社長インタビュー

2013年度は原子力発電所の全基停止による需給逼迫
と収支・財務状況の悪化により、
お客さまや株主・投資家
の皆さまには大変なご迷惑をおかけし、
忸怩たる思いのする1年でした。
需給については、
2011年の冬から断続的に節電への
ご協力をお客さまにお願いしており、
2013年度について
も夏・冬ともに、
計画停電の準備や数値目標はなかったも
のの、
大変なご不便をおかけいたしました。
お客さまの節
電と他電力からの融通や市場調達など、
当社の時になり
ふり構わぬ供給力確保により何とか乗り切ることができま
した。
急速な収支・財務状況の悪化に対しては、
電気料金の
値上げと経営効率化の深掘りにより対応してまいりまし
たが、
原子力発電所が想定以上に停止したことに伴う代
替火力燃料費の増加により、
3期連続となる純損失を計
上するとともに、
2期連続の無配とせざるをえませんでし
た。
株主の皆さまには大変申し訳なく、
心苦しく思っており
ます。
厳しい需給と収支・財務状況の抜本的な解決のために
は原子力発電所の再稼働しかありません。
当社は、
昨年7
月に川内1、
2号機と玄海3、
4号機の新規制基準への適合
性審査のための申請を行い、
原子力規制委員会の会合や
ヒアリング、
現地調査などに真摯に対応してまいりました。
2013年度を振り返ってどのように総括しますか。Q皆さまに大変なご迷惑をおかけし、
忸怩たる思いのする
1年でした。A代表取締役社長
瓜生 道明
今年度は、
引き続き、
最重要課題である原子力発電
所の再稼働に向け全社一丸となって取り組み、
電力
需給及び収支・財務の安定化を図ってまいります。
ごあいさつ
社長インタビュー
Section 1
九州電力早わかり
Section 2
マネジメントメッセージ
Section 4
経営基盤
Section 5
財務情報
Section 3
特集
9/74 九州電力 Annual Report 2014
有利子負債残高と純資産の推移
(個別) 純資産と自己資本比率の推移
(個別)
(億円) (億円)
30,000
25,000
20,000
15,000
10,000
5,000012,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000020132012201120102009
9,841
18,944
9,675
19,681
7,667
23,601
4,292
27,890
3,414
29,838
有利子負債残高
(左軸) 純資産
(右軸)
(年度末)
(億円) (%)
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,0000302520151050
(年度末)20132012201120102009純資産
(左軸) 自己資本比率
(右軸)
9,841 9,675
7,667
4,292
3,414
9,841 9,675
7,667
4,292
3,41426.124.918.710.28.1優先株式発行
(1,000億円)
による自己資本比率改善効果
約2%
優先株式を発行した背景及び普通株主への利益還元に対する考え方について
お聞かせください。Q財務の下支えとして1,000億円の優先株式を発行いたしました。
早期復配に向け、
期間収支の改善に全力を尽くします。A 当社は、
原子力発電所の停止が長期化する中、2011年度から3期連続の純損失を計上するなど、
自己資本の
毀損が急速に進展しています。
こうした状況を踏まえ、責任あるエネルギー事業者としての責務を果たしていくた
め、
資本性のある資金調達を実施することにより、
電力の
安定供給に必要な資金を確保しつつ、
自己資本の増強を
図ることが必要かつ適切と判断し、
(株)
日本政策投資銀
行に対し、
第三者割当の方法により、
優先株式の発行を
実施いたしました。
今回の優先株式は、
普通株式への転換はできず、
当社
株主総会における議決権も付与されない、
いわゆる
「社債
型」
の優先株式であり、
普通株式の希薄化は生じません。
また、
今後の配当につきましては、
中長期的な収支見通
しや財務状況に加え、
ステークホルダー全体のバランス
等を踏まえながら総合的に判断していきたいと考えてお
り、
安定配当を基本とする方針に変わりはありません。当社といたしましては、
2期連続無配といった状況も踏まえ、
少額配当を含め、
早期に復配できるよう、
まずは、
経営の
合理化や原子力発電所の早期再稼働など、
期間収支の
改善に取り組んでまいります。 1 払込期日
(発行日) 2014年8月1日
2 発行新株式数 A種優先株式 1,000株
3 発行価格 1株につき 1億円
4 調達資金の額 1,000億円
5 優先配当金 1株につき350万円
6 割当方法
(割当先)
(株)
日本政策投資銀行に対する第三者割当
方式
7 資金使途
全額を原子力発電所の安全性向上のための
対策工事に充当予定
優先株式発行の概要
ごあいさつ 社長インタビュー
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九州電力早わかり
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特集
10/74 九州電力 Annual Report 2014
当社は従来から原子力の
「危険性」
を常に自覚し、
原子
力の安全確保に取り組んでまいりました。
しかしながら、福島の事故からは、
当社においても、
不確実性の高い自然現
象への備えや、
原子力のリスクに対するマネジメン
トにおい
て、
反省すべき点があり、
原子力の安全性の向上に更なる
覚悟をもって臨んでいく必要があると考えています。
こうし
た認識のもと、
私は
「品質方針」
の中で以下の4つの柱に基づ
き安全への取組みを推進するよう社員に伝えており
ます。
1 原子力安全を最優先とする文化を醸成し続けます
2 自主的・継続的に安全性・信頼性を向上させます
3 積極的な情報公開を行い説明責任を果たします 4
社内や協力会社との風通しの良い組織風土をつくり
ます
私をはじめ社員一人ひとりが原子力の安全への取組み
に終わりがないことを自覚し、
協力会社の方々と一体と
なって日々のリスク低減活動を自律的・継続的に積み重ね
ることで、
地域・社会の皆さまに信頼され、
安心され続ける
原子力発電所を目指してまいります。
今年6月に
「原子力の自主的・継続的な安全性向上の取組み」
(注記)
について公表されましたが、
改めて原子力の安全性向上に向けた社長の思いをお聞かせください。Q原子力のリスクを経営の最重要課題と位置づけ、
「常に世界最高水準の安全性」
を目指
してまいります。A(注記)詳細はP16の特集1
「原子力発電所の安全・安心に向けた取組み」
をご覧ください
ごあいさつ 社長インタビュー
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マネジメントメッセージ
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経営基盤
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財務情報
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特集
11/74 九州電力 Annual Report 2014
当社は、
2013年春の料金値上げ時に織り込んだ
しろさんかく1,400億円/年の経営効率化に取り組んでいます。
2013年度は、
依然として原子力発電所の停止が続き、
かつてない厳しい経営状況にあるため、
恒常的な効率化の
取組みに加えて、
修繕費や諸経費の一時的な繰延べなど、
短期限定のコスト削減や可能な限りの資産売却に全社一
丸となって取り組みました。
その結果、
短期限定の取組みを中心としたしろさんかく1,100億円
の深掘りを加え、
しろさんかく2,500億円程度の費用削減を行うと
ともに、
700億円程度の資産売却を計上しました。
〔恒常的な取組みの例〕
しかく 個々の設備実態、
運用を精査した上での修繕費・設備投
資の抑制
しかく 業務委託範囲・内容の見直しや業務全般にわたる効率
化などによる諸経費の削減
しかく 競争発注の拡大、
仕様・工法の見直しによる資機材調達
コス
トの低減など
〔短期限定の取組みの例〕
しかく 安全確保や法令遵守等、
事業継続のために直ちに必要
なもの以外を原則停止するなど、
修繕費や諸経費の規
模縮小、
中止、
実施時期の繰延べ
2014年度は、
昨年4月に公表した経営効率化計画
「3か
年平均しろさんかく1,400億円規模」
の達成に向け、
まずは取り組ん
でまいります。
資産売却につきましては、
2013年度に引き続いて、
売却
益を見込めるものについて、
あらゆる視点から再度洗い出
ししていく考えです。
原子力発電所の再稼働の見通しが依然として不透明な
状況であることから、
今後も効率化の深掘りに取り組んで
まいります。
(億円)
項目
料金原価織込効率化額
〈2013〜2015平均〉
2013年度
効率化実績
2013年度の主な取組み内容
修繕費 しろさんかく320 しろさんかく1,080
• 点検周期の延伸化
• 修繕工事の一時的な中止・繰延べ・規模縮小
諸経費等 しろさんかく220 しろさんかく670
• 業務委託範囲・内容の見直し
• 普及開発関係費、
団体費、
研究費、
委託費等の中止・繰延べ・規模縮小
• 資材調達や委託発注時の競争発注導入拡大
人的経費 しろさんかく480 しろさんかく480
• 役員報酬の減額
• 基準賃金の引下げ、
年間賞与支給ゼロ
• 福利厚生等の見直し
• 採用数の抑制
需給関係費
(燃料費など)
しろさんかく180 [しろさんかく400]
(注記) • LNG・石炭など燃料調達コストの低減
• 電力取引市場からの電力調達の積極的活用
減価償却費
(設備投資)
しろさんかく230 しろさんかく220
• 設計基準、
仕様の見直し
• 一時的な工事中止・繰延べ・規模縮小
• 資材調達や工事発注時の競争発注導入拡大
合計
[需給関係費含み] [しろさんかく1,400規模]
しろさんかく2,450
[しろさんかく2,850]
(注記)2013年度は原子力の稼働がなく、
需給バランスが料金原価の想定と大きく異なることから、
一定の前提を置いて算定
経営効率化の取組み状況
経営効率化への取組み状況についてお聞かせください。Q電力のプロとして限界まで踏み込み、
必要不可欠なものを見極めてまいります。Aごあいさつ 社長インタビュー
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12/74 九州電力 Annual Report 2014
電源開発計画は、
電力需要動向に加え、
エネルギーセ
キュリティ面、
地球温暖化対策面、
発電設備の実態、
国のエ
ネルギー政策などを総合的に勘案し策定しております。
今年4月に閣議決定された
「エネルギー基本計画」
におい
ては、「S+3E」
の観点から、
特定の電源や燃料源に過度に
依存しない、
バランスのとれた供給体制を構築することの
重要性が示されております。
一方、
エネルギーミックスや原子力発電所の新増設・リプ
レース等に関する詳細な課題については、
今回明記されて
いないものの、
「政府は、
本計画で示された詳細な課題に取
り組むための体制を早急に整え、
検討を開始する」
と明記さ
れており、
引き続き議論されていく
ものと認識しており
ます。
今後につきましては、
エネルギーミックスや原子力発電
所の新増設・リプレースに係る議論の動向等を踏まえ、各種電源の特性や将来の燃料動向、
経済性などを踏まえた
最適な電源開発を検討してまいります。
区分 設備 発電所及びユニッ
ト 出力
工期
着工 運開
工事中
水力
新甲佐 7,200kW 2012年5月 未定
竜宮滝 200kW 2013年5月 2015年3月
火力(LNG) 新大分3号系列(第4軸) 48万kW 2013年7月 2016年7月
火力(石炭) 松浦2号(注記)1
100万kW 2001年3月 2021年6月(注記)2
着工準備中
水力 新名音川 370kW 2014年9月 2016年6月
火力(内燃力) 豊玉6号(注記)1
8,000kW 2018年6月(注記)2
原子力 川内原子力3号 159万kW 未定 未定
地熱 大岳
14,500kW
〔+2,000kW〕
2017年9月 2019年12月
(注記)1 松浦2号、
豊玉6号は火力入札ガイ
ドライン上の入札対象電源
(注記)2 松浦2号、
豊玉6号の運開年月は、
入札募集における供給開始期限を記載
電力販売の実績と見通し
電源開発計画2012(実績)2013(実績)
2014 2015 2016 2017 2018 2023
年平均伸び率
2023/2012(%)販売電力量
(億kWh)838(832)846(833)
837 844 847 854 861 8960.6(0.7)
最大電力
(万kW)
1,481
(1,487)
1,583
(1,489)
1,502 1,512 1,522 1,535 1,547 1,6100.8(0.7)
(注)1. ( )
は気温補正後
(注)
2. 最大電力は夏季の送電端最大3日平均値
項目
年度
「2014年度供給計画の概要」
を公表されましたが、
今後の電源開発の考え方について
お聞かせください。Q国のエネルギー政策等を踏まえ、
最適な電源開発を検討してまいります。Aごあいさつ 社長インタビュー
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マネジメントメッセージ
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経営基盤
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財務情報
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13/74 九州電力 Annual Report 2014
当社所有の火力発電所の多くは高経年化が進展して
おり、
特に、
九州本土においては、
2020年度末には石油
火力約300万kWが経年40年を迎え、
対馬においては、
2018年度末までに、
内燃力機11台
(55,700kW)
中5台
(10,100kW)
が経年50年を迎えることとなります。
今後、
その代替となる電源開発が段階的に必要であるこ
とから、
今年度、
火力電源入札を実施することとしました。
具体的には、
しかく 九州本土において、
2021年6月までに供給開始できる
電源を対象に、
合計で100万kW
しかく 離島において、
2018年6月までに、
長崎県対馬に供給開
始できる電源を対象に、
合計で8,000kW
の火力電源を募集いたします。
なお、
九州本土については、
松浦2号の開発前倒し、
離島
(対馬)
については、
豊玉6号の新規開発でそれぞれ自社
応札いたします。
石油火力 (年)
運用開始
認可出力
(万kW)
2013年度末 2020年度末
川内
1 1974年7月 50 39 46
2 1985年9月 50 28 35
豊前
1 1977年12月 50 36 43
2 1980年6月 50 33 40
相浦
1 1973年4月 37.5 40 47
2 1976年10月 50 37 44
苅田 新2 1972年4月 37.5 41 48
LNG火力 (年)
運用開始
認可出力
(万kW)
2013年度末 2020年度末
新小倉
3 1978年9月 60 35 42
4 1979年6月 60 34 41
5 1983年7月 60 30 37
新大分
1 1991年6月 69 22 29
2 1995年2月 87 19 26
3 1998年7月 73.5 15 22
石炭火力 (年)
運用開始
認可出力
(万kW)
2013年度末 2020年度末
松浦 1 1989年6月 70 24 31
苓北
1 1995年12月 70 18 25
2 2003年6月 70 10 17
苅田 新1 2001年7月 36 12 19
火力発電設備経年状況
今年度に火力電源の入札を実施するとのことですが、
その背景・詳細について
お聞かせください。Q競争力のある電源確保に向け、
老朽火力発電所の更新を進めてまいります。A火力発電設備の経年分布
(2013年度末時点)
火力発電設備の経年分布
(2020年度末時点)
(ユニッ
ト数)86420(経年数)
40〜
20〜29 30〜39
10〜19
0〜9
石炭 LNG 石油31.9023431112
(ユニッ
ト数)8642040〜
20〜29 30〜39
10〜19
0〜9
石炭 LNG 石油31.90231111326(経年数)
ごあいさつ 社長インタビュー
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特集
14/74 九州電力 Annual Report 2014
電力システム改革が進められており、
さらなる競争の進展が予想されますが、
今後の経営戦略についてお聞かせください。Qお客さまから信頼され選ばれ続ける
「しなやかで強い会社」
を目指してまいります。A 現在、
国において、
小売全面自由化など電力システム改
革に関する議論が進められております。
詳細な制度設計は
まだ決まっておりませんが、
一つ言えるのは、
今後、
当社の
経営環境が3.
11以前に戻ることは決してないということ
です。
そうした中、
私は、
当社をいかなる経営環境に置かれて
も逞しく生き残っていける、
「しなやかで強い会社」
にしたい
と考えております。
当社としては、
これからの時代においても、
「ずっと先ま
で、
明るくしたい。」という
「九州電力の思い」
を理念として
持ち続け、
安定した電力をお客さまにしっかりとお届けする
だけでなく、
エネルギーに関する多様なニーズを敏感に捉
え、
お客さまと共に価値を創造していくことで、
信頼され選
ばれ続ける会社を目指してまいります。
そのためには、
まずは、
九州の基盤をしっかりと固めるこ
とが重要であると考えます。
原子力発電所の一層の安全
性向上に全力を傾注し、
再稼働を目指すとともに、
経営効
率化の取組みを継続することで低コス
ト体質の定着を図り
ます。
さらに、
これまで培ってきたお客さまや地域とのつな
がり、
技術力や知見などの強みを活かし、
エネルギー全般
にわたるサービスの提供を目指してまいります。
その上で、
収益力拡大という観点から、
新たな成長戦
略を描いていきます。
地熱をはじめとする再生可能エネル
ギーの積極的な開発やアジアを中心とする海外電気事業
の展開、
九州域外も含めたお客さまへの電力販売など、これまでの枠組みに捉われず、
エネルギーサービス事業者と
して、
九電グループの今後の姿を検討してまいります。
ごあいさつ 社長インタビュー
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15/74 九州電力 Annual Report 2014

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