原子力発電所の安全


安心に向けた取組み
特集 当社は、
原子力発電の安全性向上が経営の最重要課題と認識し、
国の新規制基準を遵守する
とともに、
ハード
(設備)
とソフト
(運用)
の両面から、
社外の知見やご意見も取り入れながら、
自主的・
継続的に安全性向上に取り組んでいます。
当社は、
2013年7月に、
川内原子力発電所1、
2号機、玄海原子力発電所3、
4号機において実施している安全対策
について、
国が定めた新規制基準への適合性確認のため、
原子力規制委員会に
「原子炉設置変更許可
(基本設計)」、
「工事計画認可
(詳細設計)」、
「保安規定変更認可
(運用
管理)」を一括して申請しました。
(川内:2013年7月
8日、玄海:2013年7月12日申請)
川内原子力発電所1号機については、
発電所において、
実際の安全対策が工事計画認可のとおりであること等を確
認する使用前検査を2015年3月30日から受検し、
その後、
7月7日からの燃料装荷、
8月11日の原子炉起動、
8月14日
の発電再開を経て、9月10日に通常運転に復帰しま
した。
川内原子力発電所1号機の再稼働プロセス
2013年7月8日
補正
申請
2014年9月10日 2015年9月10日許可申請通常運転
原子炉設置変更許可審査(1・
2号機共通)
補正
申請
2015年5月27日認可
保安規定変更認可審査(1・
2号機共通)
補正
申請
2015年3月18日認可
工事計画認可審査 使用前検査
保安検査
(注記)川内原子力発電所の安全性向上への取組み及び再稼働に対しては、
立地自治体の首長である鹿児島県知事、
薩摩川内市長のご理解をいただいております。
川内原子力発電所2号機については、
1号機から
2か月
程度遅れの2015年6月から使用前検査を受検し、
1号機
での経験を活かしながら検査が続いています。
当社としては、
今後も更なる安全性・信頼性向上への
取組みを、
自主的かつ継続的に進め、
原子力発電所の安
全確保に万全を期すとともに、
川内原子力発電所2号機
及び玄海原子力発電所3、
4号機の早期再稼働を目指し
国の審査及び検査に真摯かつ丁寧に対応していきます。
川内原子力発電所1号機が通常運転に復帰
25/88 九州電力 Annual Report 2015
Section 3
特集
Section 5
財務情報
Section 4
経営基盤
Section 2
マネジメントメッセージ
Section 1
九州電力早わかり
新規制基準では、
地震や津波などの共通の要因によっ
て、
原子力発電所の安全機能が一斉に失われる事を防止
するために、
耐震・耐津波性能や電源の信頼性、
冷却設備
の性能などの設計基準が強化されました。
また、
設計の想
定を超える事態にも対応できるよう、
重大事故対策などが
求められました。
川内原子力発電所1、
2号機の原子炉設置変更許可申請書の内容
原子力規制委員会の新規制基準の概要
(1)地震
基準地震動は、1 発電所周辺の活断層から想定される地震動
(敷地毎に
震源を特定して策定する地震動)2 震源と活断層の関連付けが難しい過去の地震動
(震源
を特定せず策定する地震動)
の両方を考慮しています。
1. 設計基準の強化・新設
新規制基準の
主な要求内容• 発電所は活断層が無い地盤に設置すること•
最新の科学的・技術的知見を踏まえ、
「基準
地震動」
を策定すること
原子炉設置変
更許可申請書
の主な内容•
敷地内に活断層が無いことを確認•
基準地震動を策定
1発電所周辺の活断層を評価: 540ガル
2北海道留萌支庁南部地震を考慮: 620ガル
▼川内原子力発電所周辺の活断層分布
26/88 九州電力 Annual Report 2015
Section 3
特集
Section 5
財務情報
Section 4
経営基盤
Section 2
マネジメントメッセージ
Section 1
九州電力早わかり
(2) 津波
新規制基準の
主な要求内容•
最新の科学的・技術的知見を踏まえ
「基準津
波」
を策定すること•
安全上重要な設備等がある建屋等は津波
が到達しない高台に設置すること•
津波が到達する場合は、
防護施設等を設置
すること
原子炉設置変
更許可申請書
の主な内容•
基準津波を策定 ・
琉球海溝のプレー
ト間地震を考慮
発電所への最大遡上高さは海抜6m程
(注記)
と評価•
発電所の主要な設備は、
海抜約13mの敷地
に設置されており、
遡上波に対し、
十分余裕
があることを確認•
海水ポンプエリアに防護壁等を設置
(注記)地震による地盤沈下や満潮位の変動なども考慮
(3) 自然現象・火山・竜巻等
新規制基準の
主な要求内容•
発電所周辺の火山を調査し、
火山事象の影
響を評価すること•
発電所運用期間中に設計対応不可能な火
山事象が影響を及ぼす可能性が十分小さ
いか確認すること•
竜巻や飛来物によっても安全上重要な設備
の健全性が維持されること
原子炉設置変
更許可申請書
の主な内容•
火山灰が降った場合
(厚さ15cm)
でも、安全上重要な建屋や機器への影響がないこと
を評価•
発電所の運用期間中にカルデラの破局的噴
火が発生する可能性は十分小さいと評価 (火山活動のモニタリングを実施)•
風速100m/秒の竜巻を想定し、
飛来物の
衝突防止のため、
安全上重要な屋外設備に
防護ネッ
トを設置 (国内の過去最大の竜巻92m/秒を考慮)
(4) 火災・溢水
新規制基準の
主な要求内容•
火災防護対策を強化、
徹底すること•
安全上重要な設備は溢水への防護対策を
行うこと
原子炉設置変
更許可申請書
の主な内容•
自動消火設備や耐火隔壁などの追加設置•
タンクや配管が壊れ、
水が溢れ出ないよう、
配管の補強や水密扉等を設置( )▼九州におけるカルデラの位置
▼復水タンク竜巻防護対策
▼海水ポンプエリア防護壁
▼発電所敷地のイメージ図
原子炉
格納
容器
防護壁
防護堤
防護ネット(金属製)
27/88 九州電力 Annual Report 2015
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特集
Section 5
財務情報
Section 4
経営基盤
Section 2
マネジメントメッセージ
Section 1
九州電力早わかり
2. 重大事故対策
(1) 炉心損傷防止対策
新規制基準の
主な要求内容•
安全機能が一斉に喪失したとしても炉心損
傷に至らない対策を講じること
原子炉設置変
更許可申請書
の主な内容•
電力供給手段の多様化 ・
外部電源及び常設の非常用電源が喪失し
た場合に備え、
大容量空冷式発電機など
を設置•
原子炉の冷却手段の多様化 ・
常設のポンプに加え、
可搬型のポンプ等を
追加配備 1
可搬型注入ポンプ(新設)による原子炉
及び蒸気発生器への注水 2
常設電動注入ポンプ(新設)による原子
炉への注水 3
格納容器スプレイポンプ(機能追加)によ
る原子炉への注水 4
移動式大容量ポンプ車(新設)による原
子炉補機冷却設備への海水供給 可搬型注入ポンプに
よる炉心、
蒸気発生
器への注水
炉心損傷防止対策イメージ図
▼大容量空冷式発電機
▼移動式大容量ポンプ車
28/88 九州電力 Annual Report 2015
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特集
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財務情報
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経営基盤
Section 2
マネジメントメッセージ
Section 1
九州電力早わかり
(2) 格納容器破損防止対策
新規制基準の
主な要求内容•
炉心損傷が起きたとしても、
格納容器を破
損させない対策を講じること
原子炉設置変
更許可申請書
の主な内容•
格納容器の冷却手段の多様化 1
常設電動注入ポンプ(新設)による格納
容器スプレイ 2
可搬型注入ポンプ(新設)による格納容
器スプレイ 3
移動式大容量ポンプ車(新設)による格
納容器再循環ユニッ
(注記)1
への海水供給•
水素濃度低減対策 ・
水素爆発を防止するために、格納容器
内に水素が発生した場合でも、水素の
濃度を低減することができる 4
静的触媒式水素再結合装置(注記)2 5
電気式水素燃焼装置(注記)3
を設置
(注記)1 冷却水による熱交換で、
格納容器内の空気を冷却する装置
(注記)2 触媒
(白金、
パラジウム)
により、
水素と酸素を反応させて水にする装置
(注記)3 電気ヒータにより、
水素を強制的に燃焼させて水にする装置
(3) 放射性物質の拡散抑制
新規制基準の
主な要求内容•
格納容器が破損したとしても、
敷地外への
放射性物質の拡散を抑制する対策を講じる
こと
原子炉設置変
更許可申請書
の主な内容•
格納容器の破損箇所に放水する放水砲、海洋への拡散を防ぐシルトフェンス
(海中カー
テン)
の配備
(4) 重大事故へ対処する拠点施設
新規制基準の
主な要求内容•
重大事故発生時に指揮等を行う拠点施設と
して緊急時対策所を整備すること
原子炉設置変
更許可申請書
の主な内容•
代替緊急時対策所の設置 ・
耐震性、
通信設備等、
新規制基準の要求を
満たす代替緊急時対策所を設置
格納容器破損防止対策、
放射性物質の拡散抑制イメージ図
29/88 九州電力 Annual Report 2015
Section 3
特集
Section 5
財務情報
Section 4
経営基盤
Section 2
マネジメントメッセージ
Section 1
九州電力早わかり
川内原子力発電所では、
万が一の重大事故等が発生し
た場合、
勤務時間外や休日
(夜間)
でも、
速やかに対応でき
るよう、
発電所内または発電所近傍に、
常時、
一班52名を
確保
(宿直体制)
しています。
この52名については、
日頃か
ら訓練を積み重ね、
力量管理を行い、
重大事故等に迅速か
つ確実に対応できる体制を整備しています。
原子力のリスクに対しては、
経営トップの強いリーダー
シップのもと、
社内外の知見やご意見等を踏まえながら、幅広いリスクの把握に努めるとともに、
経営層全員が
「社内リ
スクコミュニケーション」
会議において、
多様な視点で議論
を行う等により、
リスクマネジメン
トの強化に取り組みます。
社外有識者等で構成される
「原子力の業務運営に係る
点検・助言委員会」
を活用し、
原子力のリスクに対する安
全性向上への取組みについて、
第三者的な視点からモニタ
リングを行っていきます。
また、
社長を委員長とする
「カルデラ火山対応委員会」を設置し、
第三者の助言も得ながら、
カルデラ火山に対する
リスクマネジメン
トを行っていきます。
重大事故対策要員の確保とさまざまな訓練
原子力のリスクに対するマネジメントの強化
原子力発電所における重大事故への対応訓練
原子力のリスクマネジメントを強化するための体制図
当社
取締役会、
経営会議
発電本部、
関係本部
JANSI、
原子力リスク研究
センター、
WANO、
メーカー等
関係自治体、
地域社会等
原子力の業務運営に係る
点検・助言委員会
原子力の業務運営に係る
点検・助言委員会の様子
原子力安全性
向上分科会
「社内リスクコミ
ュニケーション」
会議
(原子力リスクに対する議論を強化)
くろまる 重要リスクの把握・評価 くろまる リスク対応方針の審議 等
報告
報告
審議結果
モニタリング
国内外の新たな知見等 コミ
ュニケーションを通じたご意見等
JANSIとの連携等、
原子力産業全体の取組
みにも積極的に参画( )JANSI
(原子力安全推進協会)
原子力発電所の安全性向上対策を継続的に実施するため、
原子力事業者の意向に左右されることなく判断できる独立性
を有し、
事業者を牽引・支援する組織WANO(世界原子力発電事業者協会)
原子力事業者間の交流と切磋琢磨を通じて、
原子力発電所の運
転に関する安全性と信頼性の向上を図ることを目的とする組織
電源ケーブルの運搬 可搬型ディーゼル注入ポンプ
の設置
放水砲の設置 敷地周辺での森林火災を想定
した訓練
「電源供給訓練
(電源ケーブルの運搬等)、冷却水供給訓練
(可搬型ディーゼル等)、放射性物質拡散抑制訓練、
専属消防団による消火訓練」
30/88 九州電力 Annual Report 2015
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特集
Section 5
財務情報
Section 4
経営基盤
Section 2
マネジメントメッセージ
Section 1
九州電力早わかり
地域の皆さまの
「思い」
を丁寧にお聴きして、
原子力に関す
るリスク情報の共有を図る
「リスクコミュニケーション」
に取
り組みます。
地域の皆さまが感じている不安や疑問を、
当社のリスク
マネジメントに反映し、
地域の皆さまの安全・安心を高める
取組みを通じて、
信頼関係を醸成することを目指します。
原子力に関する地域の皆さまとのコミュニケーションの充実1 リスクの存在を前提としたコミュニケーションの重要性
について、
社員への浸透を図るとともに、
原子力立地地
域の皆さまとの継続的なコミュニケーションを行うため
に、
現地組織の強化を図ります。2 さまざまなコミュニケーション活動の中で、
地域の皆さ
まの不安や疑問の声を丁寧にお聴きします。3 地域の皆さまの声を経営層を含む社内で共有し地域の
皆さまが
『安全である』、『安心できる』
と感じられる取
組みにつなげていきます。
地域の皆さまとのコミュニケーション活動の拠点となる恒常的な組織として、
2015年7月、
玄海原子力発電所が立地す
る佐賀県玄海町に
「玄海事務所」
を設置
これまでの
「理解活動」 これからの
「リスクコミュニケーション」
地域の皆さま 九州電力
安全対策のご説明
説明へのご質問
地域の皆さま
安全・安心
不安・疑問
九州電力
地域の皆さまの安全・安心を高める取組み
信頼関係の
醸成
経営層を含む
社内で共有
不安や疑問の声を
丁寧にお聴きする
31/88 九州電力 Annual Report 2015
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特集
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財務情報
Section 4
経営基盤
Section 2
マネジメントメッセージ
Section 1
九州電力早わかり

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