1.経営成績・財政状態に関する分析

(1) 経営成績に関する分析
1当期の経営成績
平成25年度のわが国経済は、政府の経済対策や株価上昇、消費増税前の駆け込み需要な
どを背景に、内需を中心に緩やかに回復してきました。九州経済も、輸出が緩やかに増加
し、雇用・所得環境の改善から個人消費が持ち直しつつあるなど、全体として緩やかに回
復してきました。
当社グループにおきましては、電気事業において、全ての原子力発電所が停止し、厳し
い需給状況が続くとともに、収支・財務状況が急速に悪化したことから、昨年4月以降、
電気料金の値上げを実施させていただきました。しかしながら、原子力発電所の停止が当
初想定した以上に長期化しており、依然として厳しい収支・財務状況が続いているため、
料金値上げ時に織り込んだ経営効率化に加え、修繕費や諸経費の一時的な繰延べ等、短期
限定の施策を含めたあらゆる経営効率化に全社一丸となって取り組みました。
ア 収支
このような状況のもと、当年度の連結収支につきましては、収入面では、電気事業にお
いて、電気料金の値上げや燃料費調整の影響による料金単価の上昇などにより電灯電力料
が増加したことや、再生可能エネルギーの固定価格買取制度に基づく交付金が増加したこ
となどから、売上高(営業収益)は前年度に比べ 15.9%増の1兆7,911億円、経常収益は
15.8%増の1兆8,067億円となりました。
一方、支出面では、電気事業において、修繕費の効率化や人的経費の削減などコスト削
減に努めましたが、為替レートの円安の影響により燃料費が増加したことや、再生可能エ
ネルギー電源からの購入電力料が増加したことなどから、経常費用は 2.5%増の
1兆9,381億円となりました。
以上により、経常損益は前年度に比べ 1,997億円赤字幅は縮小しましたが 1,314億円の
損失となりました。
また、経営合理化の一環として不動産や有価証券を売却したことや、退職給付信託を設
定したことに伴い特別利益に 534億円を計上したことなどから、当期純損益は 2,363億円
赤字幅が縮小し 960億円の損失となりました。
九州電力株式会社(9508) 平成26年3月期 決算短信
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事業の種類別セグメントの業績(セグメント間の内部取引消去前)は、次のとおりとなり
ました。
セグメント別の業績(内部取引消去前)
(単位:億円、%)
25年度 24年度 増 減 前年度比
( A ) ( B ) ( A−B ) ( A/B )
売 上 高 2,264 116.1
営業損益 1,910 −
売 上 高 103 106.5
営業損益 103 25 77 402.1
売 上 高 897 945 しろさんかく 48 94.9
営業損益 113 76 37 149.2
売 上 高 271 272 しろさんかく 1 99.5
営業損益 32 24 7 131.8
(注1)「電気事業」は、当社事業から附帯事業を除いたものです。
(注2)しろさんかくは損失を示しています。
(ア)電気事業
売上高は、電気料金の値上げや燃料費調整の影響による料金単価の上昇などにより電
灯電力料が増加したことや、再生可能エネルギーの固定価格買取制度に基づく交付金が
増加したことなどから、前年度に比べ 16.1%増の1兆6,348億円となりました。営業損
益は、為替レートの円安の影響による燃料費の増加や、再生可能エネルギー電源からの
購入電力料の増加はあったものの、売上高の増加に加え、修繕費の効率化や人的経費の
削減などコスト削減に努めたことにより、1,910億円赤字幅が縮小し 1,216億円の損失
となりました。
(イ)エネルギー関連事業
売上高は、発電所補修工事やメガソーラー新設工事の増加、ガス販売による収入増な
どにより、前年度に比べ 6.5%増の 1,710億円、営業利益は 77億円増の 103億円とな
りました。
(ウ)情報通信事業
売上高は、携帯電話事業者向けデータ伝送サービスの収入増はありましたが、情報シ
ステム開発の減少などにより、前年度に比べ 5.1%減の 897億円となりました。営業利
益は、コスト削減に努めたことや光ファイバ心線貸し事業の減価償却費の減少などによ
り、49.2%増の 113億円となりました。
(エ)その他の事業
売上高は、前年度並みの 271億円、営業利益は、賃貸建物の減価償却費の減少などに
より、前年度に比べ 31.8%増の 32億円となりました。
電気事業
16,348 14,083
しろさんかく 1,216 しろさんかく 3,126
エネルギー 1,710 1,606
関連事業
情報通信事業
その他の事業
九州電力株式会社(9508) 平成26年3月期 決算短信
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イ 販売及び生産の状況
当年度の販売電力量につきましては、電灯、業務用電力などの一般需要は、6月から10
月の気温が前年に対し高めに推移したことによる冷房需要の増加などから、前年度に比べ
1.1%の増加となりました。また、大口産業用需要は、電気機械や非鉄金属などの生産が
減少したものの、鉄鋼などの生産が増加したことから、前年度並みとなりました。
この結果、総販売電力量は 844億5千万kWhとなり、0.8%の増加となりました。
販 売 電 力 量 比 較 表
(単位:百万kWh、%)
電 灯 29,792 29,509 283 101.0
電 力 5,291 5,204 87 101.7
電灯電力計 35,083 34,713 370 101.1
特定規模需要 49,367 49,074 293 100.6
販売電力量合計 84,450 83,787 663 100.8
再 60,827 60,173 654 101.1
掲 23,623 23,614 9 100.0
供給面につきましては、原子力発電所の運転停止が継続している中、渇水による水力の
減少もありましたが、他社受電の増加などにより対応しました。
発 受 電 電 力 量 比 較 表
(単位:百万kWh、%)
水 力 3,773 4,704 しろさんかく 931 80.2
( 出 水 率 ) ( 86.7 ) ( 112.8 ) ( しろさんかく 26.1 )
火 力 62,503 61,221 1,282 102.1
原 子 力 − − − −
(設 備 利 用 率) ( − ) ( − ) ( − )
新エネルギー等 1,391 1,368 23 101.7
計 67,667 67,293 374 100.6
23,147 21,248 1,899 108.9
( 3,020 ) ( 1,957 ) ( 1,063 ) ( 154.3 )
融 通 1,046 2,402 しろさんかく 1,356 43.5
揚 水 用 しろさんかく 576 しろさんかく 641 65 89.8
合 計 91,284 90,302 982 101.1
(注)「新エネルギー等」は、太陽光、風力、バイオマス、廃棄物及び地熱の総称です。
一 般 需 要
大 口 電 力
( A ) ( B ) ( A−B ) ( A/B )
25年度 24年度 増 減 前年度比
前年度比
( A/B )
( A ) ( B ) ( A−B )
25年度 24年度 増 減自 社
(新エネルギー等再掲)
他 社特定規模需要以外
九州電力株式会社(9508) 平成26年3月期 決算短信
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2次期の見通し
売上高につきましては、電気事業において、販売電力量の減少はありますが、再生可能
エネルギーの固定価格買取制度に基づく賦課金や交付金の増加、燃料費調整の影響による
料金単価の上昇などにより、前年度に比べ増加する見通しです。
なお、原子力発電所の再稼働に関する見通しが不透明な状況であることから、燃料費な
どの費用を合理的に算定できないため、利益を未定としております。
今後、業績予想が可能となった時点で、速やかにお知らせします。
次 期 業 績 見 通 し
(単位:億円)
第2四半期
連結累計期間
通 期
第2四半期
累計期間
通 期
9,400 18,950 8,900 17,850
[108.3%] [105.8%] [108.7%] [106.1%]
(注) [ ]は前年同期比
主 要 諸 元 表
第2四半期
累計期間
通 期
417億kWh 837億kWh
[98.6%] [99.1%]
(注) [ ]は前年同期比
当 期 純 利 益
− −
− −
経 常 利 益 −
個 別
売 上 高
為 替 レ ー ト
連 結
販 売 電 力 量
営 業 利 益 − −


原 油 C I F 価 格
− −
110$/b

105円/$
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(2) 財政状態に関する分析
1資産、負債、純資産及びキャッシュ・フローの状況に関する分析
ア 資産、負債及び純資産の状況
資産は、減価償却が進んだことや、退職給付信託の設定に伴い当社保有株式の一部を
拠出したことによる減少はありましたが、原子力安全性向上対策工事に伴い建設仮勘定
が増加したことや売掛金が増加したことなどにより、前年度末に比べ 233億円増の4兆
5,498億円となりました。
負債は、「退職給付に関する会計基準」(平成24年5月改正)を適用したことや、退職
給付信託を設定したことによる減少はありましたが、有利子負債の増加などにより、
869億円増の4兆556億円となりました。有利子負債残高は、2,059億円増の3兆1,167億
円となりました。
純資産は、「退職給付に関する会計基準」の適用による増加はありましたが、当期純
損失の計上などにより 635億円減の 4,942億円となり、自己資本比率は 10.5%となり
ました。
イ キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは、電気事業において電灯電力料などの収入が増
加したことや、コスト削減に努めたことによる支出の減少はありましたが、火力燃料代
及び購入電力料の増加などにより、前年度に比べ 1,292億円減の 59億円の支出となり
ました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、経営合理化の一環として不動産や有価証券を
売却したことによる収入の増加はありましたが、原子力安全性向上対策工事に伴う支出
の増加などにより、前年度に比べ 84億円増の 1,849億円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前年度に比べ 2,158億円減の 1,963億円の収
入となりました。
以上により、当年度末の現金及び現金同等物の残高は、前年度末に比べ 55億円増加
し、3,847億円となりました。
九州電力株式会社(9508) 平成26年3月期 決算短信
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2キャッシュ・フロー関連指標の推移
自 己 資 本 比 率 (%) 26.4 25.4 19.7 11.9 10.5
時 価 ベ ー ス の 自 己 資 本 比 率 (%) 23.7 18.4 12.6 10.2 13.1
5.7 6.9 146.9 − −
9.9 8.7 0.5 − −
(注) 自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い
(注記)各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しています。
(注記)×ばつ期末発行済株式数(自己株式控除後)により計算しています。
(注記)営業キャッシュ・フロー及び利払いは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッ
シュ・フロー及び利息の支払額をそれぞれ使用しています。
(注記)有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、社債、長期借入金(いずれも1年
以内に期限到来のものを含む)、短期借入金及びコマーシャル・ペーパーを対象としています。
なお、社債については、連結貸借対照表価額ではなく社債金額を使用しています。
(注記)平成24年度及び平成25年度は、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスのためキャッシュ・
フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオは記載しておりません。
24年度 25年度
キャッシュ・フロー対有利子負債比率
インタレスト・カバレッジ・レシオ
23年度
22年度
21年度
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(3) 利益配分に関する基本方針及び当期・次期の配当
当社は、安定配当を維持するとともに、中長期的な観点から株主の皆さまの利益拡大を
図ることを利益配分の基本方針としております。
しかしながら、当年度の個別業績は、原子力発電所の停止に伴う、火力発電の燃料費等
の大幅な増加により、通期で 909億円の純損失となりました。
こうした厳しい状況を踏まえ、期末の配当につきましては、誠に申し訳なく存じますが、
中間配当に引き続き無配とさせていただきます。
また、次期の配当につきましては、引き続き厳しい収支・財務状況が見込まれることか
ら、中間配当は無配の予想とさせていただきます。株主の皆さまにはご迷惑をおかけし、
深くお詫び申し上げます。なお、期末配当につきましては、今後、業績予想が可能となっ
た時点で、速やかにお知らせします。
九州電力株式会社(9508) 平成26年3月期 決算短信
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(4) 事業等のリスク
当社グループ(当社及び連結子会社)の経営成績、財務状況等に影響を及ぼす可能性のあ
る主なリスクには、以下のようなものがあります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したもの
です。
1電気事業を取り巻く制度変更等
現在、国において、電力システム改革(お客さまの選択肢拡大等を図る小売全面自由化
や、競争環境の整備等を目指した卸電力市場の活性化、送配電の広域化・中立性の一層の
確保など)の実施に向けた議論が進められています。
また、原子力や再生可能エネルギーの政策の方向性など、エネルギーの需給に関する基
本的な方針等を定めた「エネルギー基本計画」が決定され、今後、将来のエネルギーミッ
クスのあり方などの検討が行われます。
こうした電気事業を取り巻く制度の変更等に伴い、当社グループの業績は影響を受ける
可能性があります。
2原子力発電を取り巻く状況
当社としては、エネルギーセキュリティ面や地球温暖化対策の観点から、原子力発電は
重要であると考えており、福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ、世界最高水準の安
全性を目指し、新規制基準への的確な対応はもとより、更なる安全性向上のための自主的
な取組みを継続的に進めていきます。併せて、地域の皆さまにご安心いただくための活動
を積極的に行っていきます。
しかしながら、原子力発電所の稼働状況によっては、燃料費や資金調達コスト等の増加、
これらの費用負担に伴う繰延税金資産の回収可能性の判断への影響などにより、当社グル
ープの業績は影響を受ける可能性があります。 3販売電力量の変動
電気事業における販売電力量は、景気動向、気温の変化のほか、住宅用太陽光発電の普
及、さらには省エネ等に関する規制・制度改革の動向などによって変動することから、当
社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
4燃料価格の変動
電気事業における燃料費は、火力発電燃料であるLNG、石炭などを国外から調達して
いるため、CIF価格及び為替レートの変動により影響を受けます。
ただし、燃料価格の変動を電気料金に反映させる燃料費調整制度により、燃料価格の変
動による当社グループの業績への影響は緩和されています。
5原子燃料サイクルに関するコスト
原子燃料サイクル事業は超長期の事業であり不確実性を伴いますが、国の制度措置等に
より事業者のリスクは低減されています。しかしながら、原子燃料サイクル政策に関する
議論の動向、将来費用の見積額の変更などによっては、当社グループの業績は影響を受け
る可能性があります。
九州電力株式会社(9508) 平成26年3月期 決算短信
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6地球温暖化対策に関するコスト
当社グループは、地球温暖化への対応として、安全の確保を前提とした原子力発電の活
用、再生可能エネルギーの積極的な開発・導入、火力総合熱効率の維持・向上など、発電
の一層の低炭素化・高効率化に向けた取組みを進めていますが、今後、地球温暖化に関す
る政策の動向などによっては、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
7電気事業以外の事業
当社グループは、グループ各社の保有する経営資源を活用し、電気事業以外の事業につ
いても着実に展開していくことにより、収益基盤の充実を図っています。事業運営にあた
っては、収益性を重視し、効率性の向上と成長性の追求に努めていますが、事業環境の悪
化等により計画どおりの収益が確保できない場合には、当社グループの業績は影響を受け
る可能性があります。
8金利の変動
当社グループの有利子負債残高は、平成26年3月末時点で3兆1,167億円(総資産の
69%に相当)であり、今後の市場金利の変動により、当社グループの業績は影響を受ける
可能性があります。
ただし、有利子負債残高の 96%が社債や長期借入金であり、その大部分を固定金利で
調達していることなどから、金利の変動による当社グループの業績への影響は限定的と考
えられます。
9情報の流出
当社グループは、グループ各社が保有する社内情報や個人情報について、厳格な管理体
制を構築し、情報セキュリティを確保するとともに、情報の取扱い等に関する規程類の整
備・充実や従業員等への周知・徹底を図るなど、情報管理を徹底しています。しかしなが
ら、社内情報や個人情報の流出により問題が発生した場合には、当社グループの業績は影
響を受ける可能性があります。
10自然災害等
当社グループにおいては、お客さまに電力を安定的に供給するため、設備の点検・修繕
を計画的に実施し、トラブルの未然防止に努めています。しかしながら、台風、集中豪雨、
地震・津波等の自然災害、又は事故や不法行為等により、設備の損傷や発電所の長期停止
などが発生した場合には、当社グループの業績は影響を受ける可能性があります。
また、当社グループは、危機管理体制を整備し、事業運営に重大な影響を及ぼす様々な
危機に備えていますが、危機に対し適切に対応ができなかった場合には、当社グループの
業績は影響を受ける可能性があります。
11コンプライアンス
当社グループにおいては、ステークホルダーの皆さまに信頼していただけるよう、グル
ープ一体となってコンプライアンス意識の徹底を図り、法令遵守はもとより、お客さまや
地域の皆さまの視点に立った事業活動に取り組んでいますが、コンプライアンスに反する
行為により社会的信用の低下などが発生した場合には、当社グループの業績は影響を受け
る可能性があります。
当社グループは、引き続きステークホルダーの皆さまとの信頼関係構築に取り組んでま
いります。
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