代表取締役 社長執行役員
「2030年のありたい姿」
の実現に向けて、
グループ一体となって
新たな一歩を踏み出していきます。
2016年4月の電力小売全面自由化、
2017年4月のガ
ス小売全面自由化、
さらに2020年4月には送配電部門の
分社化
(法的分離)
を実施する等、
我が社の経営は大きな
転換期にあります。
厳しい経営環境下にあると認識してい
ますが、
将来に向けた布石を打つという点では、
様々な経
営課題に取り組み、
着実に成果を挙げることができた1年
であったと思います。
まず2019年6月に
「九電グループ経営ビジョン2030」
を公表しました。
経営環境が変化する中で、
「守り」
から
「攻
め」
の経営に移っていくために、
九電グループの旗印とな
るものが必要と考え策定したもので、
九電グループが今後
も事業活動を通じて、
基盤である九州の持続的発展に貢献
し、
地域・社会とともに成長していくための長期的な経営の
方向性を定めました。
その中で、
2030年のありたい姿として、
「九州から未来
を創る九電グループ〜豊かさと快適さで、
お客さまの一番
に〜」
を掲げました。
このありたい姿には、
「豊かで快適な生
活につながるエネルギーサービスや新たな価値の提供を
通じて、
お客さまの一番になる」
という思いや、
「九州を基盤
に様々な社会的課題の解決に貢献し、
地域・社会とともに
明るい未来を創っていく。
そして九州から世界に広げてい
く」
という思いを込めています。
そして、
その実現に向けた
目標の一つとして、
「2030年の連結経常利益1,500億円」を掲げ、
その5割を国内電気事業で、
残り5割を海外事業等、
その他の事業で生み出すこととしています。
足元の2019年度決算については、
夏季の天候不順や歴
史的な暖冬による卸電力取引の市況低迷等により、
経常利
益は400億円にとどまりましたが、
一方で今後の収益拡大
につながる様々な取組みを着実に進めることができました。
まず、
国内電気事業については、
競争力の強化に向けて、
原子力4基稼働体制の実現を背景に2019年4月から料金
値下げを実施するとともに、
2019年12月には超々臨界圧
発電方式という最高水準の技術を採用した松浦火力発電
所2号機の営業運転を開始しました。
また、
電気とガスによ
るセッ
ト販売
[約12万件
(2020年3月末)]や、
「熱中症予防
プラン」
[同18.5万件]
等魅力ある料金プランで九州域内
のお客さまのご期待にお応えするとともに、
九州域外では
子会社の九電みらいエナジーが売上を順調に伸ばしてお
り、
2019年度の小売販売電力量はグループ全体で732億
kWhとなり、
気候条件が厳しい中、
前年度から0.6%増加し
ました。
他社とのアライアンスにも積極的に取り組んでお
り、
2020年4月からは、
伊藤忠エネクス(株)と提携を開始す
る等、
更なる販売電力量の拡大を図っているところです。
海外事業においては、
タイ大手発電事業者であるEGCO
社や、
米国で4件目の発電事業となるウエストモアランド
ガス火力発電事業への参画等、
アジアや米州での事業拡大に
向けた取組みを積極的に進めるとともに、
九電グループ初の
中東におけるタウィーラB発電造水事業にも参画しました。
さらに収益源の多様化に向けて、
様々な事業に取り組ん
でいます。
空港運営事業では、
他企業と共同で運営権を取
得し、
福岡空港は2019年4月から、
熊本空港は2020年4
月から民間運営を開始したところです。
都市開発事業にお
いては、
福岡市青果市場跡地再開発を着実に進めるとと
もに、
当社初の海外不動産開発となる米国アトランタの複
合開発エリアにおける賃貸集合住宅開発事業に参画しま
した。
また、
新たな事業やサービスを生み出すためのプロ
ジェクト「KYUDEN i-PROJECT」
にも取り組んでおり、
「九
電ドローンサービス」
や位置情報を活用した子どもや高齢
者の見守りサービス
「Qottaby」、マンション入居者専用の
EVカーシェアリングサービス
「weev」
等の有望案件の事
業化を積極的に進めているところです。
このプロジェク
トを
通じて九電グループ全体としてイノベーションの取組みに
チャレンジする機運が高まっていると感じており、
将来の収
益貢献を期待したいと思っています。
この1年を振り返ってどのように総括しますかQ1電気事業は大きな転換点を迎えており、
厳しい経営環境下にありますが、
競争力
のある松浦火力2号機の運転開始や、
販売電力量拡大に向けた他社とのアライ
アンス等、
今後の収益拡大に向けた様々な布石を打つことができました。A1社 長 イ ン タ ビ ュ ー
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九電グループ アニュアルレポート 2020ESG・
Financial Data
Governance
Our Strategy
Our Profile
近年、
国際社会全体の持続可能な開発目標として国連
で採択されたSDGsや、
企業の環境等への配慮を評価する
ESG投資等、
地球規模で
「持続可能な社会の実現」
に向けた
取組みへの期待が高まっており、
この期待にお応えすること
が重要であると認識しています。
そのため、
当社の経営戦略とESGへの取組みは一体不可
分となっており、
例えば、
経営ビジョンでは、
「九州のCO2
削減必要量の70%の削減に貢献」
を経営目標の一つとして
掲げています。
これは、
パリ協定採択を受けた日本の温暖化
対策計画
(2030年に2013年比さんかく26%)
と整合しています。
また、
ありたい姿の実現に向けて掲げている戦略I・II・
IIIの3
つは、
それぞれ戦略IがE
(環境)、戦略IIがS
(社会)、戦略IIIがG(企業統治)
と紐づいていて経営ビジョン全体をESGと関
連付けたものとしています。
昨年を振り返りますと、
企業統治に関しては、
電力他社に
おいて役職員による金品受領が明らかとなり、
電気事業に対
する信頼を大きく失墜させる事態に至りました。
当社では、
かねてよりコンプライアンス経営の徹底に努めており、
同様
の事例がないことを確認しておりますが、
引続き、
更なる
コンプライアンス意識の浸透を図り、
高い倫理観に基づい
た事業運営を行っていきます。
また、
情報公開にも積極的に取り組んでいきます。
今回の
アニュアルレポートではTCFD
(気候関連財務情報開示タス
クフォース)
に基づく情報開示を行っており、
九電グループ
サステナビリティ報告書とあわせて、
ESG関連の情報開示を
充実させることで、
ステークホルダーの皆さまへの説明責任
を果たしていきます。
当社は経営ビジョンに描いた戦略を通じて、
ESGに着実
に取り組むことで、
信頼され選ばれ続ける企業を目指すとと
もに、
持続的な成長と企業価値向上につなげてまいります。
地球温暖化の防止のためには、
オール電化の推進や電
気自動車(EV)の普及拡大等、
エネルギー消費
(需要面)での電化を進め、
その割合を増加させていくことに加え、電気を作る際
(供給面)
にCO2を出さないようにしなければ
なりません。
電化の推進に向けては、
ご家庭向けのオール電化や業
務用電化厨房の導入拡大等に取り組むとともに、
EVシェア
リングの普及促進やマンション・職場への充電インフラ整
備等、
EVの普及拡大による運輸用エネルギーの電化にも
取り組んでいきます。
また、
供給面では、
まず非化石電源である原子力と再エ
ネを活用していくことが重要と考えています。
原子力については、
2018年7月に玄海4号機が通常運
転に復帰し、
当社の原子力は4基稼働体制となりました。
2020年7月現在、
震災後に日本で再稼働した原子力9基
のうち4基が当社の原子力発電所であり、
高い稼働実績を
誇っています。
川内原子力1、
2号機については、
特定重大事故等対処
施設の設置に向けて、
それぞれ2020年3月、
5月から定期
検査に入っていますが、
2020年12月、
2021年1月にはそ
れぞれ発電を再開する予定です。
また、
玄海原子力3、4号機についても、
川内原子力で培った知見を活かして、
その
設置期限内の完成を目指して、
工事の安全を確保しつつ
最大限努力していきます。
再エネについては、
経営ビジョンで掲げた再エネ開発量
目標500万kWの達成に向け、
九州域内に限らず、
国内他
地域・海外でもグループ大で積極的に開発に取り組んでい
きます。
当社グループは、
太陽光・風力・地熱・バイオマス・水力
と、
再エネ5電源全ての開発・運営を一貫体制で行ってい
ます。
中でも地熱発電については、
資源探査から、
設計・調達・
建設、
運転・保守までを一貫して実施できる唯一の企
業グループと認識しており、
海外でも高く評価されていま
す。
大分県九重町にある八丁原地熱発電所は、
日本の総地
熱発電出力の2割以上を占める約11万kWの設備であり、
日本最大です。
インドネシアのスマトラ島でも世界最大規
模のサルーラ地熱発電所
(出力33万kW)
の運営に参画し
ており、
さらに2020年5月には、
高度な地熱技術サービス
を有する米国サーモケム社を買収し、
地熱業界におけるプ
レゼンスの飛躍的な向上を期待しています。
洋上風力についても、
福岡県北九州市響灘地区におい
て、
2022年度の着床式発電の着工に向けた事業化検討
を進めているほか、
長崎県五島市では、
浮体式発電の実証
事業にも参画しています。
また再エネの普及にあわせて調整力の確保も重要で
す。
当社グループは、
世界最大級の大容量蓄電池システム
を備えた豊前蓄電池変電所
(出力5万kW)
を有しています
が、
コスト面等での課題があり、
調整力確保のためには火
力発電が必要不可欠です。
高効率で負荷追従性に優れた
火力電源として、
LNG火力や松浦火力2号機等の最新鋭
の石炭火力を活用することで、
安定供給と経済性を確保し
つつ、
再エネの導入拡大を図っていきます。
こうして実現される高い非化石電源比率
(2019年度
44%[FIT電気除く])や優れたCO2排出係数
(2019年度
0.370kg-CO2/kWh)、電化推進に不可欠な低廉な料金
水準は当社の強みであり、
今後も重要性が増す地球温暖
化防止にしっかりと貢献していきます。
信頼され選ばれ続ける企業を目指して、
どのように取り組んでいきますか
経営目標
「九州のCO2削減必要量の70%の削減に貢献
(2030年度)」に
向けて、
具体的にどのように取り組みますか
Q2 Q3
経営ビジョンの実現を通じて、ESG(環境・社会・企業統治)
に着実に取り組んで
いきます。
さらに、
ESG関連の情報開示を充実させてステークホルダーの皆さま
への説明責任を果たしていきます。
オール電化やEVの普及拡大等エネルギー消費の
「電化」
の推進、
再エネや原子力
の更なる活用等
「電源の低炭素化」、需給両面での取組みが重要と考えています。
再エネは、
グループ大で開発量500万kWを目指しています。
A2 A3
しろまるESGと戦略I・II・
IIIの関係
戦略I戦略II
戦略III
(企業統治)
(社会)
(環境)
九電グループの成長を支える経営基盤を強化します。
新たな事業・サービスによる市場の創出を通じて、
地域・社会が抱える様々な課題の解決に貢献します。
再エネ・原子力の活用による非化石電源比率の向上や電化の推進等により、
低炭素で持続可能な社会の実現に貢献します。
Environment
Social
Governance
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九電グループ アニュアルレポート 2020ESG・
Financial Data
Governance
Our Strategy
Our Profile
2017年に掲げた財務目標
「自己資本比率20%程度
(2021年度末)」、
「連結経常利益1,100億円以上
(2017
〜2021年度平均)」については、
2017〜2019年度の実
績を踏まえると達成が難しいと認識しています。
2017年6
月の目標設定当時から3年間で、
玄海原子力の再稼働時期
の半年程度の遅れや、
競争の進展・天候不順による販売電
力量の減少、
LNG転売損の拡大等により、
2017〜2019
年度平均の経常利益は554億円、
2019年度末の自己資
本比率は12.3%となっています。
一度コミッ
トした目標を
達成できない状況になったことについては、
非常に申し訳
なく思っています。
現行目標については、
一旦総括した上で、
新たな財務
目標を設定したいと考えていますが、
2020年度の業績も
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を見通せず公表で
きていないことから、
然るべきタイミングで、
「九電グルー
プ経営ビジョン2030」
の実現に向けた中間目標としてお
示ししたいと考えています。
配当については、
当社は安定配当の維持を基本に、
当年
度の業績や中長期的な収支・財務状況等を総合的に考え
て決定することとしています。
2019年度の配当は35円となり、
5期連続の増配を実現
しました。
2020年度の配当については、
新型コロナウイルス感染
拡大による業績への影響を確認する必要があることから
現時点では
「未定」
としていますが、
少なくとも2019年度
の配当水準を維持できるように努力しているところです。
また、
自己資本比率が20%程度にまで回復できると確
信が持てた際には震災前の50円配当を実現するというス
タンスは変わっておらず、
引続きその実現に向けて努力し
ていきます。
50円への復配以降については、
経営ビジョンでお示し
しているとおり、
安定配当を基本としながら、
国内電気事
業以外の、
その他事業の成長を踏まえた利益還元を考慮
することで、
株主還元のさらなる充実を図っていきます。
期末
中間
(円)
2014.302015.302013.302016.352017.3152012.33020
2018.31020102020.32035152019.315301550
くろまる配当金の推移
(普通株式)
2020年度は川内原子力の停止に加え、
新型コロナウイ
ルスの影響が見込まれ、
経営的には厳しい状況にあります
が、
より筋肉質な会社になるチャンスでもあると考えていま
す。
聖域なき効率化とともに、
グループ大での収益拡大に取り
組み、
持続的な成長と更なる企業価値の向上に努めていき
ます。
まず戦略Iにおける
「エネルギーサービス事業の収益力強
化」
に九電グループの総力を挙げて取り組んでいきます。販売電力量の拡大に向けては、
収益性の向上を図りながら取り
組み、
価格のみの競争とならないよう、
これまで築いてきた
お客さまとの信頼関係を活かし、
より良いサービスを提供し
ていくことで、
他社との差別化を図っていきます。
また、
卸売
について市況の影響を受けにくい相対取引を積極的に拡大
していくとともに、
容量市場や非化石価値取引市場における
利益の最大化も図っていきます。
容量市場については、
発電設備の維持費用等が適切に回
収可能となることが期待されますし、
非化石価値取引市場に
ついては、
当社は全ての原子力が再稼働しているため、
高い
非化石電源比率という、
当社の強みが活かされるものと期
待しています。
電力需要の創出に向けては、
あらゆる分野での電化の推
進や企業誘致に向けた取組みを推進していきます。
さらに海外での有望案件への事業参画も進めることで、
国内外において総販売電力量を拡大し、
経営ビジョンで掲げた「2030年の総販売電力量1,200億kWh」
の達成を目指し
ていきます。
次に、
戦略II
に掲げた
「持続可能なコミュニティの共創」にも積極的に挑戦していきます。
具体的には、
光ブロードバン
ド事業やデータセンター事業等の
「ICTサービス」、都市開発
事業や不動産事業等の
「都市開発・まちづくり」、空港運営事
業等の
「インフラサービス」
を中心として、
地域・社会の課題
解決を契機とした新たな事業・サービスの創出に取り組んで
いきます。
2020年7月には、
地域戦略の展開等を担う
「支社」
と、お客さまサービスの提供を担う
「営業センター」
を統合し
「支
店」
を設置することで、
営業力を強化するとともに、
地域の課
題解決を通じた新たなビジネスチャンスを発掘する体制とし
ました。
また、
「都市開発・まちづくり」、「インフラサービス」の分野については、
事業間の更なる連携強化に向けて機能を
統合し、
「都市開発事業本部」
を設立しました。
新たな体制の
もと、
「九州の発展なくして、
九電グループの発展なし」
とい
う思いを基本として、
地域の皆さまと一緒に汗をかき、
知恵
を絞りながら、
様々な課題の解決に積極的にチャレンジして
いきます。
これらの取組みにより、
「2030年のありたい姿」
をしっか
りと見据えて着実に歩みを進めていきたいと考えています。
財務目標の進捗はどうですか。
また、
株主還元についてどのように考えていますか
最後に、
今後の抱負をお聞かせください
Q4 Q5
現行の目標達成は厳しい状況ですが、
一旦総括した上で、
然るべきタイミングで
新たな財務目標をお示ししたいと考えています。
5期連続増配を実現しましたが、
自己資本の充実を図りながら、
震災前の50円配当の早期実現に向けて引続き努
力していきます。
「2030年のありたい姿」
をしっかりと見据えて、
エネルギーサービス事業の収益
力強化や、
地域・社会の課題解決に貢献する新たな事業・サービスの創出に取り
組んでいきます。
A4 A5
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九電グループ アニュアルレポート 2020ESG・
Financial Data
Governance
Our Strategy
Our Profile

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