社長インタビュー
Interview with the President
代表取締役社長
瓜生 道明
九州電力 アニュアルレポート 201614 社長インタビュー当社は、
2011年12月に原子力が全基停止して
以降、
原子力の再稼働を、
最大かつ喫緊の課題とし
てグループを挙げて取り組んできた結果、
2015年
9月に川内原子力発電所1号機、
11月に同2号機が
通常運転に復帰することができました。
これは、
東日本大震災以降、
新規制基準に適合し
たプラントとして初めて再稼働したもので、
当社の
みならず、
電力業界にとっても大きな一歩となった
ものと思っております。
当社は、
今回の再稼働をゴールではなく、
スター
トであると認識し、
原子力の安全性向上の取組みに
は終わりがないことを肝に銘じ、
今後も安全・安定
運転に努めてまいります。
また、
2015年4月には
「九州電力グループ中期
経営方針」
を公表し、
「I 九州のお客さまのエネル
ギーに関する様々な思いにお応えする」
「II 九電
グループの強みを活かして成長市場で発展して
いく」
「III 強固な事業基盤を築く」
という
3つの戦略
の柱を示しました。
初年度の取組みとしては、
今年4月に始まった
電力小売全面自由化に向けての検討や九州域外
(千葉県袖ヶ浦市)
で石炭火力発電所の建設計画
を進める新会社の設立、
ライセンス制に対応した組
織改正など着実に成果をあげております。
業績につきましては、
グループ一体となって費用
削減に取り組んだことや、
川内原子力発電所1、2号機の再稼働に加え、
燃料価格の大幅な下落により燃
料費が減少したこと、
さらに、
収入面では燃料費調
整制度による電気料金引下げへの反映が一部翌期
にずれ込んだことなどから、
5期ぶりの黒字となりま
した。
私が社長に就任して初めての黒字であり、ここまでの道のりは長かったと感じております。
当社
社員をはじめ、
関係者の皆さまの長期間にわたる懸
命な努力の賜物であると認識しております。
当社は2013年の料金値上げ時に織り込んだ3
か年平均さんかく1,400億円/年
(2015年度単年では
さんかく1,530億円)
の経営効率化に全社を挙げて取り組
んでまいりました。
Growth Story
2015年度を振り返ってどのように総括しますか
グループ一体となって費用削減に取り組み、
5期ぶりの黒字を
計上することができました。Q1A1
2015年度の経営効率化の実績と2016年度の見通しをお聞かせく
ださい
2015年度はさんかく2,670億円の費用削減を行いました。
2016年度も引き続き経費削減と経営効率化に努めます。Q2A2
九州電力 アニュアルレポート 2016 15
2015年度は、
資機材調達コストの低減をはじめ
とした恒常的な効率化の着実な実施と更なる深掘
りに取り組むとともに、
玄海原子力発電所の停止な
どによる収支悪化影響を緩和するため、
緊急的な措
置として、
工事の繰り延べや一時的な業務の中止な
ど、
短期限定の費用削減への取組みを可能な限り
実施してまいりました。
そ の 結 果 、
短 期 限 定 の 取 組 みを中 心とした
さんかく1,140億円の深掘りを加え、
さんかく2,670億円の費用
削減を行うとともに、
44億円の資産売却益を計上し
ました。
2016年度は、
玄海原子力発電所の再稼働時期
が見通せない中、
原子力発電所の安全対策や電力
システム改革への対応などに対する費用増加要因
はあるものの、
引き続き、
徹底した費用削減に取り
組み、
料金原価に織り込んだ経営効率化を達成すべ
く、
最大限努力してまいります。
項 目
効率化実績
(2015年度単年)
〔A〕+〔B〕
料金原価織込効率化額
(2015年度単年)
〔A〕
効率化の深掘り
(2015年度単年)
〔B〕
料金原価織込効率化額
(2013〜2015年度平均)
修繕費 さんかく910 さんかく280 さんかく630 さんかく320
諸経費等(注記)1( )内は諸経費を再掲
さんかく590
(さんかく230)
さんかく220
(さんかく200)
さんかく370
(さんかく30)
さんかく220
(さんかく200)
人的経費 さんかく250 さんかく510 +260 さんかく480
燃料費・購入電力料(注記)2
さんかく520 さんかく220 さんかく300 さんかく180
減価償却費
(設備投資) さんかく400 さんかく300 さんかく100 さんかく230
合 計
[燃料費・購入電力料除き]
さんかく2,670
[さんかく2,150]
さんかく1,530
[さんかく1,310]
さんかく1,140
[さんかく840] さんかく1,400億円規模
【効率化実績
(2015年度単年)】
(億円)
(注記)1 諸経費
(委託費、
賃借料、
廃棄物処理費、
消耗品費、
研究費、
普及開発関係費等)、固定資産除却費、
損害保険料など。
(注記)2 燃料費・購入電力料は、
2015年度が玄海原子力発電所の稼働がなく、
受給バランスが料金原価の想定と大きく異なることから、
一定の前提を置いて算定。
項 目
売却実績(注記)3
(2015年度単年)
売却実績(注記)3
(2013〜2015年度累計)
〔A〕+〔B〕
値上げ認可時計画
(2013〜2015年度累計)
〔A〕
深掘り額
〔B〕
固定資産 21
(20) 441
(390) 100 341
有価証券 45
(24) 469
(327) 40 429
合 計 66
(44) 910
(717) 140 770
【資産売却実績】 (億円)
(注記)3 売却実績の( )内は売却益等。
九州電力 アニュアルレポート 201616 社長インタビュー2016年度は、
お客さまや地域の皆さま、
株主・投資家の皆さまなど全てのステークホルダーに、
「九州電力は変わった」
と実感していただける年に
したいと考えております。
4月から電力小売全面自由化がスタートし、
多種
多様な事業者の参入や業種の壁を越えたアライア
ンス、
新たなビジネスモデルの出現といった動き
が活発化するなど、
本格的な競争の時代が到来し
ました。
当社も、
2016年1
月に自由化向けの料金メニュー
を、
2月には新しいサービスとして
「九電あんしんサ
ポート」
とポイントサービス
「Qピコ」
の詳細を発表
し、
4月からは子会社である九電みらいエナジー
(株)
による九州域外での電力小売事業を開始し
ており、
引き続き、
お客さまから選ばれ続けるよ
う、
新サービスの展開など、
競争力の強化に努め
てまいります。
また、
当社にとっては経営正常化が喫緊の課題で
あり、
徹底した経営効率化の継続とともに、
現行の
電気料金の前提である玄海原子力発電所3、
4号機
の再稼働が不可欠となっております。
川内原子力発
電所の再稼働で得られた知見はもちろん、
後続する
原子力発電所の事例などを最大限活かし、
安全を
最優先にしながら、
早期再稼働に向けて、
グループ
一体となって対応してまいります。
2016年度も、
これらの取組みを進めることによ
り、
持続的な成長を目指すとともに、
ステークホル
ダーの皆さまへの価値提供を果たしてまいります。
Growth Story
2016年度は電力小売全面自由化が始まり激動の年となることが
予想されますが、
今年度の展望と抱負をお聞かせください
新サービスの展開など競争力の強化に努めるとともに、
経営正常
化に向けてグループ一体となって対応してまいります。Q3A3☞「特集1 電力小売全面自由化への取組み」
(24〜27ページ)
参照
九州電力 アニュアルレポート 2016 17
地域の皆さまへのご説明
火災防護対策、
内部溢水対策、
津波対策など
保安検査
保安規定変更認可審査
使用前検査
工事計画認可審査認可許可認可
補正
申請
補正
申請
補正
申請
原子炉設置変更許可審査申 請適合性審査関係安全対策工事地元のご理解営業運転
パブコメ
発電
再開
立地自治体の
ご理解
〔再稼働までのスケジュール〕
玄海原子力発電所の再稼働に向けた進捗状況をお聞かせください
地震・津波・火山関係の影響評価は概ね確定しましたが、
現在はプラント関係の審査が続いている状況です。Q4A4
地震・津波・火山関係は、
2014年9月に、
基準地震
動や基準津波が概ね確定しておりましたが、2015年11月に約11か月ぶりに審査会合が再開し、2016年2月には火山の影響評価についても概ね確定しま
した。
一方、
プラント関係は、
2016年3月の審査会合で
提示した、
残っている主な論点等について詳細な説
明等を行っているところであり、
審査内容を反映し
た原子炉設置変更許可申請の補正書提出時期を、
具体的に申し上げられる段階にはありません。なお、
審査やその後の使用前検査にかかる期間もはっ
きりしないため、
再稼働の具体的な時期は見通せな
い状況です。
当社は、
玄海原子力発電所3、
4号機について、一日も早い再稼働に向け、
原子力規制委員会の審査
において、
しっかりと説明し、
真摯に対応してまいり
ます。
九州電力 アニュアルレポート 201618 社長インタビュー2016年3月期の配当については、
当該年度の業
績に加え、
今後の効率化の検討状況等を総合的に
勘案し、
検討した結果、
毀損した財務体質の改善を
図りつつ、
株主の皆さまへの還元を図る観点から、5円とさせていただきました。
今後の配当については、
今後の経営環境や、
中長
期的な収支・財務状況等を総合的に勘案し、
判断し
ていきたいと考えております。
なお、
2017年3月期の配当については、
現時点で
は玄海原子力発電所の具体的な再稼働時期を見通
せないことなどから
「未定」
とさせていただいており
ますが、
2016年3月期に引き続き、
一定程度の配当
ができるよう、
玄海原子力発電所の早期再稼働に向
けた取組みや、
経営全般にわたる更なる効率化の徹
底などに努めてまいります。
Growth Story0102030405060702016期末
中間
(円)2015201420132012302050 00配当金の推移 普通株式
A種優先株式につきましては、
累積未払A種優先配当金と合わせて配当を実施
することとしており、
1株につき7,153,763円00銭といたしました。
2016年3月期は4期ぶりの復配となりましたが、
今後の配当を
どのようにお考えですか
引き続き、
一定程度の配当ができるよう、
原子力再稼働に向けた
取組みや効率化の徹底に努めます。Q5A5
(3月31日終了事業年度)
九州電力 アニュアルレポート 2016 19
2017年4月からは、
送配電事業へ
「社内カンパニー」
の導入を
公表されましたが、
今後の組織改正についてどのようにお考え
ですか
送配電事業以外についても、
迅速性・柔軟性を備えた組織・業務
運営体制を検討しています。Q6A6
2016年4月からの全面自由化に伴う小売電気事
業者の進出やライセンス制導入に伴う
「適正な電力
取引についての指針
(ガイドライン)」等を踏まえ、送配電事業における一層の公平性・透明性・中立性を
確保する自律的な事業運営を目指し、
2017年4月
から送配電事業を組織として一元化する社内カンパ
ニーを導入いたします。
送配電事業以外についても、
全面自由化などの事
業環境変化を踏まえ、
発電・小売一体となって競争を
勝ち抜くための迅速性や柔軟性を備えた組織・業務
運営体制を検討しているところです。
さらには、
2020年4月目途で発送電分離も予
定されています。
発電、
送配電、
小売りの3部門が自
律的に機能する一方で、
全体最適を目指す必要があ
り、
しっかりと検討していきたいと考えております。
2012年7月の再生可能エネルギーの固定価格買
取制度
(FIT制度)
導入以降、
九州エリア内では、
特に
事業用太陽光の導入が急速に進展しております。
このため、
今後、
軽負荷期等を中心として太陽光の
出力が大きくなる昼間帯に、
火力発電所等の出力を
安定供給上の支障がない限度まで下げて運転するな
どの措置を講じてもなお、
供給力が需要を超える場
合には、
電力の安定供給を確保するため、
再生可能
エネルギーの出力制御が必要となることが考えられ
ます。
実際に、
2015年5月以降、
電力系統が独立してい
る一部の離島では、
運転中の内燃力発電機を最低
出力の状態まで下げて運転しても供給力が島内の
需要を超えるケースが発生しており、
再生可能エネ
ところで、
一部の離島においては、
再生可能エネルギーの出力
制御が行われていますが、
今後の受入れに向けた方針をお聞か
せください
九州本土においても、
出力制御を実施せざるを得ない可能性が
ありますが、
引き続き、
最大限の受入れに向けて取り組みます。Q7A7
九州電力 アニュアルレポート 201620 社長インタビュールギーの出力制御を実施するに至っております。
今後、
九州本土においても、
再生可能エネルギーの
導入状況、
需要動向や他電源の状況によっては、
出力
制御を実施せざるを得ない可能性があります。
当社としては、
天候によって大きく変動する再生可
能エネルギーを最大限受入れるため、
その出力に対応
した需給運用方策の検討、
実施に取り組んでおります。
具体的には、
国の補助金を活用し、
再生可能エネル
ギーの出力制御を緩和するため、
大容量蓄電池の設
置や、
きめ細やかに太陽光発電の出力制御が可能な
システムの開発を行っております。
今後とも、
引き続き、
再生可能エネルギーの最大
限の受入れに向けて取り組んでまいります。
まずは、
このたびの熊本地震により被災された皆
さまに心よりお見舞い申しあげます。
当社におきましては、
2016年4月14日に発生し
た、
熊本県熊本地方を震源とする地震により、
熊本
県益城町と熊本市を中心に、
最大で16.7千戸のお
客さまが停電しましたが、
翌15日には高圧配電線
の送電を完了いたしました。
さらに16日、
同地方を震源とする地震が発生し、
Growth Story
風力 太陽光
<設備量> <電力量>
(万 kW) (億 kWh)2016201520142013
2012 201620152014201320120200400600800020406080744111142 2724346947601486073971876736[太陽光・風力の導入量]
(注記)他社のみ
最後に、
今年4月に発生した熊本地震についてお聞かせくださいQ8・復旧に向けた対応はいかがでしたか
最大で476.6千戸のお客さまが停電しましたが、
早期の復旧が実現でき
ました。
(3月31日終了事業年度) (3月31日終了事業年度)
☞大容量蓄電システムについてはESG Section
(48〜49ページ)
参照
九州電力 アニュアルレポート 2016 21
熊本県阿蘇市を中心に、
最大で476.6千戸のお客
さまが停電しましたが、
20日には、
がけ崩れや道路
の破損等により復旧が困難な箇所を除き、
高圧配
電線の送電を完了いたしました。
広範囲にわたり停電が発生し、
大変ご迷惑をおか
けしましたことをお詫びいたしますとともに、
復旧作
業に際しご理解とご協力をいただきました、
各自治体・
関係機関をはじめ地域の皆さま方に、
心より御礼
申しあげます。
今回のような早期の復旧は、
これまで
の関係者の皆さまや当社社員の日常業務や訓練、経験の賜物だと思っております。
また、
北海道から沖縄に至る電力9社から高圧発
電機車110台をはじめ合計629名の応援を派遣
いただきました。
熊本県に北海道電力や沖縄電力
のロゴマークがついた車が並んでいるのを見るの
は、
胸に迫るものがあり、
改めて電力に携わる人々
の絆を実感いたしました。
なお、
現時点で判明している電力供給設備の被害
等に関する復旧費用については、
修繕費等の費用が
100億円程度、
及び設備投資100億円程度となる見
込みです(注記)(注記)現時点で判明している被害の状況について入手可能な情報に基づき算定したも
のであり、
今後、
被害状況や見積り内容の変更などにより、
変動する可能性があ
ります。‌高圧発電機車による送電
(関西電力
(株))大規模な土砂崩れ
(熊本県南阿蘇村)
500.0
400.0
300.0
200.0
100.0
18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 0 6 12 18 18 (時)
0 6 120.0停電戸数(千戸)4月14日
(木) 4月15日
(金) 4月16日
(土) 4月17日
(日) 4月18日
(月) 4月19日
(火) 4月20日
(水)
地震
(前震)
発生
4/14 21時26分
地震
(本震)
発生
4/16 1時25分
高圧配電線送電
4/20 19時10分
高圧電線送電
4/15 23時00分
4/14 22時00分
16.7千戸
最大 4/16 2時00分 476.6戸
九州電力 アニュアルレポート 201622 社長インタビュー一般の方々からは、
原子力発電所への影響が懸
念されましたが、
稼働中の川内原子力発電所におい
て異常は確認されず、
現在も安全、
安定して運転を
継続中です。
川内原子力発電所の基準地震動策定において
は、
本地震の震源である
『布田川・日奈久断層帯』
全体による揺れを100ガル程度と想定しておりまし
た。
基準地震動については
『布田川・日奈久断層帯』
よりも敷地に近く影響が大きい3つの活断層帯を基
に540ガルを、
震源を特定せず策定する地震動とし
て620ガルを策定しております。
また、
原子力発
電所は、
この基準地震動に十分に余裕を持った揺れ
の大きさ160ガルで安全に自動停止する仕組みを
備えております。
今回の地震は、
断層帯の一部がずれ動いたもの
で、
川内原子力発電所で観測された揺れは8.6ガル
と、
基準地震動はもちろんのこと、
自動停止の設定
値を大きく下回っておりました。
今後、
断層の残りが
動いても、
発電所に影響を与えるような揺れにはな
らないと考えられます。
なお、
玄海原子力発電所の基準地震動策定にお
いては、
『布田川・日奈久断層帯』
が敷地から離れて
いるため、
敷地に影響を与えない地震と想定してお
り、
発電所で観測された揺れも20.3ガルと、
川内原
子力発電所と同様、
自動停止の設定値170ガル
(3、
4号機)
を大きく下回っておりました。
今後とも、
安全確保を第一に原子力発電所の安全・
安定運転を続け、
電力の安定供給の使命を全う
してまいります。
0 100 200 300 400 500 600 700
(ガル)
基準地震動
(Ss-1)
160ガル
(原子炉自動停止の設定値)
基準地震動
(Ss-2)
1市来断層帯市来区間
2甑断層帯甑区間
3市来断層帯甑海峡中央区間
布田川・日奈久断層帯
熊本地震・本震
(4月16日)
基準地震動策定時の想定と観測記録の比較
川内原子力発電所敷地周辺の活断層
本震4月16日
(M7.3)
1市来断層帯市来区間
今回の地震が起きた範囲
布田川・日奈久断層帯
川内原子力発電所★川内原子力発電所において異常は確認されず、
現在も安全、
安定して運
転継続中です。
・原子力発電所への影響についてお聞かせください
Growth Story
九州電力 アニュアルレポート 2016 23

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