玄海原発3号機でのプルサーマル計画について松下清彦・九州電力常務、原子力発電本部長将来のための第一歩 九州電力は玄海、川内原発に六基のプラントを持つ。玄海3号機をプルサーマルに選んだのは、欧州から運んでくるMOX燃料をより多く装荷し、広い作業スペースを確保するためだった。 現在の発電所でもプルトニウムは燃えている。ウラン燃料を軽水炉で使用するとプルトニウムが生成され、核分裂を起こす。発電所員はウラン炉心もプルサーマル炉心もそんなに変わらないと思っている。 昨年五月に事前了解願を提出して以来、住民との対話でプルサーマルについてのさまざまな質問をもらった。 原爆のように危険ではないかとの質問があったが、原爆は核分裂しやすいプルトニウムがほぼ100%詰まっているのに対し、M0X燃料は約6%で、濃度が違えば性質も全く違う。酒にたとえるとウォッカとビールの違いがあり、ウォッカは火を近づけると燃えるがビールは燃えない。 猛毒ではないかとの問いについては、プルトニウムによる放射線で生物への影響が最も大きいα線は、紙一枚で止められる。プルトニウムは吸入して肺に沈着すると人体に影響あるが、口から胃に入った場合はすぐ体外に排出され、そんなに危険ではない。 MOX燃料の取り扱いは放射線を遮へいする水中で慎重に行われるので、発電所員が吸入する心配はない。運転中は原子炉とその周辺の五つの壁に、輸送中は頑丈な容器に守られており、安全対策はできている。 制御棒が効かず、制御不能になるのではないかとの質問もある。確かにプルトニウムは核分裂を引き起こす中性子をウランより吸収しやすい。しかし、五十三本の制御棒には余力があり、実際はウラン炉心と変わらなくコントロールできる。 燃料に穴が開きやすいのではないかとの質問もあったが、MOX燃料が特に壊れやすいということはない。ウラン燃料でも穴が開くことがあり、玄海でもこれまで約三千体使用して五体ほど穴が見つかっている。ただ発電所は、針の穴ほどの大きさでもすぐに発見できる技術を持っている。 使用済MOX燃料の処理問題については、使用済ウラン燃料と混ぜれば現在の技術でも再処理できる。過去には日本で一〇・五、フランスで十二の実績がある。またフランスでは、軽水炉リサイクルから高速炉リサイクルへの転換を図っており、これができれば放射性廃棄物をさらに減らすことができる。現在プルサーマルをやっていないアメリカでもプルサーマルや高速炉リサイクルを目指すプログラムが始まっている。将来のウラン供給不足対策はリサイクルしかない。プルサーマルの安全確保については、発電所員たちと随分勉強したので見通しはできている。電力業界は自由化で厳しい状況にあるが、電力の安定供給と廃棄物の抑制という公益事業としての宿命も持つ。当面は高い燃料を背負うので会社にとってメリットはないが、あえて日本の将来のために一歩踏み出す九電の立場を理解してほしい。

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