松下発電所員は安全を確信事業者のより厳格な管理を野口質問に答える木元 きょうは質問が全部で六十四件きている。類似の質問は一つに集約している。まず、米国はプルサーマルをせずにどうしているのかという質問から答えていただきたい。松下 米国はいまのところプルサーマルをやっていない。ただ、核兵器を解体した百四十のプルトニウムを昨年フランスに送って燃料をつくっている。近く米国の原発でプルサーマルとして利用されることになる。高レベル廃棄物を減らす必要があるという考えのもと、二〇二〇年ごろからプルサーマルを取り入れる計画がスタートしたと聞いている。木元 次はMOX燃料の品質管理について。だれがどのように検査しているのか。松下 高浜原発福井県で使用予定の燃料でデータ改ざんがあったということで、いまは品質管理が厳しくなった。まず、燃料発注の際、その会社に受け入れ能力があるかどうかを確認する。製造期間中は必ず社員が立ち会い、第三者機関にも立ち会ってもらうことになっている。国の検査も厳重だ。以前は安全審査期間中に燃料をつくることができたが、いまは審査後でなければ発注できない。それは、われわれ電力会社の品質管理も確認されるためだ。工藤 私は昨年、英国のBNFL社を訪ねたが、データ改ざんの反省を踏まえ、システムの大改革が行われていた。木元 ミサイル攻撃やテロ対策はどうなっているのか。松下 9・の米中枢同時テロ以降、原発周辺の警備は大変厳しくなった。警察と海上保安庁が二十四時間態勢で周辺を監視している。もともと原発は外部の人が入りにくいように設計されている。3つの区域に分けており、防護区域には立ち入りができないような工夫が施されている。 電力会社は武器を持つことはできないが、できる限り、不法侵入を防ぐ施策を実施している。 9・を考えると、標的になった貿易センタービルは高さ約四百。玄海3号機は高さ六十で、飛行機を命中させるのは至難のはずだ。不幸にして、ぶち当たったとしても、われわれは原子炉を安全に止めることに自信を持っている。野口 国としては電力事業者により厳格に管理してほしい。また国は検査官を設けて、定期的に検査を行うといった法律改正を予定している。木元 原子力発電所では海からの攻撃を想定し、海上保安庁の船が常時警備・監視している。豊島 廃棄物の放射能レベルについては、国際原子力機関の資料がある。使用済MOX燃料はウラン燃料に比べて放射能、中性子線が強い上、寿命も長く、厄介だ。松下 使用済みMOX燃料と通常のウラン燃料を比較すれば、確かにそういうことになる。ただ、私たちが示したのはワンススルー直接的な地中廃棄などとの比較。プルサーマルをやってプルトニウムだけをリサイクルした場合、超ウラン元素という厄介者が出てくるが、高速炉で燃すと、放射能が約三百年間で天然鉱石のレベルまで低下・安定することが分かっている。ワンススルーだと、安定するまで一万年かかる。木元 外国からの燃料の輸送中、スマトラ沖地震規模の地震が起きたら燃料から放射能が漏れる心配はないか。松下 燃料を運ぶキャスク特別容器は丈夫。高さ九から鋼板に落としても壊れない。八百度の高温に三十分間耐え、水深十五の場所に八時間、さらに水深二百の場所に一時間浸っても大丈夫だ。運ぶ船の船底は安全確保のため二重構造になっている。木元 使用済MOX燃料の処理にかかる費用はどれくらいか。松下 先ほど説明した通り、使用済MOX燃料は当分、発電所の中に保管することになる。判断を迫られるのは十数年先。もう一回、再処理するという方法もある。処分にいくらお金がかかるのか、今のところ分からない。吉岡 補足になるが、六ケ所工場青森県の処理能力よりはるかに大量の使用済ウラン燃料が出てくる。使用済MOX燃料は薄めて再処理することは可能だが、後回しになるだろう。地中への直接処分の場合は、発熱量が三、四倍になり、間隔をきちんと空けないといけない。かなり費用はかかる。木元 原子力発電所で災害が発生した時の賠償はどう行われるか。野口 あってはならないことだが、万が一、災害が発生した場合、原子力事業者が賠償するという法律がある。事業者は過失があろうとなかろうと賠償責任が求められることになる。吉岡 原子炉関連の賠償には六百億円の保険が義務づけられている。それを超えたら国会決議による公費負担の道がある。JCOの臨界事故の時は保険額を超えたが、悪質なので親会社が支払った。

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /