特 集2これまで米国や日本で数多くの企業経営
に深く関わり、2020年6月に九州電力の
社外取締役に就任した橘・フクシマ・咲江氏
に、
就任の理由や社外取締役としての役割
認識等について伺いました。
Q1 九州電力の社外取締役を引き受けた理由を教えてください。
Q2 九州電力の印象はいかがですか。
就任前後で印象に変化はありますか。
1995年に人財コンサルティング会社のコーン・フェリー・インターナショナル米国本社の取締役に就任以来、
長年に
わたり様々な会社の経営とガバナンスに関わってきました。
日本では、
2002年から花王、
ソニー等11社の社外取締役を
務めてきましたが、
九州電力のような日本のインフラ、
社会基
盤を支える企業は今回が初めてです。
日本政策投資銀行でアドバイザリー・ボード・メンバーを10
年間
(2008-2017年)
務めたこと等もあり、
企業の公共性、公益性に強い関心を持っていました。
九州電力からご依頼を受
けた時、
九州全体のインフラを支える組織がどのようなもの
か、
また、
収益性と公益性の間でどのように意思決定を行い、
事業運営を行うのか関心があり、
お引き受けすることにしま
した。
また、
母方の祖父が熊本県出身で、
九州という土地にも魅
力がありました。
福岡には、
男女共同参画に関する講演等で
度々訪れているのですが、
ダイバーシティに非常に関心の高
い地域という印象があります。
そのような地域に根差した九
州電力に微力ながら貢献したいという気持ちがありました。
九州は水害・台風等の災害が多く、
以前は、
九州電力が
災害時の復旧作業等、
困難な状況に対応をしている姿を、
ニュースで目にすることが主でした。
今は、
まず、
「ずっと先まで明るくしたい」
というブランド・メッセージ、
これが素晴らしいと感じています。
特に新型コロ
ナウイルスの感染拡大で先行きが見通せない中、
地域に根差
した企業がこのようなメッセージを社会に発信し続けること
は大切なことだと思っています。
さらに、
グループ全体でのイノベーション推進プロジェクト「KYUDEN i-PROJECT」
は、
従来の電力会社のイメージを
変える取組みですね。
いま企業に必要なのは、
現在のコロナ
危機をどのようにチャンスに変えるかということだと思いま
す。
現存の資産を活用したプロジェク
トや
「なぜ九州電力が」
と思うようなアイデアも含めて、
クリエイティブな取組みが進
められています。
九州電力は、
明るい未来に向けて、
前向きな検討が可能な
「資産
(能力)」を持つ組織という印象になりました。
社 外 取 締 役 イ ン タ ビ ュ ー
S p e c i a l
I n t e r v i e w56九電グループ アニュアルレポート 2020ESG・
Financial Data
Governance
Our Strategy
Our Profile
社 外 取 締 役 イ ン タ ビ ュ ー
Special Interview
Q3 社外取締役の役割をどのように考えていますか。 Q5 最後にステークホルダーの皆さまにお伝えしたいことについて、
お聞かせください。
Q4 九州電力の成長にどのように貢献していきますか。
社外取締役の重要な役割は、
守りでは
「社内の常識、
外の
非常識」
を防ぐことと、
攻めでは
「外からのベンチマークを持
ち込み新しい視点を提供」
することだと考えています。
社内
の共通認識や暗黙知が、
外の目でどう見えるか、
他企業での
経験を基に守りと攻めの両面から指摘することです。
私自身は元々、
米国で取締役として、
アメリカ型コーポレート・
ガバナンスの真っ只中にいました。
取締役就任4年後の
1999年のIPO実施後に、
CEOと私以外はすべて社外取締役
という状況になりました。
その際に、
社外取締役が投資家目
線で様々な質問を投げかけてくる中で、
「社内の常識がいか
に社外の非常識か」
ということを痛感し、
「自社を"知る"」
とい
う経験をしました。
この経験は、
コーポレート・ガバナンスを学
ぶよい機会であったと思っています。
また、
ガバナンスには
「攻め」と「守り」
があり、
その企業の機
関設計にもよりますが、
監査役や監査等委員の方々との主な
役割分担は攻めと守りの違いと認識しています。
機関設計や
企業風土に応じて、
社外取締役としてどう役に立てるかを考
えています。
社外取締役の責務は、
その企業を
「成功させるため」
の監
督をすることだと思います。
つまり、
株主・投資家や、
より広い
意味でのステークホルダーにとって利益につながるかどうか
を考えることが重要です。
世界で200年以上続いている企業の65%が日本企業であ
り、
日本企業は多くの危機に対応してきていますが、
最近は
想定外の事態に対する危機管理の面に不安があります。今回の新型コロナウイルスの蔓延でも、
現状維持が可能との希
望的観測のもとに戦略を立てる傾向が見られますが、
最悪の
ケースを想定して、
早期に事業モデルの変革も含めて企業を
持続可能にできる戦略を考えておく必要があります。
九州電
力は、
災害対応の経験も多く、
リスクへの対応力を備えてい
るものと思いますが、
そういった視点からも発言していきた
いと思います。
また人財のダイバーシティに関しては、
私はカテゴリーとし
て、
男性、
女性を分けて考えることはしない方が良いと考え
ています。
前職で何千人という世界のエグゼクティブと仕事
をした結果、
性別も国籍も人種も、
すべて一人の個人の個性
の一つに過ぎず、
「女性」
という一つの個性で全体を判断す
るのではなく、
多様な個性を持つ個人全体として評価・登用
すべきだと考えています。
私が経済同友会の副代表幹事を
務めていた時
(2011-2015年)
に、
「2020年までに意思決
定ボードに占める女性の比率を30%以上に引き上げる」との経営者の行動宣言を出しました。
現状30%は遠く、
時限的
に一定の割合に届くまでは
「女性」
をカテゴリーとして支援す
る必要性がありますが、
個人として
「優秀な人財」
を育成し、
登用することで、
いずれは
「女性支援」
の必要性が無くなる可
能性が高いと考えています。
企業の成長のために性別、
国籍
含めて多様な人財を活かすことがダイバーシティです。
多様
で優秀な人財にとって魅力ある日本企業であってほしいと
思います。
最後に、
私自身は
「外柔内剛」
という言葉を大切にしてい
ます。
これは、
自分の持つ信念は
「剛」
に譲らず、
しかし、
外には
「柔」
軟に、
かつしたたかに対応するという意味です。
激変する
世界経済の中で、
日本企業にもぜひそうあってほしいと思い
ます。
経営理念等守るべきものはしっかり守りながら、
外部環
境の変化に対しては柔軟にかつしたたかに対応することは今
後ますます重要になっていくと考えています。
私が貢献可能なのはグローバルなビジネス展開や、
それ
を支える人財、
組織といった分野だろうと考えています。
私は
30年以上前から日本にはグローバルに活躍できる人財が不
足していると提唱してきました。
ようやくここ10年くらい、政府・民間もグローバル人財育成の必要性を認識するようにな
りましたが、
日本は他のアジア諸国と比べても遅れをとって
います。
こうした観点から九州電力に貢献できればと考えて
います。
また持続的成長のために、
SDGsやESG投資に注目が
集まっているように、
社会の課題解決とビジネスの両立が
世界的なガバナンスの流れです。
私は経営には、
人や社会、
ひいては人類全体が"幸せ"になるにはどうするかという視点
を持つことが重要だと考えています。
利益を上げることも重
要ですが、
このビジネスを進めると
「誰がどう"幸せ"になる
のか」
を常に頭にいれることでSDGs、
ESGにつながると
思います。
九州電力のようなインフラ企業はまさにその最先端にい
る企業であり、
さらにそこを深掘りし、
進化可能なビジネスモ
デルを作り出せる企業であると期待しています。
1980年にブラックストン・インターナショナル入社。
ベイン・アンド・カンパニーを経て、
1991年、
日本コーン・フェリー・インターナショナルに入社。
1995年、
同米国本社取締役、
2000年、
日本コーン・フェリー・インターナショナル取締役社長、
2001年、
同社代表取締役社
長、
2009年、
同社代表取締役会長。
2008年、
日本人で唯一
「世界で最も影響力のあるヘッドハンター・ト
ップ100人」
(ビジネスウィーク誌)
に選ばれた。
2010年にG&Sグローバル・アドバ
イザーズ代表取締役社長
(現職)。2020年6月より当社社外取締役。
Profile
社外取締役橘・
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