なお、運転開始時の出力は現時点で確保できている系統連系
容量から 13,700kW)
。2018 年 4 月に工事を着工し 2020 年 10 月に運開済みである。
R&I グリーンボンドアセスメント5/13<大岳地熱発電所全景>
[出所:九州電力]
 リファイナンスに充当された金額(または割合)が九州電力の統合報告書またはウェブサイトで開示さ
れる予定である。
 調達資金の使途は訂正発行登録書、発行登録追補書類等に記載される。
(2)環境改善効果
 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の 1.5°C特別報告書の影響から 2019 年以降はパリ協定が目指
す世界共通の長期目標としてカーボンニュートラルを打ち出す国や自治体、企業の動きが加速し世界的
な潮流となっている。
日本も 2020 年 10 月に菅首相の所信表明演説で 2050 年カーボンニュートラルを
目指すと宣言した。同 12 月のグリーン成長戦略では、CO2 排出量の 37%を占める電力部門の脱炭素化
を大前提として 2050 年には発電量の約 50%〜60%を再生可能エネルギーで賄うとの戦略が示された。
調達資金の使途となるいずれのプロジェクトも再生可能エネルギーを主力電源化していくとの国の戦略
に沿ったものである。
 対象プロジェクトは水力及び地熱発電施設の再開発及び設備更新である。主要設備の長寿命化に加え、
発電効率の上昇から一定割合で発電量の増加が見込まれる。いずれのプロジェクトも既設発電所の敷地
を最大限活用することにより造成を最小限とし、
周辺の生態系や地域住民等に与える影響を抑えている。
九州電力が半世紀以上にわたり培ってきた大野川水系・大岳一帯での運営ノウハウにより安全性が維持
される。
 対象プロジェクトの環境改善効果として再生可能エネルギー種別の設備容量(MW)
、CO2 削減量(t-
CO2)がレポーティングされる予定である。
 対象プロジェクトはいずれも九州域内のエネルギーの自律分散化と災害からの回復力向上に資する取り
組みであり、第 5 次環境基本計画が提唱する地域循環共生圏1の文脈にも位置付けられる。
 以上より、対象プロジェクトから明確な環境改善効果が期待され、グリーンボンド原則の資産区分では
「再生可能エネルギー」に該当する。
1 各地域が美しい自然景観等の地域資源を最大限活用しながら自立・分散型の社会を形成しつつ、地域の特性に応じて
資源を補完し支え合うことにより、地域の活力が最大限に発揮されることを目指す考え方。
R&I グリーンボンドアセスメント6/13(3)環境面・社会面におけるネガティブな影響への配慮
 水力・地熱発電事業に伴い、大気質、騒音・振動、水質、動植物、生態系にネガティブな影響を及ぼす
可能性が考えられる。
 九州電力では環境影響評価法等の法令や関連する条例または自主的な基準に基づいて環境アセスメント
を適切に実施しながらこれらネガティブな影響を極小化し、環境保全の基準等を遵守している。環境ア
セスメントの対象外となる小規模な事業も含め、計画段階から環境へのネガティブな影響の緩和を目的
とした対策を講じるとともに、景観への配慮や地域社会との対話を実施している。
 いずれのプロジェクトも既設発電所の敷地を最大限活用することにより造成工事を最小限とし、周辺の
生態系や地域住民等に与える影響を最小限に留めている。以上より、R&I は環境面・社会面における潜
在的にネガティブな影響への配慮がなされていると判断した。
調達資金の使途に関する評価:
グリーンボンドの調達資金は既設の水力及び地熱発電所の再開発及び設備更新に充当される。主要設備の長
寿命化に加え、発電効率の上昇から一定割合で発電量の増加が見込まれる。いずれのプロジェクトも既設発
電所の敷地を最大限活用することにより造成工事を最小限とし、周辺の生態系や地域住民等に与える影響を
最小限に留めており、明確な CO2 削減効果が見込めると判断した。
R&I グリーンボンドアセスメント7/132. プロジェクトの評価と選定のプロセス
(1)包括的な目標、戦略等への組み込み
 九電グループは「九電グループの思い:ずっと先まで、明るくしたい。
」を経営理念とする。
 2019 年 6 月に策定・公表した「九電グループ経営ビジョン 2030」では「経営基盤である九州の持続的
発展に貢献し、地域・社会とともに将来にわたって成長していく」として、地域に根差した長期的な視
点からグループ経営の将来像を描いた。
 九電グループ経営ビジョン 2030 では「九州から未来を創る九電グループ 〜豊かさと快適さで、お客さ
まの一番に〜」を 2030 年のありたい姿とし、その実現に向けた 3 つの戦略(I. エネルギーサービス事
業の進化、II. 持続可能なコミュニティの共創、III. 経営基盤の強化)を示した。
 戦略Iで重要な要素となる再生可能エネルギー事業においては、九電グループが強みとする地熱や水力
の開発に加え、洋上風力やバイオマス発電などに取り組み、再エネ開発量で 500 万 kW を目指す。
[出所:九電グループ アニュアルレポート 2020 より抜粋]
 2021 年 4 月には「九電グループ カーボンニュートラルビジョン 2050」を発表。2050 年カーボン
ニュートラルの実現に向けて、エネルギー需給の両面から取り組みを推進するためのロードマップ
を開示した。
 「低・脱炭素のトップランナーとして、九州から日本の脱炭素をリードする企業グループを目指す」と
して国内外での再エネ導入拡大により電源の脱炭素化を推進する。分散型エネルギーリソースの統合制
御技術の確立やアグリゲーションビジネスの展開により電力の低コスト化・安定供給を目指す。
 グリーンボンドの対象プロジェクトはいずれも九州域内における既存の再生可能エネルギー電源を拡充
するものであり、九電グループ経営ビジョン 2030 及びロードマップと整合している。
R&I グリーンボンドアセスメント8/13[出所:九電グループ カーボンニュートラルビジョン 2050 より抜粋]
(2)プロジェクトの評価・選定の判断規準
 九電グループは 2050 年カーボンニュートラルの実現を目指しており、ロードマップでは電源の低・脱
炭素化に向けて国内外での再エネ導入量拡大を目指している。再生可能エネルギープロジェクトを資
金使途とする本グリーンボンドは、その達成を目的とした資金調達として位置付けられる。その趣
旨をグリーンボンド・フレームワークにも記載し、投資家に開示している。
 除外クライテリアを以下の通り設定し、グリーンボンド・フレームワークに記載している。
<除外クライテリア>
該当するプロジェクトは、潜在的にネガティブな環境面・社会面の影響に配慮しているものであり対象
設備・案件において設置国・地域・自治体で求められる設備認定・許認可の取得及び環境アセスメント
の手続き等が適正であることを確認した上で、当社の定める事業導入手順に沿って進められる。
(3)プロジェクトの評価・選定の判断を行う際のプロセス
 経理担当部門が適格クライテリアに基づいてプロジェクトの候補を選定し、環境関連の社内関係部門等
と協議する。経理担当役員が適格プロジェクトを最終決定する。プロジェクトの評価・選定プロセスは
グリーンボンド・フレームワークに記載されている。
プロジェクトの評価と選定のプロセスに関する評価:
九電グループは 2021 年 4 月、
パリ協定が目指す世界共通の長期目標と整合的な 2050 年カーボンニュートラ
ルの実現に挑戦すると発表し、ロードマップでは電源の低・脱炭素化に向けて国内外での再エネ導入量拡大
を掲げている。再生可能エネルギープロジェクトを資金使途とする本グリーンボンドは、その達成を目的と
した資金調達として位置付けられる。プロジェクトの評価と選定のプロセスは明確かつ合理的で優れている
と判断した。
R&I グリーンボンドアセスメント9/133. 調達資金の管理
 調達資金の管理方法をグリーンボンド・フレームワークに記載し投資家に開示する。
 グリーンボンドの発行から数年以内に充当が完了する予定である。調達資金は経理担当部門がプロジェ
クト毎に内部管理システムを通じて管理する。経理担当部門が各プロジェクトの支出を管理し、充当額
と未充当額を定期的に追跡管理する。未充当資金は現金または現金同等物等で管理する。
 R&I はヒアリングを通じて各対象プロジェクトへの充当予定金額が事業総額を超えないことを確認し
た。
調達資金の管理に関する評価:
経理担当部門が調達資金の管理を行い、発行から数年以内に充当が完了する予定である。調達資金の管理方
法は適切に定められており、優れていると判断した。
R&I グリーンボンドアセスメント
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4. レポーティング
(1)開示の概要
 レポーティングの概要は以下の通り。
開示事項 開示タイミング 開示方法資金充当状況
以下の内容を開示する。
・充当金額
・未充当金の残高及び運用方法
・調達資金のうちリファイナンスに充当された金額
(または割合)
調達資金が全額充当
されるまで年次で開示
統合報告書または
ウェブサイトで開示インパクト以下の内容を守秘義務の範囲内、かつ、合理的に
実行可能な限りにおいて開示する。
・再生可能エネルギー種別の設備容量(MW)
・再生可能エネルギー種別の年間 CO2排出削減量
(t-CO2/y)
調達資金が全額充当
されるまで年次で開示
統合報告書または
ウェブサイトで開示
 調達資金の充当計画に大きな変更が生じた場合や充当状況に大きな変化が生じた場合は適時に開示する。
(2)環境改善効果に係る指標、算定方法等
 調達資金が全額充当されるまでの間、
資金充当状況及びインパクト・レポーティングを年次で実施する。
 資金充当状況のレポーティングはリファイナンスに充当された金額(または割合)を開示する。
 インパクト・レポーティングは各指標について再生可能エネルギー種別といった実務上可能な範囲で集
約された形式で開示する。再生可能エネルギーに関して ICMA(International Capital Market
Association:国際資本市場協会)が推奨する主要なレポーティング項目を開示する。
 九州電力のウェブサイトでは主要な環境データを毎年公表している。資金充当が完了した後のインパク
ト・レポーティングは当該公表物で代替され、実質的に償還まで継続する予定である。
レポーティングに関する評価:
調達資金が全額充当されるまでの間、資金充当状況及びインパクトのレポーティングを年次で実施し、各指
標について再生可能エネルギー種別に実務上可能な範囲での開示が予定されている。レポーティングは頻度
や内容等の面から妥当と判断した。
R&I グリーンボンドアセスメント
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5. 発行体の環境活動
 2015 年に採択されたパリ協定では世界共通の長期目標として「世界の平均気温上昇を産業革命以前に
比べて 2°Cより十分低く保ち、1.5°Cに抑える努力をすること」等で全ての国が合意した。2018 年の
IPCC1.5°C特別報告書2の影響から、2019 年以降はカーボンニュートラルを目標として打ち出す国や自
治体、企業の動きが加速し世界的な潮流となっている。
 九電グループは 2021 年 4 月、パリ協定が目指す世界共通の長期目標と整合的な 2050 年のカーボ
ンニュートラルの実現に挑戦すると発表し、ロードマップとともに新たなビジョンを示した。
 「九電グループ カーボンニュートラルビジョン 2050」に掲げる戦略を実現するための組織体制として
社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し ESG を推進する。
発行体の環境活動に関する評価:
九電グループは 2021 年 4 月、
パリ協定が目指す世界共通の長期目標と整合的な 2050 年のカーボンニュート
ラルの実現に挑戦すると発表し、ロードマップとともに新たなビジョンを示した。
「九電グループ カーボン
ニュートラルビジョン 2050」
に掲げる戦略を実現するための組織体制として社長を委員長とするサステナビ
リティ推進委員会を設置し ESG を推進する。九電グループの環境活動に関する取り組みは優れていると判
断した。
2 IPCC は国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略。人為起源によ
る気候変化、影響、適応及び緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目
的として、1988 年に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)により設立された組織。2018 年 12 月、気候
変動を 1.5°C未満に抑えパリ協定で合意した世界的な共通目標を達成するには 2050 年までに世界の CO2 排出量をネッ
ト・ゼロにしなければならないとの「1.5°C特別報告書」を発表した。
R&I グリーンボンドアセスメント
12/13
III.総合評価
 R&I は R&I グリーンボンドアセスメントに先立ち、本件グリーンボンド・フレームワークが「グリーン
ボンド原則 2018」及び「環境省グリーンボンドガイドライン 2020 年版」に適合していることを確認し
ている。
 評価対象であるグリーンボンドは発行体が定めた上記グリーンボンド・フレームワークに基づき発行さ
れる予定である。
 グリーンボンドの調達資金は既設の水力及び地熱発電所の再開発及び設備更新に充当される。主要設備
の長寿命化に加え、発電効率の上昇から一定割合で発電量の増加が見込まれる。いずれのプロジェクト
も既設発電所の敷地を最大限活用することにより造成を最小限とし、周辺の生態系や地域住民等に与え
る影響を最小限に留めており、明確な CO2 削減効果が見込めると判断した。九電グループは 2021 年 4
月、パリ協定が目指す世界共通の長期目標と整合的な 2050 年カーボンニュートラルの実現に挑戦する
と発表し、ロードマップでは電源の低・脱炭素化に向けて国内外での再生可能エネルギー導入量の拡大
を掲げている。再生可能エネルギープロジェクトを資金使途とする本グリーンボンドはその達成を目的
とした資金調達として位置付けられる。経理担当部門が調達資金を管理し、発行から数年以内に充当が
完了する予定である。調達資金が全額充当されるまでの間、資金充当状況及びインパクトのレポーティ
ングを年次で実施し、各指標について再生可能エネルギー種別に実務上可能な範囲での開示が予定され
ている。
「九電グループ カーボンニュートラルビジョン 2050」
に掲げる戦略を実現するための組織体制
として社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し ESG を推進する。
以 上
R&I グリーンボンドアセスメント
13/13
【留意事項】
R&I の R&I グリーンボンドアセスメントは、グリーンボンドで調達された資金が、環境問題の解決に資する事業に投資される程度に対する R&I の
意見です。
R&I グリーンボンドアセスメントでは、
グリーンボンドフレームワークに関してのセカンドオピニオンを付随的に提供する場合があります。
対象事業の環境効果等を証明するものではなく、環境効果等について責任を負うものではありません。R&I グリーンボンドアセスメントは、信用格付
業ではなく、金融商品取引業等に関する内閣府令第 299 条第 1 項第 28 号に規定される関連業務(信用格付業以外の業務であって、信用格付行為に関
連する業務)です。当該業務に関しては、信用格付行為に不当な影響を及ぼさないための措置と、信用格付と誤認されることを防止するための措置が
法令上要請されています。
R&I グリーンボンドアセスメントは、いかなる意味においても、現在・過去・将来の事実の表明ではなく、またそのように解されてはならないもの
であるとともに、投資判断や財務に関する助言を構成するものでも、特定の証券の取得、売却又は保有等を推奨するものでもありません。R&I グリー
ンボンドアセスメントは、特定の投資家のために投資の適切性について述べるものでもありません。R&I は R&I グリーンボンドアセスメントを行う
に際し、各投資家において、取得、売却又は保有等の対象となる各証券について自ら調査し、これを評価していただくことを前提としております。投
資判断は、各投資家の自己責任の下に行われなければなりません。
R&I が R&I グリーンボンドアセスメントを行うに際して用いた情報は、
R&I がその裁量により信頼できると判断したものではあるものの、
R&I は、
これらの情報の正確性等について独自に検証しているわけではありません。R&I は、これらの情報の正確性、適時性、網羅性、完全性、商品性、及び
特定目的への適合性その他一切の事項について、明示・黙示を問わず、何ら表明又は保証をするものではありません。
R&I は、資料・情報の不足や、その他の状況により、R&I の判断で R&I グリーンボンドアセスメントを保留したり、取り下げたりすることがあり
ます。
R&I は、R&I が R&I グリーンボンドアセスメントを行うに際して用いた情報、R&I の R&I グリーンボンドアセスメントその他の意見の誤り、脱
漏、不適切性若しくは不十分性、又はこれらの情報や R&I グリーンボンドアセスメントの使用、あるいは R&I グリーンボンドアセスメントの変更・
保留・取り下げ等に起因又は関連して発生する全ての損害、損失又は費用(損害の性質如何を問わず、直接損害、間接損害、通常損害、特別損害、結
果損害、補填損害、付随損害、逸失利益、非金銭的損害その他一切の損害を含むとともに、弁護士その他の専門家の費用を含むものとします)につい
て、債務不履行、不法行為又は不当利得その他請求原因の如何や R&I の帰責性を問わず、いかなる者に対しても何ら義務又は責任を負わないものとし
ます。
R&I グリーンボンドアセスメントは、原則として申込者から対価を受領して実施したものです。
【専門性・第三者性】
R&I は 2016 年に R&I グリーンボンドアセスメント業務を開始して以来、多数の評価実績から得られた知見を蓄積しています。2017 年から ICMA
(国際資本市場協会)に事務局を置くグリーンボンド原則/ソーシャルボンド原則にオブザーバーとして加入しています。2018 年から環境省のグリー
ンボンド等の発行促進体制整備支援事業の発行支援者(外部レビュー部門)に登録しています。
R&I の評価方法、評価実績等については R&I のウェブサイト(https://www.r-i.co.jp/rating/esg/index.html)に記載しています。
R&I と資金調達者との間に利益相反が生じると考えられる資本関係及び人的関係はありません。
1 / 6 グリーンボンド/グリーンボンド・プログラム
独立した外部レビューフォーム セクション 1. 基本情報
発行体名:九州電力株式会社
グリーンボンドの ISIN 又は 発行体のグリーンボンド発行に関するフレームワーク名(該当する場
合): 九州電力株式会社第(未定)回社債(一般担保付)(グリーンボンド)
独立した外部レビュー実施者名:格付投資情報センター
本フォーム記入完了日: 2021 年 4 月 28 日
レビュー発表日:2021 年 4 月 28 日 セクション 2. レビュー概要
レビュー範囲
必要に応じて、レビューの範囲を要約するために以下の項目を利用又は採用する。
本レビューでは、以下の要素を評価し、グリーンボンド原則(以下、GBP)との整合性を確認した: ☒ 調達資金の使途 ☒ プロジェクトの評価と選定のプロセス
☒ 調達資金の管理 ☒ レポーティング 独立した外部レビュー実施者の役割
☐ セカンドオピニオン ☐ 認証
☐ 検証 ☒ スコアリング/レーティング(格付け)
☐ その他(ご記入ください):
注記:複数のレビューを実施又は異なる複数のレビュー実施者が存在する場合、それぞれ別々の用紙にご記
入ください。 Latest update: June 2018
2 / 6
レビューのエグゼクティブサマリおよび/またはレビュー全文へのリンク (該当する場
合)
<スコアリング/レーティング(格付け):R&I グリーンボンドアセスメント>
R&I は、R&I グリーンボンドアセスメントに定める評価方法に従い、グリーンボンドの調達資
金が、環境問題の解決に資する事業に投資される程度が非常に高いと判断し、GA1(本評価)を
付与した。
詳細はリポート本文を参照。
セクション 3. レビュー詳細
レビュー実施者には可能な限り以下の情報を提供し、レビュー範囲を説明するためにコメントセクションを
利用するよう推奨する。
1. 調達資金の使途
セクションに関する全般的なコメント(該当する場合):
リポート本文の「II.個別評価項目」の「1.調達資金の使途」を参照。 GBP による調達資金の使途カテゴリ:
☒ 再生可能エネルギー ☐ エネルギー効率 ☐ 汚染防止および管理 ☐ 生物自然資源および土地利用に係る環
境持続型管理 ☐ 陸上および水生生物の多様性の保全
☐ クリーン輸送
☐ 持続可能な水資源および廃水管理
☐ 気候変動への適応 ☐ 高環境効率商品、環境適応商品、環境に
配慮した生産技術およびプロセス ☐ グリーンビルディング(環境配慮型ビ
ル) ☐ 発行時には知られていなかったが現在
GBP カテゴリへの適合が予想されてい
る、又は、GBP でまだ規定されていない
その他の適格分野
☐ その他(ご記入ください): GBP の事業区分に当てはまらない場合で、環境に関する分類がある場合は、ご記入ください: 3 / 6
2. プロジェクトの評価と選定のプロセス
セクションに関する全般的なコメント(該当する場合):
リポート本文の「II.個別評価項目」の「2.プロジェクトの評価と選定のプロセス」を参照。
評価と選定
☒ 十分な発行体の環境面での持続可能性
に係る目標がある
☒ 文書化されたプロセスにより、定義された
事業区分にプロジェクトが適合すると判断
される
☒ グリーンボンドの適格プロジェクトを
定義した透明性の高いクライテリアが
ある
☒ 文書化されたプロセスにより、プロジェク
トに関連する潜在的な ESG リスクは特定・
管理される
☒ プロジェクトの評価と選定のためのク
ライテリアの概要が、公表される
☐ その他(ご記入ください):
責任およびアカウンタビリティに関する情報
☒ 外部機関の助言または検証を受けた評
価/選定基準である
☒ 組織内で定められた評価基準である
☐ その他(ご記入ください): 3. 調達資金の管理
セクションに関する全般的なコメント(該当する場合):
リポート本文の「II.個別評価項目」の「3.調達資金の管理」を参照。 調達資金の追跡管理:
☒ グリーンボンドの調達資金は、発行体により適切な方法で分別又は追跡管理される
☒ 未充当資金について、想定される一時的な運用方法の種類が開示される
☐ その他(明記ください):
追加的な開示:
☐ 将来の投資にのみ充当 ☒ 既存および将来の投資に充当
☐ 個別単位の支出に充当 ☒ ポートフォリオ単位の支出に充当
☐ 未充当資金のポートフォリオを開示する ☐ その他(ご記入ください): 4 / 6
4. レポーティング
セクションに関する全般的なコメント(該当する場合):
リポート本文の「II.個別評価項目」の「4.レポーティング」を参照。 調達資金の使途に関するレポーティング:
☐ プロジェクト単位 ☒ プロジェクトポートフォリオ単位
☐ 個別債券単位 ☐ その他(明記ください):
レポーティングされる情報:
☒ 充当した資金の額 ☐ 投資総額に占めるグリーンボンドによる調
達額の割合
☒ その他(明記ください):
・未充当金の残高及び運用方法
・調達資金のうちリファイナンスに充当された
金額(または割合)
頻度:
☒ 年次 ☐ 半年に一度
☐ その他(明記ください): 環境改善効果に関するレポーティング:
☐ プロジェクト単位 ☒ プロジェクトポートフォリオ単位
☐ 個別債券単位 ☐ その他(明記ください):
頻度:
☒ 年次 ☐ 半年に一度
☐ その他(明記ください): レポーティングされる情報(計画又は実績):
☒ 温室効果ガス排出量/削減量 ☐ エネルギー削減量
☐ 水使用量の減少 ☒ その他 ESG 指標(明記ください):
以下の内容を守秘義務の範囲内、かつ、合理的に実行
可能な限りにおいて開示する。
・再生可能エネルギー種別の設備容量(MW)
・再生可能エネルギー種別の年間 CO2排出削減量
(t-CO2/y)
5 / 6 開示方法
☐ 財務報告書に掲載 ☐ サステナビリティ報告書に掲載
☐ 臨時に発行される文書に掲載 ☒ その他(明記ください):
統合報告書またはウェブサイトで開示 ☐ レポーティングは外部レビュー済(該当する場合は、レポートのどの部分が外部レビュー
の対象であるか明記してください):
該当する場合は、「有益なリンク」のセクションに、報告書の名称、発行日を明記してくださ
い。 有益なリンク (例えば、 レビュー実施者の評価方法や実績、発行体の文書等。)
1.評価手法及びサービス
https://www.r-i.co.jp/rating/products/esg/index.html 2.評価実績
(1)グリーンファイナンス
https://www.r‐i.co.jp/rating/esg/greenfinance/index.html (2)サステナビリティファイナンス
https://www.r‐i.co.jp/rating/esg/sustainabilityfinance/index.html (3)ソーシャルファイナンス
https://www.r‐i.co.jp/rating/esg/socialfinance/index.html 該当する場合は、利用可能なその他外部レビューをご記入ください
実施されるレビューの種類:
☒ セカンドオピニオン ☐ 認証
☐ 検証 ☐ スコアリング/レーティング(格付け)
☐ その他(ご記入ください): レビュー実施者: 発表日:
DNV GL 6 / 6
GBP で定義された独立した外部レビュー機関の役割について
(i) セカンドオピニオン:発行体の支配下にない環境面の専門性を有する機関がセカンドオピ
ニオンを提供する。オピニオンの提供者は発行体のグリーンボンド・フレームワーク構築
のためのアドバイザーから独立しているべきである。そうでなければ情報隔壁を設けるな
ど、セカンドオピニオンの独立性を確保するための措置をとることになる。オピニオンは
通常はGBPへの適合性評価を基本とする。特に環境面での持続可能性に関する包括的な目
標、戦略、方針、プロセスの評価と、調達資金を充当するプロジェクトの種類に応じた環
境面の特徴に対する評価を含むことができる。
(ii) 検証:発行体は、事業プロセスや環境基準などに関連づけて設定する基準に対して独立し
た検証を受けることができる。検証は、内部基準や外部基準あるいは発行体が作成した要
求との適合性に焦点を当てるものになる。また原資産の環境面での持続可能性に係る特徴
についての評価を検証と称し、外部クライテリアを参照することがある。さらにグリーン
ボンドで調達される資金の内部追跡管理方法とその資金の充当状況、環境面での影響、GBP
のレポーティングとの適合性に関する保証や証明も検証と呼ぶことがある。
(iii) 認証:発行体は、グリーンボンドやそれに関連するグリーンボンド・フレームワーク、ま
たは調達資金の使途について、一般に認知されているグリーン基準やグリーンラベルへの
適合性に係る認証を受けることができる。グリーン基準やグリーンラベルは具体的なクラ
イテリアを定義したもので、通常は認証クライテリアとの適合性を、検証などの手法を用
いて、資格認定された第三者機関が確認する。
(iv) スコアリング/レーティング(格付け):発行体は、グリーンボンド、それに関連するグリ
ーンボンド・フレームワーク、調達資金の使途などの特徴について、専門的な調査機関や
格付機関の資格を有する第三者機関から、それぞれの機関が確立した評価手法に基づく査
定や評価を受けることができる。評価結果には、環境面のパフォーマンスデータ、GBPに関
連するプロセス、2°C目標のようなベンチマークなどに焦点を当てたものが含まれることが
ある。このようなスコアリングや格付は、信用格付(たとえその中に重要な環境面のリス
クが反映されているとしても)とはまったく異なったものである。

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