2018年、
新規制基準に係る国の審査のため長期停止していた玄海原子力発電所3、
4号機が再稼働
しました。
2015年に再稼働した川内原子力発電所1、
2号機と合わせ原子力発電所4基稼働体制となっ
たことから、
豊嶋常務(原子力発電本部長)と豊馬常務(コーポレート戦略部門長)に、
再稼働の影響や安
定稼働の取組みについて話を伺いました。
取締役 常務執行役員
原子力発電本部長
豊嶋 直幸
取締役 常務執行役員
コーポレート戦略部門長
豊馬 誠
特集 1 原子力発電所 4 基稼働体制の実現
28 九電グルー
プ アニュアルレポート 2018 特集1 原子力発電所4基稼働体制の実現Our Strategy29九電グルー
プ アニュアルレポート 2018
これまで日本国内で再稼働した原子力9基
(川内原子力発電所1、
2号機、
高浜原子力発
電所3、
4号機、
大飯原子力発電所3、
4号機、
玄海原子力発電所3、
4号機、
伊方原子力発
電所3号機)
のうち4基が九州電力のプラントですが、
全国でも比較的早い段階で再稼働
を達成できた背景をどのように考えますか
原子力発電所の概要
(全国の原子力発電所39基、
稼働中9基
(2018年7月時点))発 電 所
玄海原子力発電所 川内原子力発電所
1号機 2号機 3号機 4号機 1号機 2号機
運 転 開 始 1975年10月 1981年3月 1994年3月 1997年7月 1984年7月 1985年11月
出 力 55.9万kW 55.9万kW 118万kW 118万kW 89万kW 89万kW
型 式 加圧水型軽水炉
(PWR)
稼 働 状 況
2011年12月
発電停止
2015年 4月
廃止
2011年1月
発電停止
2010年12月
発電停止
2018年 3月
発電再開
2011年12月
発電停止
2018年 6月
発電再開
2011年5月
発電停止
2015年8月
発電再開
2011年 9月
発電停止
2015年10月
発電再開A1Q1
豊嶋
当社は、
2013年の新規制基準施行後、川内原子力発電所1、
2号機及び玄海原子力発
電所3、
4号機について再稼働に向けた各種
申請を速やかに行いました。
2014年には、
川内原子力発電所1、
2号機
が、
原子力規制委員会より審査を優先して行
うプラントに選定され、
全社を挙げて国の審
査や検査に真摯に対応するとともに、
安全対
策工事についても、
メーカーや協力会社と一
丸となって、
安全を最優先に、
ステップを一つ
ひとつ慎重に進めてまいりました。
その結果、
川内原子力発電所1、
2号機は
2015年に再稼働し、
玄海原子力発電所3、4号機についても川内の経験を活かして国の審査
や検査、
安全対策工事に真摯に対応すること
で、
2018年に再稼働することができました。
また、
再稼働に当たっては、
地域の皆さまに
安全対策等についてご理解いただき、
安心し
ていただくことが何よりも重要と考え、
フェイス・
トゥ・フェイスのコミュニケーション活動を
幅広く実施してまいりました。
このようなハード及びソフト両面の対応の
結果が、
比較的早い段階で再稼働を達成でき
た背景ではないかと考えております。
30 九電グルー
プ アニュアルレポート 2018
主に
3つのメリットが想定されます。
1つ目は
「供給面」
です。
原子力の停止期間
中は、
供給力確保のために老朽火力を稼働さ
せるなどして対応しました。
原子力が再稼働
したことで、
老朽火力に頼ることなくより安定
的に電気を供給することができております。
2つ目は
「収支面」
です。
原子力再稼働によ
り、
火力発電を焚き減らすことができ、
燃料費
の減少などによる収支改善が見込まれます。
その改善効果は、
その時々の発電状況や燃料
価格などにより変動しますが、
1か月あたり、
川内原子力発電所1、
2号機で90億円程度、
玄海原子力発電所3、
4号機で110億円程度
と試算しております。
3つ目は
「環境面」
です。
原子力4基による
CO2排出削減量は約1,400万トンと見込ん
でおり、
これは原子力が全基停止していた
2014年度の当社CO2排出量
(約4,860万トン)の約30%に相当します。
また、
原子力は、
発電時にCO2を排出しない電源として、
パリ
協定に見られる国際的な脱炭素化の流れに
不可欠であり、
当社としても、
原子力の安定的
な稼働を通じて貢献していきたいと考えてお
ります。
原子力再稼働による経営上のメリッ
トをどのように考えますかA2Q2
現在は、
故意による航空機の衝突等に備
え、
原子炉格納容器の破損を防止する機能を
持つ特定重大事故等対処施設の設置を進め
ております。
川内原子力発電所1、
2号機は2015年に
国へ原子炉設置変更許可申請を行い、2017年に原子炉設置変更許可を頂きました。
その
後、
効率的に工事を行えるよう、
工事計画認
可申請を3つに分割して順次申請を行い、国の審査及び既に認可を得ている工事につい
て、
しっかり取り組んでおります。
玄海原子力
発電所3、
4号機についても、
2017年に国へ
原子炉設置変更許可申請を行い、
国の審査を
受けております。
当施設は、
新規制基準において、
本体の工
事計画認可から5年以内に設置することが要
求されており、
期限内に設置できるよう、
国の
審査及び工事に真摯かつ丁寧に対応してまい
ります。
また、
既に実施済である再稼働に伴う安全
対策工事を含め、
これまで投資した安全対策
費用の総額は、
川内及び玄海原子力発電所を
合わせて、
9千数百億円となります。
再稼働に向けた安全対策工事は完了しましたが、
その他の安全対策工事はどうで
すか。
また、
安全対策工事に要する総コストはどの程度となりますかA3Q3
豊馬
豊嶋特集1 原子力発電所4基稼働体制の実現Our Strategy31九電グルー
プ アニュアルレポート 2018
今後、
原子力が安定して稼働するうえで課題となり得る要因をどのように
認識し、
それに対してどのように対応していますかQ5今後の原子力の安全・安定運転を継続する
上で課題となり得る要因の一つとして、
使用
済燃料の貯蔵対策が挙げられます。
当社の使用済燃料は、
六ヶ所再処理工場に
搬出することを基本方針としておりますが、使用済燃料ピッ
トの貯蔵余裕等を総合的に勘案
し、
必要な使用済燃料貯蔵対策を進めており
ます。
具体的には、
燃料棒の間隔を狭めて貯蔵量
を増やす
「リラッキング」
について、
川内原子
力発電所1、
2号機は既に実施済であり、
玄海
原子力発電所3号機は福島第一事故の影響
で国への手続きが中断した状態ですが、
でき
るだけ早く手続きができるよう準備を進めて
おります。
また、
一定期間プールで冷却した燃料を、
空冷式の乾式容器で保管する乾式保管につ
いても、
プール方式と併用することで保管方
法が多様化するなど、
発電所の更なる安全性
の向上が図れると考えており、
技術的な検討
を進めているところです。
引き続き原子力の安全・安定運転に向け
て、
使用済燃料貯蔵対策に取り組んでまいり
ます。A5豊嶋
安全対策に相当な費用を投じていますが、
投資対効果をどのように考えています
か。
引き続き、
原子力の価格競争力は維持される見込みですかQ4原子力 地熱 一般水力
石炭 LNG 風力
(陸上)
太陽光
(メガ)
石油
バイオマス
(専焼)
10.1 12.3 13.721.616.911.029.7 30.624.2確かに投資額は大きくなりますが、
先ほど
申し上げた収支面のメリッ
トを踏まえると、十分に投資対効果があると考えております。
2015年に示された国の発電コスト検証
ワーキンググループの試算結果では、
原子力
の発電コストは1kWhあたり10.1円、
石炭火
力は12.3円、
LNG火力は13.7円となってお
ります。
これに安全対策による増分コストを含めて
も、
原子力の発電コストは石炭火力やLNG火
力と比べて遜色ない水準であると認識してお
ります。
当社としては、
今後も原子力の安全・安定
運転を継続し、
高い設備利用率を維持するこ
とで、
発電コストを抑制し、
中長期的に原子力
の競争力を維持してまいります。
発電コス
トの試算
(2014年度モデルプラント)
(参考)
発電コス
ト検証ワーキンググループ公表資料A4豊馬
(円/kWh)
32 九電グルー
プ アニュアルレポート 2018
豊嶋
玄海原子力発電所3、
4号機の再稼働を達
成し、
川内原子力発電所1、
2号機と併せ4基
稼働体制となりました。
今後とも、
「特定重大事故等対処施設の設
置」や「使用済燃料貯蔵対策」
などについて、国の審査及び工事に真摯かつ丁寧に対応するこ
とで、
原子力発電所の自主的かつ継続的な安
全性・信頼性向上に取り組んでまいります。
再稼働はゴールではなく、
スタートです。原子力の安全性向上の取組みには終わりがな
いことを肝に銘じ、
今後も安全・安定運転に努
めてまいります。
豊馬
原子力は、
2018年7月に改定された国の
エネルギー基本計画においても、
重要なベー
スロード電源と位置付けられております。
日本のエネルギー自給率がわずか7
%であ
ること、
世界的な脱炭素化の流れがあること
などを踏まえると、
今後も原子力の重要性は
変らないと考えており、
安全の確保を大前提
としてしっかりと活用してまいります。A6最後に、
今後の原子力利用に関する思いをお聞かせくださいQ6もう
1つは訴訟です。
当社は、
これまでの訴
訟では勝訴しておりますが、
他電力では、
仮処
分決定により運転を停止せざるを得ない事例
が発生しています。
2017年12月の広島高等
裁判所における仮処分では、
破局的噴火に関
する判断から電力会社側が敗訴しました。
当社は、
原子力規制委員会の火山影響評
価ガイドに基づき、
九州のカルデラ火山につ
いて、
噴火履歴の特徴やマグマ溜まりの状況
などを検討し、
いずれのカルデラ火山も原子
力の運用期間中に破局的噴火が発生する可
能性は極めて低いと評価しております。
また、
自然現象の不確かさを踏まえた、
万が一の備
えとして、
カルデラ火山の活動状況に変化が
無いことを継続して確認するためのモニタリ
ングを行い、
火山専門家等のご助言を得なが
ら、
更なる安全性・信頼性の向上に努めており
ます。
当社の係属中の訴訟については、
裁判所
の訴訟指揮に従いつつ、
主張を十分に尽く
し、
原子力発電所の安全性についてご理解い
ただけるよう、
引き続き、
真摯に対応してまい
ります。
豊馬特集1 原子力発電所4基稼働体制の実現Our Strategy33九電グルー
プ アニュアルレポート 2018

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